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▶ レニショウ パブリック リミテッド カンパニーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】超音波方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/30 20060101AFI20240607BHJP
   A61B 8/00 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
G01N29/30
A61B8/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021550205
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-18
(86)【国際出願番号】 GB2020050366
(87)【国際公開番号】W WO2020174214
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】19159994.3
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リアム デイビッド ホール
(72)【発明者】
【氏名】イーニン ディン
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-194747(JP,A)
【文献】米国特許第06182494(US,B1)
【文献】特開2007-278809(JP,A)
【文献】実開昭60-070063(JP,U)
【文献】特表2017-535758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - A61B 8/15
G01B 5/00 - G01B 5/30
G01B 17/00 - G01B 17/08
G01N 29/00 - G01N 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査される物体の表面に係合させるための結合要素を有する超音波プローブを較正する方法であって、超音波プローブおよび較正アーチファクトが、少なくとも1つの軸を有する測位装置上に提供され、前記少なくとも1つの軸の周りに、超音波プローブおよび較正アーチファクトの相対的な向きが変更され得、方法は、
i)前記少なくとも1つの軸の周りの、前記超音波プローブと前記較正アーチファクトとの間の複数の異なる相対的な向きに対して、前記超音波プローブによって受信された信号を測定することと、
ii)前記測定から、前記超音波プローブの最適信号の少なくとも1つの軸を示す、少なくとも1つの較正パラメータを決定し、その後の使用のために、前記少なくとも1つの較正パラメータを記録することと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、i)は、前記超音波プローブと前記較正アーチファクトとの相対的な向きを変更することを含み、前記超音波プローブの結合要素は、前記較正アーチファクトと係合したままであることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記較正アーチファクトの表面上の前記超音波プローブの結合要素の位置が、前記複数の異なる相対な向きのそれぞれについて、実質的に同じであることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1-3のいずれか一項に記載の方法であって、前記測位装置は、その周りに、前記超音波プローブと前記較正アーチファクトの相対的向きが変更され得る、少なくとも2つの軸を含み、i)は、前記少なくとも2つの軸のうちの少なくとも2つの周りの、前記較正アーチファクトと前記超音波プローブとの間の複数の異なる相対的な向きに対して、前記超音波プローブによって受信される信号を測定することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1-4のいずれか一項に記載の方法であって、前記超音波プローブと前記較正アーチファクトの間の相対的な向きに関する、前記超音波プローブによって受信される信号のマップを決定することを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1-5のいずれか一項に記載の方法であって、前記少なくとも1つの較正パラメータが、前記超音波プローブの縦波軸を示すことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1-6のいずれか一項に記載の方法であって、前記結合要素が、変形可能な結合要素であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1-7のいずれか一項に記載の方法であって、前記少なくとも1つの較正パラメータを決定することは、前記較正されたアーチファクトの向き、および、形状に関する、既知の情報を使用することを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1-8のいずれか一項に記載の方法であって、さらに、検査される物体上の所与の点に対して、所望の検査軸を決定し、前記少なくとも1つの較正パラメータを使用して、最適信号の軸と所望の検査軸が、所定の基準に従って配置されるように、前記超音波プローブおよび前記物体の所望の相対的な向きを決定することを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、前記所定の基準は、前記最適信号の軸と前記所望の検査軸が実質的に整列するというものであることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項9または10に記載の方法であって、前記超音波プローブおよび前記物体の所望の相対的向きに従って、前記超音波プローブの結合要素を、前記物体上の前記点と係合させること、および、続いて、より最適な信号が、異なる方向で見出されるかどうかを決定するために、少なくとも1つの軸の周りで、前記超音波プローブおよび物体の相対的向きを変更することを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1-11のいずれか一項に記載の方法であって、前記測位装置が、座標測位装置を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記座標測位装置は、座標測定器であることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1-13のいずれか一項に記載の方法であって、前記超音波プローブが、前記少なくとも1つの軸を含む、関節部材に取り付けられることを特徴とする方法。
【請求項15】
装置であって、
測位装置に取り付けられた超音波プローブと、
コントローラと、
を含み、
前記コントローラは、請求項1-14のいずれか一項に記載の方法に従って、前記装置を制御するように構成されることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方法および装置、特に、物体の超音波測定値を取得し得る、超音波プローブに関係するものに関する。特に、本発明は、検査装置、特に、超音波プローブなどのパルスエコープローブを含む検査装置を、較正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造された物体の寸法を測定して、それらが公差に準拠することを確実にすることが、知られている。航空宇宙タービンブレードなどの高価値構成部品の場合、物体の外形は、座標測定機(CMM)に取り付けられた表面接触プローブを使用してサブミクロンの精度で測定され得る。表面接触(例えば、走査)プローブを備えたCMMを使用して、物体の表面の複数の点の位置を測定するための技術の例は、特許文献1、および、特許文献2に記載される。
【0003】
表面測定に加えて、しばしば、物体の内部の特徴を測定する必要がある。例えば、タービンブレードは、それらが、極端な温度と圧力での動作のために、軽量でも強力でもあることを可能にするため、通常、中空である。そのような中空のタービンブレードの内部検査は、通常、超音波検査装置、例えば超音波浸漬システムまたは超音波厚さ測定プローブを使用して実行される。
【0004】
超音波浸漬システムは、一般に、試験片を完全に水浴内に沈めることを伴う。単一のパルスエコー変換器、または、一対の送信/受信変換器は、コンピュータ制御のロボットアームを使用して、部品に対して適切に配置される。水は、部品との良好な音響結合を提供するが、特に大きな部品の場合、配置は、高価で複雑である。超音波浸漬システムの例は、特許文献3に記載される。
【0005】
超音波厚さ測定プローブは、部品が、水に浸されることを要求しないが、代わりに、通常、部品へのカプラント材料(例えば、カップリングゲルまたは液体)の局所的な塗布に依存する。そのようなプローブは、手持ちである傾向があるが、いかにして、そのようなプローブが、CMMのクイルに取り付けられ得るかは、以前に説明された。例えば、特許文献4は、CMMのクイルに取り付けられた超音波プローブを説明する。特許文献4の超音波プローブは、物体との接触が確立されるときに、センサが、物体の表面法線に整列することを可能にする、ジンバルマウントを含む。特許文献4の段落19で説明されるように、超音波プローブと物体の間の適切な音響結合を確実にするために、検査の前に、ゲルやグリースなどのカプラント材料が物体の関連領域に塗布される必要がある。局所的なカプラント材料を塗布する必要性に加え、ジンバルマウントの限られた角度範囲は、そのようなシステムを使用する部品の内部特性の超音波検査を、時間がかかり、複雑な作業にする。乾式カプラント層を使用する、手持ちの超音波厚さ測定プローブが、また、知られるが、特に、より高い超音波周波数での動作が必要とされる場合、そのような装置の結合効率と性能が不十分になり得る。
【0006】
特許文献5(国際公開第2016/051147号)は、CMMなどの測位装置に取り付けるための様々な構成の超音波プローブを説明する。特に、特許文献5(国際公開第2016/051147号)は、変形可能な結合要素(硬い/固形の結合要素を有する超音波プローブとは対照的に)を含む、超音波プローブを説明する。変形可能な結合要素は、部品への超音波結合を提供し、ディレイラインとしても機能し得る。特許文献5(国際公開第2016/051147号)は、また、結合要素が、制御された方法でその外面から、水および/または油などの、潤滑剤を、好ましくは放出する、自己潤滑性材料を含み得ることを記載する。自己潤滑性材料は、親油性エラストマー、任意選択で、親水性エラストマーを含み得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第5189806号明細書
【文献】国際公開第2009/024783号
【文献】英国特許第2440959号明細書
【文献】米国特許公開第2009/0178482号明細書
【文献】国際公開第2016/051147号
【文献】国際公開第2016/051148号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、超音波プローブを較正および使用するための方法の改良、および、関連する装置の改良に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
例えば、本明細書には、超音波プローブを較正する方法が記載され、方法は、超音波プローブの最適な信号の軸を見つけるために、超音波プローブと較正アーチファクトとの間の複数の異なる向きで、超音波プローブによって受信される信号を測定することを含む。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、検査される物体の表面に係合するための結合要素を有する超音波プローブを較正する方法が提供され、超音波プローブおよび較正アーチファクトは、超音波プローブと較正アーチファクトの相対的な向きが変更され得る、少なくとも1つの軸を有する測位装置に提供される。方法は、i)少なくとも1つの軸の周りの、超音波プローブと較正アーチファクトとの間の、複数の異なる相対的向きについて、超音波プローブによって受信された信号を測定することを含み得る。方法は、さらに、ii)前記測定から、超音波プローブの最適な(言い換えれば、好ましい)信号の少なくとも1つの軸を示す、少なくとも1つの較正パラメータを決定し、その後の使用のために、少なくとも1つの較正パラメータを記録することを含み得る。
【0011】
少なくとも1つの較正パラメータを決定および記録することは、超音波プローブが、その後、アーチファクトを検査するために使用されるときに、較正パラメータが、所望の信号を達成するために、どのようにプローブを方向付けるかを決定するのを支援するために使用され得るということを意味し得る。本発明から生じ得る様々な特定の利点は、以下により詳細に説明される。
【0012】
好ましくは、ステップi)および/またはii)は自動的に実行される。したがって、方法は、ステップi)の測定値の取得をもたらすように、および/または、超音波プローブの少なくとも1つの最適信号の軸を示す、少なくとも1つの較正パラメータを決定する(すなわち、ステップii))ように構成された、処理手段、例えば、電子機器を含み得る。そのような処理手段、例えば、電子機器は、ハードワイヤード電子機器、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、汎用プロセッサ上で実行されるソフトウェア、または、それらの組み合わせを含み得る。処理手段、例えば、電子機器は、測位装置の一部であり得、また、そうでなくてもよい。例えば、測位装置は、測位装置を制御するためのコントローラを含むかもしれない。コントローラは、処理手段/電子機器を含み得るであろう。任意選択で、コントローラ以外のユニットが、処理手段/電子機器を含む。
【0013】
較正パラメータは、電子形式または非電子形式で記録され得る。例えば、較正パラメータは、電子メモリデバイス、例えば、電子的に消去可能でプログラム可能な読み取り専用メモリ(EEPROM)に記録され得るであろう。
【0014】
理解されるように、較正パラメータは、記録、例えば、データ記録を含み得る。較正パラメータは、少なくとも1つの値を含み得る。較正パラメータは、ベクトルを含み得るであろう。以下でより詳細に説明されるように、測位装置および超音波プローブは、それら自身の別個の座標空間を有し得る。特に、超音波プローブの座標空間は、測位装置の座標空間に対して(例えば、少なくとも1つの軸の周りで)回転し得るであろう。較正パラメータ、例えば、較正ベクトルは、超音波プローブの座標空間で、定義され得るであろう。較正パラメータは、不整列ベクトルとして説明され得るであろう。以下でより詳細に説明されるように、較正パラメータは、既知の較正アーチファクト内の最適信号の軸に関連付けられたベクトルであり得るであろう。
【0015】
有利なことに、超音波変換器は、パルスエコーモードで動作するように構成され得るであろう。超音波プローブによって受信される信号は、超音波プローブが結合される物体に入る、投射された波形からの、少なくとも1つの、例えば、少なくとも2つの、例えば、すべての反射されたエコーを含み得る。便利なことに、超音波戻り信号が分析され、物体の厚さおよび/または欠陥の測定値が取得されることを可能にするであろう。そのような分析は、以下でより詳細に説明される、「A-スキャン」に存在する、連続的な後壁反射を分析する「モード3」方法に基づいてなされ得る。しかし、必要に応じて、代替の分析技術(例えば、いわゆるモード1またはモード2技術)が、使用され得るであろう。超音波検査装置は、また、複数の異なる超音波測定モードのうちの、いずれか1つで動作するように構成され得る。基本モジュールは、好ましくは、超音波変換器によって受信された、超音波信号を分析するためのプロセッサを含む。あるいは、超音波信号は、オフプローブプロセッサによって(例えば、外部インターフェースで、または、オフラインコンピュータを使用して)、分析され得るであろう。
【0016】
超音波プローブは、超音波波形を放出するための少なくとも1つの変換器を含み得る。超音波プローブは、超音波波形を感知するための少なくとも1つの変換器を含み得る。任意選択で、超音波プローブは、超音波波形を放射するための少なくとも1つの変換器と、超音波波形を感知するための少なくとも1つの変換器とを含む。任意選択で、超音波波形を感知するための少なくとも1つの変換器は、超音波波形を感知するために使用される同じセンサである。変換器は、圧電素子を含み得る。好ましくは、変換器は、縦波(L波)を励起する。以下でより詳細に説明されるように、好ましくは、少なくとも1つの較正パラメータは、超音波プローブの超音波軸、例えば、L波軸を示す。超音波プローブは、単一チャネルプローブを含み得る。例えば、超音波プローブは、パルスエコー動作を実行するただ1つの能動要素/変換器を含み得るであろう。任意選択で、超音波プローブはフェーズドアレイプローブを含み得るであろう。この場合、測定された不整列は、適切なビームステアリング方法を使用して、プローブ内の後続の測定で補償され得るであろう(例えば、最適なL波軸にビームを向けるために、アレイチャネル間に適切な位相/時間遅延を誘導する)。
【0017】
超音波プローブは、任意の既知の方法で、超音波を励起および受信し得る。超音波プローブ/検査装置は、高周波で動作し得る。例えば、動作周波数は、5MHzより大きく、10MHzより大きく、または、より好ましくは、15MHzより大きいものであり得る。例示的な実施形態では、動作周波数は、約20MHzである。より高い周波数(例えば、15MHZを超える周波数など)は、変形可能な先端を備えたプローブに特に有用であることが見出され、特に、より高い分解能の測定を提供することが見出された。より低い周波数では、変形可能な先端の内部で、より多くのノイズが発生し得ることが見出された。
【0018】
本発明は、変形可能な結合要素を有する超音波プローブで、特に、有利である。言い換えると、結合要素は、(剛性/硬い結合要素とは対照的に)ソフト結合要素であり得る。したがって、この方法は、結合要素が形を崩して変形されるように、結合要素を、物体の表面に置くことを含み得る。例えば、結合要素は、エラストマーを含み得る。例えば、結合勝訴は、ポリマー、例えば、超吸収性ポリマーを含み得る。
【0019】
結合要素は、湿潤、例えば、潤滑剤を含むものであり得る。任意の適切な潤滑剤が、使用され得る。有利には、結合要素は、自己潤滑性材料を含み得る。自己潤滑性材料は、好ましくは、水および/または油などの潤滑剤を、制御された方法でその外面から放出する。自己潤滑性材料は、親油性エラストマーを含み得る。有利なことに、自己潤滑性材料は、親水性エラストマーを含む。例えば、親水性エラストマーは、軽く架橋された親水性ビニルエラストマー、または、超吸収性ポリマーヒドロゲル、例えばポリアクリル酸ナトリウムなどの、非圧縮性ゼラチン状親水性エラストマー材料を含み得る。高含水率の親水性ポリマー鎖化合物の例は、MMA:VP(すなわち、N-ビニルピロリドンとメチルメタクリレートのコポリマー)である。このコンパウンドの場合、含水率は約35%から95%まで変化し、含水率が増加されると引き裂き強度は低下するが、優れた音響特性が示される。便利なことに、接触要素/自己潤滑性材料は、球として提供される。結合要素の好ましい実施形態は、少なくとも1つの親水性エラストマー球を含む。
【0020】
理解されるように、信号を測定するとき、結合要素は、アーチファクトの表面(例えば、前壁)に係合される必要がある。ステップi)は、超音波プローブと較正アーチファクトの相対的な向きを変更するために、測定の間に、結合要素を切り離すことを含み得るであろう。しかしながら、好ましくは、ステップi)は、超音波プローブの結合要素が、較正アーチファクトと係合したままである間に、超音波プローブおよび較正アーチファクトの相対的な向きを変更することを含む。これは、測定/較正プロセスを、スピードアップし得る。
【0021】
好ましくは、較正アーチファクトの表面での超音波プローブの結合要素の位置は、複数の異なる相対的な向きのそれぞれについて、実質的に同じである。したがって、先端の横方向の動きはあり得ないであろう。これは、測定/較正プロセスをスピードアップし得る。また、それは、より良い較正結果を提供し、および/または、較正手順を簡素化し得る。
【0022】
超音波プローブと較正アーチファクト間の異なる相対的な向きは、超音波プローブの異なる「仰角」(または、異なる「傾斜角」/「迎え角」/「入射角」)を意味し得る(較正アーチファクトの表面法線に対して)。言い換えると、超音波プローブと較正アーチファクトの異なる相対的な向きは、超音波プローブの軸(例えば、それは、機械軸および/または超音波軸、例えばL波軸)と較正アーチファクトの表面法線との間の異なる角度を意味し得るであろう。超音波プローブと較正アーチファクト間の異なる相対的な向きは、プローブの異なる「方位角」、または、異なる「迎え方向」を意味し得る(必ずしも「仰角」の変化をもたらさない)(較正アーチファクトの表面法線に対して)。任意選択で、超音波プローブと較正アーチファクトとの間の異なる相対的向きは、アーチファクトの表面に対する超音波プローブの異なる「仰角」および「方位角」を意味する。
【0023】
ステップi)の複数の異なる方向は、超音波プローブとアーチファクトの間の接触点でのアーチファクトの表面法線を通って垂直に延びる二つの(例えば、仮想の)(例えば、垂直の)軸の周りの異なる回転の相対的向きで、超音波測定値が、プローブおよびアーチファクトを用いて、取得されるように構成され得る。例えば、ステップi)は、超音波プローブとアーチファクトの間の接触点を通って延び、超音波プローブとアーチファクトの間の接触点でのアーチファクトの表面法線に垂直な、2つの(例えば、想像上の)(例えば、垂直な)軸の周りで、アーチファクトに対する超音波プローブの向きを変えること(例えば、超音波プローブを移動/回転すること)を含み得る。これは、(プローブに関して)複数次元でのデータ(例えば、パルスエコーまたは後壁のエネルギー情報)が取得されることを可能にし得る。したがって、最適信号の軸に関する情報が、超音波プローブに関して複数の自由度/次元について、決定され得る。
【0024】
以下でより詳細に説明されるように、測位装置は、少なくとも1つの軸、例えば、少なくとも2つの軸を含み得、その周りで、超音波プローブおよび較正アーチファクトの相対的な向きが変更され得る。ステップi)は、少なくとも1つの軸(例えば、少なくとも2つの軸のうちの少なくとも1つ)の周りの、超音波プローブと較正アーチファクトとの間の複数の異なる相対的向きに対して、超音波プローブによって受信される信号を測定することを含み得る。ステップi)は、少なくとも2つの軸のうちの少なくとも2つの周りの、超音波プローブと較正アーチファクトとの間の複数の異なる相対的向きに対して、超音波プローブによって受信される信号を測定することを含み得る。言い換えれば、測位装置は、その周りで、超音波プローブおよび較正アーチファクトの相対的な向きが変更され得る、少なくとも第1の軸、および、任意選択で、少なくとも第2の軸を含み得る。方法は、第1および第2の軸の、複数の異なる角度の向きの組み合わせで、信号を取得する、超音波プローブを含み得る。したがって、方法は、第1の軸の周りの相対的な向きを変更すること、および、任意選択で、また、第2の軸の周りの相対的な向きを変更することを含み得る(測定の間)。これは、(プローブに関して)複数次元でのデータ(例えば、パルスエコーまたは後壁のエネルギー情報)が取得されることを可能にし得る。例えば、軌道運動(以下を参照)を実行することは、第1の軸と第2の軸の両方の周りで向きを変えることを含み得る。
【0025】
超音波プローブは、結合要素の遠位にある本体部分を含み得る。言い換えれば、超音波プローブは、第1の端部に本体部分を、第2の端部に結合要素を含み得る。超音波プローブは、本体部分を介して測位装置に取り付けられ得る。超音波プローブ(例えば、本体部分)、および、測位装置(例えば、関節部材/回転ヘッド)は、超音波プローブが測位装置に取り付けられることを可能にするための、対応する取り付け構造を含み得、特に、それは、超音波プローブが、測位装置に、自動的に、装着され、および、取り外されることを可能にする。言い換えれば、好ましくは、超音波プローブは、測位装置上で、例えば、測位装置の操作容積に配置されるラックへ/ラックから、自動的に取り替え可能である。超音波プローブ(例えば、本体部分)、および、測位装置は、反復可能な取付けの補完的な構造、例えば、運動学的取付けの補完的な構造を含み得る。超音波プローブおよび測位装置の少なくとも1つは、測位装置上に超音波プローブを保持するための少なくとも1つの磁石を含み得る。
【0026】
ステップi)は、結合要素が表面に係合する点の周りで、超音波プローブの本体部分を動かし、相対的な向きの変化をもたらすことを含み得る(および、例えば、その中で、結合要素が表面に係合する点は、そのような動きの間、固定される)。超音波プローブによって受信される信号は、例えば、本体部分が、結合要素が表面に係合する点の周りを移動する間、本体の異なる位置で測定され得る。ステップi)は、結合要素が表面と係合する点の周りで、本体部分が軌道に乗って回ることをもたらすことを含み得る。そのような運動は、軌道運動と称され得るであろう。軌道運動は、完全な軌道であり得、また、そうでなくてもよい(例えば、本体部分は、結合要素が表面に係合する点の周りで、軌道を部分的にのみ完了し得るであろう(「部分軌道」))。軌道の角度(例えば、超音波プローブの機械軸とアーチファクトの表面法線との間の角度、言い換えると、「傾斜角」または「仰角」)は、軌道運動中に一定のままであり得るであろう。
【0027】
ステップi)は、複数の軌道運動(言い換えれば、複数の完全または部分的な軌道)を実行することを含んでもよい。複数の名目上同一の軌道運動が、実行され得るであろう。例えば、ステップi)は、同じ軌道運動を複数回実行することを含み得る(例えば、平均化された信号を得るために、例えば、同じ軌道角度に対して、複数の信号を収集するために)。ステップi)は、複数の軌道運動を実行することを含み得るであろうが、その中で、軌道の角度(言い換えれば、超音波プローブの「仰角」、「傾斜角」または「入射角」)は、異なる軌道に対して異なる。
【0028】
軌道の角度は、異なる軌道間で段階的な方式で変化し得、または、任意で、連続的に(例えば、らせん状の方式で)変化し得るであろう。したがって、軌道運動は、超音波プローブ(例えば、その機械軸および/または超音波軸などのその軸)が、円錐形を描写することをもたらし得るであろう。同様に、一組の軌道運動は、超音波プローブが、一組の円錐形(または、軌道の角度が連続的に変化する場合は、らせん状の円錐形)を描写することをもたらし得るであろう。有利なことに、軌道運動は、少なくとも2つの軸の周りの、超音波プローブと較正アーチファクトの同期した相対的な運動によって、もたらされ得る/実行され得るであろう。例えば、超音波プローブが、2つの軸を含む関節式ヘッドに取り付けられる場合、軌道運動は、互いに、および、関節式ヘッドに円運動を描写させることをもたらす測位装置の動きに同期している、2つの軸の両方の周りの、連続的な、前後の回転によって、もたらされ/実行され得るであろう。
【0029】
方法は、超音波プローブによって受信された信号に関連するデータの少なくとも1つの配列を記録することを含み得る。配列は、1次元配列、2次元配列、または3次元配列であり得るであろう。配列内の要素は、(超音波プローブおよび較正アーチファクトの)所与の/特定の相対的向きに対して、超音波プローブによって受信された信号に関連するデータを含み得るであろう。配列内の要素は、信号強度/品質に関連するデータを含み得るであろう。例えば、配列内の要素は、振幅、持続時間、到着時間、または、後壁エコーの1つまたは任意のタイムゲートされた組み合わせの時間積分エネルギーのうちの、少なくとも1つに関連する任意の信号計量に関連するデータを含み得る。例えば、配列内の要素は、特定の相対的な向きで、超音波プローブによって受信された、ピーク信号(例えば、ピーク後壁エネルギー)を示す値を含み得るであろう。特に、例えば、配列内の要素は、最初の後壁エコー信号のエンベロプのピーク(例えば、ヒルベルト変換、または、任意の他の信号復調方法によって与えられたエンベロプ)を示す値を含み得るであろう。任意で、配列内の要素は、A-スキャンの測定窓内から抽出された後壁エネルギーの、任意のタイムゲートされた合計を示す値を含み得るであろう。
【0030】
配列内の要素は、(特定の相対的な向きで)複数の読み取り値/信号から決定された値を含み得るであろう。例えば、配列内の要素は、平均値を含み得るであろう。例えば、配列内の要素は、(特定の相対的な向きで)(例えば、少なくとも2回の読み取りで、所定の相対的な向きに対して取得される)平均ピーク信号を表す値を含み得る。理解されるように、そのような平均化は、特定の向きに留まり、複数の読み取りを行うことによって実行され得るであろう。任意選択で、そのような平均化は、プローブが移動/向きを変えているときに、超音波測定を行いながら、超音波プローブを異なる向きに連続的に動かす(言い換えれば、少なくとも1つの軸の周りで、超音波プローブの向きを連続的に変える)ことによって、および、同じ向きに、複数回移動することによって(例えば、繰り返される軌道運動を実行することによって)、達成され得るであろう。以下でより詳細に説明されるように、そのような場合、プローブが移動しているときに、行われる測定/読み取りは、測定/読み取りが行われた点での向きに応じて、特定のビンに割り当てられ得る。この場合、測定/読み取りが、必ずしも設定された向きで行われるとは限らないため、異なるビンが、異なる数の測定/読み取り値を有することがあるかもしれない。したがって、方法は、測定/読み取り値がビンに追加された、回数の記録を保持することを含み得るであろう。次に、そのような値は、次に、平均の測定/読み取り値を決定するために使用され得る。
【0031】
配列は、マップ(例えば、極座標マップなどの座標マップ)と称され得るであろう。したがって、方法は、超音波プローブと較正アーチファクトとの間の相対的な向きに関して、超音波プローブによって受信された信号のマップを決定することを含み得る。
【0032】
方法は、最適信号の軸の最初の表示を提供する、最初の較正パラメータを取得することを含み得る。方法は、より多くの信号測定値を取得するために、引き続き、超音波プローブを制御すること(例えば、最適信号の軸の最初の表示に基づいて)、および、最適な信号の軸の精巧な表示を決定することを含み得る。言い換えれば、方法は、初期較正パラメータを使用することを含み得、最適な信号の軸の精巧な表示を得るために、いかに、超音波プローブおよびアーチファクトの相対的な向きを制御するかを決定する。したがって、少なくとも1つの較正パラメータは、最適な信号の軸の精巧な表示を含み/それに基づき得る。例えば、最初の較正パラメータを取得することは、第1の組の(例えば、軌道)運動から、第1の組の信号測定値を取得することを含み得、次に、最適信号の軸の精巧な表示を決定することは、第2の組の(例えば、軌道)運動から、第2の組の信号測定値を取得することを含み得、測定が行われる角度の解像度は、第2の組の運動に対して、第1の組の運動のそれよりも小さい(例えば、軌道角度(例えば、仰角/傾斜角)の違いは、第2の組の軌道運動に対して、第1の組の軌道運動の角度よりも小さい)。
【0033】
以下で詳細に説明されるように、少なくとも1つの較正パラメータは、超音波プローブの縦波(「L波」)軸を示し得る。これは、以下で詳しく説明されるように、平行でない前壁と後壁を備える較正アーチファクトが、また、使用され得るが(例えば、形状と音速に関する追加情報を備える)、平行な前壁と後壁を備えた較正アーチファクトを使用して見出され得るであろう。しかしながら、理解されるように、垂直入射横波プローブなどの他のタイプの超音波プローブでは、使用される結合要素が、横波モードの伝搬を支援すると仮定して、較正パラメータは、横波軸などの異なるタイプの軸を示し得るであろう。同様に、より一般的に使用されるL波超音波プローブの場合、少なくとも1つの較正パラメータ(例えば、プローブの超音波軸を示す)は、理論的には、適切に設計された(屈折など)(ウェッジなど)較正アーチファクトの前壁に対する、非法線軸測定とそれに続くモード変換によって生成される、横波を使用して決定されるであろう。
【0034】
理解されるように、較正アーチファクトは、超音波プローブの較正中に使用されるアーチファクト(例えば、物体、部品)である。少なくとも1つの較正パラメータを決定することは、較正されたアーチファクトの、向き、および/または、形状に関する既知の情報を使用することを含み得る。較正アーチファクトは、平坦な前壁と後壁を含み得る。較正アーチファクトは、平行な前壁と後壁を含み得る。較正アーチファクトは等方性であり得る。任意で、較正アーチファクトは、金属製である。方法は、較正アーチファクトを測定して、少なくともアーチファクトの前壁(および/またはアーチファクトの後壁)の位置、向き、および/または形態を決定することを含み得る。例えば、方法は、少なくともアーチファクトの前壁の測定を行う、位置測定プローブを含み得る。方法は、アーチファクトの後壁の測定を行う位置測定プローブを含み得る。任意選択で、前壁と後壁の配置は、既知である(例えば、平行であると)。したがって、方法は、較正アーチファクトの向き/前壁の平面の向きを決定するために、少なくともアーチファクトの前壁の測定を行うことを含み得るであろう。測定値は、タッチトリガープローブなどの接触プローブ、または接触アナログ/走査プローブを使用して取得され得る。理解されるように、位置測定プローブは較正され得、したがって、方法は、位置測定プローブを較正することを含み得るであろう。
【0035】
方法は、較正パラメータを使用することを含み得る。例えば、方法は、その後の検査において、いかに超音波プローブおよび/または物体を方向付けるかを決定するために、較正パラメータを使用することを含み得る。物体は、較正アーチファクト以外の物体であり得る。方法は、いかに超音波プローブおよび/または物体を方向付けるかを決定するために、較正パラメータを使用することを含み得、超音波(例えば、L波)は、物体内の所望の伝播ベクトルに沿って伝播する。方法は、いかに超音波プローブおよび/または物体を方向付けるかを決定するために、屈折/スネルの法則の効果を考慮に入れることを含み得る。方法は、さらに、検査されるべき物体の所与の点に対して、所望の検査軸/ベクトル(換言すると、「標的ベクトル」)を決定することを含み得る。方法は、超音波プローブおよび物体の所望の相対的な向きを決定するために、少なくとも1つの較正パラメータを使用することを含み得、最適の信号の軸および所望の検査軸(例えば、標的ベクトル)は、所定の基準に従って配置される。所定の基準は、最適の信号の軸および所望の検査軸(例えば、標的ベクトル)が実質的に整列するというものであり得るであろう。
【0036】
方法は、超音波プローブおよび物体の所望の相対的向きに従って(例えば、最適信号の軸および所望の検査軸が、前述の所定の基準に従って配置されるように)、超音波プローブを物体と係合させることを含み得る。例えば、方法は、超音波プローブと物体の所望の相対的向きに従って、超音波プローブ結合要素を物体上の点と係合させることを含み得る。方法は、任意選択で、続いて、少なくとも1つの軸(および任意選択で少なくとも2つの軸)の周りで、プローブおよび物体の相対的な向きを変更することを含み、より最適な信号が、異なる向きで見出され得るかどうかを決定する。そのようなプロセスは、検出モード探索と称され得るであろう。そのようなプロセスは、いかに探索を実行するかを決定するために、屈折/スネルの法則を考慮することを含み得るであろう。本発明に従って較正されたプローブを使用すると、プローブが較正されていない場合よりも、探索が、より的を絞られ得、それにより速度の利点を提供する。
【0037】
測位装置は、座標測位装置を含み得る。座標測位装置は、工作機械、ロボット、アーム、x-yスキャナーまたはクローラーを含み得る。好ましい実施形態では、座標測位装置は、座標測定機を含む。CMMは、デカルトタイプ(例えば、ブリッジタイプ)のCMM、または、非デカルト(例えば、ヘキサポッド)タイプのCMMであり得る。
【0038】
超音波プローブは、関節部材に装着され、少なくとも1つの軸を含み得るであろう。関節部材は、連続的に関節接合される部材であり得るであろう。任意選択で、関節部材は、インデックス付きの関節部材を含む(例えば、関節部材は、関節部材がロックされ得る、設定された数の個別の向きを含む)。関節部材は、少なくとも1つの軸の周りの、超音波プローブの向きを制御するための、少なくとも1つのモーターを含み得る。
【0039】
関節部材は、例えば、測位装置、例えば、CMM、例えば、CMMのクイル(また、Zコラムとして知られる)の端部に、取り付けられた回転ヘッドを含み得る。したがって、上記のように、回転ヘッドは、単一の回転軸、2つの回転軸、または、3つの回転軸を含み得る。回転ヘッドは、有利には、少なくとも2つの回転軸を含む。回転ヘッドは、少なくとも3つの回転軸を含み得る。
【0040】
本発明の別の態様によれば、検査装置が提供され、検査装置は、超音波プローブと、超音波プローブの最適信号の少なくとも1つの軸を示す、少なくとも1つのパラメータを含む記録とを含む。検査装置は、記録を使用して、超音波プローブを方向付けるように構成され得る。例えば、検査装置は、記録に基づいて超音波プローブを方向付けるように検査装置を制御するように構成された命令を含む、コンピュータプログラムコードを含み得る。
【0041】
理解されるように、本発明の第1の態様に関連して上記で説明された構成は、ここでも等しく適用可能であり、逆もまた同様である。
【0042】
最適な信号の軸は、超音波プローブの機械軸とは異なり得る。理解されるように、プローブの機械軸は、プローブごとに異なるであろう(言い換えれば、プローブの機械軸は、プローブ固有である)。以下でより詳細に説明されるように、通常、プローブの機械軸は、プローブの座標系に関して定義される。プローブが関節式ヘッドに取り付けられる場合、プローブの座標系は、プローブが、少なくとも1つの軸の周りに回転するときに、プローブとともに回転する。2つの垂直な回転軸を持つ関節機構(ヘッド)に取り付けられたプローブの場合、プローブの座標系のX軸は、ヘッドの軸の1つ(例えば、E軸、以下を参照)と整合し得、および、プローブの座標系のZ軸は、他の軸(例えば、D軸、以下を参照)と整合し得る。Y軸は、右回りの直交系を完成させ、軸プローブの場合、機械軸は、プローブ座標系のZ軸(すなわち、[0 0 1]T)として定義され得る。プローブのクランク角度バージョンの場合、機械軸は、このZ軸コラムベクトルから、特定の、一定のオイラー回転である。
【0043】
少なくとも1つのパラメータは、超音波プローブの縦波軸を示し得る。
【0044】
少なくとも1つのパラメータは、電子メモリデバイスに格納され得る。
【0045】
本発明の別の態様によれば、検査装置に取り付けられた超音波プローブを用いて物体を検査する方法が提供され、方法は、超音波プローブの最適の信号の少なくとも1つの軸を示すパラメータを取得することと、パラメータに基づいて、いかに超音波プローブと物体を相対的に方向付けるかを決定することを含む。
【0046】
少なくとも1つのパラメータは、超音波プローブの縦波軸の少なくとも1つを示し得る。パラメータを取得することは、電子メモリデバイスからそれを引き出すことを含み得る。
【0047】
方法は、さらに、決定された方向に従って、超音波プローブを物体と係合させるように、検査装置の動きを制御することを含み得る。本発明の第1の態様に関連して上記で説明されるように、方法は、その後、なお一層の最適な信号の探索(例えば、「検出モード探索」)を実行することを含み得る。本発明の上記の態様に関連して上記される技術および構成は、ここにおいて、等しく適用可能であり、逆もまた同様である。例えば、較正アーチファクトの表面上の超音波プローブの結合要素の位置は、複数の異なる相対的な向きのそれぞれについて、実質的に同じであり得る。例えば、探索は、超音波プローブとアーチファクトの間の接触点で、アーチファクトの表面法線を通って延び、表面法線に垂直な、二つの(例えば、仮想)(例えば、垂直)軸の周りの、異なる回転の相対的な向きで、プローブおよびアーチファクトに関する測定値/信号を取得するために、超音波プローブおよび/または物体を制御することを含み得るであろう。例えば、方法は、プローブとアーチファクトの間の接触点を通って延び、超音波プローブとアーチファクトの間の接触点で、アーチファクトの表面法線に垂直な、2つの(例えば、仮想の)(例えば、垂直な)軸の周りで、アーチファクトに対する超音波プローブの向きを変更すること(例えば、超音波プローブを移動/回転させること)を含み得る。これは、(プローブに関する)複数次元でのデータ(例えば、パルスエコーや後壁のエネルギー情報)が取得されることを可能にする。また、例えば、探索は、例えば、最適な軸を中心に、複数の軌道運動を実行するように超音波プローブを動かすこと、および、受信される信号を分析することを含み得るであろう。
【0048】
本発明の別の態様によれば、検査装置に取り付けられた超音波プローブを用いて、物体を検査する方法が提供され、方法は、超音波プローブと物体との間の異なる向きで取得される、超音波測定値/信号に関する情報を取得するために、超音波プローブと物体との間の単一の係合点に対して、超音波プローブと物体との間の複数の異なる向きのそれぞれにおける、少なくとも1つの超音波(例えば、後壁エネルギー)測定値/信号を取得することを含む。
【0049】
情報は、超音波測定値/信号(例えば、後壁エネルギー)に関連する、情報の配列を含み得る。配列は、複数のビン/要素を含み得、方法は、特定の向きで得られた測定値/信号を、特定のビン/要素に割り当てることを含み得る。任意で、各ビン/要素は、超音波プローブと物体の、特定の角度方向に対応する。方法は、超音波プローブと物体の間の複数の異なる向きのそれぞれで、複数の超音波測定値/信号を取得することを含み得る。任意選択で、ビン/要素は、複数の測定値/信号の結果である、値を含む。任意選択で、ビン/要素は、平均化された信号/測定値(例えば、後壁エネルギーの)を含む。方法は、さらに、配列で得られたデータを表示することを含み得る。
【0050】
方法は、さらに、物体に関する情報、例えば、物体の後壁に関する情報、例えば、後壁の形態に関する情報を決定するために、情報(例えば、配列に含まれるデータ)を分析することを含み得る。したがって、方法は、後壁の向き、および/または、形状を決定するために、配列に含まれるデータを分析することを含み得る。そのような分析は、自動的に実行され得る。
【0051】
方法は、その弾性特性などの、物体の材料に関する情報を決定するために、情報(例えば、配列に含まれるデータ)を分析することを含み得る。例えば、方法は、配列内の複数のピークを識別するために、情報(例えば、配列に含まれるデータ)を分析することを含み得る。例えば、方法は、材料内のS波に対するL派の速度などの、受信されるL波およびS波に関する情報を決定するために、情報(例えば、配列に含まれるデータ)を分析することを含み得る(例えば、厚さ測定、または、時間遅延推定が実行されることなく)。
【0052】
配列は1D配列を含み得るであろう。任意で、配列は、2D配列を含む。例えば、配列は、3D配列を含み得るであろう。配列は、シリーズまたはマップとして記述され得るであろう。例えば、配列は、後壁エネルギー配列/シリーズ/マップ、特に、後壁エネルギー分布配列/シリーズ/マップとして記述され得るであろう。配列は、座標マップ、例えば極座標マップを含み得るであろう。任意で、配列は、ルックアップテーブル、または、他の適切なデータ記録を含む。
【0053】
理解されるように、本発明の上記の態様に関連する、上記の技術および構成は、また、本発明のこの態様にも適用可能であり、逆もまた同様である。例えば、較正アーチファクトの表面上の超音波プローブの結合要素の位置は、複数の異なる相対的な向きのそれぞれについて実質的に同じであり得る。
【0054】
超音波プローブと較正アーチファクトの間の異なる相対的な向きは、(較正アーチファクトの表面法線に対する)超音波プローブの異なる「仰角」(または、異なる「傾斜角」/「迎え角」/「入射角」)を意味し得る。言い換えると、超音波プローブと較正アーチファクトの異なる相対的な向きは、超音波プローブの軸(例えば、その機械軸、および/または、超音波軸、例えばL波軸)と較正アーチファクトの表面法線との間の異なる角度を意味し得るであろう。超音波プローブと較正アーチファクト間の異なる相対的な向きは、(較正アーチファクトの表面法線に関して)プローブの異なる「方位角」または「迎え方向」を意味し得る(必ずしも「仰角」の変化をもたらさない)。任意選択で、超音波プローブと較正アーチファクトとの間の異なる相対的な向きは、アーチファクトの表面に対する超音波プローブの、異なる「仰角」および「方位角」を意味する。
【0055】
したがって、複数の異なる向きは、超音波測定値が、超音波プローブとアーチファクトの間の接触点で、表面法線を通って垂直に延びる2つの(例えば、仮想)(例えば、垂直)軸の周りの、異なる回転の相対的な向きで、プローブおよびアーチファクトを用いて得られるように構成され得る。例えば、方法は、プローブとアーチファクトとの間の接触点を通って延び、および、超音波プローブとアーチファクトの間の接触点で、アーチファクトの表面法線に垂直な、2つの(例えば、仮想)(例えば、垂直)軸の周りの、アーチファクトに対する超音波プローブの向きを変えること(例えば、超音波プローブを移動させ/回転させること)を含み得る。これは、複数のデータ(例えば、パルスエコーまたは後壁のエネルギー情報)が、複数次元(プローブに関する)で、取得されることを可能にし得る。したがって、最適信号の軸に関する情報は、超音波プローブに関して、複数の自由度/次元に対して決定され得る。
【0056】
以下でより詳細に説明されるように、測位装置は、少なくとも1つの軸、例えば、少なくとも2つの軸を含み得、軸の周りで、超音波プローブおよび較正アーチファクトの相対的な向きが変更され得る。方法は、少なくとも1つの軸の周りの(例えば、少なくとも2つの軸のうちの少なくとも1つの周りの)、超音波プローブと較正アーチファクトとの間の複数の異なる相対的な向きに対して、超音波プローブによって受信される信号を測定することを含み得る。したがって、方法は、少なくとも2つの軸のうちの少なくとも2つの周りの、超音波プローブと較正アーチファクトとの間の複数の異なる相対的な向きに対して、超音波プローブによって受信される信号を測定することを含み得る。言い換えれば、測位装置は、超音波プローブおよび較正アーチファクトの相対的な向きが変更され得る、少なくとも第1の軸、および、任意選択で少なくとも第2の軸を含み得る。方法は、第1および第2の軸の、角度の向きの複数の異なる組み合わせで、信号を取得する超音波プローブを含み得る。したがって、方法は、第1の軸の周りの相対的な向きを変更すること、および、任意選択で、第2の軸の周りの相対的な向きを変更することを含み得る(測定間で)。これは、(プローブに関して)複数次元のデータ(例えば、パルスエコーまたは後壁のエネルギー情報)が取得されることを可能にする。
【0057】
本発明の別の態様によれば、測位装置に取り付けられた超音波プローブを含む装置が提供され、測位装置は、上記の方法のいずれかに従って、超音波プローブを制御するように構成され、および/または、上記の方法のいずれかに従って、超音波プローブからの信号/測定値を分析するように構成された、コントローラを含む。
【0058】
本発明の別の態様によれば、上記の方法のいずれかを実行するために、検査装置を制御するように構成された命令を含む、コンピュータプログラムコードが提供される。本発明の別の態様によれば、上記の方法のいずれかに従って、超音波プローブからの信号/測定値を分析するように構成された命令を含む、コンピュータプログラムコードが提供される。例えば、本発明の別の態様によれば、超音波プローブと較正アーチファクトとの間の複数の異なる相対的な向きで、超音波プローブによって得られた測定値から、超音波プローブの最適信号の少なくとも1つの軸を示す、少なくとも1つの較正パラメータを決定し、その後の使用のために、少なくとも1つの較正パラメータを記録するように構成された命令を含む、コンピュータプログラムコードが提供される。例えば、本発明の別の態様によれば、超音波プローブの最適信号の少なくとも1つの軸を示す、少なくとも1つのパラメータを含む記録を取得し、記録に基づいて、超音波プローブを配向するために、超音波プローブが取り付けられる測位装置を制御するように構成された命令を含む、コンピュータプログラムコードが提供される。例えば、本発明の別の態様によれば、超音波プローブの最適信号の少なくとも1つの軸を示すパラメータを取得し、パラメータに基づいて、超音波プローブと物体を、いかに相対的に方向付けるかを決定し、決定された向きに従って、超音波プローブを物体と係合させるように、超音波プローブが取り付けられる測位装置の動きを制御するように構成された命令を含む、コンピュータプログラムコードが提供される。例えば、本発明の別の態様によれば、物体に関する情報を決定するために、例えば、物体の後壁および/または材料に関する情報を決定するために、超音波プローブと物体との間の異なる向きで得られた、超音波測定値に関連する情報を分析するように構成された命令を含む、コンピュータプログラムコードが提供される。本発明の別の態様によれば、上記のようなコンピュータプログラムコードを含むコンピュータ可読媒体が提供される。
【0059】
次に、以下の図面を参照して、本発明の実施形態が、ほんの一例として、説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】例示的な超音波プローブの基本的な動作原理を概略的に示す図である。
図2】超音波厚さ測定の原理を示す図である。
図3】座標測定機(CMM)に取り付けられた超音波プローブを示す図である。
図4】超音波プローブの異なる機械部品を示す図である。
図5】超音波プローブの異なる電気モジュールを示す図である。
図6】超音波プローブの想定されたL波軸と較正されたL波軸の相違が、部品内のL波の伝播にどのように影響し得るかを示す図である。
図7】較正され得る超音波プローブを較正するためのプロセスの例示的なフローチャートを示す図である。
図8】軌道運動を示す図である。
図9】一連の軌道運動を示す一連の円錐と、関連する2Dエネルギービンマップを示す図である。
図10図9の2Dエネルギービンマップを分離して示す図である。
図11a】較正されていないプローブに対する、後壁エネルギー分布の極座標マップを示す図である。
図11b】較正アーチファクトの表面法線に整列する、較正されたL波軸の周りで測定された、較正済みプローブに対する、後壁エネルギー分布の極座標マップを示す図である。
図12a】L波軸が標的ベクトルと整列することを確実にするために超音波プローブがどのように方向付けられ得るかを示す図である。
図12b】L波軸が標的ベクトルと整列することを確実にするために超音波プローブがどのように方向付けられ得るかを示す図である。
図12c】L波軸が標的ベクトルと整列することを確実にするために超音波プローブがどのように方向付けられ得るかを示す図である。
図12d】L波軸が標的ベクトルと整列することを確実にするために超音波プローブがどのように方向付けられ得るかを示す図である。
図13a】平坦で、平行な後壁を持つ部品を示す図である。
図13b】一連の軌道スキャン(単一点で取得)から得られた、後壁エネルギー分布マップを示す図である。
図14a】平坦であるが平行でない後壁を有する部品を示す図である。
図14b】一連の軌道スキャン(単一点で取得)から得られた、後壁エネルギー分布マップを示す図である。
【0061】
例示的な超音波プローブの基本的な動作原理が、図1および図2を参照して説明されるであろう。図1は、外側本体4を含む超音波プローブ2を示す。圧電素子6および変形可能な結合素子8を含む、縦波(「L波」)変換器が、提供される。理解されるように、バッキング層およびマッチング層(波長板)などの、超音波プローブ内の他の一般的に使用される構成要素が、超音波プローブの一部を形成し得るが、それらは、簡略化のために、図1には示されない。物体10の厚さを測定するために、プローブ2および/または物体10は、変形可能な結合要素8と物体10の前面とを係合するように移動させられる。励起パルスが圧電素子6を横切って印加されると、超音波ビーム12が物体10に投射される。概略的に示されるように、この超音波ビーム12は、物体の後壁によって反射され、この反射されたビームは、超音波プローブによって(例えば、圧電素子6を介して)感知される。このプロセスは、パルスエコー測定、または、より口語的に「ピンギング」と称される。理解されるように、厚さ測定推定は、投射された超音波波形のタイム・オブ・フライト測定またはタイムディレイ測定を使用してなされ得る。
【0062】
図2は、圧電素子6に印加される一時的な高電圧励起パルスに応答して、変換器の能動圧電素子6によって受信される超音波波形の例である。「A-スキャン」プロットと称される、この時間領域波形は、ランダムな無相関の電子ノイズを抑制するために、多くの場合、そのような励起パルスの列(例えば、Nが16―32の範囲にあり得るNパルスのシーケンス)からの時間平均応答である。
【0063】
圧電素子6によって生成された初期励起パルスは、図2では「Tx-パルス」と表示される。この初期励起パルスは、検査L波が、結合要素8(ディレイラインとして機能する)に伝播し、結合要素材料(CL)内を音速で通ることをもたらす。圧電素子6に戻って受信された第1の反射ピーク(DL1)は、結合素子8と物体10との間の界面からの音の反射から生じる。結合要素8と物体10との間の界面からのこの反射(すなわち、DL1エコー)は、初期の送信パルス(Txパルス)が完全に減退したかなり後の時間に発生すると確認され得る。
【0064】
一部の超音波は、ディレイラインインターフェースで反射されて、物体10に入ることはないが、十分な割合の超音波が、それからその後の厚さ測定が行われ得る、測定可能な検査パルスとして物体10に送信される。変形可能な結合要素8内の音速は、物体10内の音速と比較して低速であり得、したがって、特に、物体が比較的薄い場合、ディレイライン/結合要素8からの第2の反射ピーク(DL2)が変換器に記録される前に、部品10の後壁の間で複数の反射が発生し得る。したがって、これらの後壁の反射は、また、図2の「A-スキャン」プロットで確認され得る、パルスBW1、BW2、およびBW3を提供する。したがって、1番目と2番目のディレイライン反射ピーク(DL1とDL2)の間のA-スキャン内で観察される時間窓は、プローブの主要な測定窓である。
【0065】
物体10の厚さは、いくつかの方法で、図2に示されるタイプのA-スキャンデータから計算され得る。実際には、そのような厚さの測定は、通常、測定されたA-スキャンからタイムディレイ情報が抽出され得る、3つの動作モードのいずれかを含む。これらの異なるモードは、通常、それぞれ、モード1、モード2、モード3と呼ばれる。モード1ゲージングでは、タイムディレイ測定は、励起パルス(t=0)と、物体10からの最初の後壁反射、または、一次エコーとの間で行われる。モード2ゲージングでは、タイムディレイ測定は、試験部品の表面近傍を表すインターフェイスエコーと最初の後壁反射の間で行われる。モード3ゲージングでは、タイムディレイ測定は、2つ以上の連続する後壁反射の間で行われる。モード3は、くっきりとした高SNRの複数の後壁エコーが観察される場合に最も効果的であり、それが、細粒金属、ガラス、セラミックなどの、低減衰高音響インピーダンス部品で最も実用的であることを示唆する。モード3は、また、それが、後壁やディレイラインの反射の絶対到着時間に依存しないという利点を有し、したがって、異なる結合モジュールの、結合とディレイラインにおける変動の影響を打ち消す。モード3は、また、外側のコーティング層を含む部品が測定されることを可能にする。任意の適切なモード(例えば、モード1、モード2、または、モード3)が、必要に応じて、使用され得るであろう。理解されるように、以下に説明する較正技術は、測定窓から信号情報を抽出するが、必ずしも、厚さ測定(例えば、厚さの計算)を実行することを伴わない。較正は、通常、最初の測定窓(例えば、DL1とDL2の間)から情報を抽出し得るが、方法は、また、信号/エコー情報が、後続の測定窓から抽出される場合(例えば、DL2と3番目のディレイライン反射ピーク「DL3」―図2には不図示―の間)、または、測定窓の任意の組み合わせから抽出される場合に適用し得る。
【0066】
図3を参照すると、測位装置200に取り付けられた超音波プローブ100が示される。測位装置は、この場合、座標測定機(「CMM」)の形態の移動構造を含む。CMM200は、ベース202を含み、ベース202は、フレーム204を支持し、フレーム204は、次に、キャリッジ206を保持し、キャリッジ206は、次に、クイル208(または「Z-カラム」)を保持する。モーター(不図示)は、クイル208を3つの相互に直交する軸X、Y、およびZに沿って移動させるために(例えば、Y軸に沿ってフレームを移動させ、X軸に沿ってキャリッジ206を移動させ、Z軸に沿ってクイル208を移動させることによって)提供される。
【0067】
クイル208は、関節式ヘッド210を保持し、これは、インデックスヘッドまたは連続ヘッドであり得るが、好ましくは、連続ヘッド(例えば、レニショウ パブリック リミテッド カンパニーから入手可能な、REVO(登録商標)ヘッド)である。理解されるように、連続ヘッドは、少なくとも1つの軸の周りの実質的に任意の角度での、それに取り付けられた装置の向きを可能にし、しばしば、ほぼ無限の数の角度の向きを提供すると説明される。また、必要に応じて、連続ヘッドの軸の周りの測定装置の向きが、測定中に(例えば、接触プローブが、検査される物体と接触し、測定情報を取得している間に)変更され得る。対照的に、インデックスヘッドは、それに取り付けられた測定装置がロックされ得る、離散的な数の定義された(「割り出し」)位置を有する。インデックスヘッドを使用すると、測定装置の向きが変更され得るが、測定データの取得中には変更され得ない。
【0068】
この実施形態では、関節式ヘッド210は、適切なベアリングおよびモーター(不図示)を介して、第1および第2の回転軸D、Eの周りで、それに取り付けられたプローブ100の回転を容易にする。
【0069】
関節式ヘッド210によって提供される2つの回転軸(D、E)と、CMM200の3つの直線(X、Y、Z)並進軸との組み合わせは、プローブ100が、5自由度(2つの回転自由度と3つの線形自由度)で、移動され/配置されることを可能にする。
【0070】
さらに、示されないが、測定エンコーダは、ベース202、フレーム204、キャリッジ206、クイル208、および、関節式ヘッド210の部分の相対位置を測定するために提供され得、その結果、ベース202上に配置されたワークピース10に対する測定プローブ100の位置が決定され得る。
【0071】
コントローラ220は、CMM容積内の、超音波プローブの位置および向きを制御するなど、CMM200の動作を制御し(手動で、例えば、ジョイスティック216などの入力デバイスを介して、または、自動で、例えば、検査プログラムの制御下で)、CMM200から情報(例えば、測定情報)を受信するために提供される。表示装置218は、コントローラ220とのユーザ相互作用を支援するために提供され得る。コントローラ220は、例えば、専用の電子制御システムであり得、および/または、パーソナルコンピュータを含み得る。
【0072】
示されるように、(プローブ100との通信を容易にするための)プローブインターフェース150が、例えば、コントローラ220に提供され得る。
【0073】
本発明は、様々な異なるタイプの超音波プローブの使用に適している。特許文献5、および、特許文献6は、本発明が使用され得る、様々なタイプの超音波プローブを記載する。例示のために、次に、一つの特定のタイプの超音波プローブ100が、図4に関連して、より詳細に説明されるであろう。図4に示される、超音波プローブ100は、2軸回転ヘッドへの取り付けのために用意される。もちろん、そのような超音波プローブを、他の位置決め/測定システム、例えば、ロボットアームに取り付けることが、可能であろう。
【0074】
超音波プローブ100は、CMMに取り付けるプローブ100の近位端に設けられる、本体部分102を含む基部モジュールを含む。本体102は、プローブに電力を供給し、制御データおよび起動コマンドをプローブに通信するために(例えば、超音波測定をスケジュールするために)必要な、電子機器を含み得る。超音波データ、および、厚さ測定結果を含んで、電力、および/または、制御データは、ロータリーヘッド通信チャネルを介して、および/または、無線で渡され得る。電力が、CMMを介して供給されるのではなく、電力は、例えば、本体部分102に配置された、電池によって供給され得る。
【0075】
細長い管104(例えば、剛性の炭素繊維チューブ)は、プローブの軸方向の長さに沿って、本体102から延びる。結合要素106、特に、変形可能な結合要素は、本体102の遠位の管104の端部に配置される。記載された実施形態では、変形可能な結合要素106は、親水性エラストマーを含む。任意選択で、変形可能な結合要素106は交換可能である(例えば、ねじまたはスナップフィットを介して取り付けられ得るであろう)。管104から突出する結合要素106の少なくとも一部は球形である。理解されるように、変形可能な結合要素は、プローブ内の変換器のウエアプレートと係合し得、変形可能な結合要素106は、結合要素とディレイラインの両方として機能し得る。変形可能な結合要素106は、それが係合する物体10の表面に容易に一致するように、柔らかくて弾性であり得る。
【0076】
使用中、超音波プローブ100は、変形可能な結合要素106を検査される物体10に接触させ、それによって、物体との音響結合を形成するために、CMM200によって移動させられる。超音波プローブ100は、(例えば、圧電素子を介して)超音波を生成し、これは、物体10に伝えられ、物体10の後壁によって反射される。反射された超音波は、超音波プローブによって感知され、分析されて、物体10の前壁から後壁までの距離を決定する(すなわち、物体10の厚さを決定する)。
【0077】
超音波検査装置は、任意の既知の方法で超音波を励起および受信し得る。超音波検査装置は、高周波で動作し得る。例えば、動作周波数は、5MHzより大きく、10MHzより大きく、または、より好ましくは、15MHzより大きいものであり得る。好ましい実施形態では、動作周波数は、約20MHzである。圧電素子を含み得る変換器は、好ましくは縦波(L波)を励起する。
【0078】
図5は、超音波プローブ100と共に(例えば、内部に)提供され得る、アナログおよびデジタル電子モジュールの例示的な実施形態を概略的に示す。概略的に示されるように、超音波プローブは、超音波変換器110、例えば、高電圧インパルシブ励起パルスの列、例えば、50―150Vの間、持続時間l/2fの負方向遷移(NGT)パルスの列によって駆動されるときに、高周波時間離散縦波波形(以下、「L波」と呼ぶ)を送信するための圧電素子を含む、パルスエコー超音波変換器を含む。
【0079】
高電圧(50―150V)の交流アナログ信号(例えば、NGTパルス)の繰り返しの列を生成し得る、アナログ「パルサー」回路112が提供される。パルサー112が提供されるが、より洗練されたデジタル波形シンセサイザーが、代わりに採用され、周波数または振幅変調波形を生成し、より減衰する環境でピエゾを駆動し得るであろう。パルサー112によって生成された高電圧パルスは、プローブの変換器内の圧電活性要素110を効果的に駆動して、必要な超音波波形150を出力するが、そのような薄くて壊れやすい圧電要素の最大電圧を超えることはない。各パルスの活性化は、FPGA114または同等のプロセッサから「パルサー」回路112に送信されるイネーブル信号によって、時間的に引き起こされ、正確に制御され得る。活性化のたびに、高速T/Rスイッチ116は、装置が、送信モードとより長い持続時間の受信モードとを瞬時に切り替えることを可能にし、受信モードの間、システムは、往復振動圧電素子112によって測定される、送信パルスに対する音響応答を取得し、デジタル記録する。
【0080】
対象の受信信号の振幅レベルが、大幅に変動することがあるかもしれない。したがって、これに対処することを試みるために、可変利得増幅器(VGA)118が、任意で提供されて、デジタル取得の前に信号を増幅するために、取得されたA-スキャン応答全体に利得を誘導し得るであろう。さらに、一部の材料での伝搬損失または減衰による各A-スキャン応答内の変動を均等化するために、距離振幅補正(DAC)として知られる自動利得制御(AGC)の形式が、また、実装され得る。次に、増幅されたA-スキャンは、適切に広いダイナミックレンジ(例えば、12ビット)のアナログ-デジタル変換器(ADC)120を使用してデジタル化され、その場合、サンプルレートが基本的に測定システムの時間分解能に影響を与えるので、ナイキストレートを超える十分なオーバーサンプリングが提供され、したがって、厚さ測定の精度、例えば、125MHz以上のサンプリングレートが、20MHz変換器に適し得る。ADC120からの符号化されたデジタル波形は、また、デジタルフィルター、例えば、変換器の動作周波数に一致する通過帯域を持つ低次FIR、を使用した、バンドパスフィルター処理を必要とし得る。Tx-Rx電子機器は、個々のA-スキャン内で観察され得る、電子ノイズ源を、できるだけ最小限に抑えるように設計される。そのような無相関ノイズは、N回連続して繰り返されるA-スキャン測定全体を平均化することによって最も効果的に抑制される(すなわち、理論上の√N SNR利得を提供する)。理解されるように、平均化は、以下に説明される較正方法の間に必ずしも行われるとは限らない。
【0081】
超音波変換器110(例えば、圧電素子)は、好ましくは(必ずしも必要ではないが)、管104の遠位端に向かって(すなわち、変形可能な接触要素106の近くの端部に)配置される。他の電子機器は、プローブ内のどこにでも、例えば、本体部分102に配置され得る。任意選択で、他の電子機器の少なくともいくつかは、プローブの外側、例えば、少なくとも部分的に、コントローラ220内に配置され得るであろう。
【0082】
理解されるように、超音波プローブは、機械軸103ならびに超音波軸105を有し得る。機械軸が何であるかは、プローブの設計によるであろう。通常、プローブの機械軸は、プローブの座標系に関して定義される。この場合、プローブは、関節式ヘッドに取り付けられ、プローブが、関節式ヘッドの軸の周りに回転すると、プローブの座標系は、プローブとともに回転する。プローブが、2つの垂直回転軸を有する関節式ヘッドに取り付けられる場合、プローブの座標系のX軸は、ヘッドの軸の1つ(例えば、図3に示されるE軸)に整列し得、プローブの座標系のZ軸は、他の軸(例えば、図3に示されるD軸)に整列し得る。Y軸は、右回りの直交系を完成させ、軸プローブの場合、機械軸は、プローブ座標系のZ軸(例えば、[0 0 1]T)として定義される。プローブのクランク傾斜バージョンの場合、機械軸は、このZ軸列ベクトルからの指定された一定のオイラー回転である。超音波軸は、超音波がプローブ座標系を移動する方向として定義される。それは、プローブの座標系内の固定ベクトルであり、機械軸と同様に、プローブが関節式ヘッドの軸の周りに回転すると、プローブとともに回転する。
【0083】
図1に概略的に示されるように、L波軸はプローブ2の機械軸3と整列すると想定され得、したがって、超音波プローブが、物体の前面に垂直な機械軸で、物体と係合すると、次に、L波軸が、物体の前面に垂直な部分に投射される。したがって、プローブの超音波軸が、プローブの機械軸と整列する理想的な状況で、プローブの超音波軸が、プローブ座標で固定された単位列ベクトルvuaとして定義される場合、vuaは[0 0 1]Tになるであろう。
【0084】
しかしながら、本発明者らは、L波軸が、プローブの機械軸と完全に整列する超音波プローブを製造することは非常に困難であることを確認した。むしろ、L波軸が、プローブの機械軸とわずかにずれるであろうことが(例えば、最大2―3度)、おそらくあるであろう。不整列の原因は、シャフトおよび/またはボディと、変換器の間の機械的不整列、および/または、音響不整列(超音波ビームが完全に対称でない場合など)を含む。図6は、想定されるL波軸(点線で示される機械軸103と同じであると想定される)と、較正されるL波軸105(実線で示される)との間のそのような不整列を概略的に示す。
【0085】
本発明者らは、想定されたL波軸と較正されるL波軸との間に小さな不整列が存在する場合でさえ、超音波プローブ装置の性能が損なわれることを発見した。特に、超音波プローブ装置から得られた測定の精度は、想定されるL波軸と較正されるL波軸との間の不整列によって悪影響を受け得ることが見出された。このような不整列は、後壁エコーを複雑にし、振幅を減少させる。
【0086】
例えば、最も強い最大振幅のL波によって移動される距離は、機械軸と超音波軸が完全に整列している場合よりも長くなるであろうし、前壁と後壁間の最短経路をとるのは、投射されたL波面の低振幅部分であろう。これは、厚さ測定値が、後壁エコーの到着時間または到着時間差を推定する信号処理アルゴリズムを使用して導き出される、低振幅で、潜在的に分散された後壁エコーをもたらし、これは、そのような高精度の厚さ測定システム(例えば、10ミクロン以内)において、測定精度を大幅に低下させ得る。
【0087】
この問題は、屈折により、いっそうひどくなる。つまり、L波が表面に垂直に物体に入射しない場合、それは、スネルの法則に従って法線から屈折するであろうし、屈折の程度は、変形可能な結合要素と検査対象内の、入射角と音速に依存する。
【0088】
本発明者らは、L波軸を見つけるように超音波プローブを較正することにより、機械/想定軸と、較正されるL波軸との間の不整列に関連する、そのような問題が、大幅に減少させられ得ることを見出した。次に、図7に示されるフローチャートを参照して、本発明の一例の実施形態に従った、超音波プローブ100を較正する方法400が説明されるであろう。
【0089】
要約すると、較正プロセスは、超音波プローブを、既知の形状の較正アーチファクト20(例えば、平坦および平行である前壁および後壁などの、既知の配置の前壁および後壁を有する、金属物体)に置き、高速で、繰り返しのパルスエコー測定(「ピンギング」)を実行しながら、較正アーチファクトの面法線の周りで複数の軌道運動を実行し、超音波軸と機械軸の間の不整列を示す、反射後壁信号強度情報の角度分布を取得することを伴う。説明されるこの特定の実施形態では、2組の軌道運動が実行され、第1の組は、粗い測定用で、第2の組は、細かい測定用である(以下でより詳細に説明される)。したがって、説明される実施形態では、図7に示されるプロセスの2つの反復が行われる。ただし、理解されるように、これは、必ずしもそうである必要はなく、1回のみ(または2回以上)の反復が行われ得るであろう。さらに、理解されるように、軌道運動以外の探索運動が実行され得るであろう。
【0090】
図8に簡単に目を向けると、これは、軌道運動中に超音波プローブ100がたどり得る経路の例を概略的に示す。軌道運動の範囲は、説明のために誇張されている。また、説明を容易にするために、関節式ヘッド210は、省略されている。示されるように、超音波プローブは、本体102(したがって現在の超音波軸)が較正アーチファクトの面法線Nの周りを、円形に動かされる間、結合要素106は、較正アーチファクトの一点上で静止したままであることを確実にする方法で制御される。そのような制御は、超音波プローブの長さの知識、例えば、事前の較正から、および、変形可能な結合要素106の既知のたわみを達成することによって、達成され得るであろう。示されるように、動きは、超音波プローブの先端(すなわち、結合要素)が、超音波プローブと較正アーチファクト20との間の相互作用点で、面法線Nに垂直に延びる2つの仮想垂直軸A、Bの周りに回転させられることをもたらす。これは、(プローブに関して)1つより多い次元のデータ(例えば、パルスエコーまたは後壁エネルギー情報)が取得されることを可能にする。したがって、L波軸に関する情報は、超音波プローブに関して、1つより多い数の自由度/次元について決定され得る。理解されるように、D軸およびE軸の周りの同期回転(往復の方法で)、ならびに、Z軸およびY軸での関節式ヘッドの移動(それが円形に駆動されるように)は、そのような軌道運動を行うために必要とされるであろう。
【0091】
説明された実施形態では、軌道運動の各組は、一組の円錐を効果的に形成する。図9は、面法線を表すベクトル(黒い矢印として示される)の周りの1組の円錐(5つ)を示す。
【0092】
これらの2組の円錐は、本質的に、2組の複数の角度(面法線と各円錐の間)として説明される。以下の表1は、使用され得るであろう例示の複数の角度を示す。
【0093】
【表1】
【0094】
図7のフローチャートには明示的に示されないが、理解されるように、方法は、較正アーチファクトの前壁と後壁に関するデータを取得することを含み得るであろう。例えば、方法は、例えば、位置測定プローブ、例えば、タッチトリガープローブを用いて、較正アーチファクト20の前壁の位置および向きを測定することを含み得るであろう。これは、較正アーチファクトの面法線が確立され得、CMM座標系でのプローブの動き/軌道が定義され得るようにするためである。図7では、較正アーチファクトは「UPA」と称され、超音波プローブは「RUP」と称される。後壁が、平坦で、前壁に平行であると想定され得る場合は、これを測定により確認する必要はない。そのような仮定がなされ得ない場合、方法は、また、較正アーチファクトの後壁を測定することを含み得る。
【0095】
超音波軸の較正の開始時に、ステップ402で、超音波軸の結果vuaは、[0 0 1]Tであるように初期化され、これは、ステップ404で、コントローラにロードされる。したがって、第1の反復では、vuaは、不整列が存在しないかのように設定され、第2の相互作用で(以下でより詳細に説明されるように)、vuaは、第1の反復の結果から更新され、第1の反復中に見出された不整列を調整する。
【0096】
ステップ406は、軌道運動を実行するために、CMMを制御する方法を決定することを含む。これは、DおよびEの関節式ヘッド角度を決定することを伴う。理解されるように、軌道運動のステップは、CMM座標におけるベクトルvcmmに関して定義され得るため、このベクトルを実現するために、DおよびEの関節式ヘッド角度が、計算される必要がある(その結果、vuaがvcmmに整列する)。次に、これらのD角度とE角度がコントローラに渡され、コントローラが、それに応じて、超音波プローブの方向を制御し得る。
【0097】
超音波プローブが軌道運動を実行している間、各パルスエコー測定(または「ピング」)について、A-スキャンおよびDおよびE角度が、ステップ408で記録される。ステップ410において、一組の軌道運動から記録されたデータは、以下により詳細に説明されるように、新しいvuaを決定するために処理される。その後、ステップ412で、vuaが更新される。ステップ414で、このプロセスを繰り返すかどうかが決定される。この場合、ここまでは粗い測定のみが実行されたため、このプロセスが繰り返され、より細かい測定の第2の組が取得されるべきである。
【0098】
異なる解像度の2組の軌道運動を有することは、超音波(例えば、L波)軸が、第1の組の運動中に、すばやく、かつ、粗く識別され得、次に、第1の組の運動の後に決定された結果に基いた、はるかに細かい探索が、第2の組の運動中に実行され得ることを意味する。そうすることにより、較正時間と精度のバランスが、よく維持される。ただし、理解されるように、これは必ずしもそうである必要はなく、1つの組の運動のみが実行され得るであろう。また、理解されるように、定義された探索経路運動が完了する前に、関心のある局所ピークが発見された場合、探索運動(例えば、軌道運動)は、その完了前に中断され得る。
【0099】
上に示されるように、ステップ410でのデータの処理は、超音波プローブが「ピンギング」して軌道運動を実行している間に、並行して行われ得る。
【0100】
しかしながら、理解されるように、これは、必ずしもそうである必要はなく、例えば、一組のすべての軌道運動が、例えば、終了した後に、行われ得るであろう。
【0101】
説明された実施形態では、記録および処理の目的で、較正アーチファクトの前面に関するエネルギービンが、定義/使用される。図10は、第1の組の軌道運動のエネルギービンを概略的に示す。各スポークは、その隣接するスポークから5°離れ(この値は、すべての組の軌道運動で固定される)、スポークの総数を72にする。各円は、表1の最初の行、最後の列にリストされる角度の、正弦値と同じ半径から生成される。この実施形態では、エネルギービンマップは、2Dマップであり、DおよびE角度に対する後方壁エネルギーが、以下に説明されるように、2Dマップに投影される。しかし、理解されるように、これは必ずしもそうである必要はない。例えば、3Dエネルギービンマップが使用され得るであろう。
【0102】
ステップ408で、各ピングについて、後壁エネルギーが記録され、最も近いエネルギービンに割り当てられ、そのプロセスは、以下のいくつかの段落で、より詳細に説明される。ノイズに対する感受性を減少させるために、各軌道運動は、何度も実行され得、複数の結果が各ビンに保存され、したがって、各ビンは、平均のエネルギー値を表し得る。また、各ビンでの結果を取得するために使用される測定数が保存され得、そのような情報は、現在の更新される平均エネルギーを計算するために使用される。極座標グリッドの解像度を定義することは、離散的なエネルギー分布マップが決定されることを可能にする。しかし、理解されるように、このマップの解像度は、任意のよく確立された内挿法を使用して、経験的に適合されるマップが使用された後、増加/改善され得るであろう。また、測定された分布内に存在し得るであろうノイズは、後処理フィルタリングまたは平滑化によって、低減または除去され得、したがって、抽出されたエネルギーピークの信頼性または精度を潜在的に向上させることが、留意される。
【0103】
各ピングで後壁エネルギーを抽出することは、任意の適切な信号強度/品質インジケータを抽出することを含み得る。したがって、各ピンで、後壁エネルギーを抽出することは、生の超音波A-スキャン信号測定値から、任意の適切な信号の振幅または統合信号エネルギー測定値を抽出することを含み得る。例えば、測定窓として知られる、各A-スキャンの時間間隔内で、較正アーチファクトの後壁からの1つまたは複数の時間離散エコーが観察されるであろう。現在の後壁エコーの振幅、持続時間、到着時間、または、1つまたは任意のタイムゲートされる組み合わせの時間積分エネルギーに関連する、任意の信号計量が使用され得る。例えば、最初の最大振幅の後壁エコーのエンベロプのピーク振幅は、ヒルベルト変換、または、二乗則検出器やティーガ-カイザエネルギー演算などの、他の適切な復調技術を使用して抽出され得る。このピークは、ピングが発生した(コントローラによって報告される)DおよびE角度での、A-スキャンの選択されたエネルギー計量として定義され得るであろう。記録されたD角度とE角度を使用して、次に、ベクトルvcmm(超音波がCMM座標で移動する方向のベクトル)が、例えば、式1に示されるような変換によって計算される。
【0104】
【数1】
【0105】
ここで、Rは3×3の回転行列であり、ここで、vuaは現在の超音波軸の結果であり、プローブ座標の列ベクトルである。
【0106】
現在、ベクトルvcmmは、3D座標のベクトルであるため、vcmmは、較正アーチファクトの表面法線vsnによって定義される平面(較正アーチファクトの前面など)に投影される。これにより、その平面上の極座標系が定義される。極は、円錐が平面と交差する点として定義される。極軸vpolarは、最初のvcmmの平面への投影として定義される。各vcmmの投影点は、最も近いエネルギービンに割り当てられる。言い換えると、vcmm投影点は、vcmmベクトルが平面と交差する点である。その投影点に最も近いエネルギービンが特定され、そのビンの平均エネルギーが更新されるであろう。
【0107】
図11aは、一組の軌道運動が完了した後の、超音波プローブ100についての例示的な後壁エネルギー分布を概略的に示す。見られるように、較正されないプローブに対して、最高の平均エネルギーは対称的ではなく、これは、機械軸とL波軸の不整列を表している。図11aのマップは、較正されたプローブに対して取得された(そして、それに対して、較正されたL波軸の周りで軌道運動が発生した)、図11bのマップと対比されるべきである。理解されるように、図11bの較正されたマップ分布は、CMM容積内の任意の位置および方向に配置されたアーチファクトで、較正されたプローブから得られ得るであろう。説明された実施形態では、後壁エネルギー分布は、較正アーチファクトの前面に関して定義された、2Dマップを含む。理解されるように、これは、必ずしもそうである必要はなく、例えば、エネルギービンは、3D空間で定義され得る。
【0108】
各組みの軌道運動が終了した後、最も高い平均エネルギーを有するエネルギービンが識別されるであろう。例えば、すなわち、その方位角Φmaxと半径rmaxが識別される。次に、それは、2Dから3Dに変換され、結果は、CMM座標のベクトル(Vmax)であり、最高のエネルギーを与えるベクトルを表す。したがって、変換されると、CMM座標のベクトルであるvmaxが、あなたに、最大のエネルギーを与える。次に、これ自体が、プローブ座標に変換される必要がある。したがって、DおよびE角度が計算され、その結果、vuaがvmaxに整列する。次に、D角度とE角度に基づいて、CMM座標からプローブ座標へ、回転行列RTが計算される。次に、更新された超音波軸の結果vua-new(プローブ座標での)が、次のように計算される。
【0109】
【数2】
【0110】
したがって、vuaのxおよびy成分は、今や、ゼロ以外になる。この場合、vuaと[0 0 1]Tの間の角度は、プローブがどれだけずれているかを定量化し、一方、そのx成分とy成分は、ずれの方向を示す。したがって、vuaは、プローブの座標系で、L波の較正された軸の定義を提供する。
【0111】
超音波プローブのL波が、想定される軸(例えば、プローブの機械軸)と完全に一致している場合、または、それが、すでに正しく較正された(つまり、現在のvuaが正しい)場合、vmaxは、較正アーチファクトの表面法線と、同じ/非常に近くなる。それ以外の場合、vmaxは、表面法線から逸脱し、これら2つのベクトル値に基づいて、現在のvuaが更新され得、それは、超音波軸(プローブ座標での)を、より適切に表すもの(vua_new)になる。
【0112】
したがって、要約すると、上記のプロセスは、超音波プローブと較正アーチファクトの相対的な向きを変更し、異なる角度の向きで受け取られた後壁エネルギーを分析することによって、L波の較正された軸が決定されることを可能にする。上記の実施形態では、超音波プローブは、円形の軌道様式で移動させられ、それは、表面法線に対して複数の異なる角度で繰り返される。しかしながら、理解されるように、これは必ずしもそうである必要はなく、異なる角度の向きに対して後壁エネルギーに関するデータを取得するための、他の(例えば、反復的な)プロセスが、使用され得る。理解されるように、探索運動(すなわち、プローブの向きが制御される方法)は、任意のパターンに従い得、円形の/軌道運動である必要はない。例えば、超音波プローブは、同様の測定データを達成するために、実質的に前後の態様で(結合要素が較正アーチファクト上に静止している状態で)、揺動され得る。また、データが、2Dマップに保存/表示されるのではなく、探索/較正手順は、他の方法で、保存/表示され得るであろう。例えば、測定データは、1D列/プロット/時系列に記録され得るであろう。さらに、任意選択で、平均化は、必ずしも実行される必要はない。例えば、方法は、後壁時系列の最大値を使用してN反復探索を実行し、N番目の反復に基いて、時系列における降順の「ステップパターン」で終わることを含み得るであろう。
【0113】
また、代替の実施形態では、超音波プローブは、較正アーチファクトの表面から後退させられ、方向を変えられ、較正アーチファクトの表面に戻されて、別の測定を行い得るであろう。さらに、超音波プローブの結合要素が、各測定で、静止し/同じポイントに再係合することが有利であり得るけれども、これは、較正アーチファクトの前壁と後壁の関係が既知であり、処理に考慮される限り、必ずしもそうである必要はない。
【0114】
必要に応じて、必要なピークエネルギーベクトルを推定するための、エネルギーマップの補間および/または平滑化が使用され、行われる実際の測定の数を減らし、それによって較正プロセスの速度を向上させ得る。
【0115】
超音波プローブのL波の較正された軸の知識は、いくつかの理由で、有利であり得る。較正されたプローブは、さらに一貫して最適な後壁エコーを返し、信号対雑音比を改善し、これは、本質的に、厚さ測定の精度を向上させる。言い換えれば、超音波プローブのL波の較正された軸の知識は、超音波プローブをが、最もくっきりとした信号を取得するように方向付けられることを可能にする。例えば、検査される物体上の所与の点に対して、L波が物体内に沿って伝播するための、所望の伝播ベクトルがあり得、そこから、標的検査軸/ベクトルが決定され得る。標的ベクトルは、部品の材料特性を含む、部品の想定される/既知のジオメトリに基づいて、また、以下で詳しく説明されるように、スネルの法則を考慮して、L波が部品に入るとき、L波の任意の予想される屈折が補償され得るように決定され得る。標的ベクトルが決定されると、上記の較正手順からの、超音波プローブのL波と機械軸の関係の知識に基づいて、関節式ヘッドのD角度とE角度を計算することが可能であり、それは、L波が、物体内の所望の伝播ベクトルに沿って伝播することを確実にする。
【0116】
図12aに示される例を挙げると、物体内を伝搬するためのL波にとっての所望の伝搬ベクトルとして、標的ベクトルが決定され、それは、この場合、検査される部品の前壁に垂直である。したがって、図12bは、上記の較正手順からの超音波プローブのL波と機械軸の間の関係/不整列の知識に基づいて、L波が物体内の所望の伝播ベクトルに沿って伝播することを確実にするために、いかにして超音波プローブを方向付けるかを決定することが可能であるかという、方法を示す。
【0117】
上記のように、標的ベクトルの計算は、L波がワークピースに入るときの屈折の影響を考慮に入れ得る。例えば、図12cに示されるように、所望の伝播ベクトルが前壁に垂直でない場合は、所望の標的ベクトルを決定するときに、屈折の影響が考慮される必要がある。図12cに示されるように、スネルの法則に基づいて、超音波は、ワークピース10’に入るときに、表面法線Nから離れて屈折するであろうと予測される。したがって、標的ベクトルは、これを考慮するように決定される。次に、上記の較正手順からのL波軸の知識に基づいて、超音波プローブの機械軸が、標的ベクトルからオフセットされ、L波が物体内の所望の伝播ベクトルに沿って伝播することを確実にする。したがって、較正されたプローブは、また、ウェッジ形状の改善された測定を可能にするであろうし、その場合、スネルの法則によって予測された入射プローブベクトルは、経験的検出モード測定とより密接に一致するであろう。
【0118】
理解されるように、図12bの場合、また、図12dの場合において、超音波プローブの機械軸は、超音波プローブの較正されたL波軸が標的ベクトルと整列することを意味する方法で、標的ベクトルからオフセットされる。屈折がない図12bの場合、L波は、標的ベクトル(図示された)と整列するベクトルに沿って物体内を伝播する。図12dの場合、超音波プローブの較正されたL波軸は、決定された標的ベクトルと整列するが、屈折(標的ベクトルを決定するときに考慮された)により、L波は、超音波プローブの先端と物体との間の界面で屈折し、したがって、物体内の所望の伝播ベクトル(標的ベクトルと整列しない)に沿って伝播する。
【0119】
本発明者らは、較正されたプローブを用いても、標的ベクトルの周りを探索することが、さらに最適な信号が得られ得るかどうかを確認するために、有益であり得るであろうことを発見した。例えば、検査される実際のワークピースが完全な部品ではない場合や、屈折の影響を正確に予測または測定することが難しい場合があるであろう。したがって、検査装置は、L波軸が最初に標的ベクトルと整列するように、部品に超音波プローブを置くように構成され、次に、異なる角度の向きで、より強い後壁信号を探索するように構成され得るであろう。例えば、装置は、上記と同様の方法で、一連の軌道運動を実行し、受信された後壁エネルギーを分析して、さらに強い後壁信号を提供する、DおよびE角度の別の一組が存在するかどうかを決定するように制御され得るであろう。本発明に従って較正されたプローブを使用すると、プローブが較正されていない場合よりも、探索が、より的を絞られ得、それにより速度の利点を提供する。
【0120】
さらに、較正されたプローブの場合、実行されるどの厚み測定も必要とせず、内部部品の形状を、個別に測定、分類、または認識するために使用され得る、有用な後壁エネルギー分布情報(例えば、極座標マップ)を集める、検出モード測定を実行することが可能であることも注目され、これは、単一の測定点から実行され得るであろう。例えば、超音波軸較正プローブからの検出モード測定は、平坦な、および/または、平行な形状が、平坦なくさび、または、湾曲した形状と区別されることを可能にする。平行形状とくさび形状の自動認識は、これが、システムが、厚さが得られる最適な時間遅延推定アルゴリズムを、自動的に選択することを可能にするので、測定の精度と信頼性を向上させ得る。超音波較正されたプローブからの検出モード測定は、くさび角が、単一の測定点から推定されることを可能にするであろう。
【0121】
したがって、本発明者らは、また、実際に厚さの測定/計算を実行する必要なく、後壁に関する多くの情報を取得するための技術を考案した。例えば、彼らは、超音波プローブのL波軸の知識があれば、後壁エネルギーのマップを取得して分析することが可能であることを発見し、これは、後壁、例えば、その外観、例えば、その向き、および/または、形状など、後壁に関する情報の範囲を提供し得る。例えば、後壁の領域のエネルギー分布マップ(例えば、極座標マップ)を取得するために、単一点から、さまざまな角度の向きで一連の測定が実行され得る(例えば、上記と同様の方法での軌道スキャンを介して)。
【0122】
例えば、図13aは、平坦で、平行な後壁を持つ部品を示し、図13bは、部品の前壁の法線を中心とした一連の軌道スキャンから得られた後壁のエネルギー分布マップ(単一点で取得)を示す。図14aは、平坦であるが、平行ではない後壁を持つ部品を示し、図14bは、部品の表面法線を中心とした一連の軌道スキャンから得られた後壁エネルギー分布マップ(単一点で取得)を示す。見られ得るように、これらの後壁のエネルギー分布は異なる。そのため、エネルギーマップは、部品の形状に特徴的である。したがって、後壁の形状を決定するために、後壁のエネルギー分布が、分析され得る。例えば、対称で、集中したエネルギー分布は、平坦で、平行な後壁を示す。
【0123】
これだけでなく、図14bに示すように、前壁と後壁が平行でない部品の一連の軌道スキャンを実行する較正されたプローブから得られた後壁エネルギーマップは、2つのピーク、第1のピークP1と第2の(より小さい)ピークP2、を有することが、見られ得る。2つのエネルギーピークは、各A-スキャンの測定窓内で適切なタイムゲーティングを使用して抽出され得る。第1のピークP1は、より速いL波が、平坦な後壁の最も近い位置から戻る標的ベクトルに関連し、第2のより広い角度とより小さなピークP2は、より遅いせん断波(S波)が後壁の最も近い点から戻る標的ベクトルに関連する。検査部品の形状に特徴的な、較正済みプローブに従った、そのような極座標エネルギー分布マップから、部品表面の法線とL波およびS波のピークとの間の角度が一緒に使用されて、材料内でのL波のS波に対する音の速度の比の独立した推定が、直接推定されることを可能にする(例えば、厚さの測定や時間遅延の推定が実行されることなく)。
【0124】
そのため、縦波のせん断波に対する音速の比率が、ポアソン比に関連し得るので、部品に関するさらなる材料特性情報(例えば、弾性特性)が推測され得る。さらに、部品材料の密度が推定される場合、材料の弾性率が、また、推定され得るであろう。
【0125】
理解されるように、標的ベクトルに従ってプローブを配向する方法を決定し、後壁情報を取得するための上記の技術は、プローブの超音波軸が既知であるか、自信を持って想定され得る場合(例えば、プローブが、非常に高い公差で構築され、したがって、機械軸と超音波軸が整列するか、特定の関係を有することが既知であるので)、上述の較正技術に従ってプローブを較正する必要なくして、使用され得るであろう。
【0126】
上記の実施形態は、超音波プローブを使用して部品の厚さを測定することを説明する。理解されるように、超音波プローブは、部品の欠陥の検出/測定などの、他の目的に使用され得る。欠陥の検出/測定に使用される超音波プローブの較正に、同じ較正プロセスが使用され得る。
【0127】
また、既知の形状のくさび部品の検出モード測定は、部品材料の音速を推定するために使用され得るであろう(例えば、後壁の時間遅延推定を行う必要なく)。部品材料のそのような音速は、結合要素の音速の知識から決定され得るであろう(例えば、それは、特許文献5、および、特許文献6で説明されるように、既知であり、または、測定され得るであろう)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12a
図12b
図12c
図12d
図13a
図13b
図14a
図14b