(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】自閉スペクトラム症の児童用上肢コントロール訓練器具
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20240610BHJP
A63B 23/00 20060101ALN20240610BHJP
A63B 23/12 20060101ALN20240610BHJP
A63B 24/00 20060101ALN20240610BHJP
A63B 43/00 20060101ALN20240610BHJP
A63B 43/06 20060101ALN20240610BHJP
G09B 19/00 20060101ALN20240610BHJP
G09B 5/06 20060101ALN20240610BHJP
【FI】
A61H1/02 K
A63B23/00 L
A63B23/12
A63B24/00
A63B43/00 A
A63B43/00 B
A63B43/06 Z
G09B19/00 Z
G09B5/06
(21)【出願番号】P 2022016775
(22)【出願日】2022-02-05
【審査請求日】2022-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】521050236
【氏名又は名称】宮田 淳子
(74)【代理人】
【識別番号】100203530
【氏名又は名称】眞下 寛治
(72)【発明者】
【氏名】宮田 淳子
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第2823761(EP,A1)
【文献】特開2006-263005(JP,A)
【文献】特開2005-279192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
A63B 23/00
A63B 23/12
A63B 24/00
A63B 43/00
A63B 43/06
G09B 19/00
G09B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材料で作られた、直径100 mmから200 mmの略球体からなる、複数の接触体であって、前記接触体は接触時の跳ね方を変化させるために三角突起を表面全体に有するもの、又は丘状突起を有するものと、
前記接触体を固定して支持する接触体保持手段と、
前記接触体の内部にある発光手段と、
前記発光手段を制御するコントロール部とを有する
自閉スペクトラム症の児童用上肢コントロール訓練器具。
【請求項2】
弾性材料で作られた、直径100 mmから200 mmの略球体からなる、複数の接触体であって、吸盤を前記接触体の表面全体に有するものと、
前記接触体を固定して支持する接触体保持手段と、
前記接触体の内部にある発光手段と、
前記発光手段を制御するコントロール部とを有する
自閉スペクトラム症の児童用上肢コントロール訓練器具。
【請求項3】
弾性材料で作られた、直径100 mmから200 mmの略球体からなる、複数の接触体であって、前記接触体は接触時の跳ね方を変化させるために三角突起を表面全体に有するもの、若しくは丘状突起を有するもの、又は、吸盤を前記接触体の表面全体に有するものと、
バネその他の弾性体を介して
前記接触体を固定して支持する接触体保持手段
と、
前記接触体の内部にある発光手段と、
前記発光手段を制御するコントロール部とを有する
自閉スペクトラム症の児童用上肢コントロール訓練器具。
【請求項4】
弾性材料で作られた、直径100 mmから200 mmの略球体からなる、複数の接触体であって、前記接触体は接触時の跳ね方を変化させるために三角突起を表面全体に有するもの、若しくは丘状突起を有するもの、又は、吸盤を前記接触体の表面全体に有するものと、
バネを介して
前記接触体を吊り下げて固定して支持する支持手段
と、
前記接触体の内部にある発光手段と、
前記発光手段を制御するコントロール部とを有する
自閉スペクトラム症の児童用上肢コントロール訓練器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自閉スペクトラム症(以下、「自閉症」という。)の児童の上肢コントロールの訓練器具に関する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
自閉症児に「不器用さ」や「ぎこちなさ」を持つ事が知られている。これらは、バランスや姿勢制御,ボール遊びや縄跳びが苦手といった学校生活を含めた様々な生活場面に影響を与える。運動が苦手である事は、本人の自尊心低下や集団からの孤立など、二次的な心理社会的問題の生起に繋がることもあるとされる。このため自閉症児用の上肢コントロールの訓練器具が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】自閉症障害のある児童生徒の教育に関する研究,第6巻,67-74,2003.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1では、自閉症ユーザの目の動きを追跡し、目の動きの傾向に基づいてユーザの習得すべき技能を決定し、トレーニング内容を決定することにより、自閉症治療を支援するとしている。
前記非特許文献1では、小学校に在籍する、協応性に困難を示すと考えられた自閉症児9名を対象にして運動面に関する14項目について運動支援をして評価している。
その結果、全体的な運動面の向上が示されたこと、運動の協応性や物的な操作性が個別的に向上していくことが示されたことを報告している。しかし、一度獲得された運動技能でも技能の活用が充分されないと運動技能の恒久的な確率に至らないことも報告している。
【0006】
自閉症児は腕上げなどの運動を継続する必要があり、遊び感覚で上肢コントロールの訓練する器具が望まれている。特に自閉スペクトラム症の児童に適した上肢コントロール訓練器具が存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
弾性材料で作られた、直径100 mmから200 mmの略球体からなる、複数の接触体と、
前記接触体を保持する接触体保持手段と、
前記接触体の内部にある発光手段と、
前記発光手段を制御するコントロール部とを有する
自閉症児用上肢コントロール訓練器具によって課題を解決する。
【0008】
表面の全面あるいは一部に突起を有する接触体を用いる前記上肢コントロール訓練器具によって解決する。
【0009】
表面の全面あるいは一部に吸盤を有する接触体を用いる前記上肢コントロール訓練器具によって解決する。
【0010】
接触体を固定して支持する支持手段を用いる前記上肢コントロール訓練器具によって解決する。
【0011】
バネその他の弾性体を介して接触体を固定して支持する支持手段を用いる前記上肢コントロール訓練器具によって解決する。
【0012】
接触体を吊り下げて固定して支持する支持手段を用いる前記上肢コントロール訓練器具によって解決する。
【0013】
ドラムセットのドラム及びシンバルの位置のように接触体を配置するドラムタイプの接触保持手段を用いる前記上肢コントロール訓練器具によって解決する。
【0014】
水平面に対して角度を有する略平面上に、接触体を配置するパネルタイプの接触体保持手段を用いる前記上肢コントロール訓練器具によって解決する。
【0015】
訓練意欲を増進するための効果音を発生する音響手段を備える前記上肢コントロール訓練器具によって解決する。
【0016】
訓練意欲を増進するために、発光手段の発光時間間隔の可変機能、又は効果音の種類の選択、効果音の音量調節の機能を備えたコントロール部を用いる前記上肢コントロール訓練器具によって解決する。
【発明の効果】
【0017】
自閉症児が、遊び感覚で、訓練に対する拒否的な抵抗や情動的な興奮なしに、バランスや姿勢制御などの協調運動が向上できる、自閉スペクトラム症の児童に適した上肢コントロール訓練器具を実現できた。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ドラムセットのドラム及びシンバルの位置のように、複数の接触体を配置するドラムタイプの接触体保持手段を用いる上肢コントロール訓練器具の説明図
【
図2】略平面上に複数の接触体を配置するパネルタイプの接触体保持手段を用いる上肢コントロール訓練器具の説明図(平面図)
【
図3】略平面上に複数の接触体を配置するパネルタイプの接触体保持手段を用いる上肢コントロール訓練器具の説明図(正面図)
【
図4】略平面上に複数の接触体を配置するパネルタイプの接触体保持手段を用いる上肢コントロール訓練器具の説明図(側面図)
【
図6】三角突起の説明図(a)及び該突起を表面全体に有する接触体の説明図(b)
【
図7】接触体の表面につける低い丘状突起の説明図(a)及び該丘状突起を表面全体に有する接触体の説明図(b)
【
図8】接触体の表面につける高い丘状突起の説明図(a)及び該丘状突起を表面全面に有する接触体の説明図(b)
【
図9】吸盤を有する接触体の説明図(a)、吸盤を全面に有する接触体の説明図(b)、及び吸盤を表面の一部に有する接触体の説明図(c)
【
図10】接触体を固定して支持する支持手段の説明図
【
図11】バネその他の弾性体を介して接触体を固定して支持する支持手段の説明図
【
図12】接触体を吊り下げて固定して支持する支持手段の説明図
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、添付の図面を参照しながら実施例により本発明の実施の形態について詳しく説明する。添付の図面は1つの実施例であって発明はこれらに限られない。
【実施例】
【0020】
図1は、ドラムセットのドラム及びシンバルの位置に接触体を配置するドラムタイプの接触体保持手段を用いる上肢コントロール訓練器具1の説明図である。図において直径100mm~200mmの大きさの7個の略球体からなる接触体2~8が配置されている。前記接触体2~8はゴム、ウレタンその他の弾性材料から作られており、触れると柔らかな感触が得られる。前記7個の接触体2~8の中にはLEDその他の発光手段(図示していない。)が設置されており、前記発光手段はコントロール部9のコントロールによりランダムにそれぞれ別の色に発光する。これらの色は、例えば虹の色、赤色、橙色、黄色、緑色、青色、藍色、紫色である。なお、接触体は7個に限定されず、もっと多くても少なくてもよい。略球体の個数に応じて発光する光の数も増減する。
【0021】
自閉症児は、コントロール部9の機能により発光した前記接触体に触れる(以下、「タッチ」という。)。前記コントロール部9と前記接触体内の前記発光手段とは、有線又は無線により接続されている。前記接触体はタッチを感知すると、コントローラ部9は効果音を出す。発光した接触体に正確にタッチした数により、点数を表示するようにしてもよい。
【0022】
前記接触体保持手段10の支持フレームは、前記接触体2~8、及びコントロール部9を取り外すと、折りたたむことができる。なお、記載されている寸法は一例であって、これより大きくても小さくてもよい。また、高さを低くして、座位でタッチするようにすることもできる。
【0023】
図2から
図4は、略平面上に接触体を配置するパネルタイプの接触体保持手段11を用いる上肢コントロール訓練器具である。配置以外については、前記ドラムタイプの上肢コントロール訓練器具と同様である。図に記載の寸法は一例であって、この寸法に限定されない。
【0024】
図5から
図9により、前記上肢コントロール訓練器具に使用する接触体を説明する。
図5は、ゴム、ウレタンその他の弾性材料から作られている接触体を示す。
図6(a)は、三角突起の説明図である。
図6(b)は、該三角突起を表面全体に有する接触体の説明図である。
図7(a)は、低い丘状の突起の説明図である。
図7(b)は、該低い丘状突起を表面全体に有する接触体の説明図である。図に記載の寸法は一例であって、この寸法に限定されない。自閉症児に使用していただいたところ、
図6の三角突起や
図7の丘状突起がある方が、突起がない接触体より跳ね方が変化しておもしろいという結果であった。
図8(a)は、高い丘状の突起の説明図である。
図8(b)は、該高い丘状突起を表面全体に有する略球体の説明図である。図に記載の寸法は一例であって、この寸法に限定されない。
【0025】
図9(a)は、直径1cmから5cmの吸盤を表面全体に有する接触体の説明図である。図において白い色で塗りつぶされている部分がそれぞれ円形の吸盤を表している。
図9(b)は、吸盤を持つラッパ状の部品を集合させて全体として接触体を形成している例を示す。
図9(c)は、サッカーボールの五角形の位置に図示していない吸盤を配置する接触体の説明図である。
【0026】
図10から
図12は、前記接触体2~8の支持方法の種類である。場合に応じて選択することができる。
図10においては、接触体12は棒状の支持部13に固定されている。また、支持部13は、ドラムタイプの上肢コントロール訓練器具1では当該訓練器具1の支持フレーム10に、パネルタイプの上肢コントロール訓練器具11では当該訓練器具11の上面に固定される。
図11及び
図12の支持部も同様に上肢コントロール訓練器具1又は11に固定される。
図11においては、接触体12はコイルばねその他の弾性体14に固定されている。前記弾性体14の下に前記弾性体14を固定する支持部がある。該接触体12に触れると該接触体12が揺れる。
図12においては、接触体12は支持板15及びコイルばね14により吊り下げて、固定されている。前記支持板15は支持部に固定されている。前記支持板15及びコイルばね14の代わりに、フレキシブルな、弾性のある素材を使用してもよい。該接触体12に触れると該接触体12が揺れる。
訓練者が接触体12に接触し、前記接触体12を動かすと、前記接触体12の支持部に設けられた感知部が接触を感知し、当該感知による信号が上肢コントロール訓練器具1又は11のコントロール部に送られる。
【0027】
前記コントロール部9は発光手段の電源を備えるとともに前記発光手段を制御する。前記コントロール部9は、単体タイプでもよいし、前記パネルタイプ11の天板に埋め込むタイプであってもよい。前記コントロール部には側面又は上面にスピーカ-が設置されており、効果音を出すことができる。発光手段及び効果音により、訓練者の訓練意欲を増進することができる。
図13は、前記コントロール部9の盤面レイアウトの一例である。前記コントロール部9は、前記発光手段の点灯する間隔をワンタッチで換えることができ、効果音の種類及び音量をタッチ操作により変えることができる。
【0028】
以上、接触体の工夫、訓練意欲を増進する発光手段、及び訓練意欲を増進する効果音を発生する音響手段によって、上肢コントロールの訓練に特に適した上肢コントロール訓練器具を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
この発明は、自閉症児が、遊び感覚で、訓練に対する拒否的な抵抗や情動的な興奮なしに、バランスや姿勢制御などの協調運動が向上できる、自閉スペクトラム症の児童に適した上肢コントロール訓練器具を実現できるので、産業上の利用ができる。
【符号の説明】
【0030】
1:ドラムタイプの上肢コントロール訓練器具、2~8:略球体からなる接触部、9:コントロール部、10:ドラムタイプの上肢コントロール訓練器具の支持フレーム、11:パネルタイプの上肢コントロール訓練器具、12:接触体、13:支持部、13:コイルばね、14:コイルばね、15:支持板、16:フレキシブル支持部