(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】他動運動装置
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20240610BHJP
A63B 22/16 20060101ALN20240610BHJP
A63B 23/10 20060101ALN20240610BHJP
【FI】
A61H1/02 G
A63B22/16
A63B23/10
(21)【出願番号】P 2023144013
(22)【出願日】2023-08-18
【審査請求日】2023-08-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523337476
【氏名又は名称】合同会社デボラ
(72)【発明者】
【氏名】木村 啓二
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-282389(JP,A)
【文献】特開2006-305249(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第114452155(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
A63B 22/16
A63B 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項3】
上記施療台(1)と上記施療台(3)の向きを一定に維持するための支持機構を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の他動運動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は傾斜円運動もしくは偏心円運動、またはその両方の運動を同時に行うことが可能な他動運動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の他動運動装置として下記特許文献1に示すものが既知である。
【0003】
下記特許文献1の他動運動装置は施療台を傾斜偏心回転させることにより、当該施療台上に載置した、使用者の被施術部位を他動運動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の他動運動装置では、施療台の回転中心を変更することができず、施療台は常に一定の偏心幅の運動しかできない。したがって、使用者の被施術部位に対して一定の他動運動しか提供できない。
【0006】
さらに施療台の傾斜を変更させることもできず、この点からも、常に一定の他動運動しか提供できない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る他動運動装置は、上述した従来の他動運動装置が抱える問題点を抜本的に解決する。要述すると、本発明に係る他動運動装置は、モーター駆動又は手動により台座(8)上で回転する回転盤(7)と、該回転盤(7)上で回転する回転盤(4)と、該回転盤(4)上で回転する施療台(3)を備え、該施療台(3)は該回転盤(4)と同心配置される一方、該回転盤(4)の回転に左右されずに自在回転するターンテーブル機構を有し、該回転盤(4)は該回転盤(7)と共に回転し、装置が停止中にその回転中心をスライドレール(6)上でスライド可能とする構成を有し、該施療台(3)は該回転盤(7)上を水平方向に偏心円運動され、ユーザーの対象部位を大小多彩な偏心円運動させることを特徴とする他動運動装置。
【0008】
好ましくは、上記回転盤(4)を上記回転盤(7)に対して角度調節器(5)を設け、装置が停止中に角度を任意に設定し傾斜可能としたことにより、該回転盤(4)は様々な角度の傾斜円運動を可能とする他動運動装置。
【0009】
より好ましくは、上記回転盤(4)上で上記施療台(3)と共に動作する施療台(1)を設け、更に該施療台(1)と該施療台(3)の間に角度調節器(2)を設け、装置の停止中に任意に角度を設定することにより、傾斜可能とした。それにより、該施療台(3)と共に偏心円運動、又は、傾斜円運動する際に該施療台(1)の傾斜角度を被施療部位に対し安全な傾斜角度を保ちつつ偏心円運動、又は、傾斜円運動することができる。
【0010】
更により好ましくは、
図1の(9)~(16)の各部品の働きによって、本装置が作動した際、上記施療台(1)と上記施療台(3)の上下、左右、前後、または捻れの動きを吸収しつつ該施療台(1)と該施療台(3)の向きを一定に維持するための支持機構を設けた。それにより、該施療台(1)と該施療台(3)は動作中、常に一定方向を支持する。また、該施療台(3)を施療台とする場合は、
図1の設置金具(9)を上下反転させ、該施療台(3)の上面前方部分に設置することにより、該施療台(3)は常に一定方向を支持する。これらの支持機構によって被施療部位の向きを一方向に維持しながら安全に他動運動させることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明は以上のように構成したので、以下に記載の効果を奏する。本発明に係る他動運動装置によれば、上記施療台(3)及び任意に設置される上記施療台(1)は上記回転盤(7)に対して回転中心をずらす幅と傾斜角度は任意に調節可能であり、それにより様々な幅の偏心円運動や、様々な角度の傾斜円運動を組み合わせた他動運動が可能になり、足・臀部・肩甲骨・手首・頸椎などの被施療部位に合わせた適度な傾斜円運動または偏心円運動、もしくはその両方の傾斜偏心円運動を同時に他動運動させることができる。それにより全身麻痺による拘縮・慢性疼痛・痙性・血行不良・廃用性萎縮等の予防が期待できる。
【0012】
傾斜円運動とは、上記角度調節器(5)により、上記回転盤(7)に対し上記回転盤(4)の角度を調節することにより、該回転盤(4)は、傾斜した角度を保ちつつ回転する様であり、例えば回したコインが倒れる寸前に見せる動きのような様を表す。また、偏心円運動とは、上記スライドレール(6)により、該回転盤(7)に対して該回転盤(4)の中心軸をずらし、該回転盤(7)が回転するとき、該回転盤(4)が該回転盤(7)の中心に対して水平に外側を周回する様を表す。
【0013】
本発明の他動運動装置を、例として上記スライドレール(6)により、上記回転盤(7)に対して上記回転盤(4)の中心軸をずらした偏心円運動と、上記角度調節器(5)により、該回転盤(7)に対して該回転盤(4)の角度を設定した傾斜円運動を同時に作動させ、更に、角度調節器(2)により、上記施療台(3)に対して上記施療台(1)の角度を設定し、足を施療した場合、
図2、
図3、
図4、
図5それぞれの(A)に示す様に、該施療台(1)が該回転盤(7)に対して、時計の短針の位置に相当する6時、9時、12時、3時と回転動作した時、
図2、
図3、
図4、
図5それぞれの(B)に示す様に、膝と足首の角度が、Θ1、Θ2、Θ3、Θ4、Θ5、Θ6、Θ7、Θ8のようにストレッチされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る他動運動装置の分解斜視図である。
【
図2】回転盤7に対して施療台1の位置が時計の短針の位置に相当する6時の方向地点のときの使用状態説明図であり、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は斜視図である。
【
図3】回転盤7に対して施療台1の位置が時計の短針の位置に相当する9時の方向地点のときの使用状態説明図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は斜視図である。
【
図4】回転盤7に対して施療台1の位置が時計の短針の位置に相当する12時の方向地点のときの使用状態説明図であり、(A)は平面図、(B)は側面図、(C)は斜視図である。
【
図5】回転盤7に対して施療台1の位置が時計の短針の位置に相当する3時の方向地点のときの使用状態説明図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、Cは斜視図である。
【
図6】回転盤7に対して施療台1が傾斜する様子を表す側面図である。(A)は回転盤7に対して施療台1の位置が時計の短針の位置に相当する6時の方向地点の場合の側面図であり、(B)は回転盤7に対して施療台1の位置が時計の短針の位置に相当する12時の方向地点の場合の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る他動運動装置の最適な実施形態例について図面を参照して説明する。
【0016】
図1に示すように、台座8上に設置したモーター駆動または手動により回転する回転盤7の上部中央にスライドレール6を固定設置する。本装置が停止中に該スライドレール6により該回転盤7に対して回転盤4の位置を同心から外側にずらせて調節することにより、偏心円運動が可能となる。
【0017】
上記スライドレール6のスライドする部分に角度調節器5を固定設置する。該角度調節器5を本装置が停止中に任意に設定することにより上記回転盤4は傾斜円運動が可能となる。
【0018】
上記角度調節器5の上部に回転盤4の端部分を固定設置する。
【0019】
上記回転盤4の上部同心円に該回転盤4の回転に影響されずに自在に回転するよう施療台3を設置する。このターンテーブル機構によって該施療台3は該回転盤4に対して自在に回転するため、被施療部位の方向を一定に保ちながら円運動させることができる。尚、本発明にあっては、該施療台3で被施療部位を他動運動させる他、後述するように、該施療台3上に該施療台3と共に回転する施療台1を設け、該施療台1を該施療台3に対して傾斜可能とすることにより、該施療台1を施療台として用い、被施療部位を安全な傾斜角度を保ちつつ傾斜円運動をさせることができる。
【0020】
上記施療台3の端部分に角度調節器2を固定設置する。さらに該角度調節器2の上部に施療台1を、該施療台1の端部分に固定設置する。該角度調節器2を本装置が停止中に任意に設定することにより該施療台1は該角度調節器2の設定した角度を保ちながら他動運動をさせることができる。
【0021】
上記施療台1の下面の上記角度調節器2を固定設置した反対側端中央に設置金具9を固定設置し、該設置金具9にスライドパイプ12の上端部分をネジ10とナット11にて軸固定する。または上記施療台3を施療台とする場合は、該設置金具9を上下反転させ該施療台3の上面前方部分に固定設置し、同様に該スライドパイプ12を軸固定する。更に本体台座8の上面中央前方部分に設置金具16を固定設置し、スライドパイプ13の下端部分をネジ14とナット15にて軸固定する。更に該スライドパイプ12に該スライドパイプ13を差し込み、シリンダー構造にする。該設置金具9は、例えば台車の後輪部分に使用するようなコの字型の形状であり、該設置金具9に固定設置した該スライドパイプ12は左右方向には動かず上下方向に自在に動く。また、該設置金具16は、例えば台車の前輪部分に使用するようなコの字型の形状であるが自在に回転もするため、上下方向に加え左右回転も自在に出来る。
【0022】
上記設置金具9と上記設置金具16、及び上記スライドパイプ12と上記スライドパイプ13によって、上記施療台1、及び上記施療台3が偏心円運動により前後左右に位置が変わった時、また、傾斜円運動により捻れと上下の動きが生じた時も該施療台1と該施療台3の方向は該設置金具16に向かって常に一定に維持される。
【0023】
本発明において、上記施療台1及び上記施療台3を常に一定方向に維持するための支持機構については、ギアやモーターなどで上記回転盤4に対して同じ速度で逆に該施療台3を回転させることにより、該施療台1及び該施療台3は常に一定方向を保つ構成とすることも、実施に応じ任意である。
【0024】
上記施療台1、上記施療台3及び上記回転盤4は、上記スライドレール6によって上記回転盤7に対して同心円運動から大小多様な幅の偏心円運動と、上記角度調節器5によって様々な角度の傾斜円運動ができる。したがって、該角度調節器5と該スライドレール6をそれぞれ調節することによって傾斜円運動と偏心円運動をどちらか一方、もしくは両方同時に他動運動できる。
【0025】
図6に示すように、上記施療台1を施療台とした場合、上記回転盤7に対して傾斜円運動、または偏心円運動を行った際に、上記角度調節器2が上記角度調節器5と協働して、該施療台1が該回転盤7に対して6時の方向に位置した時は、例えば足首の適切な背屈角度を提供し、該施療台1が該回転盤7に対して12時の方向に位置した時には、例えば足首の過度な底屈を防ぎ、安全に傾斜円運動と偏心円運動ができる。
【0026】
すなわち、
図6(A)に示す、上記回転盤7に対して上記施療台1の位置が6時の方向地点にある時と、
図6(B)に示す、該回転盤7に対して該施療台1の位置が12時の方向地点にある時では、該回転盤7に対する上記施療台3の傾斜方向が真逆であるので、上記角度調節器2を該施療台3に対して該施療台1の角度をΘ9に調節し、上記角度調節器5を該回転盤7に対して上記回転盤4の角度をΘ10に調節した場合、
図6(A)に示す時には、該施療台1は、該回転盤7に対してΘ9とΘ10を合算した傾斜角度で被施術部位に作用するのに対して、
図6(B)に示す時には、該施療台1は、該回転盤7に対してΘ9からΘ10を引いた角度で傾斜する。
【0027】
したがって、例えば足を施療した場合、6時の方向地点になった時は適度な背屈角度となり、一方、12時の方向地点になった時には足首は適度な底屈角度となり、安全に他動運動を提供することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 施療台
2 角度調節器
3 施療台
4 回転盤
5 角度調節器
6 スライドレール
7 回転盤
8 台座
9 設置金具
10 ネジ
11 ナット
12 スライドパイプ
13 スライドパイプ
14 ネジ
15 ナット
16 設置金具
17 被施療者
Θ1 施療台1及び施療台3が回転盤7に対して時計の短針の位置に相当する6時方向時の膝屈曲角度
Θ2 施療台1及び施療台3が回転盤7に対して時計の短針の位置に相当する6時方向時の足首屈曲角度
Θ3 施療台1及び施療台3が回転盤7に対して時計の短針の位置に相当する9時方向時の右足首外旋角度
Θ4 施療台1及び施療台3が回転盤7に対して時計の短針の位置に相当する9時方向時の左足首内旋角度
Θ5 施療台1及び施療台3が回転盤7に対して時計の短針の位置に相当する12時方向時の膝伸展角度
Θ6 施療台1及び施療台3が回転盤7に対して時計の短針の位置に相当する12時方向時の足首伸展角度
Θ7 施療台1及び施療台3が回転盤7に対して時計の短針の位置に相当する3時方向時の右足首内旋角度
Θ8 施療台1及び施療台3が回転盤7に対して時計の短針の位置に相当する3時方向時の左足首外旋角度
Θ9 施療台1及び施療台3が回転盤7に対して時計の短針の位置に相当する6時方向時の角度
Θ10施療台1及び施療台3が回転盤7に対して時計の短針の位置に相当する6時方向時の角度
【要約】 (修正有)
【課題】障害や病気などで身体が長期の麻痺状態になった時、麻痺した部分は筋肉をほとんど動かさなくなるため、関節の拘縮やそれに伴う痛みなどが生じる場合がある。本発明は身体の麻痺した部分、例えば両足であれば足首と膝を傾斜円運動、偏心円運動が可能な他動運動装置を提供する。
【解決手段】例えば人の両足を乗せて装置を起動すると水平方向に対する偏心円運動と傾斜円運動が可能な他動運動装置であって、7と4の回転盤、3と1の施療台を有し、2と5の角度調節器、6のスライドレール、12と13のスライドパイプ、9と16の設置金具、それらを乗せる8の台座を備える。
【選択図】
図1