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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】滑り支承、及び免震構造物
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20240607BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
E04H9/02 331E
F16F15/02 L
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023146056
(22)【出願日】2023-09-08
【審査請求日】2023-09-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】外園 真里奈
(72)【発明者】
【氏名】酒井 快典
(72)【発明者】
【氏名】山口 路夫
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-052679(JP,A)
【文献】特開2016-216906(JP,A)
【文献】特開2018-145660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/00 - 9/16
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造体と前記上部構造体に対向する下部構造体との間に配置される滑り支承であって、
前記上部構造体に締結部材で固定される上沓と、
前記下部構造体に締結部材で固定される下沓と、を備え、
前記上沓及び前記下沓の少なくとも一方に、前記締結部材を取り付けるための作業用空間を形成する凹入部が側面から凹入する状態で形成されており、
前記凹入部は、前記側面における、前記上沓の軸心回りの周方向に、分散して複数形成されている、滑り支承。
【請求項2】
前記上沓及び前記下沓は平面視で多角形状であり、前記上沓の角部の位置であって、平面視において前記上沓の軸心回りの周方向における位置と、前記下沓の角部の位置であって、前記周方向における位置とは一致している、
請求項1に記載の滑り支承。
【請求項3】
前記滑り支承は、建築物の中間層に配置される中間層免震である、
請求項2に記載の滑り支承。
【請求項4】
前記上沓及び前記下沓は平面視で多角形状であり、前記上沓の角部の位置であって、平面視において前記上沓の軸心回りの周方向における位置と、前記下沓の角部の位置であって、前記周方向における位置とが異なっている、
請求項1に記載の滑り支承。
【請求項5】
前記上沓と、前記下沓とは、同一形状である、
請求項1に記載の滑り支承。
【請求項6】
前記凹入部は、前記上沓及び前記下沓の一方のみに形成されている、
請求項1に記載の滑り支承。
【請求項7】
前記上沓と前記下沓とは、軸心が一致するよう配置されており、
前記上沓は、前記締結部材で前記上部構造体に固定される上締結部分を有しており、
前記下沓は、前記締結部材で前記下部構造体に固定される下締結部分を有しており、
前記上締結部分と前記下締結部分とは、前記軸心に直交する方向である径方向での存在領域が重複する、
請求項1に記載の滑り支承。
【請求項8】
平面視において、前記上沓と前記下沓との外形状が同一であり、
前記上締結部分と前記下締結部分との平面視領域が一致している、
請求項7に記載の滑り支承。
【請求項9】
前記上沓及び前記下沓は、円筒形状である、
請求項1に記載の滑り支承。
【請求項10】
前記凹入部は、切削加工されている、
請求項1に記載の滑り支承。
【請求項11】
前記上沓の下面は、上滑り面を有しており、
前記下沓の上面は、下滑り面を有しており、
前記上滑り面と前記下滑り面の少なくとも一方は、凹球面である、
請求項1に記載の滑り支承。
【請求項12】
前記上滑り面及び前記下滑り面の双方が、凹球面である、
請求項11に記載の滑り支承。
【請求項13】
前記上滑り面と前記下滑り面とは同一形状である、
請求項12に記載の滑り支承。
【請求項14】
請求項2に記載の滑り支承と、
前記上部構造体と、
前記下部構造体と、
を備え、
前記滑り支承は、建築物の上層部としての前記上部構造体と、前記建築物の下層部としての前記下部構造体との間に配置される中間層免震である、
免震構造物。
【請求項15】
第2上部構造体と、
前記第2上部構造体に対向する第2下部構造体と、
前記第2上部構造体と前記第2下部構造体との間に配置される第2滑り支承と、
をさらに備え、
前記第2滑り支承は、
前記第2上部構造体に締結部材で固定される第2上沓と、
前記第2下部構造体に締結部材で固定される第2下沓と、
を備え、
前記第2上沓及び前記第2下沓は、平面視で互いに重複しないはみ出し部分を有し、
前記はみ出し部分には、前記締結部材を取り付ける第2取付用穴が形成され、
前記はみ出し部分として、平面視で台形状の偏平はみ出し部分を有しており、
前記第2滑り支承は、基礎構造としての前記第2下部構造体に固定される基礎免震である、
請求項14に記載の免震構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑り支承、及び免震構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物などに設けられる免震装置として、滑り支承が知られている。滑り支承は、上下方向に対向する上沓及び下沓を備える。上沓は、ボルト等の締結部材で上部構造体に固定され、下沓は、ボルト等の締結部材で下部構造体に固定される。上沓の下面における外周部と、下沓の上面における外周部との間隔は小さい。したがって、平面視で矩形状の上沓及び下沓を、上沓と下沓との平面視姿勢を揃えて配置すると、締結部材の長さに応じた上下方向の空間が確保できず、取付作業ができない。そこで、従来から、上沓と下沓との平面視姿勢を異ならせて、上沓や下沓における固定部に対して締結部材を取り付けるための作業用空間を確保していた(例えば、下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-33716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
平面視で矩形状の上沓及び下沓を、上沓と下沓との平面視姿勢を異ならせて配置すると、滑り支承の全体の外形が大きくなるため、平面視での占有領域が大きくなり、構造物の設計上の不利がある。また、上沓と下沓との平面視姿勢を異ならせて配置しても、下部構造体と上沓の下面との間や、上部構造体と下沓の上面との間に十分な大きさの空間が確保できない場合がある。この場合、当該空間を確保するために、上部構造体または下部構造体に上下方向に凹入する空間(箱抜き部)を形成すること等が考えられる。しかしながら、上部構造体または下部構造体に箱抜き部を形成すると、上部構造体または下部構造体に断面欠損箇所が生じたり、現場作業の手間が発生したりする。そのため、上沓及び下沓に対する締結部材の取り付け作業のための空間を確保できる滑り支承が求められている。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、上沓及び下沓に対する締結部材の取り付け作業のための空間を確保できる滑り支承、及び免震構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る滑り支承は、上部構造体と前記上部構造体に対向する下部構造体との間に配置される滑り支承であって、前記上部構造体に締結部材で固定される上沓と、前記下部構造体に締結部材で固定される下沓と、を備え、前記上沓及び前記下沓の少なくとも一方に、前記締結部材を取り付けるための作業用空間を形成する凹入部が側面から凹入する状態で形成されている。
【0007】
本発明の一態様に係る免震構造物は、前記滑り支承と、前記上部構造体と、前記下部構造体と、を備え、前記滑り支承は、建築物の上層部としての前記上部構造体と、前記建築物の下層部としての前記下部構造体との間に配置される中間層免震である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上沓及び下沓に対する締結部材の取り付け作業のための空間を確保できる滑り支承、及び免震構造物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る滑り支承及び免震構造物の正面断面図である。
図2】第1実施形態に係る滑り支承の斜視図である。
図3】第1実施形態に係る滑り支承の平面図である。
図4】第1実施形態に係る滑り支承の、図3のA-A線に沿った片側断面図である。
図5】第2実施形態に係る滑り支承の斜視図である。
図6】第2実施形態に係る滑り支承の平面図である。
図7】第3実施形態に係る滑り支承の斜視図である。
図8】第3実施形態に係る滑り支承の平面図である。
図9】第3実施形態に係る滑り支承の、図8のB-B線に沿った片側断面図である。
図10】第4実施形態に係る第2滑り支承の正面断面図である。
図11】第4実施形態に係る第2滑り支承の斜視図である。
図12】第4実施形態に係る第2滑り支承の平面図である。
図13】第4実施形態に係る免震構造物を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、図1図4を参照し、本発明の第1実施形態に係る滑り支承1及び免震構造物100を説明する。図1に示すように、免震構造物100は、上部構造体Uと、下部構造体Lと、滑り支承1と、を有する。上部構造体Uと下部構造体Lとは、上下方向に対向する。滑り支承1は、上部構造体Uと下部構造体Lとの間に配置される。滑り支承1は、地震動が発生した際、上部構造体Uと下部構造体Lとを水平方向に相対変位させる。これにより、下部構造体Lの振動が上部構造体Uに伝達されることを抑制する。
【0011】
例えば、滑り支承1は、ビル等の建築物の中間層に配置され、中間層免震に用いられる。この場合、例えば、上部構造体Uは建築物の上層部であり、下部構造体Lは建築物の下層部である。滑り支承1は、中間層免震のうち柱頭免震に用いられてもよい。この場合、下部構造体Lは柱の柱頭部である。なお、滑り支承1は、基礎免震に用いられてもよい。
【0012】
滑り支承1は、上沓10と、下沓20と、上沓10と下沓20との間を摺動するスライダー30とを有する。
【0013】
上沓10は、上部構造体Uの下部に配置される。上沓10は、上部構造体Uに、ボルト等の締結部材Fによって相対移動不可に固定される。上沓10は、平面視で矩形状の板材である。上沓10は、溶接鋼材用圧延鋼材(SM490A、B、C、もしくはSN490B、C、もしくはS45C)等から形成されている。
【0014】
上沓10の下面には、凹球面である上滑り面11が設けられている。上滑り面11は、平面視で円形状に形成されている。上滑り面11には、ステンレス製の滑り板(図示せず)が固定されている。また、上沓10には、滑り板の外周において、滑り板を上滑り面11に固定するための平面視で環状の上ストッパーリング12が固定されている。
なお、以下の説明では、平面視における上滑り面11の中心を通り上下方向に延びる仮想的な軸を、上沓10の軸心という。上沓10の軸心は、平面視において、上沓10の外形の重心位置と一致している。また、平面視において、上沓10の軸心と交差する方向を径方向といい、上沓10の軸心回りに周回する方向を周方向という。
【0015】
図2及び図3に示すように、上沓10の4つの角部にはそれぞれ、締結部材Fで上部構造体Uに締結される上締結部分14が設けられる。上締結部分14には、締結部材Fを取り付ける上側取付用穴14a(取付用穴)が設けられている。上側取付用穴14aは、上沓10を、上沓10の板厚方向に貫通する。
【0016】
上締結部分14には、締結部材Fを取り付けるための作業用空間Sを形成する上側凹入部15(凹入部)が形成されている。上側凹入部15は、上沓10の下面から上方に凹むよう形成される。上側凹入部15は、上沓10の側面10aから凹入する状態で形成されている。図示の例において、上側凹入部15は、平面視で三角形状である。なお、上側凹入部15の形状は三角形に限られず、例えば、平面視で台形状や矩形状などであってもよい。例えば、上側凹入部15は、切削加工により形成されている。なお、平面視で矩形状のプレートと、平面視で八角形状のプレートとを接合して上沓10を形成することで、上側凹入部15を設けてもよい。
【0017】
下沓20は、下部構造体Lの上部に配置される。下沓20は、下部構造体Lに、ボルト等の締結部材Fによって相対移動不可に固定される。下沓20は、平面視で矩形状の板材である。下沓20は、溶接鋼材用圧延鋼材(SM490A、B、C、もしくはSN490B、C、もしくはS45C)等から形成されている。
【0018】
下沓20の上面には、凹球面である下滑り面21が設けられている。下滑り面21は、平面視で円形状に形成されている。下滑り面21には、ステンレス製の滑り板(図示せず)が固定されている。また、下沓20には、滑り板の外周において、滑り板を下滑り面21に固定するための平面視環状の下ストッパーリング22が固定されている。
なお、以下の説明では、平面視における下滑り面21の中心を通り上下方向に延びる仮想的な軸を、下沓20の軸心という。下沓20の軸心は、平面視において、下沓20の外形の重心位置と一致している。
【0019】
下沓20の4つの角部にはそれぞれ、締結部材Fで下部構造体Lに締結される下締結部分24が設けられる。下締結部分24には、締結部材Fを取り付ける下側取付用穴24a(取付用穴)が設けられている。下側取付用穴24aは、下沓20を、下沓20の板厚方向に貫通する。
【0020】
下締結部分24には、締結部材Fを取り付けるための作業用空間Sを形成する下側凹入部25(凹入部)が形成されている。下側凹入部25は、下沓20の上面から下方に凹むよう形成される。下側凹入部25は、下沓20の側面20aから凹入する状態で形成されている。図示の例において、下側凹入部25は、平面視で三角形状である。なお、下側凹入部25の形状は三角形に限られず、例えば、平面視で台形状や矩形状などであってもよい。例えば、下側凹入部25は、切削加工により形成されている。なお、平面視で矩形状のプレートと、平面視で八角形状のプレートとを接合して下沓20を形成することで、下側凹入部25を設けてもよい。
【0021】
本実施形態では、上沓10と下沓20とは同一形状を有している。すなわち、平面視で、上沓10と下沓20との外形状は同一である。上滑り面11と下滑り面21とは同一形状である。上側凹入部15と下側凹入部25とは、同一形状である。より詳細には、上側凹入部15と下側凹入部25とは、平面視で同一形状である。上沓10における、上側凹入部15の板厚方向の長さ(上側凹入部15の凹入深さ)と、下沓20における、下側凹入部25の板厚方向の長さ(下側凹入部25の凹入深さ)とは、同一である。
【0022】
スライダー30は、上沓10と下沓20との間に配置される。スライダー30は、略円柱状を呈している。スライダー30は、凸球面である上滑り面31及び下滑り面32を備える。スライダー30は、溶接鋼材用圧延鋼材(SM490A、B、C、もしくはSN490B、C、もしくはS45C)、またはステンレス鋼材(SUS304、SUS316)等から形成される。スライダー30は、面圧60N/mm(60MPa)程度の耐荷強度を有している。
【0023】
上滑り面31は、上滑り面11と摺動可能に接しており、下滑り面32は、下滑り面21と摺動可能に接している。スライダー30を上沓10及び下沓20に対して摺動しやすくするために、上滑り面31及び下滑り面32には、例えば、摩擦材が設けられている。摩擦材は、例えば、少なくともPTFEを素材とする摩擦材である。摩擦材は二重織物により形成される。二重織物は、PTFE繊維(polytetrafluoroethylene、ポリテトラフルオロエチレン)と、PTFE繊維よりも引張強度の高い繊維(高強度繊維)とにより形成される。ここで、「PTFE繊維よりも引張強度の高い繊維」としては、ナイロン6・6、ナイロン6、ナイロン4・6などのポリアミドやポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルやパラアラミドなどの繊維を挙げることができる。また、「PTFE繊維よりも引張強度の高い繊維」として、メタアラミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ガラス、カーボン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、LCP、ポリイミド、PEEKなどの繊維を挙げることができる。さらに、「PTFE繊維よりも引張強度の高い繊維」として、熱融着繊維や綿、ウールなどの繊維を適用してもよい。その中でも、耐薬品性、耐加水分解性に優れ、引張強度の極めて高いPPS繊維が望ましい。なお、少なくともPTFEを素材とする摩擦材としては、二重織物以外のPTFE繊維を含む織物でもよく、また、PTFEのみを素材とする摩擦材、PTFEと他の樹脂の複合素材からなる摩擦材、PTFEを素材とする摩擦材と他の樹脂を素材とする摩擦材との積層構造の摩擦材などであってもよい。
【0024】
スライダー30が、上沓10と下沓20との間を摺動することで、上沓10と下沓20とは水平方向に相対移動が可能である。これにより、地震動による下部構造体Lの振動が下沓20に伝達された時、下沓20が上沓10に対して相対移動する。このような動きをすることで、地震動による下部構造体Lの振動が上沓10を介して上部構造体Uに伝達されることを防ぐ。
【0025】
次に、上沓10及び下沓20の配置関係について説明する。なお、上述のように、地震動が発生した際、上沓10と下沓20とは水平方向に相対移動する。以下の説明では、特段の記載がない場合には、上沓10と下沓20とが水平方向に相対移動していない状態である、初期状態における上沓10及び下沓20の配置関係について説明する。初期状態における上沓10及び下沓20の配置関係は、滑り支承1を上部構造体U及び下部構造体Lに取り付ける際の上沓10及び下沓20の配置関係である。
【0026】
初期状態において、上沓10及び下沓20は、上沓10の軸心と下沓20の軸心とが一致するよう配置される。上沓10及び下沓20は、上沓10と下沓20との平面視姿勢が一致するよう配置される。すなわち、上沓10及び下沓20は、平面視において、上沓10の角部と下沓20の角部とが、互いに重なるよう配置されている。上沓10の角部の周方向における位置と、下沓20の角部の周方向における位置とは、一致している。
上締結部分14(上側凹入部15)と下締結部分24(下側凹入部25)とは、径方向での存在領域が重複するよう配置される。上締結部分14(上側凹入部15)と下締結部分24(下側凹入部25)とは、平面視で互いに重なるよう配置される。
【0027】
以上説明したように、本実施形態に係る滑り支承1は、上部構造体Uに締結部材Fで固定される上沓10と、下部構造体Lに締結部材Fで固定される下沓20と、を備える。上沓10及び下沓20の少なくとも一方に、締結部材Fを取り付けるための作業用空間Sを形成する凹入部15、25が側面10a、20aから凹入する状態で形成されている。
【0028】
上沓10及び下沓20の少なくとも一方に凹入部15、25を形成することで、締結部材Fを取り付けるための作業用空間Sを確保することができる。ここで、一般的に、下部構造体と上沓の下面との間や、上部構造体と下沓の上面との間に、締結部材を取り付けるための作業用空間が確保できない場合、当該空間を確保するために、下部構造体に箱抜き部を形成することが考えられる。本実施形態に係る滑り支承1では、上述のように凹入部15、25を形成することで締結部材Fを取り付けるための作業用空間Sを確保することができるため、上記の箱抜き部の深さを抑制、あるいは箱抜き部を不要とすることができる。
【0029】
また、上沓10及び下沓20は平面視で多角形状であり、上沓10の角部の位置であって周方向における位置と、下沓20の角部の位置であって周方向における位置とは一致している。
これにより、凹入部15、25を形成することで作業用空間Sを確保しつつ、滑り支承1の平面視での占有領域を抑制できる。
【0030】
また、滑り支承1は、建築物の中間層に配置される中間層免震である。
中間層免震においては、滑り支承1を耐火被覆する必要がある。滑り支承1の平面視での占有領域を抑制できるため、耐火被覆面積を抑制することができる。
【0031】
また、上沓10と、下沓20とは、同一形状である。
これにより、上沓10と下沓20とのプレート部材を兼用することができる。
【0032】
また、上沓10と下沓20とは、軸心が一致するよう配置されている。上沓10は、締結部材Fで上部構造体Uに固定される上締結部分14を有しており、下沓20は、締結部材Fで下部構造体Lに固定される下締結部分24を有している。上締結部分14と下締結部分24とは、径方向での存在領域が重複する。
これにより、滑り支承1の平面視での占有領域を抑制できる。
【0033】
また、平面視において、上沓10と下沓20との外形状が同一であり、上締結部分14と下締結部分24との平面視領域が一致している。
これにより、上締結部分14を上部構造体Uに固定するための作業用空間及び下締結部分24を下部構造体Lに固定するための作業用空間を兼用することができる。
【0034】
また、凹入部15、25は、切削加工されている。
これにより、例えば複数のプレートを溶接等により接合することで凹入部を設ける場合と比較して、上沓10及び/または下沓20の形状を容易に形成できる。
【0035】
また、上沓10の下面は、上滑り面11を有しており、下沓20の上面は、下滑り面21を有している。上滑り面11と下滑り面21の少なくとも一方は、凹球面である。
これにより、滑り支承1の上下方向のサイズを低減することができる。また、上沓10及び下沓20の滑り面が平坦面である平面滑り支承に比べて、地震動による下部構造体Lの振動が下沓20に伝達された時に下沓20が上沓10に対して水平方向に相対移動する範囲を抑制することができ、他の構造物との干渉を回避しやすい。なお、滑り支承1の上下方向のサイズが小さくなると、下部構造体Lと上沓10の下面との隙間や、上部構造体Uと下沓20の上面との隙間が小さくなるが、上沓10及び下沓20の少なくとも一方に凹入部15、25が形成されているため、上沓10及び下沓20に対する締結部材Fの取り付け作業のための作業用空間Sを確保できる。
【0036】
また、上滑り面11及び下滑り面21の双方が、凹球面である。
これにより、上滑り面11及び下滑り面21の双方が凹球面であるため、上滑り面及び下滑り面のうちいずれか一方が凹球面である場合と比べて、変形量を確保するための装置平面を小さくできる。
【0037】
また、上滑り面11と下滑り面21とは同一形状である。
これにより、上沓10に形成される上滑り面11と下沓20に形成される下滑り面21とは互いに相手の形状に制約を受けることがないため、上滑り面11及び下滑り面21の面積を十分に確保することができる。また、上沓10及び下沓20の製造効率を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態に係る免震構造物100は、滑り支承1と、上部構造体Uと、下部構造体Lと、を備える。滑り支承1は、建築物の上層部としての上部構造体Uと、建築物の下層部としての下部構造体Lとの間に配置される中間層免震である。
これにより、滑り支承1の平面視での占有領域を抑制できるため、免震構造物100の設計の自由度が向上する。また、中間層免震においては、滑り支承1を耐火被覆する必要がある。滑り支承1の平面視での占有領域を抑制できるため、耐火被覆面積を抑制することができる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、図5及び図6を参照し、本発明に係る第2実施形態の滑り支承2を説明する。
なお、第2実施形態において、第1実施形態における構成要素と同様の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0040】
本実施形態では、上沓10及び下沓20は、上沓10と下沓20との平面視姿勢を異ならせて配置される。例えば、平面視において、上沓10と下沓20とが重なり合っている状態から、上沓10を下沓20に対して周方向に45度回転させて配置する。すなわち、上沓10及び下沓20は、平面視において、上沓10の角部と下沓20の角部とが、互いに重ならないよう配置されている。上沓10の角部の周方向における位置と、下沓20の角部の周方向における位置とは、異なっている。この場合、上締結部分14(上側凹入部15)と下締結部分24(下側凹入部25)とは、平面視で互いに重ならないよう配置される。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係る滑り支承2では、上沓10及び下沓20は平面視で多角形状であり、上沓10の角部の位置であって周方向における位置と、下沓20の角部の位置であって周方向における位置とが異なっている。
これにより、上沓10及び下沓20に対する締結部材Fの取り付け作業のための作業用空間Sをより確実に確保できる。
【0042】
(第3実施形態)
次に、図7図9を参照し、本発明に係る第3実施形態の滑り支承3を説明する。
なお、第3実施形態において、第1実施形態における構成要素と同様の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0043】
本実施形態において、上沓10及び下沓20は、円筒形である。すなわち、上沓10及び下沓20は、平面視で円形状である。
【0044】
上沓10の外周部には、締結部材Fで上部構造体Uに締結される複数の上締結部分17が設けられる。例えば、複数の上締結部分17が周方向に等間隔に配置される。上締結部分17には、締結部材Fを取り付ける上側取付用穴17a(取付用穴)が設けられている。上側取付用穴17aは、上沓10を、上沓10の板厚方向に貫通する。
【0045】
上締結部分17には、締結部材Fを取り付けるための作業用空間Sを形成する上側凹入部18(凹入部)が形成されている。上側凹入部18は、上沓10の下面から上方に凹むよう形成される。上側凹入部18は、上沓10の側面10aから凹入する状態で形成されている。例えば、上側凹入部18は、切削加工により形成されている。図示の例において、上側凹入部18は、平面視で略矩形状である。上側凹入部18の形状はこれに限られない。
【0046】
下沓20の外周部には、締結部材Fで下部構造体Lに締結される複数の下締結部分27が設けられる。例えば、複数の下締結部分27が周方向に等間隔に配置される。下締結部分27には、締結部材Fを取り付ける下側取付用穴27a(取付用穴)が設けられている。下側取付用穴27aは、下沓20を、下沓20の板厚方向に貫通する。
【0047】
下締結部分27には、締結部材Fを取り付けるための作業用空間Sを形成する下側凹入部28(凹入部)が形成されている。下側凹入部28は、下沓20の上面から下方に凹むよう形成される。下側凹入部28は、下沓20の側面20aから凹入する状態で形成されている。例えば、下側凹入部28は、切削加工により形成されている。図示の例において、下側凹入部28は、平面視で略矩形状である。下側凹入部28の形状はこれに限られない。
【0048】
本実施形態では、上沓10と下沓20とは同一形状を有している。すなわち、平面視で、上沓10と下沓20との外形状は同一である。上滑り面11と下滑り面21とは同一形状である。上側凹入部18と下側凹入部28とは、同一形状である。なお、上沓10と下沓20とは、大きさが異なっていてもよい。すなわち、上沓10と下沓20とは、径が異なっていてもよい。
【0049】
初期状態において、上沓10及び下沓20は、上沓10の軸心と下沓20の軸心とが一致するよう配置される。上締結部分17(上側凹入部18)と下締結部分27(下側凹入部28)とは、径方向での存在領域が重複するよう配置される。上締結部分17(上側凹入部18)と下締結部分27(下側凹入部28)とは、平面視で互いに重なるよう配置される。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る滑り支承3では、上沓10及び下沓20は、円筒形状である。
これにより、作業用空間Sを確保しつつ、滑り支承3の平面視での占有領域を抑制できる。
【0051】
(第4実施形態)
次に、図10図13を参照し、本発明に係る第4実施形態の免震構造物300を説明する。
本実施形態に係る免震構造物は、上部構造体U、下部構造体L、及び滑り支承1に加えて、図10に示される第2上部構造体U1と、第2下部構造体L1と、第2滑り支承6と、を備える。
【0052】
図13に示されるように、免震構造物300において、滑り支承1は、中間層免震に用いられる。より具体的には、滑り支承1は、柱頭免震に用いられており、下部構造体Lは柱の柱頭部である。また、滑り支承1の周囲には、第1耐火被覆材301が設けられている。第1耐火被覆材301は、滑り支承1を被覆するように設けられている。なお、滑り支承1の構成は、第1実施形態における滑り支承1の構成と同様であるため、ここでは記載を省略する。
【0053】
免震構造物300において、第2滑り支承6は、基礎免震に用いられる。具体的には、第2上部構造体U1と第2下部構造体L1とは、上下方向に対向する。第2滑り支承6は、第2上部構造体U1と第2下部構造体L1との間に配置される。第2滑り支承6は、地震動が発生した際、第2上部構造体U1と第2下部構造体L1とを水平方向に相対変位させる。これにより、第2下部構造体L1の振動が第2上部構造体U1に伝達されることを抑制する。例えば、第2上部構造体U1は建築物であり、第2下部構造体L1は地盤に設置される基礎構造である。図示の例では、第2下部構造体L1はフーチングである。また、第2滑り支承6の周囲には、第2耐火被覆材302が設けられている。第2耐火被覆材302は、第2滑り支承6を被覆するように設けられている。
【0054】
なお、図示の例では、免震構造物300において、下部構造体Lと、第2下部構造体L1とは、一体的に形成されている。しかしながら、下部構造体Lと、第2下部構造体L1とは、相対移動可能に形成されていてもよい。
【0055】
第2滑り支承6は、第2上沓60と、第2下沓70と、第2上沓60と第2下沓70との間を摺動する第2スライダー80とを有する。
【0056】
第2上沓60は、第2上部構造体U1の下部に配置される。第2上沓60は、第2上部構造体U1に、ボルト等の締結部材Fによって相対移動不可に固定される。第2上沓60は、平面視で八角形状の板材である。第2上沓60は、溶接鋼材用圧延鋼材(SM490A、B、C、もしくはSN490B、C、もしくはS45C)等から形成されている。
【0057】
第2上沓60の下面には、凹球面である第2上滑り面61が設けられている。第2上滑り面61は、平面視で円形状に形成されている。第2上滑り面61には、ステンレス製の滑り板(図示せず)が固定されている。また、第2上沓60には、滑り板の外周において、滑り板を第2上滑り面61に固定するための平面視で環状の第2上ストッパーリング62が固定されている。
なお、以下の説明では、平面視における第2上滑り面61の中心を通り上下方向に延びる仮想的な軸を、第2上沓60の軸心という。第2上沓60の軸心は、平面視において、第2上沓60の外形の重心位置と一致している。
【0058】
第2下沓70は、第2下部構造体L1の上部に配置される。第2下沓70は、第2下部構造体L1に、ボルト等の締結部材Fによって相対移動不可に固定される。第2下沓70は、平面視で八角形状の板材である。第2下沓70は、溶接鋼材用圧延鋼材(SM490A、B、C、もしくはSN490B、C、もしくはS45C)等から形成されている。本実施形態では、第2上沓60と第2下沓70とは同一形状を有している。
【0059】
第2下沓70の上面には、凹球面である第2下滑り面71が設けられている。第2下滑り面71は、平面視で円形状に形成されている。第2下滑り面71には、ステンレス製の滑り板(図示せず)が固定されている。また、第2下沓70には、滑り板の外周において、滑り板を第2下滑り面71に固定するための平面視環状の第2下ストッパーリング72が固定されている。
なお、以下の説明では、平面視における第2下滑り面71の中心を通り上下方向に延びる仮想的な軸を、第2下沓70の軸心という。第2下沓70の軸心は、平面視において、第2下沓70の外形の重心位置と一致している。
【0060】
第2スライダー80は、第2上沓60と第2下沓70との間に配置される。第2スライダー80は、略円柱状を呈している。第2スライダー80は、凸球面である第2上滑り面81及び第2下滑り面82を備える。第2スライダー80は、溶接鋼材用圧延鋼材(SM490A、B、C、もしくはSN490B、C、もしくはS45C)等、またはステンレス鋼材(SUS304、SUS316)から形成される。第2スライダー80は、面圧60N/mm(60MPa)程度の耐荷強度を有している。
【0061】
第2上滑り面81は、第2上滑り面61と摺動可能に接しており、第2下滑り面82は、第2下滑り面71と摺動可能に接している。第2スライダー80を第2上沓60及び第2下沓70に対して摺動しやすくするために、第2上滑り面81及び第2下滑り面82には、例えば、摩擦材が設けられている。
【0062】
第2スライダー80が、第2上沓60と第2下沓70との間を摺動することで、第2上沓60と第2下沓70とは水平方向に相対移動が可能である。これにより、地震動による第2下部構造体L1の振動が第2下沓70に伝達された時、第2下沓70が第2上沓60に対して相対移動する。このような動きをすることで、地震動による第2下部構造体L1の振動が第2上沓60を介して第2上部構造体U1に伝達されることを防ぐ。
【0063】
次に、第2上沓60及び第2下沓70の配置関係について説明する。なお、上述のように、地震動が発生した際、第2上沓60と第2下沓70とは水平方向に相対移動する。以下の説明では、特段の記載がない場合には、第2上沓60と第2下沓70とが水平方向に相対移動していない状態である、初期状態における第2上沓60及び第2下沓70の配置関係について説明する。
【0064】
初期状態において、第2上沓60と第2下沓70とは、第2上沓60の軸心と第2下沓70の軸心とが一致するよう配置される。第2上沓60及び第2下沓70は、第2上沓60と第2下沓70との平面視姿勢を異ならせて配置される。これにより、第2上沓60及び第2下沓70は、平面視において互いに重複しない領域を有する。
【0065】
第2上沓60は、平面視で第2下沓70と重複しない上側はみ出し部分64(はみ出し部分)を有する。上側はみ出し部分64には、締結部材Fを取り付ける第2上側取付用穴64a(第2取付用穴)が設けられている。第2上側取付用穴64aは、第2上沓60を、第2上沓60の板厚方向に貫通する。上側はみ出し部分64は、平面視で台形状の上側偏平はみ出し部分65(偏平はみ出し部分)を有する。本実施形態では、上側はみ出し部分64の全てが上側偏平はみ出し部分65である。
【0066】
第2下沓70は、平面視で第2上沓60と重複しない下側はみ出し部分74(はみ出し部分)を有する。本実施形態では、下側はみ出し部分74は、上側はみ出し部分64と同じ形状かつ同じ大きさである。下側はみ出し部分74には、締結部材Fを取り付ける第2下側取付用穴74a(第2取付用穴)が設けられている。第2下側取付用穴74aは、第2下沓70を、第2下沓70の板厚方向に貫通する。下側はみ出し部分74は、平面視で台形状の下側偏平はみ出し部分75(偏平はみ出し部分)を有する。本実施形態では、下側はみ出し部分74の全てが下側偏平はみ出し部分75である。
【0067】
以上説明したように、本実施形態に係る免震構造物は、上部構造体U、下部構造体L、及び滑り支承1に加えて、第2上部構造体U1と、第2上部構造体U1に対向する第2下部構造体L1と、第2上部構造体U1と第2下部構造体L1との間に配置される第2滑り支承6と、をさらに備える。第2滑り支承6は、第2上部構造体U1に締結部材Fで固定される第2上沓60と、第2下部構造体L1に締結部材Fで固定される第2下沓70と、を備える。第2上沓60及び第2下沓70は、平面視で互いに重複しないはみ出し部分64、74を有する。はみ出し部分64、74には、締結部材Fを取り付ける第2取付用穴64a、74aが形成される。はみ出し部分64、74として、平面視で台形状の偏平はみ出し部分65、75を有している。第2滑り支承6は、基礎構造としての第2下部構造体L1に固定される基礎免震である。
これにより、締結部材Fを用いて、はみ出し部分64、74を第2上部構造体U1及び第2下部構造体L1に固定する。はみ出し部分64、74として、平面視で台形状の偏平はみ出し部分65、75を有していることで、はみ出し部分64、74の外方への突出量を抑制し、第2滑り支承6の平面視での占有領域を抑制できる。また、第2滑り支承の平面視での占有領域を抑制できるため、免震構造物の設計の自由度が向上する。
【0068】
また、滑り支承1の平面視での占有領域を抑制できるため、滑り支承1を被覆するように設けられている第1耐火被覆材301の設置面積を抑制することができる。図13に示されるように、第1耐火被覆材301が天井より下方に配置されている場合、第1耐火被覆材301の設置面積を抑制することができるため、第1耐火被覆材301の設置による見栄えの低下を抑制することができる。
【0069】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上記実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
【0070】
例えば、上記実施形態では、上沓10及び下沓20に、凹入部15、25が形成されている。しかしながら、本発明はこれに限られず、凹入部は、上沓10及び下沓20の一方のみに形成されていてもよい。この場合、上沓10及び下沓20の他方の加工を省略することができる。
【0071】
また、上記実施形態における滑り支承1、2、3は、上沓10の下面に凹球面である上滑り面11が設けられ、下沓20の上面に凹球面である下滑り面21が設けられ、上滑り面11と上滑り面31との間、及び下滑り面21と下滑り面32との間の2か所で摺動する、いわゆるダブルペンデュラム方式の滑り支承である。しかしながら、本発明はこれに限られず、上沓10のみに上滑り面11が設けられて上滑り面11と上滑り面31との間の1か所で摺動する、または、下沓20のみに下滑り面21が設けられて下滑り面21と下滑り面32との間の1か所で摺動する、いわゆるシングルペンデュラム方式の滑り支承であってもよい。あるいは、滑り支承は、上沓10の上滑り面11及び下沓20の下滑り面21が平坦面である、いわゆる平面滑り支承であってもよい。上沓10の上滑り面11及び下沓20の下滑り面21のうち一方が凹球面であり、他方が平坦面であってもよい。
【0072】
また、第4実施形態に係る免震構造物において、第1実施形態に係る滑り支承1に代えて、第3実施形態に係る滑り支承3が用いられてもよい。
【0073】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0074】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0075】
(付記1)
上部構造体と前記上部構造体に対向する下部構造体との間に配置される滑り支承であって、
前記上部構造体に締結部材で固定される上沓と、
前記下部構造体に締結部材で固定される下沓と、を備え、
前記上沓及び前記下沓の少なくとも一方に、前記締結部材を取り付けるための作業用空間を形成する凹入部が側面から凹入する状態で形成されている、滑り支承。
【0076】
(付記2)
前記上沓及び前記下沓は平面視で多角形状であり、前記上沓の角部の位置であって、平面視において前記上沓の軸心回りの周方向における位置と、前記下沓の角部の位置であって、前記周方向における位置とは一致している、
付記1に記載の滑り支承。
【0077】
(付記3)
前記滑り支承は、建築物の中間層に配置される中間層免震である、
付記2に記載の滑り支承。
【0078】
(付記4)
前記上沓及び前記下沓は平面視で多角形状であり、前記上沓の角部の位置であって、平面視において前記上沓の軸心回りの周方向における位置と、前記下沓の角部の位置であって、前記周方向における位置とが異なっている、
付記1に記載の滑り支承。
【0079】
(付記5)
前記上沓と、前記下沓とは、同一形状である、
付記1~4のいずれか一つに記載の滑り支承。
【0080】
(付記6)
前記凹入部は、前記上沓及び前記下沓の一方のみに形成されている、
付記1~5のいずれか一つに記載の滑り支承。
【0081】
(付記7)
前記上沓と前記下沓とは、軸心が一致するよう配置されており、
前記上沓は、前記締結部材で前記上部構造体に固定される上締結部分を有しており、
前記下沓は、前記締結部材で前記下部構造体に固定される下締結部分を有しており、
前記上締結部分と前記下締結部分とは、前記軸心に直交する方向である径方向での存在領域が重複する、
付記1~6のいずれか一つに記載の滑り支承。
【0082】
(付記8)
平面視において、前記上沓と前記下沓との外形状が同一であり、
前記上締結部分と前記下締結部分との平面視領域が一致している、
付記7に記載の滑り支承。
【0083】
(付記9)
前記上沓及び前記下沓は、円筒形状である、
付記1に記載の滑り支承。
【0084】
(付記10)
前記凹入部は、切削加工されている、
付記1~9のいずれか一つに記載の滑り支承。
【0085】
(付記11)
前記上沓の下面は、上滑り面を有しており、
前記下沓の上面は、下滑り面を有しており、
前記上滑り面と前記下滑り面の少なくとも一方は、凹球面である、
付記1~10のいずれか一つに記載の滑り支承。
【0086】
(付記12)
前記上滑り面及び前記下滑り面の双方が、凹球面である、
付記11に記載の滑り支承。
【0087】
(付記13)
前記上滑り面と前記下滑り面とは同一形状である、
付記12に記載の滑り支承。
【0088】
(付記14)
付記2に記載の滑り支承と、
前記上部構造体と、
前記下部構造体と、
を備え、
前記滑り支承は、建築物の上層部としての前記上部構造体と、前記建築物の下層部としての前記下部構造体との間に配置される中間層免震である、
免震構造物。
【0089】
(付記15)
第2上部構造体と、
前記第2上部構造体に対向する第2下部構造体と、
前記第2上部構造体と前記第2下部構造体との間に配置される第2滑り支承と、
をさらに備え、
前記第2滑り支承は、
前記第2上部構造体に締結部材で固定される第2上沓と、
前記第2下部構造体に締結部材で固定される第2下沓と、
を備え、
前記第2上沓及び前記第2下沓は、平面視で互いに重複しないはみ出し部分を有し、
前記はみ出し部分には、前記締結部材を取り付ける第2取付用穴が形成され、
前記はみ出し部分として、平面視で台形状の偏平はみ出し部分を有しており、
前記第2滑り支承は、基礎構造としての前記第2下部構造体に固定される基礎免震である、
付記14に記載の免震構造物。
【符号の説明】
【0090】
1、2、3 滑り支承
6 第2滑り支承
10 上沓
14、17 上締結部分
14a、17a 上側取付用穴(取付用穴)
15、18 上側凹入部(凹入部)
20 下沓
24、27 下締結部分
24a、27a 下側取付用穴(取付用穴)
25、28 下側凹入部(凹入部)
30 スライダー
60 第2上沓
64 上側はみ出し部分(はみ出し部分)
64a 第2上側取付用穴(第2取付用穴)
65 上側偏平はみ出し部分(偏平はみ出し部分)
70 第2下沓
74 下側はみ出し部分(はみ出し部分)
74a 第2下側取付用穴(第2取付用穴)
75 下側偏平はみ出し部分(偏平はみ出し部分)
80 第2スライダー
100 免震構造物
L 下部構造体
L1 第2下部構造体
U 上部構造体
U1 第2上部構造体
【要約】
【課題】上沓及び下沓に対する締結部材の取り付け作業のための空間を確保できる滑り支承、及び免震構造物を提供すること。
【解決手段】滑り支承1は、上部構造体に締結部材で固定される上沓10と、下部構造体に締結部材で固定される下沓20と、を備え、上沓10及び下沓20の少なくとも一方に、締結部材を取り付けるための作業用空間を形成する凹入部15、25が側面から凹入する状態で形成されている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13