(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】トップコート剤及びこのトップコート剤を用いて形成した保護膜を有する銀白色締結部材
(51)【国際特許分類】
C09D 183/04 20060101AFI20240610BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240610BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240610BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20240610BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20240610BHJP
C09D 183/12 20060101ALI20240610BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240610BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
C09D183/04
C09D7/63
C09D7/61
C09D7/20
C09D7/62
C09D183/12
C09D5/00 Z
C23C28/00 C
(21)【出願番号】P 2020066100
(22)【出願日】2020-04-01
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000109657
【氏名又は名称】ディップソール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】高松 聡之
(72)【発明者】
【氏名】平山 博史
(72)【発明者】
【氏名】坂下 繭子
(72)【発明者】
【氏名】淺香 俊貴
(72)【発明者】
【氏名】▲とん▼ 波
(72)【発明者】
【氏名】望月 信介
(72)【発明者】
【氏名】村上 敦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕之
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/029836(WO,A1)
【文献】特開2015-045061(JP,A)
【文献】特開2006-206683(JP,A)
【文献】特開平06-330339(JP,A)
【文献】特開2002-080977(JP,A)
【文献】登録実用新案第3128852(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
C23C 28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤、水溶性の変性オルガノポリシロキサン、アルミニウムフレーク、及び水を含む希釈剤を含むトップコート剤。
【請求項2】
前記ポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤が下記式で表されるポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤である請求項1記載のトップコート剤。
【化1】
(1)
(式中、R
1は水素原子又は直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~22のアルキル基若しくはアルケニル基を示し、Yは水素原子又は直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~4のアルキル基若しくはアシル基を示し、pは1~30の整数を示し、qは0~30の整数を示す。)
【請求項3】
前記ポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤のEOモル付加量(p+q)が30以上である、請求項2記載のトップコート剤。
【請求項4】
前記希釈剤がさらに水溶性グリコールエーテル及び水溶性アルコールの少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか1項記載のトップコート剤。
【請求項5】
前記ポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤の含有量が20~150g/Lである、請求項1~4のいずれか1項記載のトップコート剤。
【請求項6】
アルミニウムフレークが、シリカで被覆されたアルミニウムフレークである、請求項1~5のいずれか1項記載のトップコート剤。
【請求項7】
6価クロムフリー3価クロム化成皮膜又はクロムフリー化成皮膜上に形成して摩擦係数を調整させるための、請求項1~6のいずれか1項記載のトップコート剤。
【請求項8】
亜鉛めっきが施された金属基体表面に、6価クロムフリー3価クロム化成皮膜又はクロムフリー化成皮膜と、該6価クロムフリー3価クロム化成皮膜又はクロムフリー化成皮膜上に銀白色保護皮膜とを備えてなる銀白色締結部材であって、
前記銀白色保護皮膜が、請求項1~7のいずれか1項記載のトップコート剤を用いて形成された保護皮膜である、銀白色締結部材。
【請求項9】
銀白色締結部材の製造方法であって、
亜鉛めっきが施された金属基体表面に、6価クロムフリー3価クロム化成皮膜又はクロムフリー化成皮膜が形成された締結部材に、請求項1~7のいずれか1項記載のトップコート剤をコーティングした後に80℃以上の温度で加熱乾燥することを含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摺動性、耐食性と銀白色外観に優れたトップコート剤及びこのトップコート剤を保護膜として用いた銀白色締結部材に関する。
【背景技術】
【0002】
締結部材はその使用に際して摩擦係数が重要である。安定した摩擦係数を有する締結部材を提供する必要があるが、締結部材の摩擦係数は、特に締結部材の表面を被覆する保護膜により大きな影響を受ける。このため締結部材の保護膜には、種々の摩擦係数安定化剤(特開2008-37905号公報及び特開2006-206683号公報など参照)が使用されてきたが、摩擦係数を安定化するために使用されていたワックスは分散性が悪く、十分に安定した摩擦係数が得られないという問題があった。また、トップコート剤で形成された膜自体が有機物であるため熱に弱く、高温にさらされる環境下での使用では膜の劣化が大きく、締結部材の保護膜としての機能の劣化が激しいという問題があった。
これらの問題を解決するために、水溶性の変性オルガノポリシロキサンを主体とした膜材料を用いたトップコート剤が開発されている(国際公開第2015/029836号参照)。このトップコート剤を用いて形成される膜は、Si-O-Si結合(シロキサン結合)を主体とした膜であるため、熱に強く、高温にさらされる環境下でも劣化が少ない強固で安定な膜であるが、このトップコート剤を被覆した締結部材は外観が黒色となる。さらに、有機膜に比べて摩擦係数が高くなる傾向があり、より安定な保護膜を形成するためには高温で熱処理を行う必要がある。また、高温で熱処理をした場合、摩擦係数がさらに上昇するなどの問題があり、使用する上で、締結部材の摩擦係数の安定性は十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-37905号公報
【文献】特開2006-206683号公報
【文献】国際公開第2015/029836号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、銀白色の美しい外観を示すとともに、高温で熱処理した場合でも摩擦係数の上昇を抑えて調整でき、摺動性を安定化させるとともに、強固で、耐水性や耐食性等に優れた保護膜を形成するトップコート剤、及びこのトップコート剤を用いて形成した保護膜を有する締結部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下に示すトップコート剤、及びこのトップコート剤を用いて形成した保護膜を有する銀白色締結部材を提供する。
[1]ポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤、水溶性の変性オルガノポリシロキサン、アルミニウムフレーク、及び水を含む希釈剤を含むトップコート剤。
[2]前記ポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤が下記式で表されるポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤である、[1]記載のトップコート剤。
【化1】
(1)
(式中、R
1は水素原子又は直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~22のアルキル基若しくはアルケニル基を示し、Yは水素原子又は直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~4のアルキル基若しくはアシル基を示し、pは1~30の整数を示し、qは0~30の整数を示す。)
[3]前記ポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤のEOモル付加量(p+q)が30以上である、[2]記載のトップコート剤。
[4]前記希釈剤がさらに水溶性グリコールエーテル及び水溶性アルコールの少なくとも1種を含む、[1]~[3]のいずれか1項記載のトップコート剤。
[5]前記ポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤の含有量が20~150g/Lである、[1]~[4]のいずれか1項記載のトップコート剤。
[6]アルミニウムフレークが、シリカで被覆されたアルミニウムフレークである、[1]~[5]のいずれか1項記載のトップコート剤。
[7]6価クロムフリー3価クロム化成皮膜又はクロムフリー化成皮膜上に形成して摩擦係数を調整させるための、[1]~[6]のいずれか1項記載のトップコート剤。
[8]亜鉛めっきが施された金属基体表面に、6価クロムフリー3価クロム化成皮膜と、該6価クロムフリー3価クロム化成皮膜上に銀白色保護皮膜とを備えてなる銀白色締結部材であって、
前記銀白色保護皮膜が、[1]~[7]のいずれか1項記載のトップコート剤を用いて形成された保護皮膜である、銀白色締結部材。
[9]銀白色締結部材の製造方法であって、
亜鉛めっきが施された金属基体表面に、6価クロムフリー3価クロム化成皮膜が形成された締結部材に、[1]~[7]のいずれか1項記載のトップコート剤をコーティングした後に80℃以上の温度で加熱乾燥することを含む、製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、銀白色の外観を示し、高温で熱処理した場合でも摩擦係数の上昇を抑えて調整でき、摺動性を安定化させるとともに、強固で、耐水性や耐食性等に優れた保護膜を形成するトップコート剤、及びこのトップコート剤用を用いて形成した保護膜を有する締結部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の銀白色のトップコート剤は、ポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤、水溶性の変性オルガノポリシロキサン、アルミニウムフレーク、及び水を含む希釈剤を含む。
本発明のトップコート剤において、ポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤は、摩擦調整剤として用いられる。ポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤は、好ましくは下記式(1)で表されるポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤である。
【化2】
(1)
式(1)中、R
1は水素原子又は直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~22のアルキル基若しくはアルケニル基を示し、好ましくは直鎖若しくは分岐鎖の炭素数8~18のアルキル基若しくはアルケニル基を示す。Yは水素原子又は直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~4のアルキル基若しくはアシル基を示し、好ましくは水素原子を示す。pは1~30の整数を示し、qは0~30の整数を示し、好ましくはp+qは2~60の整数を示し、より好ましくはp+qは30~60の整数を示す。ポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン牛脂アミン、ポリオキシエチレンヤシ油アルキルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンミリスチルアミン、ポリオキシエチレンペンタデシルアミン、ポリオキシエチレンパルミチルアミン、ポリオキシエチレンマルガリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンバクセニルアミン、ポリオキシエチレンアラキジルアミン、ポリオキシエチレンベヘニルアミンなどが挙げられる。なお、式(1)で表されるポリオキシエチレンアミン系界面活性剤は、例えば日本乳化剤(株)製の「Newcol 405」、「Newcol 410」、竹本油脂(株)製の「パイオニンD-3104」、「パイオニンD-3110」、ライオン(株)製の「エソミンT/15」、「エソミンT/25」などとして市販されている。ポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。トップコート剤中のポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤の濃度は、好ましくは20~150g/Lの範囲であり、より好ましくは40~80g/Lの範囲である。ポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤の濃度が20g/Lより少ないと、摩擦係数を調整する効果が不十分となり、また150g/Lより多いとトップコート剤により形成された膜自体の耐水性や耐食性が低下する傾向がみられる。なお、摩擦調整剤として、本発明の摩擦調整剤の効果を阻害しない範囲において、他の公知の摩擦調整剤を併用してもよい。
【0008】
水溶性の変性オルガノポリシロキサンは、親水性セグメントがオルガノポリシロキサンセグメントの末端又は側鎖のケイ素原子に結合してなる変性オルガノポリシロキサンである。親水性セグメントとしては、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル、N-アシルアルキレンイミン、アクリル酸、ビニルアルコール等が挙げられるが、好ましくはポリアルキレングリコールであり、特にプロピレングリコールが好ましい。したがって、好ましい水溶性の変性オルガノポリシロキサンは、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンであり、特にポリオキシプロピレン変性オルガノポリシロキサン(ポリプロピレングリコール変性オルガノポリシロキサン)が好ましい。このようなポリシロキサンは市販品のポリプロピレングリコール変性シリコーンとして容易に入手できる。水溶性の変性オルガノポリシロキサンは、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。トップコート剤中の水溶性の変性オルガノポリシロキサンの濃度は、好ましくは50~450g/Lの範囲であり、より好ましくは150~350g/Lの範囲である。
【0009】
希釈剤の主な成分は水である。また、トップコート剤は、通常の塗料と同じく、塗装作業性、保存性、塗膜厚調整等の理由により、例えば水と水溶性有機溶剤、例えば水とブチルセロソルブで適度の濃度に希釈して使用することができる。例えばそのトップコート剤希釈液中のトップコート剤濃度は30~100wt%、好ましくは50~80wt%である。
水以外の希釈剤としては、水溶性グリコールエーテル及び水溶性アルコールなどが挙げられる。水溶性グリコールエーテルとしては、アルキレングリコールアルキルエーテル類が好ましく、例えばモノアルキレングリコールモノアルキルエーテル、モノアルキレングリコールジアルキルエーテルであり、より好ましくはエチレングリコールモノアルキルエーテル(セロソルブ類)である。具体的には、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(2-メトキシー1-プロパノール、1-メトキシー2-プロパノールなど)、ブチレングリコールモノメチルエーテル(2-メトキシー1-ブタノール、3-メトキシー1-ブタノール、1-メトキシー2-ブタノールなど)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(ジメチルセロソルブ)、エチレングリコールジエチルエーテル(ジエチルセロソルブ)などが挙げられる。これらのうちでは、特に好ましくはエチレングリコールモノブチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテルである。上記水溶性グリコールエーテルは、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。トップコート剤中の水溶性グリコールエーテルの濃度は、好ましくは50~400g/Lの範囲であり、より好ましくは200~300g/Lの範囲である。
水溶性アルコールとしては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、2-ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、グリセリン、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5ペンタントリオール、1,2,6ヘキサントリオールなどが挙げられる。水溶性アルコールは、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。トップコート剤中の水溶性アルコールの濃度は、好ましくは50~400g/Lの範囲であり、より好ましくは200~300g/Lの範囲である。
【0010】
アルミニウムフレークは、本発明のトップコート剤の溶液中の着色化剤として用いられる。アルミニウムフレークのレーザー回折・散乱法による平均粒子径は、好ましくは1~50μm、より好ましくは5~10μmである。また、アルミニウムフレークの平均片厚は、電子顕微鏡観察により求めた場合、好ましくは0.05~0.5μm、より好ましくは0.1~0.3μmである。さらに、アルミニウムフレークとして、表面にシリカが被覆された、シリカ被覆アルミニウムを用いることが好ましい。表面に被覆されたシリカの厚みは、好ましくは50nm以下である。シリカ被覆アルミニウムとしては、「Hydrolanシリーズ」(商品名、エカルト社製)、「アルペーストEMRシリーズ」(商品名、東洋アルミニウム社製)等の市販品が使用可能である。銀白色のトップコート剤の溶液中の着色化剤成分の濃度は、好ましくは2~25重量%の範囲である。
【0011】
本発明においては、上記トップコート剤に部材を浸漬し、遠心でトップコート剤を良く振り切るか、又はスプレー塗布した後、皮膜を十分に乾燥することで銀白色保護皮膜が得られる。遠心振り切りは、200~1000rpmが好ましい。また、振り切り時間は、2~5分が好ましい。乾燥温度は、80~220℃が好ましい。また、乾燥時間は、10~60分が好ましい。この乾燥温度範囲よりも低いと耐食性が低下し、また高過ぎても耐食性が低下する。乾燥時間が10分より短いと耐食性が低下する。また、乾燥時間が長すぎると経済的でない。また、銀白色保護皮膜の乾燥方法としては、予備乾燥、ついで本乾燥する2段階の乾燥方法が好ましい。予備乾燥は、乾燥温度30℃~80℃、乾燥時間3~60分が好ましく、本乾燥は、乾燥温度100℃~220℃、乾燥時間10~60分が好ましい。80℃以下で予備乾燥することにより、高温乾燥時に皮膜が収縮して皮膜切れや未着のような皮膜欠陥を防止することができるので好ましい。
【0012】
本発明の銀白色締結部材は、亜鉛めっきが施された金属基体表面に、6価クロムフリー3価クロム化成皮膜と、該6価クロムフリー3価クロム化成皮膜上に銀白色保護皮膜とを備えてなる。上記銀白色締結部材としては、ボルト、ねじ、ナット、座金、平板部品(ステー、ベースプレート)などの他にジョイントパイプ部材やホースバンドなどが挙げられる。
本発明で用いられる金属基体としては、鉄、ニッケル、銅、アルミニウムなどの各種金属、及びこれらの合金、あるいは亜鉛置換処理を施したアルミニウムなどの金属や合金の基体が挙げられる。
【0013】
上記金属基体は、常法により亜鉛めっきが施される。基体上に亜鉛めっきを析出させるには、硫酸浴、ホウフッ化浴、塩化カリウム浴、塩化ナトリウム浴、塩化アンモニウム折衷浴等の酸性・中性浴、シアン浴、ジンケート浴、ピロリン酸浴等のアルカリ性浴のいずれでも良く、特に挙げるとすれば、ジンケート浴が好ましい。また、基体上に析出する亜鉛めっきの厚みは任意とすることができるが、1μm以上であるのが好ましく、より好ましくは5~25μm厚とするのがよい。
本発明では、このようにして基体上に亜鉛めっきを析出させた後、必要に応じて適宜、前処理、例えば水洗、又は水洗後、硝酸活性処理してから、6価クロムフリー3価クロム化成皮膜を形成するための化成処理液を用いて、例えば浸漬処理等の方法で化成処理を行う。
【0014】
上記6価クロムフリー3価クロム化成皮膜は、Znイオン濃度が20g/L以下の6価クロムフリー3価クロム化成処理液を用いて形成される。上記6価クロムフリー3価クロム化成皮膜のクロムイオン付着量は0.1~2.0mg/dm2であり、好ましくは0.2~1.5mg/dm2である。クロムイオン付着量をこのような範囲とすることで、外観に優れた高耐食性のものとすることができる。
また上記銀白色保護皮膜の厚さは、好ましくは0.1~10μmである。厚みをこのような範囲とすることで、銀白色外観に優れた高耐食性のものとすることができ、また液だまりやシミの発生、並びに寸法精度の低下を防止することができる。
【0015】
本発明において、金属基体表面の3価クロム化成処理皮膜は、亜鉛めっきが施された金属基体表面を上記3価クロム化成処理液に接触させることにより、例えば亜鉛めっき上に3価クロム化成処理皮膜を形成することができる。亜鉛めっきが施された金属基体表面を上記3価クロム化成処理液に接触させる方法としては、上記3価クロム化成処理液に、例えば亜鉛めっきが施された金属基体を浸漬するのが一般的である。例えば、10~40℃の液温で5~600秒浸漬するのが好ましく、より好ましくは15~120秒浸漬する。なお、亜鉛めっきでは3価クロム化成処理皮膜の光沢を増すために、通常3価クロム化成処理前に被処理物を稀硝酸溶液に浸漬させることが行われるが、本発明ではこのような前処理を用いてもよいし、用いなくてもよい。上記以外の条件や処理操作は、従来のクロメート処理方法に準じて行うことができる。
【0016】
上記銀白色保皮膜は、ポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤、水溶性の変性オルガノポリシロキサン、アルミニウムフレーク、及び水を含む希釈剤を含む銀白色のトップコート剤の溶液に締結部材を浸漬するか、又はスプレー塗布をすることにより形成される。
次に、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
(実施例1~14及び比較例1~6)
(トップコート剤の調製)
表1~4に記載した組成比で各トップコート剤を調製した。
水溶性の変性オルガノポリシロキサンを水に溶解して水溶液を調製し、これに摩擦調整剤を混合した。このとき、常温で固形のポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤については、温浴で溶かした状態で混合した。銀白色の外観を得るための着色化剤として、シリカ被覆アルミニウムフレークを含むアルミニウムペースト「アルペーストEMR-D5660」(商品名、東洋アルミニウム社製)を混合した。アルミニウムペースト中のシリカ被覆アルミニウムフレークの固形分は50重量%である。さらに、希釈剤を混合してトップコート剤を得た。なお、摩擦調整剤のポリオキシエチレン牛脂アミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミンは、式(1)によって表され、そのp+qは、表1~3に示される値である。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0018】
(総合摩擦係数)
鉄製のボルト(ねじサイズ:M6×35)にジンケート浴亜鉛めっき(ディップソール(株)製NZ-110浴を使用)を厚さ8μm施したものを用い、水洗し、硝酸溶(5mL/L)に10秒浸漬した後、更に水洗し、3価クロム化成処理液(ディップソール(株)製ZT-444CS:70mL/L、化成処理条件:pH2.3-30℃-40秒間)を用いて3価クロム化成皮膜を形成した、その後水洗した。次いで、ボルトを遠心脱水機にかけた(700rpmで3分間)。その後、表1~4に記載したトップコート剤に、前記3価クロム化成皮膜を形成した鉄製ボルトを浸漬(30℃-20秒浸漬)し、遠心脱水機にかけ(700rpmで3分間)、乾燥(80~220℃で30分間)して銀白色保護皮膜を形成した。
得られたボルトについて、JIS B1084に従う締付試験方法にて総合摩擦係数を測定した。
【0019】
(トップコート剤の乾燥条件による影響)
ポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤である摩擦調整剤としてポリオキシエチレン牛脂アミン(p+q=40)を用いた実施例1では、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステルを用いた比較例1に比べて、高温で熱処理した場合でも総合摩擦係数の上昇を抑えることができた。
【表5】
注:トップコート皮膜の色は全て銀白色
【0020】
(摩擦調整剤(ポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤)の添加量と総合摩擦係数との関係)
摩擦調整剤の添加量を増やすと総合摩擦係数は減少した。
【表6】
【0021】
(摩擦調整剤(ポリオキシアルキレンアミン系界面活性剤)のEOモル付加量(p+q)と総合摩擦係数との関係)
摩擦調整剤のEOモル付加量を増やすと総合摩擦係数は減少した。
【表7】
【0022】
(実施例11~14及び比較例3~6の結果)
【表8】