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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】X線防護部材のための保持部
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/083 20180101AFI20240607BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20240607BHJP
【FI】
G01N23/083
G01N23/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022544795
(86)(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 DE2021100081
(87)【国際公開番号】W WO2021151434
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】102020102000.7
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506186673
【氏名又は名称】ヴィポテック ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】ADAM-HOFFMANN STRASSE 26, 67657 KAISERSLAUTERN,GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-セバスチャン フーラー
(72)【発明者】
【氏名】ベルント ジンケ
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-172485(JP,A)
【文献】特開2005-308413(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0122526(US,A1)
【文献】特開平11-160487(JP,A)
【文献】国際公開第2017/061594(WO,A1)
【文献】特開2014-077714(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0114788(US,A1)
【文献】特開2018-077208(JP,A)
【文献】特開2019-020298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査すべき製品を長手方向(X)に沿って搬送する搬送経路(W)と、前記搬送経路(W)が前記長手方向(X)に通過するX線検査空間(R)と、前記搬送経路(W)を少なくとも部分的に区切り、前記X線検査空間(R)からのX線ビームの漏出を防止するためにX線ビームを吸収するように構成される防護部材(S)と、前記防護部材(S)のための保持部(T)とを備えたX線検査装置において、
a)前記保持部(T)は、前記長手方向(X)と直交する横方向(Y)で互いに間隔をおく少なくとも2つの保持区域(M,N)を含み、
b)前記防護部材(S)は、前記保持区域(M,N)と取り外し可能に結合される結合区域(A,B)を含み、前記結合区域(A,B)のそれぞれ一つを前記保持区域(M,N)のうちそれぞれ1つと結合し、そのようにして前記防護部材(S)を前記保持部(T)で一時的に配置し、
c)前記保持区域(M,N)は、それぞれ、前記長手方向(X)に沿って規則的または不規則的な相互間隔でX方向位置(P,P...)に配置された多数の個々の収容手段(L)を有し、前記防護部材(S)の前記結合区域(A,B)を、多数の前記収容手段(L)の中から選択した前記収容部(L)に取外し可能に結合することにより、前記保護部材(S)を、前記選択した前記収容部(L)に対応する前記X方向位置で前記保持部(T)に交換可能に配置する
ことを特徴とする、X線検査装置。
【請求項2】
前記保持区域(M,N)の前記収容手段(L)は、穴、上に向かって開いた長孔、係止部材、突起、および、切り欠き、のうちの一で形成され、前記防護部材(S)の前記結合区域(A,B)は、前記穴又は前記長孔に挿入可能なピン、前記係止部材又は前記突起と係合可能な切り欠き、および、前記切り欠きと係合可能な係止部材又は突起、のうちの一で形成される、請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記保持区域(M,N)の前記収容手段(L)は、前記防護部材(S)の前記結合区域(A,B)とツールレスで結合または取り外し可能である、請求項1又は2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記保持区域(M,N)は、前記防護部材(S)を前記選択した前記収容手段(L)に結合または取り外す際の識別に供するコーディングを前記X方向位置(P,P...)に備えている、請求項1又は2に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記コーディングは、
a)特定の前記防護部材(S)が特定の前記収容手段(L)と適合するように、前記防護部材(S)の前記結合区域(A,B)の断面形状と前記収容手段(L)の断面形状を設定する機械式の手段、および/または、特定の前記防護部材(S)が特定の前記収容手段(L)と磁力で引きあって結合できるように、前記防護部材(S)の前記結合区域(A,B)と前記収容手段(L)とに磁極を設ける磁気式の手段を含み、および/または
b)識別表示となる色彩、アルファベット、数字、記号、バーコード、QRコード(登録商標)、または、REIDコードを含み、および/または
c)特定の前記収容手段(L)の前記X方向位置を光によって操作者に表示するための発光手段を含む、請求項4に記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記保持部(T)に配置される前記防護部材(S)の型式および/または前記X方向位置(P,P...)、または前記防護部材(S)の特性に関する情報を含むコーディングを検出するための検出手段(E)をさらに含む、請求項1又は2に記載のX線検査装置。
【請求項7】
a)前記保持区域(M,N)は、前記長手方向(X)に延びる2つのL字型の部材の前記幅方向(Y)に相向き合う脚部で構成され、または、
b)前記保持部(T)が前記長手方向(X)に延びるU字型の部材で構成され、前記U字型の部材の前記幅方向(Y)に相向き合う脚部が前記保持区域(M,N)を構成し、前記U字型の部材の頂部(O)が前記X線検査空間(R)の上側の仕切りとなる、請求項1又は2に記載のX線検査装置。
【請求項8】
前記保持部(T)は、前記長手方向(X)にテレスコピック式に伸長可能であり、または、前記保持部(T)を構成する個々のモジュールを前記長手方向(X)に相互に組み合わせることにより延長可能である、請求項1又は2に記載のX線検査装置。
【請求項9】
前記防護部材(S)は、少なくとも部分的に柔軟なカーテンを含み、または、前記製品が通過する開口部(K)を有する若しくは有さない実質的に剛直なプレートを含み、少なくとも1つの前記防護部材(S)が、前記横方向(Y)に延びるとともに、前記長手方向(X)及び前記横方向(Y)と直交する高さ方向(Z)で、前記保持部(T)から下方に延びるように、前記搬送経路(W)の上方に配置される、
請求項1又は2に記載のX線検査装置。
【請求項10】
制御ユニット(C)と、前記制御ユニット(C)により制御可能な光学式および/または音響式および/または電気式の表示手段(D,D)とをさらに含み、前記制御ユニット(C)は、前記保持部(T)に配置されるべき若しくは配置されている少なくとも1つの防護部材(S)の識別指標、および/または、前記防護部材(S)が配置されるべき前記X方向位置および/または前記防護部材(S)が配置されている前記X方向位置を、前記表示手段(D,D)を通じて表示するように、および/または、デジタル式および/またはアナログ式の信号の形態で出力するように、構成される、請求項1又は2に記載のX線検査装置。
【請求項11】
前記保持部(T)に配置されるべき若しくは配置されている前記防護部材(S)の前記X方向位置および/または前記識別指標を検出するための検出器(E)をさらに含む、請求項10に記載のX線検査装置。
【請求項12】
前記制御ユニット(C)は、前記検出器(E)による検出を通じて、前記防護部材(S)が正しく選択されているか否か、前記防護部材(S)が正しい前記X方向位置で前記保持部(T)に配置されている否か、および/または、前記X方向位置に配置されている前記防護部材(S)が前記保持部(T)から正しく取り外されたか否かを判定する、請求項11に記載のX線検査装置。
【請求項13】
前記制御ユニット(C)が、前記防護部材(S)の選択、前記防護部材(S)の前記保持部(T)への配置、または、前記防護部材(S)の前記保持部(T)からの取り外しに誤りがあったと判定した場合、前記表示手段(D,D)は、
a)前記誤りを表示し、および/または
b)前記防護部材(S)を配置または取り外すべき正しい前記X方向位置を表示し、および/または
c)誤った前記X方向位置の前記収容手段(L)に配置された前記防護部材(S)を正しい前記X方向位置の前記収容手段(L)に移すために、前記誤った前記X方向位置の前記収容手段(L)から前記正しいX方向位置の前記収容手段(L)に到る、前記長手方向(X)に沿った方向および前記収容手段(L)の個数を表示する、請求項12に記載のX線検査装置
【請求項14】
請求項1又は2に記載のX線検査装置に用いる、防護部材(S)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブルに記載されているX線防護部材のための保持部に関する。
【背景技術】
【0002】
工業的に製造される品物、特に食料品は、適正な性質をチェックできるようにするために、または可能性のある異物を検知できるようにするために、しばしばX線検査装置(以下において「X線装置」という)によって透過照射される。多くの場合、製品は連続するさまざまなプロセス段階で製造ないし加工され、そのために、製品が搬送経路に沿って生産設備を通りながら、個々の機械へと移動する。このとき、搬送経路は適当なX線装置にも通じている。
【0003】
X線検査では、X線装置のX線ビームが、規定されたX線検査空間だけに限定されて、意図せず設備の周囲に漏出することがあり得ないように留意しなければならない。したがって搬送経路に沿って検査空間の入口と出口に、X線放射を遮断ないし吸収する防護部材が設けられる。これは、当業者にそれ自体として周知である、搬送経路の上に吊り下げられたカーテンであり得る。このようなカーテンは、互いに接して懸架される放射吸収性の部材(たとえば鉛含有のプレート)からなるリンクチェーンのような方式で構成することができる。その代替または補足として、横に相並んで配置された放射吸収性の羽根板、もしくはこれら両方の解決法の組合せが考えられる。このようなカーテンは、搬送経路を除いて全面的に吊り下げられた状態にあるとき、実質的に閉鎖された、かつそれに伴って放射密閉された、X線装置の内部空間の仕切りを形成する。そして装置の中に、またはこれから外に、搬送されるべき製品が、その搬送経路に沿って防護部材のいくつかの部材を横に押し除け、ついには製品がカーテンから完全に外に出て、それにより再びカーテンが閉鎖された形態をとる。
【0004】
実質的に固定的なプレートで構成された、通過開口部を有する防護部材も知られている。このようなプレートは、製品がX線装置を通過して搬送される搬送平面または搬送ベルトのすぐ上まで、下に向かって延びるように懸架される。このとき通過開口部は、検査されるべき製品ができる限り小さいクリアランスをもって開口部を通過して検査空間の中に入り、ないしはこれから出ることができるように、搬送経路に位置する。それに伴ってプレートは検査空間を上流側または下流側で区切り、通過開口部そのものだけを開放し、別個の手段によって通過開口部が放射漏れに対して保全される。このような通過開口部のない防護部材も知られており、その場合、防護部材が搬送ベルトの上方で十分に高く位置決めされて、製品をその下で通過させる。そして全面的なビーム防護は、追加の防護部材によって、および/または検査空間内部で選択される適当な搬送経路によって、確保される。
【0005】
検査されるべき製品のさまざまに異なる寸法は、さまざまに異なる防護部材を、多くの場合にさまざまに異なる位置で、利用することを必要とする。特に、搬送方向Xで見たときの製品の長さは、X線装置の入口と出口でカーテンが配置されるべき位置に影響を及ぼす。比較的長い製品は相応に広い検査空間を必要とするが、それは、全面的にその中で収容ないし透過照射できるようにして、その間に製品の一部が装置の入口または出口でカーテンから突き出さないようにするためである。それに応じて、防護部材は搬送方向Xで比較的広い相互間隔を有さなくてはならず、この間隔は、製品を透過照射するX線扇形ビームが検査空間内でどのようなX位置に位置決めされるか、という点にも依存する。
【0006】
異なる生産シリーズの製品は、多くの場合、それぞれ異なる搬送速度と、搬送方向で変化する間隔とをもって加工されなくてはならない。異なる製品は、その重量、搬送方向Xにおける長さ、搬送方向Xに対して垂直に延びる横方向Yにおける幅、または方向XおよびYに対して垂直に延びる高さ方向Zにおける高さに関してもしばしば区別され、それぞれの製品およびその特性に合わせてオーダーメイドされた専用の防護部材が、搬送経路に沿って特定のX位置でX線装置にそのつど設けられる。従来知られている実務作業では、X線装置は、個数と位置に応じて固定的にプレインストールされた防護部材と共に納入されており、納入後に現場でさまざまな製品に合わせてこれを適合化するのは高いコストがかかり高価である。各々の適用ケースについて、適切な防護部材をさまざまに選択して位置決めすることは、従来技術ではまだ満足のいくように解決されておらず、しばしば高い機械的コストと結びついていて、そうしたコストが製品処理量を制限し、人件費を上昇させている。たとえば別様に配置される、または別個の防護部材が用いられる、新たな製品群への設備変更にあたって現場で変更されるX線装置のコンフィグレーションのために、放射線防護責任者によって設備があらためて検査されなければならない。
【発明の概要】
【0007】
したがって本発明の課題は、前述した種類の防護部材の交換と位置決めについての簡易化を提供し、および、コンフィグレーション変更後のX線装置の簡易化された再使用開始を提供することにあった。この課題は、請求項1に記載の保持部、請求項9に記載のX線装置、および請求項13に記載の方法によって解決される。
【0008】
本発明が前提とする知見は、X線装置の表面ないし内部に配置することができる適当な保持部によって、X線装置の防護部材が特別に容易に交換可能かつ位置決め可能になるということにある。保持部は、横方向で互いに間隔をおく少なくとも2つの保持区域を含む。これらの保持区域の各々は、本発明によると、防護部材のそれぞれ1つの結合区域を収容し、それによって防護部材を保持部で一時的に固定できるようにするために構成される。
【0009】
さまざまに異なるX方向位置での防護部材の簡易な配置を可能にするために、本発明による保持部は、保持区域が長手方向Xに沿って多数の個々の収容手段を有することを意図する。収容手段は不規則な、ただし好ましくは規則的な間隔でX方向に相前後して位置することができ、それにより、防護部材の配置のために多数の可能なX方向位置を提供する。このようにして防護部材を、これに構成される結合区域によって、収容手段により定義されて適用ケースに応じて具体的に設定可能であるX方向位置に配置し、またはこれから取り外すことができる。
【0010】
本発明による収容手段は、防護部材を保持部に対して相対的に固定するために防護部材の結合区域との作用接続を可能にする、当業者にそれ自体として周知である任意の部材であってよい。特別に簡易な収容手段は、穴または上に向かって開いた長孔であり、その中に防護部材の、ピンとして横方向Yに突出する結合区域を挿入可能であり、ないしは懸架可能である。保持部の両方の保持区域の各々は、たとえば穴付き薄板ストリップまたは歯付きレールとして構成されていてよく、両方のストリップの各々がX方向で搬送経路の上方と側方に延び、それにより、防護部材を両方のストリップの間に挿入ないし懸架することができ、搬送経路に向かう方向で下方に延びる。結合区域の適当な切欠きに係合するフック状の収容手段(またはこれと逆)も考えられる。
【0011】
その代替または補足として上記以外の収容手段も考えられ、たとえば、防護部材の結合区域の適当な切欠きに係合することができる、横方向Yの小さな突起も考えられる。保持区域に沿って定義されるX方向位置を防護部材の配置のために設定する磁気式の手段も同じく考えられ、このような磁気式の手段と適切に協同作用する防護部材の結合区域が設けられる。たとえば収容手段が磁石を有することができ、ないしは強磁性に構成されていてよく、それに対して防護部材の結合区域はそれに応じて強磁性に構成されていてよく、ないしは磁石を有することができる。個々の収容手段の間の領域は非磁性に構成されていてよく、それにより、このような中間位置への防護部材の配置は可能でない。収容手段が制御可能な電磁石を含むこともでき、それにより適当な制御ユニットを通じて、防護部材が挿入されるべきであるX方向位置でのみ、一時的または恒常的に磁気作用が生成される。このようにして、操作者は正しいX方向位置を防護部材によって「探知する」ことができ、その瞬間に見ることが難しい場合があるディスプレイから情報を得る必要がない(「ディスプレイ」は、ここでは各種の情報を光学表示するために機械に中央で配置される手段として理解され、特定のX方向位置にある特別な表示手段であって当該X方向位置に関わる情報だけを出力するものとは相違する)。
【0012】
さらに、収容手段とこれに割り当てられた防護部材の結合区域との間の形状接合または摩擦結合を形成する係止結合部の一部として、収容手段が構成されることが考えられる。たとえば収容手段は、防護部材の結合区域の一部としての、ばねで初期応力をかけられたボールを中で係止することができる穴を有することができる。保持区域の収容手段が弾性作用のある係止部材を含んでいて、防護部材の収容手段にある適当な切欠きに係合する、機能的に逆の解決法も考えられる。
【0013】
収容手段はツールレス式に操作することができ、ないしは、防護部材の結合区域と係合させたり、係合を外したりすることができるのが好ましい。このことは防護部材の交換や移設を簡易化し、迅速化する。上述した簡易な結合(穴・ピン、懸架のための長孔、フック、歯付きレールなど)のほか、結合を成立させるために手動操作式のローレット付きボルトや蝶ナットが利用される結合手段も考えられる。たとえば防護部材の結合区域は、横方向Yに延びる雄ねじを有することができ、これが保持区域の適当な切欠きに挿通されて、反対側でこのようなナットにより取外し可能にロックされる。
【0014】
割り当てられた収容手段に対して個々の収容区域を個別に固定する代わりに、保持区域またはその比較的長い区域の長さ全体にわたって作用する固定機構によって、保持部に挿入される複数の防護部材を同時に固定することが考えられる。たとえば防護部材のピンとして構成された結合区域を、たとえば上方に向かって開いた長孔として構成される収容手段に上から挿入することができる。X方向に構成されて保持区域に対して相対的にこれに沿って旋回可能であるレールを、そのようにして挿入後にX方向に延びる旋回軸を中心として固定位置へと旋回させることができ、この固定位置でレールが、挿入されているすべての防護部材のピンの上方または上面に位置することになる。そうすれば、保持区域の長孔から上方に向かって防護部材が外れることが、レールによってブロックされる。レールによる固定位置の占有または解放は、またはその操作は、手動式に操作されるべき電気機械式の手段によって、または当業者に周知のその他の手段によって、惹起することができる。たとえば上位の制御部が、好ましくはプロセス信号を評価したうえで、レールの旋回を指示または阻止することができる。
【0015】
複数の防護部材をそれぞれの挿入された位置で同時に固定することができるその他の手段も本発明に基づいて考えられ、たとえばX方向に手動式に差込可能なレールなどが考えられる。その代替として、適当な固定手段がそれぞれ個々のX方向位置について、ないしはそこで形成される結合について、個別的に意図されていてもよく、それはたとえば手動式または自動式に操作可能なレバー、磁気式の機構、係止機構などによってである。
【0016】
両方の保持区域は、それぞれこれらに配置される収容手段が共通のX方向位置で互いに横方向Yに対をなして向かい合うように構成されるのが好ましい。搬送方向Xで相前後して位置する収容手段が、そのようなX方向位置に防護部材を配置するための離散したX方向位置を有するグリッドを形成する。1つの考えられるグリッド寸法は、たとえば0.5cmから2cmである。隣接する収容手段によって設定される2つのX方向位置の間では、防護部材の配置が本発明に基づいて行われないのがよい。
【0017】
本発明の発展例では、X方向に相前後して位置する収容手段の1つの列だけを保持区域ごとに設けることがさらに考えられる。たとえば高さ方向Zで相上下して位置するように保持区域に設けられ、それぞれ異なるグリッドをX方向に有するこのような複数の列が、さまざまに異なる適用ケースのための位置決め選択肢を拡張する。
【0018】
本発明の1つの好ましい実施形態では、保持区域は、好ましくはその収容手段は、設定可能なX方向位置にコーディングを備えることが意図される。コーディングは、防護部材を保持部に挿入しようとする、またはこれから取り外そうとする操作者に、該当する防護部材ないしそのために意図されるX方向位置を迅速に識別できるようにするための補助を与えるためのものである。このようなコーディングは、以下においてさらに説明する検出器との関連においても、X線装置の適正なセットアップの簡易な検証を可能にし、これを適当な記憶手段によって保存ないしアーカイビングすることもできる。
【0019】
これは、たとえば特定の収容手段への、ないしは保持区域に沿った特定のX方向位置での、特定の防護部材の(厳密にはその結合区域の)挿入を可能にする機械式の手段であってよい。本発明の1つの実施形態では、機械式のコーディングはこのX方向位置について不適切な防護部材の挿入を阻む。そのために、たとえば適当なピン断面形状(円形、三角形、正方形、星形など)と、これに対して相補的に構成される収容手段ないし結合区域の切欠きが考えられる。特別に相互に適合する係合断面形状により、特定の防護部材を特定のX方向位置でのみ配置できることが実現され、それにより、X線装置の誤った装備がいっそう容易に回避される。磁気式の手段もこのようなコーディングの一部であってよく、たとえば収容手段とこれに割り当てられる結合区域との適当な磁極を通じて、特定のX方向位置での防護部材の挿入が促進され(結合区域と収容手段とが引き合う)、または困難になる(結合区域と収容手段が互いに反発する)。さらに、収容手段およびこれと協同作用する結合区域は正しい位置での防護部材の挿入のために、保持部の保持区域のうちの1つにのみ結合区域を挿入可能であり、それ以外の(好ましくは横方向Yで向かい合う)保持区域には挿入可能でないように構成されていてよい。そのようにして、防護部材を特定の向きでのみ挿入することができ、たとえば180°回転すると挿入できないことが保証される。
【0020】
コーディングとしては、光学式に検出可能な手段も考慮の対象となる。その場合、特定の収容手段またはそのX方向位置の色別の識別表示が考えられる。たとえば1つの防護部材についてのX方向位置または収容手段であって、当該防護部材が製品型式Fについて当該X方向位置に配置されるべきであるものは、赤色のマーキングを有する。そして、加工されるべき製品型式および製品型式Fに割り当てられる色彩「赤」の知見のもとで、操作者は割り当てられたX方向位置を容易に特定し、そこに防護部材を配置することができる。それに対して、青色で表示されたX方向位置ないし収容手段は型式Fの製品の加工には不向きであり、その代わりに製品型式Fの製品について意図される。その代替または補足として、アルファベット、数字、記号をこのような目的のために同様の方式で利用することもできる。
【0021】
特別に好ましい変形例では、光学式のコーディングは、保持部にもこれに適合する防護部材にも取り付けられる。このようなケースでは割当てがいっそう簡易である。その場合、たとえば三角形で表示された防護部材は、同じく三角形でマーキングされているX方向位置にのみ配置されるべきであることが容易に明らかとなる。
【0022】
コーディングには、たとえばバーコード、QRコード(登録商標)、およびRFIDコーディングなどの機械可読のものも含まれる。コーディングは特性表示も含むことができ、それにより特定のコードから、該当する防護部材の具体的な物理的またはその他の特性データを、場合によりデータバンクを利用したうえで導き出すことができる。コーディング手段をデータで繰り返し書込可能であってもよい。
【0023】
本発明の別の好ましい実施形態は、コーディングの目的のために利用される発光手段を意図する。発光手段は-たとえば加工されるべき特定の製品型式の設定に従って-、防護部材が挿入されるべきであるX方向位置またはこれに割り当てられた収容手段が発光手段によって表示ないし点灯されるように構成されるたとえば意図されるX方向位置にあるLEDを、上位の制御部によって制御することができる。これに加えて、特定のX方向位置に複数の発光手段が配置されていてもよく、これらがたとえばそれぞれ異なる色彩で、いずれの(好ましくは同じ色彩で表示される)防護部材が当該位置で挿入されるべきであるかの示唆を与える。たとえば、異なる製品型式については異なる防護部材が挿入されるべきであるが、それが両方とも同じX方向位置においてであることが考えられる。
【0024】
当然ながら、前述したコーディングが複数のX方向位置を識別表示することもでき、それは、たとえばX線検査空間の入口と出口でそれぞれ1つの防護部材の位置を識別表示するためである。
【0025】
本発明の別の好ましい実施形態では、保持部に挿入された防護部材の型式および/またはX方向位置および/またはコーディングを-好ましくは自動式に-検出できるようにするために、検出手段が設けられる。これは、もっとも単純なケースでは機械式の検出手段であってよく、それは、たとえば特定の収容手段が特定の結合区域とのみ組合せ可能であることによる。たとえば防護部材の星形の結合区域が、これに対して相補的な保持部の切欠き(収容手段)に挿入されているとき、星形の結合区域とこれに割り当てられた防護部材との間の既知の関係を通じて、当該防護部材の種類/型式を推定することができる。上に説明したコーディングも、広い意味では検出手段として理解することができる。
【0026】
それに対して検出手段は、それぞれの防護部材で読取り可能な特性表示を検出して上位の制御部に信号で知らせる適当なセンサを含むのが好ましい(逆に防護部材が、保持部にあるコーディングを読み取って制御部へ伝送するために、1つまたは複数の検出器を装備していてもよい)。このときもっとも単純なケースでは、検出は、たとえばX方向の位置決めが誤っているケースでX線装置の動作を阻むために、それぞれのX方向位置に防護部材が配置されているか否かだけに限定される。
【0027】
検出手段は、特定のX方向位置で使用される防護部材をその型式またはコーディングに関して検出するために構成されるのが好都合である。そのために適したセンサは、たとえば次のテクノロジーのうちの1つまたは複数をベースとすることができる:バーコード、QRコード(登録商標)、RFID、画像認識、光バリア、近接センサ、重量センサ、機械式のプローブ、圧力プローブ。検出されるべき防護部材は、そのために、相応の技術に属する情報担体を装備する。それぞれ1つの検出手段が各々のX方向位置に、またはこれらから選択された位置に、別々に設けられていてよい。その代替または補足として、1つの検出手段がたとえばカメラとして、または読取距離の大きいRFIDアンテナとして、複数の位置をまとめて監視することができる。検出手段によって検出された特性データの評価は、X線装置の他のコンポーネントを制御するためにも構成されていてよい制御部を通じて行われるのが好ましい。
【0028】
本発明の1つの好ましい実施形態は、保持部の保持区域が、長手方向Xに延びるL字型の形材によってそれぞれ構成されることを意図する。L形材の一方の脚部は、X線装置への保持区域の好ましくは取外し可能な取付けのための役目を果たすのに対して、他方の脚部は防護部材との結合のための収容手段を有する。好ましくは高さ方向Zに延びるこの脚部は、たとえば穴付きストリップとして構成されていてよく、長手方向Xで相前後して位置する穴が収容手段を形成し、これを通して、挿入されるべき防護部材の、ピンとして製作された結合区域を差し込むことができる。
【0029】
その代替として、本発明による保持部の2つの保持区域は、平坦な、好ましくは直角の、逆さまになったU形材の向かい合う脚部であってよい。両方の脚部は、上に挙げたL形材の場合と同じく、高さ方向Zに延びていて、穴付きストリップ、歯付きレールなどとして構成されていてよい。このとき両方の脚部を横方向Yで結合する、U形材の平坦な頂部は、X線検査空間の一部を同時に区切る。さらに、これは好ましくは横方向Yに延びる少なくとも1つのスリットを有することができ、このスリットを通過するようにX線ビームまたはX線扇形ビームを向けることができる。保持区域は薄板・曲げ部品として製作されていてよい。
【0030】
検査されるべき製品の長さによっては、X線検査空間を搬送方向Xに延長することが必要になる場合がある。それに応じて、検査空間を搬送方向で少なくとも部分的に区切る防護部材も、相互に間隔を広げて配置されなければならない。本発明による保持部は、この目的のために、好ましくはテレスコピック式に伸長可能であるのが好都合である。たとえば前述したL形材またはU形材のうちの複数が内外に位置するように、かつ互いに相対的に長手方向へスライド可能なように構成されていてよい。本発明による保持部の長さ変更は手動式に、または適当な駆動部を通じて自動式に行うことができる。加工されるべき製品型式ないし加工されるべき製品群もしくは相応の識別の設定に従って、長さ調整を自動化して行うことが考えられる。その場合、すでに保持部に挿入されている防護部材が、製品に割り当てられているX方向位置へと自動的に移動可能であり、それにより、正しい長さ寸法に合わせて検査空間が自動的に調整される。
【0031】
製品型式または製品群に応じて、X線装置のさまざまに異なるコンフィグレーションを、特に特定の長さ調整、X方向位置、またはそのつど使用されるべき防護部材などに関して、すでに装置の納入前にその放射線安全性の観点からたとえば放射線防護責任者によってチェックして、検査することができる。そうすれば、現場での放射安全性に関わる別途のチェックが、コンフィグレーション変更の際に必要なくなる。
【0032】
特定の製品について、そのために必要な長さおよび/または保持部の求められる全長を簡易に調整できるようにするために、特定の引出し長さがマーキングまたはセンサを備えているのが好都合である。加工されるべき特定の製品型式についての所望の全長を形成するために、第1の保持区域を、長手方向Xへこれに対してテレスコピック式に移動可能な第2の保持区域部材に対して相対的にどこまでスライドさせるべきかのX方向位置をディスプレイに表示し、その他の方式で出力し、色付きで識別表示し、または適切に発光させる(上記参照)ことも考えられる。
【0033】
テレスコピック式の延長に代えて、保持部がモジュール形式での拡張のために構成されていてもよい。たとえば前述したL形材またはU形材のうちの複数をモジュールとして長手方向Xへ相互に差込可能であってよく、個々のモジュールの組み合わせにおけるそれぞれ異なる長さが、保持部の多数の可能な全長を形成することができる。モジュールは、モジュールに配置されているセンサの信号を、またはロック機構や発光手段などに対する制御信号を、隣接するモジュールを介して転送するために、電気インターフェースも有することができる。
【0034】
本発明によるX線装置は、上に説明した保持部と、保持部に挿入可能な、上に説明した種類の放射吸収性の少なくとも1つの防護部材とを含む。検査されるべき製品を、搬送方向Xに沿う搬送経路に沿ってX線検査空間を通過するように搬送可能である。保持部の保持区域はX方向で搬送経路の上方および/または側方に延び、少なくとも1つの防護部材はこれに対して横向きに搬送経路にわたって延びる。従来技術と比べたとき、このX線装置は、1つまたは複数の防護部材を、さまざまに選択可能な、または事前定義されたX位置へ簡易に配置できるという利点を提供する。
【0035】
X線装置は、さまざまな方法ステップを表示し、ないしは指図できるようにするために、制御ユニットと、制御ユニットにより制御可能な表示手段とを含むのが好ましい。制御ユニットは、保持部に挿入されるべき、ないしは挿入されている、少なくとも1つの防護部材の識別指標および/またはその意図されるX方向位置および/または占有されているX方向位置を、表示手段を通じて表示するために構成される。表示手段は、機械のメイン表示器としてのディスプレイ/操作端末であってよく、これを通じてX線装置を操作するための指図が操作者に出力される。その代替または追加として、それぞれのX方向位置を(たとえば当該位置での防護部材の挿入または取外しのために)表示するために、複数の(「ローカルな」)表示手段が個々のX方向位置に、ないしはその近傍に設けられていてもよい。たとえば、考慮の対象となる各々のX方向位置の収容手段に割り当てられたX方向位置を表示するために、上位の制御ユニットによってスイッチオンすることができるローカルな発光手段(LEDなど)が設けられていてよい。制御ユニットは、およびこれと協同作用するディスプレイは、防護部材の挿入または取外しのための操作指図を、透視図のグラフィックによっても表示するために構成されるのが好都合であり、該当するX方向位置および/または防護部材の形態および/またはX線装置の他のコンポーネントに対する相対的な位置がそこから立体的に明らかとなる。
【0036】
たとえば防護部材の挿入または取外しの必要性を出力するために、またはX位置もしくはこれに該当する防護部材に関わる指示を出力するために、音響式の表示手段(ホーン、ブザー、音声出力など)も考えられる。
【0037】
挿入されるべき特定の防護部材についての識別標識は、番号、コーディング、着色、記号、電子式に読取り可能な指標、またはその他の情報を含むことができ、これらは、加工されるべき特定の製品および/またはこれに帰属する特定のX方向位置についての特定の防護部材の選択または割当を操作者に可能にし、もしくは簡易化する。
【0038】
たとえば制御部は、加工されるべき特定の製品型式が選択された後に、当該型式について使用されるべき防護部材の番号またはその他のコーディングが出力される方法を実施することができる。その補足または代替として、防護部材が挿入されるべきX方向位置がディスプレイを通じて出力され、必要に応じて、それぞれのX方向位置もその場所のローカルな表示手段(たとえばLED)によって強調される。これと同様の方式で、取り外されるべき防護手段をディスプレイで指定し、および/または防護部材が取り外されるべきX方向位置を表示することができる。
【0039】
制御ユニットは、特定のX方向位置および/または挿入されるべき防護部材もしくは挿入されている防護部材に関する信号を、アナログ式またはデジタル式の信号インターフェースを通じて他のデータ処理装置に出力するためにも構成されるのが好都合である。
【0040】
本発明によるX線検査システムは、防護部材による特定のX方向位置の占有および/または当該防護部材の識別指標もしくはコーディングを自動的に検出できるようにするために、検出器を含むのが好ましい。それにより、位置(X方向位置)および/または型式(たとえば特定の製品用)に応じた防護部材の具体的な配置が自動的に、または操作者の関与のもとでチェックされて、特定の方法手順を開始または中止することができる方法が可能となる。検出器は、装置の、特に使用される防護部材とそのX方向位置の、特別に簡易な自動式の検証(適正な調整のチェック)を可能にする。調整データには、使用される防護部材とそのX方向位置のほか、特にこれまでのその使用期間、予想される耐用期間、今後許容される利用期間などについての指示も含まれる。
【0041】
調整をローカルに、または上位のレベルで、保存してアーカイビングすることができる。その際に検査される製品にも調整を割り当てることができる。そのために、該当する製品にデータ担体または識別表示が付与されていてよく、それは、当該製品について適用された調整(使用された防護部材の識別、そのX方向位置、製造時点など)を、製品それ自体に保存ないし識別表示するためである。
【0042】
たとえば制御ユニットは、それまでの製品Fから、それまで使用されていた防護部材の種類または位置が変更されることになる新たな製品Fへの製品変更の信号通知を、上位の設備制御部から受けることができる。そして、それまでの製品Fについて装置で使用されていた防護部材を、ないしこれにより占有されていたX方向位置を、ディスプレイないしローカルな表示手段を通じて、これらを取り外すようにとの要請との関連で、それぞれのX方向位置に表示することができる。引き続いて、割り当てられたX方向位置にある検出器を通じて、そこに挿入されている防護部材が正しく取り外されたか否かを制御ユニットが判定することができ、場合によりエラーメッセージおよび/または修正指図を出力することができる。
【0043】
さらに、制御ユニットの一部であってよいデータ記憶装置から、製品Fについて使用されるべき防護部材の割当て、ないしそのコーディング、並びに割り当てられる1つのX方向位置ないし複数のX方向位置を自動的に判定することができる。そして、新たな製品Fについて使用されるべき防護部材を、型式とX方向位置とに従って、上に説明したような方式で表示することができる。好適な検出器は、防護部材が正しいX方向位置で挿入されたか否かを検出することができる。好適な検出器は、さらに挿入後に、そこで挿入された防護部材に取り付けられているコーディングを読み取ることができ、それにより防護部材の正しい選択を、および挿入のためのそのX方向位置を、チェックすることができる。
【0044】
たとえば防護部材が正しく選択されてはいるが、誤ったX方向位置に挿入されている場合、制御ユニットは、誤って適用されたX方向位置の検出を通じて修正指図を出力することができ、この修正指図は、正しいX方向位置の情報ないし表示を含むことができ、或いは、誤って挿入された防護部材を正しい位置にするために搬送方向Xに、またはこれと反対方向にずらさなければならない収容手段の個数を含むことができる。このことが特に有益であり得るのは、困難な照明状況のもとで、またはアクセスしにくい保持部へ、防護部材を挿入しなければならない場合である。このようにディスプレイで、または音響式に、または保持部の近傍のローカルな発光手段によって出力することができる、自動的に出力される情報、たとえば「防護部材を穴3つ分だけ左にずらす」という情報(ここでは「穴」によって、X方向に相前後して位置する保持部の個々の収容手段が意味される)が、適正な組付けないし取外しを簡易化する。
【0045】
誤った防護部材が挿入されていることが検出器を通じて認識された場合、同じく相応の修正指図を、上に説明した表示手段を通じて出力することができる。適正な防護部材の適正な配置が自動的に検出されてチェックされ、および/または操作者によって確認されるまで、設備の動作を自動的に中断することができる。
【0046】
上に説明した本発明による保持部の構成要件と特性は、製品を搬送するために構成された、このような保持部を有するベルト体にも容易に転用ないし適用することができる。その場合、ベルト体に配置される保持部は、1つまたは複数の防護部材を収容するためではなく、製品搬送にとって重要な他のコンポーネントを搬送方向Xに沿って特定のX方向位置に配置するために構成される。
【0047】
したがって、上に説明した種類の保持部を有するベルト体も、同様の方式で、請求項1から9およびこれらと関連する上記の説明に準じて、収容手段を有する少なくとも1つの保持区域を有する。それに対して、保持部に配置されるべき防護部材に代えて、製品搬送にとって重要なコンポーネント(以下において搬送コンポーネントと呼ぶ)の配置が意図され、これには特に次のものが含まれる:受容容器、仕分け手段、識別表示手段、排出手段、並びに光バリアおよびベルト体の上の製品もしくはその製品指標を検出するためのその他のセンサ。このような種類の搬送コンポーネントは、搬送プロセスのための特定の役割を果たすために、製品型式に応じて、搬送方向に沿ってそれぞれ異なるX方向位置でベルト体に配置されなければならない。
【0048】
たとえば、特定の製品を適当な排出手段によって側方へ(横方向Yへ)搬送経路から出るように動かし、これを製品シーケンスから除外して、たとえばベルト体の横隣に配置された受容容器へと誘導することが考えられる。そのために製品がまずX線ビームによって透過照射され、透過照射の評価に依存して、製品の継続搬送か排出かを決定する。
【0049】
排出は、適当な排出手段(エジェクタ、プッシャ、ブロワ、旋回可能なそらせ板など)により、たとえばX線透過照射部のすぐ下流側で行うことができ、排出手段および場合によりこれに付属する受容容器は、たとえばそのつどの製品長さに依存して、製品型式に応じて変わる特定のX方向位置に配置されることになる。防護部材について上ですでに包括的に記述したような保持部の収容手段は、このような搬送コンポーネントを同様の方式と同様の機能性をもってベルト体に配置し、ないしは取り付けるという選択肢も提供する。そのために防護部材に準じて、搬送コンポーネントは、保持部の収容手段と協同作用する結合区域を有する。保持部について上記で説明したすべての機能および装置構成要件(特に、選択される、または占有されているX方向位置のディスプレイおよび/またはその他の表示手段による認識と設定、コーディングおよびコーディングの検出、保持部への防護部材の取付けなど)は、保持部と協同作用する防護部材に代えて、ベルト体の保持部と協同作用する搬送コンポーネントについても同様に当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
次に、本発明のいくつかの構成要件について図面の例を参照しながら説明する。図面は次のものを示す。
図1】本発明によるX線装置を示す簡略化した図である。
図2図1の詳細図である。
図3】2つの異なる防護部材である。
図4】ベルト体およびこれに配置されたいくつかの搬送コンポーネントである。
図5図4の図面を別の視点で見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、X線装置Gを簡略化した斜視図で示している。装置Gは、製品をX線検査のために搬送経路Wに沿って装置Gを通るように搬送するために、生産ラインに沿って配置されていてよい。図示したケースでは、搬送経路は水平の搬送方向Xに延びている。搬送方向に対して横向きに横方向Yが延び、これら両方の方向X,Yに対して直交して高さ方向Zが延びるものとする。X線装置の、ないしは本発明による保持部の、本発明に基づく各部材は一点鎖線の円「A」の内部に位置しており、その内容を図2に拡大して見ることができる。
【0052】
X線装置Gの中心にX線検査室Rが形成されていて、その中で、詳しくは図示しない製品をX線ビームによって透過照射することができる。そのために、図2では隠れているX線源(X線検査室Rの上方)により、Y-Z平面に位置するX線扇形ビームVが生成される。製品はベルト体Hによって搬送経路Wに沿って、ないしは搬送方向Xへ、扇形ビームを通過するように移動し、その後にX線装置Gから再び出ていく。ベルト体の下方または内部に、透過照射された製品によって変化するX線ビームを撮影するために、詳しくは図示しないカメラ手段が配置されている。
【0053】
図2では示唆されているだけのX線検査空間Rは、健康に有害なX線放射の周囲への漏出を回避するために、作動時に全方向で包囲されていなければならない。そのために搬送経路Wの側方に、図2では図面の見やすさのために省略されているカバー(トンネル)が設けられる。ベルト体Hは検査空間Rを下方に向かってほぼ閉鎖し、それに対して、詳しくは見ることができないカバーは、搬送経路Wの上方で上側のビーム防護を形成する。搬送方向Xで、ないしはX線検査空間の入口と出口に、それぞれ防護部材Sが設けられており、そのうち図2には下流側の防護部材Sだけが見えている。防護部材Sは、図示しているケースでは、搬送方向Wに対して横向きにY-Z方向に延びる剛直な長方形のプレートによって実質的に構成される。防護部材Sに、下側の縁部の中央で通過開口部Kが穿設されていて、検査されるべき製品はこれをちょうど通れるように適合する。
【0054】
1つまたは複数の防護部材Sを配置するために、上方に、かつ横方向Yで搬送経路Wと並んで側方に、本発明による保持部Tが設けられている。保持部Tは、それぞれL字型の長手方向形材として構成された、互いに平行にX方向に延びる2つの保持区域M,Nを含んでいる。L形材の上側の水平方向の脚部が、X線検査装置Gの上側部分に組み付けられている。L形材のそれぞれ他方の脚部は、高さ方向Zと反対向きに、ベルト体Hへと向かう方向へと下方に若干突き出している。本実施形態では両方のL形材は、これらの間に位置する幅広の頂部Oによって、下方に向かって開いたU形材を形成する。頂部Oは、ここでは検査空間Rないしそこにある放射線防護部の上側の仕切りの一部であってもよい。
【0055】
X方向に、この形材脚部に規則的な間隔をおいて、ここでは単純な1つの穴ないし複数の穴によって形成される収容手段Lが設けられている。各々の収容手段Lは特定のX方向位置を占めており、図2に表示しているX方向位置P,P,P...は例示であるにすぎず、他を排除するように理解されるべきものではない。一方の保持区域Mの収容手段Lに、これに割り当てられる、他方の保持区域Nの収容手段Lが同じX方向位置で横方向Yに向かい合っている。両方の保持区域M,Nは横方向Yで、図3に詳しく示す防護部材Sをこれらの間に、それぞれ収容手段Lによって定義される実質的に任意のX方向位置Pで挿入可能であるように、互いに間隔をおいている。
【0056】
図3aは、すでに図2に挿入された形態で示しているものと同様の、下側中央に通過開口部Kを有する防護部材Sを示している。防護部材Sは、図2の両方の保持区域M,Nのそれぞれ垂れ下るL字脚部の間の内のりの間隔にほぼ相当する幅を有する、実質的に長方形の形状を有している。防護部材Sの上側の両方の角に、ピンの形態の結合区域A,Bが構成されている。これらは、穴として構成された、保持区域M.Lの収容手段Lに係合するために意図される(結合区域A,Bは、互いに横方向Yで向かい合う、保持部Tの2つの穴へ一時的な変形によって挿入するために、横方向Yに弾性的であるか、またはばねで初期応力をかけられていてよい)。
【0057】
図3bに示す防護部材Sは類似する寸法を有しており、同様に機能する結合区域A,Bを備えている。ただし、この防護部材はプレートとして構成されるのではなく、垂直方向に垂れ下がる、横方向で互いに部分的に分離されて構成された個々の撓みやすい羽根板を有するカーテンとして構成されている。これらの羽根板は、カーテンを通過して搬送される製品が羽根板を一時的に横に、ないしは運動方向に押し除けることができるように柔軟に構成されており、引き続いて再び図3bに示す位置を占めて、実質的に閉じられたビーム防護部を形成する。
【0058】
両方の防護部材Sは、防護部材の特定の特性に関する情報を内容とする、縁部に簡略化して示されたコーディング手段Jを担持している(型式、防護作用、製品適性、寸法、製造日または最終使用日、機能検査など)。コーディング手段は、データを恒常的または一時的に保存して、たとえばRFIDやバーコードのテクノロジーを通じて読取り可能なように維持するために設計されている。
【0059】
図2に示すX線装置Gは、複数の検出器EをさまざまなX方向位置に装備しており、図2では例示として1つの検出器だけがX方向位置Pに示されている。検出器Eは、防護部材SがX方向位置Pで挿入されているか否かを認識するために構成される。さらに検出器Eは、またはここには図示しないその他の検出器は、特定のX方向位置で挿入されている防護部材SのコーディングJを読み取るために構成されていてよい。検出器Eによって検出されたデータは、X線装置Gのさまざまな機能を制御するため、および情報を表示手段Dによって出力するために構成された制御ユニットCに供給される。制御ユニットCに供給されるデータを参照して、たとえば、特定の製品加工について適合する防護部材Sが、正しいX方向位置で挿入されているか否かを判定することができる。
【0060】
表示手段Dは、各種の情報を出力するための、または(たとえばタッチスクリーンのケースで)入力もできるようにするための、ディスプレイの形態の「グローバルな」表示手段である。特にディスプレイDは、たとえば特定の防護部材Sを指定する、または当該防護部材に適用されるX方向位置を指定する、取扱指図を操作者に出力するための役目を果たす。さらにX線装置は、「ローカルな」表示手段Dも個々のX方向位置に含んでおり、そのうち1つだけがLEDの形態でX方向位置Pに図示されている。ローカルな表示手段は、他ならぬそのX方向位置を特定の方法手順中に操作者に表示するために、それぞれ特定のX方向位置の近傍に配置される。
【0061】
図2に示すX線装置は付属の制御ユニットCによって、保持部Tに挿入されるべき、またはこれから取り外されるべき防護手段Sの種類および/またはX方向位置に関する情報を操作者に指示するために構成されており、X方向位置はグローバルまたはローカルな表示手段によって、または音響式の表示(ブザー、警告音、音声出力など)によって、表示することができる。防護部材Sに関する指示もそのような方式で出力することができ、このような指示は制御ユニットCにアクセス可能な記憶装置から取り出すことができ、および/または検出器Eにより検出されたコーディングを評価したうえで判定して出力することができる。
【0062】
図4は、ベルト体Hが本発明による保持部を備えているX線装置Gを、簡略化した図面で示している。図1および2の実施形態に準じて、保持部は、ベルト体Hに配置された、互いに平行に向かい合う2つの保持区域M,Nによって構成される。このケースでは穴付きストリップとして構成される保持区域M,Nは、図1から3に準じて穴を収容手段として有しており、そのうちいくつかが図示されている。
【0063】
収容手段Lは、さまざまな搬送コンポーネントを特定のX方向位置で保持部Hに沿ってこれに取り付けるための役目を果たす。たとえば、横方向Yを向く光線によって、ベルトコンベヤにより搬送される製品の認識を可能にする光バリア13が保持区域Mに取り付けられる。保持区域Nは、選別されるべき製品を搬送方向Xに対して横向きに2つの空気ノズルによって空気の衝撃で付勢することができる仕分け装置11を担持している。それにより製品が、仕分け装置11に横方向Yで向かい合うように保持区域Mに配置された受容容器12に供給される。受容容器12は、適当な結合区域を有する取付側面14を介して保持区域Mに取り付けられている。光バリア13、仕分け装置11、および受容容器12、並びにここには詳しくは図示しないその他の搬送コンポーネントのX方向位置を、それぞれの取付のために利用される収容手段Lを通じて、任意かつ適切に選択することができる。
【0064】
図5は、図4の構造を部分的に破断断面として別の斜視図で示している。受容容器12と光バリア13は、この図面では省略されている。明らかに見られるとおり、仕分け装置11はこれに設けられた結合区域Aを介して、および穴として構成された複数の収容手段Lを介して、保持区域Nと結合されている。仕分け装置を取り付けるためのX方向位置は、事前の試験(たとえばX線透過照射)に合わせて調整したうえで、X線透過照射の評価が完了して場合により製品の選別が仕分け装置に伝えられるよりも前に、既知の搬送速度のもとで製品が仕分け装置に達しないように選択されるのが好都合である。
【符号の説明】
【0065】
A 結合区域
B 結合区域
C 制御ユニット
表示手段(ディスプレイ)
表示手段(LED)
E 検出器
G X線検査装置(X線装置)
H ベルト体
J 特性表示/コーディング
K 通過開口部
L 収容手段
M 保持区域
N 保持区域
O U字型の保持部の頂部
,P,P X方向位置
R X線検査空間
S 防護部材
T 保持部
V 扇形X線ビーム
W 搬送経路
X 搬送方向
Y 横方向
Z 高さ方向
11 仕分け装置
12 受容容器
13 光バリア
14 取付側面
図1
図2
図3a-3b】
図4
図5