(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】高濃度過飽和水生成装置とその装置を用いた洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B08B 3/10 20060101AFI20240607BHJP
B01F 21/20 20220101ALI20240607BHJP
B01F 23/2373 20220101ALI20240607BHJP
B01F 23/232 20220101ALI20240607BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
B08B3/10 Z
B01F21/20
B01F23/2373
B01F23/232
B08B3/02 A
(21)【出願番号】P 2022212625
(22)【出願日】2022-12-12
【審査請求日】2023-02-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523000020
【氏名又は名称】日高 義晴
(72)【発明者】
【氏名】日高 義晴
【審査官】田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-213703(JP,A)
【文献】国際公開第2009/028020(WO,A1)
【文献】特開2016-104474(JP,A)
【文献】特許第6252926(JP,B1)
【文献】特開2021-126603(JP,A)
【文献】特開2011-078858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/02
B08B 3/10
H01L 21/304
B01F 21/20
B01F 23/2373
B01F 23/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高濃度過飽和気泡水生成装置は、原水を貯留するバッファ槽と、ガス供給部と、ガス混合昇圧ポンプと、ガスの溶解を加速する加圧溶解槽と、微細気泡発生ノズルを有し、
前記加圧溶解槽は、前記ガス供給部より導入した前記ガスの溶解を加速する加圧溶解1次槽と、前記ガスの浮上する気泡を上昇分離する加圧溶解2次槽を有し、
前記バッファ槽に貯留された前記原水を抽出して、前記ガス混合昇圧ポンプを介して前記ガスを昇圧混合し、
前記加圧溶解1次槽に導入して前記ガスの溶解を加速し、前記ガスの浮上する気泡を上昇分離させて前記ガスの加圧雰囲気とする前記加圧溶解2次槽を通過させ、前記加圧溶解2次槽の底部より抽出してガス濃縮水とし、前記ガス濃縮水は前記微細気泡発生ノズルを通過させて前記バッファ槽へ供給して微細気泡化して前記原水の溶存ガスを除去し、循環により前記ガス濃縮水は溶解ガス種を制御した高濃度過飽和気泡水とし、
前記加圧溶解槽の後に分岐する分岐バルブを有する高濃度過飽和気泡水生成装置を用いた洗浄装置。
【請求項2】
前記微細気泡発生ノズルは、ファインバブルを発生させることを特徴とする請求項1に記載された高濃度過飽和気泡水生成装置。
【請求項3】
前記バッファ槽は、前記ガス混合昇圧ポンプの1分間当りの流量に対し0.2倍から10倍の容量とすることを特徴とする請求項1に記載された高濃度過飽和気泡水生成装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一の請求項に記載された高濃度過飽和気泡水生成装置を用いた洗浄装置は、前記高濃度過飽和気泡水の状態で供給する前記高濃度過飽和気泡水生成装置の前記分岐バルブから前記ガス濃縮水を抜き出す配管と、前記配管の先端に接続された製造装置内吐出ノズルを有する洗浄装置。
【請求項5】
請求項1から3までの何れか一の請求項に記載された高濃度過飽和気泡水生成装置で、
前記バッファ槽の前記原水の取り出す位置は、前記微細気泡発生ノズルで発生したファインバブルで膨張して浮上する気泡の循環する下端に当る
微細気泡発生ノズル面より下側の底部に配することを特徴とする高濃度過飽和気泡水生成装置。
【請求項6】
請求項1から3までの何れか一の請求項に記載された高濃度過飽和気泡水生成装置で、
前記バッファ槽の前記原水の取り出す位置は、前記微細気泡発生ノズルで発生したファインバブルで膨張して浮上する気泡を循環させない位置として、前記バッファ槽の底面に配することを特徴とする高濃度過飽和気泡水生成装置。
【請求項7】
請求項1から3までの何れか一の請求項に記載された高濃度過飽和気泡水生成装置を用いた洗浄装置は、製造装置の処理部に高濃度過飽和気泡洗浄水を供給する処理部用の高濃度過飽和気泡水生成装置と、前記処理部用の高濃度過飽和気泡水生成装置の前記バッファ槽に供給する濃縮水補充用の第二高濃度過飽和気泡水生成装置を併設し、
前記濃縮水補充用の第二高濃度過飽和気泡水生成装置は、第二バッファ槽と、第二ガス供給部と、第二ガス混合昇圧ポンプと、第二加圧溶解槽と、第二微細気泡発生ノズルと、第二循環ラインと、第二分岐バルブを有し、
前記濃縮水補充用の第二高濃度過飽和気泡水生成装置は、前記処理部用の高濃度過飽和気泡水生成装置の前記バッファ槽の液量が減った際に高濃度過飽和気泡水を補充して濃度を一定とすることを特徴とする高濃度過飽和気泡水生成装置を用いた洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度過飽和水生成装置とその装置を用いた洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶といった電子デバイスでは、さまざまな種類の洗浄が行われているが、最終段階は水による洗浄が行われる場合が多い。微細化の進んだ電子デバイスでは、被洗浄物が非常に細かな形成物である上に、除去したいものが数十nm粒子などの付着物もあるので、細部まで洗浄するのは容易でない。形成物が銅などの金属材料で作られている場合は、酸化や腐食により形状を変えることなく付着物を除去する必要があり、洗浄水中の溶存ガスも制御することが必要となる。
【0003】
異物除去能力を上げるために微細気泡水を用いる方法も提案されている。マイクロバブルは比較的短期間で消滅するが、消滅の際に破裂によって被洗浄物の表面の比較的大きな汚れを落とすことができる。一方、ナノサイズの気泡(ウルトラファインバブル:UFB)は消滅までの期間は長いものの、存在するのみで容易に大きな汚れを落とすことはできない。
特許文献1(WO2020/075844号)では、UFB含有の洗浄液を生成し、被洗浄物の近傍で衝突処理体に衝突させ、その際にマイクロバブルを生成し、被洗浄物を洗浄する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2(特許第4581556号)は加圧溶解法の微細気泡発生装置であり、お風呂での温浴効果を高めることを目的に開発された。ノズルから吐出された白濁化した気泡水は、マイクロバブルとUFBが混在した状態(ファインバブル:FB)で、被洗浄物に付着するとされる数十μm以上の大きなマイクロバブルも存在し、全ての気泡を含む水で無作為に洗浄すると被洗浄物に付着する気泡により薬液成分の置換や異物の除去を阻害する。
【0005】
また、UFBだけとするために生成動作を停止してマイクロバブルが消滅した後の洗浄水は、停止後から溶存ガス量もUFBの気泡濃度も低下が進み、被洗浄物の洗浄効果が十分に得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2020/075844号
【文献】特許第4581556号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体や液晶のデバイスは、製造過程において酸化を極度に忌避する材料が使われる場合もある。例えば、銅は酸化銅の溶解が容易であるため、酸化を抑制するため洗浄水中の溶存酸素を除くことが要求される。また、表面が疎水化している材料は水洗から乾燥の過程で再付着する異物を防止するために、表面を親水状態にする必要があり、酸化力を高めた洗浄水を要求される。
【0008】
最近の電子デバイスは、構成するパターンが更に微細化が進んでいる上に、多種多様な材料の採用が進み更に複雑な製造工程となっている。サブミクロンからナノサイズのパターン構造となり、アスペクト比も高く3次元化した細部まで付着した異物や薬液を速やかに取り除くと同時にパターンを傷つけない必要がある。異物を取り除く物理力を加えて、パターン崩れを抑制するためにパターンに加わる力を分散させて、薬液置換を速やかに進めるにはデバイス構造部に付着する異物や気泡を速やかに取り除く必要があり、両立することは容易ではない。
【0009】
異物の再付着を防止し、パターン崩れを抑制する方法として、リンス水をアルカリ性側に誘導した上で水素を溶解するアルカリ水素機能水を用いる方法や、細かな液滴にして吐出する(2流体ノズル)や超音波を印加した水を流下する方法があるが、微細化の進んだデバイスではパターン崩れの抑制と異物の除去の両立が十分ではない。
【0010】
更に、マイクロバブルを使用する方法も提案され、切削加工後の部品洗浄では有機溶剤と超音波の組合せで洗浄効果の向上が報告されている。サブミクロンからナノサイズのパターンを持つデバイスでは、十数μmを超えるマイクロバブルがパターン開口部へ吸着して洗浄効果を低下させる可能性があり、吸着しない大きさの気泡に分級すると同時に吸着しない工夫が必要である。
【0011】
従来は、UFBは気泡の寿命が長く、数週間は気泡密度が低下しないと言われており、水道水では生成装置を停止後も高密度でUFBが数週間は安定するが、電子デバイスの製造で使用される純水では十数分以内で密度低下が著しいことが判明し、短時間で効果を高めることが難しい。
【0012】
マイクロバブルやUFBでの異物を剥離除去する想定メカニズムの一つは、気泡がある一定以上表面に近づくと気泡が変形してマイクロジェット流が発生し気泡の分裂と同時に異物への揚力と圧力変動による極大な表面流動が生じて、極大の表面流動により更に狭い隙間に水と気泡が入り、気泡分裂が繰り返されて除去力を生むである。異物に接近する気泡の量を増やすことが重要である。
【0013】
また、溶解ガスは、流路での圧力変化や超音波などの振動により微細気泡を発生させる。ノズルの選定でデバイスなど基板での洗浄効果を上げることができ、濃度が高いほうが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記の課題に鑑みて想到されたものであり、特定ガスが過飽和で溶解している上にブラウン運動して浮遊する気泡を高濃度に含有させた高濃度過飽和気泡水を得ることのできる高濃度過飽和気泡水生成装置と高濃度過飽和気泡水による洗浄装置を提供する。
【0015】
高濃度過飽和気泡水とは、供給ガス以外の溶存ガスを1ppm未満とした上で、供給ガスの溶解ガス量を飽和濃度の3倍以上とし、浮遊する気泡を5×108個/ml以上に含んだ洗浄水を指す。
【0016】
具体的に本発明に係る高濃度過飽和気泡水生成装置は、
原水を貯留するバッファ槽と、ガスを供給するガス供給部と、前記ガスを撹拌するガス混合昇圧ポンプと、前記ガスの溶解を加速する加圧溶解槽と、前記バッファ槽に貯留する際に通過させる微細気泡発生ノズルを有し、前記加圧溶解槽と前記バッファ槽の途中に分岐バルブを有する。
前記高濃度過飽和気泡水生成装置を用いた洗浄装置は、前記分岐バルブから抜き出す配管と、前記配管の先端に接続されたノズルから吐出して被洗浄物を洗浄する。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る高濃度過飽和気泡水発生装置は、ガスを混合し昇圧して加圧溶解槽でガス溶解を加速させ、加圧溶解槽はガス溶解と同時に発生する気泡を浮上分級する2次槽が連結され下部より取出した洗浄水は溶解ガスと浮遊する気泡を含んだガス濃縮水とし、バッファ槽へ微細気泡発生ノズルを介してのFB化の循環により、ガス濃縮水は短時間で不要なガス成分を取除き、過飽和にガスを溶解して浮遊する気泡を高濃度に含んだ高濃度過飽和気泡水を得ることができる。
【0018】
高濃度過飽和気泡水生成装置を用いた洗浄装置は、加圧溶解槽とバッファ槽の途中に分岐バルブを設置して高濃度過飽和気泡水の状態で製造装置内吐出ノズルから被洗浄物に供給し、表面近傍で気泡分裂を誘発させて、異物の除去しパターン崩れを抑制した洗浄とする。また、ガスの種類を問わないので、酸素、窒素、水素、二酸化炭素の単一ガスや水素+窒素、水素+アルゴンといった混合ガスで過飽和に溶解して浮遊する気泡を高濃度に含む水が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る高濃度過飽和気泡水生成装置とその装置を用いた洗浄装置の構成を示す図である。
【
図2】本発明に係る高濃度過飽和気泡水生成装置とその装置を用いた洗浄装置でバッファ槽の底面に循環ラインを配した構成を示す図である。
【
図3】本発明に係る高濃度過飽和気泡水生成装置とその装置を用いた洗浄装置で、濃縮水補充用の高濃度過飽和気泡水生成装置と処理部用の高濃度過飽和気泡水生成装置を連結した構成を示す図である。
【
図4】本発明に係る高濃度過飽和気泡水生成装置に用いる加圧溶解槽の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明に係る高濃度過飽和気泡水生成装置とその装置を用いた洗浄装置について図面および実施例を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態および一実施例を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。
【0021】
なお、以下の説明では、数十nm~1μmの気泡をUFBと呼び、1μm~100μmの気泡をマイクロバブルと呼び、100μm以上の気泡をサブミリバブル/ミリバブルと呼ぶ。また、UFBとマイクロバブルを総称してFBと呼ばれる。一般的に、気泡径の小さなマイクロバブルは収縮方向に向かい、気泡径の大きなマイクロバブルは膨張方向に向かう。その境界は10μm前後と言われている。
【0022】
図1に本発明に係る高濃度過飽和気泡水生成装置とその装置を用いた洗浄装置の構成例を示す。高濃度過飽和気泡水生成装置は、ガス供給部1と、
ガス混合昇圧ポンプ2と、加圧溶解槽3と、微細気泡発生ノズル4と、バッファ槽5を有する。原水OWに導入したガスの溶解量を高めたガス濃縮水CWを生成し、微細気泡発生ノズル4からバッファ槽5へFBを生成し通過することで導入されるガス以外の溶存成分を除去し、ガスを過飽和に溶解し浮遊する気泡を高濃度に含んだ高濃度過飽和気泡水として、加圧溶解槽3とバッファ槽5の途中の分岐バルブ11から取り出してデバイスや部材を洗浄する洗浄装置である。
【0023】
ガス供給部1は原水OWに対しガスを気泡化しながら混合する。ガス混合昇圧ポンプ2は更に均一で細かく混合し昇圧させる。例えば、ガス混合昇圧ポンプ2は回転するエンペラーで導入されたガスを細かな気泡にする。
【0024】
図4に示すように加圧溶解槽3は、加圧されたガス部に液滴化して表面積を増やして暴露すると同時に、液滴が液面や槽側壁を叩きガスを巻込むなどして多量の気泡を生成して溶解を加速する加圧溶解1次槽3aと、浮上する気泡を上昇させる加圧溶解2次槽3bが連結され、加圧溶解1次槽3aと加圧溶解2次槽3bの上部の空間部分と下部の液体部分は繋がった構成とする。加圧溶解2次槽3bの底部より抽出すると浮遊する気泡と溶解ガスが混合したガス濃縮水CWになる。また、空間部分は圧力調整用のスローリークバルブ20があり、浮上した気泡により上昇した圧力を一定にして溶解量を安定させる。
【0025】
動作開始初期のガス濃縮水CWには補充原水ライン12からバッファ槽5に貯留された時点で溶存する酸素や炭酸が含まれる。微細気泡発生ノズル4は、溶存ガスも含めて溶解ガスを一度FB化して一部の浮上する気泡としてバッファ槽5の大気中に放出して溶存ガスを除去し、循環により溶解ガス種を制御する。その結果、微細気泡発生ノズル4で生成するFBは10μm以上の膨張気泡を20%以上とする必要がある。
【0026】
また、循環ライン10に流入する浮遊する気泡が増えると加圧下で溶解が進み、溶解ガス量が飽和濃度の3倍以上となる。循環ライン10に流入する浮遊する気泡濃度を高めるには、微細気泡発生ノズル4で生成する気泡はFBとし、浮遊して溶解を加速する10μm以下の収縮気泡を20%以上にする必要がある。溶存ガスの除去と溶解ガス濃度を上げるバランスを確保するために、好ましいFBの分布のピーク径は5μmから20μmである。
【0027】
また、溶存ガスを制御して速やかな高濃度過飽和気泡水の生成は、加圧溶解槽3でガス中に暴露する頻度と、微細気泡発生ノズル4でバッファ槽5にてFB化する頻度で決まり、バッファ槽5全体が複数回の循環が必要である。バッファ槽5の容量は、ガス混合昇圧ポンプ2の1分間当りの流量に対して10倍以下にする必要があり、数分で高濃度過飽和気泡水とするには4倍以下がより好ましい。
【0028】
また、微細気泡発生ノズル4はUFBと収縮する気泡の割合を増やすと多段のエゼクター構造となり大きくなり、FBは円錐状に広がりながら吐出される。微細気泡発生ノズル4が完全に浸漬した上でFBの広がりを考慮すると、バッファ槽5の容量の下限は、ガス混合昇圧ポンプ2の1分間当りの流量に対して0.2倍以上が必要となる。
【0029】
また、循環ライン10に流入する膨張する気泡が多くなるとガス混合昇圧ポンプ2が故障する。バッファ槽5の上部は浮上する気泡が増えるため、循環ライン10は微細気泡発生ノズル4よりも下側でバッファ槽5の底部に配置する必要がある。
【0030】
また、ガス濃縮水CWが高濃度過飽和気泡水に変わったことの確認は、バッファ槽5に溶存炭酸を計測する電気伝導度計14と酸素や水素などの溶存ガス濃度計15を設置して、溶存ガスが制御されたことと飽和濃度を超えたことを計測して管理する。
【0031】
また、分岐バルブ11よりデバイスの基板など被洗浄物8を洗浄する製造装置の処理部9へ供給する高濃度過飽和気泡水PWは、収縮して浮遊する気泡と溶解ガスとなっており、ポンプなどの摺動部で発生する可能性のある異物を補足するためにポア径が10μm以下の異物補足膜6を設置できる。また、気泡表面のゼータ電位はマイナスで異物補足膜材の表面電位によって通過できる気泡の大きさが変わる。
【0032】
また、高濃過飽和気泡水PWを被洗浄物8に流下させる製造装置内吐出ノズル7は、直流やシャワーや超音波ノズルなどを選定できる。ノズルの構造によりFBが発生して除去性を高める。
【0033】
また、高濃度過飽和気泡水PWは、溶解ガスが飽和濃度の3倍以上ある上に純水中では浮遊する気泡の寿命が短い。安定して高い洗浄効果を得るために、高濃度過飽和気泡水生成装置と洗浄装置の処理部9をつなぐ配管は、気泡の寿命を考慮して設定する必要がある。
【0034】
今回はガス混合昇圧ポンプ2の流量が18L/分であることから、バッファ槽5の容量を30Lとした。ガス供給1より水素(5%)+窒素を供給して、バッファ槽5に貯留した純水を原水OWとして循環した場合、電気伝導度は低下し3~5分間で溶存酸素濃度は1ppm未満に低下し、水素の溶解ガス濃度は飽和濃度の4~5倍に当る35ppbまで溶解し、浮遊する気泡を計測する光散乱式の微細気泡計測装置Nanosightの測定でUFBが10×108個/mlとなり、分岐バブル11より被洗浄物8の洗浄処理を行い良好な結果を得た。
【0035】
高濃度過飽和気泡水生成装置は、バッファ槽5に貯留した原水OWを循環してガス濃縮水CWを高濃度過飽和気泡水に変えて分岐バルブ11より製造装置の処理部9に供給すると、バッファ槽5の水量は減少し補充原水ライン12より供給する。補充後には電気伝導度計14や溶存ガス濃度計15の計測値が変化するため洗浄処理を停止して再度生成する。
【0036】
被洗浄物8の材質や異物の特徴によって、形状の安定性や異物の除去性や再付着防止で大きな効果を得るために、原水OWを純水以外に弱酸性水,弱アルカリ水などを用いても問題ない。さらに、有機成分や無機成分を含有する洗浄薬液自体をガスによる高濃度過飽和気泡水にすることで高い効果も期待できる。
【0037】
図2は、本発明に係る高濃度過飽和気泡水生成装置とその装置を用いた洗浄装置でバッファ槽の底面に循環ラインを配した構成について図面および実施例を示し説明する。高濃度過飽和気泡水PWの生成効率を更に高める方法で、微細気泡発生ノズル4で生成したFBの浮上する気泡が循環ライン10に流入することを防止し、浮遊する気泡の流入濃度を高めて溶解を加速するために、循環ライン10は微細気泡発生ノズル4より下部に当るバッファ槽5の底面に配する。その他の構成と設定条件は、
図1で説明した実施例と同一である。
【0038】
今回は、循環ライン10をバッファ槽5の中央部底面に配して、ガス混合昇圧ポンプ2の流量を18L/分、バッファ槽5の容量を30Lとした。ガス供給1より水素(5%)+窒素を供給して、バッファ槽5に貯留した純水を原水OWとして高濃度過飽和気泡水PWを生成した。電気伝導度は低下した上で2~4分間で溶存酸素濃度は1ppm未満になり、水素の溶解ガス濃度が飽和濃度の4~5倍に当る35ppbとなり、浮遊する気泡を計測する光散乱式の微細気泡計測装置Nanosightで測定するとUFBが10×108個/mlとなり、分岐バブル11より被洗浄物8の洗浄処理を行い良好な結果を得た。
【0039】
図3は高濃度過飽和気泡水発生装置を処理用と補充用の2つの機能で連結した形態の洗浄装置について図面および実施例を示し説明する。
図1や
図2の実施形態では製造装置の処理部9で洗浄するとバッファ槽5の水量が減少する。補充原水ライン12より補充すると溶存ガス濃度や電気伝導度が変化し、高濃度過飽和気泡水でなくなり洗浄効果が低下するため洗浄を停止する必要がある。それを防止するために、処理部用の高濃度過飽和気泡水生成装置32と濃縮水補充用の
第二高濃度過飽和気泡水生成装置31を併設する。
【0040】
濃縮水補充用の第二高濃度過飽和気泡水生成装置31は、第二ガス供給部21と、第二昇圧ガス混合ポンプ22と、第二加圧溶解槽23と、第二微細気泡発生ノズル24と、第二バッファ槽25を有する。第二循環ライン210を介して循環し、第二電気伝導計214や第二溶存ガス濃度計215の計測により高濃度過飽和気泡水に変化した第二ガス濃縮水CW2を第二加圧溶解槽23と第二バッファ槽25の途中の第二分岐バルブ211より分岐した濃縮水補充ライン13で異物補足膜6を介して、処理部用の高濃度過飽和気泡水生成装置32のバッファ槽5に補充する。
【0041】
処理部用の高濃度過飽和気泡水生成装置32は、濃縮水補充ライン13を配するバッファ槽5と、ガス供給部1と、ガス混合昇圧ポンプ2と、加圧溶解槽3と、微細気泡発生ノズル4を有する。バッファ槽5に貯留された原水OWが濃縮水補充ライン13より補充された場合も安定させるために、バッファ槽5の底部や底面に配した循環ライン10を介して循環し、過飽和に溶解し浮遊する気泡を高濃度に含む高濃度過飽和気泡洗浄水PWとして加圧溶解槽3とバッファ槽5の途中に配した分岐バルブ11より取り出して被洗浄物8を洗浄処理する。
【0042】
また、
濃縮水補充用の第二高濃度過飽和気泡水生成装置31の構成や機能は、処理部用の高濃度過飽和気泡水生成装置32と同一で、
第二加圧溶解槽
23は
図4に示した加圧溶解槽3と、
第二バッファ槽
25の設定はバッファ槽5と、
第二微細気泡発生ノズル
24は微細気泡発生ノズル4と同じくFBを発生する。
【0043】
また、第二バッファ槽25は、溶存炭酸を計測する第二電気伝導度計214と酸素や水素などの第二溶存ガス濃度計215を設置し、溶存ガスが制御されたことと飽和濃度を超えた溶解ガスを計測し、処理部用の高濃度過飽和気泡水生成装置32のバッファ槽5に供給される第二ガス濃縮水CW2が高濃度過飽和気泡水であることを管理する。
【0044】
製造装置の処理部9に供給する高濃度過飽和気泡水の状態を保つために、処理部用の高濃度過飽和気泡水生成装置32と濃縮水補充用の第二高濃度過飽和気泡水生成装置31は同一の構成と設定条件にし、それぞれの分岐バルブより取出す洗浄水が高濃度過飽和気泡水であることをそれぞれの電気伝導度計と溶存ガス濃度計で管理し、高濃度過飽和気泡水PWと第二高濃度過飽和気泡水PW2の生成速度や液特性を同一にした上で循環生成動作を継続した上で、製造装置の処理部9の使用量と生成効率を考慮して濃縮水補充用の第二高濃度過飽和気泡水生成装置31から補充する。
【0045】
また、処理部用の高濃度過飽和気泡水生成装置32と濃縮水補充用の第二高濃度過飽和気泡水生成装置31は、製造装置の処理部9の洗浄前の準備として処理部用の補充原水ライン12と第二補充原水ライン12aから供給される原水は同じ原水を供給して循環することで高濃度過飽和気泡水PWと第二高濃度過飽和気泡洗浄水PW2は同等の高濃度過飽和気泡水を生成する。
【0046】
今回、濃縮水補充用の第二高濃度過飽和気泡水生成装置31は、第二ガス混合昇圧ポンプ22の流量を18L/分、第二バッファ槽25の容量を30Lとし、第二ガス供給部21より水素(5%)+窒素を供給し、第二バッファ槽25に貯留した純水を第二原水OW2として第二高濃度過飽和気泡水PW2を生成した。処理部用の高濃度過飽和気泡水生成装置32は、ガス混合昇圧ポンプ2の流量を18L/分、バッファ槽5の容量を 30Lとし、ガス供給部1より水素(5%)+窒素を供給し、バッファ槽5に貯留した純水を原水OWとして高濃度過飽和気泡洗浄水PWを生成した。高濃度過飽和気泡水PWと第二高濃度過飽和気泡洗浄水PW2共に、電気伝導度は低下した上で2~4分間で溶存酸素濃度は1ppm未満にし、水素の溶解ガス濃度は飽和濃度の4~5倍に当る35ppbまで溶解し、浮遊する気泡を計測する光散乱式の微細気泡計測装置Nanosightの測定でUFBが10×108個/mlとなり、第二分岐バルブ211より補充した上で分岐バルブ11より被洗浄物8の洗浄処理を行い良好な結果を得た。更に、ウェハ状のサンプルを1バッチの25枚連続で処理したところ、処理部の高濃度過飽和気泡水生成装置32のバッファ槽5に濃縮水補充ライン13より補充されているが、設置した電気導電率計14と溶存ガス濃度計15に大きな変化もなく処理が完了できた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る高濃度過飽和気泡水生成装置とその装置を用いた洗浄装置は、純水を使用する半導体や液晶の微小構造を有するデバイスの製造で、溶解ガスが制御され飽和濃度を大きく超えた溶解ガスと浮遊する気泡を高濃度に含む高濃度過飽和気泡水は、製造装置内ノズルから吐出したときに微細気泡がさらに生成され、異物近傍で気泡が分裂を繰り返して異物の除去性を大きく高め、パターン崩れを防止する洗浄装置を提供することができる。また、高い清浄度を必要とする半導体製造装置や医療用品の製造装置の配管やOリングなどの部材に対して曲げ加工や溶接加工を実施した後の洗浄用水として利用することができる。また、酸素濃度を高めた場合は、生物の培養やバイオフィルム除去に利用することができる。また、塩素を高めた場合は、殺菌水としても利用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 ガス供給部
2 ガス混合昇圧ポンプ
3 加圧溶解槽
3a 加圧溶解1次槽
3b 加圧溶解2次槽
4 微細気泡発生ノズル
5 バッファ槽
6 異物補足膜
7 製造装置内吐出ノズル
8 被洗浄物
9 製造装置の処理部
10 循環ライン
11 分岐バルブ
12 補充原水ライン
12a 第二補充原水ライン
13 濃縮水補充ライン
14 電気伝導度計
15 溶存ガス濃度計
20 スローリークバルブ
21 第二ガス供給部
22 第二ガス混合昇圧ポンプ
23 第二加圧溶解槽
24 第二微細気泡発生ノズル
25 第二バッファ槽
31 濃縮水補充用の第二高濃度過飽和気泡水生成装置
32 処理部用の高濃度過飽和気泡水生成装置
210 第二循環ライン
211 第二分岐バルブ
214 第二電気伝導度計
215 第二溶存ガス濃度計
OW 原水
CW ガス濃縮水
PW 高濃度過飽和気泡水
OW2 第二原水
CW2 第二ガス濃縮水
PW2 第二高濃度過飽和気泡洗浄水
WS 水面
【要約】
【課題】マイクロデバイスの洗浄水として、過飽和を大幅に超えたガス濃度で制御し、高濃度でUFBのみの高濃度過飽和気泡水が要請されていた。
【解決手段】 原水OWを貯留するバッファ槽5と、前記バッファ槽5から取り出した前記原水OW中に溶解させるガスを供給するガス供給部1と、前記ガスを撹拌し昇圧するガス混合昇圧ポンプ2と、液滴化して噴霧し前記ガスの溶解を加速し浮遊する気泡を含んだガス濃縮水CWを生成する加圧溶解槽3と、前記バッファ槽5に貯留する際に通過させるFBを生成する微細気泡発生ノズル4を有する高濃度過飽和気泡水生成装置。
前記高濃度過飽和気泡水生成装置で循環により、溶解ガス種を制御した上で溶解ガスを過飽和とし浮遊する気泡を高濃度に含んだ高濃度過飽和気泡水PWを加圧溶解槽4とバッファ槽5の間の分岐バブル11から抜き出す配管と、前記配管の先端に接続されたノズルを有する洗浄装置。
【選択図】
図2