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特許7499839運動案内装置および該運動案内装置において使用される潤滑経路部品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】運動案内装置および該運動案内装置において使用される潤滑経路部品
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/06 20060101AFI20240607BHJP
   F16N 5/00 20060101ALI20240607BHJP
   F16N 9/04 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
F16C29/06
F16N5/00
F16N9/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022502491
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 CN2020089004
(87)【国際公開番号】W WO2021008199
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】201910638932.1
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114498
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100222243
【弁理士】
【氏名又は名称】庄野 友彬
(72)【発明者】
【氏名】ユィ シン ジャア
(72)【発明者】
【氏名】リウ ユエ
(72)【発明者】
【氏名】会田 智幸
【審査官】鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-229752(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0173195(US,A1)
【文献】特開2012-229814(JP,A)
【文献】国際公開第2007/074754(WO,A1)
【文献】中国実用新案第2603792(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/00
-31/06
F16N 5/00
F16N 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って左右両側面に転動体転走溝が形成された軌道台と、複数の転動体を介して前記軌道台に相対移動可能に組付けられる移動体を備え、
前記移動体は、前記転動体転走溝に対向して前記転動体が転動するための負荷転走路を形成する負荷転動体転走溝及び前記負荷転走路と平行に形成され前記転動体が転動するための無負荷通路が設けられた移動体本体と、前記移動体本体の前後の両端面に固定される蓋体と、前記移動体本体と前記蓋体との間に設けられる循環部品とを備え、
前記負荷転走路と前記無負荷通路とを接続して前記転動体が転動方向を変更するための方向転換路が設けられ、前記蓋体には前記方向転換路の外周側方向転換部が設けられ、前記循環部品には前記方向転換路の内周側方向転換部が設けられ、
前記循環部品は前記軌道台の左右両側に位置する前記内周側方向転換部を連結する連結部を有し、前記蓋体は前記連結部を収容する嵌合凹部を有するとともに、前記嵌合凹部には第一潤滑溝が形成され、
潤滑剤としてグリースを使用する時に、前記第一潤滑溝及び前記循環部品により構成されたグリース潤滑経路を利用して潤滑剤を供給する運動案内装置であって、
前記第一潤滑溝の断面積より小さい第二潤滑溝が形成された潤滑経路部品を更に設け、前記潤滑経路部品は、前記第一潤滑溝に嵌合される嵌合部と、前記循環部品に挿入される挿入部と、を備え、
潤滑剤としてオイルを使用する時に、前記挿入部を前記循環部品に挿入し、前記嵌合部を前記第一潤滑溝に嵌めることによって、前記第一潤滑溝及び前記第二潤滑溝により構成されたオイル潤滑経路を利用して潤滑剤を供給することを特徴とする運動案内装置。
【請求項2】
前記循環部品には前記第一潤滑溝又は前記第二潤滑溝と連結する第三潤滑溝が形成され、前記挿入部は前記循環部品に挿入される時に、前記第三潤滑溝に挿入されることを特徴とする請求項1記載の運動案内装置。
【請求項3】
前記長手方向に沿った前記挿入部の厚さが、前記長手方向に沿った前記嵌合部の厚さより小さく形成されることを特徴とする請求項1記載の運動案内装置。
【請求項4】
前記第一潤滑溝の前記外周側方向転換部と連結する端部がテーパ形状に形成され、前記嵌合部の前記挿入部と連結する端部は前記テーパ形状に対応するテーパ形状に形成されることを特徴とする請求項3記載の運動案内装置。
【請求項5】
前記潤滑経路部品には前記蓋体と位置決めする為の位置決め突起が形成され、前記蓋体には前記位置決め突起を嵌め込むための位置決め孔が形成されることを特徴とする請求項4記載の運動案内装置。
【請求項6】
前記位置決め孔の中心と前記蓋体に設けられる潤滑剤供給孔の中心とが一致することを特徴とする請求項5記載の運動案内装置。
【請求項7】
前記位置決め突起には前記第二潤滑溝の一部が形成されることを特徴とする請求項5又は6記載の運動案内装置。
【請求項8】
前記第二潤滑溝の両側には前記オイルを漏出防止するためのリブが形成されることを特徴とする請求項1記載の運動案内装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の運動案内装置における前記潤滑経路部品であることを特徴とする潤滑経路部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は運動案内装置及び当該運動案内装置において使用される潤滑経路部品に関し、詳細には、オイル供給構造が設けられた潤滑経路部品を備えた運動案内装置および該潤滑経路部品に関する。
【背景技術】
【0002】
運動案内装置の一種としてのリニアガイドは、軌道台としての軌道レールと、軌道レールに沿って移動可能に組み付けられる移動体としての移動ブロックと、を備える。軌道レールと移動ブロックとの間には、転がり運動可能に多数の転動体としてのボールが介在される。多数のボールはサーキット状のボール循環路を循環する。該ボール循環路は、軌道レールに設けられたボール転走溝と、移動ブロックに設けられ且つ該軌道レールに設けられたボール転走溝に対向する負荷ボール転走溝とからなる負荷転走路と、移動ブロックに設けられ且つ該負荷転走路と平行な無負荷通路と、移動ブロックに設けられ且つ負荷転走路と無負荷通路とを接続するU字状の方向転換路と、から構成される。
【0003】
上記のリニアガイドにおいては、方向転換路に潤滑剤を供給する潤滑剤供給構造を設ける必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、リニアガイドに用いられ、方向転換路に潤滑剤を供給する潤滑剤供給構造が開示されている。具体的には、該特許文献1においては、移動ブロックの一部としての蓋体であるエンドプレートに嵌め込み凹部を形成するとともに、リニアガイドはその嵌め込み凹部に嵌め込まれ且つエンドプレートと素材硬さが同じ又は低い別体部材を備え、前記嵌め込み凹部と別体部材との互いに対向する接合面の少なくとも一方に対して潤滑剤供給経路としての溝を形成し、且つ当該対向する接合面の少なくとも一方に対して潤滑剤供給経路としての溝に沿って延びる1条若しくは2条以上の凸部を設けた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-353698
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述の特許文献1には、以下のような問題点がある。
【0007】
具体的に言えば、潤滑剤としてグリースを供給する時に、潤滑剤供給経路の断面積を大きく、且つ潤滑剤供給経路の長さを短くすれば良く、その一方、潤滑剤としてオイルを供給する時には、潤滑剤供給経路の断面積を小さく、且つ潤滑剤供給経路の長さを短くすれば良い。潤滑剤供給経路の長さを等しくとれば、グリース供給の時には、潤滑剤供給経路の断面積を大きく、オイル供給の時には、潤滑剤供給経路の断面積を小さくしてやれば良い。このようにグリース供給の時と、オイル供給の時とでは、潤滑剤供給経路に相反する断面積が必要になる。引例1のような従来のリニアガイドでは、グリース潤滑及びオイル潤滑の両方に対応できる最適な広さの潤滑剤供給経路が設計されていた。しかし、環境への影響を考慮して潤滑剤の使用量が低減するにつれ、グリース潤滑及びオイル潤滑の両方に対応できる潤滑剤供給経路の設計が困難になってきた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以上のような実情に鑑みなされたものであり、グリース潤滑とオイル潤滑との両方に容易に応対できる運動案内装置および該運動案内装置において使用される潤滑経路部品を提供することを目的としている。
【0009】
上記の目的を実現するために、本発明は、長手方向に沿って左右両側面に転動体転走溝が形成された軌道台と、複数の転動体を介して前記軌道台に相対移動可能に組付けられる移動体を備え、前記移動体は、前記転動体転走溝に対向して前記転動体が転動するための負荷転走路を形成する負荷転動体転走溝及び前記負荷転走路と平行に形成され前記転動体が転動するための無負荷通路が設けられた移動体本体と、前記移動体本体の前後の両端面に固定される蓋体と、前記移動体本体と前記蓋体との間に設けられる循環部品とを備え、前記負荷転走路と前記無負荷通路とを接続して前記転動体が転動方向を変更するための方向転換路が設けられ、前記蓋体には前記方向転換路の外周側方向転換部が設けられ、前記循環部品には前記方向転換路の内周側方向転換部が設けられ、前記循環部品は前記軌道台の左右両側に位置する前記内周側方向転換部を連結する連結部を有し、前記蓋体は前記連結部を収容する嵌合凹部を有するとともに、前記嵌合凹部には第一潤滑溝が形成され、潤滑剤としてグリースを使用する時に、前記第一潤滑溝及び前記循環部品により構成されたグリース潤滑経路を利用して潤滑剤を供給する運動案内装置であって、前記第一潤滑溝の断面積より小さい第二潤滑溝が形成された潤滑経路部品を更に設け、前記潤滑経路部品は、前記第一潤滑溝に嵌合される嵌合部と、前記循環部品に挿入される挿入部と、を備え、潤滑剤としてオイルを使用する時に、前記挿入部を前記循環部品に挿入し、前記嵌合部を前記第一潤滑溝に嵌めることによって、前記第一潤滑溝及び前記第二潤滑溝により構成されたオイル潤滑経路を利用して潤滑剤を供給することを特徴とする運動案内装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の運動案内装置により、グリース潤滑の時、潤滑経路を広くする一方、オイル潤滑の時、潤滑経路を狭くすることができ、容易に、良い潤滑を実現する。
【0011】
また、本発明の運動案内装置により、潤滑経路部品の挿入部を循環部品に挿入することにより、オイルが方向転換路を構成する内周側方向転換部及び外周側方向転換部に容易に到達して良い潤滑を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の運動案内装置の斜視図である。
図2】本発明の運動案内装置の分解斜視図である。
図3図2における蓋体、潤滑経路部品及び循環部品の分解斜視図である。
図4a図3における蓋体の斜視図である。
図4b図4aにおける蓋体の正面図である。
図5a図3における循環部品の斜視図である。
図5b図5aにおける循環部品の裏面図である。
図5c図5cにおける循環部品の正面図である。
図6a図3における潤滑経路部品の第1実施形態の斜視図である。
図6b図6aにおけるA-A線断面図である。
図6c図6aにおけるB-B線断面図である。
図7a図3における潤滑経路部品の第2実施形態の斜視図であり、潤滑経路部品の嵌合部の端部及び位置決め突起を拡大して示している。
図7b図7aにおけるA-A線断面図である。
図7c図7aにおけるB-B線断面図である。
図7d図7aの裏面側から見た斜視図である。
図8図7aに示す第2実施形態の潤滑経路部品を図5aに示す循環部品に組み立てた状態を示す斜視図である。
図9a図8に示す潤滑経路部品と循環部品との組立体を図4aに示す蓋体に組み立てる前の状態の図である。
図9b図8に示す潤滑経路部品と循環部品との組立体を図4aに示す蓋体に組み立てた後の状態の図である。
図9c図9bに示す蓋体と潤滑経路部品と循環部品との組立体の裏面側から見た斜視図であり、潤滑経路部品の位置決め突起が蓋体の位置決め孔に挿入された状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の各部分の構造及び機能を詳しく説明する。なお、以下の説明では、同じ又は相応な部材や構造に対して同じ符号を付して重複の説明を省略する。
【0014】
図1に示すように、運動案内装置の一種としてのリニアガイド1は、軌道台としての軌道レール2と、軌道レール2に沿って移動可能に組み付けられる移動体としての移動ブロック3と、を備え、移動ブロック3が軌道レール2の長手方向に沿って直線運動する。また、軌道レール2がベースなどの固定側に取り付けられ、移動ブロック3がテーブルなどの案内対象を取り付ける。
【0015】
そして、図2は本発明のリニアガイド1の分解斜視図であり、以下は、この図2を利用して本発明のリニアガイド1を詳しく説明する。
【0016】
図2に示すように、リニアガイド1は、長手方向に沿って左右両側面にボール転走溝2aが形成された軌道レール2と、複数の転動体としてのボールBを介してこの軌道レール2に相対移動可能に組付けられる移動ブロック3を備え、この移動ブロック3は、負荷ボール転走溝3a1及び無負荷通路3a2が設けられた移動体本体としてのスライダ3aと、スライダ3aの前後の両端面に固定される蓋体としてのエンドプレート2bとを備える。なお、ここでの所謂「左右」とは軌道レール2を長手方向から見たときに該軌道レール2の中心に対して左と右のことを言い、以下の説明においても同様である。また、スライダ3aの負荷ボール転走溝3a1と軌道レール2のボール転走溝2aは対向してボールBが転動するための負荷転走路を形成するとともに、スライダ3aの無負荷通路2a2はこの負荷転走路と平行に形成されボールBが転動するためのものである。
【0017】
また、図2に示すように、ボール保持部材6は、軌道レール2と移動ブロック3との間に設けられ、ボールBを保持するためのものであり、上下2列に配列されたボールB間に配置され、且つ軌道レール2の長手方向に延びる板状に形成され、当該長手方向と直交するボール保持部を有し、該ボール保持部は上下2列に配列されたボールBを同時に保持している。
【0018】
そして、図2及び後述の図4aに示すように、エンドプレート3bには、外周側方向転換部3b2が設けられ、スライダ3aとエンドプレート3bとの間には、内周側方向転換部4aが形成された循環部品4が設けられ、これにより、エンドプレート3bの外周側方向転換部3b2と循環部品4の内周側方向転換部4aとにより、U字状の方向転換路を形成している。この方向転換路は負荷転走路と無負荷通路3a2とを接続してボールBが転動方向を変更するためのものであるので、移動ブロック3が軌道レール2に沿って移動自在に直線運動可能である。さらに、図2に示すように、ねじ8aは、エンドプレート3bと循環部品4をスライダ3aにねじ止め固定するためのものである。
【0019】
また、図2に示すように、スライダ3aの前後の両端面に設置されたエンドプレート3bの外側には防塵部品7が設けられ、該防塵部品7に貫通孔7aが形成され、リニアガイド1に潤滑剤を供給するための潤滑剤供給手段(図示せず)の潤滑剤供給ノズルが貫通孔7aに接続されるとともに、該貫通孔7aがエンドプレート3bに形成された潤滑剤供給孔3b1に連通するので、潤滑剤供給手段によりエンドプレート3bに形成された潤滑剤潤滑経路を介して方向転換路に潤滑剤を供給し、さらに、該方向転換路、負荷転走路、および無負荷通路3a2を転動するボールBを潤滑することができる。さらに、図2に示すように、ねじ8bは、防塵部品7をエンドプレート3bにねじ止め固定するためのものである。
【0020】
また、図4aに示すように、エンドプレート3bの第一潤滑溝3b4はそれぞれリニアガイド1における軌道レール2の長手方向左右両側に位置する方向転換路に連通している。これにより、潤滑剤供給手段により防塵部品7の貫通孔7aを介して潤滑剤供給孔3b1に潤滑剤を供給する場合、潤滑剤が第一潤滑溝3b4を介してそれぞれ軌道レール2の左右両側の方向転換路に供給できる。
【0021】
以下、図3図5cを参照して、本発明のリニアガイド1において潤滑剤供給手段により潤滑剤としてグリースを供給する時のグリース潤滑経路を詳しく説明する。
【0022】
図3図5cに示すように、循環部品4は軌道レール2の左右両側に位置する内周側方向転換部4aを連結する連結部4bを有し、エンドプレート3bは連結部4bを収容する嵌合凹部3b3を有するとともに、嵌合凹部3b3には第一潤滑溝3b4が形成される。
【0023】
循環部品4がエンドプレート3bに直接に取り付けられた場合、具体的に、循環部品4の連結部4bがエンドプレート3bの嵌合凹部3b3に嵌合され、且つ、循環部品4の内周側方向転換部4aとエンドプレート3bの外周側方向転換部3b2とからU字状の方向転換路を構成した場合、リニアガイド1を潤滑する時に潤滑剤としてグリースを使用し、第一潤滑溝3b4及び循環部品4により構成されたグリース潤滑経路にグリースを供給することにより、該方向転換路、負荷転走路、および無負荷通路3a2を転動するボールBを潤滑する。
【0024】
なお、図5a及び図5bに示すように、循環部品4には第一潤滑溝3b4と連結する第三潤滑溝4cが形成され、該第三潤滑溝4cが循環部品4における上側の内周側方向転換部4aに対向する箇所に少なくとも形成される。これにより、第一潤滑溝3b4及び循環部品4により構成されたグリース潤滑経路にグリースを供給する場合、グリースが第一潤滑溝3b4を通過した後第三潤滑溝4cに流れ、さらに、該第三潤滑溝4cから上側の内周側方向転換部4aと下側の内周側方向転換部4aとの間まで案内され、よって、循環部品4における上側の内周側方向転換部4a及び下側の内周側方向転換部4aに確実に到達してボールBを潤滑することができる。なお、グリースを上側の内周側方向転換部4a及び下側の内周側方向転換部4aに均等に流すために、上側の内周側方向転換部4a及び下側の内周側方向転換部4aを開口の幅が異なるように設けることができる。
【0025】
次に、図3図6a~図6c及び図7a~図7dを参照して本発明のリニアガイド1において潤滑剤供給手段により潤滑剤としてオイルを供給する時のオイル潤滑経路を詳しく説明する。
【0026】
図3に示すように、潤滑経路部品5がエンドプレート3bと循環部品4との間に設けられる。
【0027】
また、図6aは図3における潤滑経路部品5の第1実施形態の斜視図であり、図6bは図6aにおけるA-A線断面図であり、図6cは図6aにおけるB-B線断面図である。
【0028】
図6aに示すように、潤滑経路部品5は、第一潤滑溝3b4に嵌合される嵌合部5aと、循環部品4に挿入される挿入部5bと、を備え、且つ、第一潤滑溝3b4の断面積より小さい第二潤滑溝5cが形成されている。もっと詳しく言えば、挿入部5bが循環部品4の第三潤滑溝4cに挿入される部分であり、第二潤滑溝5cが嵌合部5a及び挿入部5bに形成されている。
【0029】
循環部品4が潤滑経路部品5を介してエンドプレート3bに取り付けられた場合、具体的に、潤滑経路部品5の挿入部5bが循環部品4の第三潤滑溝4cに挿入され、潤滑経路部品5の嵌合部5aに形成された第二潤滑溝5cがエンドプレート3bの第一潤滑溝3b4に対向するように該嵌合部5aが第一潤滑溝3b4に嵌合されるとともに、循環部品4の連結部4bがエンドプレート3bの嵌合凹部3b3に嵌合され、且つ、循環部品4の内周側方向転換部4aとエンドプレート3bの外周側方向転換部3b2とからU字状の方向転換路を構成した場合、リニアガイド1を潤滑する時に潤滑剤としてオイルを使用し、第一潤滑溝3b4及び第二潤滑溝5cにより構成されたオイル潤滑経路にオイルを供給することにより、該方向転換路、負荷転走路、および無負荷通路3a2を転動するボールBを潤滑する。
【0030】
これにより、本発明のリニアガイド1においては、グリース潤滑の時、潤滑経路を広くする一方、オイル潤滑の時、上記のような潤滑経路部品5を設けることにより潤滑経路を狭くすることができ、容易に、良い潤滑を実現する。
【0031】
なお、図5a及び図5bに示す循環部品4の第三潤滑溝4cが潤滑経路部品5の第二潤滑溝5cにも連結される。これにより、第一潤滑溝3b4及び第二潤滑溝5cにより構成されたオイル潤滑経路にオイルを供給する場合、オイルが互いに対向する第一潤滑溝3b4及び第二潤滑溝5cを通過した後第三潤滑溝4cに流れ、さらに、該第三潤滑溝4cから上側の内周側方向転換部4aと下側の内周側方向転換部4aとの間まで案内され、よって、循環部品4における上側の内周側方向転換部4a及び下側の内周側方向転換部4aに確実に到達してボールBを潤滑することができる。
【0032】
言い換えれば、本発明のリニアガイド1においては、潤滑経路部品5の挿入部5bを循環部品4の第三潤滑溝4cに挿入することにより、オイルが方向転換路を構成する内周側方向転換部4a及び外周側方向転換部3b2に容易に到達して良い潤滑を容易に実現することができる。
【0033】
また、図2図6b及び図6cに示すように、軌道レール2の長手方向に関し、潤滑経路部品5の挿入部5bの厚さdが潤滑経路部品5の嵌合部5aの厚さDより小さく形成される。
【0034】
これにより、潤滑経路部品5の挿入部5bを循環部品4の第三潤滑溝4cに容易に挿入することができる。
【0035】
さらに、図6aに示すように、潤滑経路部品5の挿入部5bの端部5b1の側面には面取りが形成されている。
【0036】
なお、図示はしていないが、潤滑経路部品5の挿入部5bの端部5b1の前面(すなわち、第二潤滑溝5cが形成された面)には面取りが形成されてもよい。
【0037】
勿論、図示はしていないが、潤滑経路部品5の挿入部5bの端部5b1の側面及び前面には面取りが形成されてもよい。
【0038】
これにより、潤滑経路部品5の挿入部5bを循環部品4の第三潤滑溝4cにより容易に挿入することができる。
【0039】
また、図6b及び図6cに示すように、潤滑経路部品5の第二潤滑溝5cの両側にはオイルを漏出防止するためのリブ5dが形成される。
【0040】
以上、本発明の潤滑経路部品5の第1実施形態を説明した。
【0041】
次に、図7a~図7dを参照して本発明の潤滑経路部品5の第2実施形態を説明する。
【0042】
なお、潤滑経路部品5の第2実施形態における第1実施形態と同じ又は相応な部材や構造に対して同じ符号を付して重複の説明を省略する。
【0043】
図7aは図3における潤滑経路部品5の第2実施形態の斜視図であり、潤滑経路部品5の嵌合部5aの端部5a1及び位置決め突起5aを拡大して示し、図7bは図7aにおけるA-A線断面図であり、図7cは図7aにおけるB-B線断面図であり、図7dは図7aの裏面側から見た斜視図である。
【0044】
図7a~図7dに示すように、第1実施形態と同様に、第2実施形態の潤滑経路部品5も、嵌合部5aと、挿入部5bと、第二潤滑溝5cと、リブ5dとを備える。
【0045】
図7aに示すように、第2実施形態の潤滑経路部品5が第1実施形態の潤滑経路部品5に対する相違点は、嵌合部5aの端部5a1の形状にある。
【0046】
具体的に言えば、図4a及び図4bに示すように、エンドプレート3bの第一潤滑溝3b4の外周側方向転換部3b2と連結する端部3b41がテーパ形状に形成され、それに対応的に、図7aに示すように、潤滑経路部品5の嵌合部5aの挿入部5bと連結する端部5a1は端部3b41のテーパ形状に対応するテーパ形状に形成される。
【0047】
なお、エンドプレート3bの第一潤滑溝3b4の外周側方向転換部3b2と連結する端部3b41をテーパ形状に形成することにより、グリース潤滑の場合にグリースが方向転換路に流れる時に、グリースの圧力を高めて、より良い潤滑を実現することができる。
【0048】
また、図7aに示すように、第2実施形態の潤滑経路部品5が第1実施形態の潤滑経路部品5に対する相違点は、位置決め突起5eをさらに備えることにある。
【0049】
具体的に言えば、図7aに示すように、潤滑経路部品5にはエンドプレート3bと位置決めする為の位置決め突起5eが形成され、それに対応的に、図4a及び4bに示すように、エンドプレート3bには位置決め突起5eを嵌め込むための位置決め孔3b5が形成される。
【0050】
本発明のリニアガイド1においては、上記のような位置決め突起5eと位置決め孔3b5とを設けることにより、潤滑経路部品5をエンドプレート3bに嵌合挿入する場合、潤滑経路部品5とエンドプレート3bとの位置決めを容易に実現できる。
【0051】
さらに、図7aに示すように、位置決め突起5eには第二潤滑溝5cの一部が形成される。
【0052】
これにより、位置決め突起5eをエンドプレート3bの位置決め孔3b5に挿入する時に、位置決め突起5eを変形させやすく位置決め孔3b5に挿入することができる。
【0053】
なお、図7aに示すように、第2実施形態の潤滑経路部品5の挿入部5bの端部5b1の側面にも面取りが形成されている。
【0054】
なお、図示はしていないが、潤滑経路部品5の挿入部5bの端部5b1の前面(すなわち、第二潤滑溝5cが形成された面)には面取りが形成されてもよい。
【0055】
勿論、図示はしていないが、潤滑経路部品5の挿入部5bの端部5b1の側面及び前面には面取りが形成されてもよい。
【0056】
これにより、第1実施形態の潤滑経路部品5のように第2実施形態の潤滑経路部品5の挿入部5bをより容易に循環部品4の第三潤滑溝4cに挿入することができる。
【0057】
以上、本発明の潤滑経路部品5の第2実施形態を説明した。
【0058】
次に、図8を参照して、第2実施形態の潤滑経路部品5が図5aに示す循環部品4に組み立てられた組立体を説明する。
【0059】
図8に示すように、潤滑経路部品5の挿入部5bが循環部品4の第三潤滑溝4cに挿入され、挿入部5bの端部が循環部品4の上下の内周側方向転換部4aの間の位置に到達する。この時、オイル供給時にオイルを安定に供給することを確保するために、潤滑経路部品5と循環部品4との接合部分は隙間がないように密着して、潤滑経路部品5と循環部品4との間にずれやガタツキなどが発生しないことが好ましい。
【0060】
なお、第1実施形態の潤滑経路部品5が図5aに示す循環部品4に組み立てられた組立体は図8に示す組立体と大体同じであり、同様に、挿入部5bの端部5b1が循環部品4の上下の内周側方向転換部4aの間の位置に到達するとともに、潤滑経路部品5と循環部品4との接合部分が隙間がないように密着する状態である。
【0061】
次に、図9a~図9cを参照してエンドプレート3bと潤滑経路部品5と循環部品4との組立状態を説明する。
【0062】
図9aは図8に示す潤滑経路部品5と循環部品4との組立体を図4aに示すエンドプレート3bに組み立てる前の状態の図である。図8に示す潤滑経路部品5と循環部品4との組立体を図4aに示すエンドプレート3bに組み立てる場合、潤滑経路部品5の位置決め突起5eがエンドプレート3bの位置決め孔3b5と一致するように組立てることにより、図9bに示すエンドプレート3bと潤滑経路部品5と循環部品4との組立体を容易に獲得できる。
【0063】
また、図9c及び図4bに示すように、エンドプレート3bの位置決め孔3b5の中心とエンドプレート3bの潤滑剤供給孔3b1の中心とが一致する。
【0064】
これにより、潤滑剤としてオイルを使用してリニアガイド1を潤滑する場合、潤滑剤供給孔3b1から直接に潤滑経路部品5の位置決め孔3b5と嵌合される位置決め突起5eにオイルを供給し、オイルを方向転換路に容易に供給して良い潤滑を実現できる。
【0065】
なお、潤滑経路部品5が軟質の材料により構成された場合、エンドプレート3bをスライダ3aに取り付ける時に、エンドプレート3bを押圧して軟質の潤滑経路部品5を変形させることにより、循環部品4と潤滑経路部品5がエンドプレート3bに密着されてオイルの漏出を効果的に防止することができる。
【0066】
以上、図1~9に示す具体的な実施形態により、本発明のリニアガイド1の具体的な構造を説明した。
【0067】
以上の説明により、グリース潤滑とオイル潤滑との両方に容易に応対できるリニアガイド1を提供するという目的を実現するために、本発明は、長手方向に沿って左右両側面にボール転走溝2aが形成された軌道レール2と、複数のボールBを介して軌道レール2に相対移動可能に組付けられる移動ブロック3を備え、移動ブロック3は、ボール転走溝2aに対向してボールBが転動するための負荷転走路を形成する負荷ボール転走溝3a1及び負荷転走路と平行に形成されボールBが転動するための無負荷通路3a2が設けられたスライダ3aと、スライダ3aの前後の両端面に固定されるエンドプレート3bと、スライダ3aとエンドプレート3bとの間に設けられる循環部品4とを備え、負荷転走路と無負荷通路3a2とを接続してボールBが転動方向を変更するための方向転換路が設けられ、エンドプレート3bには方向転換路の外周側方向転換部3b2が設けられ、循環部品4には方向転換路の内周側方向転換部4aが設けられ、循環部品4は軌道レール2の左右両側に位置する内周側方向転換部4aを連結する連結部4bを有し、エンドプレート3bは連結部4bを収容する嵌合凹部3b3を有するとともに、嵌合凹部3b3には第一潤滑溝3b4が形成され、潤滑剤としてグリースを使用する時に、第一潤滑溝3b4及び循環部品4により構成されたグリース潤滑経路を利用して潤滑剤を供給するリニアガイド1であって、第一潤滑溝3b4の断面積より小さい第二潤滑溝5cが形成された潤滑経路部品5を更に設け、潤滑経路部品5は、第一潤滑溝3b4に嵌合される嵌合部5aと、循環部品4に挿入される挿入部5bと、を備え、潤滑剤としてオイルを使用する時に、挿入部5bを循環部品4に挿入し、嵌合部5aを第一潤滑溝3b4に嵌めることによって、第一潤滑溝3b4及び第二潤滑溝5cにより構成されたオイル潤滑経路を利用して潤滑剤を供給することを特徴とするリニアガイド1を提供する。
【0068】
本発明のリニアガイド1により、グリース潤滑の時、潤滑経路を広くする一方、オイル潤滑の時、潤滑経路を狭くすることができ、容易に、良い潤滑を実現する。
【0069】
また、本発明のリニアガイド1により、潤滑経路部品5の挿入部5bを循環部品4に挿入することにより、オイルが方向転換路を構成する内周側方向転換部4a及び外周側方向転換部3b2に容易に到達して良い潤滑を実現することができる。
【0070】
また、循環部品4には第一潤滑溝3b4又は第二潤滑溝5cと連結する第三潤滑溝4cが形成され、挿入部5bは循環部品4に挿入される時に、第三潤滑溝4cに挿入される、ということが好ましい。
【0071】
これにより、潤滑剤供給時に、潤滑剤が循環部品4における上側の内周側方向転換部4a及び下側の内周側方向転換部4aに確実に到達してボールBを潤滑することができる。
【0072】
また、軌道レール2の長手方向に関し、挿入部5bの厚さが嵌合部5aの厚さより小さく形成される、ということが好ましい。
【0073】
これにより、潤滑経路部品5の挿入部5bを循環部品4の第三潤滑溝4cに容易に挿入することができる。
【0074】
また、第一潤滑溝3b4の外周側方向転換部3b2と連結する端部3b41がテーパ形状に形成され、嵌合部5aの挿入部5bと連結する端部5a1は前記テーパ形状に対応するテーパ形状に形成される、ということが好ましい。
【0075】
エンドプレート3bの第一潤滑溝3b4の外周側方向転換部3b2と連結する端部3b41をテーパ形状に形成することにより、グリース潤滑の場合にグリースが方向転換路に流れる時に、グリースの圧力を高めて、より良い潤滑を実現することができる。
【0076】
また、潤滑経路部品5にはエンドプレート3bと位置決めする為の位置決め突起5eが形成され、エンドプレート3bには位置決め突起5eを嵌め込むための位置決め孔3b5が形成される、ということが好ましい。
【0077】
上記のような位置決め突起5eと位置決め孔3b5とを設けることにより、潤滑経路部品5をエンドプレート3bに嵌合挿入する場合、潤滑経路部品5とエンドプレート3bとの位置決めを容易に実現できる。
【0078】
また、位置決め孔3b5の中心とエンドプレート3bに設けられる潤滑剤供給孔3b1の中心とが一致する、ということが好ましい。
【0079】
これにより、潤滑剤としてオイルを使用してリニアガイド1を潤滑する場合、潤滑剤供給孔3b1から直接に潤滑経路部品5の位置決め孔3b5と嵌合される位置決め突起5eにオイルを供給し、オイルを方向転換路に容易に供給して良い潤滑を実現できる。
【0080】
また、位置決め突起5eには第二潤滑溝5cの一部が形成される、ということが好ましい。
【0081】
これにより、位置決め突起5eをエンドプレート3bの位置決め孔3b5に挿入する時に、位置決め突起5eを変形させやすく位置決め孔3b5に挿入することができる。
【0082】
また、第二潤滑溝5cの両側にはオイルを漏出防止するためのリブ5dが形成される、ということが好ましい。
【0083】
これにより、オイル潤滑の場合、オイルの漏出を防止することができる。
【0084】
さらに、本発明は、上記のいずれかの実施形態のリニアガイド1における潤滑経路部品5であることを特徴とする潤滑経路部品を提供する。
【0085】
リニアガイドに上記のような潤滑経路部品5を用いることにより、該リニアガイドは上記の各技術効果を獲得できる。
【0086】
なお、オイル漏出を防止して密閉性能を高めるために、潤滑経路部品5を循環部品4に取り付けた後、接着剤などを使って循環部品4の第三潤滑溝4cに充填しても良い。
【0087】
以上のように、本発明は図面を参照して好ましい実施形態を十分に記載しているが、当業者は上記の実施形態を基礎として変形又は変更を適宜行うことが勿論である。これらの変形又は変更は、本発明の趣旨を逸脱しない場合には、本発明の保護範囲に含まれると考えられる。
【符号の説明】
【0088】
1 リニアガイド(運動案内装置)
2 軌道レール(軌道台)
2a ボール転走溝
3 移動ブロック(移動体)
3a スライダ(移動体本体)
3a1 負荷ボール転走溝
3a2 無負荷通路
3b エンドプレート(蓋体)
3b1 潤滑剤供給孔
3b2 外周側方向転換部
3b3 嵌合凹部
3b4 第一潤滑溝
3b41 端部
3b5 位置決め孔
4 循環部品
4a 内周側方向転換部
4b 連結部
4c 第三潤滑溝
5 潤滑経路部品
5a 嵌合部
5a1 端部
5b 挿入部
5b1 端部
5c 第二潤滑溝
5d リブ
5e 位置決め突起
6 ボール保持部材
7 防塵部品
7a 貫通孔
8a,8b ねじ
B ボール(転動体)
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図7c
図7d
図8
図9a
図9b
図9c