(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】ISOMIR検出の為の高度なダンベルPCR
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20240607BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20240607BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C12Q1/6851 Z ZNA
(21)【出願番号】P 2023521141
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 EP2022072077
(87)【国際公開番号】W WO2023016938
(87)【国際公開日】2023-02-16
【審査請求日】2023-08-01
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523123307
【氏名又は名称】ハミングバード ダイアグノスティクス ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Hummingbird Diagnostics GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホロス,ラスティスラブ
(72)【発明者】
【氏名】スタインクラウス,ブルーノ
【審査官】大西 隆史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0251830(US,A1)
【文献】国際公開第2021/148717(WO,A1)
【文献】米国特許第05399676(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0255824(US,A1)
【文献】HONDA, Shozo and KIRINO, Yohei,Nucleic Acids Research,2015年07月13日,Vol. 43, Issue 12,p. e47,DOI: 10.1093/nar/gkv218
【文献】DESINGU, P. A.,Nucleic Acids Research,Vol. 43, Issue 12,2015年07月30日,DOI: 10.1093/nar/gkv218
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00- 3/00
A61P 1/00-43/00
A61K 35/00-51/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5’から3’の以下の順序で構成される5’アダプターであって、
(i)6乃至15個のデオキシヌクレオチドを含む5’末端ヌクレオチド配列であって、該6乃至15個のデオキシヌクレオチドが標的RNAの5’-末端配列に逆相補的であり、並びに
(ii)ループ及び二本鎖ステムを含むステム-ループ構造を形成できるヌクレオチド配列であって、その3’末端の少なくとも2個のヌクレオチドがリボヌクレオチド又は修飾リボヌクレオチドであり、
該ステムループ構造を形成することができるヌクレオチド配列が、5’位の第1ステム配列及び3’位の第2ステム配列を含み、及び
該5’位の第1ステム配列及び/又は該3’位の第2ステム配列が2乃至5個のロックドヌクレオチドを含む、
5’アダプター。
【請求項2】
前記ステムループ構造を形成することができるヌクレオチド配列が、互いに逆相補的である
前記5’位の第1ステム配列及び
前記3’位の第2ステム配列を含む、請求項1に記載の5’アダプター。
【請求項3】
前記5’位の第1ステム配列及び前記3’位の第2ステム配列の夫々が、5乃至10個のヌクレオチドの長さを有する、請求項2に記載の5’アダプター。
【請求項4】
前記5’位の第1のステム配列及び前記3’位の第2のステム配列が、同じ長さを有する、請求項3に記載の5’アダプター。
【請求項5】
前記標的RNAが、<200リボヌクレオチドの長さを有するRNAである、請求項1に記載の5’アダプター。
【請求項6】
前記標的RNAが、10乃至100個のリボヌクレオチド長さを有するRNAである、請求項5に記載の5’アダプター。
【請求項7】
5’から3’の以下の順序で構成される3’アダプターであって、
(i)ループ及び二本鎖ステムを含むステム-ループ構造を形成することができるヌクレオチド配列であって、該5’-末端ヌクレオチドがリン酸化され、
該ループ及び二本鎖ステムを含むステム-ループ構造を形成することができるヌクレオチド配列が5’位の第1ステム配列及び3’位の第2ステム配列を含み、及び
該5’位の第1ステム配列及び/又は該3’位の第2ステム配列が2乃至5個のロックドヌクレオチドを含み、
並びに
(ii)6乃至15個のデオキシヌクレオチドを含む3’末端ヌクレオチド配列であって、前記6乃至15個のデオキシヌクレオチドは標的RNAの3’末端配列に逆相補的であり、かつ、該3’末端デオキシヌクレオチドは反転デオキシヌクレオチドである、
3’アダプター。
【請求項8】
前記ステムループ構造を形成することができるヌクレオチド配列が、互いに逆相補的である
前記5’位の第1ステム配列及び
前記3’位の第2ステム配列を含む、請求項
7に記載の3’アダプター。
【請求項9】
前記5’位の第1ステム配列及び前記3’位の第2ステム配列のそれぞれが、5乃至10個のヌクレオチドの長さを有する、請求項
8に記載の3’アダプター。
【請求項10】
前記5’位の第1のステム配列及び前記3’位の第2のステム配列が同じ長さを有する、請求項
9に記載の3’アダプター。
【請求項11】
前記反転デオキシヌクレオチドが、反転dT、dA、dC、又はdGである、請求項
7に記載の3’アダプター。
【請求項12】
前記標的RNAは、<200リボヌクレオチドの長さを有するRNAである、請求項
7に記載の3’アダプター。
【請求項13】
前記標的RNAが、10乃至100個のヌクレオチド長さを有するRNAである、請求項12に記載の3’アダプター。
【請求項14】
請求項1に記載の5’アダプター、及び請求項
7に記載の3’アダプターを含む
アダプターの組み合わせ。
【請求項15】
サンプル中の標的RNAに2つのアダプターをライゲーションする方法であって、以下の工程:
(i)サンプル中の変性標的RNA、
再生された請求項1に記載の5’アダプター、及び
再生された請求項
7に記載の3’アダプターを含む組成物を提供する工程であって、前記5’アダプター及び前記3’アダプターが標的RNAにアニーリングされている、工程、及び
(ii)二本鎖RNAリガーゼを使用して、又はそれとともに、該5’アダプター及び該3’アダプターを該標的RNAにライゲーションし、それによってライゲーション産物を生成する工程
を含む方法。
【請求項16】
(i)前記変性標的RNAが、標的RNAを65℃乃至75℃で1乃至3分間加熱することによって生成されるか、
(ii)再生
された5’アダプターが、75℃乃至85℃で1乃至3分間、5’アダプターを変性し、そして4℃まで冷却することにより、5’アダプターを再生することによ
って生成されるか、又は
(iii)再生
された3’アダプターが、75℃乃至85℃で1乃至3分間、3’アダプターを変性し、そして4℃まで冷却することにより、3’アダプターを再生することによって生成される、
請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物が、前記変性標的RNA、
再生された請求項1に記載の5’アダプター、及び
再生された請求項
7に記載の3’アダプターを互いに混合し、これにより、5’アダプター及び3’アダプターを標的RNAにアニーリングすることによって生成される、請求項
15に記載の方法。
【請求項18】
サンプル中の標的RNAを決定及び/又は定量化する方法であって、
(i)請求項
15に記載の方法を実施する工程、
(ii)ライゲーション産物を逆転写し、それによって標的RNAからcDNA産物を得る工程、及び
(iii)cDNAを増幅し、それによって標的RNAを決定及び/又は定量化する工程、
を含む方法。
【請求項19】
前記ライゲーション産物の逆転写が、
(iia)逆転写用プライマー(RT-プライマー)をライゲーション産物とアニーリングする工程、及び
(iib)逆転写酵素(RT)を用いてライゲーション産物を逆転写する工程、
によって実施される、請求項
18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、ステップ(ii)と(iii)との間に、cDNA前増幅の工程をさらに含む、請求項
18に記載の方法。
【請求項21】
前記増幅が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて実施される、請求項
18に記載の方法。
【請求項22】
患者の疾患又は症状の診断をするための情報を提供する方法であって、
(ia)請求項
18に記載の方法を実施し、それによって前記標的RNAの存在を決定する工程、
(iia)該標的RNAの存在に基づいて、該患者が疾患又は症状を患っているかどうかを診断するための情報を提供する工程、又は
(ib)請求項
18に記載の方法を実施し、それによって標的RNAを定量化する工程、
(iib)定量化された標的RNAを参照と比較する工程、及び
(iiib)比較に基づいて、該患者が疾患又は症状を患っているかどうかを診断するための情報を提供する工程、
を含む方法。
【請求項23】
前記疾患が、神経変性疾患、自己免疫疾患、感染症、及び癌からなる群より選択される、請求項
22に記載の方法。
【請求項24】
(i)前記神経変性疾患が、アルツハイマー病(AD)及び他の認知症、パーキンソン病(PD)及びPD関連疾患、プリオン病、運動ニューロン疾患(MND)、ハンチントン病(HD)、脊髄小脳失調症(SCA)、脊髄性筋萎縮症症(SMA)、エイズ認知症複合体、及びアテローム性動脈硬化症、からなる群から選択され、
(ii)前記自己免疫疾患が、糖尿病、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、全身性エリテマトーデス(lupus)、バセドウ病、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、血管炎、悪性貧血及びセリアック病からなる群から選択され、
(iii)前記感染症が、ウイルス感染、細菌感染、及び寄生虫感染からなる群から選択され、又は
(iv)前記癌が、皮膚癌、上咽頭癌、神経内分泌癌、肺癌、大腸癌、尿路上皮癌、膀胱癌、肝臓癌、卵巣癌、胃癌、食道癌、膵臓癌、腎臓癌、胃癌、食道癌、乳癌、腎癌、頭頸部癌、脳腫瘍、リンパ癌、血液癌、扁平上皮癌、喉頭癌、網膜癌、前立腺癌、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、骨癌、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択される、
請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1に記載の5’アダプター、及び請求項
7に記載の3’アダプター、又は請求項
14に記載のアダプターの組み合わせ、を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二本鎖RNAリガーゼによるライゲーションのための配列特異的構造化アダプターを使用し、その後のcDNA産生及び定量化を用いる、サンプル中の小さな非コードRNAの検出方法に関する。本発明はさらに、この方法を実施するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
ゲノムの非タンパク質コード領域は広く転写されて、通常の生物学的プロセス及び疾患状態で重要な役割を果たすmiRNAなどの小さな非コードRNAを生成する。したがって、miRNAなどのこれらの小さな非コードRNAの多様性と発現は、診断目的に使用できる。
【0003】
次世代シーケンシング(NGS)メソッドは、miRNAなどの小さな非コードRNAの広大な範囲を検出でき、それゆえ発見目的で主に使用される。しかし、NGSの使用は、実行ごと及びラボ間の変動性の増加と関連しており、その莫大なコストのために、ほとんどの診断ラボでは対応できない。それにもかかわらず、NGSは、病気の予測に使用できるmiRNAなどの小さな非コードRNAのプロファイルを作成するための強力なツールである。
【0004】
上記の観点から、miRNAなどの小さな非コードRNAの検出及び定量化のための直交法を開発し、費用対効果の高い方法で幅広いラボで使用できるNGSデータを検証する必要がある。
【0005】
現在、miRNAの検出及び定量化のための2つの主な方法が使用されている。第一の方法は、miRNAの3’末端にハイブリダイズするステムループ様プローブを使用し、続いてプローブにハイブリダイズする、miRNA特異的なフォワードプライマー及びリバースプライマーを使用した逆転写(RT)反応及び定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)検出(例えば、従来のmiRNA TaqManアッセイ)を使用する。第2の方法では、ポリ-Aテーリング反応が最初に適用され、miRNAの3’末端にアデニンのストレッチが作成され、続いてオリゴd(T)プライマーを使用したRTが行われる。その後、miRNA固有のフォワードプライマーが、qPCR反応(例えば、miRCury LNA アッセイなど)のための一般的なリバースプライマーと共に使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の方法に共通する問題は、miRNA特異的なフォワードプライマーが、miRNAの5’末端での配列の変化(例えば、付加、欠失、変異)及びmiRNAの3’末端の配列の変化(例えば、付加)を識別できないことである。その結果、最終的に処理されたRNA配列データは、根本的な生物学的状況を正確に反映していない。したがって、NGSによって発見されたisomiR固有の情報は、現在利用可能なqPCR法では忠実に検証できない。3’末端及び5’末端の両方で、miRNAバリアントが多様であるため、ハイブリダイゼーションに基づく方法は、定義上、関心のある正確なisomiRを捕捉して定量化する可能性が低い。
【0007】
したがって、さらに、高速で、信頼性でき、及び正確な方法で、miRNAだけでなくisomiRの検出及び定量化を可能にする方法を開発する必要がある。加えて、この方法は、miRNAの検出及び定量化だけでなく、高い特異性及び感度を備えたisomi
Rの検出及び定量化を可能にし、したがって、疾患の診断及び/又は予後を改善するであろう。さらに、任意の病院/臨床又は研究センターで使用するための上記の目的に適したキットを開発する必要性がさらに存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ハイブリダイズした二本鎖RNA分子の切れ目(ニック)を特異的に結合する、二本鎖RNAリガーゼ、特にRNAリガーゼ2(Rnl2)の能力を利用する、ダンベルPCR(DB PCR)に基づく方法を開発した。isomiRの5’末端と3’末端の両方に正しくハイブリダイズしたアダプターのみが、cDNA合成のためのテンプレートとして使用できるライゲーションされたRNAの形成を可能にする。この方法は、標的RNA(例えば、miRNA)及び特定の末端配列を持つ標的RNAバリアント(例えば、isomiR)の発現を特異的かつ効率的に決定及び定量化することができる。特異性の第2層は、TaqManプローブによって導入され、cDNA配列のユーザー定義領域に整列できる。本発明者らによって開発されたダンベルPCR(DB PCR)に基づく方法は、任意の病院/臨床又は研究センターで使用でき、単純、迅速、信頼性、正確性、及び費用対効果の高い方法で臨床サンプルの分析を可能にする。この方法のおかげで、診断検査の特異性及び感度をさらに改善することができる。上記目的に適したキットも提供する。
【0009】
発明の概要
第1の態様において、本発明は、5’から3’の以下の順序で含む5’アダプターであって、
(i)6乃至15個のデオキシヌクレオチドを含む5’末端ヌクレオチド配列であって、前記6乃至15個のデオキシヌクレオチドは標的RNAの5’末端配列に逆相補的であり、及び
(ii)ループ及び二本鎖ステムを含むステムループ構造を形成できるヌクレオチド配列であって、その3’末端の少なくとも2個のヌクレオチドがリボヌクレオチド又は修飾リボヌクレオチドであり、かつ、ヌクレオチド配列がロックドヌクレオチド(LNA)強化である、
5’アダプターに関する。
【0010】
第2の態様において、本発明は、5’から3’の以下の順序で含む3’アダプターであって、
(i)ループ及び二本鎖ステムを含むステムループ構造を形成することができるヌクレオチド配列であって、5’末端ヌクレオチドがリン酸化されており、かつ、ヌクレオチド配列がロックドヌクレオチド(LNA)強化であり、及び
(ii)6乃至15個のデオキシヌクレオチドを含む3’末端ヌクレオチド配列であって、前記6乃至15個のデオキシヌクレオチドは標的RNAの3’末端配列に逆相補的であり、かつ、3’末端デオキシヌクレオチドは反転デオキシヌクレオチドである、
3’アダプターに関する。
【0011】
第3の態様において、本発明は、第1の態様による5’アダプター、及び第2の態様による3’アダプターを含む組み合わせに関する。
【0012】
第4の態様において、本発明は、以下の工程:
(i)サンプル中の変性標的RNA、第1の態様による再生5’アダプター、及び第2の態様による再生3’アダプターを含む組成物を提供する工程であって、5’アダプター及び3’アダプターは標的RNAにアニーリングされている、工程、及び
(ii)二本鎖RNAリガーゼを使用して、又はそれとともに、標的RNAに5’アダプター及び3’アダプターをライゲーションし、それによってライゲーション産物を生成す
る工程
を含むサンプル中の標的RNAに2つのアダプターをライゲーションする方法に関する。
【0013】
第5の態様において、本発明は、以下の工程:
(i)第4の態様による方法を実行する工程、
(ii)ライゲーション産物を逆転写し、それによって標的RNAからcDNA産物を得る工程、及び
(iii)cDNAを増幅し、それによって標的RNAを決定及び/又は定量化する工程、
を含む、サンプル中の標的RNAを決定及び/又は定量化する方法に関する。
【0014】
第6の態様において、本発明は、以下の工程:
(ia)第3及び/又は第4の態様による方法を実施し、それによって標的RNAの存在を決定する工程、
(iia)標的RNAの存在に基づいて、患者が疾患又は症状を患っているかどうかを診断する工程、又は
(ib)第3及び/又は第4の態様による方法を実施し、それによって標的RNAを定量化する工程、
(iib)定量化された標的RNAを参照と比較する工程、及び
(iiib)比較に基づいて、患者が疾患又は症状を患っているかどうかを診断する工程、
を含む、患者の疾患又は症状を診断する方法に関する。
【0015】
第7の態様において、本発明は、第1の態様による5’アダプター、及び第2の態様による3’アダプター、又は第3の態様による組み合わせを含むキットに関する。
【0016】
この発明の概要は、必ずしも本発明のすべての特徴を記載しているとは限らない。他の実施形態は、以下の詳細な説明を検討することにより明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
定義
以下に本発明を詳細に説明する前に、本発明は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコル及び試薬に限定されないことを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図していないことも理解されたい。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0018】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、「A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)」,Leuenberger,H.G.W,Nagel,B.and Kolbl,H.eds.(1995),Helvetica Chimica Acta,(CH-4010 スイス国、バーゼル)に記載されているように定義される。
【0019】
いくつかの文書が、本明細書の本文全体で引用されている。本明細書で引用されている各文書(すべての特許、特許出願、科学出版物、製造業者の仕様書、説明書、GenBankアクセッション番号配列の提出などを含む)は、上記又は下記にかかわらず、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明
によりそのような開示に先行する権利を有していないことを認めるものと解釈されるべきではない。そのような組み込まれた参考文献の定義又は教示と、本明細書で引用される定義又は教示との間に矛盾がある場合、本明細書の本文が優先される。
【0020】
本発明による用語「含む(conprise)」、又は「含む(conprises)」若しくは「含む(conprising)」などの変形は、述べられた整数又は整数群を含むことを意味するが、他の整数又は整数群を排除するものではない。本発明による用語「から本質的になる」は、記載された整数又は整数群を含むことを意味するが、記載された整数に実質的に影響を与える又は変更する修飾又は他の整数を除外する。本発明による用語「からなる(consisting of)」又は「からなる(consists
of)」などの変形は、述べられた整数又は整数群を含み、他の整数又は整数群を除外することを意味する。
【0021】
本発明を説明する文脈において(特に特許請求の範囲において)使用される用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の参照は、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈と明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。
【0022】
本明細書で使用される用語「ヌクレオチド」は、ヌクレオシド及びリン酸エステルからなる有機分子を指す。特に、ヌクレオチドは3つのサブユニット分子:核酸塩基、5炭素糖(リボース又はデオキシリボース)、及び1乃至3個のリン酸からなるリン酸基、で構成されている。DNAの4つの核酸塩基は、グアニン、アデニン、シトシン、及びチミンであり;RNAでは、ウラシルがチミンの代わりに使用される。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド酸(DNA)やリボヌクレオチド酸(RNA)などの核酸ポリマーの単量体単位として機能する。したがって、ヌクレオチドは、DNA及びRNAの分子ビルディングブロックである。
【0023】
本明細書で使用される用語「ヌクレオシド」は、リン酸基を有さないヌクレオチドと考えることができるグリコシルアミンを指す。ヌクレオシドは、核酸塩基(窒素含有塩基とも呼ばれる)及び5-炭素糖(リボース又は2’-デオキシリボース)から単純に構成されるが、ヌクレオチドは、核酸塩基、5炭素糖、及び1つ以上のリン酸基で構成される。ヌクレオシドでは、アノマー炭素はグリコシド結合を介してプリンのN9又はピリミジンのN1に結合される。
【0024】
用語「ヌクレオチド配列」又は「ポリヌクレオチド」は、本明細書では交換可能に使用され、限定されないが、ヌクレオチド間ホスホジエステル結合によって結合された2’-デオキシリボヌクレオチド(DNA)及びリボヌクレオチド(RNA)、又はヌクレオチド間類似体、及びH+、NH4
+、トリアルキルアンモニウム、Mg2+、Na+などの関連する対イオンを含む、ヌクレオチドモノマーの一本鎖及び二本鎖ポリマーを指す。ヌクレオチド配列又はポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチドだけ、リボヌクレオチドだけ、又はそれらのキメラ混合物から構成されて得、ヌクレオチド類似体を含み得る。ヌクレオチドモノマー単位は、ヌクレオチド及び/又はヌクレオチド類似体を含むがこれらに限定されない、本明細書に記載の任意のヌクレオチドを含み得る。
【0025】
本明細書で使用される用語「類似体」は、修飾された塩基部分、修飾された糖部分、及び/又は修飾されたリン酸エステル部分を有する合成類似体を含む。リン酸類似体は一般に、リン原子が+5の酸化状態にあり、酸素原子の1つ又は複数が例えばイオウなどの非酸素部分で置換されているリン酸の類似体を含む。例示的なホスフェート類似体は、例えば、H+、NH4
+、Na+などの関連する対イオンを含む、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチ
オエート、ホスホラニリデート、ホスホルアミデート、ボロノホスフェートを含む。例示的な塩基類似体は、2,6-ジアミノプリン、ヒポキサンチン、プソイドウリジン、C-5-プロピン、イソシトシン、イソグアニン、2-チオピリミジンを含む。例示的な糖類似体は、2’-又は3’-位が水素、ヒドロキシ基、例えば、メトキシ基、エトキシ基、アリルオキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基及びフェノキシ基などのアルコキシ基、アジド基、アミノ基又はアルキルアミノ基、フルオロ基、クロロ基、及びブロモ基である2’位又は3’位の修飾を含む。
【0026】
一実施形態において、修飾リボヌクレオチドは、本明細書に記載のアダプター内/の一部に存在する。好ましい一実施形態では、修飾リボヌクレオチドは2’-o-メチルリボヌクレオチドである。
【0027】
本明細書で使用する用語「標的RNA」は、検出しようとするリボヌクレオチド配列を指す。標的RNAは、任意の供給源から得ることができ、任意の数の異なる組成成分を含むことができる。例えば、標的RNAは、生物、組織、細胞、又は血液などの体液から単離される。例えば、標的RNAは、非コードRNA及び/又はコードRNAを包含する。特に、標的RNAは、マイクロRNA(miRNA)又はmiRNAアイソフォーム(isomiR)、トランスファーRNA(tRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、又は他の成熟低分子RNAであり、バリアント(変異体)、類似体、及び模倣体を含む。
【0028】
さらに、用語「標的RNA」は、標的分子自体、並びにその代用物、例えば、増幅産物(例えば、それに由来するcDNA)及び天然配列を指し得ることが理解される。特定の実施形態では、標的RNAは、miRNA又はmiRNAアイソフォーム(isomiR)分子である。特定の実施形態では、標的RNAはポリ-Aテイルを欠いている。特定の実施形態では、標的RNAは、成熟低分子RNA分子、特に非コード低分子RNA分子(すなわち、<200リボヌクレオチドの長さ、例えば、10乃至<200リボヌクレオチドの長さを有している)である。本明細書に記載の標的RNAは、ヒト及び動物を含むがこれらに限定されない、任意の数の供給源に由来し得る。これらの供給源には、限定されないが、全血、組織生検、リンパ、骨髄、羊水、毛髪、皮膚、精液、生物兵器剤、肛門分泌物、膣分泌物、汗、唾液、又は口腔スワブが含まれる。しかしながら、様々な環境サンプル(例えば、農業用の水及び土壌)、研究サンプル一般、精製サンプル一般、培養細胞及び溶解細胞もサンプルとして使用することができる。標的RNAは、例えば、Applied Biosystems ABI Prism(登録商標)6100 Nucleic Acid PrepStation(ライフテクノロジーズ社、カリフォルニア州フォスターシティ)及びABI Prism (登録商標)6700 Automated Nucleic Acid Workstation(ライフテクノロジーズ社、カリフォルニア州フォスターシティ)、Ambion(登録商標)mirVana(商標)RNA単離キット(ライフテクノロジーズ社、テキサス州オースティン)などの当技術分野で知られている様々な手順のいずれかを使用してサンプルから単離され得ることが理解される。
【0029】
一実施形態では、標的RNAは、5’リン酸基部分及び3’ヒドロキシル部分を有する任意の一本鎖(非コード又はコード)RNAである。好ましい一実施形態では、標的RNAは、<200リボヌクレオチド、例えば10乃至<200リボヌクレオチドの長さを有するRNAである。さらに言及される一実施形態では、標的RNAは、10乃至100リボヌクレオチドの長さを有するRNAである。さらにより好ましい一実施形態では、標的RNAは、10乃至50リボヌクレオチドの長さを有するRNAである。前記RNAは、特に非コードRNA、具体的にはmiRNA又はmiRNAアイソフォーム(isomiR)である。
【0030】
本明細書で使用される用語「miRNA」(呼称「マイクロRNA」も可能である)は、一本鎖RNA分子を指す。miRNAは、任意の標識及び/又は伸長配列(例えば、ビオチンストレッチ)を含まない、長さが10乃至50ヌクレオチド長、例えば、長さが10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50ヌクレオチド長の分子であり得る。
【0031】
miRNAは遺伝子発現を調節し、そのDNAから転写される遺伝子によりコードされるが、miRNAはタンパク質に翻訳されない(つまり、miRNAは非コードRNAである)。miRNAをコードする遺伝子は、処理された成熟miRNA分子よりも長い。miRNAは最初、一次miRNA転写産物(pri-miRNA)と呼ばれるより長い前駆体分子(>1000ヌクレオチド長)として転写される。Pri-miRNAは、(マイクロプロセッサ複合体の一部として)ドローシャ(Drosha)酵素によって処理されるヘアピン構造を持っている。ドローシャプロセッシングの後、pri-miRNAは、わずか60乃至100ヌクレオチド長であり、前駆体miRNA(pre-miRNA)と呼ばれる。この時点で、pre-miRNAは細胞質に輸送され、そこでダイサー(Dicer)酵素に遭遇する。ダイサーは、miRNAを2つに切断し、二本鎖のmiRNAストランドを生成する。伝統的に、これらのmiRNAアームの1つだけが、遺伝子調節において重要であると考えられていた:アームは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)にロードされる設計にあり、細胞内でより高い濃度で発生する。これはしばしば「ガイド」鎖と呼ばれ、miRと表される。もう一方のアームは「マイナーmiRNA」又は「パッセンジャーmiRNA」と呼ばれ、しばしばmiR*と表される。パッセンジャーmiRNAは完全に分解されたと考えられていたが、ディープシーケンス研究は、一部のマイナーmiRNAが残存し、実際に遺伝子調節において機能的な役割を果たしていることを発見した。これらの開発により、命名規則が変更された。miR/miR*命名方式の代わりに、miR-5p/miR-3p命名法が採用された。新しいシステムでは、miRNAの5’アームは常にmiR-5pと表され、3’アームはmiR-3pと表される。現在の命名法は次のとおりである:接頭辞「miR」の後にダッシュと数字が続き、後者は多くの場合、命名順を示す。例えば、hsa-miR-16は名前が付けられており、hsa-miR-342より前におそらく発見されている。大文字の「miR-」はmiRNAの成熟型(例えば、hsa-miR-16-5p及びhsa-miR-16-3p)を指し、大文字のない「mir-」はpre-miRNA及びpri-miRNA(例えば、hsa-mir-16)を指し、並びに「MIR」はそれらをコードする遺伝子を指す。ただし、これは最近の変更であるため、文献ではしばしば元のmiR/miR*名が参照される。処理後、二本鎖のmiRNA鎖はアルゴノート(AGO)タンパク質にロードされ、RISCの前駆体を形成する。この複合体は、二重の巻き戻しを引き起こし、パッセンジャーRNA鎖は破棄され、成熟した一本鎖miRNAを運ぶ成熟RISCを残す。miRNAは、標的遺伝子の発現を抑制するため、RISCの一部のままである。これはmiRNA生合成の標準的な経路であるが、他にもいろいろ発見されている。これらには、ドローシャに依存しない経路(ミュートロン(mirtron)経路、snoRNA由来の経路、及びshRNA由来の経路など)、及びダイサーに依存しない経路(切断のためにAGOに依存するもの、及びtRNaseZに依存する他のものなど)が含まる。
【0032】
本明細書で使用される用語「miRBase」は、有効なmiRNAの十分に確立されたレポジトリを指す。miRBase(www.mirbase.org)は、公開されたmiRNA配列及び注釈の検索可能なデータベースである。miRBaseシークエンスデータベースの各項目は、miRNA転写産物(データベースでは、mirと呼ばれる)の予測されたヘアピン部分を、成熟miRNA配列(miRと呼ばれる)の位置及び配
列の情報と共に表す。ヘアピン配列及び成熟配列の両方が検索及び閲覧可能であり、項目は、名前、キーワード、参考文献及び注釈によって検索できる。すべての配列及び注釈データもダウンロードできる。2018年10月に、miRbaseバージョン22.1がリリースされた。これが現在のバージョンである。
【0033】
本明細書で使用される用語「isomiR」(又は「miRNAアイソフォーム」)は、配列がわずかに異なるmiRNAを指し、ここではmiRNAの生合成中の切断部位の変化、又はオリゴウリジル化などの生合成が終了した後の成熟miRNAに影響を与えるプロセスによって生じる。
特に、ドローシャ及びダイサーの不正確な切断又はmiRNAのターンオーバーが、長さ及び/又は配列が不均一なmiRNAが生じさせる可能性がある。IsomiR(miRNAアイソフォーム)は3つの主なカテゴリに分類できる:3’isomiR(3’位での1つ又は複数のヌクレオチドのトリミング又は付加)、5’isomiR(5’位での1つ又は複数のヌクレオチドのトリミング又は付加)、及び多型isomiR(配列内のいくつかのヌクレオチドが、野生型成熟miRNA配列とは異なる)。miRNAバリアント又は個々のisomiRの発現の増加が、対応する野生型成熟miRNAの機能の喪失又は弱体化につながるか、又は異なるトランスクリプトームの調節をもたらすと想定できる。最近の研究は、isomiRがおそらく様々な癌、組織、及び細胞型で重要な役割を果たしていることを示唆している。したがって、miRNA及びisomiRの検出は、根本的な生物学的状況を正確に反映するために、及び正しい診断及び治療の決定を下すために絶対に必要である。
【0034】
本明細書で使用されるように、用語「アダプター」は、標的RNAの5’末端(すなわち「5’アダプター」)又は標的RNAの3’末端(すなわち「3’アダプター」)にライゲーションすることができるポリヌクレオチドを指す。5’アダプター及び3’アダプターのヌクレオチドは、標準又は天然(すなわち、アデノシン、グアノシン、シチジン、チミジン、及びウリジン)、及び非標準ヌクレオチドであり得る。非標準ヌクレオチドの非限定的な例は、イノシン、キサントシン、イソグアノシン、イソシチジン、ジアミノピリミジン及びデオキシウリジンを含む。アダプターは、修飾又は誘導体化されたヌクレオチドを含み得る。リボース又は塩基部分における修飾の非限定的な例は、アセチル基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシメチル基、ヒドロキシル基、メチル基、ホスホリル基及びチオール基の付加又は除去を含む。特に、2’-O-メチル及びロックド核酸(LNA)ヌクレオチドを含む。誘導体化ヌクレオチドの適切な例は、蛍光染料又は消光染料などの染料が共有結合したもの、又はビオチン、ジゴキシゲニン、又は磁性粒子又はミクロスフェアなどの他の分子を伴うものを含む。アダプターはまた、モルホリノ又はペプチド核酸(PNA)などの合成ヌクレオチド類似体を含み得る。ホスホジエステル結合又はホスホチオエート結合は、リンカーのヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を結合し得る。
【0035】
5’及び3’アダプターの長さは、たとえば、ライゲーション産物の目的の長さ及びアダプターの目的の特性によって異なる。一般に、5’アダプター又は3’アダプターは、15乃至60ヌクレオチド長の範囲、例えば15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60ヌクレオチド長である。
【0036】
本明細書に記載の5’アダプターは、6乃至15個、例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15個の(ランダム)デオキシヌクレオチドを含む5’末端ヌクレオチド配列を含み、ここで前記6乃至15個の(ランダム)デオキシヌクレオチドは
、標的RNAの5’末端配列に逆相補的である。さらに、本明細書に記載の3’アダプターは、6乃至15個、例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個の(ランダム)デオキシヌクレオチドを含む3’末端ヌクレオチド配列を含み、ここで前記6乃至15個の(ランダム)デオキシヌクレオチドは、標的RNAの3’末端配列に逆相補的である。
【0037】
5’アダプター及び3’アダプターは、例えば変性後/変性時に、線状ポリヌクレオチドとして存在できる。この形態では、5’アダプターと3’アダプターは一本鎖である。この一次構造は二次構造に変換され得る。特に、5’アダプター及び3’アダプターは、さらにステムループ構造を形成できる。したがって、5’アダプター及び3’アダプターも、例えば再生後/再生時に、ステムループ構造を有することもできる。
【0038】
一般に、用語「ステムループ構造」は、一本鎖RNAで生じることができるパターンを指す。構造は「ヘアピン」又は「ヘアピンループ」としても知られている。これは、同じ鎖の2つの領域(通常、逆方向に読んだ場合にヌクレオチド配列が相補的である)が、塩基対を形成し、対になっていないループで終わる二重らせんを形成する場合に生じる。
【0039】
特に、ステムループ構造を形成できる5’アダプター及び3’アダプターは、互いに逆相補的な5’位の第1ステム配列及び3’位の第2ステム配列を含む。第1ステム配列及び第2ステム配列は、ステムループアダプターの「二本鎖領域」又は「二本鎖ステム」を形成する。
【0040】
一実施形態では、ステムは5乃至20個、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個のヌクレオチド長である。好ましい一実施形態では、ステムは5乃至10個、例えば5、6、7、8、9、又は10個のヌクレオチド長である。
【0041】
プライマーの一部がステムにコードされて得ることに留意すべきである。一般的に、プライマーの一部がステムにコードされる実施形態では、ステムはより長くなり得る。プライマーの一部がステムにコードされていない実施形態では、ステムは短くなり得る。
【0042】
本明細書で使用される用語「ループ」は、ステムループ構造の一本鎖領域を指す。特に、ループは5’位の第1ステム配列と3’位の第2ステム配列の間に位置している。言い換えれば、ループはステムの2つの逆相補鎖の間に位置し、典型的にはループは一本鎖ヌクレオチドを含むが、修飾DNA又はRNA分子などの他の部分も可能である.一実施形態では、ループ配列は、10乃至40個のヌクレオチド、例えば10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40個のヌクレオチドを含む。好ましい一実施形態では、ループ配列は、12乃至20個のヌクレオチド、例えば12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個のヌクレオチドを含む。ループ構造のヌクレオチドは、好ましくはデオキシヌクレオチドであるが、リボヌクレオチドも可能である。
【0043】
プライマーの一部がループ内にコードされ得ることに留意すべきである。一般的に、プライマーがループ内にコードされる実施形態では、ループはより長くなり得る。プライマーがループ内にコードされていない実施形態では、ループはより短くなり得る。
【0044】
さらに、本明細書に記載の5’アダプターは、ステムループ構造の形成後に一本鎖5’突出を形成するように構成された5’末端配列を含むことに留意すべきである。さらに、本明細書に記載の3’アダプターは、ステムループ構造の形成後に一本鎖3’突出を形成
するように構成された3’末端配列を含むことに留意すべきである。
【0045】
アダプター、例えば5’アダプター及び/又は3’アダプターは、1つ又は複数のブロッキングヌクレオチドを含み得る。本明細書で使用される用語「ブロッキングヌクレオチド」は、DNAポリメラーゼによるヌクレオチド付加を防止又は最小化する化学部分を含むヌクレオチドを指す。例えば、ブロッキング基を末端の3’-OHに追加することにより、ヌクレオチドはDNAポリメラーゼによって触媒されるホスホジエステル結合の形成に参加できなくなる。いくつかの非限定的な例は、アルキル基、非ヌクレオチドリンカー、ホスホロチオエート、アルカン-ジオール残基、PNA、LNA、3’-OH基の代わりに3’-アミノ基を含むヌクレオチド類似体、5’リン酸基の代わりに5’-OH基を含むヌクレオチド類似体、3’-OH基を欠くヌクレオチド誘導体、又はビオチンを含む。これらのヌクレオチドは、一般に鎖伸長可能ではない。使用できる非伸長可能なヌクレオチドの他の例は、修飾されたリボース部分を有するヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、リボヌクレオチドで終結するオリゴヌクレオチドは特定のDNAポリメラーゼによって伸長できないため、リボヌクレオチドは非伸長ヌクレオチドとして機能し得る。リボースは、3’-ヒドロキシが水素以外の官能基、例えばアジド基によって置換されたものを含む3’-デオキシ誘導体を含むように修飾することができる。特定の実施形態では、非伸長性ヌクレオチドは、ジデオキシヌクレオチド(ddN)、例えば、限定されないが、ジデオキシアデノシン(ddA)、ジデオキシシトシン(ddC)、ジデオキシグアノシン(ddG)、ジデオキシチミジン(ddT)、又はジデオキシウリジン(ddU)を含む。
【0046】
特に、アダプター、例えば5’アダプター及び/又は3’アダプターは、ロックド核酸(LNA)を含み得る。本明細書で使用される用語「ロックド核酸(LNA)」は、リボースの2’-O及び4’-C原子がメチレン架橋を介して結合された修飾ヌクレオチド、具体的にはリボヌクレオチドを指す。この追加の架橋は、環に通常関連する柔軟性を制限し、本質的に構造を堅固な構造にロックする。これらの核酸類似体はまた、一部の分野では「近づきにくいリボヌクレオチド」として呼ばれる。LNAヌクレオチドは、ポリヌクレオチド中のDNA又はRNA残基と混合することができ、事実上、ワトソン・クリック塩基対規則に従ってDNA又はRNAとハイブリダイズする。これらの分子の柔軟性のない性質は、ハイブリダイゼーションの安定性を大幅に向上させる。さらに、LNAを含むポリヌクレオチドは非常に大きな識別力を提供し、これらの分子が正確な一致及び不一致の相補的標的配列をほとんど困難なく区別できる。一実施形態では、5’アダプター及び/又は3’アダプターは、ロックドヌクレオチド、特にリボヌクレオチドを含む。好ましい一実施形態では、5’アダプターの5’位の第1ステム配列及び/又は3’位の第2ステム配列は、LNA強化である。別の好ましい一実施形態では、3’アダプターの5’位の第1ステム配列及び/又は3’位の第2ステム配列は、LNA強化である。
【0047】
3’アダプターは、3’反転デオキシヌクレオチドを含み得る。本明細書で使用される用語「反転デオキシヌクレオチド」は、3’-3’結合を作成するデオキシヌクレオチドを指し、したがって、例えば、逆転写酵素(RT)PCR中、アダプターの3’末端からの望ましくないヌクレオチド合成を防ぐ。さらに、3’反転デオキシヌクレオチドは、3’エキソヌクレアーゼ切断から配列を保護する。一実施形態では、3’アダプターは、3’反転デオキシヌクレオチドを含む。1つの好ましい実施形態では、3’アダプターは、3’反転デオキシヌクレオチドを含み、ここでデオキシヌクレオチドは、反転dT、dA、dC、又はdGである。
【0048】
5’アダプターは、ループ内に、具体的にはループの5’末端に、塩基欠失スペーサーをさらに含み得る。本明細書で使用される用語「塩基欠失スペーサー」は、その後の工程で逆転写の終結を可能にする部分を指す。特に、反応は、5’アダプターのループ領域内
の塩基欠失スペーサーの前のヌクレオチドで終了し、ここで、反応が5’アダプターの最後まで続くのを防ぎ、したがって、その後のPCR工程を損ない得る、高度に構造化されたcDNAが生成される。特に、塩基欠失スペーサーは、2’-ジデオキシリボーススペーサーである。より具体的には、塩基欠失スペーサーは、1’2’-ジデオキシリボーススペーサーである。一実施形態では、5’アダプターは、ループ内に、好ましくはループの5’末端に塩基欠失スペーサーを含む。好ましい一実施形態では、5’アダプターは、ループ内に、好ましくはループの5’末端に2’-ジデオキシリボーススペーサーを含む。
【0049】
1つのより好ましい実施形態では、5’アダプターの5’位の第1ステム配列及び/又は3’位の第2ステム配列がLNA強化である5’アダプター、と、3’アダプターの5’位の第1ステム配列及び/又は3’位の第2ステム配列がLNA強化である3’アダプターとは、組み合わせられている/組み合わせの一部である。さらにより好ましい一実施形態では、5’アダプターの5’位の第1ステム配列及び/又は3’位の第2ステム配列がLNA強化である5’アダプターと、3’アダプターの5’位の第1ステム配列及び/又は3’位の第2ステム配列がLNA強化である3’アダプターであって、且つ、3’反転デオキシヌクレオチド、例えば反転dT、dA、dC、又はdGを含む3’アダプターとは、組み合わせられている/組み合わせの一部である。
【0050】
更なる本明細書の開示は、サンプル中の標的RNAにアダプターをライゲーションする方法である。この方法は、アダプター、特に5’及び3’アダプターが標的RNAにアニーリングされている必要がある。アダプター、特に5’及び3’アダプターが標的RNAにアニーリングされる前に、標的RNAが変性される。さらに、アダプター、特に5’及び3’アダプターは変性され、その後再生される。
【0051】
本明細書で使用される用語「アニーリング」は、相補的な配列を有する2つの一本鎖ポリヌクレオチドを加熱及び冷却するプロセスを指す。熱がすべての水素結合を切断し、冷却が新しい結合をシーケンス間に形成させる。この過程で、アダプター、特に5’及び3’アダプターが、標的RNAに結合し、特徴的なステムループ構造を形成する。特に、5’アダプターは標的RNAの 5’末端に結合し、3’アダプターは標的RNAの3’末端に結合する。
【0052】
この点で、本発明の方法では、アダプター、特に5’及び3’アダプターの変性/再生は、標的RNAの非存在下で別々に行われることに留意すべきである。
【0053】
次に、アダプター、特に5’及び3’アダプターは、二本鎖RNAリガーゼを使用して、又はそれとともに標的RNAにライゲーションされ、それによってライゲーション産物が生成される。本明細書で使用される「ライゲーション産物」という用語は、少なくとも1つのアダプター及び標的RNAを含む(DNA/RNA)ハイブリッド分子を指す。例えば、ライゲーション産物は、5’アダプター及びmiRNA又はisomiRなどの標的RNAを含み得る。ライゲーション産物は、3’アダプター、及びmiRNA又はisomiRなどの標的RNAを含み得る。さらに、生成されるライゲーションは、5’アダプター、3’アダプター、及びmiRNA又はisomiRなどの標的RNAを含み得る。
【0054】
特に、標的RNAとの5’アダプターのアニーリングは、アダプターの3’末端と標的RNAの5’末端との間に、RNA-OH-3’/5’-P-RNAのニックを含む二本鎖(DNA/RNA)ハイブリッドを生成する。これは、二本鎖RNAリガーゼによるライゲーションのための効率的な基質である。さらに、標的RNAとの3’アダプターのアニーリングは、標的RNAの3’末端とアダプターの5’末端との間にRNA-OH-3
’/5’-P-RNAのニックを含む二本鎖(DNA/RNA)ハイブリッドを生成する。これも二本鎖RNAリガーゼによるライゲーションの為の効率的な基質である。
【0055】
一般に、二本鎖RNAニック/RNA構造をライゲーションできる任意の二本鎖RNAリガーゼは、この目的に使用し得る。好ましい一実施形態では、二本鎖RNAリガーゼは、T4 RNAリガーゼ2(Rnl2)又はKod1リガーゼである。1つのより好ましい実施形態では、二本鎖RNAリガーゼは、T4 RNAリガーゼ2(Rnl2)である。
【0056】
ライゲーション反応の条件は、典型的には、リガーゼがその最適活性レベル近くで機能するように調整される。緩衝剤が、所望のレベルでpHを調整及び維持するために、使用され得る。適切な緩衝液の代標的な例は、MOPS、HEPES、TAPS、ビシン、トリシン、TES、PIPES、MES、酢酸ナトリウム及びトリス緩衝液を含むが、これらに限定されない。
【0057】
本明細書で使用される用語「伸長反応」は、標的RNAの3’末端にライゲーションされた3’アダプターが、特に5’から3’方向に伸長されて、標的RNAに逆相補的な鎖を含む「伸長反応産物」を形成するための伸長反応を指す。本明細書において、伸長反応は「逆転写」とも呼ばれる。いくつかの実施形態では、標的RNAはmiRNA分子であり、伸長反応は逆転写酵素を含む逆転写反応であり、それによってライゲーション産物のDNA(特にcDNA)コピーが作られる。特定の実施形態では、伸長反応は、逆転写酵素などのポリメラーゼを含む逆転写反応である。
【0058】
本明細書で使用される用語「逆転写酵素」は、逆転写酵素活性を有する任意の酵素を指す。特に、本明細書で使用される用語「逆転写酵素」は、逆転写と呼ばれるプロセスにおいてRNAテンプレートからDNA(cDNA)を生成するために使用される酵素を指す。逆転写酵素は、RNA-依存性DNAポリメラーゼ活性を有している。この活性により、RNA及びDNAのハイブリッド二本鎖は、相補的なペアのDNAビルディングブロック(デオキシリボヌクレオチド)を結合することによって、一本鎖RNAの提示後に最初に構築される。その後、そのRNA部分は、タンパク質の特別な部分のRNase H活性によって大部分は分解される。残りのDNA一本鎖は、逆転写酵素の追加の固有のDNA-依存性DNAポリメラーゼ活性によって触媒され、DNA二本鎖を最終的に完成する。逆転写を開始するために、逆転写酵素は、新しい鎖を合成するための逆転写酵素の開始点として機能するプライマーを必要とする。このプライマーも、RT-プライマー配列と呼ばれる。RT-プライマーは、3’アダプター配列に依存する。RT-プライマーは、前記配列に対して逆相補的である。好ましい一実施形態では、逆転写酵素はマキシマH-RT又はTthポリメラーゼである。より好ましい一実施形態では、逆転写酵素はマキシマH-RTである。
【0059】
さらに、本明細書に記載されるのは、標的RNAが検出されるようにライゲーション産物をアッセイする方法である。特に、さらに本明細書に記載されるのは、標的RNAが検出されるように、標的RNAのcDNA及び3’アダプターを含むライゲーション産物をアッセイするための方法である。アッセイは、サンプル中の標的RNAの量又はコピーが決定され得るように、定量的であり得る。別法として、アッセイは、サンプル中の標的RNAの存在又は非存在を決定し得るようにアッセイは定性的であり得るが、そのレベルは測定され得ない、。したがって、アッセイは、サンプル中の標的RNAの決定と定量化を可能にする。
【0060】
本明細書に記載されるのは、ライゲーション産物をアッセイするための増幅方法である。特に、増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して実施される。PCRは、リ
アルタイムPCR(定量的PCR又はqPCR)、好ましくはTaq-man qPCR、マルチプレックスPCR、ネステッドPCR、ハイフィデリティPR、高速PCR、ホットスタートPCR、及びGCリッチPCRからなる群から選択され得る。標的RNAを含むライゲーション産物を増幅するために、ライゲーション産物は一般にDNAコピーに変換される。
【0061】
本明細書で使用される用語「アンプリコン」及び「増幅産物」という用語は、一般に、増幅反応の産物を指す。アンプリコンは、二本鎖又は一本鎖であり得、二本鎖増幅産物を変性させることによって得られる分離された成分鎖を含み得る。特定の実施形態では、1つの増幅サイクルのアンプリコンは、その後の増幅サイクルでテンプレートとして機能することができる。
【0062】
本明細書で使用される用語「増幅する」は、標的RNA、標的RNA代用物、又はそれらの組み合わせの少なくとも一部が複製される任意の手段を指し、典型的にはテンプレート依存的に、核酸配列を線形又は指数関数的に増幅するための広範囲な技術含むが、これらに限定されるものではない。いくつかの方法のいずれかが、標的ポリヌクレオチドを増幅するために使用することができる。核酸の標的配列のコピーを増加させるための任意のインビトロ手段が利用できる。これらは、線形、対数、又はその他の増幅方法を含む。例示的な方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、等温手順(isothermal procedres)(1つ又は複数のRNAポリメラーゼ、鎖置換、プライマー分子の部分的破壊を使用)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、Q RNAレプリカーゼシステム、RNA転写ベースのシステム(例えば、TAS、3SR)、又はローリングサークル増幅(RCA)を含む。
【0063】
本発明の文脈において、標的RNAのcDNAが増幅される。
【0064】
本明細書で使用される用語「ダンベルPCR(DB-PCR)」は、miRNAなどの特定の個々の低分子RNA、及びisomiRなどの特定の個々の低分子RNAバリアントを区別して定量化するための効率的かつ便利な方法を指す。Db-PCRでは、5’-及び3’アダプターが特異的にハイブリダイズし、二本鎖RNAリガーゼ(例えば、T4
RNAリガーゼ2(Rnl2))によって標的RNAの5’末端及び3’末端にそれぞれライゲーションされる。「ダンベルのような」構造を有する得られたライゲーション産物は、例えばTaqMan RT-PCRによって、その後定量化される。本発明者らは、本明細書に記載のような独自の5’及び3’アダプターの使用、並びに標的RNAに対するRnl2ライゲーション及びTaqMan RT-PCRの高い特異性が、単一ヌクレオチド分解能で標的RNAの5’及び3’末端配列の両方を保証にし、そのため、Db-PCRはターゲットRNAを特異的に検出するが、対応する末端バリアントを検出しないことを見出した。本明細書に記載のDb-PCRは、種々の細胞型における様々な低分子RNAの定量化に広く適用できる。したがって、Db-PCRは、RNA末端の不均一性を分析するための非常に必要な簡単な方法を提供する。
【0065】
2つ以上のポリヌクレオチド中の残基は、残基がポリヌクレオチド構造において類似の位置を占めている場合、互いに「対応する」と言われる。2つ以上のポリヌクレオチド中の類似の位置が、核酸配列又は構造的類似性に基づいてポリヌクレオチド配列を整列させることによって決定できることは、当技術分野で周知である。そのようなアライメントツールは、当業者に周知であり、例えばワールド・ワイド・ウェブ、例えば標準設定を使用するClustalW又はAlign、好ましくはAlign EMBOSS::needle、Matrix:Blosum62、Gap Open10.0、ギャップエクステンド0.5で入手できる。
【0066】
本明細書で使用される用語「疾患」は、個体の身体に影響を与える異常な状態を指す。疾患は、しばしば、特定の症状及び徴候に関連する病状と解釈される。ヒトでは、用語「疾患」は、しばしば、苦しんでいる個人に痛み、機能不全、苦痛、社会的問題、又は死を引き起こす状態、又は個人と接触する人々に同様の問題を引き起こす状態を指すために、より広く使用される。このより広い意味では、傷害、障害、不調、症候群、感染症、逸脱した行動、及び構造と機能の非典型的なバリエーションが含まれることもあるが、他の状況や目的では、これらは区別可能なカテゴリと見なされる場合がある。多くの疾患にかかり生きることは、人生に対する見方や性格を変える可能性があるので、疾患は通常、身体的だけでなく感情的にも個人に影響を与える。疾患は、神経変性疾患、自己免疫疾患、感染症、及び癌からなる群から選択される疾患であり得る。
【0067】
本明細書で使用される用語「治療的処置/療法」は、患者の健康状態を改善し、及び/又は寿命を延ばす(増加させる)任意の処置/療法に関する。前記治療/療法は、患者の疾患を排除し、患者の疾患の発症を停止、阻害、又は遅らせ、患者の症状の頻度又は重症度を減少させ、及び/又は現在病気にかかっている又は以前に病気にかかったことがある患者の疾患の再発を減少させ得る。
【0068】
本明細書で使用される用語「サンプル」は、標的RNA、特にコーディング及び/又は非コーディング、より具体的には小型非コーディング標的RNAを含む任意のサンプルを指す。前記サンプルは、患者/被験者の身体に特異的に由来する。前記サンプルは、生物、組織、細胞、又は血液などの体液から単離された標的RNA、特に小型非コード標的RNAを特異的に含む。したがって、サンプルは、特に生物学的サンプルである。
【0069】
本明細書で使用される用語「生物学的サンプル」は、生物学的起源を有する任意のサンプルを指し、及び/又は生物学的物質を含む。生物学的サンプルは、体液サンプル(例えば、血液サンプル若しくは尿サンプル)、又は組織サンプル(例えば、組織生検サンプル)であり得る。生物学的サンプルは、混合又はプールし得、例えば、サンプルは血液サンプルと尿サンプルの混合物であり得る。
【0070】
本明細書で使用される用語「体液サンプル」は、標的RNAを含む任意の液体サンプルを指す。前記サンプルは、患者/被験者の身体に特異的に由来する。前記体液サンプルは、その成分又は画分を含む、尿サンプル、血液サンプル、喀痰サンプル、母乳サンプル、脳脊髄液(CSF)サンプル、耳垢(cerumen、earwax)サンプル、胃液サンプル、粘液サンプル、リンパサンプル、内リンパ液サンプル、外リンパ液サンプル、腹水サンプル、胸水サンプル、唾液サンプル、皮脂(sebum、skin oil)サンプル、精液サンプル、汗サンプル、涙サンプル、頬スワブ、膣分泌物サンプル、リキッドバイオプシー、又は嘔吐物サンプルであってもよい。用語「体液サンプル」は、体液画分(例えば、血液画分、尿画分又は喀痰画分)も包含する。体液サンプルは、混合又はプールすることができる。したがって、体液サンプルは、血液と尿サンプルの混合物、又は血液と脳脊髄液サンプルの混合物であり得る。
【0071】
本明細書で使用される用語「血液サンプル」は、全血又は血液画分を包含する。好ましくは、血液画分は、血球画分、血漿、及び血清からなる群から選択される。特に、血液画分は、血球画分及び血漿又は血清からなる群から選択される。例えば、血球画分は、赤血球、白血球、及び/又は血小板を包含する。
【0072】
全血サンプルは、採血管によって採取することができる。これは、例えば、PAXgene Blood RNAチューブ、Tempus Blood RNAチューブ、EDTAチューブ、クエン酸ナトリウムチューブ、ヘパリンチューブ、又はACDチューブ(クエン酸デキストロース)に収集される。
【0073】
全血サンプルはまた、血液スポット技術(例えば、Mitra Microsampling Device)によって収集され得る。この手法は、より少ないサンプル量、典型的にはヒトの場合は45乃至60μL以下を必要とする。例えば、全血は、針又はランセットで指を刺して患者から採取することができる。したがって、全血サンプルは、血液滴の形態を有し得る。次いで、前記血液滴は、吸収性プローブ(例えば、全血を吸収できるセルロースなどの親水性ポリマー材料)上に置かれる。サンプリングが完了すると、処理のためにラボに転送又は郵送される前に、血液スポットが空気中で乾燥される。血液は乾燥しているため、危険とは見なされない。そのため、取り扱いや輸送の際に、特別な注意は必要ない。分析サイトに到着したら、目的の成分(例えば、miRNA)は、乾燥した血液スポットから上清に抽出され、次いでさらに分析される。
【0074】
本明細書で使用される用語「レベル」は、標的RNAの量(例えば、グラム数、モル数、又はイオン数で測定される)又は濃度(例えば、絶対又は相対濃度、例えば百万当たりの読み取り数(RPM)又はNGS数)を指す。本明細書で使用される用語「レベル」は、尺度化、正規化、又は尺度化及び正規化された量又は値も含む。特に、標的RNAのレベルは、配列決定、好ましくは次世代配列決定(例えば、ABI SOLID、Illumina Genome Analyzer、Roche 454 GS FL、BGISEQ)、核酸ハイブリダイゼーション(例えば、マイクロアレイ又はビーズ)、核酸増幅(例えば、PCR、RT-PCR、qRT-PCR、又はハイスループットRT-PCR)、ポリメラーゼ伸長、質量分析、フローサイトメトリー(例えば、LUMINEX)、又はそれらの任意の組み合わせによって決定される。具体的には、標的RNAのレベルは、前記標的RNAの発現レベルである。
【0075】
本明細書で使用される用語「患者」は、彼女又は彼が疾患又は症状を患っているかどうかを知ることが望まれる任意の個人を指す。特に、本明細書で使用される用語「患者」は、疾患又は症状を患っていると疑われる個人を指す。患者は、疾患又は症状を患っていると診断されてもよいし、疾患又は症状を患らっていない、すなわち健康であると診断されてもよい。本明細書で使用される用語「患者」は、疾患又は症状を患っている個体も指す。患者は、疾患又は症状について再検査され得、疾患又は症状をまだ患っているか、又は疾患又は症状をもはや患っていない、すなわち健康であると(例えば、治療介入後)診断される場合がある。患者は、ヒト又は動物であり得る。ヒト個体が特に好ましい。
【0076】
本明細書で使用される用語「(対照)対象」という用語は、疾患又は症状を患っていることが知られている、又は疾患又は症状を患っていないことが知られている、すなわち健康な対象を指す。(対照)対象は、ヒト又は動物であり得る。ヒト個体が特に好ましい。
【0077】
本発明の文脈において、用語「部品のキット(要するに:キット)」は、本明細書で特定された構成要素の少なくともいくつかの任意の組み合わせであると理解され、これらは、混合され、空間的に共存させ、機能単位となり、及びさらなる構成要素を含めることができる。
【0078】
本発明の実施形態
ここで、本発明をさらに説明する。以下の節では、本発明の異なる態様がより詳細に定義される。そのように定義された各態様は、反対のことが明確に示されていない限り、任意の他の態様と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された特徴は、反対に明確に示されない限り、好ましい又は有利であると示された他の特徴と組み合わせることができ得る。
【0079】
本発明者らは、二本鎖RNAリガーゼ、特にRNAリガーゼ2(Rnl2)がハイブリ
ダイズした二本鎖RNA分子のニックを特異的に結合する能力を利用する、ダンベルPCR(DB PCR)に基づく方法を開発した。isomiRの5’及び3’末端の両方に正しくハイブリダイズしたアダプターのみが、cDNA合成のテンプレートとして使用できるライゲーションされたRNAの形成を可能にする。この方法は、標的RNA(例えば、miRNA)及び特定の末端配列を有する標的RNAバリアント(例えば、isomiR)の発現を特異的かつ効率的に決定及び定量化することがでる。特異性の第2層は、TaqManプローブによって導入され、cDNA配列のユーザー定義領域にアラインできる。本発明者らによって開発されたダンベルPCR(DB PCR)ベースの方法は、任意の病院/臨床又は研究センターで使用することができ、簡易、迅速、信頼性、正確、且つ費用対効果の高い方法で臨床サンプルの分析を可能にする。この方法により、診断検査の特異性及び感度をさらに改善することができる。上記目的に適したキットも提供される。
【0080】
したがって、第1の態様では、本発明は、5’から3’の以下の順序で構成される5’アダプターであって、
(i)6乃至15個、例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16個のデオキシヌクレオチドを含む5’末端ヌクレオチド配列であって、前記6乃至15個のデオキシヌクレオチドは、標的RNAの5’末端配列に逆相補的であり、及び
(ii)ループ及び二本鎖ステムを含むステムループ構造を形成することができるヌクレオチド配列であって、その3’末端で少なくとも2個、例えば、2、3、又は4個のヌクレオチドは、リボヌクレオチド又は修飾リボヌクレオチドであり、且つ、ヌクレオチド配列は(好ましくは)(LNA)強化である、
5’アダプターに関する。
【0081】
好ましくは、LNA強化配列は、2乃至10個、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個、より好ましくは3個のロックドヌクレオチド、具体的にはリボヌクレオチドを含む。
【0082】
特に、5’アダプターのヌクレオチド配列は、デオキシヌクレオチド及びリボヌクレオチドを含む。
【0083】
5’アダプターは、15乃至60個、例えば15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60個のヌクレオチド長の範囲であり得る。
【0084】
5’アダプターは、例えば変性後/変性時に、線状ポリヌクレオチドとして、特に一本鎖の形で存在し得る。5’アダプターは、標的RNAの5’末端に結合/ライゲーションできるポリヌクレオチドである。標的RNAの5’末端に結合/ライゲーションする場合、5’アダプターはステムループ構造を有する。5’アダプターは、標的RNAの5’末端配列に逆相補的である、6乃至15個、例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16個のデオキシヌクレオチドを含むので、結合/ライゲーションが可能である。標的RNAは、好ましくは、miRbaseバージョン22.1に、又はその一部に含まれるmiRNA又はisomiRである。
【0085】
一実施形態では、ステムループ構造を形成できるヌクレオチド配列は、互いに逆相補的である5’位の第1ステム配列及び3’位の第2ステム配列を含む。したがって、5’位の第1ステム配列及び3’位の2第2ステム配列は、二本鎖ステムを形成することができる。
【0086】
二本鎖ステムは、5乃至20個、例えば5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個のヌクレオチドの長さを有し得る。
【0087】
好ましくは、5’位の第1ステム配列及び3’位の第2ステム配列のそれぞれは、5乃至10個、例えば5、6、7、8、9、又は10個のヌクレオチドの長さを有する。特に、5’位の第1ステム配列及び3’位の第2ステム配列は、同じ長さ、例えば5、6、7、8、9、又は10個のヌクレオチドの長さを有する。
【0088】
より好ましくは、5’位の第1ステム配列及び/又は3’位の第2ステム配列は、LNA強化である。特に、LNA強化配列は、2乃至5個、例えば、2、3、4、又は5個、より具体的には3個のロックドヌクレオチド、特にリボヌクレオチドを含む。ロックドリボヌクレオチドの例は、LNA-グアニン、LNA-アデノシン又はLNA-シトシンである。さらにより好ましくは、5’位の第1ステム配列はLNA強化である。特に、LNA強化配列は、2乃至5個、例えば、2、3、4、又は5個、より具体的には3個のロックドヌクレオチド、特にリボヌクレオチドを含む。ロックドリボヌクレオチドの例は、LNA-グアニン、LNA-アデノシン又はLNA-シトシンである。特に、全て、1個おき、又は2個おきのヌクレオチドが、5’位の第1ステム配列及び/又は3’位の第2ステム配列において、LNA強化され得る。
【0089】
したがって、5’位の第1ステム配列及び/又は3’位の第2ステム配列は、デオキシヌクレオチド及びリボヌクレオチド(例えば、LNA強化)(の混合物)を含み得るか、又は又は5’位の第1ステム配列及び/又は3’位の第2ステム配列はリボヌクレオチドを含み得る。前記リボヌクレオチドは、LNA-強化リボヌクレオチドを含む。
【0090】
さらなる一実施形態では、ステムループ構造を形成できるヌクレオチド配列は、5’位の第1ステム配列及び3’位の第2ステム配列の間に位置するループ配列を含む。ループ配列は、10乃至40個、例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40個のヌクレオチドを含み得る。好ましくは、ループ配列は、12乃至20個、例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個のヌクレオチド、例えばデオキシヌクレオチド及び/又はリボヌクレオチドを含み、より好ましくは、ループ配列は、12乃至20個、例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個のデオキシヌクレオチドを含む。
【0091】
好ましい一実施形態では、ループ及び二本鎖ステムを含むステムループ構造を形成できるヌクレオチド配列は、リボヌクレオチド又は修飾リボヌクレオチド、好ましくは2’-o-メチルリボヌクレオチド、及びロックドリボヌクレオチドである、その3’末端の少なくとも2個のヌクレオチドを除いた、デオキシヌクレオチドを含む。
【0092】
他の一実施形態では、5’末端配列は、ステムループ構造の形成後に一本鎖5’突出を形成するように構成される。
【0093】
好ましい一実施形態では、標的RNAの5’末端配列に逆相補的である6乃至15個、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16個のデオキシヌクレオチドは、G及びCを包含するが、連続して4個以下、例えば1、2、3、又は4個以下で包含する。
【0094】
より好ましい一実施形態では、5’アダプターは、5’から3’の以下の配列:
【化1】
(ここで、「r」はリボヌクレオチドを表し、「(6-15x)N」は標的RNAの5’末端配列に逆相補的な配列を示し、及び、下線部の1つ又は複数のヌクレオチド及び/又は二重下線部の1つ又は複数のヌクレオチドがLNA強化である。)を有するが、又はこの配列のバリアントである。
【0095】
例えば、全て、1個おき、又は3個おきのヌクレオチドは、上記で指定した下線部分及び/又は二重下線部分でのLNA強化であり得る。
【0096】
さらにより好ましい一実施形態では、5’アダプターは、5’から3’の以下の配列:
【化2】
(ここで、「r」はリボヌクレオチドを表し、「(6-15x)N」は標的RNAの5’末端配列に逆相補的な配列を示し、太字のヌクレオチドの1個又は複数(例えば、1個、2個、又は3個)がLNA強化である。)を有するか、又はこの配列のバリアントである。
【0097】
特に、LNA強化ヌクレオチドは、リボヌクレオチドである。上記の5’アダプターバリアントは、配列番号:1に従う配列と、少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、さらにより好ましくは95%、さらにいっそうより好ましくは99%、例えば、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有する配列を有する。このような5’アダプターバリアントは、リボヌクレオチド又は修飾リボヌクレオチドであるその3’末端に少なくとも2個のヌクレオチドを依然として含む。さらに、このような5’アダプターバリアントは、依然としてLNA強化である。さらに、このような5’アダプターバリアントは、依然としてループ及び二本鎖ステムを含むステムループ構造を形成できる。当業者は、5’アダプターバリアントが、ループ及び二本鎖ステムを含むステムループ構造を依然として形成できるかどうかを容易に評価することができる。たとえば、実施例の項は、この点で十分な情報を提供する。
【0098】
特定の一実施形態では、上記の5’アダプターは、ループ領域に塩基欠失スペーサー(例えば、塩基欠失1’,2’-ジデオキシリボーススペーサー)を含む。ループ領域に塩基欠失スペーサーを有する5’アダプターは、好ましくは5’から3’の以下の配列:
【化3】
(ここで、「r」はリボヌクレオチドを表し、「(6-15x)N」は標的RNAの5’末端配列に逆相補的な配列を示し、「idSp」は塩基欠失スペーサーを表し、下線部の1つ又は複数のヌクレオチド及び/又は二重下線部の1つ又は複数のヌクレオチドがLNA強化である。)を有するか、又はこの配列のバリアントである。
【0099】
特に、LNA強化ヌクレオチドは、リボヌクレオチドである。
【0100】
より特定の一実施形態では、ループ領域に塩基欠失スペーサー(例えば、塩基欠失1’,2’-ジデオキシリボーススペーサー)を含む5’アダプターは、5’から3’の以下の配列:
【化4】
(ここで、「r」はリボヌクレオチドを表し、「(6-15x)N」は標的RNAの5’末端配列に逆相補的な配列を示し、「idSp」は塩基欠失スペーサーを表し、太字のヌクレオチドの1個又は複数(例えば、1個、2個、又は3個)はLNA強化である。)を有するか、又はその配列のバリアントである。
【0101】
上記の5’アダプターバリアントは、配列番号:29に従う配列と、少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、さらにより好ましくは95%、さらにいっそうより好ましくは99%、例えば、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有している配列を有する。このような5’アダプターバリアントは、リボヌクレオチド又は修飾リボヌクレオチドであるその3’末端に少なくとも2個のヌクレオチドを依然として含んでいる。さらに、このような5’アダプターバリアントは依然としてLNA強化である。さらに、このような5’アダプターは、依然として塩基欠失スペーサーを含む。さらに、このような5’アダプターバリアントは、依然としてループ及び二本鎖ステムを含むステムループ構造を形成できる。当業者は、5’アダプターバリアントが、ループ及び二本鎖ステムを含むステムループ構造を依然として形成できるかどうかを容易に評価することができる。たとえば、実施例の項は、この点で十分な情報を提供する。
【0102】
別の特定の一実施形態では、上記の5’アダプターは、ループ領域に塩基欠失スペーサー(例えば、塩基欠失1’,2’-ジデオキシリボーススペーサー)を含まない。
【0103】
上記の5’アダプターは、可変突出を交換するだけで、任意のRNA標的(具体的には、任意のRNA標的の5’末端)に結合できる。特に、5’アダプターの5’末端ヌクレオチド配列中の6乃至15個、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16個のデオキシヌクレオチドは、検出されるべき標的RNA(具体的に、標的RNAの5’末端)に逆相補的であるように選択しさえすればよい。5’アダプターは、特に3’アダプターと組み合わせて使用される。
【0104】
上記の5’アダプターは、変性又は再生された形で存在し得る。
【0105】
別の一実施形態では、標的RNAは、5’リン酸部分及び3’ヒドロキシル部分を有する任意の一本鎖RNAである。特に、標的RNAは、<200リボヌクレオチド、例えば10乃至<200のリボヌクレオチドの長さを有するRNAである。より具体的には、標的RNAは、10乃至100個のリボヌクレオチドの長さを有するRNAである。さらにより具体的には、標的RNAは、10乃至50個のリボヌクレオチドの長さを有するRNAである。前記RNAは、具体的にはmiRNA又はmiRNAアイソフォーム(isomiR)である。
【0106】
第2の態様では、本発明は、5’から3’の以下の順序で含む3’アダプターであって、
(i)ループ及び二本鎖ステムを含むステムループ構造を形成できるヌクレオチド配列であって、5’末端ヌクレオチドがリン酸化されており、ヌクレオチド配列が(好ましくは)ロックドヌクレオチド(LNA)強化であり、及び
(ii)6乃至15個、例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16個のデオキシヌクレオチドを含む3’末端ヌクレオチド配列であって、前記6乃至15個のデオキシヌクレオチドは標的RNAの3’末端配列に逆相補的であり、かつ、3’末端デオキシヌクレオチドは反転デオキシヌクレオチドである、
3’アダプターに関する。
【0107】
好ましくは、LNA強化配列は、2乃至10個、例えば、2、3、4、5、6、7、8
、9、又は10個、より好ましくは3個のロックッドヌクレオチド、具体的にはリボヌクレオチドを含む。
【0108】
特に、3’アダプターのヌクレオチド配列は、デオキシヌクレオチド及びリボヌクレオチドを含む。
【0109】
3’アダプターは、約15乃至約60個、例えば15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60個のヌクレオチド長の範囲であり得る。
【0110】
3’アダプターは、変性後/変性時に、線状ポリヌクレオチドとして、特に一本鎖の形として存在し得る。3’アダプターは、標的RNAの3’末端に結合/ライゲーションできるポリヌクレオチドである。標的RNAの3’末端に結合/ライゲーションした場合、3’アダプターはステムループ構造を有する。3’アダプターは標的RNAの3’末端配列に逆相補的である6乃至15個、例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16個のデオキシヌクレオチドを含むので、結合/ライゲーションは可能である。標的RNAは、好ましくは、miRbaseバージョン22.1に含まれるmiRNA又はisomiRである。
【0111】
一実施形態では、ステムループ構造を形成できるヌクレオチド配列は、互いに逆相補的である5’位の第1ステム配列及び3’位の第2ステム配列を含む。したがって、5’位の最初のステム配列及び3’位の第2ステム配列は、二本鎖ステムを形成できる。
【0112】
二本鎖ステムは、5乃至20個、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個のヌクレオチドの長さを有し得る。
【0113】
好ましくは、5’位の第1ステム配列及び3’位の第2ステム配列のそれぞれは、5乃至10個、例えば5、6、7、8、9、又は10個のヌクレオチドの長さを有する。特に、5’位の第一ステム配列及び3’位の第2ステム配列は同じ長さ、例えば5、6、7、8、9、又は10個のヌクレオチドの長さを有する。
【0114】
より好ましくは、5’位の第1ステム配列及び/又は3’位の第2ステム配列は、LNA強化である。特に、LNA強化配列は、2乃至5個、例えば、2、3、4、又は5個、より具体的には3個のロックドヌクレオチド、具体的にリボヌクレオチドを含む。ロックドリボヌクレオチドの例は、LNA-グアニン、LNA-アデノシン又はLNA-シトシンである。さらにより好ましくは、3’位の第2のステム配列は、LNA強化である。特に、LNA強化配列は、2乃至5個、例えば、2、3、4、又は5個、より特別には3個のロックドヌクレオチド、具体的にはリボヌクレオチドを含む。ロックドリボヌクレオチドの例は、LNA-グアニン、LNA-アデノシン又はLNA-シトシンである。具体的に、全て、1個おき、又は3個おきのヌクレオチドが、5’位の第1ステム配列及び/又は3’位の第2ステム配列において、LNA強化であり得る。
【0115】
したがって、5’位の第1ステム配列及び/又は3’位の第2ステム配列は、デオキシヌクレオチド及びリボヌクレオチド(例えば、LNA強化)(の混合物)を含み得、又は5’位の第1ステム配列及び/又は3’位の第2ステム配列は、リボヌクレオチドを含み得る。前記リボヌクレオチドは、LNA-強化リボヌクレオチドを含む。
【0116】
さらなる一実施形態では、ステムループ構造を形成できるヌクレオチド配列は、5’位
の第1ステム配列及び3’位の第2ステム配列との間に位置するループ配列を含む。ループ配列は、10乃至40個、例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40個のヌクレオチドを含み得る。好ましくは、ループ配列は、12乃至20、例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個のヌクレオチド、例えばデオキシヌクレオチド及び/又はリボヌクレオチドを含む。より好ましくは、ループ配列は、12乃至20、例えば、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個のデオキシヌクレオチドを含む。
【0117】
別の一実施形態では、3’末端配列は、ステムループ構造の形成後に一本鎖3’突出を形成するように構成される。
【0118】
好ましい一実施形態では、標的RNAの3’末端配列に逆相補的である
6乃至15個、例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16個のデオキシヌクレオチドは、G及びCを包含するが、連続で4個以下、例えば1、2、3、又は4個以下で包含する。
【0119】
好ましい一実施形態では、反転デオキシヌクレオチドは、反転dT、dA、dC、又はdGである。この点で、3’反転デオキシヌクレオチドが3’-3’結合を作成し、このため例えばRT-PCR中、アダプターの3’末端から望ましくないヌクレオチド合成を防止することに留意するべきである。さらに、3’反転デオキシヌクレオチドは、配列を3’エキソヌクレアーゼ切断から保護する。
【0120】
より好ましい一実施形態では、3’アダプターは、5’から3’の以下の配列:
【化5】
(ここで、「/5Phos/」は、5’末端ヌクレオチドがリン酸化されていることを示し、下線部分の1つ又は複数のヌクレオチド及び/又は二重下線部分の1つ又は複数のヌクレオチドはLNA強化であり、「(6-15x)N」は、標的RNAの3’末端配列に逆相補的な配列を示し、及び「/3InvdT/」は3’反転デオキシヌクレオチドを表す。)を有するか、又はこの配列のバリアントである。
【0121】
例えば、全て、1個おき、又は3個おきのヌクレオチドは、上記で特定された下線部分及び/又は二重下線部分ではLNA強化であり得る。
【0122】
さらにより好ましい一実施形態では、3’アダプターは、5’から3’の以下の配列:
【化6】
(ここで、「/5Phos/」は5’末端のヌクレオチドがリン酸化されていることを示し、太字のヌクレオチドの1個又は複数(例えば、1、2、又は3個)がLNA強化であり、「(6-15x)N」は標的RNAの3’末端配列に逆相補的な配列を示し、「/3InvdT/」は3’反転デオキシヌクレオチドを表す。)を有するか、又はこの配列のバリアントである。
【0123】
具体的に、LNA強化ヌクレオチドは、リボヌクレオチドである。
【0124】
上記の3’アダプターバリアントは、配列番号:2に従う配列と、少なくとも80%、
好ましくは85%、より好ましくは90%、さらにより好ましくは95%、さらにいっそうより好ましくは99%、例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有している配列を有する。このような3’アダプターバリアントは、依然としてLNA強化である。さらに、5’末端ヌクレオチドは、そのような3’アダプターバリアントにおいても依然としてリン酸化されている。さらに、3’末端デオキシヌクレオチドは、そのような3’アダプターバリアントにおいても依然として反転デオキシヌクレオチドである。さらに、そのような3’アダプターバリアントは、依然としてループ及び二本鎖ステムを含むステムループ構造を形成することが可能である。当業者は、3’アダプターバリアントが、依然としてループ及び二本鎖ステムを含むステムループ構造を形成できるかどうかを容易に評価することができる。たとえば、実施例の項は、この点で十分な情報を提供する。
【0125】
上記の3’アダプターは、可変突出を交換するだけで、任意のRNA標的(具体的に、任意のRNA標的の3’末端)に結合できる。特に、3’アダプターの3’末端ヌクレオチド配列中の6乃至15個、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は16個のデオキシヌクレオチドは、それらが検出する標的RNA(具体的に、標的RNAの3’末端)に逆相補的であるように選択さえすればよい。3’アダプターは、特に5’アダプターと組み合わせて使用される。
【0126】
上記の3’アダプターは、変性又は再生された形で存在し得る。
【0127】
別の実施形態では、標的RNAは、5’リン酸部分及び3’ヒドロキシル部分を有する任意の一本鎖RNAである。特に、標的RNAは、<200リボヌクレオチド、例えば10乃至<200リボヌクレオチドの長さを有するRNAである。より特別には、標的RNAは、10乃至100リボヌクレオチドの長さを有するRNAである。さらにより特別には、標的RNAは、10乃至50リボヌクレオチドの長さを有するRNAである。前記RNAは、具体的にはmiRNA又はmiRNAアイソフォーム(isomiR)である。
【0128】
第3の態様において、本発明は、第1の態様による5’アダプター、及び第2の態様による3’アダプターを含む組み合わせに関する。
【0129】
第1の態様による5’アダプター及び第2の態様による3’アダプターは、個々に又は一緒に組み合わせて存在し得る。例えば、第1の態様による5’アダプターは(第1の)組成物に含まれ得、第2の態様による3’アダプターは別の/異なる(第2の)組成物に含まれ得る。あるいは、第1の態様による5’アダプター及び第2の態様による3’アダプターは、単一の組成物に含まれ得る。組成物は、水又は緩衝液などの水溶液であり得る。
【0130】
1つの好ましい実施形態では、6乃至15個のデオキシヌクレオチド、例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個を含む5’末端ヌクレオチド配列、及び6乃至15個のデオキシヌクレオチド、例えば6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15個を含む3’末端ヌクレオチド配列の全長は、標的RNAの長さよりも、少なくとも2個、例えば2、3、4、5、又は6個のヌクレオチド短い。
【0131】
好ましい一実施形態では、5’から3’の以下の配列:
【化7】
(ここで、「r」はリボヌクレオチドを表し、「(6-15x)N」は標的RNAの5’末端配列に逆相補的な配列を示し、下線部の1つ又は複数のヌクレオチド及び/又は二重
下線部の1つ又は複数のヌクレオチドはLNA強化であり)、又はこの配列のバリアントを有する5’アダプター、並びに
5’から3’の以下の配列:
【化8】
(ここで、「/5Phos/」は、5’末端ヌクレオチドがリン酸化されていることを示し、下線部の1つ又は複数のヌクレオチド及び/又は二重下線部の1つ又は複数のヌクレオチドはLNA強化であり、「(6-15x)N」は標的RNAの3’末端配列に逆相補的な配列を示し、「/3InvdT/」は3’反転デオキシヌクレオチドを表す。)、又はこの配列のバリアントを有する3’アダプターは、結合している/又は組み合わせの一部である。
【0132】
具体的に、LNA強化ヌクレオチドは、リボヌクレオチドである。
【0133】
より好ましい一実施形態では、5’から3’の以下の配列:
【化9】
(ここで、「r」はリボヌクレオチドを表し、「(6-15x)N」は標的RNAの5’末端配列に逆相補的な配列を示し、太字のヌクレオチドの1個又は複数(例えば、1、2、又は3個)がLNA強化である。)、又はこの配列のバリアントを有する5’アダプター、並びに5’から3’の以下の配列:
【化10】
(ここで、「/5Phos/」は5’末端ヌクレオチドがリン酸化されていることを示し、太字のヌクレオチドの1個又はそれ以上(例えば、1、2、又は3個)はLNA強化であり、「(6-15x)N」は標的RNAの3’末端配列に逆相補的な配列を示し、「/3InvdT/」は3’反転デオキシヌクレオチドを表す。)、又はこの配列のバリアントを有する3’アダプターは、結合している/組み合わせの一部である。
【0134】
具体的に、LNA強化ヌクレオチドは、リボヌクレオチドである。
【0135】
1つの特定の実施形態では、5’から3’の以下の配列:
【化11】
(ここで、「r」はリボヌクレオチドを表し、「(6-15x)N」は標的RNAの5’末端配列に逆相補的な配列を示し、「idSp」は塩基欠失スペーサーを表し、下線部分の1つ又は複数のヌクレオチド及び/又は二重下線部分の1つ又は複数のヌクレオチドはLNA強化である。)、又はこの配列のバリアントを有する5’アダプター、並びに
5’から3’の以下の配列:
【化12】
(ここで、「/5Phos/」は5’末端ヌクレオチドがリン酸化されていることを示し、下線部分の1つ又は複数のヌクレオチド及び/又は二重下線部分の1つ又は複数のヌクレオチドはLNA強化であり、「(6-15x)N」は標的RNAの3’末端配列に逆相補的な配列を示し、「/3InvdT/」は3’反転デオキシヌクレオチドを表す。)、又はこの配列のバリアントを有する3’アダプターは、結合されている/組み合わせの一
部である。
【0136】
より特定の一実施形態では、
5’から3’の以下の配列:
【化13】
(ここで、「r」はリボヌクレオチドを表し、「(6-15x)N」は標的RNAの5’末端配列に逆相補的な配列を示し、「idSp」は塩基欠失スペーサーを表し、太字のヌクレオチドの1つ又は複数(例えば、1、2、又は3個)はLNA強化である)、又はこの配列のバリアントを有する5’アダプター、並びに
5’から3’の以下の配列:
【化14】
(ここで、「/5Phos/」は5’末端ヌクレオチドがリン酸化されていることを示し、太字のヌクレオチドの1つ又は複数(例えば、1、2、又は3個)はLNA強化であり、「(6-15x)N」は標的RNAの3’末端配列に逆相補的な配列を示し、「/3InvdT/」は3’反転デオキシヌクレオチドを表す)、又はこの配列のバリアントを有する3’アダプターは、結合している/組み合わせの一部である。
【0137】
具体的に、LNA強化ヌクレオチドは、リボヌクレオチドである。
【0138】
第4の態様では、
(i)サンプル中の変性標的RNA、第1の態様による再生5’アダプター、及び第2の態様による再生3’アダプターを含む組成物であって、5’アダプター及び3’アダプターは、標的RNAにア
ニールされている、組成物を提供する工程、及び
(ii)二本鎖RNAリガーゼを用いて/と共に5’アダプター及び3’アダプターを標的RNAにライゲーションし、それによりライゲーション産物を得る工程、
を含む、サンプル中の標的RNAに、二つのアダプターをライゲーションする方法に関する。
【0139】
標的RNAへのアダプター、特に5’及び3’アダプターのアニーリングは、標的RNAが変性した形で存在する必要がある。一実施形態では、変性標的RNAは、65℃乃至75℃、例えば65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、又は75℃、好ましくは70℃で、1乃至3分、例えば1,2,又は3分、好ましくは2分間、標的RNAを加熱することによって生成される。
【0140】
例えば、変性標的RNAは、標的RNAを70℃で2分間加熱することによって生成される。
【0141】
標的RNAは、変性後直ちに氷上に置くことが好ましい。
【0142】
変性工程のために、標的RNAには、好ましくは、水溶液(例えば水)、又は緩衝液が与えられる。
【0143】
アダプター、特に5’及び3’アダプターに関しては、それらが、標的RNAへのアニーリングを可能にするステムループ構造を形成(from)できるように、変性及び再生工程が必要である。アニーリングは、相補的なシーケンスでアダプターを加熱及び冷却す
るプロセスである。熱はすべての水素結合を切断し、及び冷却は新しい結合を配列間に形成することを可能にする。この過程で、アダプター、特に5’及び3’アダプターが変性した標的RNAに結合し、及びそれらの特徴的なステムループ構造を形成する。特に、5’アダプターは標的RNAの5’末端に結合し、及び3’アダプターは標的RNAの3’末端に結合する。アダプター、特に5’及び3’アダプターは、一緒に、即ち一般的な反応容器で変性及び再生されることが好ましい。アダプター、特に5’及び3’アダプターの変性/再生は、別々に及び標的RNAの非存在下で行われることがさらに好ましい。一実施形態では、再生5’アダプターは、75℃乃至85℃、例えば75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、又は85℃、好ましくは82℃で、1乃至3分間、例えば、1、2、又は3分間、好ましくは2分間、5’アダプターを変性し、そして4℃まで、好ましくは0.1℃/sの速度で冷却することで、5’アダプターを再生することで生成される。
【0144】
例えば、再生5’アダプターは、82℃で2分間、5’アダプターを変性し、そして4℃まで、好ましくは0.1℃/sの速度で冷却することにより再生5’アダプターを再生させることで生成される。
【0145】
追加又は代替の一実施形態では、再生された3’アダプターは、75℃乃至85℃、例えば75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、又は85℃で、好ましくは82℃で、1乃至3分間、例えば1、2、又は3分間、好ましくは2分間、3’アダプターを変性し、そして、4℃まで、好ましくは0.1℃/秒の速度で冷却することで、3’アダプターを再生することにより生成される。
【0146】
例えば、再生3’アダプターは、82℃で2分間、3’アダプターを変性し、そして4℃まで、好ましくは0.1℃/秒の速度で3’アダプターを冷却することで再生することにより生成される。
【0147】
変性及び再生工程のために、アダプター、特に5’及び3’アダプターは、好ましくは、10mM TRIS HCl pH7.5、50mM NaCl、及び0.1mM EDTAを含む水性緩衝液に与えられる。言い換えれば、アダプター、特に5’及び3’アダプターの変性及び再生は、好ましくは、10mM TRIS HCl pH7.5、50mM NaCl、及び0.1mM EDTAを含む水性緩衝液中で実施される。
【0148】
上記方法の工程(i)で提供される組成物は、具体的には、変性標的RNA、第1の態様による再生5’アダプター、及び第2の態様による再生3’アダプターを互いに混合し、それにより5’アダプター及び3’アダプターを標的RNAにアニーリングすることにより、生成される。したがって、アダプター、特に5’及び3’アダプターは、同時に標的RNAにアニーリング/ライゲーションされる。さらに、変性標的RNAは、アニーリング/ライゲーション反応の前に、アダプター、特に5’及び3’アダプターと混合されるのみである。言い換えれば、アダプター、特に5’及び3’アダプターは、アニーリング/ライゲーション反応の前にターゲットRNAと混合されるのみである。これは、リボソーマルRNAなどの豊富なRNAを介してこのプロセスを妨げる可能性のあるRNA非存在下で、安定なアダプター構造が形成するという利点がある。
【0149】
標的RNAとの5’アダプターのアニーリングは、特に、アダプターの3’末端及び標的RNAの5’末端間に、RNA-OH-3’/5’-P-RNAのニックを含む二本鎖(DNA/RNA)ハイブリッドを生成する。これは、二本鎖RNAリガーゼによるライゲーションのための効率的な基質である。
【0150】
さらに、標的RNAとの3’アダプターのアニーリングは、特に、標的RNAの3’末
端とアダプターの5’末端の間にRNA-OH-3’/5’-P-RNAのニックを含む二本鎖(DNA/RNA)ハイブリッドを生成する。これは、二本鎖RNAリガーゼによるライゲーションのための基質である。
【0151】
ライゲーションは通常、ライゲーション緩衝液中で実施される。例となるライゲーション緩衝液は、本特許出願の実施例の項に記載されている。好ましい一実施形態では、ライゲーション緩衝液はポリエチレングリコール(PEG)、例えばPEG8000(5%)、及び/又はアデノシン三リン酸(ATP)、例えば1mM ATPを含む。本発明者らは、PEGが分子クラウディング剤として機能するようにライゲーション反応に影響を有し、及び/又は増加した濃度がライゲーション反応を促進するようにATPがライゲーション反応に影響を及ぼすことに気付いた。
【0152】
一実施形態において、ライゲーションは、36℃乃至38℃、例えば36、37、又は38℃、好ましくは37℃で、30分乃至1.5時間、例えば、30、35、40、45、50、55分、1、1.25、又は1.5時間、好ましくは1時間で、又は15℃乃至20℃、例えば15、16、17、18、19、又は20℃、好ましくは16℃で、30分乃至2時間、例えば30、35、40、45、50、55分、1、1.25、1.5、1.75、又は2時間、好ましくは1又は2時間、及びその後12℃で一晩実施される。一晩とは、8乃至12時間の期間、例えば8、9、10、11又は12時間を意味し得る。
【0153】
例えば、ライゲーションは、37℃で1時間、又は16℃で1又は2時間、及びその後12℃で一晩実施される。一晩とは、8時間乃至12時間の期間、例えば8、9、10、11、又は12時間を意味し得る。
【0154】
二本鎖RNAリガーゼは、二本鎖RNAニック/RNA構造をライゲーションできる任意のリガーゼであり得る。好ましくは、二本鎖RNAリガーゼは、T4 RNAリガーゼ2(Rnl2)又はKod1リガーゼである。
【0155】
この点において、完全にハイブリダイズした分子だけが二本鎖RNAリガーゼ、特にRnl2のための基質を提供することに留意すべきである。また、2個のヌクレオチド又はそれ以上である鎖又はギャップのいずれかの突出の場合、Rnl2は、はるかに低い効率で分子をライゲーションする。本明細書に記載のアダプター、特に5’及び3’アダプターは、標的RNAにハイブリダイズする6乃至15個のヌクレオチド突出を有するdsRNA状況を提供する。最後に、標的RNA分子の5’リン酸部分も、Rnl2による効率的なライゲーションには必要である。
【0156】
二本鎖RNAリガーゼを使用/と共に標的RNAにアダプター、特に5’及び3’アダプターをライゲーションすることにより、ライゲーション産物が生成される。ライゲーション産物は、少なくとも1つのアダプター及び標的RNAを含む(DNA/RNA)ハイブリッド分子として説明できる。例えば、ライゲーション産物は、5’アダプター及びmiRNA又はisomiRなどの標的RNAを含み得る。ライゲーション産物は、3’アダプター、及びmiRNA又はisomiRなどの標的RNAを含み得る。さらに、生成されたライゲーションは、5’アダプター、3’アダプター、及びmiRNA又はisomiRなどの標的RNAを含み得る。
【0157】
第五の態様において、本発明は、
(i)第4の態様による方法を実施する工程、
(ii)ライゲーション産物を逆転写し、それにより標的RNAからcDNA産物を得る工程、及び
(iii)cDNAを増幅し、それにより標的RNAを決定及び/又は定量化する工程、を含む、サンプル中の標的RNAを決定及び/又は定量化する方法に関する、
【0158】
一実施形態では、ライゲーション産物の逆転写は、
(iia)逆転写用プライマー(RT-プライマー)をライゲーション産物とアニーリングすること、及び
(iib)逆転写酵素(RT)を用いてライゲーション産物を逆転写すること、
により実施される。
【0159】
好ましい一実施形態では、工程(iia)におけるライゲーション産物との逆転写用プライマー(RTプライマー)の前記アニーリングは、60℃乃至80℃、例えば60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、又は80℃、好ましくは65℃又は75℃で2乃至7分間、例えば2、3、4、5、6、又は7分、好ましくは3又は5分で、実施される
【0160】
例えば、前記アニーリングは、65℃で2乃至7分間、例えば2、3、4、5、6、又は7分、好ましくは5分で実施される。あるいは、前記アニーリングは、75℃で2乃至7分間、例えば2、3、4、5、6、又は7分、好ましくは3分で実施される。
【0161】
(追加又は代替の)好ましい一実施形態では、工程(iib)において逆転写酵素(RT)を使用することによるライゲーション産物の逆転写が、40℃乃至65℃、例えば40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64,又は65℃、好ましくは50℃、55℃、58℃、又は62℃で、10乃至40分間、例えば10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40分間、好ましくは15分又は30分間で、及び続いて、75℃乃至90℃で、例えば75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、又は90℃で、好ましくは85℃で、2乃至4分間、例えば2、3、又は4分、好ましくは3分、又は60℃乃至75℃、例えば60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、又は75℃で、好ましくは68℃で、10乃至30分間、例えば10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30分、好ましくは15分で実施される。
【0162】
特に、逆転写酵素(RT)は、マキシマH-RT又はTthポリメラーゼである。
【0163】
例えば、逆転写酵素(RT)がマキシマH-RTである場合、前記逆転写は55℃で30分間、続いて85℃で3分間実施される。
【0164】
又は、前記逆転写は、50℃、58℃、又は62℃で15分間、続いて85℃で3分間実施される。
【0165】
例えば、逆転写酵素(RT)がTthポリメラーゼである場合、前記逆転写は68℃で15分間実施される。
【0166】
逆転写反応では、標的RNAの3’末端にライゲーションされた3’アダプターが、特に5’から3’方向に伸長され、標的RNAに逆相補的な鎖を形成する。特に、ライゲーション産物のcDNAコピーが逆転写反応で生成される。このプロセスでは、逆転写酵素(RT)は、RTプライマーが必要である。RT-プライマーは、特に、3’アダプター
のループ及び二本鎖ステムを含むステムループ構造を形成できるヌクレオチド配列に逆相補的である。したがって、RT-プライマー配列は、3’アダプター配列に依存する。
【0167】
1つの特定の実施形態では、RTプライマーは、5’から3’の以下の配列:CTCAGTGCGAATACCTCGGACCCT(配列番号:3)
を有するか、又はその配列のバリアントである。したがって、RT-プライマーは、上記のように、3’アダプター配列の少なくとも一部に逆相補的である。特に、RT-プライマーは、3’位の第2ステム配列及びループ配列中のヌクレオチドに逆相補的である。上述のように、3’アダプター配列は、好ましくは、以下の5’から3’:
【化15】
(ここで、「/5Phos/」は5’末端のヌクレオチドがリン酸化されていることを示し、下線部分の1つ又は複数のヌクレオチド及び/又は二重下線部分の1つ又は複数のヌクレオチドはLNA強化であり、(6-15x)Nは標的DNAの3’末端に逆相補的な配列を示し、「/3InvdT/」は、3’反転デオキシヌクレオチドを表す)である。具体的に、LNA強化ヌクレオチドは、リボヌクレオチドである。
【0168】
RT-プライマーバリアントは、配列番号:3による配列と、少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、さらにより好ましくは95%、さらにいっそうより好ましくは99%、例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有している配列を有する。そのようなRT-プライマーバリアントは、依然として3’アダプター配列に結合でき、逆転写酵素(RT)、例えばマキシマH-RT又はTthポリメラーゼによって行われる逆転写を可能にする。当業者は、RTプライマーバリアントが依然として3’アダプター配列に結合でき、及び逆転写を可能にできるかどうかを容易に評価することができる。たとえば、実施例の項は、この点で十分な情報を提供する。
【0169】
標的RNAをアッセイするために、そのcDNAは増幅される必要がある(上記方法の工程(iii)を参照)。サンプル中の標的RNAの量又はコピーが決定され得るように、アッセイは定量的であり得る。あるいは、標的RNAの存在がサンプル中で決定され得るように、アッセイは定性的であり得るが、そのレベルは測定され得ない。したがって、アッセイは、サンプル中の標的RNAの決定と定量化を可能にする。
【0170】
さらなる(追加又は代替の)好ましい一実施形態では、この方法は、工程(ii)及び(iii)との間に、cDNA前増幅の工程をさらに含む。前増幅反応は「単純な」PCR反応であり、通常は「単純な」PCR装置で行われ、たとえば、蛍光シグナルは検出されず、TaqManプローブは使用されない。典型的には、低いサイクル数が使用される。
【0171】
前増幅は、DNAポリメラーゼ、例えばTaqポリメラーゼが必要である。cDNAの前増幅の工程は、アッセイの感度が増加するという目的に役立つ。特定の一実施形態では、前記cDNA前増幅は、5’から3’の以下の配列:TGGAGTGTGTGCTTTGCCACG(配列番号:4)を有するフォワードプライマー、又はこの配列のバリアントを用いて、及び5’から3’の以下の配列:GTGCGAATACCTCGGACC(配列番号:5)を有するリバースプライマー又はこの配列のバリアントを用いて実施される。フォワードプライマーは5’アダプターに由来するが、リバースプライマーは3’アダプターに由来する。これらのプライマー設計は、ライゲーション産物のみを前増幅するために、5’及び3’アダプターの両方のライゲーションに完全に依存する前増幅を提供する。
【0172】
この点において、5’から3’の以下の配列:GTGCGAATACCTCGGACC(配列番号:5)を有するリバースプライマーが、上記のように3’アダプター配列の少なくとも1部に逆相補的であることに留意すべきである。特に、リバースプライマーは、3’位の第2ステム配列及びループ配列のヌクレオチドに逆相補的である。上述したように、3’アダプター配列は、好ましくは、以下の5’から3’:
【化16】
(ここで、「/5Phos/」は、5’末端のヌクレオチドがリン酸化されていることを表し、下線部分の1つ又は複数のヌクレオチド及び/又は二重下線部分の1つ又は複数のヌクレオチドはLNA強化であり、(6-15x)Nは標的RNAの3’末端配列に逆相補的な配列を示し、「/3InvdT/」は3’反転デオキシヌクレオチドを表す。)である。具体的に、LNA強化ヌクレオチドは、リボヌクレオチドである。
【0173】
さらに、5’から3’の以下の配列:TGGAGTGTGTGCTTTGCCACG(配列番号:4)を有するフォワードプライマーが、代わりに逆転写反応における5’アダプターから生成されるDNA産物に逆相補的であることに留意するべきである。上記のように、5’アダプター配列は、好ましくは、以下の5’から3’:
【化17】
(ここで、「r」はリボヌクレオチドを表し、「(6-15x)N」は標的RNAの5’末端配列に逆相補的な配列を示し、下線部分の1つ又は複数のヌクレオチド及び/又は二重下線部の1つ又は複数のヌクレオチドがLNA強化である)である。具体的に、LNA強化ヌクレオチドは、リボヌクレオチドである。あるいは、5’アダプター配列は、以下の5’から3’:
【化18】
(ここで、「r」はリボヌクレオチドを表し、「(6-15x)N」は標的RNAの5’末端配列に逆相補的な配列を示し、「idSp」は塩基欠失スペーサーを表し、下線部分の1つ又は複数のヌクレオチド及び/又は二重下線部分の1つ又は複数のヌクレオチドがLNA強化である。)である。
【0174】
任意の前増幅法を使用し得る。好ましい一実施形態では、前増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して実施される。PCRを用いた前増幅は、以下の様に実施され得る:95℃で3分間、続いて95℃で15秒間及び58℃で4分間を12サイクル。続いて、前増幅サンプルを4℃で保持する。
【0175】
前増幅に続いて、又は前増幅の代わりに、増幅反応が実施される。増幅は、DNAポリメラーゼ、例えばTaqポリメラーゼが必要である。
【0176】
特定の一実施形態では、増幅反応は、5’から3’の以下の配列:TGGAGTGTGTGCTTTGCCACG(配列番号:4)又はこの配列のバリアントを有するフォワードプライマー、及び5’から3’の以下の配列:GTGCGAATACCTCGGACC(配列番号:5)又はこの配列のバリアントを有するリバースプライマーを用いて実施される(上記参照)。
【0177】
任意の増幅方法が使用される。
【0178】
具体的には、増幅は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて実施される。
【0179】
より具体的には、PCRは、リアルタイムPCR(定量的PCR又はqPCR)、好ましくはTaq-man qPCR、マルチプレックスPCR、ネステッドPCR、ハイフィデリティPR、高速PCR、ホットスタートPCR、及びGCリッチPCRからなる群から選択される。
【0180】
さらにより具体的には、TaqMan qPCRは、5’から3’の以下の配列:TGGAGTGTGTGCTTTGCCACG(配列番号:4)を有するフォワードプライマー、又はこの配列のバリアントを用いて、及び、5’から3’の以下の配列:GTGCGAATACCTCGGACC(配列番号5)を有するリバースプライマー、又はこの配列のバリアントを用いて実施される。フォワードプライマーは、5’アダプターに由来するが、リバースプライマーは、3’アダプターに由来する。これらのプライマー設計は、ライゲーション産物のみを増幅するための、5’及び3’アダプターの両方のライゲーションに完全に依存する増幅を提供する。Taq-man qPCRを使用する増幅は、以下のように実施され得る:95℃で20秒間、続いて95℃で1秒間及び60℃で20秒間を40サイクル。その後、増幅サンプルは4℃で保持される。
【0181】
さらにより具体的には、TaqMan qPCRは、TaqManプローブの存在下で実施される。TaqManプローブの配列は、RNA標的の配列に依存する。TaqManプローブは、定量的PCRの特異性を高めるように設計された加水分解プローブである。一般に、TaqManプローブの原理は、Taqポリメラーゼの5’-3’エキソヌクレアーゼ活性に依存して、相補的な標的配列へのハイブリダイゼーション及び蛍光色素分子ベースの検出中に二重標識プローブを切断する。他の定量的PCR法と同様に、得られた蛍光シグナルは、PCRの指数関数的段階における生成物の蓄積の定量的測定を可能にする。しかしながら、TaqManプローブは、検出の特異性を大幅に向上させる。
【0182】
上記のようなフォワードプライマーバリアントは、配列番号:4による配列と、少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、さらにより好ましくは95%、さらにいっそうより好ましくは99%、例えば、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有している配列を有する。このようなフォワードプライマーバリアントは、依然として逆転写反応で5’アダプターから生成されたDNA産物に結合できる。言い換えれば、フォワードプライマーバリアントは、少なくとも部分的に、例えば少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は21ヌクレオチドの長さにわたって、5’アダプターと同じ配列を有する必要がある。特に、配列は、5’アダプターのループ領域及び3’位の第2番ステム配列において、例えば少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、又は21ヌクレオチドの長さにわたって、同一である。当業者は、フォワードプライマーバリアントが、逆転写反応において5’アダプターから生成されたDNA産物を依然として結合できるかどうかを容易に評価することができる。たとえば、実施例の項は、この点で十分な情報を提供する。
【0183】
さらに、上記のようなリバースプライマーバリアントは、配列番号:5による配列と、少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%、さらにより好ましくは95%、さらにいっそうより好ましくは99%、例えば、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有している配列を有する。このようなリバースプライマーバリアントは、依然として3’アダプター配列に結合することができ、cDNAの前増幅/増幅を可能にする。当業者は、リバースプライマーバリアントが、依然として3’アダ
プター配列に結合でき、cDNAの前増幅/増幅を可能にすることができるかどうかを容易に評価することができる。たとえば、実験例の項は、この点で十分な情報を提供する。
【0184】
本発明の第4及び/又は第5の態様による方法では、サンプルは好ましくは生物学的サンプルである。生物学的サンプルは、生物学的起源を有する任意のサンプルであり得る。例えば、生物学的サンプルは、体液サンプル、例えば血液サンプル又は尿サンプル、又は組織サンプル、例えば組織生検サンプルであり得る。生物学的サンプルは、混合又はプールされ得、例えばサンプルは、血液サンプル及び尿サンプルの混合物であり得る。
【0185】
体液サンプルは、成分を含む、尿サンプル、血液サンプル、喀痰サンプル、母乳サンプル、脳脊髄液(CSF)サンプル、耳垢(cerumen、earwax)サンプル、胃液サンプル、粘液サンプル、リンパサンプル、内リンパ液サンプル、外リンパ液サンプル、腹水サンプル、胸水サンプル、唾液サンプル、皮脂(皮脂)サンプル、精液サンプル、汗サンプル、涙液サンプル、口腔スワブ、膣分泌物サンプル、リキッドバイオプシー、もしくは嘔吐サンプル、又はその画分であり得る。用語「体液サンプル」は、体液画分、例えば血液画分、尿画分又は喀痰画分も包含する。体液サンプルは、混合又はプールされ得る。したがって、体液サンプルは、血液及び尿のサンプルの混合物、又は血液及び脳脊髄液のサンプルの混合物であり得る。
【0186】
より好ましくは、生物学的サンプルは、血液サンプルである。さらにより好ましくは、血液サンプルは、全血又は血液画分、好ましくは血球(例えば、赤血球、白血球、及び/又は血小板)、血清、又は血漿である。例えば、血球画分は、赤血球、白血球、及び/又は血小板を包含する。全血サンプルは、採血管によって採取され得る。たとえば、PAXgeneRNA採血管、Tempus Blood RNAチューブ、EDTAチューブ、クエン酸ナトリウムチューブ、ヘパリンチューブ、又はACD-チューブ(クエン酸デキストロース)に収集される。全血サンプルはまた、血液スポット技術、例えばMitra マイクロサンプリングデバイスを使用、によって収集され得る。この技術は、少量のサンプル量、典型的には人の場合は45乃至60μL又はそれ以下を必要とする。例えば、全血は、針又はランセットで指を刺して患者から抽出することができる。したがって、全血サンプルは、血液滴の形態を有し得る。次いで、前記血液滴は、吸収性プローブ、例えば全血を吸収できるセルロースなどの親水性ポリマー材料の上に置かれる。サンプリングが完了すると、処理のためにラボに転送又は郵送される前に、血液滴は空気中で乾燥される。血液は乾燥しているため、危険とは見なされない。そのため、取り扱いや輸送の際に特別な留意を払う必要はない。分析サイトに到着したら、目的の成分、たとえばmiRNAは、乾燥した血液滴から上清に抽出され、次いでさらに分析される。
【0187】
本発明の第4及び/又は第5の態様による方法では、サンプルは、全RNAを含むサンプルでもあり得る。 特に、全RNAは、miRNA又はmiRNAアイソフォーム(isomiR)などの<200ヌクレオチド長を有するRNAを含む。具体的には、本発明の第4及び/又は第5の態様による方法で使用されるサンプルは、細胞の全RNAを含む。 特に、細胞の全RNAは、miRNA又はmiRNAアイソフォーム(isomiR)などの<200ヌクレオチド長を有するRNAを含む。細胞の全RNAは、血液細胞、例えば赤血球、白血球、及び/又は血小板から得られ得る。
【0188】
第6の態様では、本発明は、
(ia)第4及び/又は第5の態様による方法を実施し、それにより標的RNAの存在又は非存在を決定する工程、及び
(iia)標的RNAの存在又は非存在に基いて、患者が疾患又は症状を患っているかどうかを診断する工程、又は
(ib)第4及び/又は第5の態様による方法を実施し、それにより標的RNAを定量化
する工程、
(iib)定量化された標的RNAを参照と比較する工程、及び
(iiib)比較に基づいて、患者が疾患又は症状を患っているかどうかを診断する工程、
を含む、患者の疾患又は症状を診断する方法に関する。
【0189】
したがって、本発明は、
(i)第4及び/又は第5の態様による方法を実施し、それにより標的RNAの存在又は非存在を決定する工程、及び
(ii)標的RNAの存在又は非存在に基づいて、患者が疾患又は症状を患っているかどうかを診断する工程、
を含む、患者の疾患又は症状を診断する方法に関する
【0190】
したがって、標的RNAの存在又は非存在は、疾患又は症状を示す。例えば、標的RNAが存在又は非存在である場合、患者は疾患又は症状を患っていると診断される。あるいは、標的RNAが存在又は非存在の場合、患者は疾患又は症状に影響されていないと診断される。
【0191】
あるいは、本発明は、
(i)第4及び/又は第5の態様による方法を実施し、それにより標的RNAを定量化する工程、
(ii)定量化された標的RNAを参照と比較する工程、及び
(iii)比較に基づいて、患者が疾患又は症状を患っているかどうかを診断する工程、を含む、患者の疾患又は症状を診断する方法に関する。
【0192】
特に、参照は参照標的RNAである。より特別には、参照は、1人又は複数の健康な(対照)被験者から得られた参照である。さらにより特別には、参照は、1人又は複数の健康な(対照)対象において決定された定量化された参照標的RNAである。2人以上の健康な(対照)被験者が検査されている場合、参照標的RNAの量は平均値として示される場合がある。例えば、定量化された標的RNAが、例えば、1人又は複数の健康な(対照)被験者から得られる、定量化された参照標的RNAより上又は下にある場合、患者は疾患又は症状を患っていると診断される。あるいは、定量化された標的RNAが、例えば1人又は複数の健康な(対照)被験者から得られた、定量化された参照標的RNAより上又は下にある場合、患者は、疾患又は症状に患わっていないと診断される。参照はまた、疾患又は症状を患っている1人又は複数の(対照)被験者から得られた参照であってもよい。
【0193】
好ましい一実施形態では、定量化された標的RNAは、miRNA又はmiRNAアイソフォーム(isomiR)である。別の好ましい一実施形態では、定量化された参照標的RNAは、miRNA又はmiRNAアイソフォーム(isomiR)である。具体的には、標的RNA及び参照標的RNAは同一であり、即ち同じRNA型(例えば、両RNAはmiRNAである)と同一である。
【0194】
(追加又は代替の)好ましい一実施形態では、疾患は、神経変性疾患、自己免疫疾患、感染症、及び癌からなる群から選択される。より好ましい一実施形態では、
(i)神経変性疾患は、アルツハイマー病(AD)及びその他の認知症、パーキンソン病(PD)及びPD関連疾患、プリオン病、運動ニューロン疾患(MND)、ハンチントン病(HD)、脊髄小脳失調症(SCA)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、エイズ認知症複合体、及びアテローム性動脈硬化からなる群から選択され、
(ii)自己免疫疾患は、糖尿病、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、全身
性エリテマトーデス(狼瘡)、バセドウ病、シェーグレン症候群、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、血管炎、悪性貧血、及びセリアック病からなる群から選択され、
(iii)感染症は、ウイルス感染、好ましくは慢性又は持続性のウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染以下からなる群から選択され、又は
(iv)癌は、皮膚ガン、上咽頭がん、神経内分泌がん、肺癌、大腸がん、尿路上皮がん、膀胱がん、肝臓がん、卵巣がん、胃癌、食道がん、膵臓癌、腎臓がん、胃癌、食道がん、乳癌、腎がん、頭頸部がん、脳腫瘍、リンパがん、血液がん、扁平上皮がん、喉頭がん、網膜がん、前立腺がん、子宮頸癌、子宮がん、精巣がん、骨がん、リンパ腫、及び白血病からなる群から選択される。
【0195】
第7の態様では、本発明は、第1の態様による5’アダプター、及び第2の態様による3’アダプター、又は第3の態様による組み合わせを含むキットに関する。
【0196】
好ましい一実施形態では、キットは、二本鎖RNAリガーゼ、好ましくはT4 RNAリガーゼ2(Rnl2)又はKod1リガーゼをさらに含む。この場合、キットは、好ましくは、第4の態様による方法をどのように実施するかについての説明書をさらに含む。この組成物を有するキットは、好ましくは、第4の態様による方法をさらに実施することを可能にする。
【0197】
好ましい(追加又は代替の)一実施形態では、キットは、逆転写酵素(RT)、好ましくはマキシマH-RT又はTthポリメラーゼ、及び標的RNAからcDNA産物を得るために標的RNAの逆転写を可能にするRTプライマー、及び/又はDNAポリメラーゼ、好ましくはTaqポリメラーゼ、及びcDNAの前増幅及び/又は増幅を可能にするフォワードプライマー及び/又はリバースプライマーを、さらに含む。
【0198】
この場合、キットは、好ましくは、第5の態様による方法をどのように実施するかについての説明書をさらに含む。この組成物を有するキットは、好ましくは、第5の態様による方法をさらに実施することを可能にする。
【0199】
所望により、キットは、TaqManプローブをさらに含む。
【0200】
特定のRT、フォワード及び/又はリバースプライマーに関しては、本発明の第5の態様が参照される。
【0201】
さらなる(追加又は代替の)好ましい一実施形態では、キットは参照をさらに含む。この場合、キットは、好ましくは、第6の態様による方法をどのように実施するかについての説明書をさらに含む。この組成物を有するキットは、好ましくはさらに、第6の態様による方法を実施することを可能にする。
【0202】
参照に関しては、本発明の第6の態様が参照される。
【0203】
上記を考慮して、キットは、より好ましい一実施形態において、以下の成分を含む:
(i)第1の態様による5’アダプター及び第2の態様による3’アダプター又は第3の態様による組み合わせ、
(ii)逆転写酵素(RT)、好ましくはマキシマH-RT又はTthポリメラーゼ、及び標的RNAからcDNA産物を得るために標的RNAの逆転写を可能にするRTプライマー、及び/又は
(iii)DNAポリメラーゼ、好ましくはTaqポリメラーゼ、及びcDNAの前増幅及び/又は増幅を可能にするフォワードプライマー及び/又はリバースプライマー。
【0204】
所望により、キットは、TaqManプローブをさらに含む。
【0205】
キットは、さらにより好ましい一実施形態では、以下の成分を含む:
(i)5’から3’の以下の配列:
【化19】
(ここで、「r」はリボヌクレオチドを表し、「(6-15x)N」は標的RNAの5’末端配列に逆相補的な配列を示し、下線部の1つ又は複数のヌクレオチド及び/又は二重下線部の1つ又は複数のヌクレオチドがLNA強化である。)、又はこの配列のバリアントを有する5’アダプター、及び5’から3’の以下の配列:
【化20】
(ここで、「/5Phos/」は5’末端ヌクレオチドがリン酸化されていることを示し、下線部の1つ又は複数のヌクレオチド及び/又は二重下線部の1つ又は複数のヌクレオチドはLNA強化であり、「(6-15x)N」は標的RNAの3’末端配列に逆相補的な配列を示し、「/3InvdT/」は3’反転デオキシヌクレオチドを表す)又はこの配列のバリアントを有する3’アダプター、
(ii)逆転写酵素(RT)、好ましくはマキシマH-RT又はTthポリメラーゼ、及び配列番号:3による配列又はこの配列のバリアントを有するRTプライマー、及び/又は
(iii)DNAポリメラーゼ、好ましくはTaqポリメラーゼ、及び配列番号:4による配列又はこの配列のバリアントを有するフォワードプライマー及び/又は配列番号:5による配列を又はこの配列のバリアントを有するリバースプライマー。
【0206】
所望により、キットは、TaqManプローブをさらに含む。
【0207】
あるいは、上記の5’アダプターは、5’から3’の以下の配列:
【化21】
(ここで、「r」はリボヌクレオチドを表し、「(6-15x)N」は標的RNAの5’末端配列に逆相補的な配列を示し、「idSp」は塩基欠失スペーサーを表し、下線部の1つ又は複数のヌクレオチド及び/又は二重下線部の1つ又は複数のヌクレオチドはLNA強化である。)、又はこの配列のバリアントを有する5’アダプターにより置き換えられる。
【0208】
さらにより好ましい一実施形態では、キットは、以下の成分を含む:
(i)5’から3’の以下の配列:
【化22】
(ここで、「r」はリボヌクレオチドを表し、「(6-15x)N」は標的RNAの5’末端配列に逆相補的な配列を示し、太字のヌクレオチドの1つ又は複数(例えば、1個、2個、又は3個)がLNA強化である。)、又はこの配列のバリアントを有する5’アダプター、及び5’から3’の以下の配列:
【化23】
(ここで、「/5Phos/」は5’末端ヌクレオチドがリン酸化されていることを示し、太字のヌクレオチドの1個又は複数(例えば、1個、2個、又は3個)はLNA強化で
あり、「(6-15x)N」は標的RNAの3’末端配列に逆相補的な配列を示し、「/3InvdT/」は3’反転デオキシヌクレオチドを表す。)、又はこの配列のバリアントを有する3’アダプター
(ii)逆転写酵素(RT)、好ましくはマキシマH-RT又はTthポリメラーゼ、及び配列番号:3による配列又はこの配列のバリアントを有するRTプライマー、及び/又は
(iii)DNAポリメラーゼ、好ましくはTaqポリメラーゼ、及び配列番号:4による配列又はこの配列のバリアントを有するフォワードプライマー及び/又は配列番号:5による配列又はこの配列のバリアントを有するリバースプライマー。
【0209】
所望により、キットは、TaqManプローブをさらに含む。
【0210】
あるいは、上記の5’アダプターは、5’から3’の以下の配列:
【化24】
(ここで、「r」はリボヌクレオチドを表し、「(6-15x)N」は標的RNAの5’末端配列に逆相補的な配列を示し、「idSp」は塩基欠失スペーサーを表し、太字のヌクレオチドの1個又は複数(例えば、1、2、又は3個)はLNA強化である。)、又はこの配列のバリアントを有する5’アダプターに置き換えられる。
【0211】
上記の特定のバリアントに関しては、本発明の第1、第2、第4及び第5の態様が参照される。
【0212】
キットは、
(i)キットの様々な成分用の1つ又は複数の容器、及び/又は
(ii)データキャリア
をさらに含み得る。
【0213】
前記データキャリアは、例えば情報リーフレットなどのグラフィックデータキャリア、情報シート、バーコード若しくはアクセスコードなどの非電子データキャリア、又は例えばフロッピーディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、マイクロチップ若しくは別の半導体ベースの電子データキャリアなどの電子データキャリアであり得る。アクセスコードは、例えばインターネット データベース、集中型、または分散型データベースなどのデータベースへのアクセスを許可し得る。アクセスコードもまた、コンピューターにコンピューターユーザーのタスクを実行させるアプリケーションソフトウェア、又はスマートフォン及び他のモバイルデバイスで実行するために設計されたソフトウェアであるモバイルアプリにアクセスを許可し得る。
【0214】
前記データキャリアは、第6の態様の文脈で説明した参照をさらに含み得る。
【0215】
データキャリアがデータベースへのアクセスを可能にするアクセスコードを含む場合、前記参照はこのデータベースに保管される。さらに、データキャリアが、本発明の第4乃至第6の態様の方法をどのように実施するかについての情報又は指示を含み得る。
【0216】
前記キットはまた、本発明の第4乃至第6の態様の方法を実施することを可能にし得る、緩衝剤、試薬及び/又は希釈剤を含む、商業的及び使用者の観点から望ましい材料を含み得る。具体的に、キットはまた、標的RNAへの2つのアダプターのアニーリング及びライゲーションを実施するための緩衝液及び成分、標的RNAの逆転写を実施するための緩衝液及び成分、及び/又は標的RNAの前増幅及び/又は増幅を実施するための緩衝液
及び成分を含み得る。
【0217】
当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の様々な修正及び変形が明らかであろう。本発明は、特定の好ましい実施形態に関連して説明されたが、特許請求される本発明は、そのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことは理解されるべきである。実際、関連分野の当業者にとって自明である、本発明を実施するための説明された方法の様々な変更は、本発明によってカバーされることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0218】
以下の図は、本発明を単に説明するものであり、添付の特許請求の範囲によって示される本発明の範囲を決して限定するものと解釈されるべきではない。
【0219】
【
図1】
図1は、5’アダプター、3’アダプター、及び標的miRNAの例示的な略ハイブリッド構造を示す。この構造において、5’アダプターは、以下の配列:
【化25】
(ここで、「r」はリボヌクレオチドを表し、太字の配列は標的RNAmiR-100-5pの5’末端配列に逆相補的な配列を示し、下線部分の1個又は複数のヌクレオチド及び/又は二重下線部分の1個又は複数のヌクレオチドがLNA強化である。)を有する。この構造において、3’アダプターは以下の配列:
【化26】
(ここで、「/5Phos/」は5’末端ヌクレオチドがリン酸化されていることを示し、下線部の1個又は複数のヌクレオチド及び/又は二重下線部の1個又は複数のヌクレオチドはLNA強化であり、太字の配列は標的RNA miR-100-5pの3’末端配列に逆相補的な配列を示し、「/3InvdT/」は3’反転デオキシヌクレオチドを表す。)を有する。標的RNA miR-100-5pは、以下の配列:
【化27】
を有する。5’/3’アダプターの逆相補配列は太字で示されている。
[
図2]
図2は、miR-100-5pの8つのバリアントのテストベッドでの商用アッセイ及びDB PCRアッセイの結果である。列には使用されたRNAテンプレートがリストされ、行にはそれぞれのアッセイである。描かれている数値は、ABI Flex6 qPCR装置によって提供されるCt値である。より低いCt値は、より多くのRNAがサンプルで検出されたことを表す。緑色のハイライトは、シグナルが予想されるだけの場所であることを示す。A.LNAベースのプライマー商用アッセイは、60amol(アトモル)のRNAテンプレートで試験された。B.ステムループプライマーベースの商用アッセイは60amolのRNAテンプレートで試験された。C.プライマー-プローブハイブリッドに基づく商用アッセイは、2pmolのRNAテンプレートで試験された。D.前増幅工程無のDB-PCRアッセイは、10fmolのRNAテンプレートでテストされた。
[
図3]
図3は、
図2に示すのと同様に行われたが、
60amolのRNAテンプレートの上で、7サイクルの前増幅で行った、DB PCRアッセイ実験の結果である。
[
図4]
図4は、
図1及び
図2で示された分析のために使用される、標的RNA miR-100-5p及び標的RNA miR-100-5pのバリアントの配列である
[
図5]
図5は、PAXgene RNAサンプルにおける、内在性miR-100-5p wt(A.)及び3’欠失(B.)の検出である。反応に追加されたRNAサンプ
ルの量、及び7サイクルの前増幅を有するDB PCRの得られたCt値が示されている。
[
図6]
図6は、5’及び3’アダプター、逆転写(RT)プライマー、フォワード及びリバースプライマー、及び実験セットアップで様々なmiRNAに使用されるTaqManプローブの概要である。
[
図7]
図7は、miRNAバリアント、5’アダプター、3’アダプター、及びTaqManプローブの特定の組み合わせである。
【実施例】
【0220】
以下に示す実施例は、例示のみを目的としており、上記の発明を決して限定するものではない。
【0221】
1.材料と方法
まず、必要なステムループ様構造が形成されるように、アダプターは変性及び再生される。RNAは別々に変性され、アダプターと混合され、Rnl2によるライゲーションに使用される。次いで、3’アダプターに整列するRTプライマーは、cDNA産生のために使用される。cDNAは、前増幅され(例えば、Biorad Pre-amp Mixを使用)、その後第1鎖のcDNAの5’末端に整列するリバースプライマー及び第1鎖のcDNAの3’末端に相補的なフォワードプライマーを用いるqPCRに使用される。最後に、TaqManプローブが、qPCRで特定のシグナルの検出のために使用される。
【0222】
例示的な5’アダプター(配列番号:6)及び例示的な3’アダプター(配列番号:7)を
図1に示す。これらのアダプターは、miR-100-5p(配列番号:8)を標的とする。
【0223】
プロトコルの詳細:
アダプター、プライマー、及びプローブは、miR-100-5p及びそのバリアント(
図3に記載)を認識でき且つ特異的になるように設計されている。合成miRは5’リン酸化型で注文された。アダプター、プローブ、及びプライマーの完全なリストは
図6に示される。すべてのオリゴは乾燥状態で注文された。
【0224】
すべてのオリゴは、ヌクレアーゼフリーの水で、100μMの濃度に希釈し、-20℃の暗所で保存した。次に、アダプターを以下のように準備した:
【表1】
【0225】
次に、RNAを変性により調製した。等モルプールで、PAXgene全RNAの示された量を使用するか、又は合成miR-100-5p wt及びバリアントの示された量を使用した。RNAを70℃で2分間変性させ、すぐに氷上に置いた。
【0226】
次に、以下の成分を用いてライゲーション反応を調製した。反応物をよく混合した後、37℃で1時間インキュベートした。
【表2】
【0227】
次に、以下のプロトコルに示すように、ライゲーションされたRNAを、RTプライマーを使用した逆転写反応に使用した。
【表3】
【0228】
逆転写後、cDNAを市販の前増幅マスターミックス(バイオラッド社)を用いた前増幅反応に使用した。その後、前増幅cDNAを希釈し、-20℃で保存した。
【表4】
【0229】
最後に、希釈したcDNAを使用するqPCRアッセイを、Taqmanプローブを含み、使用した。反応は、384ウェル形式で、ABI Flex 6マシンで実行した。
【表5】
【0230】
2.結果
オリジナルのDB PCRプロトコルを、ライゲーションの面で改善した。その後、
図2に示すように、それは利用可能な主要な商用アッセイとの比較に使用された。「改善されたダンベル(DB)PCR」プロトコルが、他のアッセイと比較して優れた特異性を有していることが明確に示された。プロトコルは、「高度なDB PCR」を作成するための前増幅工程でさらに最適化された。このようにして、特異性を失うことなく、高感度を達成することができた(
図3)。
【0231】
このアッセイは、臨床サンプル、例えばPAXgene全血RNAサンプルなどのRNAの生物学的ソースに使用できることに留意することが重要である。オリジナルのDB PCRプロトコルは、ヒトPAXgene RNAサンプル中のmiR-100-5pを検出できない(データは示していない)。高度なDB PCRプロトコルは、PAXgene RNAサンプル中のmiR-100-5pを検出でき(
図5)、wt又は標準形式のmiR-100-5p及び3’欠失バリアントを検出できる。
【0232】
検出に使用される特定のアダプター及びTaqmanプローブの配列を、
図6に示す。識別アッセイに使用されるアダプター及びプローブの組み合わせを
図7に示す。
【0233】
3.アダプター及びプライマーの配列(5’->3’方向)
5’から3’の5’アダプター:
【化28】
(ここで、「r」はリボヌクレオチドを表し、「(6-15x)N」は標的RNAの5’末端配列に逆相補的な配列を示し、下線部の1個又は複数のヌクレオチド及び/又は二重下線部の1個又は複数のヌクレオチドがLNA強化である。)。miR-100-5pを標的とする例示的な5’アダプターは、配列番号:6によるヌクレオチド配列を有する。
【0234】
5’から3’の3’アダプター:
【化29】
(ここで、「/5Phos/」は、5’末端ヌクレオチドがリン酸化されていることを示し、下線部分の1個又は複数のヌクレオチド及び/又は二重下線部分の1個又は複数のヌクレオチドはLNA強化であり、(6-15x)Nは標的RNAの3’末端配列に逆相補的な配列を指定し、「/3InvdT/」は3’反転デオキシヌクレオチドを表す。)。
miR-100-5pを標的とする例示的な3’アダプターは、配列番号:7によるヌクレオチド配列を有する。
【0235】
5’から3’のRTプライマー:CTCAGTGCGAATACCTCGGACCCT(配列番号:3)
5’から3’のフォワードプライマー:TGGAGTGTGTGCTTTGCCACG(配列番号:4)
5’から3’のリバースプライマー:GTGCGAATACCTCGGACC(配列番号:5)
【配列表】