(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】丸編み機において複合針でプレーティングを行う方法及び編み機
(51)【国際特許分類】
D04B 15/06 20060101AFI20240607BHJP
D04B 9/12 20060101ALI20240607BHJP
D04B 35/06 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
D04B15/06 A
D04B9/12
D04B35/06
(21)【出願番号】P 2021575039
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 EP2020064922
(87)【国際公開番号】W WO2020254089
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-05-16
(32)【優先日】2019-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500131561
【氏名又は名称】グロッツ-ベッケルト・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルンレ,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】シンメンディンガー,ローラント
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-242953(JP,A)
【文献】特開平09-041247(JP,A)
【文献】特表2019-531424(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第00294199(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 15/06
D04B 9/12
D04B 35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2本の糸(4、5)が複合針(3)のフック領域(7)に挿入され、ガイド手段(8)を介して、少なくとも1つのシンカー(6)が、前記糸(4、5)の少なくとも1本を前記複合針(3)の前記フック領域(7)の中へ更にニードルシャンク(9)に向かって案内し、そうすることによって前記糸(4、5)を分離した状態に維持するように、前記少なくとも1つのシンカー(6)が、シリンダ上に不動に配置され縦方向(L)及び横方向(Q)に延びるノックオーバーエッジ(2)に対して移動する丸編み機において、前記複合針によりプレーティングする方法であって、
前記シンカー(6)を、更に、前記ガイド手段(8)が前記糸(4、5)の少なくとも1本を少なくとも断面方向に追跡する運動を行うように、前記縦方向(L)と、前記縦方向(L)及び前記横方向(Q)に対して直交する高さ方向(H)とにおいて、前記ノックオーバーエッジ(2)へ向かって移動させることを特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも1本の弾性糸(4)と少なくとも1本の非弾性糸(5)とを、前記複合針(3)の前記フック領域(7)に挿入することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記シンカー(6)が少なくとも1本の弾性糸(4)又は少なくとも1本の非弾性糸(5)を少なくとも断面方向に追跡する運動の後、前記シンカー(6)を、ループのノックオーバー中に何れの糸にも接触しないように、前記縦方向(L)及び前記高さ方向(H)において戻るように移動させることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
ループがノックオーバーされた後、押さえ手段(10)を、前記複合針(3)の前記フック領域(7)の上で、外側又は内側から前記縦方向(L)に移動させることを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載の方法。
【請求項5】
前記複合針(3)がその最上部位置まで上昇したら、前記押さえ手段(10)及び前記ガイド手段(8)を後退させ、前記糸(4、5)を前記複合針(3)の前記フック領域(7)に挿入して前記ノックオーバーエッジ(2)に移動できるようにすることを特徴とする請求項
4記載の方法。
【請求項6】
複合針でプレーティングするための編み機(1)であって、縦方向(L)及び横方向(Q)に延びて不動に配置されたノックオーバーエッジ(2)を有するシリンダと、複合針(3)と、少なくとも2本の糸(4、5)と、該少なくとも2本の糸(4、5)を分離誘導するためのガイド手段(8)を有する少なくとも1つのシンカー(6)と、を含み、
前記少なくとも1つのシンカー(6)が、前記糸(4、5)の1本を追跡する前記ガイド手段(8)の移動によって、少なくとも1本の糸(4、5)をニードルシャンクに向かって前記複合針(3)のフック領域(7)の中へ更に案内し、それを少なくとも1本の他の糸(4、5)から分離して維持できるように、前記少なくとも1つのシンカー(6)は、前記ノックオーバーエッジ(2)に対して、縦方向(L)及び高さ方向(H)に移動可能に配置されていることを特徴とする編み機(1)。
【請求項7】
前記少なくとも2本の糸(4、5)は、少なくとも1本の弾性糸(4)と、少なくとも1本の非弾性糸(5)とを含むことを特徴とする請求項6記載の編み機(1)。
【請求項8】
前記ガイド手段(8)が、前記少なくとも1つのシンカー(6)の端縁によって形成され、前記端縁は、前記少なくとも1つのシンカー(6)の全ての移動段階の間、前記高さ方向(H)に対して平行であるエッジ部(11、12)を含み、前記糸(4、5)をガイドする及び/又はそれらを分離させておく隆起及び/又は窪みが、前記エッジ部(11、12)の間に配置されていることを特徴とする請求項6又は7記載の編み機(1)。
【請求項9】
前記編み機(1)が、押さえ手段(10)を含むことを特徴とする請求項6から8の何れか1項記載の編み機(1)。
【請求項10】
前記押さえ手段(10)が、前記少なくとも1つのシンカー(6)に配置されると共に、前記押さえ手段(10)が、前記少なくとも1つのシンカー(6)のエッジ(13)により形成されていることを特徴とする請求項9記載の編み機(1)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのシンカー(6)が前進したとき、前記押さえ手段(10)を形成している前記少なくとも1つのシンカー(6)の前記エッジ(13)は、前記ノックオーバーエッジ(2)と平行に移動することを特徴とする請求項10記載の編み機(1)。
【請求項12】
前記押さえ手段(10)は、少なくとも1つの追加のシンカー(14)に形成されていることを特徴とする請求項9記載の編み機(1)。
【請求項13】
前記追加のシンカー(14)は、前記複合針(3)の前記フック領域(7)の上で、外側又は内側から前記縦方向(L)に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項12記載の編み機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレーティングされた(plattierter)ニット商品を複合針で丸編みするための方法及び編み機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複合針を装着した丸編み機と、プレーティングされたニット商品の製造のための丸編み機との、双方の多くの異なる実施形態が、先行技術から知られている。
【0003】
独国特許出願公開第69024050号明細書翻訳文には、ループ形成時にも地糸とパイル糸とを保持する、下方に傾斜した押さえ及びノックオーバーシンカーを備えた丸編み機が示されている。開示された手順は、編み密度や糸の種類を変更した場合の設定調整を不要にすることが意図されている。また、示された掛け針に代えて、複合針を使用することも可能なことが記載されている。
【0004】
しかし、実際には、ラッチ閉鎖運動がないために、複合針のフックに複数の糸を挿入することは困難であることが判明している。ラッチ閉鎖運動とは、ラッチがフックに向かって閉じる運動であり、これによって、フック領域の外側にありながらフック領域に隣接する糸が、ラッチによってフック領域内に導かれることが可能となる。経験上、このような理由から、複合針はプレーティングされたニット製品の製造には使用されない。
【0005】
独国特許出願公開第4131508号明細書には、特に、複合針と糸挿入手段とを用いた、パイルニット生地の製造が記載されている。糸挿入手段は、挿入領域内で2本の糸を囲むことを目的としており、少なくともパイル糸については、ノックオーバーエッジとして機能する。
【0006】
上記のいずれの刊行物も、複合針を備えた丸編み機でプレーティングされたニット商品を製造するための、方法、編み機、又はシンカーのような編み具を開示していない。本発明において、「プレーティングされたニット商品」という用語は、特に、基布の表面より突出したループを有さないニット商品を示している。このようなループが突出しているニット製品は、パイル地として言及される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
記載された先行技術から出発して、本発明の目的は、複合針を備えた丸編み機で、プレーティングされたニット商品を信頼性高く、高い生産性で製造することができる、方法及び編み機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による方法では、少なくとも2本の糸が複合針のフック領域に導入される。この目的のために、先行技術の糸ガイドを使用してもよい。シンカーは、シリンダに不動に配置されて縦方向及び横方向に延びるノックオーバーエッジに対して、糸を分離誘導するためのガイド手段を介して、シンカーが糸の少なくとも1つを更に複合針のフック領域に、複合針のニードルシャンクに向かって誘導し、そうすることによって糸を分離したままにしておくような方法で移動される。シンカーは、ガイド手段が少なくとも断面方向(断面的)に少なくとも1本の糸を追跡する運動を行うように、縦方向ではノックオーバーエッジに対して平行に、縦方向及び横方向と直交する高さ方向ではそれに対して直角に移動する。好ましくは、少なくとも1本の弾性糸と少なくとも1本の非弾性糸とが、複合針のフック領域に挿入される。
【0009】
本発明で提供されるガイド手段の動きによって、全ての糸は、複合針のフックによって確実に捕捉され、更に、他の糸(複数可)に対して必要な順序及び/又は位置を維持する。加えて、追跡運動のために、特に弾性糸はその経路から不必要に変位させられることがなく、従って望ましくない振動が防止される。その結果、糸同士の必要な順序又は位置が、高速生産でも更に確実に維持される。更に、複合針の使用は、ラッチ針を使用した場合よりも高い生産速度を可能にする。
【0010】
シンカーは、好ましくは少なくとも断面方向に、又は少なくとも糸が複合針のフックによって確実に包含されるまで、糸を追跡する。ここで使用される「追跡運動」という用語は、シンカーに配置されたガイド手段が、少なくとも断続的に、糸の少なくとも1つの経路に対応する又は少なくとも密接に近似する、経路に沿って移動するように、シンカーが経路上を移動することを意味する。糸ガイドは、機械内に、固定点としての機械フレームに対して、不動に配置される。糸は、少なくとも大部分、その糸ガイド上の最後のたわみ点から、ループ形成が行われる位置まで斜め下方に向かう。糸が斜め下方に向かい、それに沿って糸が供給される経路は、多くの場合に静止している。つまり、引張応力を受けている糸は、見かけ上、機枠に対して動かない。これとは逆に、針及びシンカーは、シリンダ及びシンカーホルダーの回転運動によって糸ガイドを越えて移動する。針は更に、シリンダ軸と平行な方向に上昇及び下降運動を行い、滑りながら糸をフックで捕捉する。本発明によれば、シンカーは、シンカーホルダーによって与えられる回転運動に加えて、シンカーのガイド手段の運動経路が糸の少なくとも1つの斜め下方に向かう経路に追従するような種類の少なくとも1つの前進運動を行い、ガイド手段の運動経路すなわち軌跡が、糸の経路に断面的に対応する。糸は、少なくとも部分的に、シンカーのガイド手段によってガイドされ、特に、複合針のフック領域内に更にガイドされるので、少なくとも1本の糸の静止経路は、糸ガイドからループ形成位置までの直線経路ではないことが好ましいが、シンカーのガイド手段との最初の接触位置において、シンカーのガイド手段が糸と係合しない場合には形成されない、少なくとも1点の偏向ポイントを有している。
【0011】
プレーティングは、特に、スポーツの分野のための、高度に伸縮性のあるニット商品を製造するために、少なくとも1本の弾性糸と少なくとも1本の非弾性糸とが使用される編み物プロセスを指す場合がある。パイルニット地の形成は、本発明の対象ではない。例えば、綿は非弾性糸とみなされるが、エラスタンは典型的な弾性糸と本発明ではみなされる。
【0012】
複合針のフック領域は、一方ではフックの内周面とニードルシャンクの上端とによって制限され、他方では針の運動方向と平行に針のフック先端からニードルシャンクの上端まで向かう仮想線によって制限される、空間であると理解される。針が後退運動するとき、この空間に配置された糸を針のフックで包んで輪を形成することができる。
【0013】
ノックオーバーエッジは、縦方向及び横方向に延びている。ノックオーバーエッジは、横方向よりも縦方向に大きく延びている。ノックオーバーエッジは、シリンダと一体的に配置されてもよく、他には、シリンダに不動に接続された別部品として配置されてもよい。
【0014】
追跡運動は、直線的に行われてもよいし、揺動運動、すなわち曲線的に行われてもよい。これらの組合せも有利である。
【0015】
シンカーが少なくとも1本の弾性糸又は少なくとも1本の非弾性糸を少なくとも断面方向に追跡する運動の後、シンカーは、ループのノックオーバー中にいかなる糸にも接触しないように、縦方向及び高さ方向に戻るように移動する。特にパイル形成では、ループ形成中にパイルループをシンカーで保持する必要があるため、このような動きは不可能である。このようにシンカーが動ける時間が増えることで、シンカーによるパイル形成とは対照的に、シンカーの動きの順序を柔軟にすることが可能となり、例えばシンカーは、ループのノックオーバーを容易にするため、又は少なくともそれを妨げないために、早期に後退させることができる。シンカーは、パイルループを形成するために糸に接触する必要がないため、ループ形成中に後退させることも、既に後退させておくことも可能である。
【0016】
押さえ手段を前進させる、すなわち機能させることができる。しばしば、押さえることは、囲むこととも呼ばれる。従って、押さえる又は囲む機能を有するシンカーは、押さえシンカーと呼ばれることが多い。ループを押さえる必要があるのは、そうしないと針が上昇するときにループが針によって持ち上げられ、不均一なループ構造になってしまうからである。摩擦によるループの上昇は、一様には起こらない。押さえ手段は、シンカーに配置されてもよいし、追加のシンカーに配置されてもよい。複合針が上昇し始めるとき、押さえ手段は完全に前進した位置にあり、そこに吊り下げられたループを一緒に運ぶことができる。複合針が最上部の反転位置に達したとき、押さえ手段は引き抜かれるかもしれない。引き抜かれた状態では、押さえ手段は機能しない、すなわち、糸に接触することはない。追加のシンカーに配置する場合は、押さえ手段を複合針のフック領域の上で(uber)内側又は外側から移動させることができる。編み機に追加のシンカーを配置することにより、ガイド手段を有するシンカーを空間及び時間に関して更に柔軟に移動させることができ、例えば、糸の追跡運動をそれぞれの糸の経路と更にうまく調整することが可能になる。
【0017】
複合針がその最上部位置まで上昇したら、押さえ及びガイド手段を後退させることで、複合針のフック領域に糸を新たに挿入し、複合針のフックによってノックオーバーエッジまで移動させることができるようにする。
【0018】
複合針でプレーティングするための本発明による編み機は、縦方向及び横方向に延びるノックオーバーエッジを不動に配置したシリンダ、複合針、少なくとも2本の糸、及び少なくとも1つのシンカーを含む。シンカーは、少なくとも2本の糸を別々に案内するためのガイド手段を含む。シンカーは、糸を追跡するガイド手段の移動によって、少なくとも1本の糸を複合針のフック領域内にニードルシャンクに向かって更に案内し、少なくとも1本の他の糸(4、5)から分離しておくことができるように、ノックオーバーエッジに対して移動可能に配置されて、縦方向にはそれと平行に、縦方向及び横方向に対して直交する高さ方向にはそれと直角に移動可能である。編み機は、好ましくは、少なくとも1本の弾性糸と、少なくとも1本の非弾性糸とを含む。
【0019】
本発明で規定されるように、ガイド手段を有するシンカーの配置によって、全ての糸がフックによって確実に捕捉され、更に、他の糸(複数可)に対して必要な順序及び/又は位置を維持することができる。加えて、追跡運動のために、特に弾性糸は、その経路から不必要に変位しないので、望ましくない振動が防止される。その結果、糸の必要な順序は、高速生産においても、より確実に維持される。ノックオーバー機能が固定要素に割り当てられ、押さえ及び挿入機能が少なくとも1つの別個の要素に割り当てられる結果、ループ形成中にシンカーを停止させる必要がなく、これらを空間だけでなく時間の点でも柔軟に移動させることができる。
【0020】
シンカー上のガイド手段は、少なくとも1つのシンカーの端縁によって形成されてもよい。端縁は、少なくとも1つのシンカーの全ての移動段階において、高さ方向と平行なエッジ部を構成してもよい。糸を案内する及び/又は糸を分離させる隆起及び/又は窪みが、エッジ部の間に配置されてもよい。特に、3本以上の糸は、シンカーによって、フック領域に誘導され、分離された状態に保たれてもよい。
【0021】
少なくとも1つのシンカーは、少なくとも1つのシンカーのエッジによって形成される押さえ手段を含んでいてもよい。少なくとも1つのシンカーが前進したとき、少なくとも1つのシンカーの押さえ手段を形成し得るエッジは、ノックオーバーエッジと平行に移動することができる。
【0022】
押さえ手段は、少なくとも1つの追加のシンカーに形成されてもよい。追加のシンカーは、複合針のフック領域の上で、外側又は内側から縦方向に移動可能に配置されてもよい。
【0023】
編み機は、複合針、スライダー、シンカーなどの編物用具の動きを開始させるための装備、例えばカムやシリンダ駆動手段などを備えていてもよい。編み機は、更に、糸ガイド及び他の糸送りユニットを含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】ループ形成プロセス中のある瞬間における本発明に従う編み機を象徴的に示す図である。
【
図2】第2の瞬間における
図1の編み機を示している。
【
図3】第3の瞬間における
図1の編み機を示している。
【
図4】第4の瞬間における
図1の編み機を示している。
【
図5】第5の瞬間における
図1の編み機を示している。
【
図6】第6の瞬間における
図1の編み機を示している。
【
図7】第7の瞬間における
図1の編み機を示している。
【
図8】第8の瞬間における
図1の編み機を示している。
【
図9】複合針のフック領域の上で外側から把持できる追加のシンカーを有する、本発明に従う改良型編み機を示している。
【
図10】複合針のフック領域の上で内部から把持できる追加のシンカーを有する、本発明に従う更なる改良型編み物システムを示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、ループ形成プロセス中のある瞬間における、本発明による編み機1を象徴的に示す図である。複合針3は、ループをノックオーバーし、既に上昇を始めている。シンカー6は、最大退縮の位置にある。複合針3のフックには、少し前に予め所定の深さのループに形成されていた弾性糸4と非弾性糸5とが保持されている。非弾性糸5は、弾性糸4の下にあり、ノックオーバーエッジ2に接触したままである。複合針3のフック領域7は、波括弧で表現されている。この状態において、複合針3のフック領域7は、フック15とニードルシャンク9とスライダー16とによって完全に閉じられている。シンカー6は、
図1における左側の端部にガイド手段8を有しており、このガイド手段8は、例えば、高さ方向Hに対して平行に延びる2つのエッジ部11、12を有している。
図1に示されるシンカー6には、高さ方向Hに対して平行に延びる2つのエッジ部11、12と共に、各々が高さを境界にして2つの窪みが形成されている。シンカー6は、更に、高さ方向Hにおいて下へ向いたシンカー6のエッジにより形成された、押さえ手段10を含んでいる。縦方向L、高さ方向H、及び横方向Qが、座標系によって表現されている。
【0026】
図2~
図8は、
図1の編み機1をループ形成工程の他の段階において単に示すものである。従って、座標系及びいくつかの参照符号が、これらの図面では示されておらず、再び説明されない。
【0027】
図2において、複合針3は上昇を続けており、糸4及び5はもはやフック15によってノックオーバーエッジ2に押さえつけられてはいない。シンカー6は、そのエッジ13で糸14、15を押さえるために前進されており、複合針3と共に糸が上昇するのを防いでいる。
【0028】
図3において、複合針3は、その上方への移動が完了し、その最上部位置に到達している。糸4及び5は、複合針3のフック領域から離れ、シンカー6のエッジ13によって押さえつけられている。糸4及び5は、針3の上向き傾斜を乗り越えており、スライダー16がフック領域7を閉塞し、糸4及び5がスライダー16及びフック15を介してノックオーバーされることが可能となっている。
【0029】
図4において、複合針3は、その後退運動を開始しており、シンカー6は、その後退位置にあるので、複合針3のフック領域7に糸4及び5を新たに引き込むことができる。
【0030】
図5において、複合針3は、その後退運動を続けており、シンカー6は、そのガイド手段8で糸4に接触し始めるために十分に前進している。
【0031】
図6では、シンカー6が縦方向Lで更に前進し、更に高さ方向Hでノックオーバーエッジ2に接近したことは明らかである。この位置において、シンカー6は、フック領域7に糸4を固定し、更に糸4及び5を離間させたままである。
【0032】
図7において、最後に、2本の糸4及び5を有するフック領域7がスライダー16によって閉じられ、複合針3が後退運動を続けて更に下降したことにより、2本の糸4及び5は、複合針3のフック15内で互いに正しい順序及び正しい位置の状態になった。
【0033】
図8において、複合針3は、その最下部位置まで到達し、最後のループをノックオーバーした。シンカー6は、既に後退位置にあるため、高さ方向でフック領域7を覆わなくなり、ループノックオーバーの妨げになることはあり得ない。
【0034】
図9は、縦方向Lにおいて、複合針3のフック領域7の上で外部から把持できる追加のシンカー14を含む、本発明による改良型の編み機1を示している。
【0035】
図10は、縦方向Lにおいて、複合針3のフック領域7の上で内部から把持できる追加のシンカー14を含む、本発明による別の改良型の編み機1を示している。
【符号の説明】
【0036】
1:編み機、2:ノックオーバーエッジ、3:複合針、4:弾性糸、5:非弾性糸、6:シンカー、7:複合針(3)のフック領域、8:シンカー(6)のガイド手段、9:複合針(3)のニードルシャンク、10:押さえ手段、11:シンカー(6)上のエッジ部、12:シンカー(6)上のエッジ部、13:押さえ手段(10)を形成するシンカー(6)のエッジ、14:追加のシンカー、15:フック、16:スライダー、L:縦方向、Q:横方向、H:高さ方向