(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】ブレーキシステム及びブレーキシステムを備える車両
(51)【国際特許分類】
B60T 17/18 20060101AFI20240607BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T8/17 B
(21)【出願番号】P 2022554574
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2021055741
(87)【国際公開番号】W WO2021185611
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】102020107706.8
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591114043
【氏名又は名称】ヘラ・ゲーエムベーハー・ウント・コムパニー・カーゲーアーアー
(74)【代理人】
【識別番号】100085589
【氏名又は名称】▲桑▼原 史生
(72)【発明者】
【氏名】ヒューゲ、ケリム フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ウテルモーレン、ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーセン、クラウス
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-523619(JP,A)
【文献】特表平11-502169(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0056959(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 17/18
B60T 8/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(11)用のブレーキシステム(10a、10b、10c)であって、ブレーキペダル(12)と、前記車両(11)の前記ブレーキペダル(12)の移動経路及び/又は旋回角度に関する位置データを求める位置センサーユニット(13)と、前記ブレーキペダル(12)が作動する際の作動力に関する力データを求める力センサーユニット(14)と、制御ユニット(15)と、追加の制御ユニット(16)とを備え、
前記位置センサーユニット(13)及び前記力センサーユニット(14)は、それぞれ、互いに分離して配置される少なくとも2つのセンサーチャネル対(13a、13b、13c、13d)を備え、それぞれ一方のセンサーチャネル対(13a、13b)が、前記制御ユニット(15)に前記位置データ又は前記力データを伝送するために、前記制御ユニット(15)と信号接続し、他方のセンサーチャネル対(13c、13d)が、前記追加の制御ユニット(16)に前記位置データ又は前記力データを伝送するために、前記追加の制御ユニット(16)と信号接続することを特徴とするブレーキシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキシステム(10a、10b、10c)であって、前記制御ユニット(15)及び前記追加の制御ユニット(16)は、互いに離隔して配置されることを特徴とする、ブレーキシステム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のブレーキシステム(10a、10b)であって、前記制御ユニット(15)及び前記追加の制御ユニット(16)は、互いに異なるように構成されることを特徴とする、ブレーキシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のブレーキシステム(10a、10b、10c)であって、前記位置センサーユニット(13)及び前記力センサーユニット(14)の前記2つのセンサーチャネル対(13a、13b、13c、13d)は、それぞれ、少なくとも部分的に互いにガルバニ式に分離して構成されることを特徴とする、ブレーキシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のブレーキシステム(10a)であって、前記位置センサーユニット(13)及び前記力センサーユニット(14)の前記2つのセンサーチャネル対(13a、13b、13c、13d)は、それぞれ共通の回路基板(17)上に統合されることを特徴とする、ブレーキシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のブレーキシステム(10b、10c)であって、前記位置センサーユニット(13)及び前記力センサーユニット(14)の前記2つのセンサーチャネル対(13a、13b、13c、13d)は、それぞれ、互いに離隔した異なる回路基板(19、20)上に統合されることを特徴とする、ブレーキシステム。
【請求項7】
請求項1に記載のブレーキシステム(10c)であって、前記制御ユニット(15)は、前記位置データ及び前記力データの受信及び前処理を行う前処理手段(23)と、該前処理手段(23)と信号接続し、前処理された前記位置データ及び前処理された前記力データの更なる処理を行う主制御手段(24)とを備え、前記追加の制御ユニット(16)は、前記位置データ及び前記力データの受信及び前処理を行う追加の前処理手段(25)と、該追加の前処理手段(25)と信号接続し、前処理された前記位置データ及び前処理された前記力データの更なる処理を行う追加の主制御手段(26)とを備えることを特徴とする、ブレーキシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のブレーキシステム(10c)であって、前記前処理手段(23)及び/又は前記追加の前処理手段(25)は、それぞれ、
力データ及び/又は位置データを読み込むプロセスと、
読み込んだ前記力データ及び/又は前記位置データを較正するプロセスと、
異なる力データ及び/又は異なる位置データを互いに計算するプロセスと、
異なる力データ及び/又は異なる位置データを互いに比較するプロセスと、
のうちの少なくとも1つを実行するように構成されることを特徴とする、ブレーキシステム。
【請求項9】
請求項7に記載のブレーキシステム(10c)であって、前記前処理手段(23)及び前記追加の前処理手段(25)は、前記ブレーキペダル(12)内に統合され、前記主制御手段(24)及び前記追加の主制御手段(26)は、前記ブレーキペダル(12)の外部に設置されることを特徴とする、ブレーキシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のブレーキシステム(10a、10b、10c)であって、前記位置センサーユニット(13)は、少なくとも1つの誘導測定センサーを備え、前記力センサーユニット(14)は、少なくとも1つの非誘導測定センサーを備えることを特徴とする、ブレーキシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のブレーキシステム(10a)であって、前記制御ユニット(15)及び該制御ユニット(15)と信号接続する各センサーチャネル(14a、13a、13b)は、電源(21)に接続され、前記追加の制御ユニット(16)及び該追加の制御ユニット(16)と信号接続する各センサーチャネル(14b、13c、13d)は、追加の電源(22)に接続されることを特徴とする、ブレーキシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のブレーキシステム(10a、10b、10c)を備える、車両(11)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキペダルと、車両のブレーキペダルの移動経路及び/又は旋回角度に関する位置データを求める位置センサーユニットと、ブレーキペダルが作動する際の作動力に関する力データを求める力センサーユニットと、を備える車両用ブレーキシステムに関する。本発明は、さらに、そのようなブレーキシステムを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の駆動系の電化が進むことにより、排気ガス要件も高まることで、ブレーキ作用を生成する新たな可能性を開発する必要が生じている。現在のブレーキシステムは、もはや、ブレーキ作用を真空に基づいて強化するものではなく、サーボ電気によるものとなるように構成される。しかしながら、ブレーキ作用には依然として機械的な介入が行われる。すなわち、ブレーキブースターが故障した場合でも、ブレーキペダルを踏むことによって、ブレーキ作用を得ることができる。
【0003】
そこで、次世代のシステムは、現在のアクセルペダルにおいて既知であるものと同様に、運転者からのブレーキ指令とブレーキ作用とを完全に切り離すように更に開発されるべきである。ブレーキペダルにおいては、安全性の観点から、アクセルペダルに比べて要件がはるかに高くなるため、不具合を検出するために、より高度で多様な冗長性が必要となる。その結果、車両レベルの制御機器には、信号処理の相応に高いコストを伴う多数のチャネルが必要である。
【0004】
ブレーキペダルに力センサー及び位置センサー又は経路センサーを統合することが知られている。力センサーは、弾性ユニットとの経路差測定センサーとして構成され、位置センサーと共通の回路基板を共有する。そのようなシステムにおいて、全てのデータを上位の制御機器に伝送し、そこで、センサーチャネルと信号処理との比較によって処理を行うことができる。続いて、処理されたデータに基づいて、運転者のブレーキ要求を確定することができる。この構想の欠点は、1つには、原則として、制御機器に多くの冗長なセンサー情報が送られることである。いわゆるフェールオペレーショナルシステムにおいて、通常、互いに分離した2つのブレーキ制御機器が使用される。ここでの基本構想は、双方のブレーキ制御機器が、ブレーキペダルの位置測定のチャネルを共有することである。しかしながら、「SENT」又は「PSI5」等の確立されたプロトコルを伴う位置センサーは、2つの受信器に並列して送信することができない。さらに、ブレーキペダル位置の情報を交換するための双方のブレーキ制御機器の通信は、完全な独立性を保証するためには遅すぎるか又は全く実施されない。さらに、回路基板上にシステム構成要素を統合することにより、不具合に対する独立性を十分に保証することができないため、可用性及び安全性の問題が生じるおそれがある。
【0005】
上述の記載に対応する一般的なブレーキシステムは、特許文献1から見て取ることができる。特許文献1においては、力センサー及び位置センサーの信号が中央評価ユニットに供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上述の問題を少なくとも部分的に考慮することである。特に、本発明の課題は、簡単に構築され、信頼性を有して機能する電気ブレーキシステム、及びそのようなブレーキシステムを備える車両を創出することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、特許請求の範囲に記載の発明によって解決される。特に、この課題は、請求項1に記載のブレーキシステム及び請求項13に記載の車両によって解決される。本発明の更なる利点は、従属請求項、本明細書及び図面から得られる。また、ブレーキシステムに関連して記載される特徴は、当然ながら、本発明に係る車両に関しても適用され、その逆もまた同様であるため、本発明の個々の態様に対する開示に関して、常に交互に参照され、及び/又は参照され得る。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、車両用ブレーキシステムが提供される。ブレーキシステムは、ブレーキペダルと、車両のブレーキペダルの移動経路及び/又は旋回角度に関する位置データを求める位置センサーユニットと、ブレーキペダルが作動する際の作動力に関する力データを求める力センサーユニットとを備える。ブレーキシステムは、制御ユニット及び追加の制御ユニットを更に備え、位置センサーユニットは、制御ユニット及び追加の制御ユニットに位置データを伝送するために、制御ユニット及び追加の制御ユニットと信号接続し、力センサーユニットは、制御ユニット及び追加の制御ユニットに力データを伝送するために、制御ユニット及び追加の制御ユニットと信号接続する。
【0010】
したがって、既知の従来技術は、ブレーキシステムにおいて、2つの制御ユニット、特に互いに分離して配置される2つの制御ユニットが提供されるように発展される。すなわち、センサー機構から制御ユニット又は対応するECUまで冗長性が拡張される。制御ユニット及び追加の制御ユニットは、それぞれ、一般的又は本質的に一般的な制御機器又は対応するECUとして理解することができる。制御ユニット及び追加の制御ユニットは、互いに独立して異なるように構成することができる。提案されるブレーキシステムにおいて、位置センサーユニット及び力センサーユニットは、それぞれ、双方の制御ユニット、すなわち、制御ユニット及び追加の制御ユニットに並列に送信することができ、すなわち、位置データ又は力データを伝送することができる。本発明に従って、力データ及び位置データのそれぞれの信号処理を行う制御ユニット及び追加の制御ユニットを設けることにより、ブレーキシステムの故障安全性の向上を簡単に達成することができる。これまでのところ、従来のブレーキシステムは、ブレーキペダルを作動させる機械式及び/又は油圧式の緊急システムを常に必要としていた。本発明に係るブレーキシステムを使用する場合、そのような緊急システムは基本的に省略することができる。制御ユニット及び追加の制御ユニットは、それぞれ、独自に複数のチャネルを有して冗長に構成することができる。この場合、各センサーチャネルは、制御ユニット及び追加の制御ユニットに並列して接続することができる。
【0011】
位置センサーユニットが位置データを求めるように構成されているということは、位置センサーユニットによって、位置データを求めることができ、及び/又は、対応する位置値、特に旋回角度及び/又は移動経路に関する値を測定することができることとして理解することができる。力センサーユニットが力データを求めるように構成されているということは、力センサーユニットによって、力データを求めることができ、及び/又は、対応する力値、特に作動力に関する値を測定することができることとして理解することができる。
【0012】
信号接続は、有線接続又は無線によって実現され得る又は実現されている場合がある。特に、ブレーキシステムは、位置センサーユニットから制御ユニットに位置データを伝送する第1の信号線と、信号技術により第1の信号線に対して少なくとも部分的に並列に延在し、位置センサーユニットから追加の制御ユニットに位置データを伝送する第2の信号線とを備えることができる。それに対応して、ブレーキシステムは、位置センサーユニットから制御ユニットに力データを伝送する第3の信号線と、信号技術により第3の信号線に対して少なくとも部分的に並列に延在し、位置センサーユニットから追加の制御ユニットに力データを伝送する第4の信号線とを備えることができる。
【0013】
位置センサーユニットが、制御ユニット及び追加の制御ユニットに位置データを伝送するために、制御ユニット及び追加の制御ユニットと信号接続するということは、位置センサーユニットが、制御ユニットに位置データを伝送するために、制御ユニットと信号接続すること、及び、追加の制御ユニットに位置データを伝送するために、追加の制御ユニットと信号接続することとして理解することができる。力センサーユニットが、制御ユニット及び追加の制御ユニットに力データを伝送するために、制御ユニット及び追加の制御ユニットと信号接続するということは、力センサーユニットが、制御ユニットに力データを伝送するために、制御ユニットと信号接続すること、及び、追加の制御ユニットに力データを伝送するために、追加の制御ユニットと信号接続することとして理解することができる。
【0014】
力センサーは、ペダル踏力センサーとして理解することができる。力センサーユニットにより、ブレーキシステムの力シミュレーターユニットの位置を測定することができる。したがって、力センサーユニットにより、経路測定も行うことができる。位置センサーは、ペダル経路センサーとして理解することができる。ブレーキシステムは、ブレーキバイワイヤ(Brake-by-Wire)システムの形態及び/又は電気ブレーキシステムの形態、特に、運転者がブレーキ力を生成する可能性を排し、運転者がブレーキペダルを作動させるための純粋な機械式及び/又は純粋な油圧式の緊急システムを省いた電気ブレーキシステムの形態で構成されることが好ましい。
【0015】
本発明の更なる実施形態によれば、ブレーキシステムにおいて、制御ユニット及び追加の制御ユニットを互いに離隔して配置することが可能である。さらに、制御ユニット及び追加の制御ユニットを互いに異なるように構成することが可能である。その上、本発明に係るブレーキシステムにおいて、位置センサーユニット及び/又は力センサーユニットのセンサーチャネル対は、それぞれ、少なくとも部分的に互いにガルバニ式に分離されて構成することが可能である。したがって、いずれの場合も、ブレーキシステムの動作安全性を更に改善することができ、又は故障安全性を高めることができる。制御ユニット及び追加の制御ユニットを互いに異なるように構成するということは、双方の制御ユニットが単に冗長であるだけでなく、異なる機能構成要素を意図的に伴って構成及び/又は装備することとしても理解することができる。
【0016】
本発明に係るブレーキシステムにおいて、位置センサーユニット及び/又は力センサーユニットは、互いに分離して配置される少なくとも2つのセンサーチャネル対をそれぞれ備え、それぞれ1つのセンサーチャネル対が、制御ユニットに位置データ又は力データを伝送するために、制御ユニットと信号接続し、別のセンサーチャネル対が、追加の制御ユニットに位置データ又は力データを伝送するために、追加の制御ユニットと信号接続することが更に可能である。したがって、故障安全性を更に高めることができる。位置センサーユニット及び/又は力センサーユニットが、互いに分離して配置される少なくとも2つのセンサーチャネル対をそれぞれ備えるということは、位置センサーユニットが、互いに分離して配置される少なくとも2つのセンサーチャネル対を備えることができ、力センサーユニットが、同様に、互いに分離して配置される少なくとも2つのセンサーチャネル対を備えることができることとして理解される。それぞれ1つのセンサーチャネル対が、制御ユニットに位置データ又は力データを伝送するために、制御ユニットと信号接続し、別のセンサーチャネル対が、追加の制御ユニットに位置データ又は力データを伝送するために、追加の制御ユニットと信号接続するということは、位置センサーユニットの1つのセンサーチャネル対が、制御ユニットに位置データを伝送するために、制御ユニットと信号接続することができ、位置センサーユニットの別のセンサーチャネル対が、追加の制御ユニットに位置データを伝送するために、追加の制御ユニットと信号接続することができること、及び、力センサーユニットの1つのセンサーチャネル対が、制御ユニットに力データを伝送するために、制御ユニットと信号接続することができ、力センサーユニットの別のセンサーチャネル対が、追加の制御ユニットに力データを伝送するために、追加の制御ユニットと信号接続することができることとして理解される。
【0017】
位置センサーユニット及び/又は力センサーユニットのセンサーチャネル対は、本発明に係るブレーキシステムにおいて、それぞれ共通の回路基板に統合することができる。したがって、ブレーキシステムは、特に簡単かつ小型に提供することができる。
【0018】
本発明の代替的な変形構成によれば、位置センサーユニット及び/又は力センサーユニットのセンサーチャネル対は、互いに離隔した異なる回路基板上にそれぞれ統合することが可能である。これにより、ブレーキシステムの不慮の又は誤ったブレーキ要求に対する故障安全性を高めることができる。
【0019】
本発明に係るブレーキシステムにおいて、制御ユニットは、位置データ及び力データの受信及び前処理を行う前処理手段と、前処理手段と信号接続し、前処理された位置データ及び前処理された力データの更なる処理を行う主制御手段とを備え、追加の制御ユニットは、位置データ及び力データの受信及び前処理を行う追加の前処理手段と、追加の前処理手段と信号接続し、前処理された位置データ及び前処理された力データの更なる処理を行う追加の主制御手段とを備えることが可能である。このような構成では、前処理手段と主処理手段との間の長い及び/又は二重の接続線が存在しない。その上、センサーユニットと前処理手段との間には、短い信号伝送距離が可能であるため、より長い伝送経路の場合には使用不能であるPSI5等のデジタルプロトコルを使用することができる。さらに、材料コストを節約することができる。前処理手段を使用することにより、整理統合された位置データ及び/又は力データのみを、対応する及び/又は上位の制御ユニットに送信すればよい。
【0020】
本発明に係るブレーキシステムの更なる実施形態において、前処理手段及び/又は追加の前処理手段は、それぞれ、
-力データ及び/又は位置データを読み込むプロセスと、
-読み込んだ力データ及び/又は位置データを較正するプロセスと、
-異なる力データ及び/又は異なる位置データを互いに計算するプロセスと、
-異なる力データ及び/又は異なる位置データを互いに比較するプロセスと、
のうちの少なくとも1つを実行するように構成することが可能である。
【0021】
したがって、前処理手段において、本質的なデータ処理プロセスを既に実行することができる。続いて、前処理手段と主制御手段との間で簡単な信号伝送のみが行われるが、この信号伝送は、より長い信号線を介しても問題なく実現することができる。上述したプロセスステップの他に、前処理手段において又は前処理手段及び追加の前処理手段において、
-力データ及び/又は位置データをフィルタリングするプロセスと、
-オフセット又は偏差値を減算するプロセスと、
-例えば、複数の信号データ、すなわち、特に力データ及び/又は位置データに関する複数の値の平均値を出すために、個々の信号データを互いに計算するプロセスと、
-同期監視のために、異なる力データ及び/又は異なる位置データを互いに比較するプロセスと、
-個々の信号データ、特に力データ及び/又は位置データの診断データを評価するプロセスと、
-主制御手段若しくは追加の主制御手段、又は特にECUの形態の対応する上位の制御機器に転送するために、転送信号及び/又は転送データを算出するプロセスと、
を更に実行することができる。
【0022】
本発明の更なる変形構成において、前処理手段及び追加の前処理手段をブレーキペダル内に統合し、主制御手段及び追加の主制御手段をブレーキペダルの外部に設置することが可能である。したがって、ブレーキシステムは、特に省スペースに提供することができる。ブレーキペダル内に設置された前処理手段から、ブレーキペダルの外部に設置された、好ましくは好適なECUの形態で構成される主制御手段に信号及び/又はデータを伝送するためには、2つの簡単な信号線のみをブレーキペダルから外部に引き出せばよい。代替的に、当然ながら、ブレーキシステムの無線データ伝送及び/又は情報伝送のための伝送ユニットを介して、前処理手段から主制御手段にワイヤレス又は無線の信号伝送又はデータ伝送を行うことも可能である。
【0023】
さらに、本発明に係るブレーキシステムにおいて、位置センサーユニットは、少なくとも1つの誘導測定センサーを備え、力センサーユニットは、少なくとも1つの非誘導測定センサーを備えることが可能である。そのような多様性により、ブレーキシステムの故障安全性の向上を達成することができる。少なくとも1つの非誘導測定センサーは、磁気センサー、例えば、ホールセンサー、TMRセンサー、AMRセンサー、若しくはGMRセンサー、又は静電容量センサーを含むことができる。誘導測定センサーを使用する場合、これらのセンサーは、電源において、誘導励起を共有することが好ましい。それにもかかわらず、複数のセンサーチャネルは、共通の電源供給を有することができる。
【0024】
本発明のブレーキシステムにおいて、制御ユニット及び制御ユニットと信号接続する各センサーチャネルが電源に接続され、追加の制御ユニット及び追加の制御ユニットと信号接続する各センサーチャネルが追加の電源に接続される場合、更なる利点があり得る。また、これにより、故障安全性を改善することができる。本発明によれば、制御ユニットと、制御ユニットと信号接続する、力センサーユニットの少なくとも1つのセンサーチャネルと、制御ユニットと信号接続する、位置センサーユニットの少なくとも1つのセンサーチャネルとは、それぞれのユニットの電源供給のために電源に接続することができる。それに対応して、追加の制御ユニットと、追加の制御ユニットと信号接続する、力センサーユニットの少なくとも1つのセンサーチャネルと、追加の制御ユニットと信号接続する、位置センサーユニットの少なくとも1つのセンサーチャネルとは、それぞれのユニットの電源供給のために追加の電源に接続することができる。電源及び追加の電源は、互いに別個に及び/又は空間的に分離して構成されることが好ましい。
【0025】
本発明の更なる態様によれば、上述のブレーキシステムを備える車両が提供される。したがって、本発明に係る車両は、本発明に係るブレーキシステムに関連して詳細に説明したものと同じ利点をもたらす。車両は、モータービークル、特に道路車両の形態で提供されることが好ましい。
【0026】
本発明を改善する更なる方策は、図面に概略的に示される本発明の種々の実施例に関する以下の記載から得られる。特許請求の範囲、本明細書、又は図面から得られる全ての特徴及び/又は利点は、構造の詳細及び空間的な配置を含め、それ自体でも、様々な組合せにおいても、本発明に本質的なものであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るブレーキシステムを示す回路ブロック図である。
【
図2】
図1に示されている第1の実施形態に係るブレーキシステムを備える車両の図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態を説明するためのブレーキペダルの正面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態を説明するためのブレーキペダルの側面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係るブレーキシステムを示す回路ブロック図である。
【
図6】本発明の第2の実施形態を説明するためのブレーキペダルの正面図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態に係るブレーキシステムを示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
同じ機能及び作用様式を有する要素には、図面においてそれぞれ同一の参照符号が付される。
【0029】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る車両11用のブレーキシステム10aを説明するための回路ブロック図を示している。
図1に示されているブレーキシステム10aは、
図3及び
図4に示されているブレーキペダル12と、車両11のブレーキペダル12の移動経路及び/又は旋回角度に関する位置データを求める位置センサーユニット13と、ブレーキペダル12が作動する際の作動力に関する力データを求める力センサーユニット14と、制御ユニット15と、追加の制御ユニット16とを備える。位置センサーユニット13は、制御ユニット15及び追加の制御ユニット16に位置データを伝送するために、制御ユニット15及び追加の制御ユニット16と信号接続する。さらに、力センサーユニット14は、制御ユニット15及び追加の制御ユニット16に力データを伝送するために、制御ユニット15及び追加の制御ユニット16と信号接続する。信号接続は、それぞれ、センサーユニット13、14と制御ユニット15、16との間のそれぞれの信号線を介して有線接続によって確立される。
【0030】
図1に示されているように、制御ユニット15及び追加の制御ユニット16は、互いに離隔して配置される。さらに、制御ユニット15及び追加の制御ユニット16は、互いに異なるように構成される。より正確には、位置センサーユニット13は、誘導測定センサーを備え、力センサーユニット14は、非誘導測定センサーを備える。制御ユニット15及び制御ユニット15と信号接続するセンサーチャネル14a、13a、13bは、電源21に接続される。追加の制御ユニット16及び追加の制御ユニット16と信号接続するセンサーチャネル14b、13c、13dは、追加の電源22に接続される。
【0031】
図1に示されている実施例によれば、位置センサーユニット13は、互いに分離して配置される2つのセンサーチャネル対13a、13b、13c、13dを備える。ここでは、センサーチャネル対13a、13bは、制御ユニット15に位置データを伝送するために、制御ユニット15と信号接続し、別のセンサーチャネル対13c、13dは、追加の制御ユニット16に位置データを伝送するために、追加の制御ユニット16と信号接続する。位置センサーユニット13のセンサーチャネル対13a、13b、13c、13dは、それぞれ互いにガルバニ式に分離されて構成される。さらに、
図1に示されている位置センサーユニット13のセンサーチャネル対13a、13b、13c、13dは、共通の回路基板17上に統合される。同様に、力センサーユニット14の双方のセンサーチャネル14a、14bは、共通の回路基板18上に統合される。
図2は、
図1に記載のブレーキシステム10aを備える乗用車の形態の車両11を示している。
【0032】
図3及び
図4において、ブレーキペダル12がそれぞれ異なる図で示されている。図示のブレーキペダル12は、ペダルアーム27及びペダル板28を備える。ペダルアーム27は、第1の回転軸30及び第2の回転軸31の周りに旋回可能に配置される。位置センサーユニット13は、第1の回転軸30の周りでのペダルアーム27の回転又は回転値を求めるように構成及び配置される。力センサーユニット14は、第2の回転軸31の周りでのペダルアーム27の回転時及び/又は詳細には示さない機構32の移動時の力データを求めるために構成及び配置される。ペダルアーム27と機構32との間には、弾性又はばね付勢ユニット29が配置される。力束内に配置される弾性ユニット29は、ペダル板28におけるペダル踏力に対して、第2の回転軸31の周りの回転を第1の回転軸30に比べて遅らせる。ペダル板28にかかる力は、位置センサーユニット13及び力センサーユニット14の位置の差と、弾性ユニット29のばね剛性とから求められる。
【0033】
図5は、第2の実施形態に係るブレーキシステム10bを説明するための回路ブロック図を示している。
図5に示されているブレーキシステム10bにおいて、位置センサーユニット13のセンサーチャネル対13a、13b、13c、13dが、互いに離隔した異なる回路基板19、20上に統合される。より正確には、センサーチャネル対13a、13bが回路基板19上に統合され、更なるセンサーチャネル対13c、13dが更なる回路基板20上に統合される。各センサーチャネル対13a、13b、13c、13dは、それぞれ、センサーとして理解することができる。
図6に示されているように、センサーチャネル対13a、13b、13c、13dを備える回路基板19、20は、ペダルアーム27又は第1の回転軸30の互いに反対側に別個に配置される。
【0034】
図7は、第3の実施形態に係るブレーキシステム10cを説明するための回路ブロック図を示している。図示の実施形態において、制御ユニット15は、位置データ及び力データの受信及び前処理を行う前処理手段23と、前処理手段23と信号接続し、前処理された位置データ及び前処理された力データの更なる処理を行う主制御手段24とを備える。さらに、追加の制御ユニット16は、位置データ及び力データの受信及び前処理を行う追加の前処理手段25と、追加の前処理手段25と信号接続し、前処理された位置データ及び前処理された力データの更なる処理を行う追加の主制御手段26とを備える。前処理手段23及び追加の前処理手段25は、それぞれ、
-力データ及び位置データを読み込むプロセスと、
-読み込んだ力データ及び位置データを較正するプロセスと、
-異なる力データ及び異なる位置データを互いに計算するプロセスと、
-異なる力データ及び異なる位置データを互いに比較するプロセスと、
を実行するように構成される。
【0035】
さらに、前処理手段23及び追加の前処理手段25は、ブレーキペダル12内に統合され、主制御手段24及び追加の主制御手段26は、ブレーキペダル12の外部に設置される。
【0036】
ブレーキシステムにおける電気的及び機械的な不具合を検出するために、ペダル踏力とともにペダル経路も確定することができる。ペダル経路の情報は、力センサーユニット14のセンサーチャネル14a、14bから直接確定することができる。それに対し、ブレーキペダル12を作動させるペダル踏力又は作動力を確定するためには、まず、力センサーユニット14のセンサーチャネル14a、14bを、センサーチャネル14a、14bが仮想的に第1の回転軸30上にあるように、詳細には言及しない機構32から確定される伝達関数を用いて計算しなければならない。次いで、位置センサーユニット13の信号から力センサーユニット14の関連する信号を減算し、続いて、弾性ユニット29の剛性を用いて結果を計算し、ペダル踏力を得ることができる。ブレーキペダル12又は弾性ユニット29が予付勢されている場合、このことも更に考慮しなければならない。そうでなければ、ペダル踏力の変化のみ確定することができるが、絶対的に存在する力は確定することができない。
【0037】
本発明は、図示の実施形態の他に、更なる構成原理も許容する。すなわち、本発明は、図面に関連して説明した実施例に限定されるものとみなすべきではない。