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特許7499812重合体粒子を含む消光剤、これを含む消光性高分子組成物及びこの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】重合体粒子を含む消光剤、これを含む消光性高分子組成物及びこの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 283/10 20060101AFI20240607BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240607BHJP
   C08F 2/18 20060101ALI20240607BHJP
   C09D 7/42 20180101ALI20240607BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
C08F283/10
C08F2/44 C
C08F2/18
C09D7/42
C08J3/22 CEZ
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022137832
(22)【出願日】2022-08-31
(65)【公開番号】P2023036048
(43)【公開日】2023-03-13
【審査請求日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】10-2021-0116569
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515299911
【氏名又は名称】ハンナノテク カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ハ ド ハン
(72)【発明者】
【氏名】キム ス ワン
(72)【発明者】
【氏名】ハ スン ウク
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-500499(JP,A)
【文献】特開昭56-112966(JP,A)
【文献】特開昭59-030818(JP,A)
【文献】特開平03-047858(JP,A)
【文献】特開平03-277630(JP,A)
【文献】特開平02-150414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60、251/00-283/00、
283/02-289/00、291/00-297/08
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 59/00-59/72
C08J 3/22
C09D 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニル化合物、不飽和ニトリル化合物及び脂環族エポキシ化合物を含む重合性組成物から製造され、
平均粒径が1~5000μmであり、前記脂環族エポキシ化合物のエポキシ基は開環したものである、懸濁重合体粒子。
【請求項2】
前記脂環族エポキシ化合物は2個以上のエポキシ基を有するものである、請求項1に記載の懸濁重合体粒子。
【請求項3】
前記脂環族エポキシ化合物は、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート、ジエチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、ジエチレングリコールビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサン-カルボキシレート)、3-メチル-1,5-ペンタンジオールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、1,5-ペンタンジオールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、エチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、エチレングリコールビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサン-カルボキシレート)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)オキサレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)スクシネート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート及び1,2,8,9-ジエポキシリモネンからなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載の懸濁重合体粒子。
【請求項4】
前記重合性組成物は、芳香族ビニル化合物100重量部に対して、不飽和ニトリル化合物を20~45重量部及び脂環族エポキシ化合物を2.5~25重量部含んで製造される、請求項1に記載の懸濁重合体粒子。
【請求項5】
前記重合性組成物は、RCOOH、RSOH及びこれらの塩化合物からなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の酸化合物をさらに含み、前記R及びRは独立してC6-30アルキル、C6-30アリールまたはC6-30アルキル基置換C6-30アリールである、請求項1に記載の懸濁重合体粒子。
【請求項6】
前記重合性組成物は、芳香族ビニル化合物100重量部に対して、前記酸化合物を0.05~1重量部で含む、請求項5に記載の懸濁重合体粒子。
【請求項7】
2価の-SO-を含むものである、請求項1に記載の懸濁重合体粒子。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の懸濁重合体粒子を含む光沢低下剤。
【請求項9】
請求項8に記載の光沢低下剤を含むマスターバッチチップ。
【請求項10】
請求項8に記載の光沢低下剤及び熱可塑性高分子を含む高分子組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性高分子は、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(polyamide)、スチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
請求項10に記載の高分子組成物を押出または射出して製造した成形品。
【請求項13】
芳香族ビニル化合物、不飽和ニトリル化合物及び脂環族エポキシ化合物を含む重合性組成物を懸濁安定剤を含む水溶液に分散させるステップと、
前記分散した重合性組成物を懸濁重合するステップと、を含み、
前記重合性組成物は、RCOOH、RSOH及びこれらの塩化合物からなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の酸化合物をさらに含み、
前記R及びRは独立してC6-30アルキル、C6-30アリールまたはC6-30アルキル基置換C6-30アリールである、懸濁重合体粒子の製造方法。
【請求項14】
前記重合性組成物は、芳香族ビニル化合物100重量部に対して、不飽和ニトリル化合物を20~45重量部及び脂環族エポキシ化合物を2.5~25重量部で含む、請求項13に記載の懸濁重合体粒子の製造方法。
【請求項15】
前記重合性組成物は、芳香族ビニル化合物100重量部に対して、前記酸化合物を0.05~1重量部で含む、請求項13に記載の懸濁重合体粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体粒子を含む消光剤、これを含む消光性高分子組成物及びこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の一般化に伴い、自動車産業では、軽量化イシューがますます重要となっており、このための様々な努力が試みられている。代表的には、車体の金属素材を軽くて高強度のエンジニアリングプラスチックに置き換えたり、既存のボルトナットの組み合わせで接合されていた部分を接着剤で固定するなど、金属素材を除去しようとする試み等である。
【0003】
また、自動車の内/外装材を塗装して多様な色感及び質感を表現していたことから、軽量化イシュー、環境的イシュー、塗装面の光反射による運転者の運行問題及びインテリアの高級化などにより、低光沢または無光沢の質感を有する製品に対する選好度が高まっている傾向にある。
【0004】
光沢を低下させるための方法として、樹脂を腐食面金型に射出することができるが、これは十分な消光効果を奏することができず、または無機フィラーを添加することはできるものの、過剰な量を使用した場合にのみ十分な消光効果を発揮することができ、過剰な量を使用すると、機械的強度が不十分になるため、非常に制限的に使用されている。
【0005】
米国公開特許US5580924Aでは、PCの光沢度を低下させるために、スチレン-アクリロニトリル共重合体を合成し、これを3,4-エポキシシクロヘキシル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレートとブレンドして反応押出機によって架橋化されたSANを製造していたが、前記先行技術は、反応押出時に黒点などのような表面異物が発生し、色の改善が難しく、架橋点の調節が難しくて加工時に溶解することができず、外観不良が発生するなど、優れた品質の成形品を製造するには限界がある。
【0006】
したがって、消光効果に優れ、機械的物性の低下がなく、優れた品質の外観を示すことができる消光性添加剤に対する研究開発が切実に求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のような従来技術の問題点を解決すべく、本発明は、懸濁重合を用いて重合体粒子を製造し、これを含む消光剤を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的は、前記消光剤を含む消光性高分子組成物を提供することであり、前記組成物を押出または射出加工して、優れた消光効果、機械的物性及び優れた外観品質を有する成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記の問題点を解決するために、従来は試みられなかった懸濁重合法で芳香族ビニル化合物、不飽和ニトリル化合物及び脂環族エポキシ化合物を含む重合性組成物から重合体粒子を製造した。前記重合体粒子は、比較的容易に架橋度を調節することができ、これを含む消光剤及び消光性高分子組成物の場合、驚くべきことに、従来の熱可塑性高分子の物性は低下させることなく、少量の添加だけでも優れた消光効果を示すことができ、優れた外観品質を有する成形品を製造することができることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
本発明は、芳香族ビニル化合物、不飽和ニトリル化合物及び脂環族エポキシ化合物を含む重合性組成物から製造され、平均粒径は1~5000μmであり、前記脂環族エポキシ化合物のエポキシ基は開環したものである重合体粒子を提供する。
【0011】
本発明の一実施形態によって、前記重合体粒子は懸濁重合して製造されることができる。
【0012】
本発明の一実施形態によって、前記脂環族エポキシ化合物は、2つ以上のエポキシ基を有するものであってもよく、前記脂環族エポキシ化合物は3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート、ジエチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、ジエチレングリコールビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサン-カルボキシレート)、3-メチル-1,5-ペンタンジオールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、1,5-ペンタンジオールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、エチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、エチレングリコールビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサン-カルボキシレート)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)オキサレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)スクシネート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート及び1,2,8,9-ジエポキシリモネンからなる群から選択される1つ以上であってもよい。
【0013】
本発明の一実施形態によって、前記重合性組成物は、芳香族ビニル化合物100重量部に対して、不飽和ニトリル化合物を20~45重量部及び脂環族エポキシ化合物を2.5~25重量部含んで製造されてもよい。
【0014】
本発明の一実施形態によって、前記重合性組成物は、RCOOH、RSOH及びこれらの塩化合物からなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の酸化合物をさらに含み、前記R及びRは独立してC6-30アルキル、C6-30アリールまたは 6-30 アルキル基置換C 6-30 アリールであってもよい。
【0015】
本発明の一実施形態によって、前記重合性組成物は、芳香族ビニル化合物100重量部に対して、前記酸化合物を0.05~1重量部で含むことができる。
【0016】
本発明の一実施形態によって、前記重合体粒子は2価の-SO-を含むことができる。
【0017】
本発明は、前記重合体粒子を含む消光剤を提供することができる。
【0018】
本発明は、前記消光剤を含むマスターバッチチップを提供することができる。
【0019】
本発明は、前記消光剤及び熱可塑性高分子を含む消光性高分子組成物を提供することができる。
【0020】
本発明の一実施形態によって、前記熱可塑性高分子は、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(polyamide)、スチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上であってもよい。
【0021】
本発明は、前記消光性高分子組成物を押出または射出して製造した成形品を提供することができる。
【0022】
本発明は、芳香族ビニル化合物、不飽和ニトリル化合物及び脂環族エポキシ化合物を含む重合性組成物を、懸濁安定剤を含む水溶液に分散させるステップと、前記分散した重合性組成物を懸濁重合するステップと、を含む重合体粒子の製造方法を提供することができる。
【0023】
本発明の一実施形態に係る重合体粒子の製造方法において、前記重合性組成物は、芳香族ビニル化合物100重量部に対して、不飽和ニトリル化合物を20~45重量部及び脂環族エポキシ化合物を2.5~25重量部で含むことができる。
【0024】
本発明の一実施形態に係る重合体粒子の製造方法において、前記重合性組成物は、RCOOH、RSOH及びこれらの塩化合物からなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の酸化合物をさらに含み、前記R及びRは独立して、C6-30アルキル、C6-30アリールまたは 6-30 アルキル基置換C 6-30 アリールであってもよい。
【0025】
本発明の一実施形態に係る重合体粒子の製造方法において、前記重合性組成物は、芳香族ビニル化合物100重量部に対して、前記酸化合物を0.05~1重量部で含むことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る重合体粒子は、懸濁重合法の簡単な工程により製造することができ、比較的架橋度の調節が容易であるという利点がある。また、前記重合体粒子を含む消光剤を使用して消光性高分子組成物を製造する場合、他の物性を低下させることなく効果的に消光性を発揮することができるため好ましい。
【0027】
また、前記消光性高分子組成物の場合、従来の熱可塑性高分子の衝撃強度及び引張強度のような機械的特性を低下させることなく、綺麗な外観を有しながらも、優れた消光効果を有する成形品を製造することができ、特に、従来は達成することが困難であった押出加工においても、優れた消光効果を発現することができるため、非常に好ましい。
【0028】
本発明の消光剤及びこれを含む消光性高分子組成物を用いて自動車の内/外装材用、インテリア用及び家電製品用などの様々な製品群に適用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を含む具体例または実施形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、下記の具体例または実施形態は、本発明を詳細に説明するための一つの参照であるだけで、本発明がこれに限定されるものではなく、様々な形態で実現することができる。
【0030】
また、他に定義されない限り、全ての技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する当業者のうち1つによって一般的に理解される意味と同一の意味を有する。本発明において説明に使用される用語は、特定の具体例を効果的に述べるためのものであり、本発明を制限することを意図しない。
【0031】
また、明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形は、文脈で特に指示がない限り、複数の形態も含むことを意図することができる。
【0032】
また、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは、特に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0033】
本明細書の用語「消光性」は、非相溶性高分子組成物において、高分子間及び高分子と添加剤間の収縮率及び屈折率の差または表面加工による乱反射効果によって光沢を低下させる性質を意味する。
【0034】
本明細書の用語「分散相」とは、分散媒質の全体にわたって分布した不連続相を意味し、具体的に、水を媒質として重合性組成物が液滴(droplet)状に分布した不連続相を意味することができる。
【0035】
以下、本発明の重合体粒子を含む消光剤、これを含む消光性高分子組成物及びこの製造方法について、好ましい実施形態及び物性の測定方法を詳細に説明する。
【0036】
本発明は、下記の実施形態によって、より容易に理解することができ、下記の実施形態は、本発明の例示目的のためのものであり、添付の特許請求の範囲によって限定される保護範囲を制限しようとするものではない。
【0037】
以下、本発明の一実施形態についてより詳細に説明する。
【0038】
本発明は、芳香族ビニル化合物、不飽和ニトリル化合物及び脂環族エポキシ化合物を含む重合性組成物から製造され、平均粒径は1~5000μmであり、前記脂環族エポキシ化合物のエポキシ基は開環したものである重合体粒子を提供する。
【0039】
前記重合体粒子の平均粒径はD50を意味するものであることができ、前記D50は、レーザ散乱法による粒度分布の測定において、小さい粒径から累積体積が50%になるときの粒子直径を意味する。ここで、D50は、重合体粒子についてKS A ISO 13320-1規格に従って粒子を採取し、Malvern社のMastersizer 3000を用いて粒度分布を測定することができる。具体的に、水を分散媒とし、必要な場合、超音波分散機を用いて分散させた後、Volume densityを測定することができるが、本発明がこれに限定されるものではなく、平均粒径を測定するために通常に使用されるか又は公知の方法を用いることができる。
【0040】
具体的に、前記重合体粒子の平均粒径は、1~5000μm、5~2000μm、または10~1500μmであってもよく、好ましくは50~1000μmであってもよい。前記範囲の平均粒径を有する重合体粒子の場合、少量の添加だけで他の物性を低下させることなく優れた消光効果を発現することができるため好ましい。また、前記重合体粒子は比較的球状の形状を有することができ、これを用いて良好な外観品質を有する成形品を製造することができるため好ましい。
【0041】
前記重合体粒子に含まれる脂環族エポキシ化合物のエポキシ基は開環した状態であってもよく、具体的に、前記開環したエポキシ基は、前記重合性組成物に含まれる他の化合物と反応して開環したものであってもよい。より具体的に、脂環族エポキシ化合物は、重合体と化学的に結合して重合体粒子内に含まれるものであってもよいが、必ずしもこれに制限されない。
【0042】
本発明の一実施形態によって、前記重合体粒子は懸濁重合して製造されたものであってもよい。従来技術で発生していた問題点を解決するために、懸濁重合を用いて懸濁重合体粒子を製造することができ、これを用いる場合、架橋度の調節が容易であり、優れた外観品質を有する成形品を製造することができ、少量の添加だけで優れた消光効果を発揮することができるため好ましい。
【0043】
本発明の一実施形態によって、前記芳香族ビニル化合物は、非制限的な例として、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、ρ-メチルスチレン、m-メチルスチレン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、t-ブチルスチレン、o-ブロモスチレン、ρ-ブロモスチレン、m-ブロモスチレン、o-クロロスチレン、ρ-クロロスチレン、m-クロロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、フルオロスチレン及びビニルナフタレンなどからなる群から選択された1つ以上であってもよく、好ましくは、スチレンを使用してもよい。
【0044】
前記不飽和ニトリル化合物は、非制限的な例として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル及びα-クロロアクリロニトリルなどからなる群から選択された1つ以上であってもよく、好ましくは、アクリロニトリルを使用してもよい。
【0045】
好ましくは、前記脂環族エポキシ化合物は、2個以上のエポキシ基を有してもよく、具体的に、前記脂環族エポキシ化合物は、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート、ジエチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、ジエチレングリコールビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサン-カルボキシレート)、3-メチル-1,5-ペンタンジオールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、1,5-ペンタンジオールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、エチレングリコールビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレート)、エチレングリコールビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサン-カルボキシレート)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)オキサレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)スクシネート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート及び1,2,8,9-ジエポキシリモネンなどからなる群から選択される1つ以上であってもよく、好ましくは、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサン-カルボキシレートを使用してもよい。他の例として、市販の製品としては、ダイセルケムのCEL-2021、CEL-3000及びCEL-2081などを使用することができる。
【0046】
本発明の一実施形態によって、前記重合性組成物は、芳香族ビニル化合物100重量部に対して、不飽和ニトリル化合物を1~90重量部、好ましくは10~70重量部、さらに好ましくは20~45重量部を含むことができ、前記脂環族エポキシ化合物を0.1~50重量部、好ましくは1~40重量部、さらに好ましくは2.5~25重量部または5~20重量部で含むことができる。前記範囲を満たす場合、反応安定性を保持することができ、本発明で目的とする物性を有する重合体粒子を製造することができるため好ましく、これを含む消光剤を少量添加しても消光効果が効果的に発揮できるため、さらに好ましい。
【0047】
また、前記芳香族ビニル化合物は、前記重合性組成物の全重量の50~90wt%で含まれてもよく、好ましくは65~80wt%で含まれてもよく、不飽和ニトリル化合物は10~50wt%、好ましくは20~35wt%で含まれてもよい。前記範囲を満たす場合、消光効果がさらに効果的に発揮でき、黄変現象を抑制することができ、色具現性能も向上できるため、さらに選好されることがあるが、本発明で目的とする物性を阻害しない限り、これに制限されない。
【0048】
本発明の一実施形態によって、前記重合性組成物は、RCOOH、RSOH及びこれらの塩化合物からなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の酸化合物をさらに含んでもよく、前記R及びRは独立してC6-30アルキル、C6-30アリールまたは 6-30 アルキル基置換C 6-30 アリールであってもよく、且つ、前記酸化合物の塩化合物は、RCOOM及びRSOMで表されてもよく、前記R及びRは、上述したものと同様であり、Mはカチオンであってもよい。前記Mは、アルカリ金属カチオンまたはアンモニウムカチオンであってもよく、非制限的な例として、Mはナトリウムイオン、カリウムイオン及びリチウムイオンからなる群から選択される1つ以上であってもよいが、これに制限されない。
【0049】
好ましくは、前記酸化合物はRSOHであり、前記R 6-18 アルキル基置換C 6-12 アリールであってもよく、一例として、ブチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸及びペンタデシルベンゼンスルホン酸などから選択されるものであってもよいが、これらに制限されない。前記酸化合物は、前記重合性組成物の芳香族ビニル化合物100重量部に対して、0.005~5重量部、好ましくは0.05~1重量部で含むことができる。
【0050】
また、前記重合体粒子は、2価の-SO-または-CO-置換基を含むことができ、具体的に-SO-置換基を含むことができる。前記2価の置換基は、重合性組成物に含まれた酸化合物と脂環族エポキシ化合物とが反応して形成されたものであってもよく、2価の置換基はヒドロカルビル基にそれぞれ結合したものであってもよい。前記2価の置換基は、高分子鎖に結合して含まれるものであってもよい。また、前記2価の置換基は、重合体粒子の表面に主に存在し、重合体粒子の表面において重合体の内部方向に2価の置換基の濃度が減少する濃度勾配を有することができる。前記濃度勾配は、懸濁重合メカニズムに由来したものであり得る。具体的に、酸化合物が分散相の界面に位置することにより、界面に位置する酸化合物と脂環族エポキシ化合物が界面での反応によって重合体粒子の表面に前記2価の置換基が高濃度で存在することができる。前記構造を有する重合体粒子は顕著な消光効果を発揮することができるため、さらに好ましい。
【0051】
具体的に、前記重合性組成物は、水(媒質)と混合して分散相を形成することができ、前記酸化合物又はこれらの塩化合物は分散相と水相の界面に位置し、前記重合性組成物が重合されるものであってもよい。前記重合性組成物に前記酸化合物をさらに添加して懸濁重合する場合、反応性を効果的に向上させることができ、堅固な架橋ネットワークを形成した重合体粒子を製造することができるため、非常に好ましい。
【0052】
本発明は、前記重合体粒子を含む消光剤を提供することができる。懸濁重合を完了した後、前記重合体粒子はビーズ(bead)状に収得され、これを脱水及び乾燥して消光剤として使用するものであってもよい。
【0053】
本発明は、前記消光剤を含むマスターバッチチップ(Master Batch Chip)を提供することができる。前記マスターバッチチップは熱可塑性高分子及び消光剤を含んでもよく、さらに酸化防止剤、UV吸収剤、UV安定剤、滑剤及びこれらの混合物などからなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の添加剤をさらに含むものであってもよい。前記添加剤は、一般的に使用されるか又は公知のものであれば、制限なく使用することができる。前記消光剤は、マスターバッチチップの全重量において0.1~50wt%、好ましくは5~30wt%で含まれるものであってもよい。前記範囲のマスターバッチチップを使用する場合、消光剤及び添加剤の分散性及び含量の均一性が向上し、高品質の製品(成形品)を製造することができるため好ましい。
【0054】
本発明は、前記消光剤及び熱可塑性高分子を含む消光性高分子組成物を提供することができる。前記消光剤は、少量の添加だけで従来の熱可塑性高分子の物性を低下させることなく効果的に消光性を発現することができ、稠密な架橋度を有し、前記熱可塑性高分子との分散性に優れる。これにより、従来技術の問題点を解決することができ、前記消光性高分子組成物を押出及び射出加工して機械的強度に優れた低光沢または無光沢の製品を製造することができる。
【0055】
本発明の一実施形態によって、前記熱可塑性高分子は、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリレート(polyacrylate)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(polyamide)、スチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリレート(ASA)及びこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上であってもよく、具体的に、PCとSANの混合物、PCとABSの混合物、またはPCとASAの混合物を使用することができるが、これらに制限されない。
【0056】
本発明の一実施形態によって、前記消光性高分子組成物は、前記消光剤0.1~30wt%及び前記熱可塑性高分子70~99.9wt%で含まれるものであってもよいが、これに制限されず、製造しようとする製品の表面光沢度に応じて、前記消光剤の投入量を調節することができる。
【0057】
本発明の一実施形態によって、前記消光性高分子組成物は、目的及び用途に応じて、当技術分野において一般的に使用される添加剤をさらに含むことができる。例えば、酸化防止剤、UV吸収剤、UV安定剤、滑剤などをさらに含むことができる。このとき、前記添加剤は、本発明が目的とする物性を阻害しない範囲内で適切な含量で含まれることができる。
【0058】
本発明の一実施形態によって、前記消光剤は、熱可塑性高分子を含んでマスターバッチチップとして製造された後に再び熱可塑性高分子と混合されてもよく、前記マスターバッチチップは添加剤をさらに含むものであってもよい。前記マスターバッチチップは、前記消光性高分子組成物の全重量において0.1~50wt%、好ましくは1~30wt%で含まれるものであってもよく、前記マスターバッチチップの投入量を調節して最終的に製造される製品における消光剤の含量を決定してもよい。
【0059】
本発明は、前記消光性高分子組成物を押出または射出して製造した成形品を提供することができる。従来、押出加工時に消光効果に優れた成形品を製造することが非常に困難であったが、本発明の重合体粒子を含む消光剤を適用した消光性高分子組成物の場合、特に押出加工において、粒子の突出による外観不良現象を効果的に抑制することができるだけでなく、従来の高分子の機械的特性を阻害することなく優れた消光性及び優れた品質の外観を有する成形品を製造することができるため、非常に好ましい。
【0060】
以下、本発明に係る重合体粒子の製造方法について詳細に説明する。
【0061】
本発明は、芳香族ビニル化合物、不飽和ニトリル化合物及び脂環族エポキシ化合物を含む重合性組成物を、懸濁安定剤を含む水溶液に分散させるステップと、前記分散した重合性組成物を懸濁重合するステップと、を含む重合体粒子の製造方法を提供することができる。
【0062】
前記懸濁重合は、本発明で目的とする重合体粒子を製造することができれば、公知又は通常に使用する方法を含んで制限なく使用することができる。なお、前記重合性組成物、芳香族ビニル化合物、不飽和ニトリル化合物及び脂環族エポキシ化合物に対する具体的な化合物の例示及び含量等についての具体的な説明は、前述したものと同様である。
【0063】
本発明の一実施形態に係る重合体粒子の製造方法において、前記重合性組成物は、RCOOH、RSOH及びこれらの塩化合物からなる群から選択されるいずれか1つまたは2つ以上の酸化合物をさらに含むことができ、前記酸化合物に対する詳細な説明及び具体的な化合物の例は、前述したものと同様である。
【0064】
また、前記重合性組成物に架橋剤がさらに含まれてもよい。前記架橋剤は、架橋可能な官能基が2個以上であれば、大きく制限されずに使用することができ、架橋剤に対する詳細な説明及び具体的な化合物の例は、前述したものと同様である。
【0065】
また、前記重合性組成物に分子量を調節するために分子量調節剤をさらに含むことができる。前記分子量調節剤としては、n-ドデシルメルカプタン、n-アミルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ノニルメルカプタンなどを使用することができ、前記芳香族ビニル化合物100重量部に対して、0.001~10重量部、好ましくは0.01~5重量部を使用することができるが、これに制限されない。
【0066】
本発明の一実施形態によって、前記重合性組成物を、懸濁安定剤を含む水溶液に分散させるステップは、脱イオン水に懸濁安定剤を溶解させた水溶液に重合性組成物、酸化合物及び開始剤を投入し、常温で撹拌及び分散させて重合性懸濁液を製造するステップであって、十分な時間及び撹拌速度で分散させることが好ましく、前記重合性懸濁液の分散性が安定するほど、反応安定性が良好である可能性がある。これに時間及び撹拌速度は大きく制限されないが、一例として、2Lの反応器サイズである場合、500rpm以上の撹拌速度で10分以上の撹拌時間を置いた方が良い。このとき、前記重合性懸濁液は、通常に使用されるか又は公知の懸濁安定補助剤、バッファ(pH調節剤)及び分子量調節剤などをさらに含むことができる。
【0067】
また、前記分散ステップでは、脱イオン水(水相)を媒質として前記重合性組成物が分散相を形成しており、前記分散相の液滴が均一に広がるように十分に撹拌することが好ましい。また、水相と分散相との界面に前記懸濁安定剤及び酸化合物又はこれらの塩化合物が位置することができ、外部の温度条件によって前記分散相の内部にある開始剤が開示され、前記分散相の内部及び当該界面で前記重合性組成物の重合が行われることができる。
【0068】
前記分散した重合性組成物を懸濁重合するステップは、反応器の内部温度を50~70℃に上昇させて反応を開始するステップであって、反応が進むにつれて発熱が発生することがあり、これを冷却器を用いて反応器の温度を65~75℃に一定に保持することが好ましい。前記反応時間は1~5時間であってもよい。また、前記重合ステップは、追加重合ステップを1回または2回以上さらに含むことができ、例えば、60℃~75℃の温度で30分~5時間追加重合を行い、次いで80℃~95℃の温度で30分~6時間追加重合を行うものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0069】
また、反応終結後には、脱水及び乾燥工程を経て水分の含有量が0.5wt%以下の白色粉末状態の重合体粒子を収得することができる。前記製造された重合体粒子に対する具体的な説明は、前述したものと同様である。
【0070】
前記懸濁安定剤は、前記分散相である重合性組成物と、脱イオン水である水相との間の界面エネルギーを下げて、さらに均一な分散相が保持され、安定した重合性懸濁液を製造可能にするため、懸濁重合が安定的に行われることができる。前記懸濁安定剤は、本発明で目的とする重合体粒子を製造することができれば、大きく制限されない。
【0071】
前記懸濁安定剤は、有機及び無機懸濁安定剤をいずれも使用することができ、非制限的な例として、前記懸濁安定剤としては、アクリル酸やメタクリル酸の単一重合体又は共重合体、ポリアルキルアクリレート-(メタ)アクリル酸(ポリエチルアクリレート-アクリル酸、ポリエチルアクリレート-メタアクリル酸及びポリエチルヘキシルアクリレート-アクリル酸など)、ポリオレフィン-マレイン酸、ポリビニルアルコール、セルロースなどを含む有機懸濁安定剤;トリカルシウムホスフェートなどを含む無機懸濁安定剤;これらの混合物などが挙げられるが、これらに制限されるものではなく、前記(メタ)アクリル酸は、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムの塩形態であってもよい。また、前記重合性組成物100重量部に対して、0.01~3重量部、好ましくは0.05~0.5重量部で含むことができるが、これに制限されない。
【0072】
前記懸濁安定補助剤としては、ジナトリウムヒドロゲンホスフェート及びナトリウムジヒドロゲンホスフェートなどが使用されてもよく、水溶性高分子や単量体の溶解度特性を制御するためにナトリウムスルフェートなどが添加されてもよいが、これに制限されない。
【0073】
前記酸化合物に対する説明及び具体的な化合物の例示は、前述したものと同様である。
【0074】
また、前記重合性組成物において、前記脂環族エポキシ化合物及び前記酸化合物の重量比は、1:0.001~0.5、好ましくは1:0.005~0.2、さらに好ましくは1:0.01~0.1であってもよい。前記範囲を満たす場合、反応安定性が保持でき、重合体粒子を比較的球状に製造することができるため好ましく、前記懸濁重合剤粒子を消光剤として使用する場合、機械的な物性の低下なしにも少量の添加だけで消光効果及び外観品質が向上した成形品を製造することができるため好ましい。
【0075】
本発明の一実施形態によって、前記開始剤は、前記重合性組成物に溶解する油溶性開始剤であってもよいが、一般的に懸濁重合に使用される開始剤又は公知の化合物であれば、特に制限なく使用することができる。例えば、ラジカル重合開始剤であってもよく、非制限的な例として、オクタノイルパーオキシド、デカノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、モノクロロベンゾイルパーオキシド、ジクロロベンゾイルパーオキシド、p-メチルベンゾイルパーオキシド、tert-ブチルパーベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル及びアゾビス-(2,4-ジメチル)-バレロニトリルなどを使用することができるが、これらに制限されるものではない。前記重合性組成物100重量部に対して、0.01~5重量部、好ましくは0.05~0.5重量部で含むことができるが、これに制限されない。
【0076】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、下記の実施例及び比較例は、本発明をさらに詳細に説明するための一つの例示に過ぎず、本発明が下記の実施例及び比較例によって制限されるものではない。
【0077】
[物性の測定方法]
1)平均粒径:粒度分析装置(Malvern社のMastersizer 3000)を用いて測定した。
2)表面光沢度(GLOSS):ASTM D523に基づいて60°及び85°で測定した。
3)IZOD衝撃強度(Noched IZOD Impact strength):衝撃強度をASTM D256に基づいて1/4”及び1/8”で測定した。
4)引張強度(tensile strength):引張強度をASTM D638に基づいて測定した。
【0078】
-重合体粒子の製造
[実施例1]
反応器に脱イオン水150g及びトリカルシウムホスフェート2.0gを投入し、撹拌して溶解させた。その後、スチレン65g、アクリロニトリル26g、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート9g、ドデシルベンゼンスルホン酸0.25g及びアゾビスイソブチロニトリル0.15gを含む重合性組成物を反応器に投入し、500rpm以上の撹拌速度で30分以上撹拌した。前記懸濁液の分散安定性を確認した後に、窒素雰囲気下で65℃に昇温及び撹拌しながら3時間懸濁重合を行った。その後、70℃で1時間昇温し、再び3時間反応し、90℃で1時間昇温及び4時間反応して懸濁重合を終了した。反応終了後に、洗浄、脱水及び乾燥ステップを経て、白色粉末状の実施例1に係る重合体粒子を最終的に収得した。前記重合体はビーズ状に収得され、測定された粒子の平均粒径は220μmであった。
【0079】
[実施例2]
前記実施例1において、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレートを5g投入したことを除き、実施例1と同様に行った。前記重合体ビーズ粒子の平均粒径は250μmと測定された。
【0080】
[実施例3]
前記実施例1において、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレートを12g投入したことを除き、実施例1と同様に行った。前記重合体ビーズ粒子の平均粒径は170μmと測定された。
【0081】
[実施例4]
前記実施例1において、懸濁安定剤としてトリカルシウムホスフェートの代わりに、ポリエチルアクリレート-メチルアクリル酸を使用したことを除き、実施例1と同様に行った。前記重合体ビーズ粒子の平均粒径は190μmと測定された。
【0082】
[実施例5]
前記実施例1において、重合性組成物の製造時にスチレンを86g及びアクリロニトリルを14g投入したことを除き、実施例1と同様に行った。前記重合体ビーズ粒子の平均粒径は210μmと測定された。
【0083】
[実施例6]
前記実施例5において、重合性組成物の製造時に3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレートを2g投入したことを除き、実施例5と同様に行った。前記重合体ビーズ粒子の平均粒径は270μmと測定された。
【0084】
[比較例1]
前記実施例1において、ドデシルベンゼンスルホン酸を投入せず、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレートの代わりに、ジビニルベンゼンを同量投入することを除き、実施例1と同様に行った。前記重合体ビーズ粒子の平均粒径は200μmと測定された。
【0085】
-射出成形品及び押出シートの製造
[実施例7~12及び比較例2~4]
PC(3020PJ)65.5wt%、ABS(IM-601)11.4wt%、SAN(92HR)18wt%及び酸化防止剤0.3wt%と、前記実施例1~6及び比較例1に係る重合体粒子4.7wt%を混合した後、押出機を介して消光性高分子組成物ペレットを得て、前記ペレットを乾燥して射出機で横、縦及び厚さが70mm×75mm×3.0mmの試験片と、単一シート押出機で横、縦及び厚さが100mm×75mm×2.0mmのシート状の試験片を製造した。製造した射出成形品及び押出シートの物性を測定し、下記表1に示した。
【0086】
[比較例5]
前記実施例7において、前記重合体粒子の代わりに、米国公開特許US5580924Aに係るSAN Gel-1を同量投入したことを除き、実施例7と同様に行った。製造した射出成形品及び押出シートの物性を測定し、下記表1に示した。
【0087】
【表1】
-BLENDEX BMAT:スチレン-アクリルニトリル共重合体
-XPHERE-NGR:スチレン-アクリロニトリル共重合体
【0088】
前記表1に示すように、本発明の重合体粒子を含んで消光性高分子組成物を押出または射出加工して製造したシート(成形品)の場合、表面光沢度が効果的に減少し、具体的に、本発明の重合体粒子をPC/ABSに適用した実施例の場合、衝撃強度、引張強度のような機械的物性では大きく変化せずに、市販の製品を適用した比較例3及び4より優れた消光効果を示していることを確認した。
【0089】
特に、比較例2~5の85°における表面光沢度が全て45以上であるのに対し、実施例7~11は全て25以下であることから見て、本発明に係る消光剤(重合体粒子)を使用する場合、従来は実現することが困難であった押出加工における消光効果を非常に効果的に奏することができることを確認した。また、適切に架橋度を調節した重合体粒子を使用した実施例7に係るシートの外観は良好であるのに対し、前記比較例5のシートは表面が非常に凹凸して均一でなく、多数の黒点が発生して不良と判断した。
【0090】
実施例5及び6の重合体粒子を使用した実施例11及び12を実施例7と比較してみると、前記重合性組成物に芳香族ビニル化合物100重量部に対して、不飽和ニトリル化合物を20~45重量部及び脂環族エポキシ化合物を2.5~25重量部含んで製造される重合体粒子の場合、さらに優れた消光効果を奏することが確認できた。
【0091】
また、前記実施例1~3の重合体粒子を使用した実施例7~9を比較してみると、前記脂環族エポキシ化合物及び酸化合物の重量比を1:0.005~0.2で含む場合、さらに優れた消光効果を奏することが確認できた。
【0092】
以上のように、本発明では、特定された事項と限定された実施形態及び図面により説明しているが、これは、本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から様々な修正及び変形が可能である。
【0093】
したがって、本発明の思想は説明された実施形態に局限して定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等または等価的な変形のある全てのものは、本発明の思想の範疇に属するといえる。