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特許7499858天然アミノ酸に基づいてカプセル化される芳香化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】天然アミノ酸に基づいてカプセル化される芳香化合物
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/16 20060101AFI20240607BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20240607BHJP
   C11D 3/50 20060101ALI20240607BHJP
   C11D 17/06 20060101ALI20240607BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20240607BHJP
   D06M 23/12 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
B01J13/16
C11B9/00 Z
C11D3/50
C11D17/06
C11D17/08
D06M23/12
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022533355
(86)(22)【出願日】2019-12-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2019083903
(87)【国際公開番号】W WO2021110273
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】511008850
【氏名又は名称】シムライズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114904
【弁理士】
【氏名又は名称】小磯 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100134636
【弁理士】
【氏名又は名称】金高 寿裕
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルギ,ユリアン アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ロスト,ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラム,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】ラーベ,ブリッタ
(72)【発明者】
【氏名】ヘッツェルト,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーデマン,ヨエルン
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-057178(JP,A)
【文献】特開平06-142495(JP,A)
【文献】特開平08-267914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/00-13/22
C11B 9/00
C11D 3/50
C11D 17/06
C11D 17/08
D06M 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層マイクロカプセルを製造する方法であって、以下の工程:
(a)(a1)2以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つのイソシアネートとカプセル化される少なくとも1つの有効成分とを含む内部非水性相を提供することと;
(a2)少なくとも1つの保護コロイドを含む外部水性相を提供することと;
(a3)前記内部非水性相と前記外部水性相とを混合して水中油エマルションを得ることとによって第1の架橋層を形成することと;
(b)酸性pHで反応するアミンの添加によって第2の架橋層を形成することと;
(c)ヒドロキシル基ドナーの添加によって第3の架橋層を形成することと;
(d)アルカリ性pHで反応する少なくとも1つのアミンの添加によって少なくとも第4の架橋層を形成して多層マイクロカプセルを得ることと;
(e)工程(d)で得られた前記多層マイクロカプセルを硬化することと;任意で
(f)前記多層マイクロカプセルを分離し、任意で前記多層マイクロカプセルを乾燥させることと、をこの順序で含む、前記方法。
【請求項2】
前記第1の架橋層が触媒の存在下にて前記保護コロイドと前記イソシアネートとから形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a3)の後で工程(a4)にて触媒を添加することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
2以上のイソシアネート基を有する前記少なくとも1つのイソシアネートが脂肪族イソシアネート及び/または芳香族イソシアネートから成る群から選択される、先行請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
2以上のイソシアネート基を有する少なくとも2つの脂肪族イソシアネートを含み、前記少なくとも2つの脂肪族イソシアネートが異なる鎖長を有する、先行請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
硬化に先立って、多層マイクロカプセルの架橋の終止がアミン官能基を有するアミンの添加によって形成される追加の任意の工程を含む、先行請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記保護コロイドが多糖である、先行請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記保護コロイドがデンプンである、先行請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒がジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)である、先行請求項2または3に記載の方法。
【請求項10】
前記酸性pHで反応するアミンが酸性アミノ酸の塩酸塩である、先行請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記酸性pHで反応するアミンがリジン塩酸塩及び/またはオルニチン塩酸塩である、先行請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒドロキシル基ドナーが2以上のヒドロキシル官能基を有するポリオールである、先行請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記ヒドロキシル基ドナーがグリセロール、プロピレングリコール及び/または1,3,5-トリヒドロキシベンゼンである、先行請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記アルカリ性pHで反応するアミンがグアニジニウム基ドナーである、先行請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記アルカリ性pHで反応するアミンがアルギニン、炭酸グアニジニウム及び/または塩酸グアニジニウムである、先行請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記多層マイクロカプセルの架橋を終止するための、硬化に先立つ追加の任意の工程で使用される前記アミンがアミノ酸である、先行請求項6~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記多層マイクロカプセルの架橋を終止するための、硬化に先立つ追加の任意の工程で使用される前記アミンがアミノ基を含むアミノ酸である、先行請求項6~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記カプセル化される少なくとも1つの有効成分が芳香化合物、香気物質、香味剤、殺生物剤、殺昆虫剤;防虫剤、食品添加剤、化粧品有効成分、医薬成分、農薬、着色剤、ルミナスカラー、光学的光沢剤、溶媒、ワックス、シリコーン油、潤滑剤の群に由来する物質;及び前述の有効成分の混合物から成る群から選択される、先行請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
先行請求項1~18のいずれか1項に記載の方法によって調製される少なくとも1つの疎水性香気物質または疎水性芳香化合物を含む、多層マイクロカプセル。
【請求項20】
少なくとも1つの疎水性香気物質または疎水性芳香化合物を含むコアと、カプセルシェルとを含む多層マイクロカプセルであって、前記カプセルシェルが完全に
(i)ポリウレタンを含む、またはそれから成る第1の層と;
(ii)ポリ尿素を含む、またはそれから成る第2の層と;
(iii)ポリウレタンを含む、またはそれから成る第3の層と;
(iv)ポリ尿素を含む、またはそれから成る少なくとも第4の層とを含む、またはそれらから成る、前記多層マイクロカプセル。
【請求項21】
(i)前記第1の層が2以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つのイソシアネートと保護コロイドとの架橋された構成単位を含み;
(ii)前記第2の層が2以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つのイソシアネートと酸性pHで反応するアミンとの架橋された構成単位を含み;
(iii)前記第3の層が2以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つのイソシアネートとヒドロキシル基ドナーとの架橋された構成単位を含み;
(iv)前記少なくとも第4の層が2以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つのイソシアネートとアルカリ性pHで反応する少なくとも1つのアミンとの架橋された構成単位を含む、請求項20に記載の多層マイクロカプセル。
【請求項22】
液状もしくは固形の形態での洗剤、布柔軟剤、洗浄剤、香り効能促進剤または芳香増強剤、化粧品、パーソナルケア製品、農産品、または医薬品の製造のための請求項19~21のいずれか1項に記載の多層マイクロカプセルまたは請求項19~21のいずれか1項に記載の多層マイクロカプセルの懸濁液の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は従来技術のカプセルと比べて安定性が改善され、香気物質または芳香化合物の放出が改善されている多層マイクロカプセル、好ましくは多層の香気物質カプセルまたは芳香化合物カプセルの調製のためのプロセスに関する。加えて、本発明は本発明のプロセスによって入手できる少なくとも1つの疎水性の香気物質または芳香化合物を含む多層マイクロカプセルに関する。別の態様では、本明細書に記載されている本発明は少なくとも1つの疎水性の香気物質または芳香化合物を含むコアとカプセルシェルとを含む多層マイクロカプセルに関する。加えて、本発明は、液状もしくは固形の形態での洗剤、布柔軟剤、洗浄剤、香り効能促進剤;化粧品、パーソナルケア製品、農産品、または医薬品の成分としての多層マイクロカプセル及び多層マイクロカプセルの懸濁液の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
カプセル化の目的は、とりわけ、有効成分の標的放出、扱いやすい粉末形態への液体の変換、揮発性成分(例えば、香味剤の場合)の喪失の遅延、他の混合成分との早すぎる化学反応の防止、または加工前もしくは加工中のさらに良好な取り扱いを保証することである。カプセル化された有効成分、例えば、香気物質または芳香化合物はこの目的のためにカプセル化された形態で種々の応用製剤に組み込むことができる。
【0003】
マイクロカプセルの内容物はその後、特に以下に記載されているメカニズム:押しつぶすもしくは剪断することによるカプセルの機械的な破壊、壁材の融解によるカプセルの破壊、壁材の溶解によるカプセルの破壊、またはカプセル壁を介した有効成分の拡散の1つに基づく種々の方法で放出することができる。
【0004】
最近は、日常使用の多数の物品、例えば、洗浄剤、ワックス、シャンプー等は芳香化合物または芳香化合物の混合物によって香りが付けられている。芳香化合物の製品における他の成分との考えられる相互作用を防ぐために、または例えば、芳香化合物の揮発を防ぐことで所望の匂いの印象を改ざんしないもしくは減らさないために、芳香化合物をカプセル化した形態で製剤に加えることができる。このようにして所望の匂いの印象を保証することができる。
【0005】
例えば、文書EP2111214B1は匂いを放つコアとアミノプラストポリマーのカプセル化を伴うマイクロカプセルを記載している。記載のカプセルシェルの高い不浸透性に加えて、それは反応性化学物質に対して高度に耐性でもある。アミン・ホルムアルデヒド初期縮合物と水不溶性の疎水性有効成分、例えば、香油との重縮合はpHの変化によって開始する。
【0006】
DE2303866は、(a)エポキシプロピルトリアルキルアンモニウム塩と、さらに6~16の炭素原子のアルキル基を有するアルキルスルホスクシネートまたはそのカルボン酸アミド基が8~20の炭素原子を持つアルキル基で置換されているアルキルスルホスクシナメートと、(b)成分としての水混和性の溶媒とから調製されるマイクロカプセルを記載している。
【0007】
文書EP3238816A1は、少なくとも1つのプレポリマーを含有する第1の水性調製物とカプセル化される有効成分を含有する第2の非水性調製物とからマイクロカプセル、特にアミノプラストのマイクロカプセルを調製するのでカプセルの平均直径が縮小され、且つ標準化される、プロセスを開示している。さらに、本明細書に記載されているプロセスはマイクロカプセルの粒度の有意な低下につながるので、エマルションの安定化につながる。
【0008】
WO2017/148504A1は水性界面活性剤環境にて改善された保存安定性を示す芳香化合物カプセルを調製するプロセスを記載しており、その際、カプセル化直前に5mgKOH/g以下の酸価を有する芳香組成物が天然のコーティング材または合成のアニオン性もしくはカチオン性のポリマーまたはそれらの混合物によってカプセル化される。
【0009】
マイクロカプセルは、例えば、アクリレート単量体、ポリ尿素またはさらにバイオポリマーのような他の重合可能な材料から作ることもできる。イソシアネート系マイクロカプセルはふつう、アルカリ性環境にてポリイソシアネートと炭酸グアニジニウムとから製造される。
【0010】
しかしながら、上記に記載されている従来技術のマイクロカプセルは、高分子のカプセル壁またはカプセルシェルの材料が十分な安定性を確保し、且つ有効成分の過剰な喪失を回避するのに大量のポリマー含量を必要とするという短所を有する。さらに、そのようなマイクロカプセルは生分解性の特性を有さないことが多い。加えて、適用における有効成分の放出はふつう不十分である。
【0011】
特に、環境的側面に関するかつてないほど大きい社会的圧力に起因してバイオベースの及び生分解性の解決策に対する要求が高まっている。
【0012】
この背景に対して、本発明はポリマー含量が少ない、同時にカプセル化された有効成分の優れた放出挙動を示す、且つできるだけ生分解性である特性を有する高度に安定なマイクロカプセルを提供することを可能にするマイクロカプセルの製造ためのプロセスを提供する複雑な課題に基づいた。
【0013】
驚くべきことに、この課題は、定義された温度での対象を絞った層状架橋及び対象を絞った触媒メカニズムが安定な多層マイクロカプセルをもたらすので、例えば、機械的摩擦によるまたは圧力による有効成分のその後の対象を絞った放出を伴うこれら有効成分の効率的なカプセル化を保証するという点で解決できることが見いだされた。
【発明の概要】
【0014】
本課題は特許の独立クレームの目的によって解決される。好ましい実施形態は特許の従属クレーム及び以下の説明の表現に由来する。
【0015】
したがって、本発明の第1の目的は、以下の工程:
(a)(a1)2以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つのイソシアネートとカプセル化される少なくとも1つの有効成分とを含む内部非水性相を提供することと;
(a2)少なくとも1つの保護コロイドを含む外部水性相を提供することと;
(a3)内部非水性相と外部水性相を混合して水中油エマルションを得ることとによって第1の架橋層を形成することと;
(b)酸性pHにて反応するアミンを加えることによって第2の架橋層を形成することと;
(c)ヒドロキシル基ドナーの添加によって第3の架橋層を形成することと;
(d)アルカリ性pHで反応する少なくとも1つのアミンを加えることによって少なくとも第4の架橋層を形成して多層マイクロカプセルを得ることと;
(e)工程(d)で得られた多層マイクロカプセルを硬化することと;任意で、
(f)反応溶液からマイクロカプセルを分離し、必要に応じてマイクロカプセルを乾燥させることと、をこの順序で含む、多層マイクロカプセル、好ましくは多層の香気物質カプセルまたは芳香化合物カプセルを製造する方法に関する。
【0016】
加えて、本発明のプロセスによって調製される少なくとも1つの疎水性の香気物質または芳香化合物を含む多層マイクロカプセルを提供することが本明細書に記載されている本発明の目的である。
【0017】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの疎水性の香気物質または芳香化合物を含むコアと、カプセルシェルとを含む多層マイクロカプセルであり、その際、カプセルシェルは、
(i)ポリウレタンを含む、またはそれから成る第1の層と;
(ii)ポリ尿素を含む、またはそれから成る第2の層と;
(iii)ポリウレタンを含む、またはそれから成る第3の層と;
(iv)ポリ尿素を含む、またはそれから成る少なくとも1つの第4の層とを完全に含む、またはそれらから完全に成る。
【0018】
最終的に、さらなる態様では、本発明は、液状もしくは固形の形態での洗剤、布柔軟剤、洗浄剤、香り効能促進剤;化粧品、パーソナルケア製品、農産品、または医薬品の製造のための本発明に係る多層マイクロカプセルまたは多層マイクロカプセルの懸濁液の使用に関する。
【0019】
驚くべきことに、定義された温度での架橋されたカプセル壁材料の対象を絞った定義された且つ層状の堆積及び対象を絞った触媒メカニズムは安定な多層マイクロカプセルをもたらすので、例えば、機械的摩擦によるまたは圧力による有効成分のその後の対象を絞った放出を伴うこれら有効成分の効率的なカプセル化を保証することが本発明の文脈で見いだされた。
【0020】
さらに、本明細書に記載されている多層マイクロカプセルは、例えば、アミノ酸及びデンプンのようなそれらのバイオベースの及び生分解性の基本的要素に起因して良好な生体適合性を示す。
【0021】
さらに、カプセル壁材料における有意な節約は本明細書に記載されているプロセスによって達成されてもよい。
【0022】
本発明のこれらの及び他の態様、特徴及び利点は以下の詳細な説明及びクレームの検討から当業者に明らかであろう。この点で本発明の1つの態様に由来する任意の特徴が本発明のもう1つの態様にて使用されてもよいし、または置き換えられてもよい。本明細書の実施例は本発明を限定することなく本発明を説明している。
【0023】
「最低1」、「少なくとも1」または「1以上」という用語は本明細書で使用されるとき、1以上、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9以上を指す。
【0024】
「x~y」の形態で与えられる数的例は指名された値を含む。複数の好ましい数的範囲がこの形式で指定されるのであれば、さまざまな端点を組み合わせることによって作り出される範囲すべても含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る100%長鎖ジイソシアネートから作り出された多層マイクロカプセルの光学顕微鏡像である。光学顕微鏡像にはOlympusBX51を使用した。示した棒は50μmに相当する。
【0026】
図2】本発明に係る100%短鎖ジイソシアネートから作り出された多層マイクロカプセルの光学顕微鏡像である。光学顕微鏡像にはOlympusBX51を使用した。示した棒は50μmに相当する。
【0027】
図3】本発明に係る50%長鎖ジイソシアネート及び50%短鎖ジイソシアネートから作り出された多層マイクロカプセルの光学顕微鏡像である。光学顕微鏡像にはOlympusBX51を使用した。示した棒は50μmに相当する。
【0028】
図4】本発明に係る80%長鎖ジイソシアネート及び20%芳香族ジイソシアネートから作り出された多層マイクロカプセルの光学顕微鏡像である。光学顕微鏡像にはOlympusBX51を使用した。示した棒は50μmに相当する。
【0029】
図5】従来技術のマイクロカプセル、すなわち、ポリ尿素構造の純粋ネットワークに基づくマイクロカプセル、及び本発明に係るマイクロカプセルのIR分光分析の結果を示す図である。分析はATR赤外線分光光度計(Attenuated Total Reflection)を使用して実施した。
【0030】
図6】本発明に係る多層マイクロカプセル及びポリ尿素の純粋ネットワークに基づく従来技術のマイクロカプセルの粒度分布(d(0.5)-値)の図を示す。MALVERN Mastersizer3000を使用して粒度分布を決定した。対応する計算はMie理論に基づく。
【0031】
図7】従来技術のマイクロカプセル、すなわち、ポリ尿素構造の純粋ネットワークに基づくマイクロカプセル、及び本発明に係るマイクロカプセルの官能評価の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
第1の態様では、本発明は以下の工程:
(a)(a1)2以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つのイソシアネートとカプセル化される少なくとも1つの有効成分とを含む内部非水性相を提供することと;
(a2)少なくとも1つの保護コロイドを含む外部水性相を提供すること、好ましくは保護コロイドは多糖類、特に好ましくはデンプンであることと;
(a3)内部非水性相と外部水性相とを混合して水中油エマルションを得ることとによって第1の架橋層を形成することと;
(b)酸性pHにて反応するアミンの添加によって第2の架橋層を形成することと;
(c)ヒドロキシル基ドナーの添加によって第3の架橋層を形成することと;
(d)アルカリ性pHで反応する少なくとも1つのアミンを加えることによって少なくとも第4の架橋層を形成して多層マイクロカプセルを得ることと;
(e)工程(d)で得られた多層マイクロカプセルを硬化することと;任意で、
(f)反応溶液からマイクロカプセルを分離し、必要に応じてマイクロカプセルを乾燥させることと、をこの順序で含む、またはそれらから成る、多層マイクロカプセルを製造する方法、好ましくは多層の香気物質カプセルまたは芳香化合物カプセルを製造する方法に関する。
【0033】
本発明の文脈では、多層マイクロカプセルはカプセルシェルまたはカプセル壁とカプセルの内部のコア物質としての1以上の有効成分とを有するマイクロカプセルであると理解される。好ましくは、これらは疎水性の有効成分である。「マイクロカプセル」または「カプセル」という用語は本発明の目的では同義的に使用される。
【0034】
本発明の文脈では、カプセルシェルまたはカプセル壁は好ましくは異なる組成を有する幾つかの層で好ましくは構成される。したがって、カプセルシェルの特に好ましい実施形態は少なくとも1つのポリウレタン系の及び少なくとも1つのポリ尿素系の(架橋)層を含む。特に、ポリウレタン構造とポリ尿素構造を含む交互の層が好ましい。
【0035】
本発明に係るプロセスの第1の工程では、第1の架橋層が形成される。この目的で、内部非水性相が提供され、それは2以上のイソシアネート基を持つ少なくとも1つのイソシアネートとカプセル化される少なくとも1つの有効成分とを含む。
【0036】
本明細書に記載されている製造プロセスで使用される少なくとも1つのイソシアネートは高分子ネットワークの形成のために、したがって、重合によるカプセルシェルまたはカプセル壁の形成のために少なくとも2つのイソシアネート基を有する。対応する重合可能なイソチオシアネートも単独でまたはイソシアネートと組み合わせて本発明に係るプロセスでの使用に適用可能である。脂肪族の、脂環式の、ヒドロ芳香族の、芳香族のまたは複素環のポリイソシアネートまたはポリイソチオシアネート、それらの置換生成物及び前述の単量体またはオリゴマー化合物の混合物は特に好ましく、脂肪族及び/または芳香族の化合物が好ましくは使用される。ポリイソシアネートの間ではジイソシアネートが特に好ましいので、本発明の実施に主として使用される。
【0037】
したがって、好ましい実施形態では、本発明は多層マイクロカプセルの調製のためのプロセスに関するものであり、その際、2以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つのイソシアネートは、脂肪族イソシアネート及び/または芳香族イソシアネート及び対応するイソチオシアネートから成る群から選択される。好ましくは、使用される脂肪族イソシアネートは5以上の炭素原子を有する。
【0038】
特に好ましい実施形態では、内部非水性相はさまざまな重合可能なイソシアネート及び/またはコポリマーを形成することができるイソチオシアネートの混合物を含む。
【0039】
本発明に従って使用することができ、且つ少なくとも2つのイソシアネート基またはイソチオシアネート基を含有する単量体のイソシアネート及び/またはイソチオシアネートの例は、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチルジイソシアネート、エチレンジイソチオシアネート、テトラメチレンジイソチオシアネート、ヘキサメチレンジイソチオシアネート、シクロブタン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネートと1,4-フェニレンジイソシアネートの混合物、p-フェニレンジイソチオシアネート、キシレン-1,4-ジイソチオシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネートと2,6-トルエンジイソシアネートの混合物、キシレン-1,4-ジイソシアネート、キシレン-1,3-ジイソシアネート及びキシレン-1,4-ジイソシアネートとキシレン-1,3-ジイソシアネートの混合物、2,4-ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、2,6-ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、2,4-ヘキサヒドロトルエンジイソシアネートと2,6-ヘキサヒドロトルエンジイソシアネートの混合物、ヘキサヒドロ-1,3-フェニレンジイソシアネート、ヘキサヒドロ-1,4-フェニレンジイソシアネート、ヘキサヒドロ-1,4-フェニレンジイソシアネートとヘキサヒドロ-1,4-フェニレンジイソシアネートの混合物、1,3-ジイソシアナトベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1,3,5-トリイソプロピルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-diメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4”-トリイソシアネート、トルエン-2,4,6-トリイソシアネート、ジメチルジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネートまたは上記化合物の混合物である。
【0040】
少なくとも2つのイソシアネート基またはイソチオシアネート基を含有する重合可能な化合物として、選択の好みは産業規模で製造されるジイソシアネート及びポリイソシアネート、例えば、TDI:トルイレンジイソシアネート(80:20の比での2,4-トルイレンジイソシアネートと2,6-トルイレンジイソシアネートの異性体混合物)、HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート-(1,6)、IPDI:イソフォロンジイソシアネートまたはDMDI:ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネートに与えられる。
【0041】
他の特に好ましい単量体イソシアネート化合物は、例えば、1,4-ジイソシアナトブタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-及び2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,3-及び1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソフォロンジイソシアネート)、4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、2,4-及び2,6-ジイソシアナトメチルシクロヘキサン及びそれらの混合物のようなジイソシアネートである。原則として、芳香族イソシアネート、例えば、トルイレンジイソシアネートまたは4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタンも使用することができる。
【0042】
既知の方法によって上述のジイソシアネートまたはその混合物を修飾することによって調製することができ、且つ、例えば、ウレトジオン基、ウレタン基、イソシアヌレート基、ビウレット基及び/またはアロファネート基を含有するポリイソシアネートも相対的に使用することができる。
【0043】
驚くべきことに、6以上の炭素原子を持つ長鎖脂肪族ジイソシアネートの使用は特に、さらに安定なカプセルシェルまたはカプセル壁の形成につながることが示されている。
【0044】
一層さらに好ましいのは、少なくとも2つの異なる(好ましくは脂肪族及び/または芳香族)ジイソシアネートの組み合わせである。本発明の好ましいさらなる実施形態では、異なる(好ましくは脂肪族)ジイソシアネートは異なる鎖長も有する。基本の実施形態は特に、所望の混合比で長鎖ジイソシアネートと短鎖ジイソシアネートとの混合物を含む。好ましくは、長鎖ジイソシアネートの短鎖ジイソシアネートに対する混合比は4:1~1:4の範囲、特に好ましくは2:1~1:2の範囲である。この文脈での長鎖ジイソシアネートは好ましくは6以上の炭素原子を有するが、一層さらに好ましくはそれらは6~12の炭素原子、特に好ましくは6~8の炭素原子を有する。短鎖ジイソシアネートによって1~5の炭素原子を有するジイソシアネート、好ましくは3~5の炭素原子を有するジイソシアネートを意味する。
【0045】
根本的に異なるジイソシアネートを混合形態で使用したならば、特に、長鎖及び短鎖の脂肪族イソシアネートが選択されたならば、あるいは脂肪族と芳香族のイソシアネート(及び/またはイソチオシアネート)が使用されたならば、特に安定な且つさらに良好な、すなわち、さらに密に分岐した架橋がカプセルシェルの中で作り出されることが示されている。
【0046】
したがって、本明細書に記載されているプロセスを使用して、直鎖及び芳香族のイソシアネートの混合物から、と同様に2つの異なる直鎖イソシアネート子混合物から提供される上手く働くマイクロカプセルを作り出してもよい。そのようなマイクロカプセルは、特に以下の実施形態によって説明されているように芳香化合物カプセルとして使用された場合、傑出した香り保存特性及び関連する優れた芳香化合物放出を示す。
【0047】
したがって、さまざまな重合可能なイソシアネートの組み合わせは特に安定なカプセルシェルまたはカプセル壁につながり、それは次に、例えば、香気物質のカプセル化または芳香化合物のカプセル化の領域におけるカプセルのさらに良好な実績(芳香化合物の放出)に反映される。したがって、原則として、少なくとも2つの異なる重合可能な(好ましくは脂肪族または芳香族の)イソシアネートの組み合わせが本発明では好ましい。
【0048】
芳香化合物または芳香化合物混合物のそのようなマイクロカプセル化はまた香料入り製品における相互作用または高度に揮発性の香気成分の蒸発を減らすまたは完全に防ぐ実現性も提供する。
【0049】
図1~4は得られるマイクロカプセルに対するイソシアネートの鎖長の影響を示す。図1は長鎖ジイソシアネート、この場合、イソシアネートヘキサメチレンジイソシアネートから専ら製造された本発明に係るマイクロカプセルの光学顕微鏡像を示す一方で、図2は短鎖ジイソシアネート、例えば、イソシアネートペンタメチレンジイソシアネートに基づくマイクロカプセルを示す。図2に示すマイクロカプセルはさらに均質な形態を有するが、あまり安定性ではない。
【0050】
図3及び4は本発明に係る混合イソシアネートに基づくマイクロカプセルを示す:図3は50%の短鎖イソシアネートと50%の長鎖脂肪族イソシアネートの混合物(50:50の比でのヘキサメチレンジイソシアネートとペンタメチレンジイソシアネートの混合物)に基づくマイクロカプセルの形態を示す一方で、図4は80%の長鎖ジイソシアネートと20%の芳香族ジイソシアネート(80:20の比でのヘキサメチレンジイソシアネートと4,4’-メチルジフェニレンジイソシアネート)の対応する混合物を示す。
【0051】
概して、混合した脂肪族及び/または芳香族のイソシアネートから調製されたマイクロカプセルはさらに良好な安定性を示すので、本明細書に記載されているプロセスに主として好適であり、したがって、本発明に係る多層マイクロカプセルの調製に好適であり、それは以下の実施形態で説明されるように優れた安定性及び有効成分の放出特性を示す。
【0052】
この文脈で特に好ましいのは、本発明に係る多層マイクロカプセルの製造のための、鎖における1~12の炭素原子、好ましくは3~8の炭素原子、特に好ましくは4~7の炭素原子の鎖長を持つ脂肪族のイソシアネート及び/またはイソチオシアネートの使用である。
【0053】
重合可能な脂肪族イソシアネートはバイオベースの系に対するその化学的関係性に起因してこの文脈では特に好ましい。例えば、リジン及び1,5-ジイソシアナトペンタンの双方は同じ分解産物、1,5-ジアミノペンタンを示すので、環境的な側面を考慮に入れたバイオベースの且つ生分解性のマイクロカプセルの製造での使用に特に好適である。
【0054】
したがって、特に好ましい実施形態では、本発明はさらに、2以上のイソシアネート基を有する少なくとも2つの脂肪族イソシアネートを含む多層マイクロカプセルを調製するプロセスに関するものであり、その際、少なくとも2つのイソシアネートは異なる鎖長を有する。
【0055】
好ましいのはさらに、2以上のイソシアネート/イソチオシアネート基を有する少なくとも2つの脂肪族イソシアネート/イソチオシアネートを含むプロセスであり、その際、少なくとも2つのイソシアネート/イソチオシアネートは異なる鎖長を有する。
【0056】
好ましくは、脂肪族イソシアネート及び/またはイソチオシアネートのうち少なくとも1つは5以上の炭素原子の鎖長を有する。
【0057】
さらなる実施形態では、上述の特性を示す内部非水性相におけるイソシアネート化合物とイソチオシアネート化合物との混合物もしたがって原則として想定される。
【0058】
異なる鎖長の少なくとも2つの脂肪族イソシアネートの選択または脂肪族及び芳香族のイソシアネートの混合物の選択は、異なる反応速度、解離及び架橋の構造に起因して安定性及び実績(香気物質カプセルまたは芳香化合物カプセルの場合の芳香化合物の放出)の有意な増大につながることが観察された。
【0059】
さらに、本明細書に記載されているマイクロカプセルは2以上のイソシアネート基を有する芳香族イソシアネートから調製することができる。
【0060】
したがって、別の実施形態では、本発明は多層マイクロカプセルを調製するプロセスに関するものであり、その際、2以上のイソシアネート基を有するイソシアネート(複数可)は芳香族イソシアネートから成る群から選択される。
【0061】
この場合もまた、幾つかの芳香族イソシアネート(またはイソチオシアネート)の混合物を使用することができる。
【0062】
イソシアネート成分の内部非水性相に対する比率は好ましくは1:50~1:20の間、一層さらに好ましくは1:40~1:30の間である。
【0063】
したがって、内部非水性相は内部非水性相の総重量を基にして、例えば、0.1~10.0重量%、好ましくは0.5~3.0重量%のイソシアネートを含有してもよい。
【0064】
イソシアネート成分の低い比率に起因して、本発明に基づいて、イソシアネートの絶対含量が有効成分(複数可)を含むカプセル全体のたった1/50である多層マイクロカプセルを作り出すことが可能である。したがって、例えば、たった0.6重量%のイソシアネート含量を有する多層マイクロカプセルが本明細書に記載されているプロセスによって作り出されてもよい。しかしながら好ましくは、イソシアネート含量はカプセル壁の約1.1重量%である。
【0065】
多層マイクロカプセルの製造のための本発明に係るプロセスでは、先ず、少なくとも1つの重合可能なイソシアネート及び/またはイソチオシアネートがカプセル化される有効成分(複数可)と一緒に不活性の非水性溶媒または溶媒混合物に溶解される。それによって、本記載の文脈では、カプセル化される有効成分は好ましくは疎水性の有効成分である。そのような有効成分を選択することによって、カプセル化される物質が内部非水性相にあり、外部水性相と混合しないことを保証することができる。これはコア物質として多層マイクロカプセルの内部に効果的に封入される疎水性の有効成分をもたらす。こうして形成される内部非水性相はさらに、有機疎水性の油の性質を特徴とする。
【0066】
内部非水性相に好適な不活性溶媒は、塩素化ジフェニル、塩素化ケロセン、例えば、綿実油、ピーナッツ油、パーム油のような植物油、リン酸トリクレシル、シリコーン油、フタル酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル、部分水素化ターフェニル、アルキル化ビフェニル、アルキル化ナフタレン、ジアリールエーテル、アリールアルキルエーテル及び高級アルキル化ベンゼン、安息香酸ベンジル、ミリスチン酸イソプロピル、と同様にこれら疎水性溶媒の任意の混合物及び単一のまたは複数のこれら疎水性溶媒のケロセン(単数)、ケロセン(複数)及び/またはイソパラフィンとの混合物である。好ましくは、ヒマワリ油のような植物油、トリグリセリド、安息香酸ベンジル、またはミリスチン酸イソプロピルが内部非水性相を提供するための溶媒として使用される。
【0067】
有効成分構成成分の内部非水性相に対する比は好ましくは約1:14である。したがって、内部非水性相は有効成分カプセル全体を基にして、例えば、88~99重量%、好ましくは92~96重量%のカプセル化される有効成分(または有効成分混合物)を含むことができる。この文脈では、カプセルは全体として油のコア、すなわち、有効成分(または有効成分混合物)と、イソシアネート成分及び外部水性相由来の各架橋剤から形成されるカプセル壁との双方を含む。
【0068】
したがって、従来技術のマイクロカプセルとは対照的に、本明細書に記載されているプロセスを使用して有意に大量の有効成分をカプセル化することが可能である。
【0069】
さらに、本明細書に記載されている方法の第1の工程は少なくとも1つの保護コロイドを含む外部水性相を提供することを含む。
【0070】
この目的で、保護コロイドは水性溶媒(好ましくは水)に溶解される。好ましくは、保護コロイドは多糖であり、デンプンが特に好ましい。
【0071】
したがって、本発明の特に好ましい実施形態は多層マイクロカプセルの製造のためのプロセスに関するものであり、その際、保護コロイドは多糖であり、特にデンプンである。
【0072】
保護コロイドは、沈殿反応、すなわち、固相が均質な液相から沈殿する反応にて一次粒子が凝集する(凝集、凝集、軟凝集、凝固)のを防ぐ化合物である。水中油エマルションの製造では、保護コロイドはその疎水性部分でそれ自体を一次粒子に付着させ、その極性を変化させ、すなわち、水性相に向かう親水性の分子部分にする。界面へのこの付着によってそれは界面張力を低下させ、一次粒子の凝集を防ぐ。それはまたエマルションを安定化し、比較的小さな液滴、したがって対応するマイクロカプセルの形成を促進する。
【0073】
本発明に係るプロセスで使用される保護コロイドは好ましくは多糖、特にデンプンであり、特にコムギ、ジャガイモ、トウモロコシ、コメ、タピオカもしくはオーツムギに由来するデンプン、または化学的に、機械的に及び/または酵素的に修飾されたデンプン(コハク酸エステル、酢酸エステル、ギ酸エステル)である、と同様に前述の化合物の混合物である。他の好適な保護コロイドには、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、タンパク質、ゼラチン、ポリオール、ポリフェノール、またはポリビニルピロリドン。ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、例えば、アンモニウム誘導体、及び上記化合物の混合物が挙げられる。
【0074】
しかしながら最も好ましくは、デンプンが保護コロイドとして使用される。したがって、特に好ましいのは多層マイクロカプセルの製造のための保護コロイドとしての(修飾)デンプンの使用である。
【0075】
本明細書で使用される保護コロイドは、一方では重合のもとでそれらはイソシアネート(複数可)と反応して第1のまたはさらなる架橋層を形成するのでカプセル壁またはカプセルシェルを増強し、その不可欠な部分であり、他方ではそれらは保護コロイドとして作用するので固形粒子の凝集を防ぎ、その後形成されるエマルションを安定化させるので小液滴の形成を促進するという点で二重の機能を有する。
【0076】
したがって、少なくとも1つのヒドロキシル基の存在によるデンプンの場合のように、選択される保護コロイドが重合可能な特性を有することは特に好ましい。
【0077】
デンプンは生分解性である、天然に存在する多糖である。本明細書に記載されているイソシアネートとの組み合わせで、本プロセスはこうしてバイオベースの且つ生分解性のカプセルシェルを提供することができる。本明細書に記載されているプロセスでは、したがってデンプンは主としていわゆるバイオ架橋剤として機能する。
【0078】
本発明によれば、保護コロイドまたは使用されるコロイドの量の水性相に対する比は好ましくは1:50~1:10の範囲、さらに好ましくは1:40~1:30の範囲である。
【0079】
したがって、使用される保護コロイドの量または使用される保護コロイドの組み合わせの量は外部水性相の総重量を基にして1~8重量%の範囲、好ましくは2~4重量%の範囲、一層さらに好ましくは3~4重量%の範囲である。
【0080】
水中油エマルションは内部非水性相と外部水性相とを混合することによって形成される。内部非水性相の外部水性相に対する重量比は好ましくは2:1~1:10の範囲、さらに好ましくは1:2~1:4の範囲である。
【0081】
外部水性相における保護コロイドの内部非水性相におけるイソシアネートまたはイソチオシアネートに対する比は1:5~1:2の範囲、好ましくは1:2~1:1の範囲である。
【0082】
液体有効成分の場合のエマルションの形成または固体有効成分の場合の懸濁液の形成、すなわち、内部非水性相または内部油性相の外部水性相または外部親水性相との乳化または懸濁は高乱流または強剪断のもとで行われ、それによって乱流または剪断の強度が得られるマイクロカプセルの直径を決定する。マイクロカプセルの製造は連続的または不連続であることができる。水性相の粘度が上昇するまたは油性相の粘度が低下するにつれて、得られるカプセルのサイズは一般に低下する。
【0083】
多層マイクロカプセルの製造のための本発明に係るプロセスは、例えば、「インライン」技術を使用する強制計測ポンプによって、または従来の分散装置もしくは撹拌付きの乳化装置にて実施することができる。
【0084】
外部水性相と内部非水性相の乳化は乳化タービン(IKA Eurostar20高速撹拌器)によって本発明に係る多層マイクロカプセルの製造のために実施した。本発明に係るプロセスの第1の工程における乳化のプロセスは30秒間~20分間、好ましくは1~4分間の時間にて、2000rpm~5000rpm、好ましくは3250rpm~4500rpmの撹拌速度で有利に実施される。
【0085】
任意で、外部水性相にいわゆる安定剤または乳化助剤を溶解してまたは分散して形成されるエマルションを安定化する、または内部非水性(油性/有機/疎水性)相と外部水性(親水性)相の分離を防ぐことが可能である。
【0086】
エマルションまたは懸濁液への触媒のさらなる添加はカプセル化される乳化されたまたは懸濁された疎水性(有効成分)粒子または液滴の界面における保護コロイドとイソシアネートとの第1の内部コアシェルの形成につながることが驚くべきことに示されている。界面重合はカプセルのコアとしてその内部に有効成分(複数可)を封入するカプセルシェルまたはカプセル壁の形成をもたらすことができる。
【0087】
この第1のカプセル層の形成は、イソシアネート(単数)またはイソシアネート(複数)(及び/または対応するイソチオシアネート)の(好ましくは重合可能な)保護コロイド、好ましくはデンプンとの重付加反応に基づき、ポリウレタン構造に基づくカプセルシェルまたはカプセル壁を形成する。
【0088】
したがって、本発明の好ましい実施形態は多層マイクロカプセルの調製のためのプロセスに関するものであり、その際、第1の架橋層は触媒の存在下で保護コロイドとイソチオシアネートとから形成される。
【0089】
本発明に係るプロセスで添加される触媒は好ましくはジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)である。DABCOはトリエチレンジアミン、二環式3級アミンとしても知られる。DABCOは一般にポリウレタンプラスチックの製造用の触媒として使用される。遊離の電子対を持つ3級アミンは内部非水性相における少なくとも1つの重合可能なイソシアネートと外部水性相における保護コロイドのヒドロキシル基(アルコール基)との間の反応を促進する。
【0090】
触媒がエマルションまたは懸濁液に添加される量はエマルションまたは懸濁液の総重量を基にして0.01~1重量%の範囲、好ましくは0.05~0.2重量%の範囲である。緩慢な重合反応の場合、必要とされる触媒の量はそれに応じて調整することができる。
【0091】
したがって、エマルションまたは懸濁液における触媒の内部非水性相における少なくとも1つのイソシアネートまたはイソチオシアネートに対する比は好ましくは1:20~1:50の範囲である。
【0092】
触媒は先ず水に分散させ、次いで撹拌しながらエマルションまたは懸濁液に加えることが有利であると示されている。
【0093】
触媒は好ましくは、500rpm~2000rpm、特に好ましくは1000rpm~1500rpmの撹拌速度で、20℃~35℃の温度、好ましくは22℃~26℃の温度にて添加される。
【0094】
乳化工程または懸濁工程の後での触媒の添加がカプセルの安定性の有意な増大につながることも驚くべきことだった。この方法で調製されるカプセルは50℃で10日後でさえ有意に高い安定性を示し、乳化または懸濁の前に触媒を水性相に添加する参照カプセルと比べて遊離の香油の顕著な減少を示す。
【0095】
特に安定なカプセルは触媒ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)で調製されてもよい。本明細書に記載されている実施例では、3の少なくとも1つの因子による安定性の増大が観察された。
【0096】
特に好ましい実施形態によれば、したがって触媒はジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)である。
【0097】
したがって、本発明はさらに特に好ましい実施形態では、工程(a3)後の工程(a4)にて触媒の添加を含む多層マイクロカプセルの調製のためのプロセスにも関する。
【0098】
エマルションまたは懸濁液への触媒の添加の後、第1の架橋層が乳化されたまたは懸濁されたカプセル化される有効成分の粒子または液滴の界面で界面重合によって形を成し、それは内部の第1のカプセルシェルを表す一方で、カプセル化される疎水性の有効成分の粒子または液滴は本発明に係るマイクロカプセルのコアを表す。この場合の界面重合はポリイソシアネート(複数可)またはイソチオシアネート(複数可)(またはそれらの混合物)の保護コロイド、すなわち、好ましくはデンプンとの重付加反応に相当し、触媒の存在下で架橋されたポリウレタン系のカプセルシェルを形成する。したがって、触媒の添加は第1の最内側のポリウレタン系シェル層の効率的な形成を引き起こす。
【0099】
本明細書に記載されている重付加反応は一般に、水素原子の結合連鎖及び転位による2以上の官能基を有する個々のポリマーまたはオリゴマーの反応、例えば、ポリイソシアネートまたはポリイソチオシアネートとポリオール(例えば、デンプンのような多糖)の反応を特徴とする。
【0100】
少なくとも1つのポリイソシアネート、好ましくはジイソシアネートの保護コロイド、好ましくはデンプン(ポリオール)との重付加反応は、以下の反応スキームに従ってポリオールのヒドロキシル基(-OH)の、イソシアネート基の炭素・窒素結合(-N=C=O)の炭素原子への付加によっていわゆるウレタン架橋(-NH-CO-C-)の形成をもたらす:
【化1】
【0101】
このように、カプセルに封入された疎水性有効成分(または有効成分の混合物)の拡散を防ぐ親水性境界層、すなわち、カプセルシェルを形成することができる。芳香化合物及び香気物質の場合、例えば、これは、機械的活性化によってのみ効果的に放出される感覚有効成分(芳香化合物の混合物/香油、単独の芳香化合物)の効果的な封入をもたらす。
【0102】
ジイソシアネートのジオールとの反応の場合、架橋されていないポリウレタン鎖のアミノ基に対して過剰のイソシアネートによって対象を絞った方法で空間的に架橋され得る直鎖のポリウレタン鎖がこうして一般的に形成される。
【0103】
架橋する官能基の数が多ければ多いほど、空間的架橋が多く、マイクロカプセルの得られるカプセルシェルまたはカプセル壁がさらに安定である。官能基の数、すなわち、分岐の数に加えて、個々の構成要素の鎖長は機械的特性、すなわち、カプセルの安定性に有意に影響を及ぼす。この文脈で、こうして空間的に特に顕著な架橋の形成を可能にする保護コロイドデンプンの多数のヒドロキシル基が注目されるべきである。
【0104】
さらなる保護コロイドまたはその混合物、と同様に追加の乳化助剤または安定剤は一般に効率的な架橋を確保するのに必要ではないが、一方では不十分な架橋の場合、乳化プロセスまたは懸濁プロセスを改善するために、且つ他方では架橋の密度と比率を増やすために必要に応じて添加することができる。
【0105】
第1の最内側のポリウレタン系架橋層(カプセルシェルまたはカプセル壁の第1の層)の形成によるこの反応は触媒の存在下、かねてから室温で、特に好ましくは25~40℃の間の温度で行われる。
【0106】
イソシアネート系のカプセルシェルはふつう、選択された有効成分をカプセル化するのにのみ使用することができる。したがって、イソシアネートによるカプセル化はアルデヒド、カルボン酸またはエステルの官能性を伴う有効成分をカプセル化するのに好適ではないが、そのような有効成分はアルカリ性pHにて脱プロトン化され、酸化されまたは鹸化されて、得られるエマルションを不安定にするからである。その結果として、ポリウレタン系カプセル化が実施される相対的に中性のpHはそのような有効成分の効果的なカプセル化を可能にする。したがって、本プロセスは選択されるpH範囲に起因して特に穏やかな条件を認めるので、極端なpHは存在しないから、カプセル化される有効成分に関して制限は理論的にもはや存在しない。
【0107】
本発明に係るプロセスの後続の第2の工程では、酸性pHで反応するアミンを加えることによって第2の架橋層を形成する。また、500rpm~2000rpm、特に好ましくは1000rpm~1500rpmの撹拌速度で撹拌しながら、酸性pHで反応するアミンをこの目的のための混合物に添加する。
【0108】
酸性pHで反応するアミンによる第2の架橋が2~7の酸性pH、好ましくは2~6のpH、最も好ましくは3~5のpHで行われると特に安定な架橋が達成される。この目的で、適切なpHを設定し、疎水性有効成分の鹸化の可能性を回避するために、酸、例えば、ギ酸または酢酸を混合物の外部水性相に添加する。これは、pHの早すぎる変動がないので保護コロイドとイソシアネートの薄い且つ未だに全く不安定な第1のシェル層を貫通することを保証する。
【0109】
形を成すこの第2の架橋層はさらに、コア物質、すなわち、有効成分を封入するカプセルシェルを架橋し、外側からそれを封入し、それによってそれをさらに安定化する。
【0110】
さらに、この層は好ましくは疎水性の性質を有し、内部の第1の親水性架橋層を封入するので封入された有効成分の拡散を妨げる追加のバリア層として作用する。
【0111】
一層さらに好ましくは、第2の架橋工程は35℃~50℃の温度で実施される。好ましい温度は40℃~45℃である。
【0112】
酸性pHで反応するアミン、すなわち、第2の架橋剤は塩基性アミノ酸及びそれらの塩酸塩、特にリジン塩酸塩及び/またはオルニチン塩酸塩から成る群から選択され、リジン塩酸塩は架橋剤として特に好ましい。
【0113】
生分解性及び生体適合性という点での環境的な観点から、そのようなアミノ酸系のアミンが特に好ましい。
【0114】
拡散及び類似のプロセスに関して第1の最内側のシェル層は未だに全く不安定なので、酸性pH範囲でこの架橋を行うことは、アルデヒド、カルボン酸またはエステルの官能性を伴う有効成分が少なくとも1つのイソシアネートまたはイソチオシアネートとの架橋の間に鹸化しない塩基性環境における架橋に対して利点を有する。これは、例えば、カプセル化される有効成分(複数可)、例えば、香油が化学的に変えられるのを妨げるので、一方では有効成分の損失が発生し、他方ではエマルションが不安定になる。したがって、疎水性有効成分、特にアルデヒド、カルボン酸またはエステルの官能性を有する疎水性有効成分のカプセル化は可能である。
【0115】
したがって、本発明の好ましい実施形態は第2の/さらなる架橋工程を含む多層マイクロカプセルの調製のためにプロセスに関するものであり、その際、架橋に使用される酸性反応性のアミンは酸性アミノ酸の塩酸塩、特にリジン塩酸塩及び/またはオルニチン塩酸塩である。
【0116】
しかしながら原則として、2以上のアミノ基を有するそれら塩基性アミノ酸及びそれらの塩酸塩すべてがこの第2の架橋工程にて第2の架橋層、すなわち、第2のシェル層を形成するのに好適である。
【0117】
酸性pHで反応するアミンは固体の形態で直接、または水溶液の形態でのいずれかで懸濁液またはエマルションに添加される。
【0118】
アミノ酸塩酸塩は好ましくは5~40%の溶液、さらに好ましくは10~20%の溶液の形態で添加される。
【0119】
好ましくは、本発明に係るプロセスの第2の架橋は撹拌しながら5分~30分の時間、好ましくは10~20分の時間にわたって実施される。
【0120】
酸性pHで反応するアミンのエマルションまたは懸濁液への添加の後、界面重合によって第1の工程ですでにカプセル化された有効成分の粒子または液滴のまわりで第2の架橋層が形を成し、それは内部の第1のカプセルシェルとその中に含有される疎水性有効成分の粒子または液滴とを封入する。界面重合は、少なくとも1つのポリイソシアネートまたはイソチオシアネート(またはそれらの混合物)の酸性pHで反応するアミンとの、すなわち、好ましくはアミノ酸塩酸塩、特にリジン塩酸塩及びオルニチン塩酸塩との重付加反応に相当し、架橋されたポリ尿素系のカプセルシェルを形成する。
【0121】
ポリ尿素結合の形成は、以下の反応スキームに従ってアミンのアミン基(-NH)を対応するイソシアネートに重付加することによって、ポリウレタン結合の形成と同様の方法で実施される。
【化2】
【0122】
未だに存在する任意のデンプンを二次成分としてこの層に組み込むことができ、それはさらに、第2の架橋層の安定性を高める。しかしながら基本的に、第2の架橋層はこの層を定義する主要な成分としてポリ尿素様の架橋に主として基づく。
【0123】
それに続いて、ヒドロキシル基ドナーを付加して空間的に延長された、主としてポリウレタン系の架橋を形成することによってカプセルシェルまたはカプセル壁の既存の物質のまわりで第3の架橋層が形成される。
【0124】
少なくとも1つのイソシアネート及び/またはイソチオシアネートをヒドロキシル基ドナーのヒドロキシル基と反応させることによって第3の空間的に架橋されたシェル層が形成され、その構造は原則としてポリウレタンの第1の最内側の架橋層に類似して導出することができる。
【0125】
特に効率的な、隙間がない且つ安定した架橋を得るために、ヒドロキシル基ドナーとのさらなる架橋が40℃~60℃の間の温度、好ましくは45℃~55℃の間の温度、一層さらに好ましくは45℃~50℃の間の温度で実施される。
【0126】
さらに、さらなる架橋の工程が900rpm~1700rpm、好ましくは1000rpm~1300rpmの撹拌速度にて且つ5~9のpH、好ましくは6~8のpHでヒドロキシル基ドナーを添加することによって実施される。
【0127】
架橋に必要とされるpH値は有機酸、例えば、ギ酸または酢酸によって調整される。しかしながら、先行する重合反応に起因してpHはすでに正しい範囲に移動することが多いので、この工程は任意である。
【0128】
この文脈では、水性形態でのヒドロキシル基ドナーの添加は特に安定な架橋をもたらすので、特に安定なカプセルシェルまたはカプセル壁をもたらすことが見いだされている。水溶液におけるヒドロキシル基ドナーの濃度は好ましくは10%~70%であり、一層さらに好ましくは水溶液におけるヒドロキシル基ドナーの濃度は40%~60%である。
【0129】
したがって、本明細書に記載されている架橋は好ましくは、カプセル化される少なくとも1つの有効成分を含むコアのまわりで第3の定義された架橋層をもたらす。
【0130】
ヒドロキシル基ドナーは好ましくは、40℃を上回る温度で水溶性が良好から非常に良好である2以上のヒドロキシル官能基を含む少なくとも1つのポリオールであり、特にヒドロキシル基ドナーはグリセロール、プロピレングリコール及び/または1,3,5-トリヒドロキシベンゼンから成る群から選択される。
【0131】
驚くべきことに、そのような追加の主としてポリウレタンに基づく層を有する本発明に係るカプセルはそのような追加の安定化層がないマイクロカプセルよりも有意にさらに安定な特性を示すことが観察された。さらに、そのような多層マイクロカプセル(本発明に係る)は有効成分の有意にさらに効率的な捕捉を示す。
【0132】
先行するポリウレタン系及びポリ尿素系の架橋層の形成のために前述した撹拌速度に従って撹拌しながらヒドロキシル基ドナーを添加する。
【0133】
したがって、好ましい実施形態では、本発明は多層マイクロカプセルを調製するプロセスに関するものであり、その際、ヒドロキシル基ドナーは2以上のヒドロキシル官能基を有するポリオール、特にグリセロール、プロピレングリコール及び/または1,3,5-トリヒドロキシベンゼンである。
【0134】
保護コロイドの架橋構造は微量成分としてこの層にも見いだされてもよい。
【0135】
任意で、多層マイクロカプセルの調製のための本プロセスは、撹拌しながらアミノ酸、特に芳香族アミノ酸を添加することによる、さらに好ましくはアミノ酸ヒスチジン及び/またはトリプトファンを添加することによるさらなる架橋工程を含む。
【0136】
驚くべきことに、芳香族アミノ酸に基づく架橋層は、有効成分がもはやカプセル壁を通って拡散しないような方法で有効成分の拡散に影響を及ぼし、それは今度はカプセルの安定性のさらなる増大につながるが示されている。
【0137】
アミノ酸、すなわち、アミンによるこのさらなる(任意の)架橋が5~9のpH、好ましくは6~8のpHで実施されると、カプセルシェルの形成について特に有利な結果が得られる。
【0138】
任意で、架橋に必要とされるpH値は水酸化ナトリウム溶液を添加することによって調整される。
【0139】
一層さらに好ましくは、さらなる任意の架橋のこの工程は50℃~70℃、好ましくは55℃~65℃の温度で実施される。
【0140】
対応するアミノ酸、特に芳香族アミノ酸は好ましくは芳香系にて5~6の炭素原子と少なくとも1つの窒素原子の芳香環を有し、同様に2以上のアミノ基またはイミン基を有し、それは特にヒスチジン及び/またはトリプトファンである。
【0141】
水性形態での対応するアミノ酸の添加は特に顕著で且つ強いポリ尿素系の架橋につながるので、得られるカプセルの安定性に決定的に寄与する。水溶液における(芳香族)アミノ酸の濃度は好ましくは10%~70%、一層さらに好ましくは40%~60%である。
【0142】
本発明に係るプロセスにおけるさらなる/追加の任意の架橋は500rpm~2000rpm、好ましくは1000rpm~1500rpmの撹拌速度で約5分~30分の時間の間に、好ましくは10分~20分以内に行われる。
【0143】
あるいは、この追加の任意の架橋工程はアルカリ性pHで反応する少なくとも1つのアミンを添加することによって以下に記載されている架橋工程の後で実施されることが可能である。
【0144】
したがって、多層マイクロカプセルを調製するためのプロセスを含む本明細書に記載されている本発明はさらに、以前記載されている架橋層のまわりでの定義されたポリ尿素系の架橋層の形成によって多層マイクロカプセルを得るためにアルカリ性pHで反応する少なくとも1つのアミンを添加することによる少なくとも第4の架橋層を含む。その層は部分的に混ぜ合わせられてもよい。さらに、層すべてが架橋された保護コロイドの部分をこうして含有することができる。
【0145】
アルカリ性pHで反応するアミンとのこの架橋が7~11のアルカリ性pH、好ましくは8~9のアルカリ性pHで発生する場合、特に安定なカプセルが得られた。
【0146】
一層さらに好ましくは、少なくとも第4の架橋の工程は撹拌しながら、60℃~80℃の温度、好ましくは65℃~75℃、特に好ましくは60℃~70℃の温度で実施される。
【0147】
アルカリ性pHで反応するアミンは好ましくはグアニジニウム基ドナーであり、ジアミン、トリアミン及びポリアミン、アルギニン、塩酸グアニジニウム及び/または炭酸グアニジニウムから成る群から選択される。しかしながら、少なくとも第4の架橋層を形成するための架橋剤としては炭酸グアニジニウムが最も好ましい。
【0148】
撹拌しながらの水性形態でのグアニジニウム基ドナーの添加は特に安定なカプセルシェルまたはカプセル壁の形成をもたらす。水溶液におけるグアニジニウム基ドナーの濃度は好ましくは1%~50%、さらに好ましくは10%~25%である。このプロセスで使用される撹拌速度は5分間~30分間、好ましくは10分間~20分間で有利には500rpm~2000rpmの間、好ましくは1000rpm~1500rpmの間である。
【0149】
好ましくは、懸濁液またはエマルションは次に7~8のpHを有する。任意で、さらなる架橋に必要とされるpH値は、例えば、ギ酸もしくは酢酸によって、または水酸化ナトリウム溶液によって調整される。
【0150】
この意味では、本発明の好ましい実施形態は少なくとも第4の架橋層の形成を含む、多層マイクロカプセルの調製のためのプロセスに関するものであり、その際、アルカリ性で反応するアミンはグアニジニウム基ドナーであり、特にアルギニン、炭酸グアニジニウム及び/または塩酸グアニジニウムである。
【0151】
さらに、好ましい実施形態では、本発明はアミン官能基を有するアミンを添加することによってマイクロカプセルの架橋の終止が形成される硬化の前の追加の任意の工程を含むプロセスに関する。
【0152】
本明細書に記載されている機能的なアミン基を持つアミンは好ましくは、対応するアミノ酸、特にグリシン、アスパラギン酸、システイン及び/またはプロリンであり、最後の架橋層を完了させるのに役立ち、空間的な架橋を示さないが、最後の最外架橋層に対応する構成要素を組み込むことによって局所的にネットワークを完了させる。
【0153】
硬化の前の追加の任意の工程における最外架橋層またはマイクロカプセルの終止はそれによって、6~11のpH、好ましくは7~9のpHにて任意で75℃を上回る温度で、好ましくは75℃~85℃の温度で実施されて反応時間を短縮する。
【0154】
この場合、最終のアミンは好ましくは撹拌しながら、好ましくは1%~50%の濃度で、好ましくは10%~25%の濃度で水性形態にて添加される。対応する架橋剤の先行する添加に類似して、撹拌はそれによって500rpm~2000rpm、好ましくは1000rpm~1500rpmにて1~10分間の間、好ましくは2~5分間の間実施される。
【0155】
したがって、この文脈では、本発明のさらに好ましい実施形態は、マイクロカプセルを終止するための硬化の前の追加の任意の工程で使用されるアミンがアミノ酸、特にアミノ基を含むアミノ酸、さらに好ましくはアラニン、グリシン、アスパラギン酸、システイン及び/またはプロリンである本発明に係るプロセスに関する。
【0156】
カプセル壁またはシェルを完成させるこの追加の工程は驚くべきことに、一層さらに安定で且つ効率的に閉じ込めるマイクロカプセルをもたらす一方で同時に必要とされるシェル材料全体を減らす。
【0157】
架橋の完了の後、コーティングされたマイクロカプセルは水性分散液の形態で粗製のマイクロカプセルとして存在し、カプセルシェルまたはカプセル壁は未だに軟らかく、且つ柔軟である。
【0158】
これに続いて、したがって、未だに軟らかく、柔軟で且つ不安定な多層マイクロカプセルのシェルまたは壁を硬化し、こうしてそれらに安定性を付与するために得られた多層マイクロカプセルを追加の硬化プロセスに供する必要がある。このプロセスで形成される多層カプセルの最後の架橋工程または最終工程の後での硬化は約80℃の温度にてふつう60~240分間実施される。さらに、硬化のために外部水性相に物質を添加することは有利である。これらの物質は、例えば、天然の植物性なめし剤である。
【0159】
さらに、驚くべきことに、段階的加熱と比べて80℃でのマイクロカプセルの直接硬化の方がさらに安定なカセットをもたらすことが示されている。
【0160】
本発明及びポリウレタン系の層及びポリ尿素系の層を含む多層マイクロカプセルを製造するための本明細書に記載されているプロセスは特に、個々の架橋工程を実施するための異なるpH範囲の選択を特徴とする。漸増する温度範囲との組み合わせで、個々の且つ定義された層を作り出すことがこうして可能である。層間の組成移行は厳しくてもよく、すなわち、層は物質的に区切られ、最大限の範囲に定義される。しかしながら、原則として本明細書に記載されている架橋プロセスは室温で実施することもできるが、広い勾配、低い安定性及び長い反応時間をもたらす。
【0161】
その結果として、本明細書に記載されているプロセスによって、少なくとも1つの疎水性有効成分を含むコアのまわりで定義されたポリウレタン系の架橋層とポリ尿素系の架橋層を交互に層にし、それによって安定な多層のカプセル壁またはカプセルシェルを作り出すことが可能である。原則として、ポリ尿素またはポリウレタンの結合は各層の主成分を形成する。さらに、保護コロイド(例えば、デンプン)はポリウレタン結合を介して個々の層に存在することもできる。個々の交互層間の部分的な架橋はある程度まで無視することはできない。それにもかかわらず、本方法によって、以下の層:ポリウレタン構造を含むまたはそれから成る第1の層、ポリ尿素構造を含むまたはそれから成る第2の層、ポリウレタン構造を含むまたはそれから成る第3の層、及びポリ尿素構造を含むまたはそれから成る少なくとも第4の層が基本的に形成される。
【0162】
この文脈で、第1の最内側カプセル層はポリウレタン系の架橋マトリクスから本質的に作り出され(工程a)、それに続いて本質的にポリ尿素系の第2の架橋層が作り出される(工程b)。第3の層は再び好ましくはポリウレタン系で架橋される(工程c)一方で、少なくとも第4の最外層は好ましくは本質的にポリ尿素系の架橋系を含む(工程d)。任意で、さらなる追加の架橋層または最終の架橋層、例えば、追加のさらなる架橋に起因して安定性の追加の増大を提供する、さらなるアミン、例えば、アミノ酸を架橋することによる、例えば、ポリ尿素系の架橋層が想定される。
【0163】
その後、このように形成された多層化した且つ硬化したマイクロカプセルは反応溶液から分離され、必要に応じて乾燥される。
【0164】
硬化の後、本発明に係るプロセスによって作り出されたマイクロカプセルは水における分散物として存在し、それはマイクロカプセル分散物とも呼ばれる。この形態でマイクロカプセルは基本的にすでに販売の用意ができているが、保存目的では、それを乾燥させることが望ましい。好適な乾燥プロセスには凍結乾燥または噴霧乾燥が挙げられる。
【0165】
さらに、本発明は、特異的に触媒されるメカニズムを介して好ましくは主成分としてのアミノ酸がデンプン及びイソシアネートと架橋されるので生体適合性ポリマーに基づくバイオベースで且つ生分解性のマイクロカプセルの製造を可能にすることを特徴とする。
【0166】
概して、本明細書に記載されているプロセスは、複数の且つさらに効率的な架橋層に起因してシェル物質の有意な節約を許容するのでカプセルの安定性に悪影響を及ぼすことなく従来技術のカプセルと比べて必要とされるイソシアネート含量をさらに減らすことを可能にするマイクロカプセルの製造を認める。これは、一方では個々の層のさらに効率的で且つ定義された架橋によって、他方では個々のカプセルシェル層の一般に交互の/異なる組成によって正当化され得る。
【0167】
効率的な空間架橋に起因して、本発明に係る多層マイクロカプセルはこうして従来技術のカプセルと比べて全体的に有意に少ないイソシアネート含量を有する。本明細書に記載されているマイクロカプセルのイソシアネート絶対含量は有効成分(複数可)を含むカプセル全体のたった1/50である。この意味で、イソシアネートは直接、カプセル壁またはカプセルシェルの構成成分を形成しないが、単に、例えば、有意に大きいデンプン分子間の架橋剤として作用する。原料が定量的に反応すると想定すると、100%壁物質の場合、壁物質の正確に1/5はイソシアネートから成り、それらが表される少量のせいでこれらは架橋剤としか見なすことができないと想定することができる。
【0168】
純粋なポリウレタン化合物に基づく従来技術のカプセルと比べて、以下の実施形態の実施例で説明されているように、カプセルシェルのカプセル全体の容量に対する比が1対14から1対21に減らされてもよいので、必要とされるシェル物質全体が安定性を犠牲にすることなく減らされてもよいマイクロカプセルを作り出すことは、定義された温度及び時間にて対象を絞った沈殿物を含む本明細書に記載されているプロセスによって可能である。従来技術(ポリ尿素カプセル)におけるカプセル壁物質の比率がカプセル全体(有効成分とカプセル壁物質とから成るカプセル)と比べて6.8重量%である一方で、本明細書に記載されている多層マイクロカプセルでは、カプセル壁物質の4.4重量%までの削減は追加の安定性の増大にもかかわらず可能である。これは壁物質の36%の削減に相当する。したがって、本明細書に記載されているプロセスは、必要とされるカプセル壁物質の量、特に必要とされるイソシアネートの量が従来技術のカプセルと比べて有意に減らされてもよい一方で、同時にカプセル化される有効成分(有効成分の混合物)の量は減らす必要がない安定なマイクロカプセルの製造を可能にする。
【0169】
さらに、外見上イソシアネート含量が減るので、外見上架橋の程度が低下するにもかかわらず、従来技術のカプセルと比べて感覚的実績(芳香化合物の放出)で有意な改善を示す安定なマイクロカプセルを作り出すことが驚くべきことに可能だった。
【0170】
保護コロイド、好ましくはデンプンもまた好ましくは二次成分として他の定義された架橋層のそれぞれに含めることもでき、各ポリウレタン系またはポリ尿素系のネットワークに組み込むこともできる。デンプンの構造に起因して、層を織り交ぜるのでカプセルシェルまたはカプセル壁の形態で安定な架橋マトリクスを形成するさらに分岐した、空間的に拡大した及びさらに安定化したネットワークを生成することはこうして可能である。各層におけるこの二次成分はさらに良好な空間的架橋につながる。
【0171】
保護コロイド、例えば、デンプンは第1のポリウレタン様架橋の必須の成分を形成し、それはかねて25℃~40℃の温度での触媒との反応によって達成される。ポリオールの触媒との反応はエマルションの高い安定性につながる。驚くべきことに、ポリオールから多糖へのさらなる展開はさらに高い安定性につながる一方で同時に、エマルションの安定化因子としての及び反応パートナーとしての保護コロイドの二重機能は、例えば、ポリビニルアルコールと比べてさらに改善されることが示されている。
【0172】
前に言及されたように、本発明に係るマイクロカプセルはそのコアにて好ましくは疎水性の特性を有するコア物質としてカプセル化される少なくとも1つの有効成分を含む。
【0173】
原則として、本発明に係る多層マイクロカプセルの製造のためのコア物質としてマイクロカプセルにおける封入に好適な任意の物質を使用することができる。好ましくは、疎水性の、水不溶性のまたは水非混和性の液体または固体と同様に懸濁液をカプセル化される物質と見なすことができる。本記載の文脈では、「疎水性有効成分」という用語はカプセル化される物質が内部非水性相にあり、外部水性相とは混合しないことを意味する。
【0174】
本発明の特に好ましいさらなる実施形態では、本発明に係るマイクロカプセルは、それらが少なくとも1つの疎水性有効成分、特に疎水性の香気物質または芳香化合物または疎水性の芳香オイルまたは香油(香気物質の混合物または芳香化合物の混合物)、殺虫剤、殺生物剤、殺昆虫剤;防虫剤、食品添加剤、化粧品有効成分、医薬有効成分、着色剤、農薬、着色剤、発光塗料、光学的光沢剤、溶媒、ワックス、シリコーン油、潤滑剤の群に由来する物質;と同様に前述の有効成分の混合物のコア物質を含むような方法で構成され、すなわち、コア物質が十分に耐水性である限り、本発明に係るマイクロカプセルはマイクロカプセルの形態で使用することができ、すなわち、コア物質が水に十分に不溶性である限り、または水相と混合しない限り、そうでなければエマルションは生じることができず、液滴表面へのポリマーの沈殿は起きることができない。
【0175】
本発明の好ましい変形では、疎水性の香気物質または芳香オイルまたは芳香化合物または芳香化合物混合物(香油)、アロマまたは生体起源の成分は有効成分として特に好適である。
【0176】
本発明の好ましい実施形態では、本発明に係るマイクロカプセルは疎水性の単独の香気物質または単独の芳香化合物の形態でコア物質を有し、その際、コア物質は以下の群:
・例えば、3-カレン;α-ピネン;β-ピネン;α-テルピネン;γ-テルピネン;p-シメン;ビサボレン;カムフェン;カリオフィレン;セドレン;ファルネセン;リモネン;ロンギフォレン;ミルセン;オシメン;バレンス;(E,Z)-1,3,5-ウンデカトリエンのような炭化水素;
・例えば、ヘキサノール;オクタノール;3-オクタノール;2,6-ジメチルヘプタノール;2-メチルヘプタノール;2-メチルオクタノール;(E)-2-ヘキセノール;(E)-及び(Z)-3-ヘキセノール;1-オクテン-3-オール;3,4,5,6,6-ペンタメチル-3,4-ヘプテン-2-オールと3,5,6,6-テトラメチル-4-メチレンヘプタン-2-オールの混合物;(E,Z)-2,6-ノナジエノール;3,7-ジメチル-7-メトキシオクタン-2-オール;9-デセノール;10-ウンデセノール;4-メチル-3-デセン-5-オールのような脂肪族アルコール;
・例えば、ヘキサナール;ヘプタナール;オクタナール;ノナナール;デカナール;ウンデカナール;ドデカナール;トリデカナール;2-メチルオクタナール;2-メチルノナナール;(E)-2-ヘキセナール;(Z)-4-ヘプテナール;2,6-ジメチル-5-ヘプテナール;10-ウンデセナール;(E)-4-デセナール;2-ドデセナール;2,6,10-トリメチル-5,9-ウンデカジエナール;ヘプタナールジエチルアセタール;1,1-ジメトキシ-2,2,5-トリメチル-4-ヘキセン;シトロネリルオキシアセトアルデヒド;のような脂肪族アルデヒド及びそのアセタール;
・例えば、2-ヘプタノン;2-オクタノン;3-オクタノン;2-ノナノン;5-メチル-3-ヘプタノン;5-メチル-3-ヘプタノンオキシム;2,4,4,7-テトラメチル-6-オクテン-3-オンのような脂肪族ケトン及びそのオキシム;
・例えば、3-メチルチオヘキサノール;酢酸3-メチルチオヘキシル;3-メルカプトヘキサノール;酢酸3-メルカプトヘキシル;酪酸3-メルカプトヘキシル;酢酸3-アセチルチオヘキシル;1-メンテン-8-チオールのような脂肪族イオウ含有化合物;
・例えば、2-ノネン酸ニトリル;2-トリデセン酸ニトリル;2,12-トリデカジエン酸ニトリル;3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン酸ニトリル;3,7-ジメチル-6-オクテン酸ニトリルのような脂肪族ニトリル;
・例えば、ギ酸(E)-及び(Z)-3-ヘキセニル;アセト酢酸エチル;酢酸ヘキシル;酢酸3,5,5-トリメチルヘキシル;酢酸3-メチル-2-ブテニル;酢酸(E)-2-ヘキセニル;酢酸(E)-及び(Z)-3-ヘキセニル;酢酸オクチル;酢酸3-オクチル;酢酸1-オクテン-3-イル;酪酸エチル;酪酸ブチル;酪酸イソアミル;酪酸ヘキシル;イソ酪酸(E)-及び(Z)-3-ヘキセニル;クロトン酸ヘキシル;イソ吉草酸エチル;2-メチルペンタン酸エチル;ヘキサン酸エチル;ヘキサン酸アリル;ヘプタン酸エチル;ヘプタン酸アリル;オクタン酸エチル;(E,Z)-2,4-デカジエン酸エチル;2-オクチン酸メチル;2-ノニン酸メチル;2-イソアミルオキシ酢酸アリル;3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン酸メチルのような脂肪族カルボン酸及びそれらのエステル;
・例えば、シトロネロール;ゲラニオール;ネロール;リナロール;ラバデュロール;ネロリドール;ファルネソール;テトラヒドロリナロール;テトラヒドロゲラニオール;2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール;2,6-ジメチルオクタン-2-オール;2-メチル-6-メチレン-7-オクテン-2-オール;2,6-ジメチル-5,7-オクタジエン-2-オール;2,6-ジメチル-3,5-オクタジエン-2-オール;3,7-ジメチル-4,6-オクタジエン-3-オール;3,7-ジメチル-1,5,7-オクタトリエン-3-オール;2,6-ジメチル-2,5,7-オクタトリエン-1-オール;及びそれらのギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、イソ酪酸塩、酪酸塩、イソバレリアン酸塩、ペンタン酸塩、ヘキサン酸塩、クロトン酸塩、チグリン酸塩、3-メチル-2-ブタン酸塩のような非環式テルペンアルコール;
・例えば、ゲラニアル;ネラル;シトロネラール;7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナール;7-メトキシ-3,7-ジメチルオクタナール;2,6,10-トリメチル-9-ウンデセナール;ゲラニルアセトン;及びゲラニアル、ネラル、7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナールのジメチル及びジエチルアセタールのような非環式テルペンアルデヒド及びケトン;
・例えば、メントール;イソプレゴール;α-テルピネオール;テルピネノール-4;メンタン-8-オール;メンタン-1-オール;メンタン-7-オール;ボルネオール;イソボルネオール;酸化リナロール;ノポール;セドロール;アムブリノール;ベチベロール;グアイオール;ならびにそれらのギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、イソ酪酸塩、酪酸塩、イソバレリアン酸塩、ペンタン酸塩、ヘキサン酸塩、クロトン酸塩、チグリン酸塩及び3-メチル-2-ブテン酸塩のような環状テルペンアルコール;
・例えば、メントン;イソメントン;8-メルカプトメンタン-3-オン;カルボン;ショウノウ;フェンコン;α-イオノン;β-イオノン;α-n-メチルイオノン;β-n-メチルイオノン;α-イソメチルイオノン;β-イソメチルイオノン;α-イロン;β-イロン;α-ダマセノン、β-ダマセノン;γ-ダマセノン;δ-ダマセノン;1-(2,4,4-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン;1,3,4,6,7,8a-ヘキサヒドロ-1,1,5,5-テトラメチル-2H-2,4a-メタノナフタレン-8(5H)-オン;ノートカトン;ジヒドロノートカトン;α-シネンサール;β-シネンサール;アセチル化シダーウッド油(メチルセドリルケトン)のような環状テルペンアルデヒド及びケトン;
・例えば、4-tert-ブチルシクロヘキサノール;3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール;3-イソカンフィルシクロヘキサノール;2,6,9-トリメチル-(Z2,Z5,E9)-シクロドデカトリエン-1-オール;2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オールのような環状アルコール;
・例えば、α-3,3-トリメチルシクロヘキシルメタノール;2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペント-1-イル)ブタノール;2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペント-1-イル)-2-ブテン-1-オール;2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペント-1-イル)-2-ブテン-1-オール;3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペント-1-イル)-ペンタン-2-オール;3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペント-1-イル)-4-ペンテン-2-オール;3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペント-1-イル)-4-ペンテン-2-オール;1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ペンタン-3-オール;1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン-3-オールのような脂環式アルコール;
・例えば、シネオール;セドリルメチルエーテル;シクロドデシルメチルエーテル;(エトキシメトキシ)シクロドデカン;α-セドレンエポキシド;3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1b]フラン;3a-エチル-6,6,9a-トリメチルドデカヒドロナフト[2,1b]フラン;1,5,9-トリメチル-13-オキサビシクロ[10.1.0]トリデカ-4,8-ジエン;ローズオキシド;2-(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-5-メチル-5-(1-メチルプロピル)-1,3-ジオキサンのような環状及び脂環式のエーテル;
・例えば、4-tert-ブチルシクロヘキサノン;2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン;2-ヘプチルシクロペンタノン;2-ペンチルシクロペンタノン;2-ヒドロキシ-3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン;3-メチル-cis-2-ペンテン-1-イル-2-シクロペンテン-1-オン;3-メチル-2-ペンチル-2-シクロペンテン-1-オン;3-メチル-4-シクロペンタデセノン;3-メチル-5-シクロペンタデセノン;3-メチルシクロペンタデカノン;4-(1-エトキシビニル)-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサノン;4-tert-ペンチルシクロヘキサノン;5-シクロヘキサデセン-1-オン;6,7-ジヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4(5H)-インダノン;9-シクロヘプタデセン-1-オン;シクロペンタデカノン;シクロヘキサデカノンのような環状ケトン;
・例えば、2,4-ジメチル-3-シクロヘキセンカルボアルデヒド;2-メチル-4-(2,2,6-トリメチル-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテナール;4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセンカルボアルデヒド;4-(4-メチル-3-ペンテン-1-イル)-3-シクロヘキセンカルボアルデヒドのような脂環式アルデヒド;
・例えば、1-(3,3-ジメチルシクロヘキシル)-4-ペンテン-1-オン;1-(5,5-ジメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン;2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-2-ナフタルエニルメチルケトン;メチル-2,6,10-トリメチル-2,5,9-シクロドデカトリエニルケトン;tert-ブチル-(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)ケトンのような脂環式ケトン;
・例えば、酢酸2-tert-ブチルシクロヘキシル;酢酸4-tert-ブチルシクロヘキシル;酢酸2-tert-ペンチルシクロヘキシル;酢酸4-tert-ペンチル-シクロヘキシル;酢酸デカドロ-2-ナフチル;酢酸3-ペンチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル;酢酸デカヒドロ-2,5,5,8a-テトラメチル-2-ナフチル;酢酸4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5、または、6-インデニル;プロピオン酸4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5、または6-インデニル;イソ酪酸4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5、または6-インデニル;酢酸4,7-メタノオクタヒドロ-5、または6-インデニルのような環状アルコールのエステル;
・例えば、3-シクロヘキシルプロピオン酸アリル;シクロヘキシルオキシ酢酸アリル;ジヒドロジャスモン酸メチル;ジャスモン酸メチル;2-ヘキシル-3-オキソシクロペンタンカルボン酸メチル;2-エチル-6,6-ジメチル-2-シクロヘキセンカルボン酸エチル;2,3,6,6-テトラメチル-2-シクロヘキセンカルボン酸エチル;2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-酢酸エチルのような脂環式カルボン酸のエステル;
・例えば、スチレン及びジフェニルメタンのような芳香族炭化水素;
・例えば、ベンジルアルコール;1-フェニルエチルアルコール;2-フェニルエチルアルコール;3-フェニルプロパノール;2-フェニルプロパノール;2-フェノキシエタノール;2,2-ジメチル-3-フェニルプロパノール;2,2-ジメチル-3-(3-メチルフェニル)プロパノール;1,1-ジメチル-2-フェニルエチルアルコール;1,1-ジメチル-3-フェニルプロパノール;1-エチル-1-メチル-3-フェニルプロパノール;2-メチル-5-フェニルペンタノール;3-メチル-5-フェニルペンタノール;3-フェニル-2-プロペン-1-オール;4-メトキシベンジルアルコール;1-(4-イソプロピルフェニル)エタノールのような芳香脂肪族アルコール;
・例えば、酢酸ベンジル;プロピオン酸ベンジル;イソ酪酸ベンジル;イソ吉草酸ベンジル;酢酸2-フェニルエチル;プロピオン酸2-フェニルエチル;イソ酪酸2-フェニルエチル;イソ吉草酸2-フェニルエチル;酢酸1-フェニルエチル;酢酸α-トリクロロメチルベンジル;酢酸α,α-ジメチルフェニルエチル;酪酸α,α-ジメチルフェニルエチル;酢酸シンナミル;イソ酪酸2-フェノキシエチル;酢酸4-メトキシベンジルのような芳香脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸のエステル;
・例えば、2-フェニルエチルメチルエーテル;2-フェニルエチルイソアミルエーテル;2-フェニルエチル-1-エトキシエチルエーテル;フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール;フェニルアセトアルデヒドジエチルアセタール;ヒドロアトロパ酸アルデヒドジメチルアセタール;フェニルアセトアルデヒドグリセロールアセタール;2,4,6-トリメチル-4-フェニル-1,3-ジオキサン;4,4a,5,9b-テトラヒドロインデノ[1,2-d]-m-ジオキシン;4,4a,5,9b-テトラヒドロ-2,4-ジメチルインデノ[1,2-d]-m-ジオキシンのような芳香脂肪族エーテル;
・例えば、ベンズアルデヒド;フェニルアセトアルデヒド;3-フェニルプロパナール;ヒドロアトロパ酸アルデヒド;4-メチルベンズアルデヒド;4-メチルフェニルアセトアルデヒド;3-(4-エチルフェニル)-2,2-ジメチルプロパナール;2-メチル-3-(4-イソプロピルフェニル)プロパナール;2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール;3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール;シンナムアルデヒド;α-ブチルシンナムアルデヒド;α-アミルシンナムアルデヒド;α-ヘキシルシンナムアルデヒド;3-メチル-5-フェニルペンタナール;4-メトキシベンズアルデヒド;4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド;4-ヒドロキシ-3-エトキシベンズアルデヒド;3,4-メチレンジオキシベンズアルデヒド;3,4-ジメトキシベンズアルデヒド;2-メチル-3-(4-メトキシフェニル)プロパナール;2-メチル-3-(4-メチレンジオキシフェニル)プロパナールのような芳香族及び芳香脂肪族のアルデヒド;
・例えば、アセトフェノン;4-メチルアセトフェノン;4-メトキシアセトフェノン;4-tert-ブチル-2,6-ジメチルアセトフェノン;4-フェニル-2-ブタノン;4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン;1-(2-ナフタルエニル)エタノン;ベンゾフェノン;1,1,2,3,6-ヘキサメチル-5-インダニルメチルケトン;6-tert-ブチル-1,1-ジメチル-4-インダニルメチルケトン;1-[2,3-ジヒドロ-1,1,2,6-テトラメチル-3-(1-メチルエチル)-1H-5-インデニル]エタノン;5’,6’,7’,8’-テトラヒドロ-3’,5’,5’,6’,8’,8’-ヘキサメチル-2-アセトナフトンのような芳香族及び芳香脂肪族のケトン;
・例えば、安息香酸;フェニル酢酸;安息香酸メチル;安息香酸エチル;安息香酸ヘキシル;安息香酸ベンジル;酢酸メチルフェニル;酢酸エチルフェニル;酢酸ゲラニルフェニル;酢酸フェニルエチルフェニル;桂皮酸メチル;桂皮酸エチル;桂皮酸ベンジル;桂皮酸フェニルエチル;桂皮酸シンナミル;酢酸アリルフェノキシ;サリチル酸メチル;サリチル酸イソアミル;サリチル酸ヘキシル;サリチル酸シクロヘキシル;サリチル酸cis-3-ヘキセニル;サリチル酸ベンジル;サリチル酸フェニルエチル;2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチル安息香酸メチル;3-フェニルグリシド酸エチル;3-メチル-3-フェニルグリシド酸エチルのような芳香族及び芳香脂肪族のカルボン酸及びそのエステル;
・例えば、2,4,6-トリニトロ-1,3-ジメチル-5-tert-ブチルベンゼン;3,5-ジニトロ-2,6-ジメチル-4-tert-ブチルアセトフェノン;桂皮酸ニトリル;5-フェニル-3-メチル-2-ペンテン酸ニトリル;5-フェニル-3-メチルペンタン酸ニトリル;アントラニル酸メチル;N-メチルアントラニル酸メチル;アントラニル酸メチルの7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナール、2-メチル-3-(4-tert-ブチル-フェニル)プロパナールまたは2,4-ジメチル-3-シクロヘキセンカルボアルデヒドとのSchiff塩基;6-イソプロピルキノリン;6-イソブチルキノリン;6-sec-ブチルキノリン;インドール;スカトール;2-メトキシ-3-イソプロピルピラジン;2-イソブチル-3-メトキシピラジン;4-(4,8-ジメチル-3,7-ノナジエニル)-ピリジンのような窒素含有芳香族化合物;
・例えば、タラゴール;アネトール;ユーゲノール;ユーゲニルメチルエーテル;イソユーゲノール;イソユーゲニルメチルエーテル;チモール;カルバクロール;ジフェニルエーテル;β-ナフチルメチルエーテル;β-ナフチルエチルエーテル;β-ナフチルイソブチルエーテル;1,4-ジメトキシベンゼン;酢酸ユーゲニル;2-メトキシ-4-メチルフェノール;2-エトキシ-5-(1-プロペニル)フェノール;酢酸p-クレシルフェニルのようなフェノール、フェニルエーテル及びフェニルエステル;
・例えば、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-2H-フラン-3-オン;2-エチル-4-ヒドロキシ-5-メチル-2H-フラン-3-オン;3-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピラン-4-オン;2-エチル-3-ヒドロキシ-4H-ピラン-4-オンのような複素環化合物;
・例えば、1,4-オクタノリド;3-メチル-1,4-オクタノリド;1,4-ノナノリド;1,4-デカノリド;8-デセン-1,4-オリド;1,4-ウンデカノリド;1,4-ドデカノリド;1,5-デカノリド;1,5-ドデカノリド;1,15-ペンタデカノリド;cis及びtrans-11-ペンタデセン-1,15-オリド;cis及びtrans-12-ペンタデセン-1,15-オリド;1,16-ヘキサデカノリド;9-ヘキサデセン-1,16-オリド;10-オキサ-1,16-ヘキサデカノリド;11-オキサ-1,16-ヘキサデカノリド;12-オキサ-1,16-ヘキサデカノリド;エチレン-1,12-ドデカンジオエート;エチレン1,13-トリデカンジオエート;クマリン;2,3-ジヒドロクマリン;オクタヒドロクマリンのようなラクトン;
と同様に上記で言及された物質のそれぞれ立体異性体、エナンチオマー、位置異性体、ジアステレオマー、cis/trans異性体及びエピマーの1以上から選択される少なくとも1つの単独の香気物質または単独の芳香化合物を含む。
【0177】
代替の実施形態では、芳香オイルまたは香油がコア物質または有効成分として使用される。これらは少なくとも1つの芳香化合物を含有する組成物である。そのような組成物、特に芳香オイルまたは香油は好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の芳香化合物を含む。芳香オイルまたは香油は好ましくは、例えば、精油、コンクリート、アブソリュート、樹脂、樹脂状物質、バルサム、アンバーグリス油のようなチンキ剤;アミリス油;アンゼリカ種子油;アンゼリカ根油;アニス油;バレリアン油;バジル油;フロウソウアブソリュート;ベイ油;オウシュウヨモギ油;ベンゾイン樹脂(benzoeresin);ベルガモット油;蜜蝋アブソリュート;バーチタール油;ビターアーモンド油;セイボリー油;ブッコリーフ(bucco leaf)油;カブレウバ油;カデ油;ショイウブ油;ショウノウ油;カナンガ油;カルダモン油;カスカリラ油;カッシア油;カッシーアブソリュート;カストリウムアブソリュート;ニオイヒバ油;セダーウッド油;シスタス油;シトロネラ油;シトロン油;コパイババルサム;コパイババルサム油;コリアンダー油;コスタス根油;クミン油;イトスギ油;ダバナ油;ディルハーブ油;ディル種子油;オーデブルーツ(Eau de brouts)アブソリュート;オークモスアブソリュート;エレミ油;タラゴン油;ユーカリレモン油;ユーカリ油;フェンネル油;スプルースニードル(Spruce needle)油;ガルバナム油;ガルバナム樹脂;ゼラニウム油;グレープフルーツ油;グアイアクウッド油;グルユンバルサム;グルユンバルサム油;ヘリクリサムアブソリュート;ヘリクリサム油;ショウガ油;アヤメ根アブソリュート;アヤメ根油;ジャスミンアブソリュート;カラマス油;カモミール油ブルー;ローマンカモミール油;ニンジン種子油;カスカリラ油;松葉油;スペアミント油;キャラウエイ種子油;ラブダナム油;ラブダナムアブソリュート;ラブダナム樹脂;ラバンジンアブソリュート;ラバンジン油;ラベンダーアブソリュート;ラベンダー油;レモングラス油;ロベージ油;蒸留ライム油;圧搾ライム油;リナロエ油;アオモジ果実油;ベイリーフ油;メース油;マジョラム油;マンダリン油;マッソ樹皮油;ミモザアブソリュート;ムスク種子油;ムスクチンキ;マスカット油;ミルラアブソリュート、ミルラ油;マートル油;クローブリーフ油;クローブフラワー油;ネロリ油;オリバナムアブソリュート;オリバナム油;オポパナクス油;オレンジフラワーアブソリュート;オレンジ油;オレガノ油;パルマローザ油;パチュリ油;エゴマ油;ペルーバルサム油;パセリ葉油;パセリ種子油;プチグレイン油;ペパーミント油;コショウ油;オールスパイス油;パイン油;ポレイ油;ローズアブソリュート;ローズウッド油;ローズ油;ローズマリー油;セージ油ダルマチアン;セージ油スパニッシュ;ビャクダン油;セロリ種子油;スパイクラベンダー油;スターアニス油;エゴノキ油;マリーゴールド油;ファーニードル油;ティーツリー油;テレビン油;タイム油;トルーバルサム;トンカアブソリュート;チュベローズアブソリュート;バニラ抽出物;バイオレットリーフアブソリュート;バーベナ油;ベチベル油;ジュニパーベリー油;ワイン酵母油;ニガヨモギ油;ウインターグリーン油;イーラン油;ヒソップ油;シベットアブソリュート;シナモン葉油;シナモン樹皮油;及びそれらの画分またはそれらから単離された成分のような天然の原料に由来する抽出物の群から選択される。
【0178】
本発明に係るプロセスのさらなる変形では、香味剤も単独のアロマの形態でコア物質としてカプセル化することができ、コア物質は有効成分として少なくとも1つの単独の香味剤またはその混合物を含む。
【0179】
本発明に従ってカプセル化されてもよいアロマの典型例には、アセトフェノン;カプロン酸アリル;α-イオノン;β-イオノン;ニスアルデヒド;酢酸アニシル;ギ酸アニシル;ベンズアルデヒド;ベンゾチアゾール;酢酸ベンジル;ベンジルアルコール;安息香酸ベンジル;β-イオノン;酪酸ブチル;カプロン酸ブチル;ブチリデンフタリド;カルボン;カンフェン;カリオフィレン;シネオール;酢酸シンナミル;シトラール;シトロネロール;シトロネラール;酢酸シトロネリル;酢酸シクロヘキシル;シメン;ダマスコン;デカラクトン;ジヒドロクマリン;アントラニル酸ジメチル;アントラニル酸ジメチル;ドデカラクトン;エトキシエチル酢酸;エチル酪酸;酪酸エチル;カプリン酸エチル;カプロン酸エチル;クロトン酸エチル;エチルフラネオール;エチルグアニアコール;イソ酪酸エチル;イソ吉草酸エチル;乳酸エチル;酪酸エチルメチル;プロピオン酸エチル;ユーカリプトール;ユーゲノール;ヘプチル酸エチル;4-(p-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン;γ-デカラクトン;ゲラニオール;酢酸ゲラニル;酢酸ゲラニル;グレープフルーツアルデヒド;メチルジヒドロジャスミン酸(例えば、Hedion(登録商標));ヘリオトロピン;2-ヘプタノン;3-ヘプタノン;4-ヘプタノン;trans-2-ヘプテナール;cis-4-ヘプテナール;trans-2-ヘキセナール;cis-3-ヘキセノール;trans-2-ヘキセン酸;trans-3-ヘキセン酸;酢酸cis-2-ヘキセニル;酢酸cis-3-ヘキセニル;カプロン酸cis-3-ヘキセニル;カプロン酸trans-2-ヘキセニル;ギ酸cis-3-ヘキセニル;酢酸cis-2-ヘキシル;酢酸cis-3-ヘキシル;酢酸trans-2-ヘキシル;ギ酸cis-3-ヘキシル;para-ヒドロキシベンジルアセトン;イソアミルアルコール;イソ吉草酸イソアミル;酪酸イソブチル;イソブチルアルデヒド;イソユーゲノールメチルエーテル;イソプロピルメチルチアゾール;ラウリン酸;レブリン酸;リナロール;酸化リナロール;酢酸リナリル;メントール;メントフラン;アントラニル酸メチル;メチルブタノール;メチル酪酸;酢酸2-メチルブチル;カプロン酸メチル;桂皮酸メチル;5-メチルフルフラル;3,2,2-メチルシクロペンタノロン;6,5,2-メチルヘプタノン;ジヒドロジャスミン酸メチル;ジャスミン酸メチル;酪酸2-メチルメチル;2-メチル-2-ペンテノン酸;チオ酪酸メチル;3,1-メチルチオヘキサノール;酢酸3-メチルチオヘキシル;ネロール;酢酸ネリル;trans,trans-2,4-ノナジエナール;2,4-ノナジエノール;2,6-ノナジエノール;2,4-ノナジエノール;ノートカトン;δ-オクタラクトン;γ-オクタラクトン;2-オクタノール;3-オクタノール;1,3-オクテノール;酢酸1-オクチル;酢酸3-オクチル;パルミチン酸;パラアルデヒド;フェランドレン;ペンタンジオン;酢酸フェニルエチル;フェニルエチルアルコール;フェニルエチルアルコール;イソ吉草酸フェニルエチル;ピペロナール;プロピオンアルデヒド;酪酸プロピル;プレゴン;プレゴール;シネンサール;スルフロール;テルピネン;テルピネオール;テルピノレン;8,3-チオメンタノン;4,4,2-チオメチルペンタノン;チモール;δ-ウンデカラクトン;γ-ウンデカラクトン;バレンセン;吉草酸;バニリン;アセトイン;エチルバニリン;イソ酪酸エチルバニリン(3-エトキシ-4-イソブチリルオキシベンズアルデヒド);2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン及びその誘導体(好ましくはホモフラネオール(2-エチル-4-ヒドロキシ-5-メチル-3(2H)-フラノン)、ホモフロノール(2-エチル-5-メチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン及び5-エチル-2-メチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン);マルトール及びマルトール誘導体(好ましくはエチルマルトール);クマリン及びクマリン誘導体;γ-ラクトン(好ましくはγ-ウンデカラクトン、γ-ノナラクトン、γ-デカラクトン);δ-ラクトン(好ましくは4-メチルδデカラクトン、マソイラクトン、δデカラクトン、ツベロラクトン);ソルビン酸メチル;ジバニリン;4-ヒドロキシ-2(または5)-エチル-5(または2)-メチル-3(2H)フラノン;2-ヒドロキシ-3-メチル-2-シクロペンタノン;3-ヒドロキシ-4,5-ジメチル-2(5H)-フラノン;酢酸イソアミルエステル;酪酸エチルエステル;酪酸n-ブチルエステル;酪酸イソアミルエステル;3-メチル酪酸エチルエステル;n-ヘキサン酸エチルエステル;n-ヘキサン酸アリルエステル;n-ヘキサン酸n-ブチルエステル;n-オクタン酸エチルエステル;グリシド酸エチル3-メチル-3-フェニル;2-trans-4-cis-デカジエン酸エチル;4-(p-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン;1,1-ジメトキシ-2,2,5-トリメチル-4-ヘキサン;2,6-ジメチル-5-ヘプテン-1-アール;フェニルアセトアルデヒド;2-メチル-3-(メチルチオ)フラン;2-メチル-3-フランチオール;ビス(2-メチル-3-フリル)ジスルフィド;フルフリルメルカプタン;メチオナール;2-アセチル-2-チアゾリン;3-メルカプト-2-ペンタノン;2,5-ジメチル-3-フランチオール;2,4,5-トリメチルチアゾール;2-アセチルチアゾール;2,4-ジメチル-5-エチルチアゾール;2-アセチル-1-ピロリン;2-メチル-3-エチルピラジン;2-エチル-3,5-ジメチルピラジン;2-エチル-3,6-ジメチルピラジン;2,3-ジエチル-5-メチルピラジン;3-イソプロピル-2-メトキシピラジン;3-イソブチル-2-メトキシピラジン;2-アセチルピラジン;2-ペンチルピリジン;(E,E)-2,4-デカジエナール;(E,E)-2,4-ノナジエナール;(E)-2-オクテナール;(E)-2-ノネナール;2-ウンデカナール;12-メチルトリデカナール;1-ペンテン-3-オン;4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン;グアニアコール;3-ヒドロキシ-4,5-ジメチル-2(5H)-フラノン;3-ヒドロキシ-4-メチル-5-エチル-2(5H)-フラノン;シンナムアルデヒド;シンナムアルコール;サリチル酸メチル;イソプレゴール及び本明細書で明白に言及されていないこれら物質のそれぞれ立体異性体、エナンチオマー、位置異性体、ジアステレオマー、cis/trans異性体及びエピマーから成る群から選択される。
【0180】
最も好ましくは、多層マイクロカプセルを調製するのに香気物質または芳香化合物または香味剤が使用され、それはAGRUMEX LC;AGRUNITRIL;ALDEHYD C11 UNDECYLENIC;ALDEHYD C12 LAURIN;ALDEHYD C12 MNA;ALDEHYD C14 SOG;ALDEHYD C16 SOG.;ALLYLAMYLGLYCOLATE;ALLYLCAPRONATE;ALLYLCYCLOHEXYLPROPIONATE;ALLYLHEPTYLATE;AMBROCENIDE(登録商標)10 TEC;AMBROCENIDE(登録商標)Krist.10%IPM;AMBROXIDE;ANETHOL NAT.EX STERNANIS;ANISALDEHYDE PURE;APRIFLOREN(登録商標);BENZYL ACETONE;BENZYL SALICYLATE;BORNEOL L/ISOBORNEOL65/35;BUCCOBLAETTEROEL;CITRONELLOL 950;CLONAL;CYCLOHEXYL SALICYLATE;CYMOL PARA SUPRA;DAMASCONE DELTA;DIHYDROMYRCENOL;DIMETHYLBENZYLCARBINYL BUTYRATE;DYNASCONE;ETHYLENE BRASSYLATE;ETHYL METHYL BUTYRATE-2;ETHYL SAFFRONATE;EUCALYPTOL NAT.;EUCALYPTUS OIL GLOBULUS80/85%;EUGENOL NAT.; FARENAL(登録商標);FENNEL OIL AROMA TYPE SWEET NAT.;FILBERTONE 10% IPM;FILBERTONE;FLOROPAL;GALBASCONE;GERANIOL 60;GLOBANONE(登録商標);HEDIONE;HERBAFLORATE;HERBANATE;HERBYL PROPIONATE;HEXENYL ACETATE CIS-3;HEXENYL SALICYLATE CIS-3;HEXYLACETATE;HEXYLACETATE S;HEXYL ISOBUTYRATE;HEXYL SALICYLATE;ISOAMYL BUTYRATE;ISOBORNYL ACETATE;ISOPROPYL METHYL BUTYRATE-2;ISORALDEIN 70;JAVANOL;CAMPHOR DL;CRESOL METHYL ETHER P(CR<10PPM);LEMONILE;LIGUSTRAL;LILIAL;LINALOOL;MANZANATE;MELONAL;METHYLHEPTIN CARBONATE;METHYLOCTIN CARBONATE;MUSCENONE;NEOCYCLOCITRAL;NEROLIN BROMELIA;NEROLIN YARA YARA CRYST.;NEROLIONE;NORLIMBANOL;ORANGENOEL;ORIVONE;OZONIL;PATCHOULIOEL ENTF.;VEGETABLE OIL TRIGLYCERIDE;PHELLANDRENE FRACTION EX EUCALYPTUS OIL;PHENIRAT(登録商標);PHENYLETHYL ACETATE;ROSE OXIDE HIGH CIS;SANDRANOL(登録商標);STYRENE ACETATE;SULTANENE(登録商標);TERPINEN GAMMA;TETRAHYDROLINALOOL;TIMBERSILK;TRIETHYLCITRATE;UNDECAVERTOL;VERTOCITRAL;VERTOFIX;YSAMBER(登録商標)K及び上記有効成分の混合物から成る群から選択される。
【0181】
本発明に係るプロセスのさらなる変形では、生物起源の成分もコア物質としてカプセル化することができ、その際、コア物質は少なくとも1つの生物起源の成分またはその混合物を含む。
【0182】
生物起源の成分は生物活性がある有効成分、例えば、トコフェロール、酢酸トコフェロール、パルミチン酸トコフェロール、アスコルビン酸、カルノチン、カルノシン、カフェイン、(デオキシ)リボ核酸及びその断片化産物、β-グルカン、レチノール、ビサボロール、アラントイン、フィタントリオール、パンテノール、AHA酸、アミノ酸、セラミド、シュードセラミド、精油、植物抽出物、及びビタミン複合体である。
【0183】
特に好ましい実施形態では、したがって本発明は多層マイクロカプセルの製造のためのプロセスに関するものであり、その際、少なくとも1つの好ましくは疎水性のカプセル化される有効成分は、芳香化合物、香気物質、香味剤、殺生物剤、殺昆虫剤;防虫剤、食品添加剤、化粧品有効成分、医薬有効成分、農薬、着色剤、ルミナスカラー、光学的光沢剤、溶媒、ワックス、シリコーン油、潤滑剤の群に由来する物質;と同様に前述の有効成分の混合物から成る群から選択され、特に好ましくは、有効成分は芳香化合物または芳香化合物混合物であるので、好ましくは、疎水性の香気物質もしくは芳香化合物、または疎水性の香気物質の混合物もしくは芳香化合物の混合物である。
【0184】
そのようなマイクロカプセルは、優れた安定性及び放出能を特徴とする。有効成分(コア物質)としての芳香化合物の場合、このように製造される多層マイクロカプセルはまた、優れた感覚特性も示し、それは安定な有効成分のカプセル化及び関連する有効成分の損失の低さに起因することができる。プロセス工程の特に定義され且つ良好な順序はこれらの定義された密で且つ非常に薄いカプセルシェルまたはカプセル壁をもたらし、それはカルテットとしてカプセルの非常に良好な感覚実績を相乗的に構成する。さらに、選択される架橋剤のさまざまな化学的特性に起因して特に薄いカプセル壁またはカプセルシェルを作り出すことができ、それにもかかわらずそれは維持されている分析安定性(カプセル内の有効成分)及びさらに改善されている感覚実績をもたらす。
【0185】
驚くべきことに、本発明の方法によって製造される対応する芳香化合物のカプセルはさらに高い安定性と香油の意図しない漏出の減少とを示し、それは芳香化合物のさらに効率的なカプセル化に特に起因することができる。したがって、このように製造されるカプセルは、機械的摩擦によってまたは圧力によってカプセルを開けることにより香りが放出されると有意に高い香気強度を示す。
【0186】
したがって、本発明の別の目的は、本明細書に記載されているプロセスによって調製される少なくとも1つの疎水性の香気物質または芳香化合物を含む多層マイクロカプセルに関する。
【0187】
前に説明したように、多層のカプセルシェルまたはカプセル壁を含むそのようなマイクロカプセルは特に良好な有効成分放出特性を有する一方で同時に有意に少ないポリマー含量(カプセル壁の構成成分)を有する。同時に、個々の芳香化合物に対する制約はない。これは、現状によれば、多数の調べた香気物質または芳香化合物を、またはあらゆる調べた香気物質または芳香化合物でさえカプセル化することができる普遍的なカプセルが利用可能であることを意味する。
【0188】
本発明の追加の態様は、少なくとも1つの疎水性の香気物質または芳香化合物を含むコアとカプセルシェルとを含む多層マイクロカプセルに関するものであり、その際、カプセルシェルは、
(v)ポリウレタンを含むまたはそれから成る第1の層と;
(vi)ポリ尿素を含むまたはそれから成る第2の層と;
(vii)ポリウレタンを含むまたはそれから成る第3の層と;
(viii)ポリ尿素を含むまたはそれから成る少なくとも第4の層とを
完全に含む、またはそれらから完全に成る。
【0189】
イソシアネート構成単位のアミンまたはヒドロキシル基との交互の架橋は、ポリウレタンとポリ尿素に主として基づく交互の定義された且つ密の、したがって安定な層の安定なカプセル壁をもたらす。
【0190】
驚くべきことに、本発明のプロセスによって製造されたマイクロカプセルは、第1の最内側のポリウレタン系の層と、第2のポリ尿素系の層と、第3のポリウレタン系の層と、少なくとも第4のポリ尿素系の層とを基本的に含む多層のカプセルシェルを有することが見いだされた。
【0191】
以前示されたように、第1の最内側のバリア層は少なくとも1つのイソシアネートと保護コロイド、例えば、多糖との架橋によって主として形成される。第2の架橋工程はイソシアネートと酸性で反応するアミン、例えば、アミノ酸の重付加に主として由来する一方で、第3の架橋層はイソシアネートとヒドロキシル基ドナーの反応に主として由来する。最後に、カプセルはイソシアネートと少なくとも1つの塩基性で反応するアミンの反応によって主として形成される少なくとも第4の架橋層によって包まれる。したがって、本発明に係る多層マイクロカプセルは一般に、カプセルに特に高い安定性を与えるポリウレタンとポリ尿素の結合に基づく交互のシェル系を有する。
【0192】
定義された温度と時間での対象を絞った沈殿によって形成され、且つ互いに支え、包み込む幾つかの個別の定義された交互の層に基づいてカプセル壁を作り上げることによって、本発明に基づいて、優れた感覚実績を持つ一方で同時にシェル構成成分を有意に減らす特に安定なマイクロカプセルを作り出すことが可能である。
【0193】
別の好ましい実施形態では、したがって本発明は多層マイクロカプセルに関するものであり、その際、
(i)第1の層は2以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つのイソシアネートと保護コロイドとの架橋された構成単位を含み;
(ii)第2の層は2以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つのイソシアネートと酸性pHで反応するアミンとの架橋された構成単位を含み;
(iii)第3の層は2以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つのイソシアネートとヒドロキシル基ドナーとの架橋された構成単位を含み;且つ
(iv)少なくとも第4の層は2以上のイソシアネート基を有する少なくとも1つのイソシアネートとアルカリ性pHで反応する少なくとも1つのアミンとの架橋された構成単位を含む。
【0194】
驚くべきことに、本明細書に記載されているマイクロカプセルは以下の実施形態で説明されているように、比較的安定な従来技術のカプセルと比べてさらに高い安定性を有し、且つ優れた感覚特性(優れたマイクロカプセルの放出能)を示す一方で、必要とされるシェル物質は全体として少なかったことが示されている。したがって、本発明は、例えば、疎水性の香気物質及び芳香化合物の効率的なカプセル化を介して効率的な芳香系及び香味系を提供することを可能にする。
【0195】
さらに、本明細書に記載されているマイクロカプセルによって広いスペクトルの疎水性有効成分をカプセル化することが可能である。これは、芳香化合物のような個別の有効成分に対してもはや制約がないことを意味する。これは、現在の最先端によれば、調べた芳香化合物のほとんどをカプセル化することができる普遍的なカプセルが利用可能であることを意味する。
【0196】
生分解性の芳香化合物または香気物質または芳香化合物混合物を使用して完全に生分解性の製品を達成することは本発明の文脈で特に有利である。
【0197】
本発明の特に好ましい実施形態では、したがって多層マイクロカプセルが記載され、その際、多層マイクロカプセルは少なくとも1つのバイオベースの且つ生分解性の香気物質または芳香化合物または香気物質混合物または芳香化合物混合物を含む。
【0198】
個々の反応物質の添加についての定義された温度範囲の選択もまた最先端と比べて完全に新しい分離メカニズムにつながる。これは、例えば、エマルションの安定性の増大のような、幾つかの利点を有する。定義された温度にて反応物質を選択的に加えることによってアルカリ性pH値または酸性pH値の方向でpHにピークが生成されない。本プロセスでは、個々の架橋工程の後に使用されるまたは生じるpH値は一般に3~9の間の範囲である一方で、最終産物は7~8の間のpHでほぼ中性である。これは製造されるカプセルの格別に良好な安定性に反映され―有意に減ったカプセル壁物質(ポリマー含量)にもかかわらず―有効成分の優れた放出に反映される。
【0199】
本発明のプロセスによって製造されるマイクロカプセルは粒度分布のd(0.5)値を特徴とすることができ、すなわち、製造されるカプセルの50%はこの値よりも大きく、カプセルの50%はこの値よりも小さい。
【0200】
粒度を決定するために、本発明のマイクロカプセルを動的プロセスの一部として水に分散させ、次いでレーザー回折によって粒度を測定する。カプセルの粒度に応じてレーザー光線はさまざまに屈折するので、粒度に変換することができる。この目的にMie理論を使用した。粒子の測定にはMALVERNMastersizer3000を使用した。
【0201】
本発明に係るマイクロカプセルは10μm~100μmのd(0.5)値、好ましくは20μm~65μmのd(0.5)値での粒度分布を有することを特徴とする。本発明に係るマイクロカプセル及び従来技術のマイクロカプセル、すなわち、純粋なポリ尿素ネットワークに基づくマイクロカプセルの対応する粒度分布を図6にて説明する。マイクロカプセルの直接比較は、本明細書に記載されている乳化プロセスの改善に起因して従来技術のマイクロカプセルと比べてマイクロカプセルの粒度にてさらに均質な分布を達成することができることを示している。
【0202】
図5は本発明に係るマイクロカプセル及び従来技術のマイクロカプセルのIR画像を示す。従来技術のカプセルは既知のカプセル化技術によって製造され、純粋なポリ尿素系ネットワークに基づくマイクロカプセルに相当する。そのようなマイクロカプセルを作り出すのに触媒を使用せず、保護コロイドとしてポリビニルアルコールを選択した。製造はpH9でも実施された。グラフに基づいて、バンドにおける明瞭な差異は特にフィンガープリント領域で見ることができる。従来技術と比べた多層マイクロカプセルの626cm-1での有意に強いバンドのせいでOH基の非対称伸縮振動があり、それは例えば、使用された修飾デンプンに起因し得ると結論付けることができる。別の例は510cm-1でのバンドであり、それはポリウレタンのN-H振動に割り当てることができる。IRスペクトルの比較は、従来技術のカプセル(純粋なポリ尿素系のカプセル)と比べて安定性及び感覚特性の改善が起因し得る新しい追加のポリマー(ポリウレタン架橋)が生じていることを示している。
【0203】
その安定性及び有効成分の標的放出のために、本発明に係るマイクロカプセルは広範囲の適用に、及び特に、液体形態または固体形態の洗剤、布柔軟剤、洗浄剤、香り効能促進剤;化粧品、パーソナルケア製品、農産品、または医薬品等での使用に好適である。
【0204】
本発明の別の態様では、液体形態または固体形態の洗剤、布柔軟剤、洗浄剤、香り効能促進剤または芳香増強剤;化粧品、パーソナルケア製品、農産品、または医薬品の製造における多層マイクロカプセルまたは多層マイクロカプセルの懸濁液の使用も記載されている。
【実施例
【0205】
本発明に係る多層マイクロカプセル及びその有利な特性は以下の実施例を参照してさらに詳細に説明される。
【0206】
以下に列挙された安定性試験は50℃で実施した。
【0207】
選択された従来技術のカプセルは一般にそのカプセル壁が専らポリ尿素ネットワークによるカプセルだった。これらのカプセルの製造には触媒は使用されず、合成はpH9で実施した。保護コロイドとしてポリビニルアルコールを選択した。
【0208】
実施例1:比較のカプセルを伴う本発明の方法によって製造された多層マイクロカプセルの安定性データ:一般的な安定性の増大
【0209】
第1の実施例では、本発明に従って調製された多層マイクロカプセルの安定性データを触媒を添加せずに調製された対応する多層マイクロカプセルの安定性データと比較する。後者の調製については、80:20の比でのヘキサメチレンジイソシアネートと4,4’-メチルジフェニレンジイソシアネートの2つの異なるイソシアネートの混合物と、保護コロイドとしての修飾デンプンと、架橋剤であるリジン塩酸塩(酸性pHで反応するアミン)、グリセロール(ヒドロキシル基ドナー)及び炭酸グアニジニウム(塩基性pHで反応するアミン)とを使用した。これらのカプセルの調製には触媒を使用しなかった。
【0210】
本発明の多層マイクロカプセルは、以下のスキームに従って、80:20の比でのヘキサメチレンジイソシアネートと4,4’-メチルジフェニレンジイソシアネートの2つの異なるイソシアネートの混合物と、保護コロイドとしての修飾デンプンと、触媒であるDABCOと、架橋剤であるリジン塩酸塩(酸性pHで反応するアミン)、グリセロール(ヒドロキシル基ドナー)及び炭酸グアニジニウム(塩基性pHで反応するアミン)とから調製した。
【0211】
【表1】
【0212】
双方のカプセルは香油Tom Capを含んでいた。
【0213】
本明細書の実施例ではデンプンを保護コロイドとして使用し、架橋剤はふつう、コハク酸塩の形態である。この目的で、デンプンはコハク酸によって誘導体化される。
【0214】
安定性試験は、対応するマイクロカプセルが1%重量%の量で組み込まれる代表的な柔軟剤(布柔軟剤)を使用して実施した。次いで柔軟剤を以下に示す期間(表1を参照のこと)50℃の温度で保管した。
【0215】
【表2】
【0216】
マイクロカプセルの安定性は残留する油の含量(マイクロカプセルに残っている香油)によって決定される。10日後40%を超える残留油の含量から、製造されたマイクロカプセルは安定であると見なされる。
【0217】
数日後のカプセル含量はGC/MS(質量分光分析を連結させたガスクロマトグラフィー)によって分析した。カプセルにおける香油含量は基準との比較測定によって決定した。46%の結果は、例えば、元々使用された香油の量の64%がもはやカプセルには含まれていないことを意味する。
【0218】
製造直後の遊離の油、すなわち、カプセルから漏出した油の定量はマイクロカプセルをイソプロパノールに入れることによって実施し、固相微量抽出(SPME)とその後のGC/MSによって30秒後に判定されたが、それはカプセルの品質の評価基準と見なされ、すなわち、漏出した遊離の香油は標準によるガスクロマトグラフィー測定を介して判定される。依然として含有される香油の比率は逆に算出することができる。調べたカプセルは最大1%未満の漏出した遊離の油のレベルまで安定であると認められた。本発明に係るプロセスによって製造された新鮮なマイクロカプセルは比較のカプセルよりも有意に少ない香油を漏出するので、高いレベルの品質を示すことが示されている。
【0219】
この実施例は、触媒の使用がカプセルの安定性に有意に影響を及ぼし、触媒の使用によって有意にさらに安定な多層マイクロカプセルを製造できることを明瞭に示している。触媒を使用せずに製造された比較のカプセルでは、ポリウレタンに基づく第1の最内側のカプセルシェルを生じることができず(反応スキーム1を参照のこと)、架橋層の数が少ないために全体的に低い安定性のカプセル壁を生じている。さらに、この文脈で注目すべきは触媒は室温で添加したこと及びポリウレタンに基づくこの第1の最内側の架橋層は室温ですでに効率的に生じることである。
【0220】
実施例2:ヒドロキシル基ドナーの有無での本発明の方法によって調製される多層マイクロカプセルの安定性データ
【0221】
第2の実施例では、本発明に従って調製された多層マイクロカプセルの安定性データを、ヒドロキシル基ドナーを添加せずに調製された対応するマイクロカプセル、すなわち、追加のポリウレタン系の第3のカプセルシェル層がないマイクロカプセルの安全性データと比較した。
【0222】
後者の調製については、80:20の比でのヘキサメチレンジイソシアネートと4,4’-メチルジフェニレンジイソシアネートの2つの異なるイソシアネートの混合物と、保護コロイドとしてのポリビニルアルコール(PVOH)と、触媒であるDABCOと、架橋剤であるリジン塩酸塩(酸性pHで反応するアミン)及び炭酸グアニジニウム(塩基性pHで反応するアミン)を使用した。これらのカプセルの製造ではヒドロキシル基ドナーを使用しなかった。
【0223】
本発明の多層マイクロカプセルは、80:20の比でのヘキサメチレンジイソシアネートと4,4’-メチルジフェニレンジイソシアネートの2つの異なるイソシアネートの混合物と、保護コロイドとしてのデンプンと、触媒であるDABCOと、架橋剤であるリジン塩酸塩(酸性pHで反応するアミン)、グリセロール(ヒドロキシル基ドナー)及び炭酸グアニジニウム(塩基性pHで反応するアミン)とから調製した[実施例1を参照のこと]。
【0224】
【表3】
【0225】
安定性は実施例1に記載されているように判定した。
【0226】
一般に、マイクロカプセルは良好な安定性を示す。ヒドロキシル基ドナーの追加の使用によって、さらに良好な安定性が達成されてもよく、それは追加の第3のポリウレタン系のシェル層の形成に起因し得る。驚くべきことに、プロセスのこのさらなる展開及び個々のシェルの対象を絞ったさらに多くの沈殿は安定性の高い増大につながる。
【0227】
実施例3:触媒添加の時間の作用としての本発明に係る多層マイクロカプセルの安定性データ
【0228】
別の実施例では、本発明に従って調製された多層マイクロカプセルの安定性データを、触媒がすでに水性相に添加された(すなわち、工程a2)対応するマイクロカプセルの安定性データと比較する。
【0229】
本発明の多層マイクロカプセルは実施例1のスキームに従って、80:20の比でのヘキサメチレンジイソシアネートと4,4’-メチルジフェニレンジイソシアネートの2つの異なるイソシアネートの混合物と、保護コロイドとしてのデンプンと、触媒であるDABCOと、架橋剤であるリジン塩酸塩(酸性pHで反応するアミン)、グリセロール(ヒドロキシル基ドナー)及び炭酸グアニジニウム(塩基性pHで反応するアミン)から調製した。比較のカプセルでは、触媒の添加は乳化に先立って発生したのに対して、本明細書に記載されているプロセスに係る多層マイクロカプセルでは、触媒の添加は水性相と内部非水性相の乳化の後に発生した。
【0230】
双方のカプセル、本明細書に記載されている方法によって製造される本発明に係る多層マイクロカプセル及び参照カプセルはd(0.5)>60μmの平均粒度分布を有する。
【0231】
【表4】
【0232】
安定性は実施例1に記載されているように判定された。
【0233】
参照カプセルと比べて、触媒が乳化の後に添加され、水性相にはすでになかった、本発明に係る多層マイクロカプセルは50℃で10日間の後でさえ有意に高い安定性を示し、且つ遊離の香油の有意な減少を示す。これは3の因子による安定性の増大に相当する。
【0234】
本明細書に記載されている方法によって調製された多層マイクロカプセルの場合、得られるシェル物質は実施例2のヒドロキシル基ドナーを伴うマイクロカプセルシェル物質の40%だった。必要とされるシェル物質の量の低下にもかかわらず、本発明の方法によって優れた安定性を示す多層マイクロカプセルを得ることができる。
【0235】
実施例4:本発明に係るマイクロカプセルの官能評価
【0236】
マイクロカプセルの官能評価を以下のように実施した。図7に列挙したようなマイクロカプセルを布柔軟剤に組み込み、次いで洗浄した。綿とポリエステルで出来た混合繊維の布ですすぎを実施した。
【0237】
従来技術のカプセル(純粋なポリ尿素系のカプセル)及び本発明に係るマイクロカプセルは双方とも香油TomCapを含有する。従来技術のカプセルは専らポリ尿素の架橋によって製造した。製造に触媒を使用せず、保護コロイドとしてポリビニルアルコールを選択した。製造はpH9で実施した。したがってそのようなカプセルは純粋なポリ尿素系のシェルネットワークを示す。本発明に係る多層マイクロカプセルは実施例1に記載されているように調製した。
【0238】
12人の試験対象は洗浄後の混合繊維拭い物の香気強度を1(香気なし)から9(非常に強い香気)までの尺度で等級に分けた。
【0239】
本発明に係るマイクロカプセルは従来技術由来のマイクロカプセルと実質的に同じ香気特性を有する。しかしながら、試験対象は未処理の、混練した及び擦った混合繊維拭い物について平均で有意に高い香気強度を認知することができた。この場合、香りは本発明のマイクロカプセルの機械的破壊によって放出される。利点は本発明に係るマイクロカプセルの安定性に起因する。
【0240】
イソシアネート系のカプセル化の別の主要な利点は、これらのカプセルがホルムアルデヒドを含まないという事実である。さらに、先端技術と比べて、有意に少ないポリマーの量にもかかわらず、安定性及び感覚実績の増大を観察することができる。これは薄い多層のカプセルシェルに基づいて説明することができる。同時に、個々の芳香化合物に対する制約がない。これは、現在の先端技術によれば、調べたほとんどどんな芳香化合物もカプセル化することができるほとんど普遍的なカプセルが利用可能であることを意味する。
【0241】
従来技術のマイクロカプセルは経時的に油をさらに急速に失うので、本発明のマイクロカプセルほど香気が強くない。
【0242】
実施例5:本発明に係る多層マイクロカプセルの安定性に対する選択されたイソシアネートの影響
【0243】
本発明の多層マイクロカプセルは実施例1に従って調製したが、炭酸グアニジニウムの代わりにアルギニンを使用した。したがって、マイクロカプセルは、2つの異なるイソシアネートの混合物、それとも以下の表に従ったイソシアネートと、保護コロイドとしてのデンプンと、触媒であるDABCOと、架橋剤であるリジン塩酸塩(酸性pHで反応するアミン)、グリセロール(ヒドロキシル基ドナー)及びアルギニン(塩基性pHで反応するアミン)とから調製した。
【0244】
以下の表は、本発明に係る多層マイクロカプセルの製造のために選択されたイソシアネートの、前記マイクロカプセルの安定性に対する影響の直接比較を示す。本発明に係る対応するマイクロカプセルの光学顕微鏡像は図1~4にある。
【0245】
【表5】
【0246】
安定性は実施例1に記載されているように判定された。
【0247】
本明細書に記載されている実施例では、ヘキサメチレンジイソシアネートは長鎖ジイソシアネートとして選択され、ペンタメチレンジイソシアネートは短鎖ジイソシアネートとして選択され、4,4’-メチルジフェニレンジイソシアネートは芳香族ジイソシアネートとして選択された。
【0248】
長鎖脂肪族ジイソシアネートの使用は遊離の油の漏出が少ないので、一般に好ましいことが示されている。しかしながら、一層さらに好ましいのは2つの異なるジイソシアネートの選択、特に混合された長鎖及び短鎖の脂肪族ジイソシアネートまたは混合された脂肪族及び芳香族のイソシアネートの選択である。これは、カプセルシェル内の特に安定な且つさらに良好な、すなわち、さらに密に分岐した架橋をもたらし、それはカプセルの安定性にプラスの効果を有する。さらに、イソシアネートの異なる拡散特性のために、イソシアネートに内在する高い反応速度を合成の間にここでは活用する。それにもかかわらず、すでに1つの炭素原子が程度の差はあれ反応速度で決定的な差異を引き起こすことがこの場合、驚くべきことである。したがって、OCN-(C5鎖)-NCOまたはOCN-(C6鎖)-NCOを使用すると明瞭な差異を観察することができる。
【0249】
実施例6:マイクロカプセルの安定性に対するヒドロキシル基ドナー及び触媒の影響
【0250】
別の実施例では、本発明に従って調製された多層マイクロカプセルの安定性をヒドロキシル基ドナー及び/または触媒なしで調製されたマイクロカプセルと比較した。
【0251】
本発明の多層マイクロカプセルは同じ官能性を持つ2つの異なるジイソシアネート/ジイソチオシアネートの混合物(80:20の比でのヘキサメチレンジイソシアネートと4,4’-メチルジフェニレンジイソシアネートの混合物)から調製した。本実施例では、エマルションの形成は25℃で行われた。修飾デンプンを保護コロイドとして選択し、架橋剤はリジン塩酸塩(酸性pHで反応するアミン)、グリセロール(ヒドロキシル基ドナー)及び炭酸グアニジニウム(塩基性pHで反応するアミン)であった。マイクロカプセルは実施例1に従って本明細書に記載されている製造プロセスのように調製した。
【0252】
【表6】
【0253】
安定性は実施例1に記載されているように判定した。
【0254】
触媒の使用は有意にさらに安定なカプセルをもたらすことを上記の表から見ることができる。エマルションまたは懸濁液への触媒の添加の後、ジイソチオシアネート/ジイソチオシアネート混合物の修飾デンプンとの重付加反応の結果として、カプセル化される乳化されたまたは懸濁された有効成分の粒子または液滴の界面で架橋されたポリウレタン系のカプセルシェルが生じる。触媒の非存在下では、そのような架橋された層は生じることができず、且つデンプンは保護コロイドとしてしか作用せず、さらに架橋剤として作用することはない。したがって、触媒の添加は(追加の)ポリウレタン系シェル層の形成を効果的に引き起こし、それは得られるマイクロカプセルの安定性に決定的に寄与する。
【0255】
さらに、追加のヒドロキシル基ドナー、この場合グリセロールの添加による架橋もこうして製造されるマイクロカプセルの安定性全体に決定的に寄与することがこの実験から推測され得る。ジイソシアネート/ジイソチオシアネート混合物のヒドロキシル基ドナーとの重付加反応は追加のポリ尿素系の架橋層を形成し、それはマイクロカプセルに追加の安定性を与える。
【0256】
この意味で、追加のポリウレタン系の及び追加のポリ尿素系のカプセルシェルを持つ本発明に係るマイクロカプセルは最良の安定性特性を示す。こうして製造されるマイクロカプセルは、以下の順:ポリウレタン構造を含む第1の最内層、ポリ尿素構造を含む第2の層、ポリウレタン構造を含む第3の層、及びポリ尿素構造を含む第4の最外層にて一般に交互に架橋されるポリウレタン系の層とポリ尿素系の層の多層カプセル壁を有する。
【0257】
実施例7:選択される温度範囲の影響
【0258】
以下の実験では、本発明に係るマイクロカプセル及び従来技術のカプセル(ポリビニルアルコールを保護コロイドとして使用してpHにて触媒なしで製造された純粋なポリ尿素系のカプセル)に基づいて個別の工程(a)~(d)の温度の段階分けの影響を示す。反応物質すべての添加は従来技術の実施例では室温で実施した。
【0259】
本発明に係るマイクロカプセルの調製については、個別の構成成分の添加のために以下の温度範囲を選択した(本発明に記載されているように反応物質を添加した):
・触媒DABCOの添加:22~26℃(工程a4);
・酸性pHで反応するアミン(リジン塩酸塩)の添加:40~45℃(工程b);
・ヒドロキシル基ドナー(グリセロール)の添加:45~50℃(工程c);
・アルカリ性pHで反応するアミン(炭酸グアニジニウム)の添加:60~70℃(工程d)。
【0260】
【表7】
【0261】
安定性は実施例1に記載されているように判定した。
【0262】
カプセル壁構成成分の組成は理想的には以下のように記載することができる。
【0263】
【表8】
【0264】
ポリマー含量が少ないにもかかわらず、本発明に係るマイクロカプセルは比較的良好な、そうでなければ一層さらに良好な安定性データを示す。一方では、改善された安定性は4つの層のシェル系に起因することができる。他方では、具体的に選択される温度は架橋構成要素のさらに効率的な架橋をもたらすので、必要とされるポリマー全体の含量の削減を可能にする。
【0265】
実施例8:シェル含量が低下した本発明に係るマイクロカプセルの安全性データ
【0266】
本発明の多層マイクロカプセルは、2つの異なるイソシアネートの混合物(80:20の比でのヘキサメチレンジイソシアネートと4,4’-メチルジフェニレンジイソシアネートの混合物)と、保護コロイドとしての修飾デンプンと、触媒であるDABCO(22℃~26℃にて添加)と、架橋剤であるリジン塩酸塩(酸性pHで反応するアミン;40℃~45℃で添加)、グリセロール(ヒドロキシル基ドナー;45℃~50℃で添加)及び炭酸グアニジニウム(塩基性pHで反応するアミン;60℃~70℃で添加)とから調製した。本発明に係るこうして製造されたマイクロカプセルはしたがって、基本的に4つの異なるポリウレタン系の及びポリ尿素系の架橋層を交互の順序で含むカプセル壁を有する。
【0267】
従来技術のカプセルは、80:20の比でのヘキサメチレンジイソシアネートと4,4’-メチルジフェニレンジイソシアネートの混合物と炭酸グアニジニウムに由来する純粋なポリ尿素に基づく単層のカプセル壁を持つふつうのカプセルである。これらのカプセルは保護コロイドとしてポリビニルアルコールを使用してpH9にて触媒を使用せずに製造された。
【0268】
【表9】
【0269】
安定性は実施例1に記載されているように判定した。
【0270】
個別の層の数の増加はポリマーの量が少ない安定なカプセルをもたらし、それはポリマーが36%少ない(発明1に対する従来技術の比較)にもかかわらず、さらに安定であり、当初の量の16%のわずかなポリマー量(発明3)であっても、その内部にて50℃で10日間の後、カプセル内に油のほぼ50%を未だに安定に封入している。
【0271】
実施例9:イソシアネートと保護コロイドのカプセルシェルまたはカプセル壁の第1の最内側の架橋の形成に関して使用されるpH値の作用としての本発明に係るマイクロカプセルの安定性データ
【0272】
検討したマイクロカプセルは本明細書に記載されているプロセスに従って調製した。イソシアネート構成成分は80:20の比でのヘキサメチレンジイソシアネートと4,4’-メチルジフェニレンジイソシアネートの混合物で構成された。DABCOは触媒として作用した一方で、デンプンは保護コロイドとして使用された(実施例1を参照のこと)。
【0273】
【表10】
【0274】
安定性は実施例1に記載されているように判定した。
【0275】
本明細書に記載されている実験は、デンプンとイソシアネートの内部ポリウレタン系カプセルシェルを有するカプセルは、この第1の重合、すなわち、最内側のカプセルシェルの形成が7~9のpHで行われると特に安定な特性を呈することを示している。さらに、使用される修飾デンプンは同時に保護コロイドとして且つ反応物質(カプセル壁構成成分/架橋剤)として二重機能で使用されてもよいことが驚くべきことに示された。
【0276】
実施例10:アミン官能基を持つアミンを添加することによってマイクロカプセル架橋の終止が形成される硬化に先立つ任意の工程
【0277】
検討されたマイクロカプセルは本明細書に記載されている手順に従って調製された。以下の反応物質をこの目的で使用した:90:10の比での2つの直鎖イソシアネート:ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタメチレンジイソシアネート、触媒としてのDABCO(25℃で添加)、リジン塩酸塩(40℃で添加)、グリセロール(50℃で添加)、及びアルギニン(60℃で添加)、及びアミンヒスチジンまたはアラニン(80℃で添加)。後者のアミンはアミノ基を含むアミノ酸である。
【0278】
【表11】
【0279】
安定性は実施例1に記載されているように判定した。
【0280】
本明細書に記載されている実施例は、アミン、好ましくは官能基を持つアミノ酸による架橋の追加の任意の工程がカプセルの追加の安定化につながることを明瞭に実証している。
【0281】
実施例11:多層マイクロカプセルの安定性データ及び多層マイクロカプセルの安定性に対する保護コロイド及びヒドロキシル基ドナーの影響
【0282】
別の実施例では、本発明に従って製造された多層マイクロカプセル安定性は保護コロイド(PVOHまたは修飾デンプンの有無)及びヒドロキシル基ドナー(グリセロールまたはフロログルシンの有無)の作用として示されている。
【0283】
本発明に係るマイクロカプセルの合成は基本的に実施例1に記載されたとおりであったが、以下の表に従って変動があった。従来技術のマイクロカプセルは純粋なポリ尿素系のマイクロカプセルである。ここで個別の構成成分は定義された温度範囲の範囲内で反応混合物または懸濁液またはエマルションに添加された。従来技術のカプセルは純粋なポリ尿素のネットワークに基づくマイクロカプセルである。これらのカプセルの製造では、触媒は一般に使用されず、合成はpH9で実施された。ポリビニルアルコールを保護コロイドとして選択した。
【0284】
【表12】
【0285】
安定性は実施例1に記載されているように判定した。
【0286】
定義された温度で反応物質を選択的に加えることによってはアルカリ性pHまたは酸性pHの方向でのpH値のピークは生成されないので、個々の反応物質の添加についての異なる温度範囲の選択も従来技術と比べて完全に新しい分離メカニズムにつながり、それに起因してエマルションの高い安定性を達成することができる。本プロセスでは、個別の架橋工程の後で使用されるまたは生じるpH値は一般に3~9の間の範囲内にある一方で、最終産物は7~8の間のpH値を持つほぼ中性である。
【0287】
保護コロイドにおける及びヒドロキシル基ドナー、この場合グリセロールの添加による双方でのヒドロキシル基の増加はカプセルの安定性の有意な増大につながることを上記の表から見ることができる。これは、修飾デンプン及びグリセロールによって製造される本発明に係るカプセルが最良の安定性を示すという事実をもたらす。
【0288】
【表13】
【0289】
安定性は実施例1に記載されているように判定した。
【0290】
表は、修飾デンプンとグリセロールの組み合わせとは対照的にフロログルシン(1,3,5-トリヒドロキシベンゼン)による比較の系は悪化した結果を与えることを示している。驚くべきことに、ヒドロキシル基ドナーとしての例えば、フロログルシンのような予想される反応性トリフェノールのように、あらゆるポリオールがこれらの高い安定性の増大を許容するわけではないと思われ、修飾デンプンはマイクロカプセルの形成につながりさえしない。好ましくは、したがって、ヒドロキシル基ドナーは2以上の機能的なヒドロキシ基を持つポリオール、特にグリセロール及び/またはプロピレングリコールである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7