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特許7499935球面滑り支承の出荷試験方法及び出荷試験システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】球面滑り支承の出荷試験方法及び出荷試験システム
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20240607BHJP
【FI】
F16F15/02 L
F16F15/02 E
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023193811
(22)【出願日】2023-11-14
【審査請求日】2023-11-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】山崎 伸介
(72)【発明者】
【氏名】脇田 直弥
(72)【発明者】
【氏名】上月 俊輔
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/124686(WO,A1)
【文献】特開2019-120031(JP,A)
【文献】特許第6870118(JP,B2)
【文献】特開2022-167938(JP,A)
【文献】国際公開第2022/189954(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上沓と、
下沓と、
前記上沓と前記下沓との間を摺動する摺動部材と、
を備える球面滑り支承の出荷試験方法であって、
前記球面滑り支承は、前記球面滑り支承を識別可能な識別手段、
更に備え
前記識別手段を読み取る読み取りステップと、
前記読み取りステップにて前記識別手段を読み取ることに応じ、前記摺動部材の出荷試験の結果を示す出荷試験情報が格納されるフォルダを作成する作成ステップと、
を備えることを特徴とする出荷試験方法
【請求項2】
前記識別手段は、前記摺動部材に設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の出荷試験方法
【請求項3】
前記摺動部材は、
前記上沓と摺動する上摺動面と、
前記下沓と摺動する下摺動面と、
前記上摺動面と前記下摺動面とを接続する摺動部側面と、
を含み、
前記識別手段は、前記摺動部側面に設けられる、
ことを特徴とする請求項2に記載の出荷試験方法
【請求項4】
前記下沓の上面には、前記摺動部材と摺動する下沓摺動面が設けられており、
前記識別手段は、前記下沓の上面に設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の出荷試験方法
【請求項5】
前記上沓の下面には、前記摺動部材と摺動する上沓摺動面が設けられており、
前記識別手段は、前記上沓の下面に設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の出荷試験方法
【請求項6】
前記識別手段は、複数である、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の出荷試験方法
【請求項7】
前記識別手段は、前記摺動部材を識別可能である、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の出荷試験方法
【請求項8】
上沓と、
下沓と、
前記上沓と前記下沓との間を摺動する摺動部材と、
を備える球面滑り支承の出荷試験システムであって、
前記球面滑り支承は、前記球面滑り支承を識別可能な識別手段、
更に備え
読み取り手段と、サーバと、を備え、
前記読み取り手段は、前記識別手段を読み取り、
前記サーバは、前記読み取り手段が前記識別手段を読み取ることに応じ、前記摺動部材の出荷試験の結果を示す出荷試験情報が格納されるフォルダを作成する、
ことを特徴とする出荷試験システム
【請求項9】
前記識別手段は、前記摺動部材に設けられる、
ことを特徴とする請求項に記載の出荷試験システム
【請求項10】
前記摺動部材は、
前記上沓と摺動する上摺動面と、
前記下沓と摺動する下摺動面と、
前記上摺動面と前記下摺動面とを接続する摺動部側面と、
を含み、
前記識別手段は、前記摺動部側面に設けられる、
ことを特徴とする請求項に記載の出荷試験システム
【請求項11】
前記下沓の上面には、前記摺動部材と摺動する下沓摺動面が設けられており、
前記識別手段は、前記下沓の上面に設けられる、
ことを特徴とする請求項に記載の出荷試験システム
【請求項12】
前記上沓の下面には、前記摺動部材と摺動する上沓摺動面が設けられており、
前記識別手段は、前記上沓の下面に設けられる、
ことを特徴とする請求項に記載の出荷試験システム
【請求項13】
前記識別手段は、複数である、
ことを特徴とする請求項乃至12のいずれか1項に記載の出荷試験システム
【請求項14】
前記識別手段は、前記摺動部材を識別可能である、
ことを特徴とする請求項乃至12のいずれか1項に記載の出荷試験システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、球面滑り支承、球面滑り支承の出荷試験方法及び出荷試験システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地震による地盤の振動が構造物に伝播することを抑える為に、積層ゴム支承や滑り支承をはじめとする免震装置が用いられる。免震装置は、その性能を担保するため、全ての製品に対して性能検査を実施している。このとき、免震装置の性能検査の結果等の情報を、免震装置の個体ごとに対応付けて管理したい旨の課題がある。
例えば、特許文献1では、構造物に多数設けられた支承の上沓に取り付けられたICタグを用いて、各種情報を管理する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6902925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
球面滑り支承において、個体ごとに対応する各種情報の取り違えや改ざんを抑えるべき旨の課題がある。
【0005】
本開示は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、個体ごとに対応する各種情報の取り違えや改ざんを抑制可能な球面滑り支承、球面滑り支承の出荷試験方法及び出荷試験システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>本開示の態様1に係る球面滑り支承は、上沓と、下沓と、前記上沓と前記下沓との間を摺動する摺動部材と、を備える球面滑り支承であって、前記球面滑り支承を識別可能な識別手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、個体ごとに対応する各種情報の取り違えや改ざんを抑制可能な球面滑り支承、球面滑り支承の出荷試験方法及び出荷試験システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る球面滑り支承の側面視の断面図である。
図2】実施形態に係る球面滑り支承の平面図の第1例である。
図3】実施形態に係る球面滑り支承の平面図の第2例である。
図4】球面滑り支承に対する識別手段の取り付けの例を示す第1図である。
図5】球面滑り支承に対する識別手段の取り付けの例を示す第2図である。
図6】実施形態に係る出荷試験システムのブロック図である。
図7】二軸せん断試験装置の概要図である。
図8】二軸せん断試験装置の試験結果に係る、球面滑り支承の変位履歴曲線である。
図9】実施形態に係る出荷試験のフローチャートである。
図10】実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
図11】シングルペンデュラム方式の球面滑り支承の第1例である。
図12】シングルペンデュラム方式の球面滑り支承の第2例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、本開示の一実施形態に係る球面滑り支承を説明する。
本実施形態に係る球面滑り支承は、例えば、ビル、倉庫、橋梁等をはじめとする大型の建造物に複数設けられる。
このような建造物では、複数設けられた球面滑り支承のそれぞれを識別し、識別された球面滑り支承のそれぞれに対応した各種情報を、取り違えや改ざんがされることなく管理できるようにすることが求められている。各種情報とは、例えば、複数の球面滑り支承が備える各構成に対して行われる、材料、寸法、塗装、製品性能に関する検査の結果に関する情報である。製品性能とは、例えば、球面滑り支承における水平方向荷重と水平変位の履歴特性のことをいう。製品性能は、例えば、球面滑り支承の摩擦係数を含んでも良い。
上記に対応するため、本実施形態に係る球面滑り装置は、複数の球面滑り支承の各個体を識別可能である。また、球面滑り支承の各個体に対応する各種情報は、例えば、クラウド上のサーバにおいて、建造物ごとに作成されたフォルダ内に、閲覧可能な状態で格納される(詳細は後述する)。
【0010】
(球面滑り支承)
図1は、実施形態に係る球面滑り支承100の側面図である。
図2は、実施形態に係る球面滑り支承100の平面図の第1例である。
図3は、実施形態に係る球面滑り支承100の平面図の第2例である。
図1図2図3に示すように、球面滑り支承100は、上沓10と、下沓20と、摺動部材30と、識別手段40と、を備える。球面滑り支承100は、上部構造体Uと下部構造体Bとの間に配置される。上沓10と下沓20とは、それぞれ摺動部材30と摺動する。このことで、上沓10と下沓20とは、水平方向に相対移動が可能である。これにより、球面滑り支承100は、地震によって生じる地盤の振動が、建造物に伝播することを抑える。本実施形態に係る球面滑り支承100は、上述した各構成を備える、いわゆるダブルペンデュラム方式の球面滑り支承である。
本実施形態において、上部構造体Uとは、例えば、建造物である。下部構造体Bとは、例えば、地盤の上に形成された建造物の基礎構造である。
【0011】
(上沓)
上沓10は、球面滑り支承100のうち、上部構造体Uの下部に連結される部分である。上沓10は、例えば、平面視において長方形又は正方形の板状の部材である。以下、上沓10の上面、下面及び側面を、それぞれ上沓上面11、上沓下面12、上沓側面13、という。
上沓上面11は、上部構造体Uに面する。上沓上面11と上部構造体Uとは、例えば、溶接やボルト締結等によって固定される。
上沓下面12は、下部構造体Bに面する。上沓下面12には、上沓摺動面12sが設けられている。上沓摺動面12sは、上沓下面12に設けられた窪みである。上沓摺動面12sは、例えば、図1に示すように、断面円弧状(球面)を有する。上沓摺動面12sは、図2又は図3に示すように、平面視において円状に形成される。
上沓摺動面12sは、摺動部材30と摺動する。このことで、上沓10と摺動部材30とは、水平方向に相対移動が可能である。この時、上沓10と摺動部材30とが摺動した際に摺動部材30が上沓摺動面12sから外れることを防ぐために、平面視における上沓摺動面12sの縁部には、ストッパーリングSが設けられることが好ましい。ストッパーリングSは、例えば、上沓下面12と上沓摺動面12sとの間に、摺動部材30が当接可能な壁部12wを形成することで、上沓10と一体に形成されてもよい。あるいは、ストッパーリングSは、例えば、環状の部材が上沓下面12に取り付けられることで形成されてもよい。
上沓側面13は、上沓上面11と上沓下面12とを接続する。上沓側面13は、水平方向に面する。
【0012】
(下沓)
下沓20は、上沓10と対になる構成である。すなわち、本実施形態において、下沓20は上沓10と対称に形成される。
下沓20は、球面滑り支承100のうち、下部構造体Bの上部に連結される部分である。下沓20は、例えば、平面視において長方形又は正方形の板状の部材である。以下、下沓20の上面、下面及び側面を、それぞれ下沓上面21、下沓下面22、下沓側面23、という。
下沓上面21は、上部構造体Uに面する。下沓上面21には、下沓摺動面21sが設けられている。下沓摺動面21sは、下沓上面21に設けられた窪みである。下沓摺動面21sは、例えば、図1に示すように、断面円弧状(球面)を有する。下沓摺動面21sは、図2又は図3に示すように、平面視において円状に形成される。
下沓摺動面21sは、摺動部材30と摺動する。このことで、下沓20と摺動部材30とは、水平方向に相対移動が可能である。この時、下沓20と摺動部材30とが摺動した際に摺動部材30が下沓摺動面21sから外れることを防ぐために、平面視における下沓摺動面21sの縁部には、ストッパーリングSが設けられることが好ましい。ストッパーリングSは、例えば、下沓上面21と下沓摺動面21sとの間に、摺動部材30が当接可能な壁部21wを形成することで、下沓20と一体に形成されてもよい。あるいは、ストッパーリングSは、例えば、環状の部材が下沓上面21に取り付けられることで形成されてもよい。
下沓下面22は、下部構造体Bに面する。下沓下面22と下部構造体Bとは、例えば、溶接やボルト締結等によって固定される。
下沓側面23は、下沓上面21と下沓下面22とを接続する。下沓側面23は、水平方向に面する。
【0013】
上沓10と下沓20とは、例えば、図2に示すように、平面視においてそれぞれの四辺が重なるように配置される。あるいは、上沓10と下沓20とは、例えば、図3に示すように、平面視においてそれぞれの四辺が互いに重ならないように配置されてもよい。
【0014】
(摺動部材)
摺動部材30は、上沓10と下沓20との間に設けられる。摺動部材30は、上沓10と下沓20との間を摺動する。摺動部材30は、例えば、平面視において円状の部材である。より具体的には、摺動部材30は、略円柱状の部材であり、軸が鉛直方向に沿うように配置される。摺動部材30は、上方に面する上摺動面31と、下方に面する下摺動面32と、上摺動面31と下摺動面32とを接続する摺動部側面33と、を含む。
上摺動面31は、上沓10と摺動する。より具体的には、上摺動面31は、上沓10の上沓摺動面12sと摺動する。このことで、上沓10と摺動部材30とが、水平方向に相対移動が可能となる。
下摺動面32は、下沓20と摺動する。より具体的には、下摺動面32は、下沓20の下沓摺動面21sと摺動する。このことで、下沓20と摺動部材30とが、水平方向に相対移動が可能となる。
これらによって、上沓10と下沓20とが水平方向に相対移動が可能となる。
摺動部側面33は、上摺動面31と下摺動面32との間に環状に位置する。摺動部側面33は、水平方向に面する。
【0015】
(識別手段)
図4は、球面滑り支承100に対する識別手段40の取り付けの例を示す第1図である。
図5は、球面滑り支承100に対する識別手段40の取り付けの例を示す第2図である。
識別手段40は、球面滑り支承100を識別可能とするために設けられる。すなわち、建造物において複数設けられた球面滑り支承100の各個体を識別可能とするために設けられる。あるいは、識別手段40は、球面滑り支承100が備える各構成のうちいずれかを個別に識別可能であってもよい。すなわち、識別手段40は、球面滑り支承100のうち、とくに上沓10、下沓20、摺動部材30の各構成を個別に識別可能であってもよい。識別とは、例えば、複数の球面滑り支承100のうちの1つを、他の球面滑り支承100と区別することである。
【0016】
識別手段40は、例えば、球面滑り支承100の各個体を識別するためのものと、球面滑り支承100の備える各構成を個別に識別するためのものと、をそれぞれ個別に設けてもよいし、1つの識別手段40によって球面滑り支承100の各個体及び球面滑り支承100の備える各構成の両方を識別可能であってもよい。
【0017】
(識別手段の種類)
識別手段40は、例えば、バーコード、二次元コード(いわゆるQRコード(登録商標))、RFIDタグ、ICタグ等が好適に用いられる。あるいは、識別手段40は、シリアルナンバー等の文字列であってもよい。識別手段40は、読み取り手段210(後述する)によって読み取りが可能なものであれば、その他任意のものを用いてもよい。
【0018】
識別手段40は、例えば、サーバ220(後述する)のアドレスに関する情報が含まれる。すなわち、識別手段40を読み取り手段210によって読み取ることで、各種情報に関するデータが格納されたサーバ220へのリンク先にアクセス可能となる。
あるいは、識別手段40そのものが、上記各種情報を示していてもよい。すなわち、識別手段40を読み取ることで、各種情報を参照することが可能であってもよい。
【0019】
(識別手段40の設置方法)
識別手段40は、次のいずれかの方法によって球面滑り支承100に設けられる。識別手段40は、球面滑り支承100の上沓10、下沓20および摺動部材30のうちの少なくとも1つに一体的に設けられていてもよく、これらとは別体として設けられ、後付けされていてもよい。
【0020】
識別手段40がバーコード、QRコード(登録商標)、文字列のいずれかである場合、識別手段40は、これらのいずれかが印刷されたシールを貼り付けることで球面滑り支承100に設けられる。あるいは、これらのいずれかからなる識別手段40は、球面滑り支承100の各構成のいずれかに印刷や刻印等によって設けられてもよい。
識別手段40が上述の態様によって上沓10又は下沓20に取り付けられる場合、識別手段40は、例えば、上沓10又は下沓20の製造工程において、塗装工程の後、且つ、梱包される前に取り付けられる。識別手段40が上述の態様によって摺動部材30に取り付けられる場合、識別手段40は、例えば、性能試験の前に取り付けられることが好ましい。このことで、摺動部材30の性能試験の結果を、摺動部材30の個体に対応する識別手段40に対応付けて保存できるようにする。
【0021】
識別手段40がRFIDタグである場合、識別手段40は、RFIDタグを接着材やシール等によって貼り付けることで球面滑り支承100に設けられる。あるいは、識別手段40は、球面滑り支承100の各構成のいずれかを、RFIDタグが内蔵された状態で製造することで設けられてもよい。識別手段40がRFIDタグである場合、球面滑り支承100が設けられた場所には、目視可能な目印が設けられることが好ましい。
【0022】
本実施形態における識別手段40は、改ざん防止シール41を含む。すなわち、識別手段40を球面滑り支承100に設ける際にシールを用いる場合、改ざん防止シール41を用いることが好ましい。すなわち、識別手段40を球面滑り支承100に設けるために用いるシールは、例えば、再貼付が不可能であり、一度剥がした際には使用済である旨の表示がなされるものが用いられることが好ましい。使用済みである旨の表示は、例えば、改ざん防止シール41の少なくとも一部が、シール除去後においても球面滑り支承100に残ることであってもよい。これにより、製造工程において取り付けられた識別手段40が取り外され、別の識別手段40が取り付けられていないことを目視で確認できるようにすることができる。よって、識別手段40が他の物に取り替えられること等によって改ざんされることを抑えることができる。
【0023】
(識別手段の設置場所)
本実施形態において、識別手段40は、球面滑り支承100における次のいずれかの場所に設けられる。すなわち、1つの球面滑り支承100において、識別手段40は、上沓10、下沓20、摺動部材30のいずれか1つ又は2つのみに設けられてもよいし、これら全てに設けられていてもよい。識別手段40は、球面滑り支承100において1つのみ設けられてもよいし、複数設けられてもよい。
【0024】
識別手段40が上沓10に設けられる場合、識別手段40は、例えば、上沓側面13に設けられる。ここで、上述のように、上沓10が平面視において正方形又は長方形状である場合、上沓側面13は、平面状のものが4つ形成される。この時、識別手段40は、4つの上沓側面13のうちいずれか1つから3つのみに設けられてもよいし、4つすべてに設けられてもよい。なお上沓10は、平面視四角形状に限らず、6角形状や8角形状であってよい。
あるいは、識別手段40は、図2又は図3に示すように、上沓10において、上沓下面12のうち、上沓摺動面12sを除いた部分に設けられてもよい。この時、識別手段40は、上沓下面12のうち上沓摺動面12sを除いた部分に1つのみ設けられてもよいし、複数設けられてもよい。
【0025】
識別手段40が下沓20に設けられる場合、識別手段40は、例えば、下沓側面23に設けられる。識別手段40が下沓側面23に設けられる場合の形態は、識別手段40が上沓側面13に設けられる場合と同様であるため、説明を省略する。
あるいは、識別手段40は、図2又は図3に示すように、下沓20において、下沓上面21のうち、下沓摺動面21sを除いた部分に設けられてもよい。この時、識別手段40は、下沓上面21のうち下沓摺動面21sを除いた部分に1つのみ設けられてもよいし、複数設けられてもよい。
【0026】
識別手段40が摺動部材30に設けられる場合、識別手段40は、図5に示すように、摺動部側面33に設けられる。このとき、識別手段40は、摺動部側面33に1つのみ設けられてもよいし、複数設けられてもよい。識別手段40が摺動部側面33に複数設けられる場合、識別手段40は、例えば、鉛直方向に並ぶように設けられてもよいし、水平方向に並ぶように設けられてもよい。
識別手段40が摺動部側面33に設けられる場合、例えば、球面滑り支承100において、上沓10及び下沓20のそれぞれに設けられたストッパーリングSの間から摺動部材30をのぞき込むようにすることで識別手段40が目視可能となる位置に設けられることが好ましい。
【0027】
(出荷試験システム)
次に、図6を用いて本実施形態に係る出荷試験システム200について説明する。
図6は、実施形態に係る出荷試験システム200のブロック図である。
図7は、二軸せん断試験装置230の概要図である。
図8は、二軸せん断試験装置230の試験結果に係る、球面滑り支承100の変位履歴曲線である。
出荷試験システム200は、上述した本実施形態に係る球面滑り支承100の出荷試験を行うために用いられる。
出荷試験システム200は、読み取り手段210と、サーバ220と、二軸せん断試験装置230と、球面滑り支承100と、を備える。
【0028】
(読み取り手段)
読み取り手段210は、識別手段40を読み取る。読み取り手段210は、例えば、公知のバーコードリーダや、スマートフォン、タブレットPC等である。
上述のように、識別手段40には、例えば、サーバ220のアドレスに関する情報が含まれる。この場合、読み取り手段210が識別手段40を読み取ることで、スマートフォンやタブレットPC等によって、サーバ220へのアクセスが可能となる。
あるいは、識別手段40そのものが、上記各種情報を示す。この場合、読み取り手段210が識別手段40を読み取ることで、スマートフォンやタブレットPC等によって、各種情報を参照することが可能となる。
【0029】
(サーバ)
サーバ220は、読み取り手段210が識別手段40を読み取ることに応じ、読み取った識別手段40を備える球面滑り支承100に対応するフォルダを作成する。
具体的には、サーバ220は、まず、合格フォルダと不合格フォルダとを作成する。また、サーバ220は、それらの各フォルダの内部に、物件フォルダを作成する。更に、サーバ220は、物件フォルダの内部に、試験機特性データ、試験結果データ等のそれぞれに対応するフォルダを作成する。
合格フォルダには、球面滑り支承100のうち、後述する出荷試験に合格した個体についての情報が格納される。不合格フォルダは、球面滑り支承100のうち、後述する出荷試験に合格しなかった個体についての情報が格納される。
出荷試験を経た球面滑り支承100の各個体についての情報は、合格フォルダ及び不合格フォルダにそれぞれ作成された物件フォルダの内部に保存される。この時、球面滑り支承100の各個体についての情報は、出荷試験を行った試験機のデータである試験機特性データと、試験の結果に関するデータである試験結果データと、にそれぞれフォルダ分けされて保存される。
【0030】
サーバ220は、受信部221と、記憶処理部222と、記憶部223と、を備える。
受信部221は、読み取り手段210が識別手段40を読み取ったこと、及び、読み取り手段210が読み取った識別手段40に含まれる情報を受信する。受信部221は、前述の内容を受信することに応じ、次に述べる記憶処理部222に対して記憶処理を行う旨指示する。
記憶処理部222は、読み取り手段210が識別手段40を読み取ることに応じて記憶処理を行う。記憶処理とは、サーバ220内の記憶部223に、読み取り手段210が読み取った識別手段40を備える球面滑り支承100に対応するフォルダを作成する処理である。
記憶部223は、記憶処理部222の記憶処理に応じて、各種情報を保存する部位である。
【0031】
上述の記憶処理によってサーバ220の記憶部223に作成されたフォルダには、例えば、摺動部材30の出荷試験の結果を示す出荷試験情報が格納される。このことで、識別手段40によって識別可能とされた球面滑り支承100の個体ごとに対応した情報を、それぞれの個体ごとに対応してサーバ220に作成されたフォルダにおいて管理可能とする。これにより、例えば、作業者が手作業でデータの分類及び管理を行う場合と比較して、データの取り違えや改ざんが発生する余地を与えないようにすることができる。よって、各種情報に関するデータの取り違えや改ざんを抑えることができる。
【0032】
(二軸せん断試験装置)
二軸せん断試験装置230は、球面滑り支承100が建造物に設けられた状態、及び、球面滑り支承100が設けられた建造部において地震が発生した時の状態を再現することで、球面滑り支承100の性能試験を行う。具体的には、例えば、二軸せん断試験装置230は、球面滑り支承100に対して、建造物に相当する重量を付加すること、及び、水平方向にせん断荷重を付加すること、が可能である。
二軸せん断試験装置230は、図7に示すように、球面滑り支承100の上沓10及び下沓20に相当する構成を取り付け可能である。球面滑り支承100の試験を行う際は、上述の識別手段40によって各個体が識別可能となった摺動部材30を、二軸せん断試験装置230に取り付けられた上沓10と下沓20との間に配置する。このことで、二軸せん断試験装置230において球面滑り支承100を形成し、試験を行う。
具体的には、まず、二軸せん断試験装置230を用いて、鉛直方向において球面滑り支承100に、建造物の重量に相当する一定の荷重を付加する。そして、水平方向において球面滑り支承100に繰り返し載荷を行う。このことで、水平方向荷重と水平変位の履歴特性を測定する。
二軸せん断試験装置230によって測定された、球面滑り支承100の特性を示すグラフを、図8に示す。図8において、横軸は、球面滑り支承100における上沓と下沓との間の、水平方向の相対変位量である。図8において、縦軸は、水平方向荷重を鉛直荷重で除した値である。
出荷試験においては、図8に示すグラフにおける水平方向の変位が0mmの状態における縦軸の値(摩擦係数)が許容値内であることを確認する。
【0033】
(球面滑り支承の出荷試験方法)
次に、上述した出荷試験システム200を用いた、球面滑り支承100の出荷試験方法について説明する。本実施形態に係る出荷試験方法は、読み取りステップと、作成ステップと、を備える。本実施形態において、読み取りステップ及び作成ステップは、建造物において設けられる球面滑り支承100のそれぞれに対して行われる。換言すれば、読み取りステップ及び作成ステップは、建造物に複数設けられる球面滑り支承100の個数と同じ回数だけ繰り返して行われる。
【0034】
(読み取りステップ)
読み取りステップは、読み取り手段210を用いて識別手段40を読み取るステップである。すなわち、作業者が読み取り手段210によって球面滑り支承100に設けられた識別手段40を読み取ることで、建造物に複数設けられる球面滑り支承100の個体を識別する。
読み取りステップにおいて識別手段40を読み取ることで、次に述べる作成ステップに移行する。
【0035】
(作成ステップ)
作成ステップは、読み取りステップにて識別手段40を読み取ることに応じ、球面滑り支承100、あるいは、摺動部材30の出荷試験の結果を示す出荷試験情報が格納されるフォルダを作成するステップである。なお、作成ステップにおいて作成されたフォルダには、上沓10及び下沓20の出荷試験の結果が保存されてもよい。
本実施形態において、作成ステップにて作成されるフォルダは、例えば、上沓10、下沓20、及び摺動部材30が出荷試験に合格したことに対応する合格フォルダと、上沓10、下沓20、及び摺動部材30が出荷試験に合格しなかったことに対応する不合格フォルダを含む。このことで、出荷試験システム200の合否を容易に把握可能とする。
【0036】
出荷試験については、例えば、所定の鉛直荷重及び水平変位を付加可能な二軸せん断試験装置230により、上述した手順により行われる。前述の出荷試験は、1つの建造物に複数設置される球面滑り支承100の全てに対して行われる。
前述の出荷試験の結果は、例えば、サーバ220の記憶部223に作成された合格フォルダ又は不合格フォルダに個別に保存される。この場合、フォルダ内の情報は、詳細な権限を設定することで、削除、修正、上書きができないようにすることが好ましい。あるいは、球面滑り支承の各個体と、各個体に対応する製品性能試験結果とが自動的に紐づけてられ、当該情報が自動的にフォルダに保存されることが好ましい。このことで、フォルダ内の情報が、人為的に意図的或いは無意識に変更ができないようにすることが好ましい。
あるいは、出荷試験の結果に関する情報は、識別手段40を読み取ることによって参照可能となるように、識別手段40に含まれるようにされてもよい。
【0037】
ここで、上述したように、読み取りステップ及び作成ステップは、複数回繰り返して行われる。このとき、1つの建造物に対する複数の球面滑り支承100のうち、最初に行われる作成ステップにおいては、建造物に対応したフォルダである物件フォルダを作成することが好ましい。そして、複数の球面滑り支承100のそれぞれに対応するフォルダは、前述の物件フォルダの中に作成されることが好ましい。
【0038】
(出荷試験のフロー)
次に、図9を用いて、本実施形態に係る球面滑り支承100の出荷試験のフローについて説明する。
図9は、実施形態に係る出荷試験のフローチャートである。
まず、読み取りステップにおいて、作業者が読み取り手段210を用いて識別手段40を読み取る(ステップS1)。このとき、読み取り手段210が識別手段40を読み取ったこと、及び、読み取り手段210が読み取った識別手段40に含まれる情報が、サーバ220の受信部221に伝達される。
この時、サーバ220の記憶部223に物件フォルダが作成済の場合(ステップS2:YES)、作成ステップ(ステップS3)に移行する。作成ステップ(ステップS3)では、記憶処理部222が、記憶部223に作成された物件フォルダの内部に、複数の球面滑り支承100のそれぞれに対応する試験結果が保管される。物件フォルダとは、複数の球面滑り支承100が設けられる建造物に対応するプロジェクトフォルダである。このことで、1つの建造物に配置される複数の球面滑り支承100のそれぞれの試験結果は、物件フォルダの内部に作成されるフォルダに保存される。なお、前述の試験結果に加えて、物件フォルダには、球面滑り支承100の製造に用いられた部材のデータや、製造に関するデータ等が保存されてもよい。なお、部材のデータは、例えば、寸法、材料ミルシートを含む。製造に関するデータは、例えば、塗装等のデータを含む。
【0039】
サーバ220の記憶部223に物件フォルダが未作成の場合(ステップS2:NO)、作成ステップ(ステップS3)に移行する前に、記憶処理部222は、記憶部223に物件フォルダを作成する(ステップS4)。ステップS4は、例えば、1つの建造物に配置される複数の球面滑り支承100について、1つ目の球面滑り支承100の出荷試験が行われる際に実行される。
【0040】
そして、球面滑り支承100のそれぞれに対応するフォルダに、球面滑り支承100のそれぞれに対応する各種情報を保存する(ステップS5)。
例えば、識別手段40にサーバ220のアドレスに関する情報が含まれる場合、ステップS5において、サーバ220の記憶部223に予め保存された複数の球面滑り支承100のそれぞれに対応する上記各種情報を、物件フォルダに保存する。なお、物件フォルダの内部には、球面滑り支承100の各個体に対応するフォルダが作成されてもよいし、球面滑り支承100の各個体に対応するフォルダには、それぞれ各個体に対応する情報が個別に対応付けて保存されてもよい。
例えば、識別手段40そのものが上記各種情報を示している場合、ステップS5において、識別手段40から読み取った上記各種情報を、球面滑り支承100の各個体に対応するフォルダに対応付けて保存する。
上記フローを複数の球面滑り支承100のそれぞれに対して繰り返し行うことで、本実施形態に係る出荷試験が行われる。
【0041】
(コンピュータ構成)
図10は、実施形態に係るコンピュータ300の構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ300は、プロセッサ310、メインメモリ320、ストレージ330を備える。
上述のサーバ220は、コンピュータ300に実装される。そして、サーバ220が備える上述した各構成、すなわち受信部221及び記憶処理部222の動作は、プログラムの形式でストレージ330に記憶されている。プロセッサ310は、プログラムをストレージ330から読み出してメインメモリ320に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ310は、プログラムに従って、上述した各記憶部223に対応する記憶領域をメインメモリ320に確保する。プロセッサ310の例としては、CPU(Central Procesing Unit)、GPU(Graphic Procesing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
【0042】
プログラムは、コンピュータ300に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージ330に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ300は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ310によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。このような集積回路も、プロセッサ310の一例に含まれる。
【0043】
ストレージ330の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ330は、コンピュータ300のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、通信回線を介してコンピュータ300に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ300に配信される場合、配信を受けたコンピュータ300が当該プログラムをメインメモリ320に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ330は、一時的でない有形の記憶媒体である。
上述したサーバ220の記憶部223の機能は、コンピュータ300のストレージ330によって実現される。
【0044】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ330に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
また、サーバ220は、例えば、クラウド上に実装されていてもよい。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る球面滑り支承100によれば、球面滑り支承100の各個体を識別可能な識別手段40を備える。これにより、例えば、球面滑り支承100の各個体に対応した各種情報の取り違えや改ざんを抑制することができる。具体的には、例えば、球面滑り支承100の個体ごとの製造情報等を、球面滑り支承100の各個体に対応付けて管理することができる。すなわち、例えば、球面滑り支承100の個体ごとに対応する前述の各種情報を、クラウド上の球面滑り支承100の個体ごとに対応するフォルダに格納、及びアクセスすることができる。
【0046】
また、識別手段40は、摺動部材30に設けられる。これにより、例えば、球面滑り支承100のうち、特に摺動部材30の各個体に対応した各種情報の取り違えや改ざんを抑制することができる。具体的には、例えば、摺動部材30の個体ごとに行われる出荷試験の結果等を、摺動部材30の各個体に対応付けて管理することができる。すなわち、例えば、摺動部材30の個体ごとに対応する前述の各種情報を、クラウド上の摺動部材30の個体ごとに対応するフォルダに格納及びアクセスすることができる。
【0047】
また、識別手段40は、摺動部材30のうち、上摺動面31と下摺動面32とを接続する摺動部側面33に設けられる。これにより、例えば、上沓10と下沓20との間から摺動部材30を目視することで、容易に識別手段40の位置を確認することができる。
また、例えば、識別手段40が摺動部材30のうち上摺動面31又は下摺動面32に設けられた場合と比較して、各摺動面の摩擦係数に影響が生じないようにすることができる。
【0048】
また、識別手段40は、下沓20の上面のうち、下沓摺動面21sを除いた部分に設けられる。これにより、作業者は、下沓20の上面を目視することで、容易に識別手段40の位置を確認することができる。よって、作業者は、球面滑り支承100が現場に設置された状態のまま識別手段40の位置を把握することができる。
また、例えば、識別手段40が下沓摺動面21sに設けられた場合と比較して、下沓摺動面21sの摩擦係数に影響が生じないようにすることに加えて、識別手段40を汚損しにくくすることができる。
【0049】
また、識別手段40は、上沓10の下面のうち、上沓摺動面12sを除いた部分に設けられる。これにより、作業者は、上沓10の下面を目視することで、容易に識別手段40の位置を確認することができる。よって、作業者は、球面滑り支承100が現場に設置された状態のまま識別手段40の位置を把握することができる。
また、例えば、識別手段40が上沓摺動面12sに設けられた場合と比較して、上沓摺動面12sの摩擦係数に影響が生じないようにすることに加えて、識別手段40を汚損しにくくすることができる。
【0050】
また、識別手段40は複数設けられる。これにより、作業者にとって、識別手段40を見つけやすくすることができる。よって、識別手段40を確認する作業を効率的に行うことができる。
【0051】
また、識別手段40は、改ざん防止シール41を含む。これにより、識別手段40を改ざんされにくくすることができる。よって、球面滑り支承100の各個体に対応した各種情報の取り違えや改ざんをより確実に抑制することができる。
【0052】
また、識別手段40は、摺動部材30を識別可能である。これにより、球面滑り支承100のうち、特に摺動部材30の各個体に対応した各種情報の取り違えや改ざんを抑制することができる。具体的には、例えば、摺動部材30の個体ごとに行われる出荷試験の結果等を、摺動部材30の各個体に対応付けて管理することができる。すなわち、例えば、摺動部材30の個体ごとに対応する前述の各種情報を、クラウド上の摺動部材30の個体ごとに対応するフォルダに格納及びアクセスすることができる。
【0053】
また、本実施形態に係る出荷試験方法によれば、まず、読み取りステップで識別手段40を読み取る。そして、読み取りステップにて識別手段40を読み取ることに応じて、作成ステップで摺動部材30の出荷試験の結果を示す出荷試験情報が格納されるフォルダを作成する。このことで、識別手段40によって識別される球面滑り支承100のそれぞれに対して、対応するフォルダを確実に作成することができる。よって、球面滑り支承100の各個体に対応した各種情報の取り違えや改ざんを抑制することができる。すなわち、例えば、球面滑り支承100の各個体が備える摺動部材30の出荷試験の結果を、確実に対応したフォルダに格納することができる。
【0054】
また、本実施形態に係る出荷試験システム200によれば、まず、読み取り手段210が、識別手段40を読み取る。そして、読み取り手段210が識別手段40を読み取ることに応じて、サーバ220が、摺動部材30の出荷試験の結果を示す出荷試験情報が格納されるフォルダを作成する。このことで、識別手段40によって識別される球面滑り支承100のそれぞれに対して、対応するフォルダを確実に作成することができる。よって、球面滑り支承100の各個体に対応した各種情報の取り違えや改ざんを抑制することができる。すなわち、例えば、球面滑り支承100の各個体が備える摺動部材30の出荷試験の結果を、確実に対応したフォルダに格納することができる。
【0055】
(第2実施形態)
次に、本開示に係る第2実施形態の球面滑り支承100を、図11図12を参照して説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0056】
第2実施形態に係る球面滑り支承100は、いわゆるシングルペンデュラム方式の球面滑り支承である点で、第1実施形態と相違する。
シングルペンデュラム方式の球面滑り支承100としては、例えば、図11及び図12のような例が挙げられる。
【0057】
図11は、シングルペンデュラム方式の球面滑り支承100の第1例である。
図11に示す球面滑り支承100は、下沓20と摺動部材30との摺動面、すなわち下摺動面32の曲率が、上沓10と摺動部材30との摺動面、すなわち上摺動面31の曲率よりも大きい。このことで、摺動部材30は、下沓20の下沓摺動面21sの曲率中心を回転中心として回転する。したがって、図11に示す球面滑り支承100において、下沓20と摺動部材30とは、水平方向に相対移動しない。下沓20が下部構造体Bの上部に連結され、水平方向に移動しないことから、図11に示す球面滑り支承100において、摺動部材30は水平方向に移動しない。そして、上沓10のみが水平方向に変位する。
図11に示す球面滑り支承100において、識別手段40は、例えば、摺動部材30の摺動部側面33に取り付けられることが好ましい。あるいは、識別手段40は、第1実施形態と同様に、球面滑り支承100の任意の部位に取り付けられてもよい。
【0058】
図12は、シングルペンデュラム方式の球面滑り支承100の第2例である。
図12に示す球面滑り支承100は、上沓10と摺動部材30との摺動面、すなわち上摺動面31の曲率が、下沓20と摺動部材30との摺動面、すなわち下摺動面32の曲率よりも大きい。このことで、摺動部材30は、上沓10の上沓摺動面12sの曲率中心を回転中心として回転する。したがって、図12に示す球面滑り支承100において、上沓10と摺動部材30とは、水平方向に相対移動しない。図12に示す球面滑り支承100において、摺動部材30は、上沓10の水平方向への移動に伴い水平方向に移動する点で、図11に示す球面滑り支承100の第1例と相違する。
図12に示す球面滑り支承100において、識別手段40は、例えば、摺動部材30の摺動部側面33に取り付けられることが好ましい。あるいは、識別手段40は、第1実施形態と同様に、球面滑り支承100の任意の部位に取り付けられてもよい。
【0059】
なお、本開示の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、球面滑り支承100は、いわゆるトリプルペンデュラム方式の球面滑り支承であってもよい。
【0060】
その他、本開示の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 上沓
11 上沓上面
12 上沓下面
12s 上沓摺動面
12w 壁部
13 上沓側面
20 下沓
21 下沓上面
21s 下沓摺動面
21w 壁部
22 下沓下面
23 下沓側面
30 摺動部材
31 上摺動面
32 下摺動面
33 摺動部側面
40 識別手段
41 改ざん防止シール
100 球面滑り支承
200 出荷試験システム
210 読み取り手段
220 サーバ
221 受信部
222 記憶処理部
223 記憶部
300 コンピュータ
310 プロセッサ
320 メインメモリ
330 ストレージ
B 下部構造体
S ストッパーリング
U 上部構造体
【要約】
【課題】個体ごとに対応する各種情報の取り違えや改ざんを抑制可能な球面滑り支承、球面滑り支承の出荷試験方法及び出荷試験システムを提供することを目的とする。
【解決手段】上沓10と、下沓20と、上沓10と下沓20との間を摺動する摺動部材30と、を備える球面滑り支承100であって、球面滑り支承100を識別可能な識別手段40を備えることを特徴とする。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12