(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】汚染土壌の洗浄分級処理システム及び汚染土壌の洗浄分級処理方法
(51)【国際特許分類】
B09C 1/02 20060101AFI20240610BHJP
B09C 1/08 20060101ALI20240610BHJP
G21F 9/28 20060101ALI20240610BHJP
G21F 9/30 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
B09C1/02 ZAB
B09C1/08
G21F9/28 Z
G21F9/30 531M
(21)【出願番号】P 2020057013
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-02-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】土田 充
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-103989(JP,A)
【文献】特開2020-025930(JP,A)
【文献】特開2006-116397(JP,A)
【文献】特開2013-178148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09C 1/00- 1/10
G21F 9/28- 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を添加した汚染土壌を解砕する解砕機と、
解砕した前記汚染土壌と前記水との混合物を分級処理し、礫を分離したスラリー状の土砂とする湿式ふるい機と、
前記スラリー状の土砂を、砂分と細粒子分とに分級処理する分級機と、
前記分級機の前段に設けられ、前記湿式ふるい機で得られた前記スラリー状の土砂を前記分級機に送液する2個以上の中継槽(但し、洗浄水及び汚染砂の混合物を吸引し、圧縮空気とともにジェット状に噴射して板状部材に衝突させて汚染砂から粘土分を剥離する粘土分剥離装置を除く)と、
前記中継槽の前段に設けられ、前記汚染土壌に陽イオンを添加する第2陽イオン添加機と、を備え、
前記中継槽が直列に配置さ
れ、
前記解砕機の前段に、前記水を添加した汚染土壌に陽イオンを添加する第1陽イオン添加機を有する、汚染土壌の洗浄分級処理システム。
【請求項2】
水を添加した汚染土壌を解砕する第1工程と、
解砕した前記汚染土壌と前記水との混合物を分級処理し、礫を分離したスラリー状の土砂とする第2工程と、
前記スラリー状の土砂を、砂分と細粒子分とに分級処理する第3工程と、
前記第3工程までに、前記第2工程で得られた前記スラリー状の土砂を中継槽(但し、洗浄水及び汚染砂の混合物を吸引し、圧縮空気とともにジェット状に噴射して板状部材に衝突させて汚染砂から粘土分を剥離する粘土分剥離装置を除く)で2回以上送液する第4工程と、
前記第4工程までに、前記汚染土壌に陽イオンを添加する第5工程と、
前記第1工程の前段に、前記水を添加した汚染土壌に陽イオンを添加する第5a工程と、を有する、汚染土壌の洗浄分級処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染土壌の洗浄分級処理システム及び汚染土壌の洗浄分級処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重金属汚染土壌を分級処理する場合、通常、原土に加水して、原土をスラリー状にした後、そのスラリー状の原土を解砕機により解砕する。その後、湿式ふるい機にて解砕した原土をふるい分けし、「礫(径2mm超)」と「砂(径0.075mm超2mm以下)と細粒子分(径0.075mm以下のシルトと粘土)との混合物」に分別(以下、「分級」という。)する。さらに、砂と細粒子分との混合物の分級には、一般的に、湿式サイクロンやハイメッシュセパレータ等の従前から広く使われている分級機を使用する。
【0003】
放射能汚染土壌を分級処理する場合には、上記の重金属汚染土壌を分級処理する場合の処理フローだけでは、充分な処理が困難である。放射能汚染土壌には、改質材が添加され、その改質材中には吸水ポリマー等が混在している場合が多い。この吸水ポリマー等が原因で、分級処理に際して、砂分中の細粒子分の含有率が高くなると推測される。砂分中の細粒子分の含有率が高くなると、砂表面に細粒子分が固着するため、あるいは、充分な解砕がなされず粘土塊が残存するため、除染率が低下する。なぜならば、細粒子分は放射能濃度が非常に高いからである。なお、除染率は、除染前の放射能濃度と除染後の放射能濃度との差を除染前の放射能濃度で除することにより求められる。例えば、原土の放射能濃度が1万Bq/kgであり、分級処理後の砂の放射能濃度が1千Bq/kgである場合、除染率は90%となる。
【0004】
分級処理の対象となる放射能汚染土壌に改質材が混在するのは、その放射能汚染土壌のほとんどが、中間貯蔵施設用地内にある受入・分別処理施設で径20mm以下に分級処理されたものとなることに起因する。分級処理において、ふるいの目詰まりが生じないように、放射能汚染土壌には、改質材が添加されている。
【0005】
例えば、放射能汚染土壌として除去された除去土壌は、大型土のう袋に収納され、仮置き場で保管され、順次、各仮置き場から、受入・分別処理施設に搬入される。受入・分別処理施設に搬入された大型土のう袋は、破袋され、内容物である除去土壌が取り出される。その後、除去土壌は、径100mm超過、径20mm超100mm以下、径20mm以下に分別される。この分別を適切に機能させるために、受入・分別処理施設では、改質材を添加している。従って、分級処理の対象となる放射能汚染土壌には、改質材が混入することになる。
【0006】
従来技術では、改質材が混入した放射能汚染土壌から細粒子分を充分に除去できないという課題がある。このような課題を解決する方法としては、例えば、従来技術の分級機の後段に、砂分表面から細粒子分を除去することができる機器(アトリッションスクラバー、フローテーション等。以下、「高度分級機」とする。)を配置して処理する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の高度分級機を用いた分級処理は、イニシャルコスト及びランニングコストがかかる分、処理費用が高くなる。従って、安価な費用で、砂分中から細粒子分を除去することで放射能濃度を低下させ(除染率を向上させ)、高度分級機による分級処理を必要とする砂の量を少なくする方法が求められている。すなわち、「高度分級機による分級処理よりも安価な方法で、砂分表面に固着した細粒子分を除去し、除染率を改善し、高度分級機で分級処理する必要のある土砂の量を減らすこと」が重要となる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、除染率を高められる汚染土壌の洗浄分級処理システム及び汚染土壌の洗浄分級処理方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る汚染土壌の洗浄分級処理システムは、水を添加した汚染土壌を解砕する解砕機と、解砕した前記汚染土壌と前記水との混合物を分級処理し、礫を分離したスラリー状の土砂とする湿式ふるい機と、前記スラリー状の土砂を、砂分と細粒子分とに分級処理する分級機と、前記分級機の前段に設けられ、前記湿式ふるい機で得られた前記スラリー状の土砂を前記分級機に送液する2個以上の中継槽と、前記中継槽の前段に設けられ、前記汚染土壌に陽イオンを添加する陽イオン添加機と、を備え、前記中継槽は直列に配置される。
【0011】
本発明に係る汚染土壌の洗浄分級処理システムによれば、中継槽よりも前段にイオン添加機を配置し、さらに、分級機よりも前段に2個以上の中継槽を直列に配置し、中継槽でスラリー状の土砂を分級機に送液する前に、汚染土壌に陽イオンを添加して、砂分に対する細粒子分の密着力を低下させるとともに、スラリー状の土砂に剪断力を付与しながら分級機に送液することにより、砂分の表面に固着した細粒子分を効率的に剥がすことができる。加えて、未解砕の粘土塊を解砕することができる。このため、得られる砂分の除染率を高めることができる。その結果、高度分級機で分級処理する必要のある土砂の量を減らすことができる。
【0012】
また、本発明に係る汚染土壌の洗浄分級処理方法は、水を添加した汚染土壌を解砕する第1工程と、解砕した前記汚染土壌と前記水との混合物を分級処理し、礫を分離したスラリー状の土砂とする第2工程と、前記スラリー状の土砂を、砂分と細粒子分とに分級処理する第3工程と、前記第3工程までに、前記第2工程で得られた前記スラリー状の土砂を中継槽で2回以上送液する第4工程と、前記第4工程までに、前記汚染土壌に陽イオンを添加する第5工程と、を有する。
【0013】
本発明に係る汚染土壌の洗浄分級処理方法によれば、第3工程までに第4工程を設け、さらに、第4工程までに第5工程を設け、中継槽でスラリー状の土砂を分級機に送液する前に、汚染土壌に陽イオンを添加して、砂分に対する細粒子分の密着力を低下させるとともに、スラリー状の土砂に剪断力を付与しながら分級機に送液することにより、砂分の表面に固着した細粒子分を効率的に剥がすことができる。加えて、未解砕の粘土塊を解砕することができる。このため、得られる砂分の除染率を高めることができる。その結果、高度分級機で分級処理する必要のある土砂の量を減らすことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、得られる砂分の除染率を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態による汚染土壌の洗浄分級処理システムの一例を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態による汚染土壌の洗浄分級処理方法の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[汚染土壌の洗浄分級処理システム]
本発明の汚染土壌の洗浄分級処理システム(以下、「洗浄分級処理システム」と略す。)は、解砕機と、湿式ふるい機と、分級機と、直列に配置された2個以上の中継槽と、陽イオン添加機とを備える。以下、本発明の洗浄分級処理システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1の洗浄分級処理システム1は、供給源100と、解砕機10と、湿式ふるい機20と、第1中継槽41と、第2中継槽42と、分級機30と、凝集沈殿装置60と、加圧式濾過装置70と、をこの順に備える。第1中継槽41と、第2中継槽42とは、直列に配置されている。洗浄分級処理システム1は、解砕機10の前段に汚染土壌に陽イオンを添加する第1陽イオン添加機51を備える。洗浄分級処理システム1は、湿式ふるい機20の後段、かつ、第1中継槽41の前段に、汚染土壌に陽イオンを添加する第2陽イオン添加機52を備える。
【0018】
本実施形態の洗浄分級処理システム1は、セシウム等の放射性物質により汚染された汚染土壌A1を洗浄分級するシステムである。
本実施形態では、供給源100から搬送された汚染土壌A1は、受入・分別処理施設(前処理施設)で粒径別、濃度別に分別された後に洗浄分級施設において洗浄分級され、放射能濃度が8000Bq/kg以下の土壌とされ、放射能濃度が8000Bq/kgを超える汚染土壌とに分別される。
【0019】
受入・分別処理施設では、ふるいによって原土を粒径別に分別している。このとき、ふるいの目詰まりを防止するために原土に吸水性高分子ポリマー等を含む改質材を投入している。このため。本実施形態の洗浄分級処理システム1において洗浄分級される汚染土壌A1には、吸水性高分子ポリマー等を含む改質材が含まれている。また、本実施形態の洗浄分級処理システム1では、汚染土壌A1としては、受入・分別処理施設にて分別された径20mm以下のものを処理対象とする。
【0020】
(供給源100)
供給源100は、受入・分別処理施設で分別された汚染土壌A1を解砕機10に供給する。供給源100としては、特に限定されず、例えば、汚染土壌A1を運搬する輸送車両や、輸送機等が挙げられる。
【0021】
(第1陽イオン添加機51)
第1陽イオン添加機51は、水を添加した汚染土壌A1に陽イオンIを添加する。第1陽イオン添加機51は、解砕機10よりも前段(供給源100側)で汚染土壌A1に陽イオンIを添加する。第1陽イオン添加機51としては、特に限定されず、陽イオンIを含有する薬剤を収容する容器等が挙げられる。
第1陽イオン添加機51は、解砕機10にて汚染土壌A1を解砕する直前に、汚染土壌A1に陽イオンIを添加して、砂分A5に対する細粒子分A6の密着力を低下させる。
細粒子分A6は、放射能濃度が高いため、砂分A5から細粒子分A6を剥がすことで、砂分A5の除染率を高めることができる。
【0022】
陽イオンIとしては、2価の陽イオンでもよいし、1価の陽イオンでもよいが、汚染土壌A1に含まれる改質材を無力化しやすいことから、2価の陽イオンが好ましい。2価の陽イオンとしては、マグネシウムイオン、カルシウムイオン等のアルカリ土類金属のイオンが挙げられる。1価の陽イオンとしては、カリウムイオン、ナトリウムイオン等のアルカリ金属のイオンが挙げられる。
陽イオンIを含む陽イオン源としては、例えば、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等の薬剤が挙げられる。
【0023】
(解砕機10)
解砕機10は、水W及び陽イオンIを添加した汚染土壌A1を解砕して、汚染土壌A1の解砕物と水Wとの混合物A2とする装置である。汚染土壌A1の解砕物は、礫A3(径2mm超)と、砂分A5(径0.075mm超2mm以下)と、細粒子分A6(径0.075mm以下のシルトと粘土)とを含む。
解砕機10としては、特に限定されず、例えば、水W及び陽イオンIの存在下にて、塊になった汚染土壌A1を砕くことができればよく、従来公知の解砕機等が挙げられる。
【0024】
(湿式ふるい機20)
湿式ふるい機20は、汚染土壌A1の解砕物と水Wとの混合物A2を分級処理し、礫A3を分離したスラリー状の土砂A4とする装置である。このスラリー状の土砂A4には、汚染土壌A1の解砕物の一部が含まれる。即ち、スラリー状の土砂A4には、汚染土壌A1が含まれる。湿式ふるい機20としては、異物を選別して、礫・粗砂等の礫A3とそれ以外のスラリー状の土砂A4とに分級することができる装置であれば特に限定されないが、例えば、振動ふるい機が挙げられる。湿式ふるい機20は、内部に網面を備える。
【0025】
(第2陽イオン添加機52)
第2陽イオン添加機52は、第1中継槽41の前段(湿式ふるい機20の後段)で、スラリー状の土砂A4に陽イオンIを添加する。第2陽イオン添加機52を備えることで、除染率をさらに高めることができる。
このように、洗浄分級処理システムは、第2陽イオン添加機52を備えることが好ましい。
【0026】
第2陽イオン添加機52は、第1陽イオン添加機51と同様である。
第2陽イオン添加機52からスラリー状の土砂A4に添加する陽イオンIは、第1陽イオン添加機51から添加する陽イオンIと同様である。
第2陽イオン添加機52からスラリー状の土砂A4に添加する陽イオン源としては、第1陽イオン添加機51から汚染土壌A1に添加する陽イオン源と同様の薬剤が挙げられる。
【0027】
(第1中継槽41)
第1中継槽41としては、送液機を有する水槽等が挙げられる。送液機としては、スラリー状の土砂A4を水Wとともに吸い上げるサンドポンプ等が挙げられる。水槽としては、スラリー状の土砂A4を貯留できれば特に限定されず、例えば、コンクリート製の容器等が挙げられる。
【0028】
(第2中継槽42)
第2中継槽42としては、第1中継槽41と同様の水槽等が挙げられる。
【0029】
本実施形態の中継槽は、第1中継槽41と第2中継槽42とが直列に配置されて構成される。このように中継槽を多段階で構成することにより、スラリー状の土砂A4がより充分に撹拌され、砂分A5の表面から、より多くの細粒子分A6を剥がすことができる。このため、砂分A5の除染率をより高めることができる。
【0030】
中継槽の数は2個以上であればよく、例えば、2個~10個が好ましく、3個~8個がより好ましい。中継槽の数が上記下限値以上であると、砂分A5の除染率をより高められる。中継槽の数が上記上限値以下であると、洗浄分級処理システムをコンパクトにしやすく、コスト面で有利である。なお、中継槽が無い場合や、中継槽の数が1個の場合は、除染率を充分に高められないおそれがある。
【0031】
(分級機30)
分級機30は、スラリー状の土砂A4を、砂分A5と細粒子分A6とに分級処理する。分級機30としては、特に限定されず、例えば、沈降分離式分級機や、遠心分離式湿式分級機等が挙げられる。沈降分離式分級機は、スラリー状の土砂A4内に上昇流を発生させ、早く沈む成分を砂分A5、遅く沈む成分を細粒子分A6とする。遠心分離式湿式分級機は、例えば、円筒状に形成されるとともに、その底部が円錐形状に形成された容器からなり、スラリー状の土砂A4を導入する上部流入口と、アンダーフローを取り出す下部流出口と、オーバーフローを取り出す上部流出口とを備えている。上部流入口から入ったスラリー状の土砂A4は、円筒容器の円周方向に高速で供給されることにより、回転運動を起こし、回転流となって、円錐頂部に向かって進む。この時、スラリー状の土砂A4中の比重の重い粒子は遠心力により周壁に集まり、次第にアンダーフロー出口(下部流出口)に向かい、濃縮して排出される。一方、液体と比重の軽い粒子は、円筒容器の中央部を渦流となって上昇し、オーバーフロー出口(上部流出口)から排出される。
【0032】
(凝集沈殿装置60)
凝集沈殿装置60は、分級機30で分級処理した細粒子分A6を凝集沈殿させて第1処理水TW1と沈殿汚泥A7とに分離する。凝集沈殿装置60としては、細粒子分A6を含む懸濁水に凝集剤を添加、撹拌し、懸濁水中の微細な浮遊物を大きな沈殿汚泥A7として沈殿させ、清澄な第1処理水TW1と沈殿汚泥A7とに分離することができる装置であれば、特に限定されない。
【0033】
(加圧式濾過装置70)
加圧式濾過装置70は、沈殿汚泥A7を脱水処理して第2処理水TW2と濃縮残渣A8とに分離する。加圧式濾過装置70としては、例えば、公知の加圧式濾過装置(ベルトプレスやフィルタープレス)等であり、濾布等からなるフィルターとプレス機を備えたもの等が挙げられる。
【0034】
[汚染土壌の洗浄分級処理方法]
本発明の汚染土壌の洗浄分級処理方法(以下、「洗浄分級処理方法」と略す。)は、水を添加した汚染土壌を解砕する第1工程と、解砕した汚染土壌と水との混合物を分級処理し、礫を分離したスラリー状の土砂とする第2工程と、スラリー状の土砂を、砂分と細粒子分とに分級処理する第3工程と、第3工程までに、第2工程で得られたスラリー状の土砂を中継槽で2回以上送液する第4工程と、第4工程までに、汚染土壌に陽イオンを添加する第5工程とを有する。
本実施形態の洗浄分級処理方法について、洗浄分級処理システム1を用いた洗浄分級処理方法を例にして説明する。
【0035】
図2に示すように、本実施形態による洗浄分級処理方法は、汚染土壌A1を解砕する第1工程S1と、汚染土壌A1と水Wとの混合物A2を湿式ふるい機20で分級処理し、礫A3を分離したスラリー状の土砂A4とする第2工程S2と、スラリー状の土砂A4を、砂分A5と細粒子分A6とに分級処理する第3工程S3と、第3工程S3の前に、第2工程S2で得られたスラリー状の土砂A4を第1中継槽41で送液する第4a工程S4aと、第3工程S3の前に、第4a工程S4aで得られたスラリー状の土砂A4を第2中継槽42で送液する第4b工程S4bと、第1工程S1の前に、汚染土壌A1に陽イオンIを添加する第5a工程S5aと、第4a工程S4aの前に、汚染土壌A1に陽イオンIを添加する第5b工程S5bと、細粒子分A6を凝集沈殿させて第1処理水TW1と沈殿汚泥A7とに分離する第6工程S6と、沈殿汚泥A7を脱水処理して第2処理水TW2と濃縮残渣A8とに分離する第7工程S7と、を有する。
【0036】
本実施形態の洗浄分級処理方法では、まず、汚染土壌A1の重量、粒径、放射能濃度等に応じて算出された量の水Wを汚染土壌A1に添加する。水Wの添加量は、汚染土壌A1の重量に対して、例えば、3倍~10倍の重量が好ましい。水Wの添加量が上記下限値以上であると、汚染土壌A1を洗浄しやすい。水Wの添加量が上記上限値以下であると、洗浄分級処理システム1をコンパクトにしやすい。
【0037】
(第5a工程)
まず、第5a工程S5aで、水Wを添加した汚染土壌A1に陽イオンIを添加する。第1工程S1で汚染土壌A1を解砕する前に、汚染土壌A1に陽イオンIを添加して、砂分A5に対する細粒子分A6の密着力を低下させる。
【0038】
(第1工程)
第1工程S1では、所定量の水W及び陽イオンIを添加した汚染土壌A1を、解砕機10で解砕する。汚染土壌A1を、解砕機10で解砕することにより、汚染土壌A1を砕いて、汚染土壌A1の解砕物と水Wとの混合物A2が得られる。この際、汚染土壌A1に陽イオンIが添加されているため、砂分A5に対する細粒子分A6の密着力が低下して、砂分A5と細粒子分A6とが分離しやすくなる。
【0039】
(第2工程)
第2工程S2では、第1工程S1で得られた、汚染土壌A1の解砕物と水Wとの混合物A2を湿式ふるい機20でふるい分けし、汚染土壌A1の解砕物と水Wとの混合物A2に含まれる異物を選別して、礫A3(例えば、有機物)等とそれ以外のスラリー状の土砂A4とに分級する。礫A3等を分離して除去しておくことにより、第4a工程S4a以降での処理効率を向上できる。
【0040】
(第5b工程)
第5b工程S5bでは、第2工程S2で得られたスラリー状の土砂A4に、陽イオンIを添加する。スラリー状の土砂A4には、汚染土壌A1が含まれているため、第5b工程S5bでは、汚染土壌A1に陽イオンIが添加されることとなる。第5b工程S5bを備えることで、砂分A5に対する細粒子分A6の密着力が低下して、本工程以降において、砂分A5から細粒子分A6を分離しやすくなる。
【0041】
(第4a工程)
第4a工程S4aでは、第5b工程S5bを経たスラリー状の土砂A4をサンドポンプで水槽へ送液し、水槽内でスラリー状の土砂A4を撹拌する。スラリー状の土砂A4は、サンドポンプ内の乱流によって加えられる剪断力と、水槽内で撹拌されることにより加えられる剪断力とにより、砂分A5の表面に固着した細粒子分A6を効率的に剥がすことができる。
【0042】
(第4b工程)
第4b工程S4bでは、第4a工程S4aを経たスラリー状の土砂A4をサンドポンプで水槽へ送液し、水槽内でスラリー状の土砂A4を撹拌する。スラリー状の土砂A4は、サンドポンプ内の乱流によって加えられる剪断力と、水槽内で撹拌されることにより加えられる剪断力とにより、砂分A5の表面に固着した細粒子分A6を効率的に剥がすことができる。
【0043】
後述する第3工程S3で、砂分A5の表面から細粒子分A6をより剥がしやすくする観点から、洗浄分級処理方法は、第4工程を2回以上行う。第4工程の回数は、例えば、2回~10回が好ましく、3回~8回がより好ましい。第4工程の回数が上記下限値以上であると、除染率をより高められる。第4工程の回数が上記上限値以下であると、洗浄分級処理システムをコンパクトにしやすく、コスト面で有利である。なお、第4工程が無い場合や、第4工程の数が1回の場合は、除染率を充分に高められないおそれがある。
【0044】
(第3工程)
第3工程S3では、第4b工程S4bでサンドポンプで送液され、撹拌されたスラリー状の土砂A4を分級処理して、砂分A5と細粒子分A6とに分ける。このとき砂分A5及び細粒子分A6には、放射性物質が含まれている。
そして、放射性物質は細粒子分A6に多く付着、吸着しているため、第3工程S3で分級処理して、細粒子分A6を除去することで、多くの放射性物質を洗浄処理土から除去できる。この分級の処理回数は、1回以上であればよく、2回以上行ってもよい。
【0045】
(第6工程)
第6工程S6では、凝集沈殿装置60を用いて、第3工程S3で分級処理した細粒子分A6を含む懸濁水に凝集剤を添加、撹拌し、懸濁水中の微細な浮遊物を大きな沈殿汚泥A7として沈殿させ、清澄な第1処理水TW1と沈殿汚泥A7とに分離する。このとき、細粒子分A6が放射性物質(処理溶液中の放射性セシウム等)を吸着し、凝集沈殿により沈殿汚泥A7となる。第1処理水TW1は、適宜適切な処理を施された後、水Wとして再利用可能である。
【0046】
(第7工程)
第7工程S7では、加圧式濾過装置70を用いて、沈殿汚泥A7を脱水処理して第2処理水TW2と濃縮残渣A8とに分離する。第2処理水TW2は、適宜適切な処理を施された後、水Wとして再利用可能である。濃縮残渣A8は、熱処理や化学処理を行う熱処理施設等や最終処分場にて処分される。
【0047】
本実施形態の洗浄分級処理システム1によれば、第1中継槽41及び第2中継槽42を備えるため、サンドポンプによる剪断力と、水槽内での撹拌力によって、砂分A5に固着した細粒子分A6をより剥がしやすくできる。
本実施形態の洗浄分級処理システム1によれば、第1陽イオン添加機51及び第2陽イオン添加機52を備えるため、砂分A5に固着した細粒子分A6をより剥がしやすくできる。
【0048】
本実施形態の汚染土壌の洗浄分級処理方法によれば、第4a工程S4a及び第4b工程S4bを有するため、サンドポンプによる剪断力と、水槽内での撹拌力によって、砂分A5に固着した細粒子分A6をより剥がしやすくできる。
本実施形態の汚染土壌の洗浄分級処理方法によれば、第5a工程S5a及び第5b工程S5bを有するため、砂分A5に固着した細粒子分A6をより剥がしやすくできる。
【0049】
以上、本発明の汚染土壌の洗浄分級処理システム及び汚染土壌の洗浄分級処理方法について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
洗浄分級処理システム1は、2個の中継槽、第1中継槽41及び第2中継槽42を備える。しかし、本発明の洗浄分級処理システムは、中継槽を3個以上備えていてもよい。
洗浄分級処理システム1は、第1陽イオン添加機51と第2陽イオン添加機52とを備える。しかし、本発明の洗浄分級処理システムは、第1中継槽41の前段に陽イオン添加機が設けられていればよく、第1陽イオン添加機51及び第2陽イオン添加機52のいずれか一方のみでもよく、湿式ふるい機20の後段に陽イオン添加機が設けられていてもよい。ただし、より多くの細粒子分を砂分から剥がすことができることから、洗浄分級処理システムは、第1中継槽41の前段に陽イオン添加機を備えることが好ましく、第1陽イオン添加機51と第2陽イオン添加機52とを備えることがより好ましい。
処理対象とする汚染土壌A1に改質材が含まれていれば、重金属汚染の場合においても本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…汚染土壌の洗浄分級処理システム、10…解砕機、20…湿式ふるい機、30…分級機、41…第1中継槽、42…第2中継槽、51…第1陽イオン添加機、52…第2陽イオン添加機、60…凝集沈殿装置、70…加圧式濾過装置、100…供給源、W…水、A1…汚染土壌、A2…汚染土壌の解砕物と水との混合物、A3…礫、A4…スラリー状の土砂、A5…砂分、A6…細粒子分、A7…沈殿汚泥、A8…濃縮残渣、I…陽イオン、TW1…第1処理水、TW2…第2処理水、S1…第1工程、S2…第2工程、S3…第3工程、S4a…第4a工程、S4b…第4b工程、S5a…第5a工程、S5b…第5b工程、S6…第6工程、S7…第7工程