(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジノン誘導体の塩、その調製方法及び用途
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20240607BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240607BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240607BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240607BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
C07D471/04 116
C07D471/04 CSP
A61K31/519
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P15/00
(21)【出願番号】P 2023504144
(86)(22)【出願日】2021-07-22
(86)【国際出願番号】 CN2021107815
(87)【国際公開番号】W WO2022017449
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】202010711260.5
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521330404
【氏名又は名称】南京正大天晴制薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】NANJING CHIA TAI TIANQING PHARMACEU TICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マー、チャンヨウ
(72)【発明者】
【氏名】ティエン、ホー
(72)【発明者】
【氏名】チャオ、チエンリャン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、トンホイ
(72)【発明者】
【氏名】ウー、チエン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ、タン
(72)【発明者】
【氏名】チュー、チュンシア
(72)【発明者】
【氏名】ティエン、チョウシャン
【審査官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-512364(JP,A)
【文献】特表2013-508382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1で示される化合物の薬学的に許容可能な塩であって、前記塩は、有機酸塩又は無機酸塩から選ばれ、有機酸塩は、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、ヒドロキシエタンスルホン酸塩、α-ナフタレンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、1,2-エタンジスルホン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、L-(+)-酒石酸塩、馬尿酸塩、L-アスコルビン酸塩、L-リンゴ酸塩、安息香酸塩又はゲンチジン酸塩から選ばれ、前記無機酸塩は、塩酸塩、硫酸塩又はリン酸塩から選ばれる、式1で示される化合物の薬学的に許容可能な塩:
【化1】
。
【請求項2】
フマル酸塩又は塩酸塩から選ばれる、請求項1に記載の塩。
【請求項3】
式1で示される化合物と有機酸とのモル比は、1:1である、請求項1に記載の塩。
【請求項4】
式1で示される化合物と塩化水素とのモル比は、1:1又は1:2である、請求項1に記載の塩。
【請求項5】
式1で示される化合物と塩化水素とのモル比は、1:2である、請求項1に記載の塩。
【請求項6】
フマル酸塩から選ばれ、式1で示される化合物とフマル酸とのモル比は、1:1である、請求項1に記載の塩。
【請求項7】
式1で示される化合物及び対応する酸で塩を形成させるステップを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の式1で示される化合物の薬学的に許容可能な塩の調製方法。
【請求項8】
塩形成反応における溶媒は、アルコール系溶媒とアルカン系溶媒との混合溶媒、ケトン系溶媒とアルカン系溶媒との混合溶媒、エステル系溶媒とアルカン系溶媒との混合溶媒、ベンゼン系溶媒とアルカン系溶媒との混合溶媒又はハロゲン化炭化水素系溶媒とアルカン系溶媒との混合溶媒から選ばれる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の塩を含む、医薬組成物。
【請求項10】
薬物として用いられる請求項1~6のいずれか1項に記載の式1で示される化合物の薬学的に許容可能な塩又は請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
AKTプロテインキナーゼに媒介された疾患又は病状を予防及び/又は治療するための
、請求項1~6のいずれか1項に記載の塩又は請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
AKTプロテインキナーゼに媒介された疾患又は病状を予防及び/又は治療するための薬物の調製に
使用するための、請求項1~6のいずれか1項に記載の塩又は請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記AKTプロテインキナーゼに媒介された疾患又は病状は、がんであ
る、請求項11又は12に記載の
塩又は医薬組成物。
【請求項14】
前記AKTプロテインキナーゼに媒介された疾患又は病状は、乳がん、前立腺がん又は卵巣がんである、請求項13に記載の塩又は医薬組成物。
【請求項15】
前記AKTプロテインキナーゼに媒介された疾患又は病状は、前立腺がんである、請求項13に記載の塩又は医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2020年7月22日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202010711260.5で、発明の名称が「ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジノン誘導体の塩、その調製方法及び用途」である中国特許出願に基づく優先権を主張する。当該出願に記載された内容は全て、参照によりそのまま本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、医薬品化学の分野に属し、具体的に、ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジノン誘導体の塩、その調製方法及び医薬的用途に関する。
【背景技術】
【0003】
ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)、その下流にあるタンパク質AKT(プロテインキナーゼB、PKBとも呼ばれる)及び哺乳類ラパマイシン標的タンパク質(mTOR)で構成されるPI3K/AKT/mTOR経路は、細胞内の極めて重要なシグナル伝達経路として、細胞の成長、生存、増殖、アポトーシス、血管新生、オートファジーなどの過程において極めて重要な生物学的機能を発揮している。当該経路の異常な活性化は、がん、神経障害、自己免疫疾患及び血液リンパ系疾患を含む一連の疾患を引き起こす。
【0004】
AKTは、セリン/トレオニンキナーゼであり、その下流にある多くのエフェクターによって細胞の生存、成長、代謝、増殖、移動及び分化に影響を与える。50%を超えるヒト腫瘍、特に前立腺がん、膵がん、膀胱がん、卵巣がん、乳がんにおいて、AKTの過剰な活性化が起きている。AKTの過剰な活性化は、腫瘍の形成、転移及び薬剤耐性をもたらす。
【0005】
AKTには、AKT1、AKT2、AKT3の3つのサブタイプがある。典型的なプロテインキナーゼとして、各サブタイプは、いずれもアミノ末端のPHドメイン(Pleckstrin homology domain)、中間のATP結合キナーゼドメイン及びカルボキシ末端の調節ドメインで構成されている。この3つのサブタイプでは約80%のアミノ酸配列が相同であり、ただPHドメイン及びキナーゼドメインの接続領域では大きな違いがある。
【0006】
現在、PI3K/AKT/mTORシグナル伝達経路に対する標的薬物は、主にPI3K阻害剤及びmTOR阻害剤である。しかしながら、AKTは、当該シグナル伝達経路のコアにある。AKTの活性を阻害することで、上流のPI3Kへの阻害による激しい副作用を避けしつつ、下流のmTORへの阻害によるネガティブフィードバック機構の有効性への影響を避けることもできる。例えば、CN101631778Aには、シクロペンタ[D]ピリミジン誘導体が、CN101578273Aには水酸基化及びメトキシ化されたシクロペンタ[D]ピリミジン誘導体が、CN101511842Aにはジヒドロフロピリミジン誘導体が、CN101970415Aには5H-シクロペンタ[d]ピリミジン誘導体がそれぞれ開示され、これら化合物は10μM未満のAKT1阻害IC50を有する。しかしながら、効果的かつ選択的なAKT阻害剤を見つけることは、現在の腫瘍標的薬の開発にとって重要な方向である。
【発明の概要】
【0007】
第1態様において、本発明は、式1で示される化合物の薬学的に許容可能な塩を提供し、前記塩は、有機酸塩又は無機酸塩から選ばれ、前記有機酸塩は、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、ヒドロキシエタンスルホン酸塩、α-ナフタレンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、1,2-エタンジスルホン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、L-(+)-酒石酸塩、馬尿酸塩、L-アスコルビン酸塩、L-リンゴ酸塩、安息香酸塩又はゲンチジン酸塩から選ばれ、前記無機酸塩は、塩酸塩、硫酸塩又はリン酸塩から選ばれ、式1で示される化合物の構造は、次のとおりである:
【化1】
。
【0008】
いくつかの実施形態において、前記有機酸塩は、フマル酸塩から選ばれる。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記無機酸塩は、塩酸塩から選ばれる。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記有機酸塩における式1で示される化合物と有機酸とのモル比は、1:1である。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記塩酸塩における式1で示される化合物と塩化水素とのモル比は、1:1又は1:2である。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記塩酸塩における式1で示される化合物と塩化水素とのモル比は、1:2である。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記硫酸塩における式1で示される化合物と硫酸とのモル比は、1:1である。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記リン酸塩における式1で示される化合物とリン酸とのモル比は、1:1である。
【0015】
本発明にいわゆる塩は、式1で示される化合物及び対応する酸の塩形成反応により得られるものであり、反応では、式1で示される化合物が陽イオンになり、対応する酸の酸基に結合して、前記塩を形成させると理解することができ、従って、本発明で式1で示される化合物と酸とのモル比は、塩中の式1で示される化合物の陽イオンと対応する酸の酸基とのモル比と理解することができる。
【0016】
いくつかの典型的な実施形態において、本発明は、式1で示される化合物のフマル酸塩であって、式1で示される化合物とフマル酸とのモル比は1:1であり、又は式1で示される化合物の陽イオンとフマル酸の酸基とのモル比は1:1であるフマル酸塩を提供する。
【0017】
いくつかの典型的な実施形態において、本発明は、式1で示される化合物の塩酸塩であって、式1で示される化合物と塩化水素とのモル比は1:1であり、又は式1で示される化合物の陽イオンと塩素イオンとのモル比は1:1であり、この場合、式1で示される化合物の一塩酸塩である。
【0018】
いくつかの典型的な実施形態において、本発明は、式1で示される化合物の塩酸塩を提供し、式1で示される化合物と塩化水素とのモル比は1:2であり、又は式1で示される化合物の陽イオンと塩素イオンのモル比は1:2であり、この場合、式1で示される化合物の二塩酸塩である。
【0019】
別の態様において、本発明は、式1で示される化合物及び対応する酸で塩を形成させるステップを含む、式1で示される化合物の薬学的に許容可能な塩の調製方法を提供する。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記塩形成反応における溶媒は、アルコール系溶媒とアルカン系溶媒との混合溶媒、ケトン系溶媒とアルカン系溶媒との混合溶媒、エステル系溶媒とアルカン系溶媒との混合溶媒、ベンゼン系溶媒とアルカン系溶媒との混合溶媒、又はハロゲン化炭化水素系溶媒とアルカン系溶媒との混合溶媒から選ばれる。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記アルコール系溶媒は、メタノール、エタノール又はイソプロパノールから選ばれ、好ましくは、イソプロパノールであり、前記ケトン系溶媒は、アセトン又はブタノンから選ばれ、好ましくは、アセトンであり、前記エステル系溶媒は、酢酸エチル又は酢酸ブチルから選ばれ、好ましくは、酢酸エチルであり、前記ベンゼン系溶媒は、トルエンから選ばれ、前記ハロゲン化炭化水素系溶媒は、ジクロロメタンから選ばれ、前記アルカン系溶媒は、n-ヘプタンから選ばれる。
【0022】
いくつかの典型的な実施形態において、本発明は、式1で示される化合物及びフマル酸で塩を形成させるステップを含む、式1で示される化合物のフマル酸塩の調製方法を提供し、好ましくは、塩形成溶媒は、イソプロパノールとn-ヘプタンとの混合溶媒から選ばれる。
【0023】
いくつかの典型的な実施形態において、本発明は、式1で示される化合物及び塩酸で塩を形成させるステップを含む、式1で示される化合物の塩酸塩の調製方法を提供し、好ましくは、塩形成溶媒は、トルエンとn-ヘプタンとの混合溶媒又は酢酸エチルとn-ヘプタンとの混合溶媒から選ばれる。
【0024】
本発明の別の態様において、本発明は、前記式1で示される化合物の薬学的に許容可能な塩を含む医薬組成物をさらに提供する。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、1つ又は複数の薬学的に許容可能な担体をさらに含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、経口投与に適する固体医薬製剤であり、好ましくは、錠剤又はカプセルである。
【0027】
別の態様において、本発明は、薬物として用いられる式1で示される化合物の薬学的に許容可能な塩又はその医薬組成物をさらに提供する。
【0028】
本発明の別の態様において、本発明は、式1で示される化合物の薬学的に許容可能な塩又はその医薬組成物の、AKTプロテインキナーゼに媒介された疾患又は病状を予防及び/又は治療するための薬物の調製における用途をさらに提供する。
【0029】
本発明の別の態様において、本発明は、式1で示される化合物の薬学的に許容可能な塩又はその医薬組成物の、AKTプロテインキナーゼに媒介された疾患又は病状を予防及び/又は治療するための用途をさらに提供する。
【0030】
別の態様において、本発明は、本発明に係る式1で示される化合物の薬学的に許容可能な塩又はその医薬組成物を必要がある個体に投与することを含む、AKTプロテインキナーゼに媒介された疾患又は病状を予防及び/又は治療するための方法をさらに提供する。
【0031】
別の態様において、本発明は、AKTプロテインキナーゼに媒介された疾患又は病状を予防及び/又は治療するための、本発明に係る式1で示される化合物の薬学的に許容可能な塩又はその医薬組成物をさらに提供する。
【0032】
いくつかの実施形態において、前記AKTプロテインキナーゼに媒介された疾患又は病状は、がんである。
【0033】
いくつかの典型的な実施形態において、前記がんは、乳がん、前立腺がん又は卵巣がんである。
【0034】
いくつかの典型的な実施形態において、前記がんは、前立腺がんである。
【0035】
「関連の定義」
特に断らない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される以下の用語は、下記の意味を有する。
本発明に係る薬学的に許容可能な塩は、これらの水和物の形態をさらに含む。
【0036】
「薬学的に許容可能な担体」という用語は、生体に顕著な刺激がなく、しかも当該活性化合物の生物活性及び性能を損なわないものを指す。担体は、中国国家食品医薬品監督管理局に許可されたいずれのヒト又は動物に用いられる希釈剤、崩壊剤、粘着剤、流動化剤、濡れ剤を含むが、これらに限定されない。
【0037】
「フマル酸」という用語は、(E)-2-ブテン二酸を指し、下記の構造を有する:
【化2】
。
【0038】
「アルコール系溶媒」という用語は、C1~C6アルカンの1個又は複数の水素原子が1つ又は複数のヒドロキシ基(OH)で置換されて誘導された物質を指し、前記C1~C6アルカンとは、1~6個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖のアルカンを指し、アルコール系溶媒の具体例として、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はn-プロパノールを含むが、これらに限定されない。
【0039】
「アルカン系溶媒」という用語は、5~7個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖又は環状のアルカンを指し、具体例として、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタンを含むが、これらに限定されない。
【0040】
「エステル系溶媒」という用語は、エステル基(-COOR)を含有し、且つ炭素原子数が3~10個である鎖状化合物を指し、Rは、C1~C6アルキル基であり、前記C1~C6アルキル基とは、1~6個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖アルカンを指し、エステル系溶媒の具体例として、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルを含むが、これらに限定されない。
【0041】
「ハロゲン化炭化水素系溶媒」という用語は、C1~C6アルカンの1個又は複数の水素原子1個又は複数のハロゲン原子で置換されて誘導された物質を指し、前記C1~C6アルカンとは、1~6個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖のアルカンを指し、前記ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を指し、ハロゲン化炭化水素系溶媒の具体例として、ジクロロメタン、クロロホルムを含むが、これらに限定されない。
【0042】
「ケトン系溶媒」という用語は、カルボニル基(-CO-)を含有し、且つ炭素原子数が3~10個である鎖状又は環状化合物を指し、具体例として、アセトン、ブタノン、シクロヘキサノンを含むが、これらに限定されない。
【0043】
「ベンゼン系溶媒」という用語は、フェニル基を含有する溶媒を指し、具体例としては、トルエン、キシレン、クメン、クロロベンゼを含む。
【0044】
「当量」という用語は、化学反応の当量関係により、各ステップで使用される基本原料を1当量とする場合、必要とする他の原料の当量用量を指す。
【0045】
特に断らない限り、本発明の略語は、以下の意味を有する。
M:mol/L、mM:mmol/L、nM:nmol/L、Boc:tert-ブトキシカルボニル基、DCM:ジクロロメタン、DEA:ジエチルアミン、DIEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン、HATU:(2-(7-アザベンゾトリアゾール)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)、RT:保持時間、SFC:超臨界流体クロマトグラフィー、h:時間、min:分間、TK:チロシンキナーゼ、SEB:蛍光シグナルエンハンサー、HTRF:均一時間分解蛍光、DTT:ジチオトレイトール。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本発明の実施例及び従来技術の技術案をより明確的に説明するために、以下、実施例及び従来技術に使用される必要な図面を簡単に解釈する。自明的に、以下に記載の図面は、ただ本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者であれば、進歩性に値する労働を必要とせず、これら図面に基づき、他の図面を得ることもできる。
【
図1】
図1は、実施例1に係る式1で示される化合物の単分子模式図である。
【
図2】
図2は、実施例1に係る式1で示される化合物のシュウ酸塩単結晶の非対称構造単位の模式図である。
【
図3】
図3は、実施例2に係る式1で示される化合物の硫酸塩のXRPDパターンである。
【
図4】
図4は、実施例2に係る式1で示される化合物のリン酸塩のXRPDパターンである。
【
図5】
図5は、実施例2に係る式1で示される化合物のヒドロキシエタンスルホン酸塩のXRPDパターンである。
【
図6】
図6は、実施例2に係る式1で示される化合物のα-ナフタレンスルホン酸塩のXRPDパターンである。
【
図7】
図7は、実施例2に係る式1で示される化合物のL-リンゴ酸塩のXRPDパターンである。
【
図8】
図8は、実施例3に係る式1で示される化合物の一塩酸塩のXRPDパターンである。
【
図9】
図9は、実施例4に係る式1で示される化合物の二塩酸塩のXRPDパターンである。
【
図10】
図10は、実施例5に係る式1で示される化合物のフマル酸塩のXRPDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、実施例で本発明をより詳しくに記載する。これら具体的な記載は、本発明の技術的解決手段を説明するためのものに過ぎず、本発明は、こられ具体な記載に一切限定されない。
【0048】
実施例1:式1で示される化合物の調製
調製例1中間体(R)-4-クロロ-5-メチル-5,8-ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-7(6H)-オンの調製
【化3】
a)2-メチルプロパン-1,1,3-トリカルボン酸トリメチル
窒素雰囲気で、20℃でナトリウムメトキシドのメタノール溶液(30wt%、50.32g)をメタノール(900mL)に加えた後、70℃に昇温し、マロン酸ジメチル(461.12g)及びクロトン酸エチル(349.46g)を均一に混合し、上記ナトリウムメトキシドのメタノール溶液に滴下し、70℃で3時間反応させた。完全に反応させた後、減圧蒸留により溶媒を除去して、酢酸エチル(1L)を加え、4Mの塩酸でpH7-8に調整し、そして水(500mL)を加え、分液して、有機相を減圧蒸留により除去し、黄色の液体777.68gを得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ(ppm)3.67(s,3H),3.65(s,3H),3.59(s,3H),3.56(d,J=6.8Hz,1H),2.45-2.58(m,2H),2.23-2.29(m,1H),0.93(d,J=6.8Hz,3H)。
【0049】
b)(R)-2-メチルプロパン-1,1,3-トリカルボン酸トリメチル
25℃でリン酸水素二ナトリウム(4.5g)を脱イオン水1.5Lに溶解し、2Nの塩酸でpH7.05に調整し、2-メチルプロパン-1,1,3-トリカルボン酸トリメチル(150.46g)及びリパーゼ(カンジダ・ルゴサ、6日間にかけて40gを加えた)を入れ、2Nの水酸化ナトリウムでpH7.0-7.6に調整し、35℃で6日間反応させ、キラリティー測定ee%>98%、キラリティー測定条件は、Chiralpak IC、4.6×250mm、5μm、n-ヘキサン:エタノール=9:1(体積比)である。反応液を10℃に冷却し、3Mの塩酸でpH3-4に調整し、酢酸エチル500mLを加え、吸引濾過し、フィルターケーキを酢酸エチル(600mL)で洗浄して分液し、飽和重曹水(100mL)で洗浄して分液し、有機相を濃縮して、淡黄色の液体26.89gを得た。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)3.74(s,6H),3.68(s,3H),3.46(d,J=7.2Hz,1H),2.71-2.79(m,1H),2.54(dd,J=15.6、4.8Hz,1H),2.32(dd,J=16.0、8.4Hz,1H),1.06(d,J=6.8Hz,3H)。
【0050】
c)(R)-3-(4,6-ジヒドロキシピリミジン-5-イル)酪酸メチル
窒素雰囲気で、20℃で酢酸ホルムアミジン(11.33g)をメタノール(200mL)に溶解し、0℃に冷却し、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(30wt%,55.62g)を滴下し、0℃で60min反応させて、(R)-2-メチルプロパン-1,1,3-トリカルボン酸トリメチル(24.07g)のメタノール(60mL)溶液を滴下し、20℃に自然昇温して、10時間反応させた。完全に反応させた後、反応液を0℃に冷却し、3Nの塩酸を加えてpH5-6になるように調整し、減圧蒸留により溶媒を除去し、その後0℃に冷却し、3Nの塩酸を加えてpH3になるように調整し、固体が析出し、吸引濾過で固体を集め、フィルターケーキを氷水(100mL)で洗浄した後、真空乾燥させ、白色の固体18.79gを得て、そのまま次のステップに用いた。
【0051】
d)(R)-3-(4,6-ジクロロピリミジン-5-イル)酪酸メチル
窒素雰囲気で、22℃で(R)-3-(4,6-ジヒドロキシピリミジン-5-イル)酪酸メチル(14.63g)をアセトニトリル(70mL)に分散し、塩化ホスホリル(26.42g)及びジイソプロピルエチルアミン(12.51g)を順に滴下し、反応系は激しく発熱し、そして60℃に昇温し、固体が徐々に完全に溶けていき、反応を18時間続けた。完全に反応させた後、反応液を0℃に冷却し、酢酸エチル100mLを加え、飽和重曹水でpH7-8に調整し、酢酸エチル(50mL×3)で抽出し、有機相を減圧蒸留により除去し、黄色の固体13.89gを得、そのまま次のステップに用いた。
【0052】
e)(R)-4-クロロ-5-メチル-5,8-ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-7(6H)-オン
20℃で(R)-3-(4,6-ジクロロピリミジン-5-イル)酪酸メチル(13.89g)及びアンモニア水(25-28wt%、70mL)を100mLのオートクレーブに入れ、50℃に昇温し、18時間反応させた。完全に反応させた後、反応液を0℃に冷却し、吸引濾過して、フィルターケーキを(石油エーテル:酢酸エチル=10:1(体積比))30mLでパルプ化し、淡黄色の固体7.32gを得た。LC-MS(ESI)m/z:198(M+H)。1H NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm)1.30(d,J=7.2Hz,3H),2.65-2.69(m,1H),2.86-2.92(m,1H),3.47-3.54(m,1H),8.64(s,1H),10.10(s,1H)。
【0053】
調製例2:(R)-4-((1S,6R)-5-((S)-2-(4-クロロフェニル)-3-(イソプロピルアミノ)プロピオニル)-2,5-ジアザビシクロ[4.1.0]ヘプタン-2-イル)-5-メチル-5,8-ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-7(6H)-オン(式1で示される化合物)の調製
【化4】
反応条件:a)2,5-ジアザビシクロ[4.1.0]ヘプタン-2-カルボン酸tert-ブチル、N-メチルピロリドン、4-ジメチルアミノピリジン、b)塩化水素/1,4-ジオキサン(4.0M)、ジクロロメタン、c)(S)-3-(tert-ブトキシカルボニル)(イソプロピル)アミノ)-2-(4-クロロフェニル)プロピオン酸、2-(7-ベンゾトリアゾールオキシド)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、4-ジメチルアミノピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、d)トリフルオロ酢酸、ジクロロメタン。
【0054】
a)5-((R)-5-メチル-7-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-2,5-ジアザビシクロ[4.1.0]ヘプタン-2-カルボン酸tert-ブチル
窒素雰囲気で、22℃で(R)-4-クロロ-5-メチル-5,8-ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-7(6H)-オン(0.21g)、2,5-ジアザビシクロ[4.1.0]ヘプタン-2-カルボン酸tert-ブチル(0.31g)及び4-ジメチルアミノピリジン(0.39g)をN-メチルピロリドン(5mL)に溶解し、そして、140℃に加熱し、3時間反応させた。完全に反応させた後、反応液を20℃に冷却して氷水20mLに注ぎ、酢酸エチル(20mL×2)で抽出し、飽和食塩水(10mL×3)で洗浄し、溶媒を減圧蒸留により除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=3:1~1:1)により分離し、淡黄色の液体0.28gを得た。LC-MS(ESI)m/z:360(M+H)。
【0055】
b)(5R)-4-(2,5-ジアザビシクロ[4.1.0]ヘプタン-2-イル)-5-メチル-5,8-ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-7(6H)-オン塩酸塩
20℃で5-((R)-5-メチル-7-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-2,5-ジアザビシクロ[4.1.0]ヘプタン-2-カルボン酸tert-ブチル(0.28g)をジクロロメタン(5mL)に溶解し、塩化水素/1,4-ジオキサン(4.0mL)を加えて1時間反応させた。完全に反応した後、反応液から減圧蒸発で溶媒を除去して、0.23gの黄色い固体を得、そのまま次のステップに使用した。
【0056】
c)(2S)-2-(4-クロロフェニル)-3-(5-((R)-5-メチル-7-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-2,5-ジアザビシクロ[4.1.0]ヘプタン-2-イル)-3-オキソプロピル)(イソプロピル)カルバミン酸tert-ブチル
窒素雰囲気で、20℃で(5R)-4-(2,5-ジアザビシクロ[4.1.0]ヘプタン-2-イル)-5-メチル-5,8-ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-7(6H)-オンの塩酸塩(0.20g)及び(S)-3-((tert-ブトキシカルボニル)(イソプロピル)アミノ)-2-(4-クロロフェニル)-プロピオン酸(0.22g)をN,N-ジメチルホルムアミド(5mL)に溶解し、2-(7-ベンゾトリアゾールオキシド)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(0.59g)及び4-ジメチルアミノピリジン(0.48g)を加え、25℃で4時間反応させた。完全に反応させた後、反応液に水20mlを加え、酢酸エチル(10mL×3)で抽出し、有機相を飽和食塩水(10mL×2)で洗浄し、有機相を減圧蒸留により除去し、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=50:1)で分離し、黄色の固体0.18gを得た。LC-MS(ESI)m/z:583(M+H)。
【0057】
d)(R)-4-((1S,6R)-5-((S)-2-(4-クロロフェニル)-3-(イソプロピルアミノ)プロピオニル)-2,5-ジアザビシクロ[4.1.0]ヘプタン-2-イル)-5-メチル-5,8-ジヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-7(6H)-オン
20℃で(2S)-2-(4-クロロフェニル)-3-(5-((R)-5-メチル-7-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロピリド[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-2,5-ジアザビシクロ[4.1.0]ヘプタン-2-イル)-3-オキソプロピル)(イソプロピル)カルバミン酸tert-ブチル(0.18g)をジクロロメタン(2mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(0.86mL)を加え、3時間反応させた。完全に反応させた後、反応液にジクロロメタン(10mL)を加え、0℃で2Mの水酸化ナトリウム溶液を滴下し、pH12になるように調整し、分液して、有機相を飽和食塩水(5mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、有機相を減圧蒸留により除去し、黄色の固体0.10gを得た。高速分取液体クロマトグラフィーで光学分割し、異性体1(3mg)及び異性体2(12mg)を得た。高速分取液体クロマトグラフィーの条件:カラム:Aglient 5μm prep-C1850×21.2mm、移動相A:水(0.1%のアンモニア水を含む(25-28wt%))、移動相B:メタノール。勾配:時間0-10min、B相60-70%(体積比)。
【0058】
異性体1:RT1=5.3min、LC-MS(ESI)m/z:483(M+H)。
【0059】
異性体2:RT=5.9min、LC-MS(ESI)m/z:483(M+H)。1H NMR(400MHz,CDCl3)δ(ppm)8.27(d,J=7.6Hz,1H),7.92(s,1H),7.27-7.30(m,4H),4.23-4.29(m,1H),3.90-3.95(m,1H),3.81-3.85(m,1H),3.69-3.72(m,1H),3.44-3.59(m,1H),3.20-3.38(m,3H),3.01-3.05(m,1H),2.70-2.85(m,3H),2.47-2.57(m,1H),2.21-2.25(m,1H),1.25-1.28(m,3H),1.03-1.11(m,6H),0.82-0.90(m,2H)。
【0060】
単結晶回折により実施例1の化合物の構造を測定し、異性体2が本発明の式1で示される化合物であると確認される。
単結晶の調製:異性体2 30.0mg、イソプロパノール2.0mLを5mLのスクリュートップガラス瓶に入れ、5min撹拌し、固体が完全に溶解した。シュウ酸二水和物3.9mgを秤量し、前記ガラス瓶に入れ、ガラス瓶において徐々に白い固体が析出し、室温で3時間撹拌し、ガラス瓶に大量の白い固体が析出した。ガラス瓶にメタノール1.0mLを加え、白い固体が徐々に消え、溶液が透明になり、続いて1時間撹拌した。溶液は、0.22μmの微多孔フィルター膜を通過し、3mLのスクリュートップガラス瓶に濾過し、ガラス瓶の口をラップフィルムで覆った。針で瓶の口に8つの穴を開けて、室温で7日間放置し、異性体2化合物のシュウ酸塩の単結晶を得た。
【0061】
単結晶回折試験:
単結晶X線回折装置:BRUKER D8 VENTURE PHOTON II
波長:GaKα(λ=1.34139Å)
試験温度:190K
構造解析用コンピュータプログラム:SHELXL-2018
単結晶データ:分子式:C55H72Cl2N12O9、分子量:1116.14、結晶系:六方晶系、空間群:P 61、格子定数:a=25.8406(15)Å、b=25.8406(15)Å、c=45.916(3)Å、α=90°、β=90°、γ=120°、単位格子の体積:V=26552(4)Å3、単位格子に含まれる分子式の数:Z=12、計算密度:Dcalc=0.838g/cm3、R(Fo):0.0730、RW(Fo
2):0.2069、適合度(S):1.034、フラックパラメータ:0.066(9)。
【0062】
構造の説明:単結晶X線回折及び構造分析は、得られた単結晶が異性体2のシュウ酸塩のイソプロパノール溶媒和物であることを示す。結晶体の非対称構造単位に四つの異性体2分子、二つのシュウ酸分子及び二つのイソプロパノール分子が含まれ、異性体2及びシュウ酸は、シュウ酸塩を形成した。異性体2の単分子の模式図を
図1に示し、シュウ酸塩単結晶の非対称構造単位を
図2に示す。構造式を以下に示す:
【化5】
【0063】
試験例1:AKTキナーゼに対する阻害活性の測定
1.材料及び試薬
Envisionマイクロプレートリーダー(Molecular Devices)、白色384ウェルプレート(カタログ番号#264706、Thermo)、HTRF kinEASE TKキットの含む主な試薬(カタログ番号#62TKOPEC、Cisbio)、TK-ビオチン基質、ストレプトアビジン-XL665、ユウロピウム標識チロシンキナーゼ基質抗体、5×酵素反応バッファー、SEB、HTRFアッセイバッファー、AKT1(カタログ番号#01-101、Carna)、AKT2(カタログ番号#01-102、Carna)、AKT3(カタログ番号#PV3185、Invitrogen)、ATP10mM(カタログ番号#PV3227、Invitrogen)、DTT 1M(カタログ番号#D5545、Sigma)、MgCl2 1M(カタログ番号#M8266、Sigma)、本発明の実施例1の異性体1及び異性体2、陽性対照物質:GDC-0068。
【0064】
【0065】
1×キナーゼ反応バッファー:
1mLのキナーゼAKT1、2、3の1×キナーゼ反応バッファーには、200μLの5×キナーゼ反応バッファー、5μLの1M MgCl2、1μLの1M DTT及び794μLの超純水が含まれている。
【0066】
5×TK-ビオチン基質及びATP作業溶液:
TK-ビオチン基質及びATPの具体的な濃度は、表1を参照する。
1×キナーゼ反応バッファーで基質及びATPを反応濃度の5倍に希釈した。
【0067】
5×キナーゼ作業溶液:
酵素のスクリーニング時に適用する濃度は、表1を参照する。1×キナーゼ反応バッファーで5×酵素作業溶液を調製した。
【0068】
4×ストレプトアビジン-XL665作業溶液:
ストレプトアビジン-XL665の反応中の濃度は、表1を参照する。検出バッファーで4×ストレプトアビジン-XL665作業溶液を調製した。
【0069】
4×ユウロピウム標識チロシンキナーゼ基質抗体作業溶液:
検出反応バッファーでユウロピウム標識チロシンキナーゼ基質抗体を100倍希釈したものを作業溶液とした。
【0070】
2.2 試験プロセス
前記方法で全ての試薬を調製した後、酵素を除いて室温に平衡化させてから、サンプル注入を開始した。
【0071】
a)まず、DMSOで化合物ストック溶液(10mMのDMSO溶液)を100μMの化合物溶液に希釈し、次に1×キナーゼ反応バッファーで2.5μMの化合物作業溶液(DMSOを2.5%含む)に希釈した。1×キナーゼ反応バッファーで2.5%のDMSO溶液を調製し、次に2.5%のDMSO溶液で2.5μMの化合物作業溶液を希釈し、4倍の比率で7回段階希釈して、合計で8つの濃度(2500nM、625nM、156nM、39nM、9.8nM、2.4nM、0.6nM、0.15nM)の化合物作業溶液を得た。対照ウェルを除いて、全ての反応ウェルに4μLの希釈した化合物作業溶液を加え、対照ウェルには4μLの予めて調製した2.5%DMSO/キナーゼバッファーを加えた。
【0072】
b)全ての反応ウェルには、予めて調製したTK-ビオチン基質溶液2μLを加えた(酵素スクリーニング時の基質濃度は、表1を参照する)。
【0073】
c)陰性ウェルを除く他の反応ウェルに、予めて調製した酵素溶液2μLを加え(酵素濃度は、表1を参照する)、陰性ウェルは、酵素2μLで1×キナーゼ反応バッファーに対応して体積を補足した。シーリングフィルムでプレートをカバーし、均一に混合した後、室温で10分間インキュベートして、化合物を酵素と十分に作用して結合させた。
【0074】
d)全ての反応ウェルにATP溶液2μLを加えてキナーゼ反応を開始した(酵素スクリーニング時のATP濃度及び反応時間は、表1を参照する)。
【0075】
e)キナーゼ反応終了前5分間で検出溶液の調製を開始した。キット中の検出バッファーでストレプトアビジン-XL665及びユウロピウム標識チロシンキナーゼ基質抗体(1:100)の検出溶液を調製した(酵素スクリーニング時の検出試薬濃度は、表1を参照する)。
【0076】
f)キナーゼ反応が終了した後、全ての反応ウェルに5μLの希釈したストレプトアビジン-XL665を加え、均一に混合した後、直ちに、希釈したユウロピウム標識チロシンキナーゼ基質抗体検出溶液を加えた。
【0077】
g)プレートをカバーし、均一に混合し、室温で1時間反応した後、Envision(Perkinelmer)装置で蛍光シグナル(励起波長:320nm、発光波長:665nm、615nm)を検出した。フルアクティブウェル及びバックグラウンドシグナルウェルから各ウェルの阻害率を計算し、重複したウェルの平均値を算出し、同時に、製図解析ソフトウェアPRISM 6.0で各被験化合物の半数阻害濃度(IC
50)をフィッティングした。
【表2】
【0078】
2.3 データ分析
ER=665nmの蛍光値/615nmの蛍光値
阻害率=(ER陽性対照-ERサンプル)/(ER陽性対照-ER陰性対照)×100%
【0079】
【0080】
実施例2:本発明に係る式1で示される化合物の塩の調製
約25mgの式1で示される化合物及び1.05当量の酸(塩酸の場合、2.10当量を併設する)をそれぞれ用意し、1mLの溶媒を加え、室温で2日間撹拌した。清澄化した溶液について、5℃で撹拌してゆっくりと揮発させる方法で結晶化を試み、固体を遠心分離し、40℃で、2~5時間送風乾燥又は減圧乾燥した後、XRPD及び
1H NMRで構造解析を行った。塩形成結果を下記の表に示し、塩形成方式は、XRPDで確認され、式1で示される化合物の遊離塩基と酸基とのモル比(即ち、塩中の式1で示される化合物の陽イオンと酸基とのモル比)は、
1H NMRで確認された。
【表4-1】
【表4-2】
【0081】
図3~
図7は、それぞれ硫酸塩、リン酸塩、ヒドロキシエタンスルホン酸塩、α-ナフタレンスルホン酸塩、L-リンゴ酸塩のXRPDパターンを提供する。
【0082】
実施例3:式1で示される化合物の一塩酸塩の調製
20mLのガラス製バイアルに式1で示される化合物(2g)、トルエン(10mL)を加え、室温で振盪し、溶解して清澄化した。当該液体を100mLの二重ジャケットガラス反応器に加え、反応器に4mol/Lの塩化水素-酢酸エチル溶液(0.99mL)を加え、撹拌して15分間反応させた。反応器にn-ヘプタン(40mL)を加え、室温で撹拌して2時間熟成させた。熟成が完了したら、吸引濾過し、湿ったフィルターケーキを真空下40℃で19時間乾燥して、白い固体粉末状の式1で示される化合物の一塩酸塩1.97gを得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6):10.51(s,1H),9.06(s,1H),8.54(s,1H),8.21(s,1H),7.13-7.52(m,4H),4.51-4.94(m,1H),3.88-4.19(m,1H),3.50-3.81(m,3H),2.97-3.40(m,4H),2.73-2.83(m,1H),2.23-2.31(m,1H),1.07-1.30(m,8H),0.83-0.98(m,4H),0.05(q,J=5.2Hz,1H)。
【0083】
式1で示される化合物の一塩酸塩のXRPDパターンは、
図8を示す。
【0084】
実施例4:式1で示される化合物の二塩酸塩の調製
100mLの二重ジャケットガラス反応器に式1で示される化合物(2g)及びトルエン(10mL)を加え、室温で撹拌し、溶解して清澄化した。反応器に4mol/Lの塩化水素-酢酸エチル溶液(2.18mL)を加え、撹拌して15分間反応させた。反応器にn-ヘプタン(40mL)を加え、室温で撹拌して4時間熟成させた。熟成が完了した後、吸引濾過し、湿ったフィルターケーキを真空下40℃で6時間乾燥して、白い固体粉末状の式1で示される化合物の二塩酸塩2.25gを得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6):10.77(s,1H),9.47(s,1H),8.80(s,1H),8.34(s,1H),7.12-7.51(m,4H),6.68(s,1H),4.64-5.11(m,1H),3.92-4.24(m,1H),3.50-3.82(m,3H),3.22-3.37(m,3H),2.78-3.05(m,2H),2.26-2.34(m,1H),1.09-1.31(m,8H),0.83-0.96(m,4H),0.15(q,J=5.2Hz,1H)。
【0085】
式1で示される化合物の二塩酸塩のXRPDパターンを
図9に示す。
【0086】
実施例5:式1で示される化合物のフマル酸塩の調製
3mLのガラス製バイアルに式1で示される化合物(25mg)及びイソプロパノール(1mL)を加え、室温で磁気撹拌して、溶解して清澄化した。3mLのガラス製バイアルに固体フマル酸(6.31mg)を加え、室温で磁気撹拌して反応させた。18時間撹拌した後、3mLのガラス製バイアルにn-ヘプタン(2mL)を加え、引き続き18時間撹拌した。吸引濾過し、湿ったフィルターケーキを真空下40℃で3時間乾燥して、白い固体粉末状の式1で示される化合物のフマル酸塩を得た。
1H NMR(400MHz,DMSO-d6):10.49(s,1H),8.20(s,1H),7.34-7.48(m,4H),6.52(s,2H),4.37-4.76(m,1H),3.88-4.18(m,1H),3.70-3.81(m,2H),3.34-3.54(m,2H),3.03-3.21(m,4H),2.90(dd,J=11.6,4.8Hz,1H),2.76(dd,J=16.4,6.0Hz,1H),2.22-2.30(m,1H),1.04-1.32(m,8H),0.85-0.93(m,4H),0.08(q,J=5.2Hz,1H)。
【0087】
式1で示される化合物のフマル酸塩のXRPDパターンを
図10に示す。
【0088】
本発明において、試験例1に証明されているように、本発明の式1で示される化合物は、AKTキナーゼへの活性阻害効果を有するため、本発明に係る式1で示される化合物の薬学的に許容可能な塩、例えば、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、ヒドロキシエタンスルホン酸塩、α-ナフタレンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、1,2-エタンジスルホン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、L-(+)-酒石酸塩、馬尿酸塩、L-アスコルビン酸塩、L-リンゴ酸塩、安息香酸塩、ゲンチジン酸塩及び一塩酸塩、二塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩も同様にAKTキナーゼへの活性阻害効果を有し、また、本発明に係る式1で示される化合物の薬学的に許容可能な塩、及びそれを含む医薬組成物は、AKTプロテインキナーゼに媒介された疾患又は病状を予防及び/又は治療するために利用することができ、さらに、AKTプロテインキナーゼに媒介された疾患又は病状を予防及び/又は治療するための薬物を調製するために利用することができる。より一層、本発明に係る式1で示される化合物の薬学的に許容可能な塩は、式1で示される化合物に比べて、より高い安定性を有し、式1で示される化合物の物理的及び化学的特性が向上して、生産及び使用には役立っている。
【0089】
上述したのは本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明の趣旨と原則において修正、同等な置換、改良などを行うものであれば、いずれも本発明の保護範囲に含まれるものとする。