(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】コンタクトレンズ用眼科組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/04 20060101AFI20240607BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
A61K47/04
A61K9/08
(21)【出願番号】P 2022199506
(22)【出願日】2022-12-14
(62)【分割の表示】P 2018176013の分割
【原出願日】2018-09-20
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2017182978
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鄭 翔
(72)【発明者】
【氏名】宮野 貴之
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-224628(JP,A)
【文献】特開2014-108960(JP,A)
【文献】特開2005-035969(JP,A)
【文献】特開2006-312627(JP,A)
【文献】特開2006-312628(JP,A)
【文献】特開2014-088379(JP,A)
【文献】特開2005-037928(JP,A)
【文献】特開2005-084558(JP,A)
【文献】特開2007-269673(JP,A)
【文献】特開2002-139715(JP,A)
【文献】特開平08-005970(JP,A)
【文献】特開昭54-056852(JP,A)
【文献】特開昭61-197504(JP,A)
【文献】特開昭60-254114(JP,A)
【文献】特開昭62-270913(JP,A)
【文献】特表2004-537374(JP,A)
【文献】国際公開第2007/114300(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/02
A61K 9/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性抗酸化剤を含有するコンタクトレンズ用眼科組成物であって、
前記水溶性抗酸化剤が、亜硫酸、亜硫酸水素、及びそれらの塩からなる群より選択される1種又は2種以上であり、
前記眼科組成物が、点眼剤、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液、及びコンタクトレンズ装着点眼液からなる群より選択される少なくとも1種である、
コンタクトレンズ用眼科組成物
(但し、以下の(1)~(5)を除く:
(1)(A)ブロムフェナク及びその塩からなる群より選択される少なくとも1種と、(B)非イオン性界面活性剤と、(C)クロルフェニラミン、ピリドキシン、アスパラギン酸及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種とを含有する組成物;
(2)(A)クロロブタノール、(B)モノステアリン酸ポリエチレングリコール、及び(C)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含有する粘膜適用組成物;
(3)(A)サルファ剤1.0~5.0W/V%、(B)ホウ酸及び/又はその塩0.05~2.0W/V%、(C)糖及び/又は糖アルコール0.06~2.0W/V%とを含有してなることを特徴とする眼科用組成物;
(4)(A)アシタザノラスト及びその塩よりなる群から選択される少なくとも1種、及び(B)充血除去剤を含有する組成物;
(5)(A)ブロムフェナク及び/又はその塩と、(B)テルペノイドと、(C)非イオン性界面活性剤とを含有する組成物)。
【請求項2】
前記水溶性抗酸化剤の総含有量が、眼科組成物の全量に対して、0.0001~1w/v%である、請求項1に記載の眼科組成物。
【請求項3】
さらに、非イオン性界面活性剤を含有する、請求項1又は2に記載の眼科組成物。
【請求項4】
さらに、抗ヒスタミン剤及び/又はビタミンA類を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の眼科組成物。
【請求項5】
ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、又はそれらの混合物の総含有量が、眼科組成物の全量に対して、0.025w/v%未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の眼科組成物。
【請求項6】
眼科組成物と接触する面の一部又は全部がプラスチックで成形された容器に収容してなる、請求項1~5のいずれか1項に記載の眼科組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンタクトレンズ(CL)用眼科組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コンタクトレンズ(以下CLともいう)装用者の高齢化に伴い、眼病予防のためにCLをより清潔に保つことの重要性が高まっている。
【0003】
特許文献1には、メチル硫酸ネオスチグミン及びその塩の少なくとも1種と、グリチルリチン酸、アミノエチルスルホン酸、アスパラギン酸、コンドロイチン硫酸、及びそれらの塩の少なくとも1種を含有するシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ用眼科組成物を用いることにより、シリコーンハイドロゲルソフトコンタクトレンズへの花粉タンパク質の吸着を抑制できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CLへのタンパク質の吸着を抑制できる眼科組成物の更なる開発が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、CLへのタンパク質の吸着を抑制することができる、眼科組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者等が鋭意検討した結果、水溶性抗酸化剤を含有するコンタクトレンズ用眼科組成物を提供することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、下記に掲げるコンタクトレンズを提供する。
[1]水溶性抗酸化剤を含有するコンタクトレンズ用眼科組成物。
[2]前記水溶性抗酸化剤が無機化合物である、[1]に記載の眼科組成物。
[3]前記水溶性抗酸化剤が、ピロ亜硫酸、亜硫酸、亜硫酸水素、チオ硫酸、ヨウ素、臭素及びそれらの塩からなる群より選択される1種又は2種以上である、[1]又は[2]に記載の眼科組成物。
[4]前記水溶性抗酸化剤の総含有量が、眼科組成物の全量に対して、0.0001~1w/v%である、[1]~[3]のいずれかに記載の眼科組成物。
[5]さらに、非イオン性界面活性剤を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の眼科組成物。
[6]ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、又はそれらの混合物の総含有量が、眼科組成物の全量に対して、0.025w/v%未満である、[1]~[5]のいずれかに記載の眼科組成物。
[7]眼科組成物と接触する面の一部又は全部がプラスチックで成形された容器に収容してなる、[1]~[6]のいずれかに記載の眼科組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、CL用眼科組成物に水溶性抗酸化剤を含有させることにより、CLへのタンパク質の吸着を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明に係る実施例と、比較例におけるCLに対するタンパク質の吸着抑制率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、含有量の単位「w/v%」は、「g/100mL」と同義である。
【0012】
[眼科組成物]
本発明の眼科組成物は、水溶性抗酸化剤を含有する。
【0013】
本明細書において、水溶性抗酸化剤とは、水に溶解することができる抗酸化剤をいう。ここで、水溶性抗酸化剤には、本来的には水に溶解しない抗酸化剤であっても、官能基を化学的に変化させる等により、水に溶解する性質を付与されたものも含まれる。
【0014】
水溶性抗酸化剤は、公知の成分が適宜用いられ、限定はされないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、無機化合物であることが好ましく、ピロ亜硫酸、亜硫酸、亜硫酸水素、チオ硫酸、ヨウ素、臭素及びそれらの塩からなる群より選択される1種又は2種以上であることが好ましく、ピロ亜硫酸、亜硫酸、亜硫酸水素、チオ硫酸及びそれらの塩からなる群より選択される1種又は2種以上であることがより好ましく、ピロ亜硫酸、亜硫酸、亜硫酸水素及びそれらの塩からなる群より選択される1種又は2種以上であることが更に好ましい。
【0015】
これらの成分の塩としては、医薬上、薬理学的に又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されないが、具体的には、無機酸塩、無機塩基との塩、有機酸塩、または有機塩基との塩が挙げられる。無機塩基との塩としては、例えば、ナトリウムまたはカリウム等のアルカリ金属、カルシウムまたはマグネシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム等の金属との塩、アンモニウム塩等の各種の塩が挙げられる。有機酸塩としては、例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等のモノカルボン酸塩;フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩等の多価カルボン酸塩;乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等のオキシカルボン酸塩;メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩等の有機スルホン酸塩が例示される。無機酸塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩が例示される。有機塩基との塩としては、例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリン、エチレンジアミン等の有機アミンとの塩が挙げられる。ピロ亜硫酸、亜硫酸、チオ硫酸、ヨウ素、臭素又はそれらの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。「薬学的又は生理学的に許容される塩」には、塩の溶媒和物又は水和物を含んでいてもよい。
【0016】
ピロ亜硫酸、亜硫酸、亜硫酸水素、チオ硫酸、ヨウ素、又は臭素の塩としては、限定はされないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、ナトリウム塩又はカリウム塩が好ましく、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、及び臭化カリウムからなる群より選択される1種又は2種以上がより好ましく、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、及び臭化カリウムからなる群より選択される1種又は2種以上が更に好ましく、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、及びチオ硫酸ナトリウムからなる群より選択される1種又は2種以上がより更に好ましく、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、及び亜硫酸水素ナトリウムからなる群より選択される1種又は2種以上が特に好ましい。
【0017】
水溶性抗酸化剤の総含有量は、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の製剤形態等に応じて適宜設定されるが、眼科組成物全量に対して、好ましくは0.0001w/v%以上であり、より好ましくは、0.0005w/v%以上、更に好ましくは0.001w/v%以上、特に好ましくは0.002w/v%以上である。水溶性抗酸化剤の総含有量は、眼科組成物全量に対して、好ましくは1w/v%以下であり、より好ましくは0.5w/v%以下、更に好ましくは0.2w/v%以下、特に好ましくは0.1w/v%以下である。水溶性抗酸化剤の総含有量は、眼科組成物全量に対して、好ましくは0.0001~1w/v%であり、より好ましくは0.0005~0.5w/v%であり、更に好ましくは0.001~0.2w/v%であり、特に好ましくは0.002~0.1w/v%である。
【0018】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、ピロ亜硫酸又はその塩を水溶性抗酸化剤として含有する場合に、ピロ亜硫酸又はその塩単独の含有量として、眼科組成物全量に対して、0.0001~0.5w/v%含有することが好ましく、0.0005~0.2w/v%含有することがより好ましく、0.001~0.1w/v%含有することが更に好ましく、0.002~0.05w/v%含有することが特に好ましい。
【0019】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、亜硫酸又はその塩を水溶性抗酸化剤として含有する場合に、亜硫酸又はその塩単独の含有量として、眼科組成物全量に対して、0.0001~0.5w/v%含有することが好ましく、0.0005~0.2w/v%含有することがより好ましく、0.001~0.1w/v%含有することが更に好ましく、0.002~0.05w/v%含有することが特に好ましい。
【0020】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、亜硫酸水素又はその塩を水溶性抗酸化剤として含有する場合に、亜硫酸水素又はその塩単独の含有量として、眼科組成物全量に対して、0.0001~0.5w/v%含有することが好ましく、0.0005~0.2w/v%含有することがより好ましく、0.001~0.1w/v%含有することが更に好ましく、0.002~0.05w/v%含有することが特に好ましい。
【0021】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、チオ硫酸又はその塩を水溶性抗酸化剤として含有する場合に、チオ硫酸又はその塩単独の含有量として、眼科組成物全量に対して、0.0001~1w/v%含有することが好ましく、0.0005~0.5w/v%含有することがより好ましく、0.001~0.2w/v%含有することがさらに好ましく、0.002~0.1w/v%含有することが特に好ましい。
【0022】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、ヨウ素又はその塩を水溶性抗酸化剤として含有する場合に、ヨウ素又はその塩単独の含有量として、眼科組成物全量に対して、0.0001~1w/v%含有することが好ましく、0.0005~0.5w/v%含有することがより好ましく、0.001~0.2w/v%含有することがさらに好ましく、0.002~0.1w/v%含有することが特に好ましい。
【0023】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、臭素又はその塩を水溶性抗酸化剤として含有する場合に、臭素又はその塩単独の含有量として、眼科組成物全量に対して、0.0001~1w/v%含有することが好ましく、0.0005~0.5w/v%含有することがより好ましく、0.001~0.2w/v%含有することがさらに好ましく、0.002~0.1w/v%含有することが特に好ましい。
【0024】
本発明の眼科組成物は、さらに非イオン性界面活性剤を含有することが好ましい。非イオン性界面活性剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される限り、任意の非イオン性界面活性剤を用いることができ、例えばモノラウリル酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20),モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80),POEソルビタンモノステアレート(ポリソルベート60),POEソルビタントリステアレート(ポリソルベート65)などのPOEソルビタン脂肪酸エステル類;POE硬化ヒマシ油5,POE硬化ヒマシ油10,POE硬化ヒマシ油20,POE硬化ヒマシ油40,POE硬化ヒマシ油50、POE硬化ヒマシ油60,POE硬化ヒマシ油100などのPOE硬化ヒマシ油類;POEヒマシ油3,POEヒマシ油10,POEヒマシ油20,POEヒマシ油40,POEヒマシ油50、POEヒマシ油60,POEヒマシ油70などのPOEヒマシ油類;ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188などのポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(以下、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体とも言う。);ポロキサミンなどのエチレンジアミンのPOE-POPブロックコポリマー付加物;POE(9)ラウリルエーテルなどのPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4)セチルエーテルなどのPOE・POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテルなどのPOEアルキルフェニルエーテル類;ステアリン酸ポリオキシル10、ステアリン酸ポリオキシル40等のモノステアリン酸ポリエチレングリコールなどが挙げられる。なお、POEはポリオキシエチレンを示し、POPはポリオキシプロピレンを示し、括弧内の数字は付加モル数を示す。
【0025】
これらの非イオン性界面活性剤のうち、中でも好ましくは、POEソルビタン脂肪酸エステル類、POE硬化ヒマシ油類、POEヒマシ油類及びポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーからなる群より選択される1種又は2種以上であり、中でも特に好ましくは、ポリソルベート80、POE硬化ヒマシ油40、POE硬化ヒマシ油60、POEヒマシ油10、POEヒマシ油35、及びポロクサマー407からなる群より選択される1種又は2種以上である。
【0026】
本発明の眼科組成物において、上記非イオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
非イオン性界面活性剤の総含有量は、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の製剤形態等に応じて適宜設定されるが、眼科組成物全量に対して、好ましくは0.001~5w/v%であり、より好ましくは0.001~1.5w/v%、より好ましくは0.001~1w/v%、さらに好ましくは0.005~0.5w/v%、特に好ましくは0.05~0.3w/v%である。
【0028】
水溶性抗酸化剤に対する非イオン性界面活性剤の含有比率は特に制限されず、水溶性抗酸化剤の種類、非イオン性界面活性剤の種類等に応じて適宜設定される。水溶性抗酸化剤に対する非イオン性界面活性剤の含有比率としては、本発明の効果を顕著に奏する観点から、水溶性抗酸化剤の総含有量1質量部に対して、非イオン性界面活性剤の総含有量が、好ましくは0.0001~10000質量部であり、より好ましくは0.0005~1000質量部、更に好ましくは0.001~500質量部、特に好ましくは0.005~100質量部である。
【0029】
本発明の眼科組成物は、本発明の効果を妨げない限り、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、又はそれらの混合物を含有していてもよいが、これらの成分はCL(特にSCL)に吸着するため、眼に対する安全性の観点から、これらの成分を低減させることが好ましく、これらの成分を含有しないことが更に好ましい。
【0030】
本発明の眼科組成物が、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、又はそれらの混合物を含有する場合、これらの総含有量が、眼科組成物の全量に対して、0.025w/v%未満であることが好ましく、0.01w/v%以下であることがより好ましく、0.001w/v%以下であることが更に好ましく、0.0001w/v%以下であることが特に好ましく、0w/v%(非含有)であることが最も好ましい。
【0031】
本発明の眼科組成物は、さらに抗ヒスタミン剤又は抗炎症成分を含有することが好ましい。抗ヒスタミン剤又は抗炎症成分としては、医薬上、薬理学的に又は生理学的に許容される限り、任意の抗ヒスタミン剤又は抗炎症成分を用いることができる。
【0032】
限定はされないが、抗ヒスタミン剤としては、クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、イプロヘプチン、ケトチフェン、クレマスチン、アゼラスチン、オキサトミド、メキタジン、テルフェナジン、エメダスチン、エピナスチン、エバスチン、セチリジン、クレマスチン、レボカバスチン、オロパタジン、ロラタジン、フェキソフェナジン、セチリジン、およびこれらの薬理学的又は生理学的に許容される塩(マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸イプロヘプチン、フマル酸ケトチフェン、フマル酸ケトチフェン、フマル酸ケトチフェン、塩酸アゼラスチン、塩酸レボカバスチン、塩酸オロパタジンなど)が挙げられる。これらの抗ヒスタミン剤のうち、本発明の効果を顕著に奏する観点から、クロルフェニラミン又はその塩、ジフェンヒドラミン又はその塩が好ましく、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミンが特に好ましい。
【0033】
限定はされないが、抗炎症成分としては、イプシロンアミノカプロン酸、アラントイン、トラネキサム酸、ベルベリン、アズレン類(アズレン、カマアズレン、グアイアズレンなど)、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、亜鉛類、リゾチーム、セレコキシブ、ロフェコキシブ、インドメタシン、ジクロフェナク、プラノプロフェン、ピロキシカム、メロキシカム、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、イブプロフェン、イブプロフェンピコノール、ブフェキサマク、フルフェナム酸ブチル、ベンダザック、ピロキシカム、ケトプロフェン、フェルビナクおよびこれらの薬理学的又は生理学的に許容される塩(例えば塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グアイアズレンスルホン酸ナトリウム、ジクロフェナクナトリウム、グリチルリチン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸アンモニウム、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、塩化リゾチームなど)などが挙げられる。これらの抗炎症成分のうち、本発明の効果を顕著に奏する観点から、プラノプロフェン、グリチルリチン酸又はその塩、アラントイン、ベルベリン、アズレン類が好ましく、プラノプロフェン、グリチルリチン酸ニカリウム、アラントイン、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、アズレンスルホン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0034】
本発明の眼科組成物において、上記抗ヒスタミン剤又は抗炎症成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
抗ヒスタミン剤又は抗炎症成分の総含有量は、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の製剤形態等に応じて適宜設定されるが、眼科組成物全量に対して、好ましくは0.0001~10w/v%であり、より好ましくは0.001~8w/v%、更に好ましくは0.01~6w/v%、特に好ましくは0.02~1w/v%、最も好ましくは0.03~0.8w/v%である。
【0036】
水溶性抗酸化剤に対する抗ヒスタミン剤又は抗炎症成分の含有比率は特に制限されず、水溶性抗酸化剤の種類等に応じて適宜設定される。水溶性抗酸化剤に対する抗ヒスタミン剤又は抗炎症成分の含有比率としては、本発明の効果を顕著に奏する観点から、水溶性抗酸化剤の総含有量1質量部に対して、抗ヒスタミン剤又は抗炎症成分の総含有量が、好ましくは0.0005~100000質量部であり、より好ましくは0.001~50000質量部、更に好ましくは0.05~20000質量部、特に好ましくは0.1~10000質量部、最も好ましくは0.2~8000質量部である。
【0037】
本発明の眼科組成物は、さらに脂溶性ビタミン類を含有することが好ましい。脂溶性ビタミン類としては、例えば、ビタミンA類、ビタミンE類若しくはこれらの誘導体、又はこれらの塩が挙げられる。
【0038】
本発明において、ビタミンA類としては、医薬上、薬理学的に又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。ビタミンA類として、例えば、ビタミンA、ビタミンAを含有する混合物(例えば、ビタミンA油)、ビタミンA活性を有する誘導体が挙げられる。なお、ビタミンA油とは、レチノールを含有する水産動物の組織等から得られる脂肪油、若しくはその濃縮物、又はそれらに植物性油を適宜添加したものである。
【0039】
ビタミンA類としては、例えば、レチナール、レチノール、レチノイン酸、カロチン、デヒドロレチナール、リコピン、及びこれらの誘導体(例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール等)、並びにこれらの塩が挙げられる。これらの中でも本発明の効果をより顕著に奏する観点から、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノールが好ましい。ビタミンA類は、天然品、合成品のいずれであってもよい。また、ビタミンA類は、抗酸化剤としてBHTやBHAを含有する物であってもよい。しかしながら、BHT及びBHAはCL(特にSCL)に吸着するため、眼に対する安全性の観点から、BHT及びBHAを含有しないものがより好適に使用できる。
【0040】
ビタミンA類としては、より具体的には、例えば、DSMニュートリションジャパン製のレチノールパルミチン酸エステル(174万I.U.)、BASFジャパン製のレチノールパルミチン酸エステル(170万I.U.)等を挙げることができる。なお、IUとは、第十七改正日本薬局方ビタミンA定量法等に記載の手法により求められる国際単位を意味する。
【0041】
これらのビタミンA類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0042】
本発明において、ビタミンE類としては、医薬上、薬理学的に又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。ビタミンE類として、具体的には、例えば、トコフェロール、トコトリエノール及びこれらの誘導体、並びにこれらの塩が挙げられる。トコフェロール及びトコトリエノールは、α-、β-、γ-、及びδ-のいずれであってもよく、またd体及びdl体のいずれであってもよい。これらの誘導体としては、例えば、酢酸エステル、ニコチン酸エステル、コハク酸エステル、リノレン酸エステル等のエステルが挙げられる。ビタミンE類は、天然品、合成品のいずれであってもよい。これらの塩としては、例えば、有機酸塩(乳酸塩、酢酸塩、酪酸塩、トリフルオロ酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等)、無機塩類
(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等)、有機塩基との塩(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、アミノ酸、トリピリジン、ピコリン等の有機アミンとの塩等)、無機塩基との塩(例えば、アンモニウム塩、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム等の金属との塩等)が挙げられる。
【0043】
ビタミンE類として、より具体的には、例えば、d-α-トコフェロール、dl-α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロール、ビタミンE酢酸エステル(例えば、酢酸トコフェロール)、ビタミンEニコチン酸エステル、ビタミンEコハク酸エステル、ビタミンEリノレン酸エステル等が挙げられる。これらの中でも本発明の効果をより顕著に奏する観点から、酢酸トコフェロール(例えば、酢酸d-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール等)が好ましい。
【0044】
これらのビタミンE類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0045】
脂溶性ビタミン類の含有量は、他の配合成分の種類及び含有量、眼科組成物の製剤形態等に応じて適宜設定されるが、眼科組成物全量に対して、好ましくは10~500,000単位(IU)/100mLであり、より好ましくは100~300,000単位/100mL、更に好ましくは500~200,000単位/100mL、更により好ましくは1000~100,000単位/100mL、特に好ましくは2,000~80,000単位/100mL、最も好ましくは3,000~50,000単位/100mLである。脂溶性ビタミン類の含有量は、配合する脂溶性ビタミン類の単位にもよるが、0.0005~0.5w/v%が好ましく、0.001~0.1w/v%がより好ましく、0.005~0.05w/v%がさらに好ましい。
【0046】
水溶性抗酸化剤に対する脂溶性ビタミン類の含有比率は特に制限されず、水溶性抗酸化剤の種類等に応じて適宜設定される。水溶性抗酸化剤に対する脂溶性ビタミン類の含有比率としては、本発明の効果を顕著に奏する観点から、水溶性抗酸化剤の総含有量1質量部に対して、脂溶性ビタミン類の含有量が、好ましくは0.0001~10000質量部であり、より好ましくは0.0005~1000質量部、更に好ましくは0.001~500質量部、特に好ましくは0.005~100質量部、最も好ましくは0.01~50質量部である。
【0047】
本発明の眼科組成物は、本発明の効果を妨げない限り、上記成分の他に、種々の薬理活性成分や生理活性成分を組み合わせて適当量含有してもよい。このような薬理活性成分や生理活性成分としては、例えば、一般用医薬品製造販売承認基準2015年版(一般社団法人 レギュラトリーサイエンス学会 監修)に記載された各種医薬における有効成分が例示できる。具体的には、次のような成分が挙げられる。
【0048】
充血除去剤:例えば、α-アドレナリン作動薬、具体的には、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン、酒石酸水素エピネフリン、硝酸ナファゾリン等。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。
殺菌剤:例えば、アクリノール、セチルピリジニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸ポリヘキサメチレンビグアニド等。
脂溶性ビタミン類以外のビタミン類:例えば、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール、シアノコバラミン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、アスコルビン酸、ユビキノン誘導体等。
アミノ酸類:例えば、L-アスパラギン酸又はその塩(例えば、L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸ナトリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、L-アスパラギン酸カルシウム、L-アスパラギン酸マグネシウム・カリウム(L-アスパラギン酸マグネシウムとL-アスパラギン酸カリウムとの等量混合物))、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、コンドロイチン硫酸又はその塩(例えば、コンドロイチン硫酸ナトリウム)、グルタミン酸又はその塩(例えば、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸マグネシウム)、クレアチニン、グリシン、アラニン、アルギニン、リジン、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ吉草酸、ヒアルロン酸又はその塩(例えば、ヒアルロン酸ナトリウム)、アルギン酸又はその塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)等。
収斂剤:例えば、亜鉛華、乳酸亜鉛、硫酸亜鉛等。
局所麻酔薬成分:例えば、クロロブタノール、塩酸オキシブプロカイン、塩酸コカイン、塩酸コルネカイン、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、塩酸パラブチルアミノ安息香酸ジエチルアミノエチル、塩酸ピペロカイン、塩酸プロカイン、塩酸プロパラカイン、塩酸ヘキソチオカイン、塩酸リドカイン等。
その他:例えば、メチル硫酸ネオスチグミン、クロモグリク酸ナトリウム、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、紫根、セイヨウトチノキ、及びこれらの塩等。
【0049】
さらに、本発明の眼科組成物においては、本発明の効果を妨げない限り、上記の他、様々な添加剤を選択し、少なくとも1種を併用して適当量含有させてもよい。それらの添加物として、例えば、医薬品添加物事典2013(日本医薬品添加剤協会編集)に記載された各種添加物が例示できる。代表的な成分として次の添加物が挙げられる。
担体:水、含水エタノール等の水性担体。
香料又は清涼化剤:例えば、テルペン類(具体的には、アネトール、オイゲノール、カンフル、ゲラニオール、シネオール、ボルネオール、メントール、リモネン、リュウノウなど。これらはd体、l体又はdl体のいずれでもよい。)、精油(ウイキョウ油、クールミント油、ケイヒ油、スペアミント油、ハッカ水、ハッカ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ユーカリ油、ローズ油など)など。
糖類:例えば、グルコース、シクロデキストリン等。
非イオン性界面活性剤以外の界面活性剤:アルキルジアミノエチルグリシンなどのグリシン型、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの酢酸ベタイン型、イミダゾリン型などの両性界面活性剤;アルキルエーテルカルボン酸塩、テトラデセンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、N-ココイルメチルタウリンナトリウムなどのN-アシルタウリン塩、POE(10)ラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどのPOEアルキルエーテルリン酸およびその塩、ラウロイルメチルアラニンナトリウムなどのN-アシルアミノ酸塩、POE(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のPOEアルキルエーテル硫酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩などの陰イオン界面活性剤等。
等張化剤:塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム等。
pH調節剤:塩酸、硫酸、乳酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、プロピオン酸、酢酸、アスパラギン酸、イプシロンアミノカプロン酸、グルタミン酸、アミノエチルスルホン酸、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸、グルコノラクトン、酢酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、リジン、ホウ砂等、およびその薬理学的に許容される塩類等。
安定化剤:例えば、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(ロンガリット)、モノステアリン酸アルミニウム、モノステアリン酸グリセリン等。
キレート剤:例えば、エチレンジアミン二酢酸(EDDA)、エチレンジアミン三酢酸、エチレンジアミン四酢酸(エデト酸、EDTA)、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)等。
緩衝剤:クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤など。具体的には、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムなど。
水溶性高分子物質:例えば、ゼラチン、ポリアクリル酸およびその塩類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム等)、ポリエチレンオキサイド、アラビアゴム、キサンタンガム、トラガントガム等。
多価アルコール:例えば、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール等。
防腐剤、又は抗菌剤:例えば、安息香酸ナトリウム、エタノール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、硫酸オキシキノリン、フェネチルアルコール、ベンジルアルコール、ビグアニド化合物(具体的には、ポリクオタニウム、塩酸ポリヘキサニド等)、グローキル(ローディア社製 商品名)等。
無機塩類:例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、酢酸ナトリウム等。
【0050】
[眼科組成物の物性]
本発明の眼科組成物のpHについては、医薬上、薬理学的に又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではないが、一例としては、pHが4.0~9.5、好ましくは4.5~9.0、より好ましくは、5.0~8.5、更に好ましくは5.5~8.0、特に好ましくは6.0~8.0となる範囲が挙げられる。
【0051】
本発明の眼科組成物は、さらに必要に応じて、生体に許容される範囲内の浸透圧比に調節することができる。適切な浸透圧比は適用部位、剤型等により異なるが、通常0.5~5.0、より好ましくは0.6~3.0、更に好ましくは0.7~2.0となる範囲が挙げられる。浸透圧の調整は無機塩、多価アルコール、及び又は糖等を用いて、当該技術分野で既知の方法で行うことができる。浸透圧比は、第十七改正日本薬局方に基づき286mOsm(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)の浸透圧に対する試料の浸透圧の比とし、浸透圧は日本薬局方記載の浸透圧測定法(氷点降下法)に従って測定する。なお、浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)は、塩化ナトリウム(日本薬局方標準試薬)を500~650℃で40~50分間乾燥した後、デシケーター(シリカゲル)中で放冷し、その0.900gを正確に量り、精製水に溶かし正確に100mLとして調製するか、市販の浸透圧比測定用標準液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)を用いる。
【0052】
本発明の眼科組成物の粘度は、医薬上、薬理学的に又は生理学的に許容される範囲内であれば、配合成分の種類及び含有量、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。回転粘度計(RE550型粘度計、東機産業社製、ローター;1°34‘×R24)で測定した20℃における粘度が1~1000mPa・sとすることが好ましく、1~100mPa・sとすることがより好ましく、1~20mPa・sとすることがさらに好ましい。
【0053】
[眼科組成物の製造方法]
本発明の眼科組成物は、慣用の方法で調製できる。例えば、水溶性抗酸化剤や必要により他の成分を、水性担体に分散させた後、ホモジナイザーなどを用いて均一化、溶解又は乳化させ、pH調節剤によりpHを調節することにより調製すればよい。
【0054】
[眼科組成物の剤型]
本発明の眼科組成物は、その剤型については、眼科分野で使用可能である限り特に制限されないが、例えば、液状、軟膏状等が挙げられる。これらの中でも、液状が好ましい。また液状の中でも水性液状が好ましい。本発明の眼科組成物を水性液状にする場合、医薬上、薬理学的に又は生理学的に許容される水を水性担体として使用すればよく、このような水として、具体的には、蒸留水、常水、精製水、滅菌精製水、注射用水、注射用蒸留水等が例示される。これらの定義は第十七改正日本薬局方に基づく。本明細書において、水性液状とは、水を含有する液状の形態を意味し、通常は、眼科組成物中に水を1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは50%以上、より更に好ましくは70%以上、より更に好ましくは80%以上を含有するものを意味する。
【0055】
本発明の眼科組成物は、一例として、点眼剤、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズ装着点眼液、コンタクトレンズケア用剤(コンタクトレンズ用殺菌剤、コンタクトレンズ用消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用すすぎ液、コンタクトレンズ用洗浄保存剤等が含まれる)、コンタクトレンズ用多目的溶液(マルチパーパスソリューション)等として用いることが可能である。本明細書において、コンタクトレンズ用多目的溶液(マルチパーパスソリューション)とは、コンタクトレンズの洗浄、すすぎ、保存、および消毒の機能から選ばれる機能の内の少なくとも2以上の機能を併せ持った組成物のことをいう。
【0056】
これらの剤型の中でも、本発明の眼科組成物は、CLに対して用いることにより、タンパク質の吸着を抑制することができるため、点眼剤、コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用剤、コンタクトレンズ用多目的溶液として用いられることが好ましい。
【0057】
[用途]
本発明の眼科組成物は、コンタクトレンズ(CL)用として用いられる。
【0058】
本明細書において、CLとは、ソフトコンタクトレンズ(SCL)及びハードコンタクトレンズ(HCL)、酸素透過性ハードコンタクトレンズを含む、あらゆるタイプのコンタクトレンズを意味する。
【0059】
本明細書において、SCLとは、イオン性及び非イオン性の双方を包含し、シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ及び非シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの双方を包含し、さらに全ての材質のカラーコンタクトレンズを包含する。また、現在市販されている、又は将来市販される全てのソフトコンタクトレンズが適用対象となる。
【0060】
SCLの材質としては、限定はされないが、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレート(GMA)、N-ビニルピロリドン(NVP)、メタクリル酸又はその塩(MA)、シリコーン系エラストマーポリジメチルシロキサン(PDMSi)、n-ブチルメタクリレート(BMA)、n-ブチルアクリレート(BA)、及びこれらの共系重合体等が挙げられる。USAN(United State Adopted Name)に基づく素材の名称としては、例えばEtafilconA等が挙げられる。シリコーンハイドロゲル素材のCLとは、シリコーンを含有する素材(例えばシリコーンとアクリレートの重合体であるTRIS又はTRIS誘導体等)に親水性モノマー(例えばヒドロキシエシエチルメタクリレート、ジメチルアクリルアミド等)を共重合させた素材等を用いたコンタクトレンズである。
【0061】
ハードコンタクトレンズの素材としては、メチルメタクリレート(MMA)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、シロキサニルスチレン、フルオロメタクリレート、シロキサニルメタクリレート、含フッ素メタクリレート(FMA)、含シリコーンメタクリレート(SiMA)、メタクリル酸、ジメタクリル酸エステル、デキストランエステル、フルオロシリコーン、及びこれらの共系重合体などがある。
【0062】
本発明の眼科組成物は、タンパク質吸着抑制効果が好適に発揮されることから、SCL用眼科組成物として用いられることがより好ましく、FDAコンタクトレンズ分類においてグループIVのSCL用眼科組成物として用いられることがさらに好ましい。
【0063】
本明細書において、SCLは、平成11年3月31日付医薬審第645号厚生労働省(当時の厚生省)医薬安全局審査管理課長通知「ソフトコンタクトレンズ及びソフトコンタクトレンズ用消毒剤の製造(輸入)承認申請に際し添付すべき資料の取り扱い等について」において規定された「ソフトコンタクトレンズの分類方法について」に基づき分類される。例えば、該分類においてグループIVに属するSCLは、含水率が50%以上であり、原材料ポリマーの構成モノマーのうち陰イオンを有するモノマーのモル%が1%以上であることを共通の性質として有する。尚、本分類はFDA(米国食品医薬品局)が行なっているソフトコンタクトレンズの分類方法に従っている。
【0064】
本発明の眼科組成物は、コンタクトレンズ(CL)におけるタンパク質吸着抑制効果が好適に発揮されることから、CL吸着されるタンパク質に起因する眼障害の改善に適している。タンパク質の種類としては、CLに吸着し得る物質であれば特に制限されないが、例えば、アルブミン、グロブリン、リゾチーム、ムチン、炎症メディエーター等の涙液に含まれるタンパク質、花粉タンパク質等が挙げられ、紫外線や体温等の影響により変性したタンパク質も含まれる。CLを装用していない場合は、該タンパク質は、涙道を通って眼表面から除去(涙液交換)されるが、該タンパク質が、CL(特にCL表面)に吸着されたまま該CLを装用していると、涙液交換では該タンパク質が除去されず、該タンパク質に眼表面が常時曝されることとなる。例えば、眼表面が炎症メディエーター、花粉タンパク質にCL装用中常時曝される場合、目のかゆみ、炎症、充血、結膜炎(アレルギー性等)等が生じ得る。例えば、眼表面が紫外線や体温等の影響により変性したタンパク質等にCL装用中常時曝される場合、このようなタンパク質の蓄積により微生物(細菌、真菌、アメーバ類等)の繁殖を惹起し、目の微生物感染(流行性角結膜炎、巨大乳頭結膜炎、角膜潰瘍等)等が生じたり、変性したタンパク質による角膜損傷を生じ得る。
【0065】
よって、本発明の眼科組成物は、CL吸着されるタンパク質、及び/又は、CL装用に起因するの眼障害の予防、治療、及び/又は、改善用として用いることが可能である。このような眼障害は、CL吸着されるタンパク質、及び/又は、CL装用に起因するものであれば特に限定はされないが、例えば、目のかゆみ、炎症、充血、結膜炎(アレルギー性等)微生物感染(流行性角結膜炎、巨大乳頭結膜炎、角膜潰瘍等)、及び、角膜損傷からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0066】
本明細書において、眼障害の予防とは、眼部の障害の発生の防止若しくは遅延、又は、眼部の障害の発生のリスクを低下させることをいう。
【0067】
本明細書において、眼障害の治療とは、眼部の疾患若しくは症状の緩和若しくは好転、疾患若しくは症状の悪化の防止若しくは遅延、又は、眼部の疾患若しくは症状の進行の防止、遅延、若しくは逆転をいう。
【0068】
本明細書において、眼障害の改善とは、眼部の障害がある状態の緩和若しくは好転、異常がある状態の悪化の防止若しくは遅延、又は、眼部の障害がある状態の進行の防止、遅延、若しくは逆転をいう。
【0069】
[容器]
本発明の眼科組成物は、眼科組成物と接触する面の一部又は全部がプラスチックで成型された容器に収容されることが好ましい。眼科組成物と接触する面の少なくとも20%以上がプラスチックで成型された容器であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが特に好ましく、95%以上であることが最も好ましい。
【0070】
プラスチックの構成材質は、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、エラストマーの何れか1種、これらの共重合体、又はこれらの2種以上の混合体が挙げられる。成形性や耐性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、これらの共重合体、又はこれらの2種以上の混合体が好ましく、マルチドーズ型容器の場合はポリエチレンテレフタレートを含有する容器がより好ましく、ユニットドーズ型容器の場合はポリエチレンを含有する容器がより好ましい。
【0071】
本発明の眼科組成物が収容される容器は、透明な容器(異物を観察するのに差し支えない程度の透明性を備えた容器)であってもよいし、遮光された容器であってもよい。遮光は、例えば容器構成材質に着色剤や紫外線吸収剤を含有させることにより行ってもよいし、容器外面をシュリンクフィルム、外箱、小袋状の外装などで覆うことにより行ってもよい。
【0072】
本発明の眼科組成物が収容される容器に滴下ノズル(穴あき中栓)を設置することもできる。滴下ノズルの構成材質については、例えば、プラスチック製が好ましい。特に制限されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート又はエラストマーを構成材質として含む滴下ノズルが好ましい。ポリエチレンの種類としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等が挙げられる。本発明の眼科組成物が収容される容器に設置される滴下ノズルは、滴下口が上側になるように容器を正立したときに、収容された眼科組成物に接触しないように設置されることが好ましい。
【0073】
[点眼剤及び又は装着液として用いる場合の用量・用法]
本発明の眼科組成物が点眼剤として用いられる場合、1滴あたりの滴下量が5~100μLとなるように設計され得る。点眼剤の1滴あたりの滴下量は、本発明の効果を顕著に奏する観点から、10~80μlが好ましく、20~60μlがより好ましく、30~50μlがさらに好ましい。
【0074】
本発明の眼科組成物が点眼剤として用いられる場合、使用形態には、CLの装用時の眼に直接点眼する形態に加えて、CLを装着する前に眼に点眼する形態が包含される。このような点眼剤は、CLの装着液を兼ねる形態で用いることも可能である。装着液を兼ねる形態で用いられる点眼剤は、CLの装着点眼剤と称される場合もある。
【0075】
本発明の眼科組成物が点眼剤及び又は装着液として用いられる場合、1日の点眼回数は問わないが、通常1~10回の範囲であればよく、好ましくは1~6回、特に好ましくは5~6回である。
【0076】
[点眼剤及び又は装着液として用いる場合の容器容量等]
本発明の眼科組成物がマルチドーズ型の点眼剤及び又は装着液として用いられる場合、内容積が4~30mLである容器に充填されていることが好ましく、5~25mLである容器に充填されていることがさらに好ましく、6~18mLである容器に充填されていることが特に好ましい。
【0077】
本発明の眼科組成物がユニットドーズ型の点眼剤及び又は装着液として用いられる場合、内容積が0.3~10mLである容器に充填されていることが好ましく、0.3~5mLである容器に充填されていることがさらに好ましく、0.3~2mLである容器に充填されていることが特に好ましい。
【0078】
本発明の眼科組成物が点眼剤及び又は装着液として用いられる場合、容器の滴下ノズルの滴下口における内径は、限定はされないが、例えば5mm未満であることができ、0.01~5mmであることが好ましく、0.05~4mmであることがより好ましく、0.1~3mmであることが更に好ましく、0.5~2mmであることが最も好ましい。本明細書において、滴下口とは、眼科組成物を該容器に充填し、該滴下ノズルを装着した後に、開口した状態で倒立状態にしたときに液滴が形成される出口部を指す。
【0079】
本発明の眼科組成物が滴下ノズルを備える点眼用容器に充填される場合、滴下ノズルの延びる方向に対して直交する方向の容器の最大外幅は、限定はされないが、点眼しやすさの観点から、例えば55mm以下とすることができ、50mm以下とすることが好ましく、45mm以下とすることがより好ましく、40mm以下とすることが更に好ましく、38mm以下とすることが特に好ましく、36mm以下とすることが最も好ましい。また、滴下ノズルの延びる方向に対して直交する方向の容器の最大外幅は、限定はされないが、点眼しやすさの観点から、例えば10mm以上とすることができ、11mm以上とすることが好ましく、12mm以上とすることがより好ましく、13mm以上とすることが更に好ましく、14mm以上とすることが特に好ましく、15mm以上とすることが最も好ましい。また、滴下ノズルの延びる方向に対して直交する方向の容器の最大外幅は、限定はされないが、点眼しやすさの観点から、例えば10mm~55mmとすることができ、11mm~50mmとすることが好ましく、12mm~45mmとすることがより好ましく、13mm~40mmとすることが更に好ましく、14mm~38mmとすることが特に好ましく、15mm~36mmとすることが最も好ましい。
【0080】
[CLに対するタンパク質吸着抑制方法]
別の実施形態において、本発明は、水溶性抗酸化剤を含有する眼科組成物をCLに適用することを含む、CLに対するタンパク質吸着抑制方法を提供することも可能である。
【0081】
[CLに対するタンパク質吸着抑制効果が付与された眼科組成物の製造方法]
別の実施形態において、本発明は、眼科組成物中に、水溶性抗酸化剤を配合することを含む、CLに対するタンパク質吸着抑制効果が付与された眼科組成物の製造方法を提供することも可能である。
【0082】
本明細書において、CLに対するタンパク質吸着抑制とは、CLに対して(特にCL表面に対して)、タンパク質が吸着する量を低減させることをいう。タンパク質の種類としては、CLに吸着し得る物質であれば特に制限されない。タンパク質の種類としては、例えば、アルブミン、グロブリン、リゾチーム、ムチン、炎症メディエーター等の涙液に含まれるタンパク質、花粉タンパク質等が挙げられ、紫外線や体温等の影響により変性したタンパク質も含まれる。CLに対するタンパク質の吸着量が、水溶性抗酸化剤を含有しないコントロールと比較して、少なくとも10%低減することが好ましく、20%低減することがより好ましく、40%低減することが更に好ましく、80%低減することが更により好ましい。CLに対するタンパク質の吸着量は、後述する実施例に記載の方法で求めることが可能である。
【0083】
上記した方法において、使用する水溶性抗酸化剤の種類やその含有量(又は配合量)、その他の成分の種類やその含有量(又は配合量)、それらの比率、眼科組成物の製剤形態、容器の種類やその組合せ等については、[眼科組成物]等の上記項目の記載と同様である。
【実施例】
【0084】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0085】
表1に示す組成のCL用眼科組成物を常法に従って調製し、被験液とした。
【0086】
【0087】
[試験例1:タンパク質吸着抑制試験]
以下の手順に従い、タンパク質吸着抑制試験を行った。
1. ソフトコンタクトレンズ(グループIV;販売名「2ウィークアキュビュー(登録商標)」、ジョンソン・エンド・ジョンソン社製)を4mLの生理食塩液にそれぞれ1枚ずつ浸漬し、4時間室温にて保存した。
【0088】
2. レンズを生理食塩水から取り出し、生理食塩水100mLに素早く(約1秒)浸漬して余分な液をすすいだ後、ビーカーのふちを使って、軽く水分を切った。その後、レンズを12穴プレート(Falcon 12 Well Clear Multiwell Plate #353043)に入れた各被験液4mLにそれぞれ浸漬し、16時間静置した。
【0089】
3. レンズを被験液から取り出し、レンズ表面に付着した液をふき取った後、レンズをガラスねじ口瓶に入れた表2に示す組成のタンパク質溶液2.0mLにそれぞれ浸漬し、34℃、120rpmで4時間振とうした。なお、表2のタンパク質溶液は、ヒトの涙液と類似する組成である(参考文献:Bohnert et.al (1988). Adsorption of Proteins From Artificial Tear Solutions to Contact Lens Materials. Investigative Ophthalmology & Visual Science, Vol. 29, 362-373)。
【0090】
【0091】
4. レンズをタンパク質溶液から取り出し、生理食塩水100mLに素早く(約1秒)浸漬して余分な液をすすいだ後、ビーカーのふちを使って、軽く水分を切った。その後、ガラスねじ口瓶に入れたタンパク質分離用液(1%炭酸ナトリウム及び1%ドデシル硫酸ナトリウム含有水溶液)2.0mLに浸漬した。
【0092】
5. 34℃、120rpmで3時間以上振とうし、レンズに吸着したタンパク質をタンパク質分離用液中に分離した。
【0093】
6. マイクロBCAアッセイキット(Thermo Scientific,Pierce ♯23235)を用いて、タンパク質分離用液中に存在するタンパク質の量を、アルブミン換算値として定量し、レンズに残存しているタンパク質の量(タンパク質残存量)を計算した。なお、タンパク質残存量の算出に際して、各サンプルの吸光度から、バックグラウンド(被験液及びタンパク質溶液に浸漬していないレンズからの抽出液)の吸光度を差し引いて、アルブミン換算値として算出することにより、レンズへのタンパク質の吸着量を求めた。
【0094】
7.下記式1によりコントロールに対する吸着抑制率を算出した。
[式1]
コントロールに対する吸着抑制率(%)={1-(各被験液のタンパク質吸着量/コントロールのタンパク質吸着量)}×100
なお、コントロールに対する吸着抑制率が0未満となった場合は0とした。
結果を表1及び
図1に示す。
【0095】
表1及び
図1に示される通り、比較例1及び2のCL用眼科組成物で処理した場合、コントロールに対する吸着抑制率が0%であり、効果が認められなかった。これに対して、実施例1~4のCL用眼科組成物で処理した場合は、コントロールに対する吸着抑制率が20%以上と大きく、実施例5~7のCL用眼科組成物で処理した場合は、コントロールに対する吸着抑制率が80%以上とさらに大きかった。
【0096】
これらの結果は、CL用眼科組成物に水溶性抗酸化剤を含有することにより、タンパク質吸着抑制効果が発揮され、その効果は非イオン界面活性剤の添加によりさらに増強されることを示している。
【0097】
[製造例]
下記の表3~表5に示す処方に従い、常法により、処方例1~処方例29の点眼剤を調製した。
【0098】
【0099】
【0100】