IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シクパ ホルディング ソシエテ アノニムの特許一覧

特許7499838表面増強ラマン分光法タグを製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】表面増強ラマン分光法タグを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/65 20060101AFI20240607BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20240607BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240607BHJP
   B22F 1/0545 20220101ALI20240607BHJP
   B22F 9/00 20060101ALI20240607BHJP
   B22F 1/102 20220101ALI20240607BHJP
   B22F 9/24 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
G01N21/65
B01J13/00
B22F1/00 K
B22F1/0545
B22F9/00 B
B22F1/102
B22F9/24 F
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022502101
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2020069684
(87)【国際公開番号】W WO2021009090
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】62/874,158
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19192040.4
(32)【優先日】2019-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20163879.8
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH-1008 Prilly, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ピオッティ, マルセロ エデュアルド
(72)【発明者】
【氏名】シェフラー, レイモンド エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】コワルスキー, マーク
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0118986(US,A1)
【文献】特表2005-507500(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0327551(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0003576(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103364392(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/74
B01J 3/00 - B01J 13/00
B22F 1/00 - B22F 8/00
B22F 9/00 - B22F 9/30
B82Y 5/00 - B82Y 99/00
C22C 1/04 - C22C 1/059
C22C 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) プラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒に分散された複数のナノ粒子と、前記複数のナノ粒子の前記表面に吸着した安定剤とから本質的になり、且つ-25mV以下のζ電位値を有する、第1のコロイドを用意するステップと、
b) プラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒に分散された複数のナノ粒子と、前記複数のナノ粒子の前記表面に吸着したラマン活性レポーター分子と、前記複数のナノ粒子の前記表面に吸着した安定剤とから本質的になり、且つ-25mV以下のζ電位値を有する、第2のコロイドを用意するステップと、
c) 前記第1のコロイドのナノ粒子の数と前記第2のコロイドのナノ粒子の数との比が、約25:1~約1:1になるように、前記第1のコロイドを前記第2のコロイドと組み合わせ、第3のコロイドを用意するステップと、
d) ステップd1)~d3)のいずれか又はそれらの組み合わせによって前記ナノ粒子の凝集を誘発するステップと、
d1) ステップc)で得られた前記第3のコロイドを、約2.2と、前記ラマン活性レポーター分子が0~0.3の正味電荷を有する最低pH値との間に含まれるpHで混合するステップ
d2) 塩溶液を、ステップc)で得られた前記第3のコロイドに添加するステップ
d3) 水混和性溶媒を、ステップc)で得られた前記第3のコロイドに添加するステップ
e) 凝集を停止するステップと、
を含む、表面増強ラマン分光法(SERS)タグを製造する方法。
【請求項2】
前記ステップc)において、前記第1のコロイドのナノ粒子の数と前記第2のコロイドのナノ粒子の数との比が約5:1~約1:1になるように、前記第1のコロイドを前記第2のコロイドと組み合わせ、第3のコロイドを用意する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記d2)において、前記塩溶液は無機塩溶液である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップb)が、b1)からb3)の順序で実施される以下のステップを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
b1) プラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒に分散された複数のナノ粒子と、前記複数のナノ粒子の前記表面に吸着した安定剤とから本質的になり、且つ-25mV以下のζ電位値を有する、コロイドを用意するステップ、
b2) 前記コロイドのpHを、前記ナノ粒子の前記表面に吸着させるべき前記ラマン活性レポーター分子が正味電荷を有しない最低pH値より高い値で調整し、同時に、-25mV以下の前記ζ電位値を維持するステップ、並びに
b3) 前記ラマン活性レポーター分子を溶媒に溶かした溶液をステップb2)で得られた前記コロイドに添加し、同時に、-25mV以下の前記ζ電位値を維持するステップ
【請求項5】
前記ζ電位値が-40mV未満である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記安定剤が、カルボン酸、カルボン酸塩、リン酸、リン酸塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、及びそれらの混合物から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のコロイドの前記ナノ粒子が、それらの表面にラマン活性レポーター分子のサブ単層又は単層を吸収している、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップb3)で、前記ラマン活性レポーター分子を溶媒に溶かした前記溶液が2種以上の異なるラマン活性レポーター分子の混合物を含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項9】
ステップc)で、前記第1のコロイドのナノ粒子の数と前記第2のコロイドのナノ粒子の数との比が、約4:1~約3:1である、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ステップd1)が、ステップc)で得られた前記第3のコロイドに酸性溶液をさらに添加することを含み、同時に、得られるコロイドのpH値が、約2.2と、前記ラマン活性レポーター分子が0~0.3の正味電荷を有する最低pH値との間に含まれるように混合する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のコロイドのpHを、ステップd1)で得られた前記第3のコロイドのpHが、約2.2と、前記ラマン活性レポーター分子が0~0.3の正味電荷を有する最低pH値との間に含まれるように調整する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップe)が、以下のステップe1)~e4)のいずれかを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
e1) ステップd)で得られた前記コロイドのpHを、前記ナノ粒子の前記表面に吸着させるべき前記ラマン活性レポーター分子が正味電荷を有しない最低pH値より高い値で調整するステップ
e2) ステップd)で得られた前記コロイドを水で希釈するステップ
e3) ポリマーを、ステップd)で得られた前記コロイドに添加するステップ
e4) 誘電体前駆体を、ステップd)で得られた前記コロイドに添加するステップ
【請求項13】
ステップe)が、ステップe3)から本質的になり、前記製造方法が、ステップe3)で得られた前記コロイドを水で希釈すること、及び/又は前記SERSタグを誘電体でコーティングすることをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップc)及びd)が、連続フローシステムにおいて同時に実施される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ステップe)が、連続フローシステムにおいて実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のコロイドの前記複数のナノ粒子及び前記第2のコロイドの前記複数のナノ粒子が、同じサイズを有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のコロイドのナノ粒子サイズが、前記第2のコロイドのナノ粒子サイズとは異なる、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のコロイドの前記複数のナノ粒子の前記プラズモン表面及び/又は前記第2のコロイドの前記複数のナノ粒子の前記プラズモン表面が、金から作製されている、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、表面増強ラマン分光法(SERS)タグの製造方法の分野に関する。本発明による製造方法は、再現性があり、用途が広く、それから、狭いサイズ分布及び高比率の少数凝集体(low-number aggregates)を特徴とする大量のSERSタグの有利な製造を可能にする。本明細書に記載されている本発明の製造方法によって製造されたSERSタグによって、アンサンブルSERS応答の増加が実現される。
【0002】
[発明の背景]
表面増強ラマン分光法(SERS)タグは、同定及び認証を目的とした生成物のラベリングと、マイクロアレイテクノロジー、診断及びバイオイメージングにおける高スループットマルチプレックススクリーニングとを含む、様々な用途に有用であると証明されている。SERSタグとは、プラズモン表面を呈し、且つそれらの表面にラマン活性レポーター分子が吸着しているナノ粒子の凝集体である。プラズモン表面を呈するナノ粒子は、ラマン増幅に必要な電場の生成に関与しており、ラマン活性レポーター分子は、SERSタグの独自の振動指紋をもたらす。典型的には、凝集体は、外部コーティング層を呈し、この外部コーティング層は、a)SERSタグを外部媒体から分離し、それによって、ラマン活性レポーター分子が、SERSタグから浸出することが防がれ、SERSタグが、振動ノイズを生じさせ得る外部媒体の汚染から保護され、b)SERSタグのコロイド安定性を高め、且つc)さらなる化学的官能化のための好都合な表面を形成する。これまで、ポリマー及びシリカが外部コーティング層として使用されてきた。
【0003】
プラズモン特性がナノ粒子の凝集状態に強く依存するため、アンサンブルSERS応答を増加させるには、少数凝集体の数が多いSERSタグを生成することが非常に望ましい。少数凝集体の数が多いSERSタグは、合成後選別技術又は制御された凝集体合成プロセスのいずれかによって生成した。
【0004】
例えば、単一ナノ粒子と二量体から八量体までのナノ粒子凝集体とを含有する混合物に適用されたフィールドフローフラクショネーションによって、二量体(10%)、三量体(21%)及び四量体(13%)のSERSタグが濃縮された画分が生成されたが、しかし、この画分は、高い割合の単一ナノ粒子(52%)を含有していた(J.Am.Chem.Soc.2010,132,10903~10910)。単一ナノ粒子と二量体から十二量体までの凝集体とを含有する混合物は、水性イオジキサノール密度勾配媒体などの高粘度密度勾配媒体中で遠心合成後選別法を使用することによって、二量体(52%)及び三量体(32%)SERSタグが濃縮された(米国特許第9802818号)。時間及び費用がかかるのみならず、合成後選別技術では、コーティングされていないSERSタグの不安定化に繋がる(例えば高粘度試薬のための)過酷な条件を使用する必要がある。したがって、合成後選別技術は、シリカ又はポリマーでコーティングされたSERSタグとのみ適合性がある。したがって、制御された凝集合成プロセスが、狭いサイズ分布及び高比率の少数凝集体を有するSERSタグの生成に非常に有利である。
【0005】
固体支持体補助凝集によって、狭いサイズ分布を有するSERSタグの生成が可能になった。Ruan等(Adv.Optical Mater.2014、2、65~73)は、平均直径180nmのAuナノ球体コア1個あたり18±2個の数の平均直径24nmのAuナノ球体サテライト(Au nanosphere satellites)を有する非対称コアサテライトSERSタグの合成について記載した。合成は、臭化セチルトリメチルアンモニウムで安定化されたAuナノ粒子コアを酸化インジウムスズでコーティングされたスライドガラス又はシリコンウェーハに吸着させ、続いて、官能化された固体支持体を水/アセトニトリル中の4-アミノチオフェノールの溶液に浸漬し、ラマン活性レポーター分子をAuナノ粒子の表面に吸着させ、その後、平均直径24nmのAuナノ粒子の懸濁液に1時間浸漬することを伴う。SERSタグの凝集状態は、Auナノ粒子サテライトの懸濁液中の官能化された固体支持体の浸漬時間を制御すること、及び/又は該懸濁液中のAuナノ粒子サテライトの濃度を減少させることによって制御することができる。Ruan等によって記載された方法は、Auコロイドを安定化させるために臭化セチルトリメチルアンモニウム界面活性剤を使用することに基づいており、この使用によって、Auナノ粒子コアでのラマン活性レポーター分子の吸着に利用可能な表面が大幅に減少し、それによって、SERSタグによってもたらされるSERSシグナルの強度が大幅に低下する。Auナノ粒子サテライトをAuナノ粒子コアに繋ぐために、凝集法では、Au表面に親和性のある2個の官能基を呈するラマン活性レポーター分子が用いられる。したがって、この方法は、Au表面に親和性のある2個の官能基を呈するラマン活性レポーター分子を有するSERSタグの生成にのみ適用可能であり、このことは、SERSタグ指紋として使用すべきラマン活性レポーター分子に関して高い制限を表す。さらに、該方法は、長い反応時間を伴い、大量のSERSタグの有利な製造には適していない。
【0006】
狭いサイズ分布のSERSタグのさらなる固体支持体補助集合法は、Yoon等(ACS Nano 2012、8、7199~7208)によって記載された。この方法は、アミノ官能化スライドガラスに吸着したAuナノ粒子のサイズ依存性脱着傾向と、Auナノ粒子サテライトをAuナノ粒子コアに繋ぐためのアルカンジチオールの使用とに基づく。平均直径51nmのAuナノ粒子コア1個あたり13±3個の平均直径13nmのAuナノ粒子サテライトを有するSERSタグが生成された。Yoon等によって開発された方法は、SERSタグにラマン活性レポーター分子を組み込むことができるようである。しかしながら、該方法は、使用可能なAuナノ粒子のサイズと、ラマン活性レポーター分子に到達可能なAuナノ粒子コアの表面とに関して制限を呈する。さらに、この方法は、長い反応時間を必要とし、大量のSERSタグの有利な製造には適していない。
【0007】
したがって、狭いサイズ分布及び高比率の少数凝集体を特徴とする大量のSERSタグの有利な製造を可能にする、再現性があり、費用効率が高く、且つ用途の広い、SERSタグの製造方法がなおも必要とされている。少数凝集体の数が多いSERSタグは、アンサンブルSERS応答を増加させるために非常に望ましい。
【0008】
[発明の概要]
したがって、本発明の目的は、狭いサイズ分布及び高比率の少数凝集体を特徴とする大量のSERSタグの有利な製造を可能にする、用途の広く、費用効率が高く、且つ再現性のある、SERSタグの製造方法を提供することである。これは、表面増強ラマン分光法(SERS)タグ、好ましくは、セキュリティ要素としての使用のためのSERSタグを製造する方法であって、
a) プラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒に分散された複数のナノ粒子と、該複数のナノ粒子の表面に吸着した安定剤とから本質的になり、且つ-25mV以下のζ電位値を有する、第1のコロイドを用意するステップと、
b) プラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒に分散された複数のナノ粒子と、該複数のナノ粒子の表面に吸着したラマン活性レポーター分子と、該複数のナノ粒子の表面に吸着した安定剤とから本質的になり、且つ-25mV以下のζ電位値を有する、第2のコロイドを用意するステップと、
c) 第1のコロイドのナノ粒子の数と第2のコロイドのナノ粒子の数との比が、約25:1~約1:1、好ましくは約5:1~約1:1、より好ましくは4:1~約3:1になるように、第1のコロイドを第2のコロイドと組み合わせ、第3のコロイドを用意するステップと、
d) ステップd1)~d3)のいずれか又はそれらの組み合わせ:
d1) ステップc)で得られた第3のコロイドを、約2.2と、ラマン活性レポーター分子が0~0.3の正味電荷を有する最低pH値との間に含まれるpHで混合するステップ、
d2) 塩溶液、好ましくは無機塩溶液を、ステップc)で得られた第3のコロイドに添加するステップ、
d3) 水混和性溶媒を、ステップc)で得られた第3のコロイドに添加するステップ
によってナノ粒子の凝集を誘発するステップと、
e) 凝集を停止するステップと
を含む、方法によって達成される。
【0009】
好ましくは、本明細書で特許請求及び記載されている方法におけるステップb)は、b1)からb3)の順序で実施される以下のステップ:
b1) プラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒に分散された複数のナノ粒子と、該複数のナノ粒子の表面に吸着した安定剤とから本質的になり、且つ-25mV以下のζ電位値を有する、コロイドを用意するステップ、
b2) コロイドのpHを、ナノ粒子の表面に吸着させるべきラマン活性レポーター分子が正味電荷を有しない最低pH値で調整し、同時に、-25mV以下、好ましくは-40mV未満のζ電位値を維持するステップ、並びに
b3) ラマン活性レポーター分子を溶媒に溶かした溶液をステップb2)で得られたコロイドに添加し、同時に、-25mV以下のζ電位値を維持するステップ
を含む。
【0010】
さらなる好ましい実施形態では、ステップc)及びd)は、連続フローシステムにおいて同時に実施される。さらなる好ましい実施形態では、第1のコロイドのナノ粒子サイズは、第2のコロイドのナノ粒子サイズとは異なる。
【0011】
実施例E1~E14に示されるように、本明細書で特許請求される方法は、様々なラマン活性レポーター分子をSERSタグに組み込むことを可能にし、特定のサイズのナノ粒子の組み合わせに限定されておらず、また、例えばE1~E8及びE12~E14に証明されているものと同じサイズを有するナノ粒子を含むSERSタグの合成も可能にする。さらに、本明細書で特許請求され、記載されている製造方法は、例えば、図3a及び図3bに示されるような狭いサイズ分布と、例えば図3a及び図3bに示されるような高比率の少数凝集体とを有するSERSタグを提供し、文献で公知の方法と比較して、反応時間が大幅に短くなっている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1a】本発明によるSERSタグの製造方法を概略的に示す。この製造方法は、プラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒(図示せず)に分散されたナノ粒子(121a)から本質的になる第2のコロイド(120a)であって、ナノ粒子が、それらの表面にラマン活性レポーター分子(122a)及び安定剤(図示せず)を吸着している、第2のコロイド(120a)を、プラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒(図示せず)に分散されたナノ粒子から本質的になる第1のコロイド(130a)であって、ナノ粒子が、それらの表面に安定剤(図示せず)を吸着している、第1のコロイド(130a)と組み合わせるステップと、ナノ粒子の凝集を誘導してSERSタグ(140a)を形成するステップとを含む。
図1b】本発明によるSERSタグの製造方法の一実施形態を概略的に示す。この特定の製造方法では、連続フロー反応器は、2個の加圧タンク(111b,112b)と、T管継手(113b)と、収集リザーバ(114b)とを備え、2個の加圧タンク(111b,112b)はそれぞれ、管を介してT管継手(113b)に接続されており、このT管継手(113b)自体は、管を介して収集リザーバ(114b)に接続されている。この製造方法は、同時に、約2.2と、ラマン活性レポーター分子が0~0.3の正味電荷を有する最低pH値との間に含まれるpHで、T管継手(113b)を連続フロー反応器の収集リザーバ(114b)に接続する管において、加圧タンク(112b)によって供給され、且つプラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒(図示せず)に分散されたナノ粒子から本質的になる第1のコロイド(130b)であって、該ナノ粒子が、それらの表面に安定剤(図示せず)を吸着している、第1のコロイド(130b)を、加圧タンク(111b)によって供給され、且つプラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒(図示せず)に分散されたナノ粒子(121b)から本質的になる第2のコロイド(120b)であって、該ナノ粒子が、それらの表面にラマン活性レポーター分子(122b)及び安定剤(図示せず)を吸着している、第2のコロイド(120b)と組み合わせて混合するステップを含む。約2.2と、ラマン活性レポーター分子が0~0.3の正味電荷を有する最低pH値との間に含まれるpHでの混合は、ナノ粒子の凝集を誘発する。凝集ステップは、収集リザーバ(114b)で停止され、それによって、標的SERSタグ(140b)がもたらされる。
図1c】本発明によるSERSタグの製造方法の一実施形態を概略的に示す。この特定の製造方法では、連続フロー反応器は、3個の加圧タンク(111c,112c,150c)と、T管継手(113c)と、収集リザーバ(114c)とを備える。2個の加圧タンク(111c,112c)はそれぞれ、管を介してT管継手(113c)に接続されており、このT管継手(113c)自体は、管を介して収集リザーバ(114c)に接続されている。この製造方法は、同時に、約2.2と、ラマン活性レポーター分子が0~0.3の正味電荷を有する最低pH値との間に含まれるpHで、T管継手(113c)を連続フロー反応器の収集リザーバ(114c)に接続する管において、加圧タンク(112c)によって供給され、且つプラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒(図示せず)に分散されたナノ粒子から本質的になる第1のコロイド(130c)であって、ナノ粒子が、それらの表面に安定剤(図示せず)を吸着している、第1のコロイド(130c)を、加圧タンク(111c)によって供給され、且つプラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒(図示せず)に分散されたナノ粒子(121c)から本質的になる第2のコロイド(120c)であって、該ナノ粒子が、それらの表面にラマン活性レポーター分子(122c)及び安定剤(図示せず)を吸着している、第2のコロイド(120c)と組み合わせて混合するステップを含む。約2.2と、ラマン活性レポーター分子が0~0.3の正味電荷を有する最低pH値との間に含まれるpHでの混合は、ナノ粒子の凝集を誘発する。凝集ステップは、加圧タンク(150c)に貯蔵されている水を収集リザーバ(114c)に繋がる管に導入してコロイドを希釈することで、加圧タンク(150c)に貯蔵されている塩基性溶液を収集リザーバ(114c)に繋がる管に導入することで、加圧タンク(150c)に貯蔵されているポリマーを収集リザーバ(114c)に繋がる管に導入することで、又は加圧タンク(150c)に貯蔵されている誘電体前駆体を収集リザーバ(114c)に繋がる管に導入することで停止され、それによって、標的SERSタグ(140c)がもたらされる。
図2a】凝集反応時間に伴うSERSシグナル強度の変化を示す。図2aは、実施例E1に記載されているように製造されたSERSタグの凝集反応時間に伴うSERS強度の変化を示す。
図2b】凝集反応時間に伴うSERSシグナル強度の変化を示す。図2bは、実施例E14に記載されているように製造されたSERSタグの凝集反応時間に伴うSERS強度の変化を示す。
図2c】凝集反応時間に伴うSERSシグナル強度の変化を示す。図2cは、実施例E13に記載されているように製造されたSERSタグの凝集反応時間に伴うSERS強度の変化を示す。横軸は、秒での凝集反応時間に対応し、縦軸は、785nmの励起でのSERS応答に対応する。報告されたSERS強度は、所定の金濃度で1秒ごとに100msの積分時間で測定され、このシグナル強度は、12.5μgAu/mLに希釈されて1秒の積分でスキャンされたサンプルと相関していた。
図3a】実施例E9(図3a)及び10(図3b)によって製造された異なるサイズのナノ粒子を含有するSERSタグから撮影されたSEM画像を示す。
図3b】実施例E9(図3a)及び10(図3b)によって製造された異なるサイズのナノ粒子を含有するSERSタグから撮影されたSEM画像を示す。SEM画像によって証明されているように、本発明によって製造されたSERSタグは、二量体、三量体、及び四量体などの少数凝集体が豊富であり、狭いサイズ分布を示す。
図4】該コロイドを1NのHCl水溶液又は1NのNaOH水溶液で滴定した場合の、第1のコロイドA2(黒丸でプロット)と第2のコロイドD2(黒三角でプロット)、D5(黒の菱形でプロット)とD6(黒四角でプロット)のζ電位値を示すプロットである。横軸は、pH値に対応し、縦軸は、ζ電位値(mV)に対応する。凝集が観察された(すなわち、コロイドが不安定である)条件は、丸で囲まれている。図4で証明されているように、-25mV未満のζ電位値を特徴とする様々なコロイドが安定している。そのようなコロイドは、本発明による製造方法において、それぞれ第1及び第2のコロイドとして使用することができる。
図5】フローシステムにおいて凝集するコロイドのSERSシグナル強度の進展を示す。各測定は、長さ7mの透明なFEPチューブに沿って1メートルのマーキングで行われた。実線で結ばれた菱形で表されるデータは、実施例E8に記載されているように生成されたSERSタグにおいて取得された。点線で結ばれた円で表されたデータは、実施例E11に記載されているように生成されたSERSタグにおいて取得された。
【0013】
[詳細な説明]
定義
以下の定義は、本明細書に論じられている、特許請求の範囲に記載された用語の意味を解釈するために使用すべきである。
【0014】
本明細書で使用される場合、冠詞「1つの(a/an)」は、1つ及び1つより多くを示し、必ずしもその指示対象名詞を単数に限定するものではない。
【0015】
本明細書で使用される場合、「少なくとも」という用語は、1つ又は1つより多く、例えば、1つ又は2つ又は3つを定義することを意味している。
【0016】
本明細書で使用される「含む」という用語は、非排他的且つ非限定的であることを意図している。したがって、例えば、化合物Aを含む溶液は、A以外の他の化合物を含み得る。しかしながら、「含む」という用語は、その特定の実施形態として、「から本質的になる」及び「からなる」というより限定的な意味も包含し、そのため、例えば、「A、B、及び任意選択でCを含む溶液」は、A及びBから(本質的に)なる場合もあれば、A、B、及びCから(本質的に)なる場合もある。
【0017】
本明細書が「好ましい」実施形態/特徴に言及する場合、これらの「好ましい」実施形態/特徴の組み合わせもまた、「好ましい」実施形態/特徴のこの組み合わせに技術的に意味がある限り、開示されていると考えられるべきである。
【0018】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、当該の量又は値が、指定された特定の値又はその近傍のある他の値であり得ることを意味する。一般に、特定の値を示す「約」という用語は、値の±5%以内の範囲を示すことを意図している。一例として、「約100」という語句は、100±5の範囲、すなわち、95~105の範囲を示す。好ましくは、「約」という用語で示される範囲は、値の±3%以内、より好ましくは±1%以内の範囲を示す。一般に、「約」という用語が使用される場合、本発明による同様の結果又は効果が、示された値の±5%の範囲内で得られ得ることが期待できる。
【0019】
驚くべきことに、表面増強ラマン分光法(SERS)タグ、好ましくは、セキュリティ要素としての使用のためのSERSタグを製造する方法であって、
a) プラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒に分散された複数のナノ粒子と、該複数のナノ粒子の表面に吸着した安定剤とから本質的になり、且つ-25mV以下のζ電位値を有する、第1のコロイドを用意するステップと、
b) プラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒に分散された複数のナノ粒子と、該複数のナノ粒子の表面に吸着したラマン活性レポーター分子と、該複数のナノ粒子の表面に吸着した安定剤とから本質的になり、且つ-25mV以下のζ電位値を有する、第2のコロイドを用意するステップと、
c) 第1のコロイドのナノ粒子の数と第2のコロイドのナノ粒子の数との比が、約25:1~約1:1、好ましくは約5:1~約1:1、より好ましくは約4:1~約3:1になるように、第1のコロイドを第2のコロイドと組み合わせ、第3のコロイドを用意するステップと、
d) ステップd1)~d3)のいずれか又はそれらの組み合わせ:
d1) ステップc)で得られた第3のコロイドを、約2.2と、ラマン活性レポーター分子が0~0.3の正味電荷を有する最低pH値との間に含まれるpHで混合するステップ、
d2) 塩溶液、好ましくは無機塩溶液を、ステップc)で得られた第3のコロイドに添加するステップ、
d3) 水混和性溶媒を、ステップc)で得られた第3のコロイドに添加するステップ
によってナノ粒子の凝集を誘発するステップと、
e) 凝集を停止するステップと
を含む方法によって、高い費用効率及び有利な手段で、狭いサイズ分布及び高比率の少数凝集体を有する大量のSERSタグが提供される。この方法は、SERSタグの指紋として使用すべきラマン活性レポーター分子に関して、又は第1及び第2のコロイドに含有されるプラズモン表面を有するナノ粒子のサイズに関して、制限がなく、それによって、様々なSERSタグの製造が可能になる。
【0020】
当業者に周知であり、本明細書で使用されているように、SERSタグは、プラズモン表面と、ナノ粒子の表面に吸着したラマン活性レポーター分子とを呈する複数のナノ粒子の1つの凝集体を含む。プラズモン表面を呈するナノ粒子は、ラマン増幅に必要な電場の生成に関与しており、ラマン活性レポーター分子は、SERSタグの独自の振動指紋をもたらす。SERSタグは、表面にラマン活性分子が吸着したナノ粒子凝集体を外部媒体から分離する外部コーティング層をさらに含み得る。したがって、外部コーティング層は、a)SERSタグを外部媒体から分離し、それによって、ラマン活性レポーター分子が、SERSタグから浸出することが防がれ、SERSタグが、偽ピークを生じさせ得る外部媒体の汚染から保護され、b)SERSタグのコロイド安定性を高め、且つc)さらなる化学的官能化のための好都合な表面を形成する。外部コーティング層は、シリカと、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、ポリ(スチレン-alt-マレイン酸)ナトリウム塩(PSMA)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)(PDADMAC)などのポリマーを含む。
【0021】
提示されているSERSシグナルによると、本明細書で特許請求及び記載されている製造方法によって得られたSERSタグは、文書及び物品を偽造及び違法な複製から保護するためのセキュリティ要素として特に有用である。本明細書で使用される場合、「セキュリティ要素」という用語は、セキュリティ文書又は物品の真正性を判定し、且つこれを偽造及び違法な複製から保護する目的で、セキュリティ文書又は物品に組み込まれ得る又は適用され得る要素を指す。セキュリティ要素は、本発明による製造方法によって得られたSERSタグを含有するインク、ワニス、又はコーティング組成物でセキュリティ要素又は物品に印刷、コーティング、又は噴霧された証印、画像、パターン、又はグラフィック要素であり得る。或いは、SERSタグは、セキュリティ文書の基材に統合される場合、セキュリティ要素として機能し得る。「セキュリティ文書」及び「セキュリティ物品」という用語は、偽造又は違法な複製の試みに対して潜在的に責任を負わせるような価値を有し、通常、少なくとも1つのセキュリティ特徴によって偽造又は詐欺から保護されている、文書又は物品を指す。本書で使用されている「セキュリティ物品」という用語は、それらの内容を保証するために、偽造及び/又は違法な複製から保護すべきすべての物品を包含する。セキュリティ文書の例としては、価値のある文書及び価値のある商品が挙げられるが、これらに限定されることはない。価値のある文書の典型的な例としては、銀行券、証書、チケット、小切手、バウチャー、証紙、タックスラベル(tax labels)、契約書など、身分証明書、例えば、パスポート、身分証明書、査証、銀行カード、クレジットカード、トランザクションカード、アクセス文書、入場券などが挙げられるが、これらに限定されることはない。価値のある商品は、特に、化粧品、栄養補助品、医薬品、アルコール、タバコ製品、飲料又は食品、電気/電子製品、布地又は宝石、すなわち、例えば真正な薬などの包装の内容物を保証するために偽造及び/若しくは違法な複製から保護すべき物品のための包装材料を包含する。包装材料の例としては、認証ブランドラベル、改ざん証拠ラベル及びシールなどのラベルが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0022】
本発明の意味において、「ナノ粒子」という用語は、20±5nm~160±5nm、好ましくは40±5nm~140±5nmの範囲の最大物理的寸法(例えば、長さ、直径など)に対応するサイズを有する単一の粒子として定義される。本発明で使用されるナノ粒子は、プラズモン表面を有し、すなわち、ナノ粒子は、ラマン活性分子のラマン散乱を増強することができる外側表面を有する。ナノ粒子の外側表面は、既知のSERS増強材料から作製されている。好ましくは、SERS増強材料は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、又はそれらの混合物若しくは合金から選択され、より好ましくは、金(Au)である。本発明で使用されるナノ粒子は、中実又は中空、好ましくは中実であり得る。中実ナノ粒子は、単一の材料、すなわち、ナノ粒子の外側表面のSERS増強材料から作製されていても、又はより多くの材料から作製されていても、すなわち、ナノ粒子のコアの材料(複数可)が、ナノ粒子の外側表面のSERS増強材料とは異なっていてもよい。中空ナノ粒子とは、コアが空所となっているナノ粒子である。ナノ粒子は、生成可能な任意の形状を有し得る。好ましくは、ナノ粒子は、中実Auナノ粒子である。好ましくは、ナノ粒子は、球体、回転楕円体、ロッド、ディスク、角柱、及び立方体からなる群から選択される形状を有し、より好ましくは、球体及び回転楕円体から選択され、さらにより好ましくは、ナノ粒子は、回転楕円体の形状を有する。
【0023】
本明細書で使用される場合、「実質的に同じサイズを有するナノ粒子」という表現は、該ナノ粒子が、透過型電子顕微鏡法(TEM)若しくは走査型電子顕微鏡法(SEM)などの電子顕微鏡法によって、又は該当する場合はHaiss及び共同研究者(Anal.Chem.2007、79、4215~4221)の方法によって該ナノ粒子について決定される平均サイズの±20nm以内、好ましくは±10nm以内の最大物理的寸法(例えば、長さ、直径など)に対応するサイズを有することを意味する。
【0024】
第1のコロイド、第2のコロイド、及びステップb1)で用意されるコロイドのナノ粒子は、水性溶媒に分散されている。本明細書で使用される場合、「水性溶媒」という用語は、水、及び水と1種以上の水混和性溶媒との混合物を指し、水混和性溶媒は、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、及びアセトニトリルを含む一覧から選択される。
【0025】
この製造方法のステップa)で用意される第1のコロイド、この製造方法のステップb)で用意される第2のコロイド、並びにこの製造方法のステップb1)で用意されるコロイドは、安定化の目的のポリマー又は界面活性剤を含有しない。ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)又は界面活性剤(例えば、臭化セチルトリメチルアンモニウム)によるコロイド安定化は、当技術分野で周知である。しかしながら、ラマン活性レポーター分子の添加前にポリマー及び界面活性剤がコロイドに添加されることから、ポリマー及び界面活性剤によって、ラマン活性レポーター分子の吸着のためのナノ粒子における利用可能な表面が大幅に減少し、凝集体内のコロイド粒子間の間隔が広がり、したがって、より低いSERSシグナル強度を呈するSERSタグが生じる。この欠点を回避するために、第1のコロイド、第2のコロイド、並びにステップb1)で用意されるコロイドは、界面活性剤及びポリマーを含まない。
【0026】
第1のコロイド、第2のコロイド、及びステップb1)で用意されるコロイドのナノ粒子の表面に吸着された安定剤は、好ましくは、カルボン酸、カルボン酸塩、リン酸、リン酸塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、及びそれらの混合物から選択される。ナノ粒子表面へのラマン活性レポーター分子の吸着中のラマン活性レポーター分子と安定剤との間の競合を回避するために、好ましくは、安定剤は、SERS増強材料に対して、特に金に対して親和性を示す基を含有しない。そのような基の例は、窒素含有基、硫黄含有基、エチニル基、シアノ基、及びイソシアニド基である。
【0027】
本明細書で使用される場合、「カルボン酸」という用語は、カルボキシル基(C(=O)OH)を含む有機化合物を指し、乳酸などのモノカルボン酸(すなわち、単一のカルボキシル基を含有する有機化合物)、及びクエン酸などのポリカルボン酸(すなわち、2個以上のカルボキシル基を含有する有機化合物)を包含する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「カルボン酸塩」という用語は、カルボン酸のナトリウム塩又はカリウム塩を指す。
【0029】
好ましくは、安定剤は、カルボン酸、カルボン酸塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、及びそれらの混合物から選択される。さらにより好ましくは、安定剤は、クエン酸、クエン酸塩、乳酸、乳酸塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、及びそれらの混合物から選択される。クエン酸塩としては、クエン酸二水素一ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸二水素一カリウム、クエン酸水素二カリウム、及びクエン酸三カリウムが挙げられる。乳酸塩としては、乳酸ナトリウム及び乳酸カリウムが挙げられる。アスコルビン酸塩としては、アスコルビン酸ナトリウム及びアスコルビン酸カリウムが挙げられる。最も好ましい実施形態では、安定剤は、クエン酸、クエン酸二水素一ナトリウム、クエン酸水素二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸二水素一カリウム、クエン酸水素二カリウム、及びクエン酸三カリウム、並びにそれらの混合物から選択される。
【0030】
有利には、本明細書で特許請求及び記載されている製造方法は、任意のラマン活性レポーター分子をSERSタグに組み込むことを可能にする。好ましいラマン活性レポーター分子としては、NR、-SH、-≡、-≡N及び-N=から、好ましくは、-NR及び-SHから、並びに/又はN含有ヘテロアリール基及び/若しくはS含有ヘテロアリール基から選択される1個以上の置換基で置換されたアリール基を含む完全共役分子が挙げられ、残基R及びRは、-H及びアルキルから、好ましくは-H及びC~Cアルキルから互いに独立的に選択される。
【0031】
有機化学の当業者に公知であるように、完全共役分子とは、分子全体に広がる共役電子系を有する分子である。共役電子系とは、非局在化電子を有する接続されたp軌道の系である。
【0032】
当業者に周知であるように、「アリール基」とは、環炭素原子から1個の水素原子を除去することによって単環式又は多環式芳香族炭化水素化合物から誘導された基である。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、及びピレニルが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0033】
S含有ヘテロ芳香族化合物とは、環状共役π系の一部として硫黄ヘテロ原子を含有する芳香族化合物である。環状共役π系の一部として、S含有ヘテロ芳香族化合物は、1個以上の窒素原子をさらに含有し得る。S含有ヘテロアリール基の例としては、チオフェニル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、イミダゾチアゾリル、及びイミダゾチアジアゾリルが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0034】
N含有ヘテロ芳香族化合物とは、環状共役π系の一部として少なくとも1個の窒素ヘテロ原子を含有する芳香族化合物である。環状共役π系の一部として、N含有ヘテロ芳香族化合物は、1個以上の酸素原子をさらに含有し得る。N含有ヘテロアリール基の例としては、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ベンゾイミダゾリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニル、キノリニル、イソキノリニル、ジアザナフチル、キナロジニル、シンノリニル、フタラジニル、キノキサリニル、プリニル、アザフェナントリル、ジアザフェナントリル、アザアントラセニル、ジアザアントラセニル、アザピレニル、ジアザピレニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、及びベンゾオキサジアゾリルが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0035】
好ましいラマン活性レポーター分子としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されることはない:
-NR、-SH、-≡、-≡N及び-N=から、好ましくは-NR及び-SHから選択される1個以上の置換基によって置換されたアリール基からなる完全共役化合物であって、アミノ基(-NH)、N-アルキルアミノ基、N,N-ジアルキルアミノ基、チオール基、エチニル基、シアノ基及びイソシアニド基、N含有ヘテロアリール基、又はS含有ヘテロアリール基を含む一覧から選択される1個以上の置換基によって置換されたアリール基に直接又はリンカー-L-を介して接続されており、
置換基R及びRが、本明細書で定義されている意味を有し、
リンカー-L-が、-CR=CR-、-N=N-、-≡-、-CR10=CR11-o-C-、-CR10=CR11-m-C-、-CR10=CR11-p-C-、-CR10=CR11-o-C-CR12=CR13-、-CR10=CR11-m-C-CR12=CR13-、-CR10=CR11-p-C-CR12=CR13-、-CR14=N-N=CR15-、
【化1】

から選択され、
置換基R~R15が、水素、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ホルミル、シアノ、ニトロ、ハロゲン化物、ヒドロキシカルボニル、及びアルコキシカルボニルから選択される、完全共役化合物、
N含有ヘテロアリール基からなる完全共役化合物であって、N含有ヘテロアリール基又はS含有ヘテロアリール基に直接又はリンカー-L-を介して接続されており、
リンカー-L-が、-CR=CR-、-N=N-、-≡-、-CR10=CR11-o-C-、-CR10=CR11-m-C-、-CR10=CR11-p-C-、-CR10=CR11-o-C-CR12=CR13-、-CR10=CR11-m-C-CR12=CR13-、-CR10=CR11-p-C-CR12=CR13-、-CR14=N-N=CR15-、
【化2】

から選択され、
置換基R~R15が、水素、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ホルミル、シアノ、ニトロ、ハロゲン化物、ヒドロキシカルボニル、及びアルコキシカルボニルから選択される、完全共役化合物、
S含有ヘテロアリール基からなる完全共役化合物であって、S含有ヘテロアリール基に直接又はリンカー-L-を介して接続されており、
リンカー-L-が、-CR=CR-、-N=N-、-≡-、-CR10=CR11-o-C-、-CR10=CR11-m-C-、-CR10=CR11-p-C-、-CR10=CR11-o-C-CR12=CR13-、-CR10=CR11-m-C-CR12=CR13-、-CR10=CR11-p-C-CR12=CR13-、-CR14=N-N=CR15-、
【化3】

から選択され、
置換基R~R15が、水素、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ホルミル、シアノ、ニトロ、ハロゲン化物、ヒドロキシカルボニル、及びアルコキシカルボニルから選択される、完全共役化合物、
並びに
-NR、-SH、-≡、-≡N及び-N=から、好ましくは、-NR及び-SH、-NR、-SH、-≡、-≡N及び-N=から選択される1個以上の置換基によって任意選択で置換されたN含有ヘテロアリール基、又は-NR、-SH、-≡、-≡N及び-N=から選択される1個以上の置換基によって任意選択で置換されたS含有ヘテロアリール基から選択される1個以上、好ましくは少なくとも2個の置換基によって置換されたアリール基からなる完全共役化合物であって、水素原子に直接接続されており、置換基R及びRが、本明細書で定義されている意味を有し、置換基R~Rが、-H及びアルキルから、好ましくは-H及びC~Cアルキルから互いに独立的に選択される、完全共役化合物。
【0036】
-NR、-SH、-≡、-≡N及び-N=から、好ましくは-NR及び-SHから選択される1個以上の置換基によって置換されたアリール基は、好ましくは、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ホルミル、ニトロ、ハロゲン化物、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、及びO含有ヘテロアリール基から選択される、より好ましくは、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ハロゲン化物、及びO含有ヘテロアリール基から選択される、1個以上のさらなる置換基を含有し得る。
【0037】
N含有ヘテロアリール基及びS含有ヘテロアリール基は、好ましくは、アミノ、N-アルキルアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、チオール、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ホルミル、シアノ、イソシアニド、エチニル、ニトロ、ハロゲン化物、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、及びO含有ヘテロアリール基から、好ましくは、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ハロゲン化物、及びO含有ヘテロアリール基から選択される1個以上のさらなる置換基を含有し得る。
【0038】
O含有ヘテロアリール基の例としては、フラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、及びオキサジアゾリルが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0039】
好ましいラマン活性レポーター化合物は、一般式(I):
【化4】

の化合物であり、
式中、
、B、及びCは、N、CR16、及びCR17から互いに独立的に選択されるが、但し、A、B、及びCのうちの1つのみがNであり、
、B、及びCは、N、CR18、及びCR19から互いに独立的に選択されるが、但し、A、B、及びCのうちの1つのみがNであり、
、D、E、D、R16、R17、R18、及びR19は、水素、アミノ、N-アルキルアミノ、N,N-ジアルキルアミノ、チオール、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ホルミル、シアノ、イソシアニド、アルキニル、ニトロ、ハロゲン化物、ヒドロキシカルボニル、アルコキシカルボニル、及びO含有ヘテロアリール基から、好ましくは、水素、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ハロゲン化物、及びO含有ヘテロアリール基から互いに独立的に選択され、
Xは、単結合であるか、又は-CR=CR-、-N=N-、-≡-、-CR10=CR11-o-C-、-CR10=CR11-m-C-、-CR10=CR11-p-C-、-CR10=CR11-o-C-CR12=CR13-、-CR10=CR11-m-C-CR12=CR13-、-CR10=CR11-p-C-CR12=CR13-、-CR14=N-N=CR15-、
【化5】

から選択されるリンカー-L-であり、
式中、R~R15は、水素、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ホルミル、シアノ、ニトロ、ハロゲン化物、ヒドロキシカルボニル、及びアルコキシカルボニルから選択される。
【0040】
好ましくは、残基A及びAは、一般式(I)においてNである。より好ましくは、一般式(I)において、残基A及びAはNであり、置換基E、D、E、D、R16、R17、R18、及びR19は水素である。
【0041】
ラマン活性レポーター分子としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されることはない:2-メルカプトピリジン;ベンゼンチオール;メルカプト安息香酸;4-ニトロベンゼンチオール;3,4-ジクロロベンゼンチオール;3-フルオロチオフェノール;4-フルオロチオフェノール;3-5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンチオール;4-メルカプトフェノール;ビフェニル-4-チオール、7-メルカプト-4-メチルクマリン、1-(4-ヒドロキシフェニル)-1H-テトラゾール-5-チオール、2-フルオロチオフェノール、2-ナフタレンチオール、4-(((3-メルカプト-5-(2-メトキシフェニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)イミノ)メチル)フェノール、(2-トリフルオロメチル)ベンゼンチオール、4-アミノチオフェノール、1-ナフタレンチオール、1,1’,4,1’’-テルフェニル-4-チオール、ビフェニル-4,4’-ジチオール、チオサリチル酸、4-(((3-メルカプト-5-(2-ピリジニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)イミノ)メチル)-1,2-ベンゼンジオール、4-(((3-メルカプト-5-(2-ピリジニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-4-イル)イミノ)メチル)安息香酸、2,3,4,6-テトラフルオロベンゼンチオール、(5-(4-メトキシフェニル)-1,3,4-オキシダゾール-2-チオール)、(E)-1,2-ジ(ピリジン-4-イル)エテン、5-(ピリジン-4-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-チオール、及び1,4-ビス((E)-2-(ピリジン-4-イル)ビニル)ベンゼン。
【0042】
ステップa)で用意される第1のコロイドは、-25mV以下のζ電位値を特徴とする。ステップb)で用意される第2のコロイドは、-25mV以下のζ電位値を特徴とする。
【0043】
本明細書で使用される場合、コロイドのζ電位値は、1mLの折り畳まれたキャピラリーセルを有するMalvern Zetasizer Nano-ZSを用いて0.05mgナノ粒子材料/mLの濃度の該コロイドについて測定したζ電位値を指す。必要に応じて、すなわち、0.05mgナノ粒子材料/mL超の濃度のコロイドの場合、ζ電位測定の前に、コロイドを脱イオン水で希釈して、0.05mgナノ粒子材料/mLの濃度を達成する。
【0044】
好ましくは、第1のコロイド及び第2のコロイドのナノ粒子材料の濃度(mg/mL)は、0.66mg/mL未満であり、より好ましくは、約0.05mg/mL~約0.30mg/mLに含まれ、例えば、0.05mg/mL、0.10mg/mL、0.15mg/mL、0.20mg/mL、0.25mg/mL、及び0.30mg/mLである。
【0045】
第1のコロイドと第2のコロイドとを組み合わせることに続いて、例えば、第1のコロイドのナノ粒子の数と第2のコロイドのナノ粒子の数との比が、約25:1~約1:1、好ましくは約5:1~約1:1、より好ましくは約4:1~約3:1になるように、第1のコロイドに第2のコロイドを単純に添加することによって、ナノ粒子の凝集を誘発する。本明細書に記載されている凝集は、第2のコロイドのナノ粒子と第1のコロイドのナノ粒子との選択的凝集からなり、すなわち、第1のコロイドのナノ粒子と第1のコロイドのナノ粒子との凝集はなく、第2のコロイドのナノ粒子と第2のコロイドのナノ粒子との凝集は、ないか、又は無視できる程度のものである。
【0046】
ナノ粒子の凝集は、ステップd1)~d3)のいずれか又はそれらの組み合わせ:
d1) ステップc)で得られた第3のコロイドを、約2.2と、ラマン活性レポーター分子が0~0.3の正味電荷を有する最低pH値との間に含まれるpHで混合するステップ、
d2) 塩溶液、好ましくは無機塩溶液を、ステップc)で得られた第3のコロイドに添加するステップ、
d3) 水混和性溶媒を、ステップc)で得られた第3のコロイドに添加するステップ
によって誘発される。
【0047】
好ましい実施形態では、ナノ粒子の凝集の誘発は、ステップd1)、すなわち、ステップc)で得られた第3のコロイドを、約2.2と、ラマン活性レポーター分子が0~0.3の正味電荷を有する最低pH値との間に含まれるpHで混合するステップを含む。ラマン活性レポーター分子の正味電荷及び該正味電荷に対応するpH値は、Chemicalize.com(Chemicalize.ChemAxon.http://chemicalize.com/#/calculation)などのオンラインツールを介して予測することができる。約2.2と、ラマン活性レポーター分子が0~0.3の正味電荷を有する最低pH値との間に含まれるpHで、第1のコロイドのナノ粒子と第2のコロイドのナノ粒子との選択的凝集が起こる。
【0048】
或いは、ナノ粒子の凝集の誘発は、ステップd2)、すなわち、塩溶液、好ましくは無機塩溶液を、ステップc)で得られた第3のコロイドに添加するステップを含む。塩で誘発されるナノ粒子の凝集は、コロイド化学の当業者にとって、ナノ粒子の凝集を誘発する周知の方法である(ChemPhysChem2018、19、24~28)。水溶液などの溶液として製造方法のステップd2)で使用すべき無機塩の例としては、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0049】
さらなる代替的な実施形態では、ナノ粒子の凝集の誘発は、ステップd3)、すなわち、水混和性溶媒を、ステップc)で得られた第3のコロイドに添加するステップを含む。水混和性溶媒は、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、及びアセトニトリルを含む一覧から選択される。
【0050】
本発明による好ましい製造方法は、
a) プラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒に分散された複数のナノ粒子と、該複数のナノ粒子の表面に吸着した安定剤とから本質的になり、且つ-25mV以下のζ電位値を有する、第1のコロイドを用意するステップと、
b) プラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒に分散された複数のナノ粒子と、該複数のナノ粒子の表面に吸着した一般式(I)のラマン活性レポーター分子と、該複数のナノ粒子の表面に吸着した安定剤とから本質的になり、且つ-25mV以下のζ電位値を有する、第2のコロイドを用意するステップと、
c) 第1のコロイドのナノ粒子の数と第2のコロイドのナノ粒子の数との比が、約25:1~約1:1、好ましくは約5:1~約1:1、より好ましくは約4:1~約3:1になるように、第1のコロイドを第2のコロイドと組み合わせ、第3のコロイドを用意するステップと、
d) ステップd1)~d3)のいずれか又はそれらの組み合わせ:
d1) ステップc)で得られた第3のコロイドを、約2.2~約6.1、好ましくは約2.6~約5.7に含まれるpHで混合するステップ、
d2) 塩溶液、好ましくは無機塩溶液を、ステップc)で得られた第3のコロイドに添加するステップ、
d3) 水混和性溶媒を、ステップc)で得られた第3のコロイドに添加するステップ
によってナノ粒子の凝集を誘発するステップと、
e) 凝集を停止するステップと
を含む。
【0051】
好ましくは、本明細書に記載されている製造方法では、ステップb)は、b1)からb3)の順序で実施される以下のステップ:
b1) プラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒に分散された複数のナノ粒子と、該複数のナノ粒子の表面に吸着した安定剤とを含み、且つ-25mV以下のζ電位値を有する、コロイドを用意するステップ、
b2) コロイドのpHを、ナノ粒子の表面に吸着させるべきラマン活性レポーター分子が正味電荷を有しない最低pH値より高い値で調整し、同時に、-25mV以下、好ましくは-40mV未満のζ電位値を維持するステップ、並びに
b3) ラマン活性分子を溶媒に溶かした溶液をステップb2)で得られたコロイドに添加し、同時に、-25mV以下のζ電位値を維持するステップ
を含む。
【0052】
本明細書で特許請求されている製造方法のステップb1)で用意されるコロイドは、プラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒に分散された複数のナノ粒子と、該複数のナノ粒子の表面に吸着した安定剤とから本質的になる。本明細書で特許請求されている製造方法のステップa)で用意される第1のコロイドは、プラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒に分散された複数のナノ粒子と、該複数のナノ粒子の表面に吸着した安定剤とから本質的になる。本明細書で特許請求されている製造方法のステップb)で用意される第2のコロイドは、プラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒に分散された複数のナノ粒子と、該複数のナノ粒子の表面に吸着したラマン活性レポーター分子と、該複数のナノ粒子の表面に吸着した安定剤とから本質的になる。したがって、第1のコロイドのナノ粒子及び第2のコロイドのナノ粒子は、それらの表面に、第1のコロイドのナノ粒子と第2のコロイドのナノ粒子との間のロックアンドキーメカニズムを介した特定の相互作用を可能にする分子又は有機体を示さない。そのような分子の例としては、抗体、タンパク質、抗原、相補的DNA鎖、及び相補的RNA鎖が挙げられる。そのような有機体の例としては、細菌、ウイルス、及び胞子が挙げられる。したがって、第1のコロイド、第2のコロイド、並びにステップb1)で用意されるコロイドは、界面活性剤及びポリマーを含まないことに加えて、抗体、タンパク質、抗原、相補的DNA鎖、及び相補的RNA鎖などの分子、並びに細菌、ウイルス、及び胞子などの有機体も含まない。
【0053】
本発明による製造方法のステップb2)では、コロイドのpHを、ナノ粒子の表面に吸着させるべきラマン活性レポーター分子が正味電荷を有しない最低pH値より高い値で調整し、同時に、-25mV以下、好ましくは-40mV未満のζ電位値を維持する。ラマン活性レポーター分子の正味電荷及び該正味電荷に対応するpH値は、Chemicalize.com(Chemicalize.ChemAxon.http://chemicalize.com/#/calculation)などのオンラインツールを介して予測することができる。
【0054】
好ましくは、ステップb2)で、コロイドのpHを、約8.2~約12.1で調整し、同時に、-25mV以下、好ましくは-40mV未満のζ電位値を維持する。より好ましい実施形態では、コロイドのpHを、ステップb2)で約11.0の値で調整する。
【0055】
本発明によるステップb3)では、溶媒のラマン活性レポーター分子の溶液を、ステップb2)で得られたコロイドに添加し、同時に、-25mV以下のζ電位値を維持する。ラマン活性レポーター分子の溶液を調製するために使用される溶媒は、ラマン活性レポーター分子を溶解するのに適した任意の水性溶媒及び任意の有機溶媒を包含する。有機溶媒の例としては、アルコール、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロパノール、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、並びにアセトニトリルから選択されるものが挙げられるが、これらに限定されることはない。水性溶媒としては、水、並びに水と、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、及びアセトニトリルなどの水混和性溶媒との混合物が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0056】
本発明による好ましい製造方法は、
a) プラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒に分散された複数のナノ粒子と、該複数のナノ粒子の表面に吸着した安定剤とから本質的になり、且つ-25mV以下のζ電位値を有する、第1のコロイドを用意するステップと、
b) プラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒に分散された複数のナノ粒子と、該複数のナノ粒子の表面に吸着した一般式(I)のラマン活性レポーター分子と、該複数のナノ粒子の表面に吸着した安定剤とから本質的になり、且つ-25mV以下のζ電位値を有する、第2のコロイドを用意するステップと、
c) 第1のコロイドのナノ粒子の数と第2のコロイドのナノ粒子の数との比が、約25:1~約1:1、好ましくは約5:1~約1:1、より好ましくは4:1~約3:1になるように、第1のコロイドを第2のコロイドと組み合わせ、第3のコロイドを用意するステップと、
d) ステップd1)~d3)のいずれか又はそれらの組み合わせ:
d1) ステップc)で得られた第3のコロイドを、約2.2~約6.1、好ましくは約2.6~約5.7に含まれるpHで混合するステップ、
d2) 塩溶液、好ましくは無機塩溶液を、ステップc)で得られた第3のコロイドに添加するステップ、
d3) 水混和性溶媒を、ステップc)で得られた第3のコロイドに添加するステップ
によってナノ粒子の凝集を誘発するステップと、
e) 凝集を停止するステップと
を含み、
ステップb)は、b1)からb3)の順序で実施される以下のステップ:
b1) プラズモン表面及び実質的に同じサイズを有し、水性溶媒に分散された複数のナノ粒子と、該複数のナノ粒子の表面に吸着した安定剤とから本質的になり、且つ-25mV以下のζ電位値を有する、コロイドを用意するステップ、
b2) コロイドのpHを、約8.0~約12.1、好ましくは約8.2~12.1に含まれる値で調整し、同時に、-25mV以下、好ましくは-40mV未満のζ電位値を維持するステップ、並びに
b3) 一般式(I)のラマン活性レポーター分子を溶媒に溶かした溶液をステップb2)で得られたコロイドに添加し、同時に、-25mV以下のζ電位値を維持するステップ
を含む。
【0057】
本発明者等は、ラマン活性レポーター分子のサブ単層又は単層が、第2のコロイドに含有されるナノ粒子の表面に吸着されることを確実にすることによって、本発明によって製造されたSERSタグのシグナルの強度をさらに増加させることができることを見出した。したがって、本発明によるさらなる好ましい実施形態は、本明細書で特許請求されているSERSタグの製造方法であって、第2のコロイドのナノ粒子が、それらの表面にラマン活性レポーター分子のサブ単層又は単層を吸収している、製造方法に関する。本明細書で使用される場合、第2のコロイドのナノ粒子の表面に吸着したラマン活性レポーター分子の単層とは、該ナノ粒子の表面に吸着した1つのラマン活性レポーター分子の厚さの層を指す。本明細書で使用される場合、ラマン活性レポーター分子のサブ単層とは、ラマン活性レポーター分子の不完全な単層を指す。ラマン活性レポーター分子のサブ単分子層又は単層が第2のコロイドのナノ粒子の表面に吸着されることを確実にするために、ステップb2)で得られたコロイドにステップb3)で添加されるラマン活性レポーター分子の量は、第2のコロイドのナノ粒子の形状及びサイズに応じて、当業者に周知の方法によって計算される必要がある。
【0058】
本明細書で特許請求されている製造方法はまた、異なるラマン活性レポーター分子の混合物、すなわち、2種以上の異なるラマン活性レポーター分子の混合物を含むSERSタグの調製も可能にする。これは、限られた数の異なるラマン活性レポーター分子を異なる比率で組み合わせることによって、該SERSタグがそれぞれ固有のSERSシグナルを特徴とする様々なSERSタグを利用可能にすることから、特に有利である。そのようなSERSタグを達成するために、ステップb)で用意される第2のコロイドのナノ粒子は、それらの表面に異なるラマン活性レポーター分子の混合物(すなわち、2種以上の異なるラマン活性レポーター分子の混合物)を吸収するように調製される。そのような第2のコロイドは、この製造方法のステップb3)で、2種以上の異なるラマン活性レポーター分子を含む、ラマン活性分子を溶媒に溶かした溶液を使用することによって、又はこの製造方法のステップb3)を連続的に実施し、異なるラマン活性レポーター分子を含有する異なる溶液を毎回使用することによって、調製され得る。したがって、本発明によるさらなる実施形態は、ステップb3)で、ラマン活性レポーター分子を溶媒に溶かした溶液が2種以上の異なるラマン活性レポーター分子の混合物を含む、製造方法に関する。本発明による他のさらなる実施形態は、ステップb3)が、残りのn-1回のステップで使用される残りのn-1個の溶液で使用されるラマン活性レポーター分子とは構造的に異なるラマン活性レポーター分子を含有する溶液を毎回使用して、n≧2でn回連続的に実施される、製造方法に関する。本明細書で使用される場合、異なるラマン活性レポーター分子とは、異なる化学構造を有し、且つ異なるSERSスペクトルをもたらす、ラマン活性レポーター分子を指す。
【0059】
少数凝集体の数をさらに増加させ、それによって、本明細書で特許請求されている製造方法によって製造されたSERSタグによってもたらされるSERSシグナルの強度をさらに増加させるために、ステップc)で、第1のコロイドのナノ粒子の数と第2のコロイドのナノ粒子の数との比が、約5:1~約1:1、好ましくは約4:1~約3:1の比になることが好ましい。例えば実施例10及び図3bによって証明されているように、第1のコロイドのナノ粒子の数と第2のコロイドのナノ粒子の数との比を約5:1~約1:1にすると、二量体、三量体、及び四量体などの少数凝集体の数が多いSERSタグが利用可能になる。
【0060】
ステップd1)に記載されている方法によって凝集を誘発するためには、ステップc)で得られた第3のコロイドを、約2.2と、ラマン活性レポーター分子が0~0.3の正味電荷を有する最低pH値との間に含まれるpHで混合する必要があり、このpHは、一般式(I)のラマン活性レポーター分子の場合、約2.2~約6.1、好ましくは約2.6~約5.7に含まれるpHである。これは、ステップc)で得られた第3のコロイドに酸性溶液を添加することによって、又はステップd1)で得られたコロイドが必要pH値を有するように第1のコロイドのpHを調整することによって達成することができる。
【0061】
したがって、本発明による実施形態は、ステップd1)が、ステップc)で得られた第3のコロイドに酸性溶液をさらに添加することを含み、同時に、得られるコロイドのpHが、約2.2と、ラマン活性レポーター分子が0~0.3の正味電荷を有する最低pH値との間に含まれるように混合し、このpHが、一般式(I)のラマン活性レポーター分子の場合、約2.2~約6.1、好ましくは約2.6~約5.7に含まれるpHである、製造方法を対象とする。適切な酸性溶液としては、酢酸、塩酸、及び硝酸が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0062】
追加の製造ステップを回避するためには、第1のコロイドのpH値を、ステップd1)で得られたコロイドが、約2.2と、ラマン活性レポーター分子が0~0.3の正味電荷を有する最低pH値との間に含まれるpHを有するように調整することが好都合であり、このpHは、一般式(I)のラマン活性レポーター分子の場合、約2.2~約6.1、好ましくは約2.6~約5.7に含まれるpHである。
【0063】
本明細書で特許請求されている製造方法はまた、ステップe)凝集停止を含む。好ましくは、ステップe)は、以下のステップe1)~e4):
e1) ステップd)で得られたコロイドのpHを、ナノ粒子の表面に吸着させるべきラマン活性レポーター分子が正味電荷を有しない最低pH値より高い値で調整するステップ、
e2) ステップd)で得られたコロイドを、好ましくは、コロイドのナノ粒子濃度が6×10個のナノ粒子/mL未満になるように、水で希釈するステップ、
e3) ポリマーを、ステップd)で得られたコロイドに添加するステップ、
e4) 誘電体前駆体を、ステップd)で得られたコロイドに添加するステップ
のいずれかを含む。
【0064】
本明細書で特許請求されている本発明の製造方法では、凝集は、方法e1)~e4)のいずれかによって停止することができる。
【0065】
ステップe1)に記載されているように、ステップd)で得られたコロイドのpHを、ナノ粒子の表面に吸着させるべきラマン活性レポーター分子が正味電荷を有しない最低pH値より高い値で調整すると、ナノ粒子凝集体間の静電反発力が増加し、凝集プロセスの停止がもたらされる。ラマン活性レポーター分子の正味電荷及び該正味電荷に対応するpH値は、Chemicalize.com(Chemicalize.ChemAxon.http://chemicalize.com/#/calculation)などのオンラインツールを介して予測することができる。
【0066】
ステップe3)に記載されているように、ステップd)で得られたコロイドにポリマーを添加すると、ナノ粒子凝集体間の立体反発が増加し、凝集プロセスの停止がもたらされる。有利には、ステップe3)で使用されるポリマーは、SERSタグによって呈されるSERSシグナルに影響しない。適切なポリマーとしては、ポリビニルピロリドン及びポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0067】
ステップe4)に記載されているように、ステップd)で得られたコロイドに誘電体前駆体を添加すると、ナノ粒子凝集体が少なくとも1層の誘電体でカプセル化され、それによって、SERSタグが安定し、暗黙的に凝集プロセスが停止する。好ましくは、誘電体前駆体は、シリカ前駆体である。シリカ前駆体としては、エタノール中のテトラエチルオルトシリケート及び3-アミノプロピルトリメトキシシランの溶液、エタノール中のテトラエチルオルトシリケート及び(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランの溶液、水中のケイ酸ナトリウムの溶液、及び水中の(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランの溶液が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0068】
或いは、ステップd)で得られたコロイドを水で希釈することによって、凝集プロセスを停止することができる。好ましくは、凝集は、ステップd)で得られたコロイドを12.5μg/mL以下のナノ粒子材料濃度[μg/mL]に達するように水で希釈することによって停止される(例えば、E1~E8、E11~E14を参照)。或いは、凝集は、ステップd)で得られたコロイドを6×10個のナノ粒子/mL未満のナノ粒子濃度に達するように水で希釈することによって停止される。
【0069】
本発明のさらに好ましい実施形態は、SERSタグの製造方法であって、ステップe)が、ステップe3)から本質的になり、製造方法が、ステップe3)で得られたコロイドを水で希釈すること、及び/又はSERSタグを誘電体でコーティングすることをさらに含む、製造方法を対象とする。
【0070】
さらなる好ましい実施形態では、本明細書で特許請求されている製造方法のステップc)及びd)は、連続フローシステムにおいて同時に実施される。この特定の製造方法では、連続フロー反応器が使用される。そのような連続フロー反応器は、図1b及び図1cに概略的に示されており、管を介してT管継手(113b,113c)に接続された2個の加圧タンク(111b,112b,111c,112c)と、収集リザーバ(114b,114c)とを備える。第2のコロイドが加圧タンク(111b,111c)に貯蔵されており、第1のコロイドが加圧タンク(112b,112c)に貯蔵されている。大気に開放されている容器(114b,114c)を使用して、SERSタグを収集し、任意選択で凝集を停止する(114c)。コロイド輸送には、加圧タンク(111b,112b,111c,112c)それぞれをT管継手(113b,113c)に接続する管が使用される。T管継手(113b,113c)を収集容器(114b,114c)に接続するさらなる管が、凝集を実施するために使用される。凝集によって得られたナノ粒子凝集体は、収集容器(114b)に収集され、そこで凝集が停止する。
【0071】
製造方法のステップc)及びd)が連続フローシステムにおいて同時に行われる場合、ステップe)も連続フローシステムにおいて実施されることがさらに好ましい。
【0072】
上述のように、SERSタグの製造方法で使用されるナノ粒子は、球体、回転楕円体、ロッド、ディスク、角柱、及び立方体などの製造可能な任意の形状を有し得る。好ましくは、本明細書で特許請求されている本発明の製造方法で使用されるプラズモン表面を有するナノ粒子の形状は、球体及び回転楕円体から選択される。さらにより好ましくは、該ナノ粒子は、回転楕円体の形状を有する。
【0073】
好ましい実施形態では、第1のコロイドのナノ粒子及び第2のコロイドのナノ粒子は、同じサイズを有する。好都合なことに、SERSタグのそのような製造方法では、第2のコロイド(すなわち、ステップb1)で供されるコロイド)の調製に使用されるコロイドは、第1のコロイドである。
【0074】
代替的な実施形態では、第1のコロイドのナノ粒子サイズは、第2のコロイドのナノ粒子サイズとは異なる。例えば、第1のコロイドのナノ粒子のサイズは、第2のコロイドのナノ粒子のサイズより小さい場合があり、それによって、図3aに示されるSERSタグと同様の構造を有するSERSタグが得られるか、又は第1のコロイドのナノ粒子のサイズは、第2のコロイドのナノ粒子のサイズより大きい場合があり、それによって、図3bに示されるSERSタグと同様の構造を有するSERSタグが得られる。
【0075】
本明細書で特許請求されている製造方法は、好ましくはコロイドを用いて行われ、第1のコロイドのナノ粒子のプラズモン表面及び/又は第2のコロイドのナノ粒子のプラズモン表面は、金から作製されており、より好ましくは中実金ナノ粒子を含むコロイドを用いて、さらにより好ましくはクエン酸塩で安定化された金コロイドを用いて作製されている。
【0076】
[実施例]
これより、本発明を以下の非限定的な実施例に関してより詳細に説明する。
【0077】
全般
以下の試薬を以下のサプライヤーから得た:
テトラクロロ金(III)酸三水和物(>99.9%;CAS番号:16961-25-4)、水素化ホウ素ナトリウム(99.99%;CAS番号:16940-66-2)、クエン酸ナトリウム三塩基二水和物(≧99.5%;CAS番号:6132-04-3)、(E)-1,2-ジ(ピリジン-4-イル)エテン(97%;CAS番号:13362-78-2)、5-(ピリジン-4-イル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-チオール(97%;CAS番号:15264-63-8)、水酸化ナトリウム(ACS試薬、≧97%;CAS番号:1310-73-2)、塩酸ヒドロキシルアミン(99.999%;CAS番号:5470-11-1)、テレフタルアルデヒド(ReagentPlus、99%、CAS番号:623-27-8)、4-メチルピリジン(99%;CAS番号:108-89-4)、無水酢酸(ReagentPlus、≧99%;CAS番号:108-24-7)、ジクロロメタン(無水、99.8%;CAS番号:75-09-2)、及びメタノール(HPLC、≧99.9%;CAS番号:67-56-1)を、Sigma Aldrichから購入した。塩酸(微量金属グレード、34~37%;CAS番号:7647-01-0)をFisher Scientificから購入した。
【0078】
ζ電位値は、1mLの折り畳まれたキャピラリーセル(DTS1060)を有するMalvern Zetasizer Nano-ZSを使用して測定した。光吸収スペクトルは、Agilent 8453分光光度計及びPerkin Elmer Lambda 650で記録した。
【0079】
走査型電子顕微鏡(SEM)画像は、Hitachi S-4500で撮影した。
【0080】
Ocean Optics QE6500で785nmのラマンスペクトルを得た。
【0081】
公称140nmの金コロイド粒子は、透過型電子顕微鏡(TEM)イメージングのために、サンプルをEAG Laboratoriesに送ることによってサイズ分類した。画像は、ImageJソフトウェア(https://imagej.nih.gov/ij/)で分析した。数平均粒子サイズが公称直径の±9nm以内である場合、バッチは公称140nmであると考えられ、その際、数平均粒子サイズは、TEM顕微鏡写真で230個の個々の粒子を測定することによって決定した。個々の粒子を記述するために選択されるサイズ関連の特性は、「円等価」(CE)直径であり、これは、粒子の正投影と同じ面積を有する円の直径に対応する。
【0082】
40、60、90nmのナノ粒子バッチの金ナノ粒子の直径d(nm)は、方程式:
【数1】

[式中、λsprは、Perkin Elmer Lambda 650 UV Visでコロイドサンプルから得られた吸光度プロットの表面プラズモン共鳴ピーク位置である]
を使用して、Haiss及び共同研究者の方法(Anal.Chem.2007、79、4215~4221)によって計算した。表面プラズモン共鳴ピーク位置が公称直径の±9nm以内の直径と相関している場合、バッチは、公称40nm、60nm、又は90nmであると考えられた。
【0083】
I. Auコロイド原液(S1~S4)の調製
表1に示されるAuナノ粒子サイズ(nm)、Au濃度(mg/mL)、及びpH値を特徴とする金コロイド原液(S1~S4)を以下のように製造した:
I.1 40nmの金コロイド原液(S1)の調製
ジャケット付きの完全に洗浄された100Lガラス反応器(ChemGlass)で、79.5Lの17MΩの水を3.5±0.5℃に冷却した。20重量%の水溶液としてのテトラクロロ金(III)酸三水和物(100g)を、400rpmでインペラによって撹拌しながら添加した。30重量%の水溶液としてのクエン酸ナトリウム三塩基二水和物(174.3g)及び23.5重量%の水溶液としての塩酸ヒドロキシルアミン(155.6g)を組み合わせて、反応器に添加した。10秒後に、0.01N水酸化ナトリウム中の0.063重量%の溶液としての800μLの水素化ホウ素ナトリウムを反応器に注入した。これらの試薬を2分間反応させ、次いで、きれいなドラムに排出し、0.25mgAu/mLの金濃度及び約2.4のpH値を有する40nmのAuコロイド原液(S1)を用意した。
【0084】
I.2 60nmの金コロイド原液(S2)の調製
ジャケット付きの完全に洗浄された100Lガラス反応器(ChemGlass)で、79.5Lの17MΩの水を3.5±0.5℃に冷却した。20重量%の水溶液としてのテトラクロロ金(III)酸三水和物(200g)を、400rpmでインペラによって撹拌しながら添加した。30重量%の水溶液としてのクエン酸ナトリウム三塩基二水和物(173.3g)及び17.5重量%の水溶液としての塩酸ヒドロキシルアミン(217.1g)を組み合わせて、反応器に添加した。10秒後に、0.01N水酸化ナトリウム中の0.052重量%の溶液としての800μLの水素化ホウ素ナトリウムを反応器に注入した。これらの試薬を2分間反応させ、次いで、きれいなドラムに排出した。バッチを17MΩの水で160Lに希釈し、0.25mgAu/mLの金濃度及び約2.4のpHを有する60nmのAuコロイド原液(S2)を得た。
【0085】
I.3 90nmの金コロイド原液(S3)の調製
ジャケット付きの完全に洗浄された100Lガラス反応器(ChemGlass)で、79.5Lの17MΩの水を3.5±0.5℃に冷却した。20重量%の水溶液としてのテトラクロロ金(III)酸三水和物(200g)を、400rpmでインペラによって撹拌しながら添加した。30重量%の水溶液としてのクエン酸ナトリウム三塩基二水和物(173.3g)及び17.5重量%の水溶液としての塩酸ヒドロキシルアミン(217.1g)を組み合わせて、反応器に添加した。10秒後に、0.01N水酸化ナトリウム中の0.01重量%の溶液としての900μLの水素化ホウ素ナトリウムを反応器に注入した。これらの試薬を2分間反応させ、次いで、きれいなドラムに排出した。バッチを17MΩの水で160Lに希釈し、0.25mgAu/mLの金濃度及び約2.4のpHを有する90nmのAuコロイド原液(S3)を得た。
【0086】
I.4 140nmの金コロイド原液(S4)の調製
2Lのガラス製水差し内で、1.5Lの17MΩの水を室温で撹拌した。20重量%の水溶液としてのテトラクロロ金(III)酸三水和物(2.5g)を、撹拌しながら添加した。30.7重量%の水溶液としてのクエン酸ナトリウム三塩基二水和物(15.37g)及び16.7重量%の水溶液としての塩酸ヒドロキシルアミン(8.37g)を組み合わせて、反応器に添加した。5秒後に、0.01N水酸化ナトリウム中の0.01重量%の溶液としての25μLの水素化ホウ素ナトリウムを反応器に注入した。さらに15分間撹拌して、0.25mgAu/mLの金濃度及び約2.4のpHを有する140nmのAuコロイド原液(S4)を用意した。
【0087】
【表1】
【0088】
II. 第1のコロイドの調製(A1~A9)(製造方法のステップa))
第1のコロイド(A1~A9)を、Auコロイド溶液S1、S2、及びS4から出発して得た。必要に応じて、(例えば、AuコロイドA1及びA7)Auコロイド原液を脱イオン水で希釈して、それによって、表2に示されるAu濃度(mg/mL)を得た。さらに、必要に応じて、(例えば、AuコロイドA3、A4、A5、A6、A8、A9)そのまま又は希釈後のAuコロイド原液を、第1のコロイドのpH値を表2に示されるpH値に調整するように、0.1mMのNaOH水溶液又は0.1mMのHCl水溶液で処理する。
【0089】
【表2】
【0090】
安定した第1のコロイド、すなわち、凝集が起こらないコロイドのみが、本発明による製造方法で使用するのに適している。第1のコロイドA1~A9は、安定しており、すなわち、ピンクから紫への色の変化の視覚的検出によっては、Auナノ粒子の凝集は識別できなかった。さらに、図4で証明されているように、ゼータ電位値が以下の項目IVに記載されているように測定して-25mV以下であることを特徴とする様々なAuコロイドが安定している。したがって、そのようなAuコロイドは、本発明による製造方法における第1のコロイドとしても有用である。
【0091】
III. Auナノ粒子とAuナノ粒子の表面に吸着したラマン活性レポーター分子とを含有する第2のコロイドの調製(D1~D11)(製造方法のステップb))
表3に示されるAu濃度(mg/mL)及びpH値を特徴とするAuコロイド(B1~B8)をAuコロイド原液S1~S3から調製した。調製には、必要に応じて、(例えば、AuコロイドB1及びB5)Auコロイド原液を、示されたAu濃度(mg/mL)を得るように脱イオン水で希釈することと、そのまま又は希釈後のAuコロイド原液に1MのNaOH水溶液を添加することによってpH値を調整することとが伴う。
【0092】
【表3】
【0093】
ラマン活性レポーター分子である1,4-ビス((E)-2-(ピリジン-4-イル)ビニル)ベンゼンを以下のように合成した:
撹拌棒を有する50mLの丸底フラスコに、テレフタルアルデヒド(3.44g、25.7mmol)、4-メチルピリジン(9.57g、103mmol)、及び無水酢酸(25mL)を充填した。アルデヒドが存在しなくなるまで混合物を還流した(4時間、TLCで確認)。反応物を室温に冷却し、反応物を100mLの氷水に注ぐことによってクエンチした。低温混合物を、6NのNaOH水溶液を使用してpH7に中和し、得られた褐色の沈殿物を濾過し、水で洗浄し、風乾した。ジクロロメタンで抽出し、続いて、溶媒を濃縮乾固すると、粗生成物が得られ、この粗生成物を、シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(メタノール/ジクロロメタン:5/95)で精製すると、標的ラマン活性レポーター分子0.875gが黄色の固体として得られた(12%)。
【0094】
表面にラマン活性レポーター分子が吸着したAuナノ粒子を含有する第2のコロイド(D1~D11)を、エタノール中の0.1mMのラマン活性レポーター分子溶液のある容量を20mLのAuコロイド(B1~B5、B9)又は3LのAuコロイド(B8)に添加し、続いて、得られた混合物を室温で30分間(第2のコロイドD1~D7、D9~D11)/1時間(第2のコロイドD8)撹拌することによって調製した。表4に、第2のコロイドD1~D11の調製に使用したラマン活性レポーター分子とエタノール中のラマン活性レポーター分子溶液の容量との概要を示す。
【0095】
【表4】
【0096】
(E)-1,2-ジ(ピリジン-4-イル)エテンがChemicalize.comによって予測されるような正味電荷を有しない最低pH値未満のpH値を有する20mLのAuコロイドB6及びB7を、エタノール中の0.1mMの(E)-1,2-ジ(ピリジン-4-イル)エテン溶液750μLで処理し、続いて、得られた混合物を室温で30分間撹拌すると、撹拌中のピンクから紫への混合物の色の変化の視覚的検出によって示されるように、不安定なコロイドが得られた。不安定なコロイドは、本発明による製造方法では使用することができない。第2のコロイドの安定性を確実にするためには、すなわち、該コロイドに含有されるAuナノ粒子の凝集を回避するためには、該コロイドの調製及び貯蔵中に、ζ電位値が-25mV以下であり、pH値が、Auナノ粒子に吸着させるべきラマン活性レポーター分子が例えばChemicalize.comで予測され得る正味電荷を有しない最低pH値より高いことが重要である。この意味合いで、第2のコロイドの調製に使用されるAuコロイド(B1~B5、B8、B9)のpH値は、ラマン活性レポーター分子での処理前に、Auコロイド(B1~B5、B8、B9)に含有されるAuナノ粒子に吸着させるべきラマン活性レポーター分子が例えばChemicalize.comで予測され得る正味電荷を有しない最低pH値より高い値に調整される。
【0097】
IV. 第1及び第2のコロイドの安定性。小さなサイズの凝集体の集団が大きいSERSタグを提供する本発明による製造方法での使用に適するためには、第1及び第2のコロイドは安定でなければならず、すなわち、該コロイドの調製及び貯蔵中に、ナノ粒子のナノ粒子凝集は回避される必要がある。これは、該コロイドのζ電位値を-25mV以下の値で維持することによって確実にすることができる。図4及び表5に示されるように、本発明によるSERSタグの製造方法では、様々なAuコロイドを第1及び第2のコロイドとして使用することができる。
【0098】
第1のコロイドA2、並びに第2のコロイドD2、D5及びD6のζ電位を、室温で0.05mgAu/mLの濃度でpHの関数として測定した。これらの結果を表5に報告し、図4にプロットする。
【0099】
ζ電位の測定は、1mLの折り畳まれたキャピラリーセルを有するMalvern Zetasizer Nano-ZSで行った。25℃の水の物理的特性及び金は、機器に事前にロードされている。第1のコロイドA2、並びに第2のコロイドD2、D5及びD6は、それぞれ脱イオン水で0.05mgAu/mLの濃度に希釈した。
【0100】
本発明によるSERSタグ合成に使用されるpH付近での第1のコロイドA2、並びに第2のコロイドD2、D5及びD6のζ電位値は、表5の2列目に報告されている。コロイドが不安定になるpHでの第1のコロイドA2、並びに第2のコロイドD2、D5及びD6のζ電位値は、表5の3列目に報告されている。コロイドの不安定性は、ピンクから紫へのコロイドの色の変化の視覚的検出によって決定した。
【0101】
【表5】
【0102】
V. 第1のコロイドと第2のコロイドとの組み合わせ、凝集の誘発、及び凝集の停止(製造方法のステップc)、d)、及びe))
V.1 同じサイズを有するAuナノ粒子を含有するSERSタグ(実施例E1~E8、E12~E14)
V.1.a バッチ凝集(実施例E1~E7、E12~E14)
第2のコロイド(D1~D6、D9~D11、20mL)を80mLの第1のコロイド(A1~A5、A9)に素早く注ぎ、マグネチックスターラーバーを有する混合リザーバ内で混合物を撹拌した。コロイドを組み合わせてから30秒後に、125μLの一定分量をサンプリングし、水で1mLに希釈し、それによって、凝集を停止した。この希釈(約5.7210個のAuナノ粒子/mLに対応する12.5μgAu/mL)で凝集が終わり、785nmのレーザー励起と、1秒の積分時間に設定されたOcean Optics Inc.から購入したQE65000分光計とを使用して、SERSシグナルを測定した。上記のように製造されたSERSタグで実施されたSERSシグナル測定の結果を表6に示す。
【0103】
本明細書で特許請求されている本発明の方法による実施例E1~E7、及びE12~E14、並びに比較例C1~C3によって証明されるように、第1のコロイドの粒子及び第2のコロイドの粒子の選択的凝集は、1.8などの低いpH値や、Chemicalize.comで予測されるようにラマン活性レポーター分子が0~0.3の正味電荷を有する最低pH値より高いpH値では起こらない。
【0104】
【表6】
【0105】
V.1.b 連続フローシステム凝集(実施例E8)
本発明による製造方法で使用される連続フロー反応器の概略図を図1bに示す。加圧タンク(111b)は第2のコロイドを保持しており、第2の加圧タンク(112b)は第1のコロイドを保持している。大気に開放されている容器(114b)は、SERSタグを収集するために使用され、凝集反応を停止するための濃縮ポリマー溶液を含んでいる。公称内径8mmのコールパルマー(Cole Parmer)(登録商標)サイエンティフィックエキスパート(Scientific Experts)管からの透明なフッ素化エチレンプロピレン(FEP)がコロイド輸送に使用される。30cmのFEP管を使用して、加圧タンク(111b)をT接合部(113b)に接続した。30cmのFEP管を使用して、加圧タンク(112b)をT接合部(113b)に接続した。7mのFEP管を使用して、T接合部(113b)を収集容器(114b)に接続した。T接合部(113b)と収集容器(114b)との間の管のこの部分は、凝集が起こる部分である。
【0106】
上記のコロイドA8(12L)及びD8(3L)を、それぞれタンク112b及び111bに配置した。第2のコロイド(D8)を含むタンク(111b)を、コロイド流量が0.66L/分になるように加圧した。第1のコロイド(A8)を含むタンク(112b)を、コロイド流量が2.65L/分になるように加圧した。T接合部で組み合わさった後に、第1のコロイドA8のナノ粒子の数と第2のコロイドD8のナノ粒子の数との比が約4:1であることを特徴とする組み合わされたコロイドは、約4.8のpH値と、1.1m/sの直線速度をもたらす3.31L/分の凝集管の流量とを有する。SERS測定は、励起785nmでOcean Optics QE65000分光計に光ファイバーケーブルで接続されたプローブを用いて、凝集管長さを下に1mのマーキングで、透明なFEP管を介して行った。管の端部のマーキングにおける測定値が、管の開口部でサンプリングされて水で1mLに希釈(12.5μgAu/mL)された50μLの一定分量から得られた値と等しくなるように、すなわち、凝集が水での希釈によって停止されて、785nmのレーザー励起と1秒の積分時間に設定されたOcean Optics QE65000分光計とを使用して測定されるサンプルと等しくなるように、積分時間を短縮した。SERS測定の結果は、実線で結ばれた菱形として図5にプロットされている。チューブの端部で採取されて12.5μgAu/mLで測定されたサンプルからのSERSシグナル強度は、11044カウント毎秒[±500]であった。
【0107】
V.2 第1のコロイド及び第2のコロイドは、異なるサイズのAuナノ粒子を含有する(実施例E9~E11)
V.2.a バッチ凝集(実施例E9及びE10)
実施例E9
第2のコロイド(D7、30mL)を第1のコロイド(A1、55mL)に素早く注ぎ、マグネチックスターラーバーを有する混合リザーバ内で混合物を撹拌した。第1のコロイドのナノ粒子の数と第2のコロイドのナノ粒子の数との比は、約6.3:1である。約2.9のpHで30秒間混合した後に、ポリマー溶液を添加することによって凝集を停止し、得られた凝集体を米国特許第8497131号に記載されている方法に従ってさらにシリカコーティングして、標的SERSタグを用意した。SERSタグの約2μLの一定分量をシリカウェーハ片に滴下し、乾燥させた。サンプルをHitachi S-4500電界放出SEMで画像化し、図3aに示した。785nmのレーザー励起と、1秒の積分時間に設定されたOcean Optics Inc.から購入したQE65000分光計とを使用して、SERSシグナルを測定した。12.5μgAu/mLで測定されたSERSシグナル強度は、18377カウント毎秒[±500]であった。
【0108】
実施例E10
第2のコロイド(D7、20mL)を第1のコロイド(A7、200mL)に素早く注ぎ、マグネチックスターラーバーを有する混合リザーバ内で混合物を撹拌した。第1のコロイドのナノ粒子の数と第2のコロイドのナノ粒子の数との比は、約2.65:1である。
【0109】
約2.9のpHで30秒間混合した後に、ポリマー溶液を添加することによって凝集を停止し、得られた凝集体を米国特許第8497131号に記載されている方法に従ってシリカコーティングして、標的SERSタグを用意した。SERSタグの約2μLの一定分量をシリカウェーハ片に滴下し、乾燥させた。サンプルをHitachi S-4500電界放出SEMで画像化し、図3bに示す。
【0110】
V.2.b フローシステム凝集(実施例E11)
本発明による製造方法で使用される連続フロー反応器の概略図を図1bに示す。加圧タンク(111b)は第2のコロイドを保持しており、第2の加圧タンク(112b)は第1のコロイドを保持している。大気に開放されている容器(収集リザーバ、114b)を使用して、SERSタグを収集し、凝集を停止する。公称内径8mmのコールパルマー(登録商標)サイエンティフィックエキスパート管からのフッ素化エチレンプロピレン(FEP)がコロイド輸送に使用される。30cmの透明なFEP管を使用して、加圧タンク(111b)をT接合部(113b)に接続した。30cmのFEP管を使用して、加圧タンク(112b)をT接合部(113b)に接続した。7mのFEP管を使用して、T接合部(113b)を収集容器(114b)に接続した。T接合部(113b)と収集容器(114b)との間の管のこの部分は、凝集が起こった部分である。
【0111】
上記のコロイドA6(12L)及びD8(3L)を、それぞれタンク112b及び111bに配置する。第2のコロイド(D8)を含むタンク(111b)を、コロイド流量が0.66L/分になるように加圧した。第1のコロイド(A6)を含むタンク(112b)を、活性コロイド流量が2.65L/分になるように加圧した。T接合部で組み合わさった後に、第1のコロイドA6のナノ粒子の数と第2のコロイドD8のナノ粒子の数との比が約1.2:1であることを特徴とする組み合わされたコロイドは、約4.8のpHと、1.1m/sの直線速度をもたらす3.31L/分の凝集管の流量とを有する。SERS測定は、励起785nmでOcean Optics QE65000分光計に光ファイバーケーブルで接続されたプローブを用いて、凝集管長さを下に1mのマーキングで、透明なFEP管を介して行った。管の端部のマーキングにおける測定値が、管の開口部でサンプリングされて、水で1mLに希釈(12.5μgAu/mL)(ステップe2)されて、785nmのレーザー励起と1秒の積分時間に設定されたOcean Optics QE65000分光計とを使用して測定された50μLの一定分量から得られた値と等しくなるように、積分時間を短縮した。これらの測定結果は、点線で結ばれた円として図5にプロットされている。チューブの端部で採取されて12.5μgAu/mLで測定されたサンプルからのSERSシグナル強度は、28303カウント毎秒[±500]であった。
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4
図5