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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】止水壁構造および止水壁の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E21F 17/103 20060101AFI20240607BHJP
   E21D 11/38 20060101ALN20240607BHJP
   E21D 9/04 20060101ALN20240607BHJP
【FI】
E21F17/103
E21D11/38 Z
E21D9/04 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023196501
(22)【出願日】2023-11-20
【審査請求日】2023-11-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000172813
【氏名又は名称】佐藤工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596007979
【氏名又は名称】大栄工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 康生
(72)【発明者】
【氏名】中田 隆斗
(72)【発明者】
【氏名】小赤澤 浩
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】宮下 剛徳
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-301694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F 17/103
E21D 11/38
E21D 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドトンネル施工中において、トンネル内に一時的に貯留する水を遮断する止水壁であって、
前記止水壁は、第1の側から第2の側への水を遮断するための、前記第1の側に位置する止水バルーンと前記第2の側に位置する遮蔽保持体とを有し、
前記止水バルーンは、可撓性であり、その内部へ空気送入部を介して空気送入によりトンネル内に膨張可能であり、
膨張した前記止水バルーンの前記第2の側には、前記止水バルーンを受け止める前記遮蔽保持体が設けられ、
前記空気送入部は、前記第2の側に設けられ送風手段と連通可能であり、
前記遮蔽保持体はトンネル内壁のセグメントに固定されている
ことを特徴とする止水壁構造。
【請求項2】
シールドトンネル施工中において、トンネル内に一時的に貯留する水を遮断する止水壁であって、
前記止水壁は、第1の側から第2の側への水を遮断するための、前記第1の側に位置する止水バルーンと前記第2の側に位置する遮蔽保持体とを有し、
前記止水バルーンは、可撓性であり、その内部へ空気送入部を介して空気送入によりトンネル内に膨張可能であり、膨張することによりトンネル方向に沿う円筒状の形状を形成し、
前記円筒状の形状は、2つの底面と1つの側面とからなり、
前記止水バルーンは、空気送入前においては、実質的に内部に空間を有さず、折りたたみ可能であり、
膨張した前記止水バルーンの前記第2の側には、前記止水バルーンを受け止める前記遮蔽保持体が設けられ、
前記空気送入部は、前記第2の側に設けられ送風手段と連通可能であり、
前記遮蔽保持体はトンネル内壁のセグメントに固定されている
ことを特徴とする止水壁構造。
【請求項3】
前記止水バルーンと、前記遮蔽保持体の間に、前記止水バルーンと前記遮蔽保持体とに接する平板状の止水板が設けられた、請求項1または2いずれかに記載の止水壁構造。
【請求項4】
トンネル内の前記止水バルーンの前記第1の側から前記遮蔽保持体の前記第2の側にわたって配置されるサクションホースをさらに有することを特徴とする、請求項1または2いずれかに記載の止水壁構造。
【請求項5】
前記止水バルーンと、前記遮蔽保持体の間に、前記止水バルーンと前記遮蔽保持体とに接する平板状の止水板が設けられ、
トンネル内の前記止水バルーンの前記第1の側から前記遮蔽保持体の前記第2の側にわたって配置されるサクションホースをさらに有することを特徴とする、請求項1または2いずれかに記載の止水壁構造。
【請求項6】
シールドトンネル施工中において、トンネル内に一時的に貯留する水を遮断する止水壁を構築する止水壁の構築方法であって、
前記止水壁は、第1の側から第2の側への水を遮断するための、前記第1の側に位置する止水バルーンと前記第2の側に位置する遮蔽保持体とを有し、
前記遮蔽保持体を前記トンネル内壁のセグメントに固定し、
前記第2の側に設けられた送風手段から空気を、前記止水バルーンの空気送入部を介して送風して、前記止水バルーンを膨張させ、ンネル内壁との密着部分を形成させて、水を遮断する、
ことを特徴とするトンネル内の止水壁の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシールドトンネル等における止水設備に関するものであり、特に、シールドトンネル施工中において大雨や洪水が発生した場合に、トンネル内に一時的に貯留するための止水壁の止水壁構造および止水壁の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド機が発進側の立坑から掘進を開始し、到達側の立坑に到達することでシールドトンネルは完成するが、発進側の立坑はシールド機の発進基地として、到達側の立坑はシールド機の到達基地としてそれぞれ利用される。さらに、資材の搬入・輸送、掘削土砂や地下水の排出、さらには換気用坑道としても利用される。
【0003】
従来、下水道工事等をシールド工法で施工する際、その施工期間中の大雨や洪水がトンネル内に流入し、シールド掘削機が水没することにより、シールド掘削機の電気機器及び配線部、制御部が故障する等の問題が発生している。
【0004】
特許文献1には、セグメントで構成されるシールドトンネル施工中のトンネル内に一時的に雨水を貯留するための止水壁設置方法において、該セグメントの主桁の内側に隣接し、且つ、該主桁より該トンネル内に所定長さ突出させた受枠を設けると共に、該受枠を該主桁に固着後、該受枠の前面に止水壁を設置するシールドトンネルにおける止水壁設置方法、及び、セグメントで構成されるシールドトンネル施工中のトンネル内に一時的に雨水を貯留するための止水壁設置方法において、既設セグメントのトンネル軸方向側へ他のセグメントを組み立てる際、隣り合うセグメント間に挟持させ、且つ、該セグメントの内面より該トンネル内に所定長さ突出させた受枠を設けると共に、該受枠を該セグメントに固着後、該受枠の前面に止水壁を設置するシールドトンネルの止水壁設置方法等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-266600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている形態によると、止水壁は鋼板で形成され、現場への搬入、組立等を考慮し、3分割されたものから形成される。すなわち、本文献で開示されている止水壁は、重量のある鋼板で形成されているため、その運搬、組立は容易ではなく、時間を要するものである。また、止水壁は3分割されているため、分割部を接合し、補強する必要がある。さらに、完全な止水性を確保するために、接触部分を溶着する必要がある。さらにまた、トンネル形状に合わせて、鋼鉄製である止水壁等の形状を変更する必要がある。このように本文献の開示方法は、トンネル内に止水壁を形成するために、時間、作業量、コストを要するものである。また、特に緊急の場合には、鋼板の運搬、組立等、対応が難しいものであった。
【0007】
本発明は、シールド坑内への突発湧水、豪雨などによる水の侵入を防ぐための、迅速に、容易に、安価に、適用可能な止水壁構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段の態様は次のとおりである。
【0009】
(第1の態様)
シールドトンネル施工中において、トンネル内に一時的に貯留する水を遮断する止水壁であって、
前記止水壁は、第1の側から第2の側への水を遮断するための、前記第1の側に位置する止水バルーンと前記第2の側に位置する遮蔽保持体とを有し、
前記止水バルーンは、可撓性であり、その内部へ空気送入部を介して空気送入によりトンネル内に膨張可能であり、
膨張した前記止水バルーンの前記第2の側には、前記止水バルーンを受け止める前記遮蔽保持体が設けられ、
前記空気送入部は、前記第2の側に設けられ送風手段と連通可能であり、
前記遮蔽保持体はトンネル内壁のセグメントに固定されている
ことを特徴とする止水壁構造。
【0010】
(作用効果)
第1の態様の止水壁の止水バルーンは可撓性であり、その内部へ空気送入部を介して空気の送入によりトンネル内に膨張可能である。止水バルーンの内部に送風機等の送風手段により空気を送入することにより膨張し、トンネル内壁と密着する部分を形成することにより水を遮断する。
止水バルーンの片側には、止水バルーンを受け止める、トンネル内壁に保持されている遮蔽保持体が設けられている。これにより、遮断された水から受ける水圧により止水バルーンが移動することを防ぐことができる。
空気送入部は、前記遮蔽保持体を挟んだ第2の側に設けられる送風手段と連通可能であり、前記送風手段により、止水バルーン内に空気を送入することが可能となる。
【0011】
止水バルーンは、ゴムやポリエチレン、ポリプロピレン等の高分子素材等で形成されており、軽量であり、また、空気を封入する前はコンパクトに折りたたまれ、収納可能であるため、持ち運びも容易である。したがって、金属製の止水壁等に比較すると、持ち運び、設置が容易である。また、また設置場所を変更する場合にも、機動的な変更が可能である。
【0012】
止水バルーンを受け止める遮蔽保持体は、トンネル内壁に保持されている。止水バルーンを単独で用いた場合には、水から受ける圧力は、止水バルーンの側面表面とトンネル内面との摩擦力で支えることになる。この場合、止水バルーンは水圧により移動し、水を遮断できない場合も想定される。したがって、止水バルーンによりトンネル内において水を遮断する場合には、水貯留側とは反対側に、止水バルーンを支える構造を構築することが好ましい。
シールドトンネル内面には、二次覆工が施工される前には、セグメントと呼ばれる一次覆工が形成されている。数ピースのセグメントを組み立ててセグメントリングを形成し、これが軸方向に連続してトンネルが形成される。
セグメントは、トンネルに働く土圧や水圧などの荷重を受け持つものであり、強固な構造をしたものである。したがって、遮蔽保持体を固定するために、セグメントを利用することは、強度面から、また、設置場所の自由度の面からも有効である。
【0013】
(第2の態様)
シールドトンネル施工中において、トンネル内に一時的に貯留する水を遮断する止水壁であって、
前記止水壁は、第1の側から第2の側への水を遮断するための、前記第1の側に位置する止水バルーンと前記第2の側に位置する遮蔽保持体とを有し、
前記止水バルーンは、可撓性であり、その内部へ空気送入部を介して空気送入によりトンネル内に膨張可能であり、膨張することによりトンネル方向に沿う円筒状の形状を形成し、
前記円筒状の形状は、2つの底面と1つの側面とからなり、
前記止水バルーンは、空気送入前においては、実質的に内部に空間を有さず、折りたたみ可能であり、
膨張した前記止水バルーンの前記第2の側には、前記止水バルーンを受け止める前記遮蔽保持体が設けられ、
前記空気送入部は、前記第2の側に設けられ送風手段と連通可能であり、
前記遮蔽保持体はトンネル内壁のセグメントに固定されている
ことを特徴とする止水壁構造。
【0014】
(作用効果)
第2の態様の止水バルーンは、内部に送風機等により空気を送風することにより、止水バルーンはトンネル方向に沿う略円筒状の形態を形成するものである。前記略円筒状の形態をした止水バルーンは、2つの底面(円筒の端面)と1つの側面(周面)とからなる。
円筒の側面をシールドトンネル内壁面に密着させることにより、トンネル内において水を一方の側に遮断するものである。止水バルーンは可撓性であり、素材は、例えば、ゴムや高分子量高密度ポリエチレン等の高分子素材等である。
【0015】
止水バルーンは、内部に空気を送風する前においては、実質的に内部に空間を有さず、折りたたみ可能な、略平面状の形態をとっている。トンネル内壁は、セグメントを組み立てた円環等が形成されている。可撓性を有する素材からなる止水バルーンを、内部に空気を送風し膨張させることにより、側面をトンネル内壁面に密着させることが可能となる。第2の態様の止水バルーンは略円筒状の形態をしているため、側面のトンネル内壁への密着が容易となり、これにより、水の流れを遮断し、トンネルの一方側に貯留することが可能となる。
【0016】
また、止水バルーンは空気送入部を有している。止水バルーンを略円筒状の形態とすることにより、一方の略平面状である底面に空気送入部を設けることができ、その形成が容易となる。
【0017】
(第3の態様)
前記止水バルーンと、前記遮蔽保持体の間に、前記止水バルーンと前記遮蔽保持体とに接する平板状の止水板が設けられることができる。
【0018】
(作用効果)
遮蔽保持体には、角鋼、丸鋼、H形鋼等が使用され、これが、トンネル軸方向と垂直断面に平行状、格子状等の配置で形成される。このため、止水バルーンが遮蔽保持体と直接接触するように設置される場合には、止水バルーンは遮蔽保持体から直接荷重を受けることとなる。荷重は、止水バルーンが遮蔽保持体に直接接触する部分のみから受けるため、局所的に大きなものとなり、止水バルーンの破損を招く可能性がある。
止水バルーンが遮蔽保持体から受ける荷重を分散させるために、止水バルーンと遮蔽保持体の間に平板上の止水板を設けることができる。これにより、止水バルーンは、止水板と接する部分の全体で荷重を受けることになるから、荷重が分散され、止水バルーンの破損可能性を低減することが可能となる。
【0019】
(第4の実施態様)
トンネル内の前記止水バルーンの前記第1の側から前記遮蔽保持体の前記第2の側にわたって配置されるサクションホースをさらに有することができる。
【0020】
(作用効果)
貯水量が多くなり、水圧に起因する止水バルーンが受ける力を、止水バルーンが受ける摩擦力と遮蔽保持体から受ける力で支えられなくなると、遮蔽保持体等が破損し、止水バルーンを一か所に固定することができず、貯留水のトンネル内への流入を招く可能性がある。また、遮蔽保持体が破損しない場合であっても、止水バルーン自体が破損し、貯留水のトンネル内への流入を招く可能性がある。結果として、トンネル内へ貯留水が流出し、シールド掘削機の水没による、シールド掘削機の電気機器及び配線部、制御部が故障する等の問題が生じる。
【0021】
貯水量が、遮蔽保持体、あるいは止水バルーンが強度的に耐えうる許容量を超えることが予想される場合に、貯水されている水をトンネル反対側に抜いて、水圧を低減することが重要となる。このような場合を想定し、貯水量が多くなりすぎないように、貯水量を制御する手段は有用である。
【0022】
トンネル内の水貯留側から、前記止水バルーンの側面を通って反対側にわたってサクションホースを配置し、静水圧により、あるいは排水ポンプ等を利用することにより、貯水されている水をトンネル反対側に抜くことが可能となる。
これにより、止水バルーンの破損、遮蔽保持体等の破損を事前に防ぐことが可能となり、シールド掘削機が水没することによる、シールド掘削機の電気機器及び配線部、制御部が故障する等の問題を回避することが可能となる。
【0023】
(第5の実施態様)
前記止水バルーンと、前記遮蔽保持体の間に、前記止水バルーンと前記遮蔽保持体とに接する平板状の止水板が設けられ、
トンネル内の前記止水バルーンの前記第1の側から前記遮蔽保持体の前記第2の側にわたって配置されるサクションホースをさらに有することができる。
【0024】
(作用効果)
止水バルーンと遮蔽保持体の間に平板上の止水板を設けることにより、止水バルーンが遮蔽保持体から受ける荷重を分散させることができるから、止水バルーンの破損可能性を低減することができる。しかしながら、貯水量がさらに増える場合には、止水バルーンの受ける荷重はさらに大きくなり、また、遮蔽保持体が受ける荷重もさらに大きくなる。このように、止水バルーン、遮蔽保持体等の破損の危険性が予想される場合に、貯水されている水をトンネル反対側に抜いて、止水バルーンが貯留水から受ける荷重を低減することが重要となる。トンネル内の水貯留水4側から、止水バルーンの側面を通って反対側にわたってサクションホースを配置し、静水圧により、あるいは排水ポンプ等を使用することにより、貯水量を限界量以下に低減することが可能となる。
【0025】
これにより、止水バルーン、遮蔽保持体等の破損等を事前に防ぐことが可能となり、シールド掘削機等が水没することによる、シールド掘削機の電気機器及び配線部、制御部が故障する等の問題を回避することが可能となる。
【0026】
(第6の実施態様)
シールドトンネル施工中において、トンネル内に一時的に貯留する水を遮断する止水壁を構築する止水壁の構築方法であって、
前記止水壁は、第1の側から第2の側への水を遮断するための、前記第1の側に位置する止水バルーンと前記第2の側に位置する遮蔽保持体とを有し、
前記遮蔽保持体を前記トンネル内壁のセグメントに固定し、
前記第2の側に設けられた送風手段から空気を、前記止水バルーンの空気送入部を介して送風して、前記止水バルーンを膨張させ、ンネル内壁との密着部分を形成させて、水を遮断する、
ことを特徴とするトンネル内の止水壁の構築方法。
【0027】
(作用効果)
トンネル内において、突然の大雨、出水等により、トンネルの浸水が予想される場合、機器等の被害を防ぐために、水を遮断する必要が生じる。このような場合、本発明の止水バルーンを使用して水を遮断することは有効である。
出水側から順に、止水バルーン、遮蔽保持体を設置する。本発明の止水バルーンは、軽量であり、また、空気を封入する前はコンパクトに折りたたまれ、持ち運びも容易であるため、迅速な設置が可能である。
止水バルーンが水から受ける水圧により移動しないように、遮蔽保持体はトンネル内壁に保持する。例えばセグメント等にボルト等を用いて固定することができる。止水バルーンは使用前においては、コンパクトに折りたたまれており、これに送風機等の送風手段を用いて空気を送入することにより膨張させ、トンネル内壁との密着部分を形成させて水の流れを遮断することができる。トンネル断面方向に連続した密着部分を形成させると効果的である。止水バルーンを膨張させた後、空気送入部を閉じて使用することもできる。
なお、遮蔽保持体のトンネルへの保持、止水バルーンへの送風は、同時に行うこともできるし、状況によりどちらかを優先して行ってもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、シールド坑内への突発湧水、豪雨などによる水の侵入を防ぐための、迅速に、容易に、安価に、適用可能な止水壁構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】使用状態における止水バルーンの概略図である。
図2】立坑及び止水バルーンを配置したトンネルの概略図である。
図3】トンネル内における止水バルーン、遮蔽保持体等を表すトンネル10中心の軸方向断面図の一例である。
図4図3の点線で囲まれた部分Mの拡大図である。
図5A】遮蔽保持体の正面概略図(a)である。
図5B】遮蔽保持体の正面概略図(b)である。
図5C】遮蔽保持体の正面概略図(c)である。
図6】遮蔽保持体の設置例の概略図である。
図7】止水バルーン及び遮蔽保持体の設置例である。
図8】サクションホース配置図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る止水バルーン1、及び止水バルーン1を用いた止水方法について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明及び図面は、本発明の一例を示したものにすぎず、本発明の内容をこの実施形態に限定して解釈すべきではない。
【0031】
(止水バルーン)
以下、円筒状の形態をした止水バルーン1について説明するが、止水バルーン1はトンネル内で水を遮断することができれば、本形態に限定されるものではない。
本発明に係る止水バルーン1を図1に示す。止水バルーン1は、使用前においては、内部にほとんど空気を保有しておらず、略平面状で、折りたたみ可能な、コンパクトな形状となっている。使用時には、送風機6、コンプレッサ(図示せず)等により空気送入部5から内部に空気を送り込むことにより膨張し、使用形態では、略円筒状の形態をしている。前記円筒状の形状は、2つの底面と1つの側面とからなる。送風機6を使用する場合には、1.3kPa程度の内圧を有する。空気を送り込む前においては、圧縮され、形がつぶれた、折りたたみ可能な、コンパクトな形態となっている。このため、持ち運びが容易であり、緊急時において、短時間に機動的な設置が可能となる。
止水バルーン1の貯留水4に面している底面1bは、円形状の略平面状の形状をしている。貯留水4に面していない円形状の底面1bは、止水バルーン1に外部から内部に空気を送り込むための空気送入部5を有する。
【0032】
送風機6、コンプレッサ等により空気送入部5より空気を送り込みながら止水バルーン1を膨張した円筒状の形態に保たせることができる。止水バルーン1は送風機6等で内部に空気を送り込みながら膨張させた状態で使用される。又は、送風機6等により膨張させた後、空気の流出を防ぐために、空気送入部5の送風口を蓋等により塞いだ状態で使用することもできる。
止水バルーン1を膨張させ、円筒の側面1aをトンネル10内面に密着させることにより、水の流れを遮断し、トンネル10の片方側に水を貯留する。なお、止水バルーン1の側面1a全体をトンネル10内面に密着させることが好ましいが、水の流れを遮断し、貯留水4の漏れを防ぐためには、トンネル10内壁との密着部分が少なくともトンネル10内壁の円周方向に連続して形成されていればよい。
【0033】
止水バルーン1の材質は、ゴム、高分子材料が好ましい。ゴムとしては、天然ゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、シリコンゴム、エチレン・酢酸ビニルゴム、クロロプレンゴム等が利用可能であるがこれらに限定されない。硬質ゴムが好ましいが、これらに限定されるものではない。
また、高分子材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等の高分子素材が使用可能であるが、これらに限定されない。
止水バルーン1の素材の厚さは、素材の強度にもよるが、通常、0.3mm~2.0mmである。さらに好ましくは、0.5mm~1.5mmである。2.0mmを超えると重量が増え、迅速な設置が困難となる。また、0.3mmよりも薄いと耐圧性が低下し、また、縫製が困難となる。
【0034】
ゴム、高分子材料等を用いて、送風により円筒状の形態を有する止水バルーン1の作製方法は、周知の方法が適用可能である。
止水バルーン1は、例えばポリエチレン製の布を使用する場合には、これを、例えば、ポリエステル等の糸を用いて、空気等で膨張した状態で円筒形状になるように、縫製することにより作製することができる。さらに、水の侵入を防ぐために、縫製部に防水塗膜を塗ってもよい。
また、止水バルーン1の素材を接着するのに適した接着剤により端部を接着して、空気等で膨張した状態で円筒形状になるように作製することも可能である。また、高分子材料を一度融点以上で融解させ、溶融面を接合することにより融着させることにより作製することも可能である。
【0035】
止水バルーン1は、使用形態では円筒状の形態をとっている。円筒の底面の直径は、トンネル10内径と同程度の大きさである。止水バルーン1は、送風機6等により送り込まれた空気によりやや膨張した形態となるため、トンネル10内径と同じ大きさであっても、トンネル10内面との密着性が確保される。トンネル10と止水バルーン1との摩擦を考慮すると、止水バルーン1の直径は、トンネル10内径の1.0~1.1倍、好ましくは1.01~1.05倍である。止水バルーン1の直径が、トンネル10の直径よりもやや大きいと止水バルーン1の外周とトンネル10内壁との密着性が上がり、止水効果がより大きくなる。止水バルーン1の直径が、トンネル10の内径(直径)よりも大きくなりすぎると、止水バルーン1の円状底面部1bや側面1aの変形が大きくなり、密着性が逆に低下するという問題があり、また、製造コストも高くなる。また、止水バルーン1の底面の直径がトンネル10内径よりも小さいと、止水バルーン1の側面1aとトンネル10内面との密着性が低下し、止水効果が低下する。
【0036】
止水バルーン1の円筒状の形態の側面の長さ(円状の底部1b間を垂直に結ぶ直線の長さ)は、通常、トンネル直径の0.5~1.5倍、好ましくは0.7~1.3倍の長さである。短すぎると止水バルーン1がトンネル内面から受ける摩擦力が低下し、水圧により止水バルーンが移動しやすくなる。長すぎると使用前の折りたたみ時、嵩高く、また重くなるので、持ち運びが容易でなくなり、短時間での機動的な設置に支障をきたすことになる。
【0037】
図3に示されるように、止水バルーン1の空気送入部5と送風機6は連結部材7により連結され、送風機6から送られる空気は、連結部材7、空気送入部5を通って止水バルーン1の内部に送られる。
連結部材7の素材は、周知のものが使用可能である。止水バルーン1に使用される素材であってもよいし、その他の高分子材料、または金属製の素材であってもよい。
【0038】
貯留水4の量が多くなると、止水バルーン1には水圧による大きな荷重がかかることになる。このような場合には、止水バルーン1は、送風機6等により内部に空気を送り膨張させた後、送風口を閉じて塞ぐことが好ましい。例えば、エアバルブなどのバルブ等、周知の方法が採用可能である。
【0039】
止水バルーン1は、ゴムやポリエチレン等の高分子素材等で形成されているため、軽量であり、また、空気を封入する前は折り畳み可能でコンパクトに収納可能であるため、持ち運びも容易である。したがって、金属製の止水壁等に比較すると、持ち運び、設置が容易であり、迅速な設置が可能である。このため、特に突発的な増水に対応可能であるという特徴がある。また、設置場所を変更する場合にも、機動的な変更が可能であるという利点がある。
【0040】
図2には、立坑11、シールドトンネル10、シールドトンネル10に設置された止水バルーン1および立坑11側に浸水した貯留水4の概略図が示されている。
例えば、大雨や洪水などにより大量の水が立坑11に流れ込むと、その水はシールドトンネル10内に流れ込み、シールド掘削機等の設備が水没し、損害を招くことになる。止水バルーン1はシールドトンネル10内に設置され、水のシールドトンネル10への浸水を防ぐ役割を果たす。
浸水が激しく、大量の水が立坑11に流れ込むと、これを堰き止めるための止水バルーン1には、貯留水4からの水圧に起因する大きな荷重が働くことになる。
【0041】
(止水バルーン構造)
止水バルーン1は、送風機6、コンプレッサ等により内部に空気が送風され、貯留水4に面した底面は閉じた円形状をしており、もう一方の面は、空気送入部5が設けられた構造をしている。または、止水バルーン1を送風により膨張させた後、空気送入部5の開口部を閉じて使用することもできる。あるいは空気を注入するために、エアバルブ等のバルブを使用することも可能である。
止水バルーン1の側面1aは、トンネル10内壁面と接しており、止水バルーン1が貯留水4から受ける水圧に対抗する力として摩擦力が発生している。しかし、水圧に起因する力に対して摩擦力のみでは対抗できない場合も想定される。
このような場合には、遮蔽保持体A2、遮蔽保持体B19等を設置して、止水バルーン1を、貯留水4から受ける水圧によって移動しないように固定することが必要となる。
トンネル10内部にはセグメント3が組立てられたセグメントリングが形成され、これが軸方向に連続しトンネル10の内面が形成されている。セグメント3は、トンネル10に働く土圧や水圧などの荷重を受け持つものであり、強固な構造をしたものである。
したがって、遮蔽保持体A2を固定するために、セグメント3を利用することは、強度面から、また、設置場所の自由度の面からも有効である。
遮蔽保持体A2は、例えばセグメント3の主桁を利用して固定することができ、止水バルーン1の設置場所に関して、高い自由度をもって止水バルーン1を設置することができる。
遮蔽保持体A2は、このセグメント3を利用して固定するのが好ましい。セグメント3としては、コンクリートセグメント、鋼製セグメント、可撓セグメント等が想定される。
例えば、コンクリート系のRCセグメントの主桁部に、ボルト等を利用して、遮蔽保持体A2を固定することができる。また、鋼製セグメント、可撓セグメント等にも設置することが可能である。
【0042】
遮蔽保持体A2等の形状、素材は特に限定されず、溝形鋼、鋼板、角鋼、丸鋼、H形鋼等使用可能である。
図3には、トンネル10内における止水バルーン1、遮蔽保持体A2、遮蔽保持体B19等を表すトンネル10中心の、トンネル軸方向断面図が示されている。図4図3の点線で囲まれた部分Mを拡大した図である。止水バルーン1は、止水板18に接しており、止水板18から面状の荷重を受けている。さらに止水板18は複数の遮蔽保持体B19に接しており、さらに外側(貯留水4に面していない側)に複数の遮蔽保持体A2が遮蔽保持体B19と交差するような形態で設置されている(図5A等参照)。遮蔽保持体A2はセグメント3に固定されている(図5A等参照)。遮蔽保持体B19は、遮蔽保持体A2にボルト等を用いて固定されていてもよいし、また、止水板18に溶接等により固定されていてもよい。
遮蔽保持体A2は、ボルト16、ナット17により、接続部材20に固定され、接続部材20は、セグメント固定ボルト21によってセグメント3に固定されている。
【0043】
図5Aには、遮蔽保持体A2、遮蔽保持体B19等の概略図が示されている。この例では、遮蔽保持体B19は、遮蔽保持体A2に固定されている。他の形態として、止水板18に固定されていてもよい。接続部材20は、セグメント固定ボルト21によりセグメント3に固定されており、遮蔽保持体A2は、ボルト等によって接続部材20に固定されている。上記したように、複数の遮蔽保持体A2が、複数の遮蔽保持体B19のさらに外側(貯留水4のない側)に遮蔽保持体B19と交差するような状態で設置されている。
別の形態として、遮蔽保持体B19は、止水板18に固定されていてもよい。この場合、貯留水4側から、止水バルーン1、止水板18、遮蔽保持体B19、遮蔽保持体A2という配置となる。
固定は、周知の方法が利用可能である。図3においては、セグメント3にセグメント固定ボルト21によって固定された接続部材20に、ボルト16、ナット17によって遮蔽保持体A2が固定されている。
【0044】
止水板18は、円筒状の止水バルーン1の、貯留水4に接しない側の円形状の底面に接した状態で設置され、止水バルーン1と遮蔽保持体A2に挟まれた状態で設置される。または遮蔽保持体B19を使用する場合には、止水バルーン1と遮蔽保持体B19に挟まれた状態で設置される。
遮蔽保持体A2または遮蔽保持体B19には、溝形鋼等が使用される。このため止水板18がない場合には、止水バルーン1には、荷重が線状に加わることになり、止水バルーン1の表面には大きな荷重が不均一に加わることになる。このため止水バルーン1の荷重を受ける部分が破損する恐れがある。
一方、止水板18を設置することにより、止水バルーン1は止水板18から面状の荷重を受けることになり、荷重が一様に加わることとなり、止水バルーン1上の線状部分に集中することを避けることができる。このため止水板18を設置することにより、止水バルーン1の破損を防ぐという効果がある。
【0045】
止水板18の素材は所定の強度があれば特に限定されるものではないが、例えば、鉄板や鋼板等の金属、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等のプラスチック、木材等が使用できる。止水板18の厚さは、材質にもよるが、例えば鉄板の場合には、0.5cm~1.5cm程度である。なお、止水板18は必要に応じて設置される。
一つの態様においては、止水板18は、複数の部品よりなり、トンネル10内で組み立てられることにより円盤状のものとすることができる。止水板18の直径は、トンネル10内に設置できるよう、トンネル10内径よりも例えば数mm~数cm小さくすることができる。止水板は、止水バルーン1が、遮蔽保持体から受ける荷重を分散させるものであるから、円盤状でなくともよく、多角形等でもよく、略平板状であればよい。
止水バルーン1には空気送入部5を通って、送風機6等により空気が送り込まれる。このため、止水板18は面内に開口部18Aを有し、この部分に止水バルーン1の空気送入部5が位置し、送風機6から止水バルーン1に空気が送入されることとなる。
【0046】
図5B図5Cに遮蔽保持体A2、遮蔽保持体B19の別の概略図が示されている。
図5Bでは、遮蔽保持体A2は接続部材20を介して、上下方向に両端部をセグメント3に固定されている。また、遮蔽保持体B19が横方向に遮蔽保持体A2と交差する構成で格子状に固定されている。
図5Cには、さらに別の構成の例が示されている。5本の遮蔽保持体A2が、それぞれ端部を他の一つの遮蔽保持体A2の端部と接する態様で、接続部材20を介してセグメント3に固定されている。さらに、セグメント3に固定された遮蔽保持体A2を橋渡しする態様で、遮蔽保持体B19がその両端を、セグメント3に固定された遮蔽保持体A2に固定されている。
【0047】
遮蔽保持体A2、遮蔽保持体B19の他に第3の遮蔽保持体C33を設置することもできる。遮蔽保持体A2、遮蔽保持体B19はいずれも、図3図5A等に示すように、トンネルの軸方向の垂直断面に略平行に設置されている。遮蔽保持体C33としては、遮蔽保持体A2、遮蔽保持体B19と同様に、溝形鋼、鋼板、角鋼、丸鋼、H形鋼等使用可能である。
図6に示されるように、遮蔽保持体C33は、一端が遮蔽保持体A2に固定され、他の一端を遮蔽保持体A2が固定されているセグメントとは別のトンネル断面にあるセグメント、すなわち別のセグメントリング上に固定されている(図示せず)。なお、図6においては、遮蔽保持体B19は止水板18に固定されている。また、遮蔽保持体A2はセグメント3に固定されている(図示せず)。これにより、遮蔽保持体A2、遮蔽保持体B19をさらに補強し、水圧に起因する荷重にさらに対抗することができる。
【0048】
図7に、トンネル10内に止水バルーン1、遮蔽保持体A2、遮蔽保持体B19等を設置した写真が示されている。止水バルーン1の、貯留水4とは反対側のトンネル内から見たものである。この図は、止水板18、第3の遮蔽保持体C33は使用されていない場合のものである。セグメント3にセグメント固定ボルト21により固定された複数の接続部材20に、複数の遮蔽保持体A2がボルト16、ナット17により固定されている。さらに、複数の遮蔽保持体B19が互いに略平行を成すように、止水バルーン1と遮蔽保持体A2に挟まれる形で、遮蔽保持体A2に固定されている。
【0049】
遮蔽保持体A2、遮蔽保持体B19は、止水バルーン1から水圧に起因する荷重を、止水板18を使用する場合には、止水板18を介して受け、止水板18を使用しない場合には、止水バルーン1から受けるため、その荷重に耐えうる強度が要求される。
遮蔽保持体A2、遮蔽保持体B19、接続部材20、セグメント固定ボルト21等として使用される鋼材には、最大許容応力度がある。許容応力度には、長期許容応力度と短期許容応力度があり、それぞれ、圧縮・引張・曲げ応力度、せん断応力度がある。本発明に係る止水バルーン1を使用した止水方法においては、短期許容応力度を基準とすることが合理的である。
【0050】
止水バルーン1が受ける水圧は以下のように見積もることができる。
立坑11が浸水し、その水面の、トンネル10中心からの高さをhとすると、止水バルーン1が水から受ける荷重PW(N)は、以下の式で計算される。
【数1】
ρ:水の密度(1000kg/m
h:トンネル10中心から水面までの高さ(m)
A:止水バルーン1底面(円筒端部の円形部分)の面積(m
g:重力加速度(m/s
【0051】
また、止水バルーン1がトンネル10内壁から受ける摩擦力FB(N)は以下のように見積もることができる。
【数2】
μ:止水バルーン1の摩擦係数
Pv:送風機の圧力(Pa)
S:止水バルーン1がトンネル10内壁セグメントに接している面積(m
【0052】
そうすると、遮蔽保持体A2等が受ける荷重T(N)は以下のようになる。
【数3】
上式に従って、実際に遮蔽保持体A2、遮蔽保持体B19、接続部材20、セグメント固定ボルト21が受ける許容応力度が、それぞれの部材の最大許容応力度以下になるように、遮蔽保持体A2、遮蔽保持体B19、接続部材20、セグメント固定ボルト21等を設置することが好ましい。
一般に、遮蔽保持体A2、遮蔽保持体材B19の数や固定個所数を増やすことにより、各部材の最大許容応力度を満たすようにすることができる。また、固定個所間の部材長さ、又は格子間の部材長さを短くすることにより、最大許容応力度を満たすようにすることができる。
【0053】
遮蔽保持体A2は、図5A等に示されるようにセグメント3に固定されている。遮蔽保持体A2の数は、図5Aの例では、8本、図5Cの例では5本である。遮蔽保持体A2は、通常3~10本程度、好ましくは5~8本である。また、遮蔽保持体B19は、止水板18に固定されて使用されてもよく、また、遮蔽保持体A2に固定されて使用されてもよい。図5Aの例では、遮蔽保持体B19は8本であり、図5Cの例では5本である。遮蔽保持体B19は、通常3~10本程度、好ましくは5~8本であるが、遮蔽保持体B19は用いなくてもよい。
【0054】
(サクションホース)
立坑11の浸水が予想以上の高さになると、遮蔽保持体A2、遮蔽保持体B19、接続部材20、セグメント固定ボルト21、止水バルーン1等の破損を招く恐れがある。このような場合には、遮蔽保持体A2等の破損を招かない程度まで、浸水量を減水する必要がある。この場合、貯留水4側から、止水バルーン1の反対側に、水を徐々に抜いていくことが有効である。
図8に、貯留水4側から、止水バルーン1の反対側に渡って、サクションホース30を設置した形態が示されている。サクションホース30の貯留水4側端部は、貯留水4中に存在している。サクションホース30の反対側端部付近にはボールバルブ31が設置されており、必要に応じて開閉される。立坑11の浸水が大きい場合には、通常、静水圧により水はサクションホース30から流出するため、ボールバルブ31を開状態にすればよい。また、排水を促進するため、ポンプ等を設置してもよい。
【0055】
図8の例では、サクションホース30は1本設置してあるが、2本以上、複数本設置してもよい。サクションホース30は、止水バルーン1、止水板18、遮蔽保持体A2等に固定されていてもよい。固定方法は周知の方法が適用可能である。
サクションホース30は、給排水用に通常使用されているものが使用可能である。
遮蔽保持体A2、遮蔽保持体B19、接続部材20、セグメント固定ボルト21等の状態を監視することにより、緊急時にはサクションホース30を使用して水を抜くことにより、水圧を減じ、止水を維持することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の止水バルーン1は、例えばシールドトンネル掘削時、シールド坑内への突発湧水、豪雨や洪水の発生により、立坑11が浸水した場合に、トンネル10内に一時的に貯留するための止水壁設備として使用可能である。止水バルーン1は持ち運びが容易であるため、緊急時の対応が容易となる。また、立坑11の浸水の程度により、遮蔽保持体A2、遮蔽保持体B19を機動的に設置することにより、トンネル10内への水の侵入を効果的に遮断し、シールド掘削機が水没することによる、シールド掘削機の電気機器及び配線部、制御部が故障する等の問題等を防止することができる。
【0057】
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。また、シールドトンネルのみならず、山岳トンネルにおいても、導水路トンネルなどの小断面トンネルに適用することも可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…止水バルーン、1a…止水バルーン側面、1b…止水バルーン底面、2…遮蔽保持体A、3…セグメント、4…貯留水、5…空気送入部、6…送風機、7…連結部材、10…トンネル、11…立坑、16…ボルト、17…ナット、18…止水板、18A…止水板開口部、19…遮蔽保持体B、20…接続部材、21…セグメント固定ボルト、30…サクションホース、31…ボールバルブ、33…遮蔽保持体C
【要約】
【課題】シールド坑内への突発湧水、豪雨などによる水の侵入を防ぐための、迅速に、容易に、安価に、適用可能な止水構造を提供すること。
【解決手段】片側に空気送入部を有している可撓性の止水バルーンであって、止水バルーンはその内部に送風機等の送風手段により空気を送入することにより膨張し、トンネル内壁と密着する部分を形成し水を遮断する。止水バルーンの片側には、止水バルーンを受け止める、トンネル内壁に保持されている遮蔽保持体が設けられており、遮断された水から受ける水圧により止水バルーンが移動することを防ぐことができる。
【選択図】図3

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8