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特許7499909携行型時計のケースに風防を組み付ける方法
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  • 特許-携行型時計のケースに風防を組み付ける方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】携行型時計のケースに風防を組み付ける方法
(51)【国際特許分類】
   G04B 39/02 20060101AFI20240607BHJP
【FI】
G04B39/02 M
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023053014
(22)【出願日】2023-03-29
(65)【公開番号】P2023153748
(43)【公開日】2023-10-18
【審査請求日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】22166760.3
(32)【優先日】2022-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク・バルマン
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-134973(JP,U)
【文献】特開2018-100927(JP,A)
【文献】スイス国特許出願公開第00714277(CH,A3)
【文献】スイス国特許発明第00302614(CH,A)
【文献】特開昭53-052153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風防(26)をケース(4)に組み付けて携行型時計(2)を形成する方法であって、
前記ケースには、前記風防の内面(27)の周部下面(25)に接合されるように意図されている環状面(13)があり、
前記携行型時計には、上面(19)があるフランジ(18)があり、
前記フランジ(18)は、前記ケースの上部(5)の、前記ケース内側の軸方向に沿った周面である、内側軸方向面(14)に沿った挿入軸に沿って、前記フランジに軸方向の圧力をかけることにより挿入することができる大きさであり、
前記内側軸方向面(14)は、前記ケースの中央側にて前記環状面の境界を形成し、
前記方法は、
前記内側軸方向面によって形成される開口に前記フランジを部分的に挿入するステップと、
前記ケースの前記環状面及び/又は前記周部下面上に接着剤(20a)を堆積させるステップとを行い、その後に、
前記風防の前記周部下面が前記環状面に軸方向に重なり合う前記風防の最終的な水平位置において、前記風防を前記フランジの前記上面に対向するように配置して、前記フランジの前記上面が、前記周部下面に隣接する前記風防の前記内面の接触面(29)と接触し、この接触面及び前記フランジの上面が、これら2つの面の間に少なくとも1つの連続的な環状の接触領域があるように構成するようにする、ステップと、
前記環状面の上方における最終的な軸方向位置に前記フランジの前記上面が達するまで、かつ、前記風防の前記周部下面が前記接着剤で覆われて前記ケースの前記環状面と前記風防の前記周部下面の間に連続的な前記接着剤リングを形成するまで、前記開口に前記フランジを徐々に挿入し続けることを可能にする強度で、前記風防の外面に軸方向圧力を与えるステップと、
前記接着剤を硬化させて緊密接合部(20b)を形成するステップとを行う
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ケース(4)には、前記フランジ(18)の下面のための当接部(15)を形成する肩部がある
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記当接部(15)は、前記フランジの下面(32)に平行である連続的な環状止め面を形成し、
前記フランジの前記下面(32)は、前記風防の前記外面に軸方向圧力を与える前記ステップの終わりにおいて、前記連続的な環状止め面全体に対向するように支持される
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記内側軸方向面は、前記フランジの外側側面(30)の少なくとも1つの連続的な環状領域に平行であり、
前記外側側面(30)は、前記連続的な環状領域が前記内側軸方向面に沿って挿入された後で、前記内側軸方向面と連続的に接触するように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記風防(26)の前記外面上の前記軸方向圧力は、少なくとも、前記接着剤を硬化させる前記ステップの第1の部分の間に維持される
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記風防(26)の前記外面に軸方向圧力を与える前記ステップの終わりにおいて、前記上面(19)は、20μmよりも大きく100μm未満の軸方向距離離れて前記環状面(13)の上方に位置する
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ケースの前記環状面(13)又は前記風防(26)の前記周部下面(25)には、前記接着剤のための凹領域及び/又は経路を形成するパターンがある
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記環状面(13)全体にわたって前記緊密接合部(20b)に最小厚みがあることを確実にするように、スペーサーが前記接着剤(20a)内に組み入れられる
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ケースの前記上部(5)には、側壁(28)を有するリム(12)である突出部があり、
前記側壁(28)は、前記環状面の外周から軸方向に立ち上がり、
前記側壁は、前記風防の前記外面に軸方向圧力を与える前記ステップの終わりにおいて前記風防を半径方向外側にて包囲する
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記接着剤を堆積させる前記ステップにおいて設けられる前記接着剤の量は、前記風防の前記外面に軸方向圧力を与える前記ステップにおいて、前記接着剤の一部が前記風防の側面と前記リムの前記側壁の間に形成される溝内へと昇り上がるように設計され、
前記緊密接合部は、前記環状面を完全に覆い、前記溝を少なくとも部分的に充填するように形成される
ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風防、特に、アナログ時間表示の上に設けられた風防、を携行型時計ケースに組み付ける方法に関する。
【0002】
本発明の範囲内で、接合によって風防がケースに固定されて携行型時計(例、腕時計、懐中時計)を形成するように意図されている。ケースがベゼルを形成する部分を含むような有利な場合において、前記組み付けは、好ましくは、風防の側壁と、この側壁に対向するように位置するベゼルの内壁との間にエラストマーガスケットを設けずに行う。
【背景技術】
【0003】
様々な携行型時計、特に、風防を半径方向外側にて包囲する上側リムがケースにない設計のもの、すなわち、伝統的なベゼルがない設計のもの、に対して、接合によって、携行型時計の風防、特に風防のガラス、を取り付けることが提案されている。このような態様は、例えば、スイス特許文献CH622151において提案されており、これは、サファイア風防がその内面の周部領域にて接合される水平上面があるミドル部によって形成される携行型時計ケースであって、この風防の内面がミドル部の水平上面に対向するものについて記載している。完成した携行型時計を観察するユーザーの視界から接着剤を隠すために、組み付けのために選択された接着剤と非常に良く接着する風防の前記周部領域内において、風防には、薄く不透明な金属被覆があることができる。この被覆は、前記周部領域を内側にわずかに超えて延在するようにされて、風防を通り抜ける軸方向の視野から表盤のエッジを隠すことができる。
【0004】
本明細書は、組み付けられた「ケースと風防」のアセンブリーの美的外観を改善させるための技術、すなわち、風防の側面、及びミドル部の外面の上部に対する、研削を含む機械加工、を開示している。これによって、風防の側面とミドル部の間に連続的な面を与え、また、前記のような機械加工のおかげで、水平上面の外側に流出してしまう可能性が非常に高い接着剤の残留物をいずれもなくす。なお、ケースの外側の余剰接着剤をなくすことは、化学物質を用いる手段のような他の手段によっても達成することができる。しかし、ケースの内側へと、すなわち、アナログ時間表示の場合には表盤と風防の間の空間へと、特にこの空間の境界を形成するミドル部の内側鉛直面に沿って、接着剤が流出してしまうと、大きな問題が発生する。このため、表盤のエッジに位置する領域にわたって延在している隠し用の金属被覆によって、この空間を見ることが難しくされてきた。
【0005】
日本国の実全昭56-027686は、風防を受けるように構成している携行型時計ケースの上部と、それを接合によってケースに固定することの様々な代替的形態について記載している。この上部は、風防の下面に接合される環状面を形成する。接着剤は、風防の下の密閉空間を形成し風防を通して見ることができる側面に沿って環状面の内側から容易に流出してしまい、第1図に示されているように、携行型時計の中央側からの接着剤の流出がいずれもはっきりと見えてしまう。
【0006】
フランス特許文献FR2524992は、その図1~3を参照しながら、爪によってミドル部に固定されたフランジに風防が接合された携行型時計について説明している。図3に示している代替的実施形態において、ミドル部の上側リムを形成するケースの突出部が、風防の側面を覆っている。フランジの外側鉛直面と突出部の間に溝があるおかげで、余剰接着剤がこの溝内に入り込むことができる。これによって、溝の上部が均一に接着剤で覆われているかぎり、フランジの外側の余剰接着剤の問題が解決される。しかし、別の問題が発生する。なぜなら、フランジがこのようにケースに接合されるために、例えば、風防を交換したい場合であっても、特に、この風防がひび割れを発生させる可能性がある場合には、「フランジと風防」のアセンブリーを取り外すことが困難になるからである。余剰接着剤がフランジの内側側面に沿って流出してしまうことがあり、このような余剰接着剤が風防を通して見えてしまうという問題は、フランス特許文献FR2524992においては依然として解決されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主な目的は、携行型時計の表示、特にアナログ表示、のために設けられた閉じた空間内へと接着剤が流入することを防ぎつつ、携行型時計ケースの環状肩部、特に水平環状面、に風防を接合することに関連する上述の問題を解決することである。第2の目的は、風防の内面の周部下面に接合されるように意図されている、携行型時計ケースの環状面が、完全に、そして好ましくは均等に、接着剤で覆われることを確実にするために十分な接着剤を受けることができることを確実にしつつ、第1の目的を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、本発明は、風防をケースに組み付けて携行型時計を形成する方法に関し、前記ケースには、前記風防の内面の周部下面に接合されるように意図されている環状面がある。前記携行型時計には、上面があるフランジがあり、前記フランジは、前記ケースの上部の内側軸方向面に沿った挿入軸に沿って強制的に挿入することができる大きさであり、前記内側軸方向面は、前記ケースの中央側にて前記環状面の境界を形成する。
【0009】
本組み付け方法は、
- 前記内側軸方向面によって形成される開口に前記フランジを部分的に挿入するステップと、
- 前記ケースの前記環状面及び/又は前記周部下面上に接着剤を堆積させるステップとを行い、その後に、
- 前記風防の前記周部下面が前記環状面に軸方向に重なり合う前記風防の最終的な水平位置において、前記風防を前記フランジの前記上面に対向するように配置して、前記フランジの前記上面が、前記周部下面に隣接する前記風防の前記内面の接触面と接触し、この接触面及び前記フランジの上面が、これら2つの面の間に少なくとも1つの連続的な環状の接触領域があるように構成するようにする、ステップと、
- 前記環状面の上方における最終的な軸方向位置に前記フランジの前記上面が達するまで、かつ、前記風防の前記周部下面が接着剤で覆われて前記ケースの前記環状面と前記風防の前記周部下面の間に連続的な接着剤リングを形成するまで、前記開口に前記フランジを徐々に挿入し続けることを可能にする強度で、前記風防の外面に軸方向圧力を与えるステップと、
- 接着剤を硬化させて緊密接合部を形成するステップと
を行う。
【0010】
好ましい代替的実施形態において、前記風防の前記外面に軸方向圧力を与える前記ステップの終わりにおいて、前記フランジの前記上面は、20μmよりも大きく100μm未満の軸方向距離離れて、前記ケースの前記環状面の軸方向上方に位置する。このために、1つの特定の代替的実施形態において、前記ケースには、前記フランジのための軸方向の当接部を形成する肩部がある。好ましくは、前記当接部は、前記フランジの下面に平行である連続的な環状止め面を形成し、前記フランジの前記下面は、前記風防の前記外面に軸方向圧力を与える前記ステップの終わりにおいて、前記連続的な環状止め面全体に対向するように支持される。
【0011】
別の好ましい代替的実施形態において、前記内側鉛直面は、前記フランジの外側側面の少なくとも1つの連続的な環状領域に平行であり、前記外側側面は、前記連続的な環状領域が前記内側鉛直面に沿って挿入された後で、前記内側鉛直面と連続的に接触するように構成している。
【0012】
主な実施形態において、前記ケースの前記上部には、側壁を形成するリムを形成する突出部があり、前記側壁は、前記環状面の前記外周から軸方向に立ち上がり、前記側壁は、前記風防の前記外面に軸方向圧力を与える前記ステップの終わりにおいて前記風防を半径方向外側にて包囲する。好ましい代替的実施形態において、接着剤の一部が前記風防の側面と前記リムの前記側壁の間に形成される溝内へと昇り上がり、前記緊密接合部は、前記環状面を完全に覆い、前記溝を少なくとも部分的に充填するように形成される。
【0013】
以下、例を用いて、添付の図面を参照しながら本発明について詳細に説明する。なお、これに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る組み付け方法の間に発生する第1の中間状態における携行型時計ケースとフランジを示している。
図2】本発明に係る組み付け方法の間に発生する第2の中間状態におけるケース、フランジ及び風防を示している。
図3】本発明に係る組み付け方法によって発生する最終状態におけるケース、フランジ及び風防を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明に係るケースに風防を組み付けて携行型時計を形成する方法の主な実施形態について説明する。
【0016】
携行型時計2のために意図されたケース4は、裏部6とミドル部-ベゼルとを形成するように一体的に形成されている。ミドル部と、裏部及び/又はベゼルが別個のものであるような他の代替的実施形態についても考えることができる。なお、本発明の説明において用いる用語においては、明瞭化のために、ケース4、フランジ18及び風防26どうしを区別して、当初から別々であった3つの別個の要素があるように説明する。ケースには、上部5があり、この上部5には、環状面13を形成する第1の肩部があり、この環状面13は、説明する代替的実施形態においては水平である。「水平面」は、ケース4の中心軸に垂直な面を意味すると理解することができる。この環状面は、風防26の内面27の周部下面25に接合されるように意図されており、この周部下面25は、この環状面に平行な面を形成する。他の代替的実施形態において、この風防の周部下面は、全体として環状面に平行であり、この環状面ないし周部下面は、例えば中間的環状領域を除いて、平行であり、この中間的環状領域には、環状面の幅のほぼ中央に位置する環状溝が設けられて、風防をケースに組み付けるために設けられた接着剤20aを受けるための空欠部が形成され、したがって、この組み付けの後に得られる、接着剤の厚みを大きくして、緊密接合部20bの中間的領域を形成する。
【0017】
その後で、ケース4の上部5は、環状面13をケースの内側にて内側鉛直面14の境界を形成し、この内側鉛直面14は、環状面13の内周から下降する。上部5には、環状面13の外周から鉛直方向に立ち上がる側壁28を形成するリム12を形成する突出部があり、この鉛直側壁28は、伝統的な形態で、風防26がケース4のベゼルの内側の上側開口内に配置されてこのケースを閉じると、風防26を半径方向外側にて包囲するように意図されている。なお、形容詞「鉛直方向」と副詞「鉛直方向に」はそれぞれ、「軸方向」と「軸方向に」を意味する。すなわち、携行型時計ケースの中心軸に沿った方向を意味する。携行型時計2には、さらに、ケースの上部5とは別個のものであるフランジ18があり、このフランジ18は、ケースの中心軸と一致する挿入軸に沿って、上部5の開口内へと、この開口を形成する内側鉛直面14に沿って、強制的に挿入することができるような寸法構成を有する。この内側鉛直面14は、ケースの中央側にて環状面13を制限する。フランジ18には、風防がケースに取り付けられた後に風防の内面27の接触面29に対向する上面19があり、この接触面29は、周部下面25の近くにある。一般的には、上面19と接触面29は、ケース4のベゼルの内側の上側開口によって形成される凹部に風防26が挿入されてから風防26がフランジ18に対向するように適用されたときに、前記2つの面の間に少なくとも1つの連続的な環状の接触領域があるように構成している。好ましくは、風防の上面19と接触面29は平行である。
【0018】
ケースには、さらに、フランジ18のための当接部15を形成する第2の肩部がある。なお、フランジ18の最終的な軸方向位置、すなわち、このフランジ18の下側の境界、を定めるように意図されたこの当接部は、ムーブメントのために設けられるケーシングリングによって、ムーブメント自体によって、又はムーブメントの上方に配置される表盤10によって、形成することもできる。しかし、各部品の製造公差及びケース内に取り付ける各種要素の組み付け公差を考えると、フランジ18のための当接部は、好ましくは、ケース自体によって形成される。一般的には、環状面13と当接部15は、好ましいことに、同じ部品によって形成され、このことのおかげで、環状面13と当接部15の間の軸方向距離を正確に管理することが可能になる。この利点は、本発明に係る組み付け方法についての以下の説明を読むことで一層明らかになる。当接部15は、フランジの下面32に平行な環状止め面を形成し、この下面32は、フランジがケース4の内側鉛直面14に沿って挿入された後に、前記環状止め面に対向するように位置する。好ましくは、ケース4の内側鉛直面14は、フランジの外側側面30の少なくとも1つの連続的な環状領域に平行であり、この外側側面30は、この連続的な環状領域が内側鉛直面に沿って挿入された後には内側鉛直面14と連続的に接触するように構成している。有利な代替的実施形態において、連続的な環状領域は、フランジの外側側面30の下部によって形成される。特定の代替的実施形態において、ケース4の内側鉛直面14は、フランジがケース4内における最終位置にされた後には、フランジの外側側面と平行であり、少なくとも、内側鉛直面14に対向するようにされたこの外側側面の部分と平行である。
【0019】
携行型時計2を形成するために、まず、ケース4内にムーブメント8を表盤10とともに導入し、このムーブメント8には、アナログ時間表示24を形成する分針22と時針23がある。
【0020】
この風防26をケース4に組み付ける方法は、
- 内側鉛直面14によって形成される開口内へとフランジ18を、フランジ18の高さよりも小さい軸方向距離にわたって部分的に挿入するステップであって、このフランジの上面19が、この部分的挿入の結果として、環状面13の上方に配置され、この上面の意図された最終的な軸方向位置の上方に配置される、ステップと、
- 接着剤20aをケースの環状面13及び/又は風防の周部下面25上に堆積させるステップと
の2つのステップを行い、その後に、
- 風防26をフランジ18の上面19に対向するようにし、この風防26を実質的に最終水平位置に配置するステップであって、この最終水平位置においては、ケースの環状面13が、風防26の周部下面25に軸方向に重なり合い、フランジ18の上面19が、風防26の内面27の接触面29に接触するようにされ、この接触面29と、フランジ18の上面19が、これら2つの面の間に少なくとも1つの連続的な環状の接触領域があるように構成している、ステップと、
- 内側鉛直面14によって形成される対応する開口へのフランジ18の挿入が、風防の周部下面25が接着剤20aで覆われてケースの環状面13と風防の周部下面25の間にて連続的な接着剤のリングを形成するまで、そして、フランジの上面19が前記環状面13の上方の前記最終的な軸方向位置に達するまで、徐々に継続することを可能にする強度で、風防の外面に軸方向圧力を与えるステップと、
- 接着剤を硬化させて緊密接合部20bを形成するステップと
の3つのステップを行う。
【0021】
本発明に係るケースに風防を組み付ける方法の特徴のおかげで、フランジ18の内側側面34に沿って接着剤が存在しない。なお、上方からムーブメント8を表盤10とともに導入することは、1つの代替的実施形態において、接着剤の堆積と上述のフランジの部分的挿入の間に行うことができる。ミドル部から取り外し可能であるように意図されている裏部がケースにあるような1つの代替的実施形態において、ムーブメント及びアナログ表示を行う表盤の導入は、本組み付け方法を実行した後に、下方から、すなわち、裏部によって閉じるように意図された開口を通して、行うことができる。
【0022】
有利な代替的実施形態において、風防の外面に軸方向圧力を与えるステップの終わりにおいて、フランジ18は、当接部15に支えられるようにされる。したがって、フランジの下面32は、当接部によって形成される環状止め面全体に対向するように支えられる。別の代替的実施形態において、フランジのための当接部は、表盤10によって形成することができる。しかし、すでに述べたように、後者の代替的実施形態は、公差の問題を発生させる。すなわち、前記軸方向圧力を与えるステップの終わりにおいてフランジの上面19の最終的なレベルを適切に管理することは難しい。
【0023】
別の有利な代替的実施形態において、風防の外面に軸方向圧力を与える前記ステップの終わりにおいて、フランジ18の上面19は、20μmよりも大きく100μm以下の軸方向距離離して、ケースの環状面13の上方に軸方向に配置される。特に、製造公差を考えると、設定値として、例えば、60~70μmの軸方向距離とされる。このことによって、接着剤20aによって形成され前記接着剤硬化ステップの後に得られる緊密接合部20bが、特定の非ゼロの厚みを有することが確実になる。
【0024】
本組み付け方法の別の実装態様の第1の代替的実施形態において、環状面13又は対応する周部下面25にパターン形成することによって、接着接合部20bの特定の厚みを得ることができる。特に、環状面には、接着剤20aのための凹状領域及び/又は経路を形成するパターンがある。第2の代替的実施形態において、スペーサー、特に小さなビーズ(例えば、直径が50~150μmの球)、を接着剤内に導入する。これらのスペーサーは、環状面13全体にわたって緊密接合部20bに最小厚みがあることを確実にするように接着剤20a内に組み入れられる。本発明のこの他の実装態様は、緊密接合部を形成する接着剤が特定の非ゼロの厚みを有することを確実にするだけでなく、この厚みが実質的に一定であることも確実にする。したがって、硬化前の接着剤の厚みを適切に管理することができる。この他の実装態様において、フランジの最終的な軸方向位置を決めるための当接部15の存在は、フランジが最終的に環状面13と同じレベルになることを防ぐ上で必須ではない。なぜなら、前記パターン形成やスペーサー、特に風防のビーズや合成ビーズが、風防26に与えられる軸方向圧力がこれら2つの面を同じレベルにしないこと、すなわち、同じ軸方向位置にしないこと、を確実にするからである。
【0025】
好ましくは、接着剤20aを硬化させる前記ステップの少なくとも第1の部分の間に、風防26の外面に与えられる軸方向圧力が維持される。
【0026】
すでに記載したように、図示している代替的実施形態において、ケース4の上部5には、環状面13の外周から軸方向に立ち上がる側壁28を形成するリム12を形成する突出部があり、この側壁は、風防の外面に軸方向圧力を与える前記ステップの終わりにおいて、風防26を半径方向外側にて包囲する。好ましくは、接着剤を堆積させる前記ステップにおいて設けられる接着剤20aの量は、風防の外面に軸方向圧力を与える前記ステップにおいて、接着剤の一部が、風防の側面とリム12の側壁28の間に形成される溝内へと昇り上がるように設計される。したがって、緊密接合部20bは、環状面13を完全に覆い、前記溝を少なくとも部分的に充填する。したがって、この溝は、余分な接着剤を受ける槽として作用し、さらには、接合によって風防26をケース4に固定すること、また、得られる接着接合部20bが十分に緊密であることを確実にすることにも貢献する。
【符号の説明】
【0027】
2 携行型時計
4 ケース
5 ケースの上部
6 裏部
8 ムーブメント
10 表盤
12 リム
13 環状面
14 内側軸方向面
15 当接部
18 フランジ
19 フランジの上面
24 アナログ時間表示
25 周部下面
26 風防
27 風防の内面
28 側壁
29 接触面
30 外側側面
32 フランジの下面
20a 接着剤
20b 緊密接合部
22 分針
23 時針
図1
図2
図3