(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】保護コーティング組成物およびそれを含むコーティングされた金属基材
(51)【国際特許分類】
C09D 183/02 20060101AFI20240607BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20240607BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240607BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240607BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
C09D183/02
C09D7/20
C09D7/61
C09D7/63
C09D183/04
(21)【出願番号】P 2021552535
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 US2020020009
(87)【国際公開番号】W WO2020180575
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-13
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508229301
【氏名又は名称】モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Momentive Performance Materials Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】ジャナ,ラージクマール
(72)【発明者】
【氏名】プラサド,ラガヴェンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ムルゲサン,カーシケヤン
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-316397(JP,A)
【文献】特開2003-226806(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157149(WO,A1)
【文献】特開2008-020756(JP,A)
【文献】特開2000-281970(JP,A)
【文献】特開2001-181572(JP,A)
【文献】国際公開第2019/027991(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも1つのアルコキシシラン、
(ii)複数の金属酸化物、ここで金属酸化物は、(a)アルミナ、(b)ジルコニア、および(c)シリカ;金属酸化物(a)、(b)、および(c)の総量は、コーティング形成組成物の1から50重量パーセントであり;
(iii)少なくとも1つの水混和性有機溶媒;
(iv)少なくとも1つの加水分解触媒;
(v)水;
(vi)任意選択で
のマット剤
、ここでマット剤は存在する場合、無機化合物のマット剤から選択される;および
(vii)任意選択での少なくとも1つの縮合触媒、
を含むコーティング形成組成物。
【請求項2】
少なくとも1つのアルコキシシランは、式A、式B、または式Aおよび式Bの混合物、
(X-R
1)
aSi(R
2)
b(OR
3)
4-(a+b) 式A
(R
3O)
3Si-R
5-Si(OR
3)
3 式B
またはそれらの加水分解および縮合生成物からなる群から選択され、
ここで
Xは有機官能基であり;
各R
1は、1つまたは複数のヘテロ原子を任意選択で含む1から12個の炭素原子の直鎖状、分枝状または環状の二価有機基であり;
各R
2は、独立して、1つまたは複数のハロゲン原子を任意選択で含む、1から16個の炭素原子のアルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基であり;
各R
3は、独立して、1から12個の炭素原子のアルキル基であり;
R
5は、1つまたは複数のヘテロ原子を任意選択で含む、1から12個の炭素原子の直鎖状、分岐状、または環状の二価有機基であり;そして
下付き文字aは0または1であり、下付き文字bは0、1または2であり、そしてa+bは0、1または2である、
請求項1に記載のコーティング形成組成物。
【請求項3】
式AおよびBのアルコキシシランの総量がコーティング形成組成物の80重量パーセントを超えない、請求項2に記載のコーティング形成組成物。
【請求項4】
式Aのアルコキシシランにおいて、aは1であり、そして有機官能基Xは、メルカプト、アシルオキシ、グリシドキシ、エポキシ、エポキシシクロヘキシル、エポキシシクロヘキシルエチル、ヒドロキシ、エピスルフィド、アクリレート、メタクリレート、ウレイド、チオウレイド、ビニル、アリル、-NHCOOR
4または-NHCOSR
4基であり、ここでR
4は、1から12個の炭素原子を含む一価のヒドロカルビル基、チオカルバメート、ジチオカルバメート、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、トリスルフィド、テトラスルフィド、ペンタスルフィド、ヘキサスルフィド、ポリスルフィド、キサンテート、トリチオカーボネート、ジチオカーボネートまたはイソシアヌラト基、または他の-Si(OR
3)基であり、ここでR
3は前記にて定義されたとおりである、請求項2から3のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項5】
式Bのアルコキシシランにおいて、R
5は、O、S、およびNR
6からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む二価の炭化水素基であり、ここでR
6は、水素または1から4個の炭素原子のアルキル基である、請求項2から4のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項6】
式Aのトリアルコキシシランは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリブトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n-ペンチルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、イソオクイルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーであり、そしてここで式Bのトリアルコキシシランは、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミンおよびビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミンからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである、請求項2から5のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項7】
金属酸化物(a)、(b)、および(c)の総量が、組成物の重量に基づいて10から40重量パーセントである、請求項1から6のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項8】
アルミナ対ジルコニアの重量比が9:1から1:9である、請求項1から7のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項9】
金属酸化物(c)対アルミナおよびジルコニアの合計の重量比が99:1から1:99である、請求項1から8のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項10】
アルミナが、組成物の重量に基づいて0.1から20重量パーセントの量で存在する、請求項1から9のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項11】
ジルコニアが、組成物の重量に基づいて0.1から20重量パーセントの量で存在する、請求項1から10のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項12】
シリカが、組成物の重量に基づいて5から30重量パーセントの量で存在する、請求項1から11のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項13】
組成物が水混和性有機溶媒を含む、請求項1から12のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項14】
水混和性有機溶媒が、アルコール、グリコール、グリコールエーテルおよびケトンからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである、請求項1から13のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項15】
少なくとも1つの酸加水分解触媒は、硫酸、塩酸、酢酸、プロパン酸、2-メチルプロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、2-エチルヘキサン酸、ヘプタン酸(エナント酸)、ヘキサン酸、オクタン酸(カプリル酸)、オレイン酸、リノール酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキシル酢酸、シクロヘキセンカルボン酸、安息香酸、ベンゼン酢酸、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、2-ブテン二酸(マレイン酸)、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソアノイック酸、バーサティック酸、およびアミノ酸からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである、請求項1から14のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項16】
コーティング形成組成物がマット剤を含む、請求項1から15のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項17】
マット剤は、二酸化ケイ素、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、炭酸カルシウム、タルク、粘土、か焼カオリン、リン酸カルシウム、またはそれらの2つ以上の混合物から選択される、請求項16に記載のコーティング形成組成物。
【請求項18】
マット剤が、ハロシラン、アルコキシシラン、シラザン、シロキサン、またはそれらの2つ以上の組み合わせで官能化されたシリカである、請求項16に記載のコーティング形成組成物。
【請求項19】
マット剤が、組成物の重量に基づいて0.1から10重量パーセントの量で存在する、請求項16から18のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項20】
コーティング形成組成物が、少なくとも1つの縮合触媒(vi)を含む、請求項1から19のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項21】
少なくとも1つの縮合触媒は、式[(C
4H
9)
4N]
+[OC(O)-R
7]
-のテトラブチルアンモニウムカルボキシレートからなる群から選択され、ここでR
7は、水素、1から8個の炭素原子を含むアルキル基、および6から20個の炭素原子を含む芳香族基からなる群から選択される、請求項20に記載のコーティング形成組成物。
【請求項22】
少なくとも1つの縮合触媒は、テトラ-n-ブチルアンモニウムアセテート、テトラ-n-ブチルアンモニウムホルメート、テトラ-n-ブチルアンモニウムベンゾエート、テトラ-n-ブチルアンモニウム-2-エチルヘキサノエート、テトラ-n-ブチルアンモニウム-p-エチルベンゾエート、テトラ-n-ブチルアンモニウムプロピオネート、およびTBD-アセテート(1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デス-5-エン(TBD))からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである、請求項20に記載のコーティング形成組成物。
【請求項23】
25℃で3.0から7.0cStkの範囲内の粘度を有する、請求項1から22のいずれかに記載のコーティング形成組成物。
【請求項24】
物品の表面に配置された、請求項1から23のいずれかに記載のコーティング形成組成物から形成されたコーティングを含む物品。
【請求項25】
コーティングされた表面が、金属、金属合金、金属化部分、1つまたは複数の保護層を有する金属または金属化部分、金属化プラスチック、金属スパッタリングされたプラスチック、またはプライミングされたプラスチック材料から形成されている、請求項24に記載の物品。
【請求項26】
コーティングされた表面が、鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、陽極酸化アルミニウム、マグネシウム、銅、青銅、クロム、またはこれらの金属の2つ以上の合金から選択される金属を含む、請求項24に記載の物品。
【請求項27】
物品の表面にコーティングを形成する方法であって、
請求項1から23のいずれかに記載のコーティング形成組成物を物品の表面に適用すること;および
コーティング形成組成物を硬化させること、を含む方法。
【請求項28】
コーティング形成組成物を硬化させることは、80から200℃の温度で硬化させることを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項1から23のいずれかに記載のコーティング形成組成物を形成する方法であって、
a)少なくとも1つの加水分解触媒をアルコキシシランに加えること;
b)金属酸化物(a)、(b)、および(c)、ならびに水をステップ(a)の混合物に加えること;
c)ステップ(b)から得られる混合物に少なくとも1つの水混和性溶媒および追加の加水分解触媒を加えること;
d)25℃で3.0から7.0cStkの範囲内の粘度を有する硬化性コーティング形成組成物を提供するのに有効な高められた温度および期間の条件下で、ステップ(c)から得られる混合物をエージングすること;および
e)任意選択で、前記のステップのいずれかで、その間に、またはその後に縮合触媒を加えること、を含む方法。
【請求項30】
マット剤を組成物に加えることを含む、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面保護コーティング組成物、例えば、化成および不動態化コーティング、より具体的には、アルコキシシランに由来する硬化性コーティング組成物、およびそれを用いて基材をコーティングするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外部用途の金属および合金は、酸塩基反応および電気化学的腐食によって表面を腐食する可能性のある条件にさらされることが多く、これは機械的強度の損失を引き起こし、そして仕上げ金属表面の外観を低下させることになり得る。アルミニウムおよびアルミニウム合金は、そのような材料(軽金属)の重量対強度比のために、外部用途に好ましい材料である。ただし、アルミニウムは非常に柔らかい金属であるため、機械的な損傷を受けやすくさせる。例えば、それは、擦り傷につながる乏しい耐摩耗性を示し得る。アルミニウムはまた、酸性および塩基性条件への暴露による腐食の影響を受けやすくなっている。
【0003】
これらの問題に対処するための1つのアプローチは、アルミニウム材料を陽極酸化と呼ばれる電気化学的プロセスに供することであり、これは酸化アルミニウムの均一な層を堆積させた後、陽極酸化表面の細孔を閉じるためシーリングすることである。陽極酸化層は、陽極酸化されていないアルミニウムと比較して、比較的優れた耐摩耗性、耐食性、およびpH耐性(pH4-9)を示す。ただし、陽極酸化プロセスは、多段階で時間がかかり、化学的に集中的なプロセスである。また、高度に酸性および塩基性の条件に対する耐性など、厳しい性能が望まれる一部の要求の厳しい用途には、陽極酸化だけでは不十分なことがあり得る。この場合、これらの腐食条件から陽極酸化層を保護するために、保護コーティング層がしばしば適用され、これは、良好な光学的および耐摩耗特性に加えて、下層にバリアを提供することにより、極端な酸性および塩基性条件に対する耐性と電気化学的腐食に対する耐性を提供できる。クロムおよび重金属リン酸塩化成コーティングは、塗装前に金属表面を調えるために使用されてきた。しかしながら、クロムの毒性や、産業廃棄物として小川、河川、その他の水路に排出されるクロム酸塩、リン酸塩、その他の重金属の汚染効果に関する懸念が高まっているため、このような金属コーティング組成物の代替品が求められている。
【0004】
非クロム、非リン酸塩、および非重金属ベースの金属コーティング組成物を開発する努力から出現した表面保護コーティング組成物の1つのタイプは、アルコキシシランに由来する。アルコキシシランに由来する硬化性コーティング組成物は、金属産業内で高いレベルの関心を引き付け続けており、いくつかの配合物は、広く商業的に受け入れられているが、金属製造業者および加工業者にとって引き続き非常に重要であるそれらの特性の1つまたは複数、例えば、未硬化組成物の貯蔵安定性および接着性、柔軟性、耐食性、耐摩耗性/耐摩損性、および硬化した組成物の光学的透明度特性において改善の余地が多く残っている。陽極酸化アルミニウムと同等またはそれ以上の保護をアルミニウム基材に提供しながら、陽極酸化およびシーリングプロセスをバイパスしてバルク/ベアアルミニウムに直接接着できる単一の保護コーティング層を持つことは非常に有用であることになる。このアプローチ(バルク/ベアAlに直接コーティング)の主な利点は、前処理、陽極酸化、およびシーリングのステップを回避するためのオプションを提供できることである。アルミニウムバルク金属などの基材の保護コーティングに関連する重要な課題は、より良い性能のための酸、アルカリ、および腐食性媒体に対するバリアを提供する一方で、強力な接着性である。
【0005】
性能要件に加えて、一部の用途では、たとえば、自動車の装備品のための、スタイリングの目的で、仕上げ面をマットな外観にすることを求めることがあり得る。現在、マット仕上げは、陽極酸化の前に化学エッチングプロセスによって達成されている。マット仕上げを調えるプロセス全体には、通常、多段階の洗浄、エッチング、陽極酸化、およびシーリングプロセスが含まれる。これらのプロセスも時間がかかり、化学的に集中的であり、そして危険であり得る。さらに、高い酸性および塩基性条件に対する耐性、耐食性などの厳しい性能を満たすために、厳しい用途では保護コーティング層が必要になることがあり得、そして陽極酸化だけでは不十分なことがあり得る。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様によれば、金属、金属合金、金属化部分、1つまたは複数の保護層を有する金属または金属化部分、金属化プラスチック、金属スパッタリングされたプラスチック、またはプライミングされたプラスチック材料の1つなどの、基材の表面を保護するために適用するための硬化性表面保護コーティング形成組成物が提供され、該コーティング形成組成物は、
(i)少なくとも1つのアルコキシシラン;
(ii)(a)アルミナ、(b)ジルコニア、および(c)シリカ、チタニア、酸化亜鉛、セリア、またはそれらの2つ以上の組み合わせのぞれぞれの1つから選択される粒子および/またはコロイド形態の複数の金属酸化物、ここで金属酸化物の量は、コーティング形成組成物の約1から約50重量パーセントであり;
(iii)少なくとも1つの水混和性有機溶媒;
(iv)少なくとも1つの酸加水分解触媒;
(v)水;
(vi)任意選択でマット剤;および
(vii)任意選択で少なくとも1つの縮合触媒、を含む。
【0007】
一実施形態では、コーティング組成物は、金属、金属合金、金属化部分、1つまたは複数の保護層を有する金属または金属化部分、金属化プラスチック、金属スパッタリングされたプラスチック、またはプライミングされたプラスチック材料にコーティングされたときに透明コーティングを提供する。
【0008】
一実施形態では、少なくとも1つのアルコキシシランは、式A、式B、または式Aおよび式Bの混合物、
(X-R1)aSi(R2)b(OR3)4-(a+b) 式A
(R3O)3Si-R5-Si(OR3)3 式B
またはそれらの加水分解および縮合生成物、からなる群から選択され、
ここで
Xは有機官能基であり;
各R1は、独立して、1つまたは複数のヘテロ原子を任意選択で含む、1から約12個の炭素原子の直鎖状、分岐状または環状の二価有機基であり、
各R2は、独立して、1つまたは複数のハロゲン原子を任意選択で含む、1から約16個の炭素原子のアルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基であり、
各R3は、独立して、1から約12個の炭素原子のアルキル基であり;
R5は、1つまたは複数のヘテロ原子を任意選択で含む、1から約12個の炭素原子の直鎖状、分岐状または環状の二価有機基であり;そして
下付き文字aは0または1であり、下付き文字bは0、1または2であり、そしてa+bは0、1または2である。
【0009】
一実施形態において、式AおよびBのアルコキシシランの総量は、コーティング形成組成物の約80重量パーセントを超えない。
【0010】
一実施形態では、式Aのアルコキシシランにおいて、aは1であり、そして有機官能基Xは、メルカプト、アシルオキシ、グリシドキシ、エポキシ、エポキシシクロヘキシル、エポキシシクロヘキシルエチル、ヒドロキシ、エピスルフィド、アクリレート、メタクリレート、ウレイド、チオウレイド、ビニル、アリル、-NHCOOR4または-NHCOSR4基であり、ここでR4は、1から約12個の炭素原子を含む一価のヒドロカルビル基、チオカルバメート、ジチオカルバメート、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、トリスルフィド、テトラスルフィド、ペンタスルフィド、ヘキサスルフィド、ポリスルフィド、キサンテート、トリチオカーボネート、ジチオカーボネートまたはイソシアヌラト基、または他の-Si(OR3)基であり、ここでR3は、前記にて定義した通りである。
【0011】
一実施形態では、式Bのアルコキシシランにおいて、R5は、O、S、およびNR6からなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む二価の炭化水素基であり、ここでR6は、水素または1から約4個の炭素原子のアルキル基である。
【0012】
一実施形態では、式Aのトリアルコキシシランは、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリブトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n-ペンチルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、イソオクイルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、および3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーであり、そしてここで式Bのトリアルコキシシランは、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、およびビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミンからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである。
【0013】
一実施形態では、金属酸化物(a)、(b)、および(c)の総量は、組成物の重量に基づいて、約1から約50重量パーセントである。
【0014】
一実施形態では、アルミナ対ジルコニアの重量比は、約9:1から約1:9、約3:1から約1:3、または約2:1から約1:2である。
【0015】
一実施形態では、金属酸化物(c)対アルミナおよびジルコニアの合計の重量比は、99:1から1:99、約95:5から約5:95;より好ましくは約75:25から約25:75;さらにより好ましくは、約60:40から約40:60; さらにより好ましくは、約9:1から約1:9;さらにまたより好ましくは、約4:1から約1:4である。
【0016】
一実施形態では、組成物は、組成物の重量に基づいて、約0.1から約20重量パーセントの量のアルミナを含む。
【0017】
一実施形態では、組成物は、組成物の重量に基づいて、約0.1から約20重量パーセントの量のジルコニアを含む。
【0018】
一実施形態では、組成物は、組成物の重量に基づいて約1から約50重量パーセントの量のコロイダルシリカを含む。
【0019】
一実施形態では、組成物は以下を含む:
・組成物の総重量に基づいて約1から約50重量%の量のシリカ;組成物の総重量に基づいて約0.1から約20重量%の量のアルミナ;および、組成物の総重量に基づいて約0.1から約20重量%の量のジルコニア;
・組成物の総重量に基づいて約5から約30重量%の量のシリカ;組成物の総重量に基づいて約0.5から約10重量%の量のアルミナ;および、組成物の総重量に基づいて約0.5から約10重量%の量のジルコニア;または
・組成物の総重量に基づいて約10から約20重量%の量のシリカ;組成物の総重量に基づいて約1から約5重量%の量のアルミナ;および、組成物の総重量に基づいて約1から約5重量%の量のジルコニア。
【0020】
一実施形態では、水混和性溶媒(iii)は、アルコール、グリコール、グリコールエーテルおよびケトンからなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである。
【0021】
一実施形態では、少なくとも1つの酸加水分解触媒(iv)は、硫酸、塩酸、酢酸、プロパン酸、2-メチルプロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、2-エチルヘキサン酸、ヘプタン酸(エナント酸)、ヘキサン酸、オクタン酸(カプリル酸)、オレイン酸、リノール酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキシル酢酸、シクロヘキセンカルボン酸、安息香酸、ベンゼン酢酸、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、2-ブテン二酸(マレイン酸)、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソアノイック酸(isoanoic acid)、バーサティック酸、およびアミノ酸からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである。
【0022】
別の実施形態では、コーティング組成物は、マット剤を含む。マット剤は、無機化合物または有機化合物であり得る。一実施形態では、マット剤は、官能化シリカから選択される。別の実施形態では、マット剤はシリコーン樹脂材料である。
【0023】
一実施形態では、マット剤は、二酸化ケイ素、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、炭酸カルシウム、タルク、粘土、か焼カオリン、リン酸カルシウム、シリコーン樹脂、フルオロ樹脂、アクリル樹脂、またはそれらの2つ以上の混合物から選択される。
【0024】
一実施形態では、マット剤は、ハロシラン、アルコキシシラン、シラザン、シロキサン、またはそれらの2つ以上の組み合わせで官能化された官能化シリカ粒子から選択される。
【0025】
一実施形態では、マット剤は、組成物の重量に基づいて、約0.1から約10重量パーセントの量で存在する。
【0026】
一実施形態では、コーティング形成組成物はまた、式[(C4H9)4N]+[OC(O)-R7]-のテトラブチルアンモニウムカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1つの縮合触媒(vi)を含み、ここでR7は、水素、1から約8個の炭素原子を含むアルキル基、および約6から約20個の炭素原子を含む芳香族基からなる群から選択される。一実施形態では、縮合触媒(vii)は、テトラ-n-ブチルアンモニウムアセテート、テトラ-n-ブチルアンモニウムホルメート、テトラ-n-ブチルアンモニウムベンゾエート、テトラ-n-ブチルアンモニウム-2-エチルヘキサノエート、テトラ-n-ブチルアンモニウム-p-エチルベンゾエート、テトラ-n-ブチルアンモニウムプロピオネート、およびTBD-アセテート(1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デス-5-エン(TBD))からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーである。
【0027】
一実施形態では、組成物は、25℃で約3.0から約7.0cStkの範囲内の粘度を有する。
【0028】
別の態様では、物品の表面に配置された任意の前述の実施形態のコーティング形成組成物から形成されたコーティングを含む物品が提供される。
【0029】
一実施形態では、コーティング形成組成物を含むコーティングされた表面は、金属、金属合金、塗装金属または金属合金、不動態化金属または金属合金、金属化プラスチック、金属スパッタリングされたプラスチック、またはプライミングされたプラスチック材料から形成されている。
【0030】
一実施形態では、金属は、クロム、鋼、ステンレス鋼、炭素鋼、アルミニウム、陽極酸化アルミニウム、マグネシウム、銅、青銅、またはこれらの金属の2つ以上の合金、または金属酸化物から選択される。
【0031】
さらに別の態様では、いずれかの前述の実施形態のコーティング形成組成物を物品の表面に適用すること;および、コーティング形成組成物を硬化させてコーティングを形成することを含む物品の表面にコーティングを形成する方法が提供される。
【0032】
一実施形態では、コーティング形成組成物を硬化させることは、約80から約200℃の温度で硬化させることを含む。
【0033】
さらに別に態様では、
a)アルコキシシラン(i)と酸加水分解触媒(iv)の一部の混合物を反応させて加水分解物を形成すること;
b)複数の金属酸化物(ii)および水(v)をステップ(a)の加水分解物に加えること;
c)水混和性有機溶媒(iii)および残りの酸加水分解触媒(iv)をステップ(b)から得られる混合物に加えること;
d)ステップ(c)から得られる混合物をエージングして、約3.0から約7.0cStk、より具体的には約4.0から約5.5cStk、さらにより具体的には約4.5から約5.0cStkの範囲内の、25℃での粘度を有する硬化性コーティング形成組成物を提供すること;および
e)任意選択で、前述のいずれかのステップのとき、その間に、またはその後に、縮合触媒(vii)および/または任意の他の追加の添加剤(例えば、UV吸収剤、顔料、着色剤、スリップ添加剤など)を加えること、
を含む、前述のいずれかの実施形態によるコーティング形成組成物を形成する方法が提供される。
【0034】
一実施形態では、この方法は、マット剤を組成物に加えることを含む。
【0035】
本発明のさらに別の態様では、前述の実施形態のいずれかによるコーティングを、コーティングされていないまたはプレコーティングされた金属の表面に適用すること;コーティング形成組成物の適用されたコーティングから少なくともいくらかの溶媒(iii)を除去すること;および、コーティング形成組成物の溶媒が減少したコーティングを硬化させて金属表面に耐食性および/または耐摩耗性コーティングを提供することを含む、表面保護コーティング、すなわち、コーティングされていないまたはプレコートされた金属の表面に耐食性および/または耐摩耗性を付与するコーティングで金属をコーティングするための方法が提供される。
【0036】
本硬化性コーティング形成組成物は、優れた貯蔵安定性を有し得、そしてコーティング組成物から得られる硬化表面保護コーティングは、高レベルの耐食性および耐摩耗性、金属表面への付着、柔軟性(ひび割れや亀裂に対する耐性)および耐酸性および/または耐アルカリ性などの1つまたは複数の機能的に有利な特性を示す傾向がある。さらに、本明細書の硬化コーティングの一般的に卓越した光学的透明度は、示される下にある基材表面の審美的に魅力的な品質に良い効果をもたらすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
ここでの明細書および特許請求の範囲において、以下の用語および表現は、以下に示される意味を有するものとして理解されるべきである。
【0038】
単数形「a」、「an」、および「the」には複数形が含まれ、そして特定の数値への参照は、文脈で明確に別段の指示がない限り、少なくともその特定の値を含む。
【0039】
実施例または他に示された場合を除き、明細書および特許請求の範囲に記載された材料の量、反応条件、持続時間、材料の定量化された特性などを表すすべての数値は、全ての例において「約」という用語により修飾されるものと理解されることになる。
【0040】
本明細書に記載のすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく照らすことを意図しており、別段の請求がない限り、本発明の範囲に制限を課さない。
【0041】
本明細書のいかなる文言も、クレームされていない要素が本発明の実施に不可欠であることを示すと解釈されるべきではない。
【0042】
ここで使用される場合、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」、「によって特徴付けられる(characterized by)」、およびそれらの文法上均等の用語は、追加の、記載されていない要素、または方法のステップを除外しない包括的または限定の無い用語であるが、「からなる(consisting of)」および「本質的にからなる(consistingessentially of)」というより限定的な用語を含むことも理解されよう。
【0043】
組成パーセンテージは、特に明記しない限り、重量パーセントで示される。
【0044】
本明細書に記載される任意の数値範囲は、その範囲内のすべての下位範囲、およびそのような範囲または下位範囲の様々な端点の任意の組み合わせを含むことが理解されよう。
【0045】
構造的、組成的および/または機能的に関連する化合物、材料または物質の群に属するものとして明示的または黙示的に、明細書に開示されおよび/または特許請求の範囲に記載されている化合物、材料または物質は、その群の個々の代表およびそのすべての組み合わせを含むことがさらに理解されよう。
【0046】
「コーティング形成組成物」という表現は、それ自体は実用的または有用なコーティング組成物ではないが、本明細書に詳細に記載される処理の後に、金属表面に適用の高品質で効果的な熱硬化性表面保護コーティングを形成する組成物を指す。
【0047】
本明細書で使用される「金属」という用語は、本明細書では、金属自体、金属合金、金属化部分、および1つまたは複数の非金属保護層を有する金属または金属化部分に適用されると理解されるべきである。
【0048】
「加水分解縮合」とは、コーティング組成物形成混合物中の1つまたは複数のシランが最初に加水分解され、続いて加水分解生成物とそれ自体または混合物の他の加水分解および/または非加水分解成分との縮合反応を意味する。
【0049】
コーティング組成物は、(i)少なくとも1つのアルコキシシラン;(ii)(a)アルミナ、(b)ジルコニア、および(c)シリカ、チタニア、酸化亜鉛、セリア、またはその2つ以上の組み合わせから選択される金属酸化物の各々の少なくとも1つから選択される粒子状またはコロイド状の複数の金属酸化物、ここで金属酸化物の総量は、コーティング形成組成物の約1から約50重量パーセントである;(iii)少なくとも1つの水混和性有機溶媒;(iv)少なくとも1つの酸加水分解触媒;(v)水;および(vi)任意選択でマット剤;および(vii)任意選択で少なくとも1つの縮合触媒を含む。一態様では、ベースコーティング組成物は、金属表面上にクリアコートを形成するための組成物を提供する。別の態様では、ベースコーティング組成物は、金属表面上にマットコートを形成するための組成物を提供する。
【0050】
A.コーティング形成組成物の成分
【0051】
アルコキシシラン(i)
【0052】
実施形態では、アルコキシシラン(i)は、式Aおよび/または式Bのアルコキシシランから選択され、
(X-R1)aSi(R2)b(OR3)4-(a+b) 式A
(R3O)3Si-R5-Si(OR3)3 式B
ここで
Xは、有機官能基、より具体的には、メルカプト、アシルオキシ、グリシドキシ、エポキシ、エポキシシクロヘキシル、エポキシシクロヘキシルエチル、ヒドロキシ、エピスルフィド、アクリレート、メタクリレート、ウレイド、チオウレイド、ビニル、アリル、-NHCOOR4、または-NHCOSR4基であり、ここでR4は、1から約12個の炭素原子、実施形態では1から約8個の炭素原子を含む一価ヒドロカルビル基、チオカルバメート、ジチオカルバメート、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、トリスルフィド、テトラスルフィド、ペンタスルフィド、ヘキサスルフィド、ポリスルフィド、キサンテート、トリチオカルボネート、ジチオカルボネート、またはイソシアヌラト基、フルオロ基、または他の-Si(OR3)基であり、ここでR3は以下のように定義され;
各R1は、1から約12個の炭素原子、1から約10個の炭素原子、または1から約8個の炭素原子の直鎖状、分岐状、または環状の二価有機基、例えば、非限定的な例の、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、シクロヘキシレン、アリーレン、アラルキレンまたはアルカリーレン基、および任意選択で、非限定的な例の、O、S、およびNR6などの1つまたは複数のヘテロ原子を含むものなどの二価有機基であり、ここでR6は、水素または1から4個の炭素原子のアルキル基であり;
各R2は、独立して、1から約16個の炭素原子、1から約12個の炭素原子、または1から4個の炭素原子のアルキル、アリール、アルカリール、またはアラルキル基であって、および任意選択で1つまたは複数のハロゲン原子、より具体的にはフッ素原子を含むものから選択され;
各R3は、独立して、1から約12個の炭素原子、より具体的には1から約8個の炭素原子、さらにより具体的には1から4個の炭素原子のアルキル基であり;
R5は、1つまたは複数のヘテロ原子を任意選択で含む、1から約12の炭素原子、1から約10の炭素原子、または1から約8の炭素原子の直鎖状、分岐状または環状の二価有機基であり、例えば、非限定的な例の、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレン、イソブチレン、シクロヘキシレン、アリーレン、アラルキレン、またはアルカリーレン基、および任意選択で、非限定的な例の、O、S、およびNR6などの1つまたは複数のヘテロ原子を含むものなどの二価炭化水素基であり、ここでR6は、水素または1から4個の炭素原子のアルキル基であり;そして
下付き文字aは0または1であり、下付き文字bは0、1、または2であり、そしてa+bは0、1、または2である。
【0053】
一実施形態では、式AおよびBのアルコキシシランの総量は、コーティング形成組成物の約80重量パーセント、約70重量パーセント、約60重量パーセント、50重量パーセント、約45重量パーセント、さらには約40重量パーセントを超えない。一実施形態では、アルコキシシラン(i)は、組成物の重量に基づいて、コーティング形成組成物中に約20から約80重量パーセント;約25から約70重量パーセント、約30から約50重量パーセント、または約35から約40重量パーセントの量で存在する。
【0054】
一実施形態では、アルコキシシラン(i)は、上記のような、式Aのジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、および/またはテトラアルコキシシランのうちの1つまたは複数、および/または式Bのトリアルコキシシランのうちの1つまたは複数から選択することができ、但し少なくとも1つのそのようなトリアルコキシシランがそこに含まれている。
【0055】
式Aのジアルコキシシランの例には、これらに限定されないが、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、3-シアノプロピルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジ(p-トリル)ジメトキシシラン、ビス(ジエチルアミノ)ジメトキシシラン、ビス(ヘキサメチレンアミノ)ジメトキシシラン、ビス(トリメチルシリルメチル)ジメトキシシラン、ビニルフェニルジエトキシシランなど、およびそれらの混合物が含まれる。上記で説明したように、ジアルコキシシランを含むアルコキシシランには、その加水分解および縮合生成物(オリゴマー)も含まれる。
【0056】
一実施形態では、式Aおよび/またはBからなる群から選択される少なくとも1つのアルコキシシラン(i)もまた、それらの加水分解および縮合生成物であり得る。
【0057】
アルコキシシラン(i)のそのような生成物のオリゴマーは、式AおよびBなどからなる群から選択される。それらは、式AおよびBからなる群から選択されるアルコキシシラン(i)の加水分解および縮合によって調製される。つまり、アルコキシシリル基が水と反応して対応するアルコールを遊離し、そして得られたヒドロキシシリル基が縮合してSi-O-Si(シロキサン基)を形成する。得られる加水分解および縮合生成物またはオリゴマーは、例えば、2から30のシロキシ単位、好ましくは2から10のシロキシ単位、および残りのアルコキシ基を含む直鎖状または環状ポリシロキサンであり得る。
【0058】
そのようなオリゴマーの特定の例示的な例には、特に、オリゴマーのグリシドキシプロピル-トリメトキシシランが含まれる。式Aのトリアルコキシシランの例には、これらに限定されないが、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリブトキシシラン、n-ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n-ペンチルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、イソオクイルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、オリゴマーおよびそれらの2つ以上の混合物が含まれる。これらのうち、メチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、およびグリシドキシプロピルトリメトキシシランは、例示的なトリアルキルシロキサンである。上で説明したように、トリアルコキシシランを含むアルコキシシランには、その加水分解および縮合生成物(オリゴマー)も含まれる。
【0059】
式Aのテトラアルコキシシラン(すなわち、テトラアルキルオルトシリケート)の例には、テトラメトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、テトラプロポキシシランなど、およびそれらの2つ以上の混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0060】
式Bのトリアルコキシシランの例には、これらに限定されないが、1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミンなど、およびそれらの2つ以上の混合物が含まれる。
【0061】
金属酸化物(ii)
【0062】
本組成物は、(a)アルミナ、(b)ジルコニア、および(c)シリカ、チタニア、酸化亜鉛、セリア、またはそれらの2つ以上の組み合わせから選択される金属酸化物の各々の少なくとも1つから選択される金属酸化物ナノ粒子を含む。金属酸化物成分は、一般に、粒子またはコロイドの形態で提供される。粒子の形状は特に限定されず、そして粒子は、ほぼ球形または等軸の粒子、ロッド、プレートレットなどであり得る。粒子は、約5nmから約500nm、約10から約200nm、または約10から約60nmの平均粒子サイズを有し得る。平均粒子サイズは、例えば、完全Mie理論を使用する低角レーザー光散乱(LALLS)、特にMastersizer2000または3000、Malvern Instrumentsを使用することを含む、任意の適切な方法または装置によって決定することができる。
【0063】
一実施形態では、金属酸化物(ii)は、その水性コロイド分散液、例えば、シリカ、アルミナ、およびジルコニアの水性コロイド分散液として提供される。あるいは、金属酸化物は、粉末形態で提供され得、そしてコーティング組成物内に分散され得る。
【0064】
適切なジルコニアおよびアルミナ粒子の例には、これらに限定されるものではないが、Nyacol(登録商標)AL27(Nyacol)、Nyacol(登録商標)AL20(Nyacol)、Nyacol(登録商標)AL20DW(Nyacol)、Nyacol(登録商標)コロイダルジルコニアZrO2(OAC)アセテート安定化(Nyacol)、Zr50/14pH3、Zr 100/20など(Nyacol)、イソプロパノールおよび水中のアルミナ分散液(Sigma Aldrich)が含まれる。
【0065】
一実施形態では、金属酸化物(c)は、シリカから選択される。一実施形態では、シリカはコロイダルシリカとして提供される。コロイダルシリカの水性分散液には、約5から約150nm、約20から約100nm、または約40から80nmの範囲の平均粒子サイズを有するものが含まれる。一実施形態では、コロイドイダルシリカは、約5から約30nmの平均粒子サイズを有する。適切なコロイダルシリカ分散液には、例えば、Ludox(登録商標)(Sigma Aldrich)、Snowtex(登録商標)(Nissan Chemical)、Bindzil(登録商標)(AkzoNobel)およびNalco(登録商標)コロイダルシリカ(Nalco Chemical Company)、Levasil(登録商標)(AkzoNobel)などの市販のものが含まれる。このような分散液は、酸性および塩基性ヒドロゾルの形態で入手できる。
【0066】
酸性および塩基性コロイダルシリカの両方をコーティング組成物に組み込むことができる。低アルカリ含有量を有するコロイダルシリカは、より安定したコーティング組成物を提供し得る。特に適切なコロイダルシリカには、これらに限定されるものではないが、Nalco(登録商標)1034A(Nalco Chemical Company)およびSnowtex(登録商標)O40、Snowtex ST-033およびSnowtex(登録商標)OL-40(Nissan Chemical)、Ludox(登録商標)AS40およびLudox(登録商標)HS 40(Sigma-Aldrich)、Levasil 200/30およびLevasil(登録商標)200S/30(現在はLevasil CS30-516P)(AkzoNobel)およびCab-O-Sperse(登録商標)A205(Cabot Corporation)が含まれる。
【0067】
コーティング形成組成物に組み込まれた金属酸化物成分(ii)の金属酸化物(a)、(b)、および(c)の総量、すなわち、アルミナ(a)、ジルコニア(b)、および金属酸化物(c)の総量は、一般に、組成物の重量に基づいて、約1から約50、約10から約40、約10から約30、または約15から約20重量パーセントまで変化し得る。実施形態において、組成物は、
・組成物の総重量に基づいて約1から約50重量%;組成物の総重量に基づいて約5から約30重量%;または、組成物の総重量に基づいて約10から約20重量%の量の金属酸化物(c);
・組成物の総重量に基づいて約0.1から約20重量%;組成物の総重量に基づいて約0.5から約10重量%;または、組成物の総重量に基づいて約1から約5重量%の量のアルミナ(a);および
・組成物の総重量に基づいて約0.1から約20重量%;組成物の総重量に基づいて約0.5から約10重量%;または、組成物の総重量に基づいて約1から約5重量%の量のジルコニア(b);
を含む。
前述の説明では、重量は、組成物中の金属固体の総重量ではなく、組成物の総重量におけるコロイド分散液について示されている。
【0068】
一実施形態では、組成物は、金属酸化物(c)としてシリカを含み、そして、
・組成物の総重量に基づいて約1から約50重量%の量のシリカ;組成物の総重量に基づいて約0.1から約20重量%の量のアルミナ;および組成物の総重量に基づいて約0.1から約20重量%の量のジルコニア;
・組成物の総重量に基づいて約5から約30重量%の量のシリカ;組成物の総重量に基づいて約0.5から約10重量%の量のアルミナ;および組成物の総重量に基づいて約0.5から約10重量%の量のジルコニア;または
・組成物の総重量に基づいて約10から約20重量%の量のシリカ;組成物の総重量に基づいて約1から約5重量%の量のアルミナ;および組成物の総重量に基づいて約1から約5重量%の量のジルコニア;
を含む。
重量は、組成物中の金属固体の総重量ではなく、組成物の総重量におけるコロイド分散液について示されている。
【0069】
一実施形態では、アルミナおよびジルコニアは、アルミナ対ジルコニアの比が約9:1から約1:9;好ましくは約3:1から約1:3;より好ましくは約2:1から約1:2で提供される。アルミナとジルコニアの混合物を使用すると、アルミニウム表面への良好な接着、非常に高い耐摩耗性、良好な耐食性、耐熱性、および耐酸性と耐アルカリ性が得られる。金属酸化物(c)とアルミナおよびジルコニアの比率は約99:1から約1:99;好ましくは約95:5から約5:95;より好ましくは約75:25から約25:75;さらにより好ましくは、約60:40から約40:60;さらにより好ましくは、約9:1から約1:9;よりさらにより好ましくは、約4:1から約1:4である。上記の比は、組成物中の実際の固体金属酸化物に基づいている。一実施形態では、金属酸化物(c)はシリカである。
【0070】
水混和性有機溶媒(iii)
【0071】
コーティング形成組成物に組み込まれ得る水混和性溶媒(iii)の例は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、メトキシプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールブチルエーテル、およびそれらの組み合わせなどのアルコールである。アセトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノプロピルエーテル、および2-ブトキシエタノールなどの他の水混和性有機溶媒も利用できる。典型的には、これらの溶媒は水と組み合わせて使用され、後者は、金属酸化物(ii)および/またはその水(v)の一部または全部を提供するコーティング組成物の他の成分に関連する任意の水と共に使用される。
【0072】
コーティング形成組成物中に存在する水混和性溶媒(iii)の総量は、大きく変動することがあり得、例えば、その総重量に基づいて、約10から約80、約10から約65、約10から約60、または約10から約50重量パーセントに変動し得る。
【0073】
酸加水分解触媒(iv)
【0074】
アルコキシシランの加水分解に適した任意の酸性加水分解触媒は、本コーティング形成組成物に組み込むことができる。例示的な酸加水分解触媒(iv)には、これらに限定されないが、硫酸、塩酸、酢酸、プロパン酸、2-メチルプロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、2-エチルヘキサン酸、ヘプタン酸(エナント酸)、ヘキサン酸、オクタン酸(カプリル酸)、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキシル酢酸、シクロヘキセンカルボン酸、安息香酸、ベンゼン酢酸、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、2-ブテン二酸(マレイン酸)、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソアノイック酸(isoanoic acid)、バーサティック酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソアノイック酸、アミノ酸、およびそれらの2つの混合物が含まれる。酸加水分解触媒は、希釈せずに、または水溶液の形態で使用することができる。
【0075】
酸加水分解触媒(iv)は、本発明のコーティング形成組成物中に、少なくとも触媒有効量で存在し、これは、ほとんどの場合、コーティング形成組成物の総重量に基づいて、約0.1から約5、約0.5から約4.5、または約2から約4重量パーセントの範囲であり得る。
【0076】
水(v)
【0077】
本明細書のコーティング形成組成物の水成分は、有利には脱イオン(DI)水である。コーティング組成物形成混合物中に存在する全水の一部またはすべては、混合物の他の1つまたは複数の成分、例えば、金属酸化物の水性コロイド分散液(ii)、水混和性溶媒(iii)、酸加水分解触媒(iv)、任意選択での縮合触媒(vi)および/または以下に記載されるものなどの他の任意選択での成分(vii)の一部として加えられ得る。
【0078】
水の総量(v)は、大きく変化する範囲内、例えば、コーティング形成組成物の総重量に基づいて、約5から約40、より具体的には約5から約30、さらにより具体的には約5から約15重量パーセントの範囲内にあり得る。
【0079】
マット剤(vi)
【0080】
一実施形態では、コーティング組成物は、マット剤を含む。マット剤がない場合、組成物は、金属表面に適用(および硬化)されたときに透明なコートを提供する。マット剤を含む組成物では、得られるコーティングはマット仕上げを示す。
【0081】
マット剤は、無機化合物からなるマット剤または有機化合物からなるマット剤のいずれかであり得る。
【0082】
マット剤として適切な無機化合物の例には、これらに限定されないが、ケイ素含有無機化合物(例えば、二酸化ケイ素、焼成カルシウムシリケート、水和カルシウムシリケート、アルミニウムシリケート、マグネシウムシリケートなど)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、炭酸カルシウム、タルク、粘土、か焼カオリン、リン酸カルシウムなどを含む無機化合物が含まれる。特に適しているのは、ケイ素含有無機化合物である。セルロースアクリレートフィルムの曇りを低減することができることから、二酸化ケイ素が特に好ましい。例えば、二酸化ケイ素の微粒子として、Aerosil(登録商標)R972、R974、R812、200、300、R202、OX50、およびTT600(Nippon Aerosil Co.,Ltd.製)などの商品名で市販されている製品を使用することができる。
【0083】
一実施形態では、マット剤は、官能化シリカ粒子によって提供される。一実施形態では、官能化シリカ粒子は、有機表面処理シリカを含む。表面処理は、シリカをシラン化剤で処理することを含み得る。シラン化剤には、ハロシラン、アルコキシシラン、シラザンおよび/またはシロキサンが含まれる。マット剤として適切な処理されたシリカ粒子の例には、参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開US2004/0120876号に記載されているがこれに限定されない。マット剤としての使用に適した材料の非限定的な例には、W.R.Grace製の商品名SYLOID(登録商標)および/またはEvonik製のACEMATT(登録商標)で販売されている材料が含まれる。
【0084】
マット剤として適切な有機化合物の例には、シリコーン樹脂、フルオロ樹脂、アクリル樹脂などのポリマーが含まれるが、これらに限定されない。とりわけ、より好ましいのはシリコーン樹脂である。シリコーン樹脂のうち、さらにより好ましいのは、三次元ネットワーク構造を有するものである。適切な有機化合物の例には、Momentive Performance MaterialsからTOSPEARLの商品名で販売されているものが含まれ、これには、限定されるものではないが、TOSPEARL(登録商標)103、TOSPEARL(登録商標)105、TOSPEARL(登録商標)108、TOSPEARL(登録商標)120、TOSPEARL(登録商標)145、TOSPEARL(登録商標)3120、およびTOSPEARL(登録商標)240などが含まれる。
【0085】
マット剤は、組成物に含まれる場合、特定の目的または意図された用途のために所望の量で存在し得る。特に、マット剤の量は、所望のマット効果、例えば、特定の光沢、画像の明瞭さ(DOI)などを提供するように選択することができる。一実施形態では、マット剤は、組成物の重量に基づいて、約0から約10重量パーセント;約0.1から約10重量パーセント;約0.2から約8重量パーセント;または、約0.5から約3重量パーセントの量で提供される。さらに、マット剤は、無機化合物タイプのマット剤と有機化合物タイプのマット剤との混合物を含む2つ以上のマット剤の混合物を含むことができることが理解されよう。
【0086】
任意選択の縮合触媒(vii)
【0087】
任意選択の縮合触媒(vi)は、本明細書のコーティング形成組成物の部分的または完全に加水分解されたシラン成分(a)および(b)の縮合を触媒し、したがって硬化触媒として機能する。
【0088】
任意選択の縮合触媒(vii)がなくてもコーティング形成組成物を硬化させることができるが、効率的な硬化は、より集中的な条件、例えば、高温の適用(熱硬化)および/または延長された硬化時間を必要とし得、これらは両方とも、コストおよび/または生産性の観点から望ましくないことがあり得る。より経済的なコーティングプロセスを提供することに加えて、任意の縮合触媒(vii)の使用は、一般に、コーティング形成組成物の改善された貯蔵寿命をもたらす。
【0089】
コーティング形成組成物中に任意選択で存在し得る縮合触媒(vi)として適切な材料の例には、これに限定されないが、式[(C4H9)4N]+[OC(O)-R7]-のテトラブチルアンモニウムカルボキシレートが含まれ、ここでR7は、水素、1から約8個の炭素原子を含むアルキル基、および約6から約20個の炭素原子を含む芳香族基からなる群から選択される。例示的な実施形態では、R7は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルまたはイソブチルなどの約1から4個の炭素原子を含む基である。より活性なタイプの縮合触媒(v)、例えば鉱酸およびアルカリ金属水酸化物と比較して、それらの触媒作用が幾分穏やかである前述のテトラブチルアンモニウムカルボキシレートは、それらを含むコーティング形成組成物の貯蔵寿命を最適化する傾向がある。前述の式の例示的なテトラブチルアンモニウムカルボキシレート縮合触媒は、テトラ-n-ブチルアンモニウムアセテート(TBAA)、テトラブチルアンモニウムホルメート、テトラ-n-ブチルアンモニウムベンゾエート、テトラ-n-ブチルアンモニウム-2-エチルヘキサノエート、テトラ-n-ブチルアンモニウム-p-エチルベンゾエート、およびテトラ-n-ブチルアンモニウムプロピオネートである。特に適切な縮合触媒は、テトラブチルアンモニウムカルボキシレート、テトラ-n-ブチルアンモニウムアセテート(TBAA)、テトラ-n-ブチルアンモニウムホルメート、テトラ-n-ブチルアンモニウムベンゾエート、テトラ-n-ブチルアンモニウム-2-エチルヘキサノエート、テトラ-n-ブチルアンモニウム-p-エチルベンゾエート、テトラ-n-ブチルアンモニウムプロピオネート、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラメチルアンモニウムベンゾエート、テトラヘキシルアンモニウムアセテート、ジメチルアニリウムホルメート、ジメチルアンモニウムアセテート、テトラメチルアンモニウムカルボキシレート、テトラメチルアンモニウム-2-エチルヘキサノエート、ベンジルトリメチルアンモニウムアセテート、テトラエチルアンモニウムアセテート、テトライソプロピルアンモニウムアセテート、トリエタノール-メチルアンモニウムアセテート、ジエタノールジメチルアンモニウムアセテート、モノエタノールトリメチルアンモニウムアセテート、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート、TBDアセテート(1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デス-5-エン(TBD))、およびそれらの2つ以上の組み合わせである。
【0090】
前述のテトラブチルアンモニウムカルボキシレート縮合触媒のうち、テトラ-n-ブチルアンモニウムアセテート、およびテトラ-n-ブチルアンモニウムホルメートが特に適切な材料である。
【0091】
使用される場合、縮合触媒(vii)は、コーティング形成組成物中に、少なくとも触媒的に有効な量で、例えば、その総重量に基づいて約0.0001から約1重量パーセントで存在することができる。
【0092】
その他の任意選択の成分(viii)
【0093】
1つまたは複数の他の任意選択の成分(viii)は、本明細書のコーティング形成組成物に含めるのに適している。その他の成分の例には、界面活性剤、酸化防止剤、染料、充填剤、可塑剤、UV吸収剤などが含まれるが、これらに限定されない。
【0094】
コーティング形成組成物はまた、レベリング剤または流動添加剤として機能する1つまたは複数の界面活性剤を含むことができる。適切な界面活性剤の例には、Fluorad(登録商標)(3M)などのフッ素化界面活性剤、Silwet(登録商標)およびCoatOSil(登録商標)(Momentive Performance Materials, Inc.)などのシリコーンポリエーテル、およびBYK-302(BYK Chemie USA)などのポリエーテル修飾シリコーンなどのシリコーン表面添加剤が含まれる。
【0095】
コーティング組成物はまた、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、またはジベンジルレゾルシノールまたはそれらの誘導体などのUV吸収剤を含み得る。適切なUV吸収剤には、シランと共縮合することができるものが含まれ、その具体例には、4-[ガンマ-(トリメトキシシリル)プロポキシル]-2-ヒドロキシベンゾフェノン、4-[ガンマ-(トリエトキシシリル)プロポキシル]-2-ヒドロキシベンゾフェノンおよび4,6-ジベンゾイル-2-(3-トリエトキシシリルプロピル)レゾルシノールが含まれる。シランと共縮合することができるUV吸収剤が使用される場合、UV吸収剤は、金属の表面に適用する前に、本明細書の熱硬化性コーティング組成物を完全に混合することによって他の反応種と共縮合することが重要である。UV吸収剤を共縮合させることで、風化中に遊離UV吸収剤が環境に浸出することによって引き起こされ得るコーティング性能の低下を防ぐ。
【0096】
コーティング形成組成物はまた、ヒンダードフェノール(例えば、Irganox(登録商標)1010(Ciba Specialty Chemicals))などの1つまたは複数の酸化防止剤、メチレングリーン、メチレンブルーなどの染料および着色剤、限定されるものではないが、二酸化チタン、リン酸亜鉛、重晶石、アルミニウムフレークなどの充填剤、および/または限定されるものではないがフタル酸ジブチルなどの可塑剤を含むことができる。
【0097】
本明細書での使用に適した顔料は、一般に、すべての無機および有機の色剤/顔料を含む。これらは通常、アルミニウム、バリウム、カルシウムの塩またはレーキである。レーキは、固体希釈剤で延ばされまたは減じられた顔料または吸着性表面に水溶性染料を沈殿させることによって調製される有機顔料であり、通常はアルミニウム水和物である。レーキはまた、酸性または塩基性染料からの不溶性塩の沈殿から形成される。カルシウムおよびバリウムのレーキもここで使用される。パール、酸化チタン、レッド6、レッド21、ブルー1、オレンジ5、およびグリーン5の染料、チョーク、タルク、酸化鉄および雲母チタンなどの他の色剤および顔料も組成物に含めることができる。色剤/顔料はまた、顔料ペースト/着色剤の形態であり得る。
【0098】
B.コーティング形成組成物の形成
【0099】
本発明の熱硬化性コーティング組成物の形成において、アルコキシシラン(i)と酸加水分解触媒(iv)の一部の混合物を反応させ、続いて酸加水分解触媒(iv)の残りの部分を添加し、そして得られる混合物を高温および時間の所定の条件下でエージングさせることにより、約3.0から約7.0cStk、別の実施形態ではより具体的には約4.0から約5.5cStk、さらに別の実施形態ではより具体的には約4.5から約5.0cStkの粘度範囲を有する熱硬化性組成物をもたらす。本発明では、粘度は、必要に応じて、DIN53015規格、Haake DC10温度制御ユニットおよびボールセット800-0182、特に直径が15.598mm、重量が4.4282g、密度が2.229g/cm3のボール番号2を備えたHoeppler落下ボール粘度計モデル356-001を採用した、「粘度測定-Hoepplerによるローリングボール粘度計による粘度の測定」に従って25℃で測定することができる。
【0100】
成分の反応は、例えば、氷浴、氷/NaCl混合物、またはドライアイス/イソプロパノール混合物を使用することによって行うことができる。より具体的には、アルコキシシラン(i)および酸加水分解触媒(iv)をガラス瓶に入れ、次に氷浴に入れて、外部温度計を通して温度を監視しながら混合物を冷却する。
【0101】
本明細書の熱硬化性コーティング組成物を形成するプロセスの第1段階において、式Aおよび/またはBのトリアルコキシシラン、任意選択の式Aのジアルコキシシランおよび/またはテトラアルコキシシランの混合物、ならびに酸加水分解触媒(iv)の総量の約10から約40パーセントが混合される。冷却状態にある間、金属酸化物(ii)、例えば水性コロイダルシリカをゆっくりと混合物に加える。
【0102】
金属酸化物(ii)の添加に続いて、そして絶えず攪拌しながら、冷却された混合物は、温度が周囲温度まで、またはほぼ周囲温度、例えば、約20℃から約30℃まで上昇させる。この連続撹拌の期間中に、混合物のアルコキシシラン成分(i)は、初期レベルの加水分解を受け、続いて得られた加水分解物が縮合する。
【0103】
熱硬化性コーティング組成物を形成するためのプロセスの第2段階において、水混和性溶媒(iii)および残りの酸加水分解触媒(iv)を、現在の周囲温度の反応媒体に、例えば、約5から約24時間、より具体的には約8から約15時間の期間にわたって連続的に攪拌しながら加え、その間に、シランおよび/または部分加水分解物のさらなる加水分解およびそのように形成された加水分解物の縮合が起こる。
【0104】
使用される場合、任意選択の縮合触媒(vi)は、硬化性コーティング組成物を調製するステップ(a)-(d)のいずれかで、その間に、またはその後に、少なくとも触媒的に有効な量で添加され得る。任意選択の縮合触媒(v)の量は、コーティング形成組成物の総重量に基づいて、例えば、約0.01から約0.5、より具体的には約0.05から約0.2重量パーセントまで大きく変動し得る。
【0105】
残留シラノールの最適量は、以下でより完全に説明するように、エージングの間に縮合反応を加速することによって得られる。所望の粘度レベルが得られたら、硬化性コーティング組成物を所望の基材に適用して、その上に均一で透明な(またはそのように配合されている場合はマットな)そして硬質のコーティングを生成することができる。
【0106】
加水分解のこの追加の期間に続いて、任意選択の縮合触媒(vii)および1つまたは複数の他の任意選択の成分(viii)を、有利には、さらなる期間、例えば、約1から約24時間の連続撹拌下で、反応混合物に加えることができる。得られた反応混合物は、これでエージングの準備ができている。
【0107】
前述のコーティング組成物形成混合物のエージングは、約3.0から約7.0cStkの前述の範囲内の粘度をもたらすことが実験的に決定された期間にわたる高温で実施される。そのような粘度を達成することにより、良好から優れた硬化コーティング特性を有する硬化性コーティング組成物が得られる。より低い粘度は、コーティングフィルムの硬度の低下、およびコーティングの継続的な暴露で発生する可能性のある後硬化につながることになり得る。より高い粘度は、硬化およびその後の暴露条件の間にコーティングフィルムのひび割れを引き起こすことがあり得る。
【0108】
多くのコーティング組成物形成混合物の場合、コーティング形成混合物をエアオーブン内で、例えば、約25から約100℃の温度で約30分間から約1日、約25から約75℃の温度で約30分から約5日、または約25から約50℃の温度で約3から約10日間、加熱することにより、約3.0から約7.0cStkの範囲内の粘度を達成することができる。
【0109】
別の実施形態では、コーティング組成物は、シランと(異なる)金属酸化物ナノ粒子の2つの別個の混合物を形成し、次に2つの混合物を組み合わせてクリアコート組成物を形成することによって調製することができる。一実施形態では、コーティング組成物は、
(a)(i)酸触媒および所望のシランの第1の部分を含む第1の溶液を提供すること;(ii)混合物を冷却または低温化すること;および(iii)シリカやジルコニアなどの1つまたは複数のタイプのナノ粒子;および水をシランと酸触媒の混合物へ加えること;
(b)(i)所望のアルコキシシランの第2の部分と、アルミナおよびジルコニアなどの異なる他のタイプのナノ粒子とを含む第2の溶液を提供すること;
(c)(i)(b)の溶液を(a)の溶液と混合し、そして(ii)追加の酸触媒、縮合触媒、および任意選択で他の添加剤を必要に応じて加えること、
によって調製される。
【0110】
攪拌しながらマット剤粒子を加える。マット粒子が溶液から沈降し始めた場合(例えば、組成物を作製してから組成物を使用するまでの長期間の後)、マット剤は単純な混合によって容易に再分散することができ、そして配合物を使用してコーティングを調製することができる。一実施形態では、マット剤は、クリアコート組成物の形成の後に加えられる。別の実施形態では、マット剤は、コーティング組成物の形成の任意の段階で加えることができる。
【0111】
C.コーティングの適用および硬化手順
【0112】
添加溶媒のさらなる添加が有るまたは無い本コーティング形成組成物は、典型的には、約10から約50、約15から約40、または約20から約30重量パーセントの固形分を有することになる。コーティング組成物のpHは、しばしば、約3から約7、より具体的には、約4から約6の範囲内に入ることになる。
【0113】
硬化性コーティング組成物は、プライマーの使用の有るまたは無い金属基材上にコーティングすることができる。実施形態では、コーティング組成物は、プライマー無しで金属基材上にコーティングされる。
【0114】
コーティング組成物は、様々な基材に適用することができる。適切な基材の例には、金属、金属合金、クロム、金属酸化物、塗装金属または金属合金、不動態化金属または金属合金、金属化プラスチック、金属スパッタリングされたプラスチック、プライミングされたプラスチック材料などが含まれる。適切な金属には、クロム、鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、陽極酸化アルミニウム、マグネシウム、銅、青銅、これらの各金属の合金などが含まれるが、これらに限定されない。
【0115】
コーティング形成組成物は、スプレー、ブラッシング、フローコーティング、ディップコーティングなどであるがこれらに限定されない、任意の従来のまたは他の既知の技術を使用して、金属表面または他の基材に適用することができる。適用されたままの(または湿った)コーティングのコーティング厚さは、約10から約150、約20から約100、または約40から約80ミクロンなどのかなり広い範囲にわたって変化し得る。そのような厚さのウェットコーティングは、一般に、約1から30、約2から約20、または約5から約15ミクロンの範囲の厚さを有する(乾燥した)硬化コーティングを提供することになる。
【0116】
コーティングが乾燥すると、溶媒(iii)およびその他の揮発性の高い材料が蒸発し、そして適用されたコーティングは約15から約30分で触ると粘着性がなくなることになる。次に、コーティング層/フィルムは、従来の、または他の方法で知られている、または後に見出された熱硬化手順を介して硬化する準備ができている。熱硬化手順の操作要件は当技術分野でよく知られている。例えば、熱加速硬化は、約80から約200℃の温度領域内で、約30から約90分の期間にわたって実施され、基材金属上に、光学的に透明である、または(組成物に基づく)マット仕上げを示す硬化した硬質保護コーティングを提供し得る。
【0117】
本発明のコーティング形成組成物から得られる硬化コーティングは、金属表面と直接接触することができ、その中の唯一のコーティングとして機能することができ、1つまたは複数の他のコーティングに重ね合わせられることができ、および/またはそれ自体が1つまたは複数のその上に重ねられた他のコーティングを有することができる。硬化したコーティング組成物は、その金属基材に耐食性および/または耐摩耗性を付与することに加えて、審美的コーティングとしても機能し得、その場合、それは、金属基材上の唯一または最も外側のコーティングを構成することになる。
【0118】
前述のように、マット仕上げの場合、組成物は、光沢、画像の明瞭さ、またはそのような仕上げを評価するための他の適切な特性に関して、特定の適用または意図された用途に所望の仕上げを提供することができる。光沢は、光沢を測定するための任意の適切な装置および方法を使用して評価することができる。一実施形態では、光沢は、BYK Micro-TRI光沢計を使用して測定される。
【0119】
既知のアルコキシシランベースのコーティング形成組成物に対する本発明のコーティング形成組成物の利点には、格別の貯蔵安定性、様々な金属および金属化表面のいずれかへのその適用の容易さ、および硬化コーティングの確実な均一特性が含まれる。
【0120】
前に示したように、本発明の硬化したコーティング組成物は、その金属基材への高レベルの接着、耐食性、柔軟性(ひび割れおよび亀裂に対する耐性)、耐摩耗性/耐摩損性、光学的透明度を含む優れた特性を示す。
【実施例】
【0121】
例
【0122】
例1-12
【0123】
例1-12は、本組成物の態様および実施形態によるコーティング形成組成物の調製、ならびにおよそ長さ15cm、幅10cm、厚さ1mmのアルミニウムパネル上の硬化コーティングとしてのそれらの性能を示す。
【0124】
例1-12の硬化性コーティング形成組成物の出発成分は、以下の表1に記載されている。
【表1】
【0125】
コーティング配合物の調製
【0126】
例1-7
【0127】
例1-7のコーティング溶液は、アルコキシシランを異なるナノ粒子と別々に反応させることを含む方法によって調製された。この方法では、ガラス瓶に酢酸とトリアルコキシシランを入れた。氷浴中で反応混合物を約10℃に冷却した後、シリカナノ粒子と水の混合物を、温度を約10℃未満に維持しながら、シランと酢酸の冷却した混合物に滴下して加えた。次に、溶液の温度がゆっくりと室温に上昇する間、混合物を約16時間撹拌させた。別のガラス瓶で、アルコキシシランの一部(好ましくはシランとナノ粒子の1:1重量パーセント)とナノ粒子(アルミナ)を一緒に混合し、室温で約16時間撹拌し続けた。この後、両方の溶液を室温で一緒に混合し、そして1から2時間撹拌し続けた。次に、アルコールと残りの酢酸を加え、約12時間撹拌した後、TBAA触媒と流動添加剤を加えた。この後、配合物は、金属表面にコーティングする前に、熱風オーブン内で50℃で約5-6日間エージングされた。
【0128】
表1に記載された出発材料および上記の一般的な調製手順を使用して、例1-16の硬化性コーティング形成組成物は、以下の表2および3に記載された示された混合物から調製された。比較例の組成物を表4に示す。比較例は、例1-7と同様の方法で作製した。
【表2】
【表3】
【表4】
【0129】
例8-12
【0130】
ガラス瓶に酢酸とトリアルコキシシランを入れた。氷浴中で反応混合物を約10℃に冷却した後、シリカナノ粒子と水の混合物を、温度を10℃未満に維持しながら、シランと酢酸の冷却した混合物に滴下して加えた。シリカゾル添加後、ジルコニアゾルを滴下した。混合物を12-14時間撹拌し、次に溶媒を混合物に加えた。pHを6.5に調整し、アルミナゾルを滴下した。室温で60-90分間撹拌した後、酢酸を使用してpHを5.1に戻した。2時間後、TBAA触媒および流動添加剤を加えた。この後、金属表面にコーティングする前に、配合物を熱風オーブン内で50℃でエージングした。
【0131】
例13-16
【0132】
例13-16のコーティング溶液は、以下に記載される方法によって調製された。ガラス瓶に酢酸とトリアルコキシシランを入れた。氷浴中で反応混合物を約10℃に冷却した後、対応するアルミナゾルを冷却した混合物に滴下して加えた。混合物を2時間撹拌させた。シリカゾルと水の混合物を、温度を5-20℃に維持しながら混合物に滴下して加えた。4時間攪拌した後、ジルコニアゾルを加え、混合物が室温に温まる間、混合物を14-16時間攪拌した。2-プロパノールおよび1-ブタノールを混合物に加え、続いて酢酸の第2の部分を加えた。数時間撹拌した後、流動添加剤および触媒溶液を混合物に加えた。金属表面にコーティングする前に、配合物を50℃で数日間エージングさせた。
【0133】
例1-16の硬化性コーティング形成組成物をバルク/ベアアルミニウムパネルに適用し、そしてその上のコーティングを硬化させるための一般的な手順は、以下の通りであった。
【0134】
コーティング手順
【0135】
金属基材は最初にイソプロパノールで洗浄され、そして空気中で乾燥される。約10ミクロンのおよその厚さを有するコーティング層の適用は、任意の適切な手段によって、例えば、ディップ、フロー、またはスプレーコーティングによって実施することができる。フローコーティングを使用して、コーティング形成組成物の約10ミクロンの厚さの層をバルクアルミニウムパネルに適用した。
【0136】
硬化手順
【0137】
バルクアルミニウム基材にコーティングを適用した後、揮発性物質を約20-25℃で蒸発させ、約25-30分以内に粘着性のないコーティング層を形成した。次に、コーティングされたパネルを130-200℃の熱風オーブンで30-60分間ベークして、金属表面に完全に硬化した透明なハードコートを作成した。
【0138】
コーティングされた金属パネルの試験は、以下の表5に記載されているように実行された。
【表5】
【0139】
コーティング性能データは、以下のように表6-9に提示されている。
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0140】
マットコーティング組成物およびコーティング
【0141】
出発材料
【0142】
マットコーティング組成物の出発材料は、表10に記載されている。
【表10】
【0143】
最終的なマットコーティング形成組成物を調製する手順は、2つのステップを含む。第1のステップは、前述のように対応するクリアコート形成組成物を調製することであり、続いて、マット剤をクリアコート形成組成物に分散させることを含む第2のステップである。
【0144】
マット剤の分散
【0145】
透明コーティング組成物は、上述の例に関する上記の手順から得られた(例17および18は例2の手順に従って調製され、例19および20は例10の手順に従って調製された)。クリアコート組成物を丸底フラスコに入れ、そして必要量の官能化シリカベースのマット剤粒子を、室温で5-24時間、約800RPMで攪拌しながら加えた。次に、得られる混合物を、コーティングを適用する前に、500-750RPMで3-5分間遠心分離した(コーティングの欠陥を回避するよう、より大きな粒子を配合物から分離するため)。
【0146】
マットコーティング組成物でコーティングするための一般的な手順
【0147】
コーティングを適用する前に、アルミニウムの表面をイソプロパノールで洗浄し、そして空気中で乾燥させた。約10ミクロンの厚さの薄層コーティングの適用は、ディップ/フロー/スプレーコーティングによって達成することができる。アルミニウム基材にコーティングした後、揮発性物質は周囲条件(約20-25℃、30±10%RH)で蒸発し、25-30分以内に粘着性のないコーティング層が形成される。溶媒をフラッシュオフした後、コーティングされたパネルを130-200℃の熱風オーブンで30-60分間ベークして、アルミニウム表面に完全に硬化したマットコートを作成した。
【0148】
マットコーティング組成物(例17-20)
【0149】
マットコーティング組成物は、上記のように調製された。組成を表11に示す。
【表11】
【0150】
マットコーティング組成物の試験結果を表12に示す。
【表12】
【0151】
比較例
【0152】
比較例は、表13に記載された配合物を用いて調製された。
【表13】
【0153】
比較例CE-3およびCE-4は、例17-18と同じ手順に従って、しかし異なるマット剤を使用して調製された。しかしながら、CE-3およびCE-4配合物は、マット剤の分散後数時間(3-5時間)までしか使用できないことが見出されている。その時間を超えると、マット剤はコーティング形成配合物から沈降し始める。沈降した粒子は、激しく混合した後でも、比較例の組成物に完全に再分散せず、比較のコーティング配合物を再利用することはできない。表14は、新しいコーティング溶液CE-3およびCE-4から調製されたコーティングの試験結果をまとめている(マット剤を分散させた後、すぐにバルクAl表面にコーティングを適用)。
【0154】
比較例CE-5は、例2と同じ手順に従って調製された。CE-6は、実施の例10としての手順に従って調製された。
【0155】
【0156】
比較例CE-3およびCE-4は、いくつかの性能要件を満たすが、クロックメーター摩耗試験に不合格である。比較例のCE-5およびCE-6にはマット剤がないため、クリアコートのように挙動する。光沢値はコーティングされていない表面と同様であり、他の基本的なコーティングCTQを満たしている。
【0157】
表12より、例17は、最も性能の高いコーティング組成物であるという予備的な結果を示している。表15に、コーティングされていない陽極酸化Al、コーティングされていないバルクAl、およびコーティングされたバルクAlの比較テスト結果を示す(例13)。
【表15】
【0158】
本発明は、その特定の実施形態を参照して上記で説明されてきたが、本明細書に開示される本発明の概念から逸脱することなく、多くの変更、修正、および変形を行うことができる。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および広い範囲に含まれるそのようなすべての変更、修正および変形を包含することが意図されている。