IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東陽實業廠股▲分▼有限公司の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】インテリジェントな透明遮光システム
(51)【国際特許分類】
   G09G 5/37 20060101AFI20240607BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20240607BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20240607BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
G09G5/37 100
G02F1/13 505
G02F1/133 575
G02F1/133 580
G09G5/00 510Z
G09G5/00 520A
G09G5/00 550C
G09G5/37 110
G09G5/37 320
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022182936
(22)【出願日】2022-11-15
(65)【公開番号】P2023075061
(43)【公開日】2023-05-30
【審査請求日】2022-11-15
(31)【優先権主張番号】63/280,692
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503356565
【氏名又は名称】東陽實業廠股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】林 宜冠
(72)【発明者】
【氏名】劉 立宣
【審査官】西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-242134(JP,A)
【文献】特表2020-502567(JP,A)
【文献】国際公開第2020/047486(WO,A1)
【文献】特開2005-297716(JP,A)
【文献】国際公開第2005/124431(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101470287(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 5/42
B60K 35/23
G02F 1/13
G02F 1/133
G06T 5/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に適用されるインテリジェントな透明遮光システムであって、
原運転画像を生成するカメラと、
アンチグレア画像を表示する透明ディスプレイと、
カメラ及び透明ディスプレイに信号的に接続され、前記カメラから前記原運転画像を受信し、前記原運転画像をグレースケール画像に変換し、予め設定された閾値に基づいて前記グレースケール画像をアンチグレア画像に変換し、表示のために前記アンチグレア画像を前記透明ディスプレイに送信するプロセッサと、を含み、
前記グレースケール画像内の各画素はグレースケール値を有し、前記アンチグレア画像内の各画素はグレースケール値を有し、
前記予め設定された閾値以下のグレースケール値を持つ前記グレースケール画像内の画素は、下限値に等しいグレースケール値を持つ前記アンチグレア画像内の画素にそれぞれ対応し、
前記予め設定された閾値よりも大きいグレースケール値を持つ前記グレースケール画像内の画素は、前記予め設定された閾値よりも大きいグレースケール値を持つ前記アンチグレア画像内の画素にそれぞれ対応し、
前記透明ディスプレイの遮光率は、前記アンチグレア画像内の画素のグレースケール値に対応
前記アンチグレア画像において、前記予め設定された閾値よりも大きいグレースケール値を持つ各画素は、マスク画素として定義され、前記下限値に等しいグレースケール値を持つ各画素は非マスク画素として定義され、
前記プロセッサは、前記アンチグレア画像内の各マスク画素をベースとして設定して、前記ベースに基づいてM×Nマトリックスを定義し、前記M×Nマトリックス内の前記非マスク画素を補助マスク画素として設定し、前記補助マスク画素のグレースケール値を、前記グレースケール画像の対応する画素のグレースケール値に等しくなるように設定し、M及びNは、2以上の正の整数であり、
前記透明ディスプレイは、前記アンチグレア画像における前記マスク画素の前記グレースケール値及び前記補助マスク画素の前記グレースケール値に基づいて表示する、ことを特徴とするインテリジェントな透明遮光システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記予め設定された閾値に基づいて前記グレースケール画像を二値化画像に変換し、次に、前記二値化画像の画素情報に基づいて前記グレースケール画像を前記アンチグレア画像に変換し、前記二値化画像内の各画素は強度値を有し、
前記プロセッサが前記グレースケール画像を前記アンチグレア画像に変換するとき、前記二値化画像における強度値が前記下限値に等しい画素に対応する前記アンチグレア画像内の前記グレースケール値は下限値に設定され、前記二値化画像における強度値が上限値に等しい画素に対応する前記アンチグレア画像内の前記グレースケール値は、前記グレースケール画像におけるものと同様に維持される、ことを特徴とする請求項1に記載のインテリジェントな透明遮光システム。
【請求項3】
プロセッサは、前記予め設定された閾値以下のグレースケール値を持つ前記グレースケール画像の画素を、前記下限値に等しいグレースケール値を持つ前記アンチグレア画像の画素として直接設定し、前記予め設定された閾値よりも大きいグレースケール値を持つ前記グレースケール画像の画素を、前記予め設定された閾値よりも大きいグレースケール値を持つ前記アンチグレア画像の画素として直接設定する、ことを特徴とする請求項1に記載のインテリジェントな透明遮光システム。
【請求項4】
前記ベースとしての前記マスク画素は、前記M×Nマトリックスの中心画素又は非中心画素である、ことを特徴とする請求項に記載のインテリジェントな透明遮光システム。
【請求項5】
前記グレースケール画像では、前記グレースケール値は、前記下限値以上かつ前記上限値以下であり、
前記二値化画像では、前記強度値は、下限値に等しいか、前記上限値に等しい、ことを特徴とする請求項2に記載のインテリジェントな透明遮光システム。
【請求項6】
前記グレースケール画像では、前記グレースケール値は、前記下限値以上かつ限値以下である、ことを特徴とする請求項3に記載のインテリジェントな透明遮光システム。
【請求項7】
前記下限値は0に等しく、前記上限値は255に等しく、前記予め設定された閾値は160以上かつ240以下の値である、ことを特徴とする請求項又はに記載のインテリジェントな透明遮光システム。
【請求項8】
車両に適用されるインテリジェントな透明遮光システムであって、
原運転画像を生成するカメラと、
アンチグレア画像を表示する透明ディスプレイと、
カメラ及び透明ディスプレイに信号的に接続され、前記カメラから前記原運転画像を受信し、前記原運転画像をグレースケール画像に変換し、予め設定された閾値に基づいて前記グレースケール画像をアンチグレア画像に変換し、表示のために前記アンチグレア画像を前記透明ディスプレイに送信するプロセッサと、を含み、
前記グレースケール画像内の各画素はグレースケール値を有し、前記アンチグレア画像内の各画素はグレースケール値を有し、
前記予め設定された閾値以下のグレースケール値を持つ前記グレースケール画像内の画素は、下限値に等しいグレースケール値を持つ前記アンチグレア画像内の画素にそれぞれ対応し、
前記予め設定された閾値よりも大きいグレースケール値を持つ前記グレースケール画像内の画素は、前記予め設定された閾値よりも大きいグレースケール値を持つ前記アンチグレア画像内の画素にそれぞれ対応し、
前記透明ディスプレイの遮光率は、前記アンチグレア画像内の画素のグレースケール値に対応し、
前記アンチグレア画像において、前記予め設定された閾値よりも大きいグレースケール値を持つ各画素は、マスク画素として定義され、前記下限値に等しいグレースケール値を持つ各画素は非マスク画素として定義され、
前記プロセッサは、前記アンチグレア画像内の各マスク画素をベースとして設定して、前記ベースに基づいてM×Nマトリックスを定義し、前記M×Nマトリックス内の前記非マスク画素を補助マスク画素として設定し、前記補助マスク画素のグレースケール値を、前記グレースケール画像の対応する画素のグレースケール値に等しくなるように設定し、M及びNは、2以上の正の整数であり、
前記透明ディスプレイは、前記アンチグレア画像における前記マスク画素の前記グレースケール値及び前記補助マスク画素の前記グレースケール値に基づいて表示する、ことを特徴とするインテリジェントな透明遮光システム。
【請求項9】
前記ベースとしての前記マスク画素は、前記M×Nマトリックスの中心画素又は非中心画素である、ことを特徴とする請求項8に記載のインテリジェントな透明遮光システム。
【請求項10】
車両に適用されるインテリジェントな透明遮光システムであって、
原運転画像を生成するカメラと、
アンチグレア画像を表示する透明ディスプレイと、
カメラ及び透明ディスプレイに信号的に接続され、前記カメラから前記原運転画像を受信し、前記原運転画像をグレースケール画像に変換し、予め設定された閾値に基づいて前記グレースケール画像をアンチグレア画像に変換し、表示のために前記アンチグレア画像を前記透明ディスプレイに送信するプロセッサと、を含み、
前記グレースケール画像内の各画素はグレースケール値を有し、前記アンチグレア画像内の各画素はグレースケール値を有し、
前記予め設定された閾値以下のグレースケール値を持つ前記グレースケール画像内の画素は、下限値に等しいグレースケール値を持つ前記アンチグレア画像内の画素にそれぞれ対応し、
前記予め設定された閾値よりも大きいグレースケール値を持つ前記グレースケール画像内の画素は、前記予め設定された閾値よりも大きいグレースケール値を持つ前記アンチグレア画像内の画素にそれぞれ対応し、
前記透明ディスプレイの遮光率は、前記アンチグレア画像内の画素のグレースケール値に対応し、
前記プロセッサは、前記予め設定された閾値に基づいて前記グレースケール画像を二値化画像に変換し、次に、前記二値化画像の画素情報に基づいて前記グレースケール画像を前記アンチグレア画像に変換し、前記二値化画像内の各画素は強度値を有し、
前記プロセッサが前記グレースケール画像を前記アンチグレア画像に変換するとき、前記二値化画像における強度値が前記下限値に等しい画素に対応する前記アンチグレア画像内の前記グレースケール値は下限値に設定され、前記二値化画像における強度値が上限値に等しい画素に対応する前記アンチグレア画像内の前記グレースケール値は、前記グレースケール画像におけるものと同様に維持され、
前記二値化画像では、前記上限値に等しい強度値を持つ各画素は、マスク画素として定義され、前記下限値に等しい強度値を持つ各画素は、非マスク画素として定義され、
前記プロセッサは、前記二値化画像内の各マスク画素をベースとして設定して、前記ベースに基づいてM×Nマトリックスを定義し、前記M×Nマトリックス内の前記非マスク画素を補助マスク画素として設定し、前記補助マスク画素の強度値を前記上限値に等しくなるように設定して過渡的な画像を形成し、前記過渡的な画像の各画素はグレースケール値を有し、
前記プロセッサは、前記過渡的な画像の前記マスク画素及び前記補助マスク画素のグレースケール値を、前記グレースケール画像の対応する画素のグレースケール値に等しくなるように設定し、
前記透明ディスプレイは、前記アンチグレア画像における前記マスク画素の前記グレースケール値及び前記補助マスク画素の前記グレースケール値に基づいて表示する、ことを特徴とするインテリジェントな透明遮光システム。
【請求項11】
前記ベースとしての前記マスク画素は、前記M×Nマトリックスの中心画素又は非中心画素である、ことを特徴とする請求項10に記載のインテリジェントな透明遮光システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光システムに関し、特に、インテリジェントな透明遮光システムに関する。
【背景技術】
【0002】
運転中、ドライバーは、目に不快感を与える可能性がある日光や対向車両のハイビームなどのグレア光源に遭遇することがある。さらに重要なのは、グレア光源の場合、ドライバーが前方の道路をはっきりと見ることができず、運転の安全性に不利になることである。特許文献1は、透明ディスプレイシステムを開示している。このシステムでは、フロントガラスに透明ディスプレイユニットが配置され、透明ディスプレイユニットは、遮光される投影領域で遮光機能を実現し、投影領域の形状は一般的には、円又は楕円として設定される。
【0003】
車両を運転する旅では、道路の景観は場所によって変わる。例えば、車は途中で、高い建物、高層建物、街路樹、及び広い場所などを通り抜けることがある。従って、道路の景観が変わると、ドライバーにとってグレア光源の形状が不規則になる。しかしながら、特許文献1では、透明ディスプレイユニットによって提供される遮光領域は円又は楕円である。円又は楕円の遮光領域は、グレア光源だけでなく、ノングレア光源の道路の景観も覆い、結果として過剰な遮光が生じることを理解しておく必要がある。全体的に、透明ディスプレイユニットを通してドライバーが見る道路の景観は暗いため、視線が悪いという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許第103985334号明細書
【発明の概要】
【0005】
上記の問題を鑑みて、本発明は、従来技術で開示されている円形又は楕円形の遮光領域に起因する過剰な遮光の不利な点を克服するためのインテリジェントな透明遮光システムを提供する。
【0006】
本発明のインテリジェントな透明遮光システムは、車両に適用され、
原運転画像を生成するカメラと、
アンチグレア画像を表示する透明ディスプレイと、
カメラ及び透明ディスプレイに信号的に接続され、前記カメラから前記原運転画像を受信し、前記原運転画像をグレースケール画像に変換し、予め設定された閾値に基づいて前記グレースケール画像をアンチグレア画像に変換し、表示のために前記アンチグレア画像を前記透明ディスプレイに送信するプロセッサと、を含み、
前記グレースケール画像内の各画素はグレースケール値を有し、前記アンチグレア画像内の各画素はグレースケール値を有し、
前記予め設定された閾値以下のグレースケール値を持つ前記グレースケール画像内の画素は、下限値に等しいグレースケール値を持つ前記アンチグレア画像内の画素にそれぞれ対応し、
前記予め設定された閾値よりも大きいグレースケール値を持つ前記グレースケール画像内の画素は、前記予め設定された閾値よりも大きいグレースケール値を持つ前記アンチグレア画像内の画素にそれぞれ対応し、
前記透明ディスプレイの遮光率は、前記アンチグレア画像内の画素のグレースケール値に対応する。
【0007】
本発明のインテリジェントな透明遮光システムによれば、カメラがグレア光源を捉えるとき、原運転画像は、グレア光源に対応する画素を含む。本発明は、原運転画像をアンチグレア画像に変換する。アンチグレア画像内の幾つかの画素のグレースケール値は、グレア光源の形状と輝度を直接反映することができる。つまり、グレア光源に対応するアンチグレア画像内の画素のグレースケール値は、マスクパターンとして表示できる予め設定された閾値よりも高くなる。
【0008】
従って、透明ディスプレイがアンチグレア画像を表示するとき、透明ディスプレイからのマスクパターン及び遮光率は、グレア光源の形状及び輝度に対応するため、グレア光源に対する遮光効果が提供される。従って、グレア光源の形状が不規則形状である場合、マスクパターンも対応する不規則形状である。グレア光源の輝度が高くなると、マスクパターンによって提供される遮光率も高くなる。一方、グレア光源の形状から除外された透明ディスプレイの他の部分は、光を遮蔽しない透明な状態を維持する。本発明は、従来技術における円形又は楕円形の遮光領域に起因する過剰な遮光の不利な点を効果的に克服するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のインテリジェントな透明遮光システムの概略ブロック図である。
図2】本発明におけるカメラ及び透明ディスプレイの概略図である。
図3】本発明におけるプロセッサ、カメラ、及び透明ディスプレイのコラボレーションのフローチャートである。
図4】本発明におけるカメラによってキャプチャされる原運転画像の概略図である。
図5A】本発明における原運転画像からアンチグレア画像への変換のフローチャートである。
図5B】本発明における原運転画像からアンチグレア画像への別の変換のフローチャートである。
図6】本発明における二値化画像(thresholding image)の概略図である。
図7A】本発明におけるグレースケール画像の画素マトリックスの例の概略図である。
図7B】本発明における二値化画像の画素マトリックスの例の概略図である。
図7C】本発明におけるアンチグレア画像の画素マトリックスの例の概略図である。
図8】本発明におけるアンチグレア画像内の画素のグレースケール値と透明ディスプレイの遮光率との間の関係を示すグラフである。
図9】ドライバーの前方のシーンの概略図であり、透明ディスプレイに表示されるアンチグレア画像がマスクパターンを含む。
図10A】本発明におけるグレースケール画像の画素マトリックスの別の例の概略図である。
図10B】本発明における図10Aから変換されたアンチグレア画像の画素マトリックスの概略図であり、アンチグレア画像がマスク画素を含む。
図10C】本発明における図10Bから変換されたアンチグレア画像の画素マトリックスの概略図であり、アンチグレア画像がマスク画素及び補助マスク画素を含む。
図10D】本発明における図10Bから変換された別のアンチグレア画像の画素マトリックスの概略図であり、アンチグレア画像がマスク画素及び補助マスク画素を含む。
図10E】本発明における図10Aから変換された二値化画像の画素マトリックスの概略図である。
図10F】本発明における図10Eから変換された過渡的な画像の画素マトリックスの概略図である。
図11】ドライバーの前方のシーンの概略図であり、透明ディスプレイによって表示されるアンチグレア画像がマスクパターン及び補助マスクを含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のインテリジェントな透明遮光システムは、自動車、スポーツ・ユーティリティ・ビークル、鉄道車両などの車両に適用できるが、これらに限定されない。本発明は、車両前方からの強い光をドライバーに自動的に遮蔽して、ドライバーが強い光によるグレアを感じるのを防ぐことができる。同時に、本発明により、ドライバーは、車両前方のノングレアシーンをはっきりと見ることができるため、前方の道路状況を考慮に入れることができる。図1及び図2を参照すると、本発明のインテリジェントな透明遮光システムの実施形態は、カメラ10、透明ディスプレイ20、及びプロセッサ30を含む。
【0011】
カメラ10の撮影方向は、ドライバーが運転しているときのドライバーの視線に対応し、車両前方に向かっているので、カメラ10は原運転画像IM_inを生成する。好ましくは、カメラ10はドライバーの目と同じ高さに配置される。カメラ10は、調整可能なラック(図示せず)上に取り付けられてもよい。調整可能なラックは、運転中のドライバーの視線に対応する方向にカメラ10が撮影可能である限り、例えば、フロントガラスなどの内側に固定されてもよく、又は透明ディスプレイ20のフレーム又はハウジングに組み込まれてもよい。
【0012】
透明ディスプレイ20は、透明液晶ディスプレイスクリーン又は透明有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイスクリーンであってもよい。透明ディスプレイ20は、ドライバーの視線の前方に配置される。ドライバーは、透明ディスプレイ20を通して車両前方のシーンを見ることができる。透明ディスプレイが20ドライバーの視線の前方に配置できる限り、透明ディスプレイ20は、フロントガラスの内側に固定することができ、又は、別の調整可能なブラケット(図示せず)に配置することができる。また、透明ディスプレイ20は、眼鏡フレームに取り付けられる眼鏡レンズの構成における透明液晶ディスプレイパネル又は透明OLEDディスプレイパネルであってもよい。ドライバーが眼鏡フレームを装着すると、ドライバーは、透明ディスプレイ20を通して車両前方のシーンを見ることができる。
【0013】
プロセッサ30は、マイクロコントロールユニット(MCU)、中央処理ユニット(CPU)、又はグラフィックプロセッシングユニット(GPU)の回路モジュールであってもよい。プロセッサ30は、カメラ10及び透明ディスプレイ20に信号的に接続される。例えば、プロセッサ30は、低電圧差動信号(LVDS)又はエンベデッドディスプレイポート(Embedded Display Port、EDP)コネクタ及びケーブルを介してカメラ10及び透明ディスプレイ20にそれぞれ接続することができる。また、プロセッサ30が画像を処理する際、プロセッサ30は、画素座標に従って画像内の画素の位置を規定し、グレースケール値や強度値などの各画素の色情報を読み書きすることができることも理解できる。図1図3を参照しながら、プロセッサ30によって実行されるステップを以下に説明する。
【0014】
ステップS01:プロセッサ30は、カメラ10から原運転画像IM_inを受信する。原運転画像IM_inの例は、図4を参照できる。一般に、原運転画像IM_inはカラー画像である。カメラ10の撮影方向は、運転中のドライバーの視線に対応するため、原運転画像IM_inの内容は、ドライバーの目で見られるシーンに対応する。原運転画像IM_inは、車両前方の道路41、街路樹42、及び空43を含む。説明の便宜上、空43には眩しい日光がある。
【0015】
ステップS02:図5Aを参照すると、プロセッサ30は、グレースケール変換を実行して、原運転画像IM_inをグレースケール画像IM_gに変換する。グレースケール変換は、画像処理の分野の一般常識である。グレースケール画像IM_g内の各画素は、グレースケール値を有する。プロセッサ30は、グレースケール画像IM_g内の各画素のグレースケール値をメモリに記憶することができる。グレースケール値は、下限値以上かつ上限値以下である。例えば、下限値は0にすることができ、上限値は255にすることができる。即ち、グレースケール値は、0以上かつ255以下である。グレースケール画像IM_gでは、グレースケール値が0の画素は純黒色に見える。グレースケール値が大きくなると、画素の色調は濃い灰色から薄い灰色に変わる。従って、グレースケール値が255の画素は純白色に見える。図4を例にとると、図4の空43には眩しい日光がある。従って、空43に対応するグレースケール画像IM_gの幾つかの画素は、より高いグレースケール値を有することが理解できる。
【0016】
ステップS03:プロセッサ30は、グレースケール画像IM_gをアンチグレア画像IM_outに変換する。アンチグレア画像IM_out内の各画素はグレースケール値を有する。ステップS03の第1実施形態では、プロセッサ30は、二値化変換(thresholding conversion)を実行して、グレースケール画像IM_gを二値化画像IM_thに変換し、次に、二値化画像IM_thの画素情報に基づいてグレースケール画像IM_gをアンチグレア画像IM_outに変換する。また、ステップS03の第2実施形態では、プロセッサ30は、グレースケール画像IM_gをアンチグレア画像IM_outに直接変換してもよい。ステップS03の第1実施形態及び第2実施形態は、以下のように開示される。
【0017】
1.ステップS03の第1実施形態:
グレースケール画像IM_gから二値化画像IM_thへの二値化変換は、画像処理の分野の一般常識である。従って、二値化画像IM_th内の各画素は強度値を有し、且つ強度値は下限値(0)又は上限値(255)に等しい。本発明の実施形態では、プロセッサ30は、グレースケール画像IM_g内の各画素のグレースケール値を、予め設定された閾値と比較する。予め設定された閾値は、160以上かつ240以下の値であってもよく、即ち、160≦予め設定された閾値≦240であってもよい。プロセッサ30は、グレースケール値が予め設定された閾値以下のグレースケール画像IM_g内の画素を、強度値が下限値(0)である二値化画像IM_thの画素として設定し、グレースケール値が予め設定された閾値以上のグレースケール画像IM_g内の画素を、強度値が上限値(255)である二値化画像IM_th内の画素として設定する。また、プロセッサ30は、二値化画像IM_th内の各画素に対応する強度値をメモリに記憶する。図6は、図4に対応する二値化画像IM_thである。二値化画像IM_thのすべての画素のうち、図4に対応する空43の幾つかの画素の強度値は255であり、マスクパターン50が表現される。空43から除外された他の部分44の画素の強度値は、0である。
【0018】
二値化画像IM_thが生成された後、プロセッサ30は、二値化画像IM_thの画素座標及び強度値を含む画素情報に基づいてグレースケール画像IM_gをアンチグレア画像IM_outに変換する。本発明では、二値化画像IM_thにおける強度値が下限値(0)に等しい画素に対応するアンチグレア画像IM_outにおけるグレースケール値は、プロセッサ30によって下限値(0)に設定される。二値化画像IM_thにおける強度値が上限値(255)に等しい画素に対応するアンチグレア画像IM_outにおけるグレースケール値は、プロセッサ30によってグレースケール画像IM_gにおけるものと同様に維持される。即ち、予め設定された閾値以下のグレースケール値を持つグレースケール画像IM_gにおける画素は、下限値(0)に等しいグレースケール値を持つアンチグレア画像IM_outにおける画素にそれぞれ対応する。予め設定された閾値よりも大きいグレースケール値を持つグレースケール画像IM_gにおける画素は、予め設定された閾値よりも大きいグレースケール値を持つアンチグレア画像IM_outにおける画素にそれぞれ対応する。よって、アンチグレア画像IM_outも、図6に示すようにマスクパターン50を含む。アンチグレア画像IM_outのマスクパターン50の画素は、予め設定された閾値よりも大きい、グレースケール画像IM_gの対応する画素と同じグレースケール値を有する。図6中の他の部分44に対応するアンチグレア画像IM_out内の画素のグレースケール値は0である。
【0019】
以下は、ステップS02からステップS03の第1実施形態までの画像処理について、簡単な図の例を通して説明する。図7Aは、6×6-画素マトリックスにおけるグレースケール画像IM_gの画素情報を示し、この画素情報は、括弧で囲まれた画素座標及び画素座標の下にあるグレースケール値を含む。図7Bは、図7Aに対応する二値化画像IM_thの画素情報を示す。ここで、予め設定された閾値を230に設定することができるため、図7A中のグレースケール値が230以下の画素は、図7B中の強度値が0に等しい画素に対応する。図7A中のグレースケール値が230よりも大きい画素は、図7B中の強度値が255に等しい画素に対応する。図7Cは、グレースケール画像IM_g及び二値化画像IM_thの画素情報に基づいて生成されたアンチグレア画像IM_outである。図7C中のグレースケール値が0である画素は、図7B中の強度値が0に等しい画素に対応する。図7Cでは、非ゼロのグレースケール値を持つ画素の座標は、図7B中の強度値が255に等しい画素の座標に対応する。予め設定された閾値よりも大きい図7C中の非ゼログレースケール値は、図7A中の対応する画素のグレースケール値に対応する。
【0020】
2.ステップS03の第2実施形態:
本発明のステップS03の第2実施形態では、図5Bに示すように、プロセッサ30は、予め設定された閾値に基づいて、グレースケール画像IM_gをアンチグレア画像IM_outに直接変換する。即ち、プロセッサ30は、グレースケール画像IM_gを二値化画像IM_thに変換しない。グレースケール画像IM_gの各画素のグレースケール値を予め設定された閾値と直接比較することによって、プロセッサ30は、予め設定された閾値以下のグレースケール値を持つグレースケール画像IM_gの画素を、下限値(0)に等しいグレースケール値を持つアンチグレア画像IM_outの画素として設定し、予め設定された閾値よりも大きいグレースケール値を持つグレースケール画像IM_gの画素を、予め設定された閾値よりも大きいグレースケール値を持つアンチグレア画像IM_outの画素として設定する。即ち、上記の図7Aは、図7Cに直接変換される。ステップS03の第1実施形態と比較すると、二値化変換がないステップS03の第2実施形態は、画像変換速度及び効率を比較的向上させる可能性がある。
【0021】
ステップS04:プロセッサ30は、アンチグレア画像IM_outを透明ディスプレイ20に送信する。透明ディスプレイ20は、アンチグレア画像IM_out内の各画素のグレースケール値に基づいて表示する。従って、アンチグレア画像IM_outも、図6に示すようにマスクパターン50を含む。透明ディスプレイ20に表示されるグレースケール値が0の画素は、最小遮光率(0%)に対応する透明状態に相当することが理解できる。それに対し、透明ディスプレイ20は、最大遮光率(100%)に対応するグレースケール値が255の画素を純黒色として表示する。同じように続くと、図8に示すように、透明ディスプレイ20の遮光率は、アンチグレア画像IM_out内の各画素のグレースケール値(予め設定された閾値Vthよりも大きい)に正に比例する。
【0022】
ドライバーの前方のシーンを示す図9を参照されたい。透明ディスプレイ20がアンチグレア画像IM_outを表示すると、図4に示すように、マスクパターン50の分布範囲は、空43における眩しい日光の位置をカバーし、それによって遮光効果を実現する。車両が移動するにつれて、車両前方のシーンは連続的に変化することも理解できる。プロセッサ30によって受信された原運転画像IM_in内の強光分布領域(眩しい日光)も変化する。ステップS02~S04の画像処理に基づいて、アンチグレア画像IM_outのマスクパターン50も動的に変更され、原運転画像IM_in内の強光分布領域に合わせることができる。
【0023】
アンチグレア画像IM_outのマスクパターン50の遮光範囲を拡大するために、本発明は、以下の実施形態及び簡単な図例を提供して、マスクパターン50から拡大される補助マスクの形成を開示する。図10Aは、6×6-画素マトリックスで表される別のグレースケール画像IM_gの画素情報を示す。
【0024】
1.補助マスクを形成する第1実施形態
上記ステップS02及びS03を参照すると、プロセッサ30は、図10Aに示すようなグレースケール画像IM_gを、図10Bに示すようなアンチグレア画像IM_outに変換してもよい。さらに、アンチグレア画像IM_outでは、予め設定された閾値よりも大きいグレースケール値を持つ各画素は、マスク画素として設定され、下限値(0)に等しいグレースケール値を持つ各画素は、非マスク画素として設定される。結果として、マスク画素の座標は、(0,0)、(0,1)、(1,1)、(3、3)及び(5、5)を含み、残りの画素は非マスク画素である。プロセッサ30は、アンチグレア画像IM_out内の各マスク画素をベースとして設定して、前記ベースに基づいてM×Nマトリックスを定義し、M×Nマトリックスにおける非マスク画素を補助マスク画素として設定し、補助マスク画素のグレースケール値を、グレースケール画像IM_gの対応する画素のグレースケール値に等しくなるように設定する。M×Nマトリックスを定義するベースとしてのマスク画素は、M×Nマトリックスの中心画素であってもよい。また、M×Nマトリックスを定義するベースとしてのマスク画素は、コーナー画素又はエッジ画素など、M×Nマトリックスの非中心画素であってもよい。MとNは、調整可能な予め設定された値であり、MとNはそれぞれ2以上の正の整数であり、MはNに等しくても等しくなくてもよい。例えば、M=N=3、及び予め設定された閾値は230である。従って、図10Bに示すように、3×3マトリックスは、ベース(中心)としての各マスク画素に基づいて定義される。マスク画素の座標(3、3)を例にとると、その補助マスク画素は、座標(2,2)、(3,2)、(4,2)、(2,3)、(4,3)、(2,4)、(3,4)及び(4,4)における画素を含む。残りのマスク画素の拡大は、(3,3)におけるマスク画素から推測できる。従って、図10C図10Bと比較すると、図10Cのアンチグレア画像IM_out2には、マスク画素だけでなく、補助マスク画素もある。マスク画素及び補助マスク画素は全体として、遮光範囲の拡大を実現するように、遮光画素(マスク画素及び補助マスク画素を含む)の分布が図10Bよりも広い。
【0025】
上記のように、補助マスク画素のグレースケール値は、グレースケール画像IM_gの対応する画素のグレースケール値に等しくなるように設定される。また、図10Dを参照すると、補助マスク画素のグレースケール値は、予め設定された閾値に等しくなるように設定することができる。従って、図10Bと比較すると、図10Dのアンチグレア画像IM_out2は、予め設定された閾値以上のグレースケール値を持つ画素が多く、遮光範囲の拡大を実現するために、遮光画素(マスク画素及び補助マスク画素を含む)の分布がより広い。
【0026】
2.補助マスクを形成する第2実施形態
上記のステップS02とステップS03の第2実施形態とを参照すると、プロセッサ30は、図10Aに示すようなグレースケール画像IM_gを、図10Eに示すような二値化画像IM_thに変換してもよい。さらに、図10Eでは、上限値(255)に等しい強度値を持つ各画素は、マスク画素として定義され、下限値(0)に等しい強度値を持つ各画素は、非マスク画素として定義される。結果として、マスク画素の座標は、(0,0)、(0,1)、(1,1)、(3、3)及び(5、5)を含み、残りの画素は非マスク画素である。プロセッサ30は、二値化画像IM_th内の各マスク画素をベースとして設定して、前記ベースに基づいてM×Nマトリックスを定義し、M×Nマトリックスの非マスク画素を補助マスク画素として設定し、補助マスク画素の強度値を上限値(255)に等しくなるように設定して、図10Fに示すような過渡的な画像(transitional image)IM_xを形成する。過渡的な画像IM_xの各画素はグレースケール値を有する。マスク画素は、M×Nマトリックスの中心又は非中心に定義されてもよい。MとNは、調整可能な予め設定された値であり、MとNはそれぞれ2以上の正の整数であり、MはNに等しくても等しくなくてもよい。例えば、M=N=3、及び予め設定された閾値は230である。従って、図10Fに示すように、3×3マトリックスは、ベース(中心)としての各マスク画素に基づいて定義される。マスク画素の座標(3、3)を例にとると、その補助マスク画素は、座標(2,2)、(3,2)、(4,2)、(2,3)、(4,3)、(2,4)、(3,4)及び(4,4)における画素を含む。残りのマスク画素の拡大は、(3,3)におけるマスク画素から推測できる。従って、図10F図10Eと比較すると、図10Fの過渡的な画像IM_xは、上限値(255)に等しいグレースケール値を持つ画素が図10Eよりも多く、遮光画素(マスク画素及び補助マスク画素を含む)の分布が図10Eよりも広い。そして、前記プロセッサ30は、前記過渡的な画像IM_xの前記マスク画素及び前記補助マスク画素のグレースケール値を、前記グレースケール画像IM_gの対応する画素のグレースケール値に等しくなるように設定する。従って、図10Fに示すような過渡的な画像IM_xは、図10Cに示すようなアンチグレア画像IM_out2に変換することができる。
【0027】
補助マスク画素の生成原理は、上記で説明されている。従って、ステップS04では、プロセッサ30は、マスク画素及び補助マスク画素を含むアンチグレア画像IM_out2を透明ディスプレイ20に送信する。透明ディスプレイ20は、アンチグレア画像IM_out2内のマスク画素及び補助マスク画素のグレースケール値に基づいて表示する。図11を参照すると、透明ディスプレイ20がアンチグレア画像IM_out2を表示するとき、マスクパターン50に加えて、補助マスク画素によって形成される補助マスク51をさらに含む。補助マスク51は、図4に示される原運転画像IM_inの空43の形状に沿って、依然として遮光を提供するので、本実施形態は、マスクパターン50と補助マスク51の組み合わせによって、より広い範囲の遮光効果を提供することができる。
【0028】
要約すると、本発明は、以下のような効果を達成し得る。
1.カメラ10がグレア光源をキャプチャすると、アンチグレア画像IM_out内の幾つかの画素のグレースケール値は、グレア光源の形状と輝度を直接反映する。透明ディスプレイ20がアンチグレア画像IM_outを表示するとき、透明ディスプレイ20によって提供されるマスクパターン50の形状と遮光率は、遮光効果を提供するように、グレア光源の形状と輝度に対応することができる。グレア光源の形状から除外された透明ディスプレイ20の他の部分は、光を遮蔽しない透明な状態を維持する。
【0029】
2.車両が進むにつれて、車両前方のシーンは連続的に変化し、アンチグレア画像IM_outのマスクパターン50も動的に変化する。マスクパターン50の形状は、常にグレア光源の形状に対応する。
【0030】
3.マスクパターン50及び補助マスク51の組み合わせにより、より広い範囲の遮光効果を提供することができる。補助マスク51はまだグレア光源の形状に沿って遮光を提供し、それにより、過度な遮光が生じることはない。
【0031】
4.カメラ10が複数のグレア光源をキャプチャした場合でも、アンチグレア画像IM_outは、グレースケール画像IM_g及び二値化画像IM_thの画素情報に基づいて生成される。アンチグレア画像IM_out内の幾つかの画素のグレースケール値は、複数のグレア光源の形状と輝度をそれぞれ直接反映することが理解できる。従って、がアンチグレア画像IM_outを表示するとき、透明ディスプレイ20は、複数のグレア光源に対する遮光効果を提供するように、複数のグレア光源に対応する複数のマスクパターン50を表示することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11