(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-06
(45)【発行日】2024-06-14
(54)【発明の名称】柱梁接合部の施工方法及び同施工方法に使用される仕切部材
(51)【国際特許分類】
E04B 1/30 20060101AFI20240607BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20240607BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20240607BHJP
【FI】
E04B1/30 K
E04B1/58 505P
E04G21/02 103Z
(21)【出願番号】P 2024033077
(22)【出願日】2024-03-05
【審査請求日】2024-03-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591165919
【氏名又は名称】株式会社新井組
(73)【特許権者】
【識別番号】591214804
【氏名又は名称】株式会社松村組
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】蘓鉄 盛史
(72)【発明者】
【氏名】東 健二
(72)【発明者】
【氏名】柏木 隆男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武
(72)【発明者】
【氏名】菊地 剛
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】実公平7-54403(JP,Y2)
【文献】特開平6-272304(JP,A)
【文献】特開平5-230879(JP,A)
【文献】特開平8-105113(JP,A)
【文献】特開平6-240815(JP,A)
【文献】特開2017-95986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/16
E04B 1/21
E04B 1/30
E04B 1/58
E04G 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部フランジと下部フランジがウェブで連結された鉄骨梁が柱部材と交差する部分に配設される柱梁接合部が、角形断面柱で構成された塞ぎ鋼板で囲まれると共に、前記塞ぎ鋼板の上端開口部から前記塞ぎ鋼板の内側に前記柱部材の一部となるコンクリートが打設される柱梁接合部の施工方法であって、
前記塞ぎ鋼板の内側のコンクリート打設空間は前記鉄骨梁の前記ウェブによって複数の個別打設空間に仕切られ、隣接する前記個別打設空間の上端開口相互間に、前記鉄骨梁の上部フランジから垂直上方に延びた仕切部材を配設した状態で、前記複数の個別打設空間に順次コンクリートを打設することを特徴とする柱梁接合部の施工方法。
【請求項2】
前記柱部材が、鉄筋コンクリート柱又は鉄骨鉄筋コンクリート柱で構成されていることを特徴とする請求項1の柱梁接合部の施工方法。
【請求項3】
前記仕切部材が平面視で十字形をなすと共に当該十字形の中心部分が前記コンクリート打設空間の中央に位置する前記鉄骨梁の前記上部フランジに支持されていることを特徴とする請求項1の柱梁接合部の施工方法。
【請求項4】
前記十字形の中心部分が前記上部フランジに回転可能に支持されていることを特徴とする請求項3の柱梁接合部の施工方法。
【請求項5】
前記仕切部材に前記個別打設空間を照射する照明手段が配設されていることを特徴とする請求項1の柱梁接合部の施工方法。
【請求項6】
前記仕切部材に、前記個別打設空間の上端開口に係合する係合部が形成されていることを特徴とする請求項1の柱梁接合部の施工方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項の柱梁接合部の施工方法に使用される仕切部材であって、前記塞ぎ鋼板の内側の隣接する前記個別打設空間の上端開口相互間において前記鉄骨梁の上部フランジから垂直上方に延びた仕切部材。
【請求項8】
前記個別打設空間を照射する照明手段が配設されていることを特徴とする請求項7の仕切部材。
【請求項9】
前記個別打設空間の上端開口に係合する係合部が形成されていることを特徴とする請求項7の仕切部材。
【請求項10】
前記塞ぎ鋼板にコンクリートの充填高さを検知する1又は複数のセンサが取付けられ、当該センサの検知結果を、前記仕切部材に取付けられた1又は複数の報知手段で表示するようにしたことを特徴とする請求項7の仕切部材。
【請求項11】
前記塞ぎ鋼板の高さ方向に前記センサが所定間隔で複数取付けられ、コンクリートの充填の進行に合わせて各センサの検知結果を前記複数の報知手段で順番に表示するようにしたことを特徴とする請求項10の仕切部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート柱又は鉄骨鉄筋コンクリート柱等の柱部材と鉄骨梁との交差部分に配設される、角形断面柱で構成された塞ぎ鋼板で囲まれた柱梁接合部の施工方法及び同施工方法に使用される仕切部材に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨梁が柱部材と交差する部分に配設される柱梁接合部として、例えば特許文献1(特許第7270095号公報)に開示された柱梁接合部が知られている。このような柱梁接合部は角形断面柱で構成された塞ぎ鋼板で囲まれ、当該塞ぎ鋼板の上端開口部から塞ぎ鋼板の内側に柱部材の一部となるコンクリートが打設される。
【0003】
塞ぎ鋼板の内側のコンクリート打設空間は、塞ぎ鋼板が溶接される鉄骨梁(梁接合ブラケット)のウェブによって複数の個別打設空間に仕切られている。コンクリート打設空間にコンクリートポンプ車から配管やホースを介してコンクリート(生コン)を打設する際は、鉄骨梁の上下フランジの下側に空隙が発生しないように注意深く打設する必要がある。
【0004】
ところが、コンクリートポンプ車はスクイーズ式とピストン式のいずれもホース先端から吐出される生コンの流れに脈動があり、ピストン式は特に脈動が大きい。このため狙った箇所に正確に生コンを打設するのが困難であり、
図12に示すようにウェブ32cを跨いで複数の個別打設空間に同時に生コンが打設されることも珍しくない。そうすると、上下フランジの下側に空隙が発生しやすくなる。
【0005】
このエア溜まり(空隙)があると生コンの未充填領域が形成され、当該未充填領域の周辺でコンクリートの沈降ひび割れが発生しやすい。このため、上下フランジ32a、32bの下側のエアを逃がすために特許文献1の
図3のようにエア抜き孔32hを形成することが行われているが、エア溜まりを確実に解消するには至っていない。
【0006】
上下フランジの下側は目視では直接確認できないので、生コンの流量を絞ってゆっくりと打設しているのが現状である。このため、施工速度が遅くならざるを得ないという課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の課題は、柱梁接合部のエア溜まりを抑制する柱梁接合部の施工方法と同施工方法に使用される仕切部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の柱梁接合部の施工方法は、上部フランジと下部フランジがウェブで連結された鉄骨梁が柱部材と交差する部分に配設される柱梁接合部が、角形断面柱で構成された塞ぎ鋼板で囲まれると共に、前記塞ぎ鋼板の上端開口部から前記塞ぎ鋼板の内側に前記柱部材の一部となるコンクリートが打設される柱梁接合部の施工方法であって、前記塞ぎ鋼板の内側のコンクリート打設空間は前記鉄骨梁の前記ウェブによって複数の個別打設空間に仕切られ、隣接する前記個別打設空間の上端開口相互間に、前記鉄骨梁の上部フランジから垂直上方に延びた仕切部材を配設した状態で、前記複数の個別打設空間に順次コンクリートを打設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、柱梁接合部のエア溜まりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁のRCS混合構造を適用した建物の一部を示す立面図である。
【
図2】
図1の柱梁接合部の構成を示す立断面図である。
【
図3】
図1の柱梁接合部の構成を示す水平断面図である。
【
図4】
図1の柱梁接合部の構成を示す斜視図である。
【
図5】
図1の柱梁接合部の構築方法を説明する立断面図である。
【
図8A】柱梁接合部に仕切部材を載せた状態の平面図である。
【
図8B】柱梁接合部に仕切部材を載せる状態を示す斜視図である。
【
図9A】塞ぎ鋼板の内側の複数の個別打設空間にコンクリートを順次打設する状態(a)-(d)を示す平面図である。
【
図9B】
図9A(a)のコンクリートの投入初期を示す(a1)立面図と(b1)平面図、投入中期を示す(a2)立面図と(b2)平面図である。
【
図10】塞ぎ鋼板にコンクリートの充填検知用センサを取付けた実施形態の立面図である。
【
図11】S梁と接合される柱部材の複数種類を示す立面図である。
【
図12】従来の柱梁接合部の施工方法を示す立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
●RCS混合構造の柱梁接合部
以下、本発明の実施形態に係る柱梁接合部とその施工方法について図面を参照して説明する。
図1は鉄筋コンクリート柱と鉄骨梁のRCS混合構造を適用した建物の一部を示す立面図である。実施形態に係る柱梁接合部40は、柱部材としてのRC柱2と鉄骨梁3が交差する部分に配設されている。
【0012】
図2は柱梁接合部40の立断面図であり、
図3は
図2の水平断面図であり、
図4は柱梁接合部40の斜視図である。
図1のように、建物1は、上下方向に延びる複数本のRC柱2と、建物1の各階において互いに隣り合うRC柱2間に架設された鉄骨梁3とを備えている。RC柱2と鉄骨梁3とは、柱梁接合部40において互いに接合されている。
【0013】
図1~
図3に示すように、RC柱2は鉄筋コンクリート造であり、柱主筋21とコンクリート24とを主に備えている。柱主筋21は上下方向に延び、RC柱2の断面内において複数本(
図3では3x4=12本)が配設されている。コンクリート24は、例えば平断面視矩形であって、柱主筋21を埋設するように設けられている。
【0014】
RC柱2は、互いに上下に位置する柱梁接合部40の間に、RC柱2の本体部に相当する上下方向に延びる柱状部2Cを有している。柱状部2Cは、柱主筋21とコンクリート24とに加えて、せん断補強筋22を備えている。
【0015】
せん断補強筋22は、上下方向に間隔をあけて複数本が設けられている。それぞれのせん断補強筋22は、柱主筋21を取り囲むように配筋されている。柱状部2Cにおいて、コンクリート24は、これら柱主筋21及びせん断補強筋22を埋設するように設けられている。
【0016】
鉄骨梁3は、
図1に示すように鉄骨梁本体31と、柱梁接合部40に設けられた梁接合ブラケット32とを備えている。鉄骨梁本体31は、水平面内に設けられた上部フランジ31aと、上部フランジ31aの下方に平行に設けられた下部フランジ31bと、鉛直面内に位置して上部フランジ31aと下部フランジ31bとを垂直に連結するように設けられたウェブ31cとを一体に有している。鉄骨梁本体31の端部は、梁接合ブラケット32に、ジョイントプレート34を介して接合されている。
【0017】
梁接合ブラケット32は、鉄骨梁3が延びる方向に向けて、RC柱2から突出するように設けられている。例えば、RC柱2が建物1の内部に配置され、
図3に示すようにRC柱2の四方に鉄骨梁3が接合される場合、梁接合ブラケット32は、RC柱2から四方に延びるように設けられる。
【0018】
ここで、RC柱2を間に挟んで互いに反対側に位置する梁接合ブラケット32同士は、一直線上に連続している。すなわち、四方に鉄骨梁3が接合されるRC柱2の柱梁接合部40において、梁接合ブラケット32は、平面視十字状に設けられている。また、各梁接合ブラケット32は、その一部が柱梁接合部40のコンクリート24Jに埋設され、残部が、RC柱2に接合される四方の鉄骨梁3のそれぞれの延在方向に沿ってコンクリート24Jから突出して設けられている。
【0019】
図2に示すように、各梁接合ブラケット32は、水平面内に設けられた上部フランジ32aと、上部フランジ32aの下方に平行に設けられた下部フランジ32bと、鉛直面内に位置して上部フランジ32aと下部フランジ32bとを垂直に連結するように設けられたウェブ32cとを一体に有している。上部フランジ32aから上に所定厚さでコンクリートを打設することでスラブ5が形成される。
【0020】
図3に示すように、柱梁接合部40には塞ぎ鋼板41が設けられている。前記スラブ5は、塞ぎ鋼板41の外側まで形成されている。スラブ5は、塞ぎ鋼板41の内側にコンクリート24Jを打設した後、
図2のように塞ぎ鋼板41の上にも形成される。
【0021】
塞ぎ鋼板41は、RC柱2の周方向において梁接合ブラケット32の互いに隣り合うウェブ32c間に設けられている。各塞ぎ鋼板41は平面視略L字状で、梁接合ブラケット32の互いに隣り合うウェブ32cのうち一方のウェブ32cの延伸方向に直交する第一面41aと、他方のウェブ32cの延伸方向に直交する第二面41bとを有している。
【0022】
各塞ぎ鋼板41の第一面41aと第二面41bの端部は、
図2に示すように鉄骨梁3を構成する梁接合ブラケット32の上部フランジ32aと下部フランジ32bとの間を塞ぐように設けられている。すなわち、塞ぎ鋼板41の第一面41aと第二面41bの端部は、梁接合ブラケット32の上部フランジ32aの下面と、下部フランジ32bの上面と、ウェブ32cの側面に溶接されている。
【0023】
また、塞ぎ鋼板41において、第一面41aと第二面41bとが交差する角部41cは、平面視L字形に直角に形成することができる。このような平面視略L字状の塞ぎ鋼板41を、RC柱2から四方に延びる梁接合ブラケット32の間にそれぞれ設けることで、これら塞ぎ鋼板41によって、平面視矩形で上下方向に延びる角形断面柱45が形成されている。
【0024】
柱梁接合部40は、
図2に示すように接合本体部40Aを有する。接合本体部40Aは、塞ぎ鋼板41(角形断面柱45)の内部にコンクリート24Jが打設されることで形成されている。接合本体部40Aには、柱主筋21が上下方向に延びて配筋されている。
【0025】
柱主筋21は、
図3に示すようにRC柱2の外周部に複数本(3x4=12本)で配置されている。RC柱2の外周部に配置された柱主筋21は、梁接合ブラケット32の互いに隣り合うウェブ32c同士の間に配置されている。
【0026】
図2に示すように、接合本体部40Aにおいては、柱主筋21のみが設けられ、せん断補強筋は設けられていない。換言すると、塞ぎ鋼板41の内側の、梁接合ブラケット32の上部フランジ32aと下部フランジ32bとの間においては、せん断補強筋が設けられていない。また、梁接合ブラケット32同士が交差する部分には、コンクリート打設時のエア抜きのためのエア抜き孔32hが、上部フランジ32aと下部フランジ32bとを上下方向に貫通して形成されている。
【0027】
柱梁接合部40において、接合本体部40Aのコンクリート24Jは、必要に応じて高強度コンクリートによって形成することもできる。接合本体部40Aは、
図4の型枠MBで形成される柱状部2Cの上端部分と一体的にコンクリートの現場打設で構築され、下方側の柱本体の柱状部2Cと連結される。
【0028】
図1に示すように、互いに上下に位置する鉄骨梁3,3間にブレース50が設けられている。ブレース50は、例えば鉄骨梁3の中間部と柱梁接合部40とに両端部が接合される。
【0029】
ブレース50の端部は、ジョイントプレート51を介して柱梁接合部40に接合されている。ジョイントプレート51は、梁接合ブラケット32に溶接等によって接合されている。ジョイントプレート51は、その一部が、RC柱2のコンクリート24内に埋設され、残部がRC柱2の外側に露出して設けられている。
【0030】
●柱梁接合部の施工方法
柱梁接合部40を施工するには、まず
図5に示すようにRC柱2を構築する。すなわち、柱主筋21にせん断補強筋22を連結し、柱主筋21の周囲を型枠で囲む。
【0031】
そして柱状部2Cをコンクリート24の打設で形成する。柱状部2Cのコンクリート24は現場打ちしても良いし、予めコンクリート24を成形したプレキャストコンクリート造としてもよい。或いは、梁接合ブラケット32を柱状部2Cのコンクリート24に一体化してプレキャストコンクリート造とすることも可能である。
【0032】
次いで、
図6に示すように塞ぎ鋼板41が溶接された平面視十字状の梁接合ブラケット32を、クレーンで吊り下げて柱主筋21の上端部から挿入する。そして、梁接合ブラケット32の下部フランジ32bを、
図2、
図4のように、柱状部2Cの上端に高さ方向精度を確保して設置されたの型枠MBの上端面に着床させる。
【0033】
最後に、塞ぎ鋼板41の内側に
図2、
図3のようにコンクリート24Jを打設する。打設方法の詳細は、
図8A、
図9A、
図9Bを参照して後述する。
【0034】
塞ぎ鋼板41は、角部41cが直角又は曲面加工された角筒形状体であり、鉄骨梁3のウェブ32cと上下フランジ32a、32bの各々に溶接されている。柱梁接合部40にコンクリート24Jを打設する際、塞ぎ鋼板41が柱梁接合部40の周囲を覆う型枠(支圧板)として機能する。
【0035】
●仕切部材を使用したコンクリートの打設
図6と
図7は、梁接合ブラケット32に塞ぎ鋼板41を溶接した柱梁接合部40の斜視図である。塞ぎ鋼板41の内側のコンクリート打設空間は、梁接合ブラケット32の4つのウェブ32cによって4つの個別打設空間F1-F4に仕切られている。個別打設空間F1-F4の下端部は、
図4の型枠MBの内側を介して相互に連通している。
【0036】
本実施形態の施工方法は、
図8Aのように梁接合ブラケット32の上面に仕切部材90を配設した状態で、作業者Mが4つの個別打設空間F1-F4に順次コンクリートを打設することに特徴がある。打設の順番は、作業性の観点から時計回り又は反時計回りの順番がよいが、任意の順番で打設することも可能である。
【0037】
仕切部材90は4枚の板部材91を有し、これら板部材91を平面視で略十字形に組んで互いに溶接する。仕切部材90の形状は、隣接する個別打設空間F1-F4の上端開口相互間を仕切る形状であって、鉄骨梁の上部フランジ(梁接合ブラケット32の上面)から垂直上方に延びた形状であれば任意の形状でよい。
【0038】
板部材91の上端部に、必要に応じてLEDランプ等の照明手段93を配設することができる。照明手段93によって個別打設空間F1-F4の内部を照射することで、暗い作業環境下であっても個別打設空間F1-F4内のコンクリート打設状態(充填状態)を容易に目視確認することができる。
【0039】
したがって、一人の作業者Mで塞ぎ鋼板41の内側に生コンを隙間なく充填するのが容易になる。生コンの充状態をさらに容易に確認するため、
図4のように塞ぎ鋼板41の上部側面のPで示す位置に、コンクリートが充填されたことが分かるセンサを配置したり貫通孔を形成したりすることができる。従来は、
図2のようにスラブ5によって階の上下が遮られているので、仮に階下に別の作業者を配置し、
図4の隙間G等から漏れ出るコンクリートの有無を階下の作業者が目視確認してコンクリート打設状態(充填状態)を確認するにしても、階上の作業者Mとの連携が非常に困難であった。
【0040】
仕切部材90の溶接側中心には矩形状の縦孔92が形成されている。この縦孔92に、
図8Bのように上部フランジ32aの中央に立設したボルトBを挿入する。
【0041】
これで仕切部材90をボルトBを中心として
図8Aの矢印方向に回転することができる。なお、板部材91の横方向長さは、柱主筋21と干渉しない長さに制限するのがよい。
【0042】
仕切部材90をボルトBを中心として適宜回転させることで、照明手段93の照射方向と照射位置を変更することができる。これにより、個別打設空間F1-F4内のコンクリート打設状態をより詳しく確認することができる。
【0043】
なお、仕切部材90は必ずしも回転可能に配設する必要はない。仕切部材90を個別打設空間F1-F4の上端開口に固定的に係合させる構造も可能である。
【0044】
図8Aのように仕切部材90を所定回転位置に位置決めし、各板部材91によって個別打設空間F1-F4の相互間を仕切る。この状態で、まず個別打設空間F1からコンクリートを打設する。打設時にはバイブレータでコンクリートを加振することでコンクリートの充填性を高める。
【0045】
次に、例えば個別打設空間F2⇒F3⇒F4の順にコンクリートを打設する。コンクリートの打設の順番は、個別打設空間F1⇒F2⇒F4⇒F3のように時計回りとしてもよいし、個別打設空間F1⇒F3⇒F4⇒F2のように反時計回りとしてもよい。仕切部材90はコンクリート打設後に柱状部2Cに埋設することができる。
【0046】
このように、個別打設空間F1-F4の間が板部材91で仕切られているので、作業者Mが持つホースHから大きな脈動で生コンが吐出されても、板部材91を超えて他の打設空間に生コンが入ることがない。したがって、鉄骨梁の上下フランジ32a、32bの下側に空隙が発生するのを抑制することができる。
【0047】
●仕切部材の変形例1
仕切部材90は
図8A、
図8Bに示す形状に限定されない。
図8Cは仕切部材90の変形例1を示す斜視図である。
【0048】
変形例1の仕切部材90はL字状に連結した2枚の板部材91を有する。仕切部材90を90度ずつ回転させて、例えば個別打設空間F1⇒F2⇒F3⇒F4の順にコンクリートを打設することができる。
【0049】
●仕切部材の変形例2
図8Dは仕切部材90の変形例2を示す斜視図である。変形例2の仕切部材90は、L字状に連結した2枚の板部材91と連結板94を有する。2枚の板部材91の下端部には上部フランジ32aの縁に係合させるための係合部95が形成されている。
【0050】
仕切部材90を少し持上げた状態で90度ずつ回転させ、2枚の板部材91の係合部95を個別打設空間F1-F4の上部フランジ32aの縁に係合させる。そして、例えば個別打設空間F1⇒F2⇒F3⇒F4の順にコンクリートを打設することができる。
【0051】
●コンクリート打設状態の変化
個別打設空間F1⇒F2⇒F3⇒F4の順にコンクリートを打設したときのコンクリート打設状態の変化を、
図9A(a)⇒(b)⇒(c)⇒(d)に示す。接合本体部40Aの下端部(下部フランジ32b上)のコンクリート24Jを薄墨で示す。
【0052】
図9Aから分かるように、4つの個別打設空間F1-F4(投入口1-4)に順次コンクリートを打設することで、接合本体部40Aのエアをスムーズに外部に押出すことができる。したがって、
図11のように上下フランジ32a、32bの下側にエア溜まり(空隙)を生ずることなく、接合本体部40Aの全体にコンクリート24Jを満遍なく行き渡らせることができる。
【0053】
図9Bは、
図9A(a)のように個別打設空間F1(投入口1)にコンクリートを投入するときの、投入初期と投入中期のコンクリート24Jの打設状態の変化を示すものである。
図9B(a1)と(b1)に示すように、投入初期に個別打設空間F1(投入口1)の下端部にコンクリート24Jが完全に打設され、一部のコンクリート24Jが個別打設空間F1の下端部の型枠MB内を通して隣接する個別打設空間F2、F3にも流れる。この段階では、個別打設空間F1と対角線で反対側の個別打設空間F4には、まだコンクリート24Jが殆ど流れていない。
【0054】
図9B(a2)と(b2)に示すように、投入中期になるとすべての個別打設空間F1-F4の下端部に型枠MB内を含めてコンクリート24Jが完全に打設される。個別打設空間F1のコンクリート24Jの打設高さは5割程度である。また、隣の個別打設空間F2、F3と対角線反対側の個別打設空間F4のコンクリート24Jの打設高さは約2割である。
【0055】
投入終期では個別打設空間F1のコンクリート24Jの打設高さは100%となり、他の個別打設空間F2-F4のコンクリート24Jの打設高さは5割程度になる。個別打設空間F1のコンクリート24Jの打設が完了すると、他の個別打設空間F2-F4にもF2⇒F3⇒F4の順にコンクリートを打設する。
【0056】
このように個別打設空間F1-F4に順次コンクリートを打設することで、個別打設空間F1-F4のコンクリートの打設高さを段階的ないし漸増的に上昇させることができる。したがって、接合本体部40Aのエアをスムーズに外部に押出すことができる。
【0057】
特に、従来の施工方法でエア溜まりが発生しやすかった上部フランジ32aと下部フランジ32bの下側から効果的にエアを外部に押出すことができ、上部フランジ32aと下部フランジ32bの下側のエア溜まりを抑制することができる。
【0058】
●コンクリートの充填検知用センサ
図10は、塞ぎ鋼板41にコンクリート24Jの充填を検知するセンサS1~S3を取付けた実施形態の立面図である。3つのセンサS1~S3は、塞ぎ鋼板41の高さ方向に低位置、中位置、高位置の順番に等間隔で取付けられている。
【0059】
センサS1~S3は、例えば特許文献2(特開2005-248471号公報)の点灯センサのように、塞ぎ鋼板41の内側に突出させた一対の端子の通電によってコンクリート24Jの充填を検知するものを使用可能である。或いは、センサS1~S3として、例えば特許文献3(特許第6482331号公報)の加速度センサのように、コンクリート打設時の充填性を高めるバイブレータの振動を検知してコンクリート24Jの充填を検知するものを使用可能である。
【0060】
センサS1~S3の数は適宜増減してもよい。
図10の実施形態では低位置のセンサS1が下部フランジ32bの上方に配置され、高位置のセンサ3が上部フランジ32aの下方に配置されている。そして中位置のセンサ2が、上下のセンサ1、3のちょうど中間位置に配置されている。センサS1~S3は、必ずしも複数である必要はなく、例えば中位置のセンサS2又は高位置のセンサS3のいずれか1つがあればよい。
【0061】
一方、仕切部材90の板部材91に横帯状にLEDランプL1~L3が配設されている。これらLEDランプL1~L3は報知手段を構成するもので、ブルーツース(Bluetooth)などの無線を介してセンサS1~S3からの信号を受信して順番に点灯するように構成されている。
【0062】
すなわち、塞ぎ鋼板41の内側のコンクリート24Jの充填高さが低位置のセンサS1を超えると
図10(a)のように一番下のLEDランプL1が最初に点灯し、同様に充填高さが中位置センサS2を超えると
図10(b)のように下から2番目のLEDランプL2も点灯し、充填高さがセンサS3に到達すると
図10(c)のようにすべてのLEDランプL1~L3が点灯するように構成されている。このように、塞ぎ鋼板41の内側のコンクリート24Jの充填高さをセンサS1~S3とLEDランプL1~L3によって視覚的に容易に確認することができるので、作業者Mによるコンクリート打設作業が容易になる。
【0063】
LEDランプL1~L3に代えわる報知手段として、仕切部材90の板部材91にスピーカを取付けてもよい。当該スピーカから、センサS1~S3の検知結果を音響で報知することも可能である。
【0064】
例えば、センサS1~S3が順番に検知するにしたがって、スピーカから発する断続音の間隔を段階的に短くすることができる。或いは、センサS1~S3が順番に検知するにしたがって、スピーカから合成音声で「第1高さ完了」、「第2高さ完了」、「第3高さ完了」のように発声することができる。LEDランプL1~L3やスピーカは、板部材91に対して着脱可能にして再利用をすることも可能である。
【0065】
●まとめ
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、鉄骨梁3が接合される柱部材はRC柱2に限られることはない。
図11(a)に示すように、鉄骨梁(S梁)を鉄骨鉄筋コンクリート柱(SRC柱)に接合する柱梁接合部の施工方法にも本発明を適用可能である。
【0066】
また、
図11(b)に示すようにRC柱の上端にS柱を接続する場合の柱梁接合部の施工方法にも本発明を適用可能である。また、S梁の段差や偏芯がある柱梁接合部の施工方法にも本発明を適用可能である。
【0067】
また、梁接合ブラケット32は、RC柱2が建物1の内部に配置される場合は平面視十字状であるが、RC柱2が建物1の外壁内側に配置される場合は平面視T字状とすることができる。また、RC柱2が建物1の角部に配置される場合は平面視L字状とすることができる。このような平面視T字状、L字状の梁接合ブラケットを有する柱梁接合部においても本発明の施工方法や仕切部材を使用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1:建物 2:RC柱
2C:柱状部 3:鉄骨梁
5:スラブ 21:柱主筋
22:断補強筋 24:コンクリート
24J:コンクリート 31:鉄骨梁本体
31a:上部フランジ 31b:下部フランジ
31c:ウェブ 32:梁接合ブラケット
32a:上部フランジ 32b:下部フランジ
32c:ウェブ 32h:エア抜き孔
34:ジョイントプレート 40:柱梁接合部
40A:接合本体部 41:塞ぎ鋼板
41a:第一面 41b:第二面
41c:角部 42:下部塞ぎ鋼板
43,44:せん断補強筋 45:角形断面柱
50:ブレース 51:ジョイントプレート
80:ナット 81:梁支持部材
90:仕切部材 91:板部材
92:縦孔 93:照明手段
94:連結板 95:係合部
B:ボルト F1-F4:個別打設空間
L1~L3:LEDランプ(報知手段) MB:型枠
S1~S3:センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【文献】特許第7270095号公報
【文献】特開2005-248471号公報(
図2の点灯センサ3)
【文献】特許第6482331号公報(
図2の加速度センサ6)
【要約】
【課題】柱梁接合部のエア溜まりを抑制する。
【解決手段】本発明の柱梁接合部の施工方法は、上部フランジ31aと下部フランジ31bがウェブ31cで連結された鉄骨梁3が柱部材(RC柱2)と交差する部分に配設される柱梁接合部40が、角形断面柱で構成された塞ぎ鋼板41で囲まれると共に、塞ぎ鋼板41の上端開口部から塞ぎ鋼板41の内側に柱部材の一部となるコンクリート24Jが打設される柱梁接合部の施工方法であって、塞ぎ鋼板41の内側のコンクリート打設空間は鉄骨梁(梁接合ブラケット32)のウェブ32cによって複数の個別打設空間F1-F4に仕切られ、隣接する個別打設空間の上端開口相互間に、鉄骨梁(梁接合ブラケット32)の上部フランジ32aから垂直上方に延びた仕切部材90を配設した状態で、複数の個別打設空間F1-F4に順次コンクリート24Jを打設することを特徴とする。
【選択図】
図8A