(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】建物における出入口付きの仕切壁構造
(51)【国際特許分類】
E06B 7/22 20060101AFI20240610BHJP
E06B 3/46 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
E06B7/22 B
E06B3/46
(21)【出願番号】P 2023177927
(22)【出願日】2023-10-14
【審査請求日】2023-10-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523391397
【氏名又は名称】株式会社新都計画
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】弁理士法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芝 直行
(72)【発明者】
【氏名】藤田 力
(72)【発明者】
【氏名】片上 学
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-26592(JP,U)
【文献】特開2009-221765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/16 - 7/24
E06B 3/42 - 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の歩行面(1)と天井面(2)との間に配設されて建物の第1空間(Ri)と第2空間(Ro)とを仕切る出入口(O)付き仕切壁(W)が、透明体より構成されて前記出入口(O)を挟む一対の固定仕切板(F)と、同じく透明体より構成されて前記出入口(O)を開閉すべく前記一対の固定仕切板(F)に沿って開閉移動可能な一対の可動仕切板(D)と、前記固定仕切板(F)の、前記出入口(O)側の側端部に連設されて上下方向に延び、且つ該固定仕切板(F)と前記可動仕切板(D)との間の隙間を該可動仕切板(D)の前記開閉移動を許容しつつ覆うカバー体(C)とを備えた、建物における出入口付きの仕切壁構造において、
前記カバー体(C)はアクリル製の透明板より構成されて、表裏の板面の一方を前記固定仕切板(F)の出入口(O)側の側端部に対向させるようにして当該固定仕切板(F)の出入口(O)側の側端部に連設され、
前記可動仕切板(D)の下部には、該可動仕切板(D)よりも幅広に形成されて該下部を被覆保護する下部保護部材(H1)が結合され、
前記カバー体(C)は、前記可動仕切板(D)と対向する側端部を、
当該カバー体(C)と前記可動仕切板(D)との間の隙間を覆うようにして、前記可動仕切板(D)の板面に向けて前記下部保護部材(H1)と上下方向で重なる位置まで突出させるとともに、前記カバー体(C)の下部には、前記下部保護部材(H1)を逃げるための第1切欠き部(Ck
1)が形成されることを特徴とする、建物における出入口付きの仕切壁構造。
【請求項2】
前記可動仕切板(D)の下部には、前記下部保護部材(H1)を介してスライダ(14)が結合され、
前記歩行面(1)には、前記スライダ(14)を介して前記可動仕切板(D)の下部を摺動可能に案内、支持する下部支持枠(10)が埋設され、
前記第1切欠き部(Ck
1)は、前記下部保護部材(H1)及び前記下部支持枠(10)を逃げるように形成されることを特徴とする、請求項1に記載の建物における出入口付きの仕切壁構造。
【請求項3】
前記下部支持枠(10)は、前記スライダ(14)を摺動可能に案内する第1支持枠部(11)と、シーラント(41)を介して前記固定仕切板(F)を固定する第2支持枠部(12)と、前記第2支持枠部(12)の出入口(O)側の端縁部と前記第1支持枠部(11)との間を一体的に接続するとともに、シーラント(41)を介して前記カバー体(C)を固定する接続枠部(13)とを一体に有することを特徴とする、請求項
2に記載の建物における出入口付きの仕切壁構造。
【請求項4】
前記スライダ(14)は、前記可動仕切板(D)の移動方向の両端部両側面(14s)が平面視で緩やかな先細り状に形成され、前記スライダ(14)の上端面と前記下部保護部材(H1)の下端面との間には、弾性材(16)が介装されることを特徴とする、請求項
2に記載の建物における出入口付きの仕切壁構造。
【請求項5】
前記可動仕切板(D)の上部には、該可動仕切板(D)よりも幅広に形成されて該上部を被覆保護する上部保護部材(H2)が結合され、
前記カバー体(C)の上部には、前記上部保護部材(H2)を逃げるための第2切欠き部(Ck2)が形成されることを特徴とする、請求項
1~4の何れか1項に記載の建物における出入口付きの仕切壁構造。
【請求項6】
前記可動仕切板(D)は、天井(CE)内部に設置される開閉駆動装置(A)により開閉駆動され、
前記開閉駆動装置(A)は、前記天井(CE)内部に固定されて前記可動仕切板(D)に沿って水平に延びる案内レール(32)と、この案内レール(32)にその長手方向に走行可能に支持されてアクチュエータ(33)により走行駆動可能な可動支持体(34)とを備え、
前記
上部保護部材(H2)と前記可動支持体(34)との間が連結されていて、該
上部保護部材(H2)を介して前記可動仕切板(D)が前記可動支持体(34)に一体的に走行し得るよう吊持さ
れることを特徴とする、請求項
5に記載の建物における出入口付きの仕切壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物における出入口付きの仕切り壁構造、特に建物の歩行面と天井面との間に配設されて建物の第1空間と第2空間とを仕切る出入口付き仕切壁が、出入口に隣接する固定仕切板と、出入口を開閉すべく固定仕切板に沿って開閉移動可能な可動仕切板とを備えた、出入口付きの仕切壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した建物における出入口付きの仕切り壁構造において、固定仕切板と可動仕切板との間の隙間が大きいと、例えば[1]隙間を通して空調の冷気又は暖気が漏れ出し易くなる、[2]隙間に指を挟まれ易くなる、[3]隙間を通して扁平物(例えば書類等)が挿入される等の悪戯が行われる等の懸念がある。
【0003】
また特に可動仕切板が人感センサの検知に応じて自動開閉され且つオートロック設備が附属した建物の場合には、上記隙間を通して外から扁平物を挿入操作するだけで可動仕切板が自動開放されてしまう等の懸念もある。
【0004】
そこで上記問題を解決するために、例えば、固定仕切板と可動仕切板との間の隙間を可動仕切板の開閉移動を許容しつつ覆うカバー体を、固定仕切板の出入口側の側端部に連設した出入口付きの仕切り壁構造が、従来より提案(例えば下記特許文献1を参照)されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで特許文献1の出入口付き仕切り壁構造において、その開放感を広く演出するために、例えば固定仕切板及び可動仕切板を全部透明体で構成することが考えられるが、その場合でも、一般的に金属製枠体で構成されるカバー体は、不透明体のまま固定仕切板及び可動仕切板間に介在する形で残されてしまう。
【0007】
そのため、固定仕切板や可動仕切板を透明体として開放感を強調しようとしたにも拘わらず不透明なカバー体が目立ってしまい、それによって上記開放感が阻害されたり、或いは外観上の体裁を損ない商品価値を下げる等の虞れがある。
【0008】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、従来構造の課題を解決可能とした、建物における出入口付きの仕切壁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、建物の歩行面と天井面との間に配設されて建物の第1空間と第2空間とを仕切る出入口付き仕切壁が、透明体より構成されて前記出入口を挟む一対の固定仕切板と、同じく透明体より構成されて前記出入口を開閉すべく前記一対の固定仕切板に沿って開閉移動可能な一対の可動仕切板と、前記固定仕切板の、前記出入口側の側端部に連設されて上下方向に延び、且つ該固定仕切板と前記可動仕切板との間の隙間を該可動仕切板の前記開閉移動を許容しつつ覆うカバー体とを備えた、建物における出入口付きの仕切壁構造において、前記カバー体はアクリル製の透明板より構成されて、表裏の板面の一方を前記固定仕切板の出入口側の側端部に対向させるようにして当該固定仕切板の出入口側の側端部に連設され、前記可動仕切板の下部には、該可動仕切板よりも幅広に形成されて該下部を被覆保護する下部保護部材が結合され、前記カバー体は、前記可動仕切板と対向する側端部を、当該カバー体と前記可動仕切板との間の隙間を覆うようにして、前記可動仕切板の板面に向けて前記下部保護部材と上下方向で重なる位置まで突出させるとともに、前記カバー体の下部には、前記下部保護部材を逃げるための第1切欠き部が形成されることを第1の特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記第1の特徴に加えて、前記可動仕切板の下部には、前記下部保護部材を介してスライダが結合され、前記歩行面には、前記スライダを介して前記可動仕切板の下部を摺動可能に案内、支持する下部支持枠が埋設され、前記第1切欠き部は、前記下部保護部材及び前記下部支持枠を逃げるように形成されることを第2の特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記第2の特徴に加えて、前記下部支持枠は、前記スライダを摺動可能に案内する第1支持枠部と、シーラントを介して前記固定仕切板を固定する第2支持枠部と、前記第2支持枠部の出入口側の端縁部と前記第1支持枠部との間を一体的に接続するとともに、シーラントを介して前記カバー体を固定する接続枠部とを一体に有することを第3の特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記第2の特徴に加えて、前記スライダは、前記可動仕切板の移動方向の両端部両側面が平面視で緩やかな先細り状に形成され、前記スライダの上端面と前記下部保護部材の下端面との間には、弾性材が介装されることを第4の特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記第1~第4の特徴の何れかに加えて、前記可動仕切板の上部には、該可動仕切板よりも幅広に形成されて該上部を被覆保護する上部保護部材が結合され、前記カバー体の上部には、前記上部保護部材を逃げるための第2切欠き部が形成されることを第5の特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記第5の特徴に加えて、前記可動仕切板は、天井内部に設置される開閉駆動装置により開閉駆動され、前記開閉駆動装置は、前記天井内部に固定されて前記可動仕切板に沿って水平に延びる案内レールと、この案内レールにその長手方向に走行可能に支持されてアクチュエータにより走行駆動可能な可動支持体とを備え、前記上部保護部材と前記可動支持体との間が連結されていて、該上部保護部材を介して前記可動仕切板が前記可動支持体に一体的に走行し得るよう吊持されることを第6の特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の特徴によれば、固定仕切板と可動仕切板との間の隙間を可動仕切板の開閉移動を許容しつつ覆うカバー体が連設される、建物における出入口付きの仕切壁構造において、固定仕切板及び可動仕切板を透明体としたことで開放感を演出可能となり、その上、固定仕切板及び可動仕切板間のカバー体も透明体としたことでカバー体だけが不透明で目立ってしまうような虞れもなくなる。これにより、不透明なカバー体のために上記開放感が阻害されたり或いは外観上の体裁を損なうことが回避できるから、仕切壁全体として開放感の更なる向上が図られ、仕切壁の全体的な商品価値を高めることができる。
【0016】
しかも、カバー体がアクリル製の透明板で構成されるので、カバー体(透明板)各部の成形加工が容易となり、これにより、歩行面の下部構造や天井面の上部構造が比較的複雑な形態の場合でも、その上・下部構造にそれぞれ適合したカバー体の上・下部形態を容易に且つ精度よく製作可能となる。
【0017】
また更に、可動仕切板の下部には、これよりも幅広に形成されて該下部を被覆保護する下部保護部材が結合され、カバー体の下部には、下部保護部材を逃げるための第1切欠き部が形成されるので、可動仕切板の下部に幅広の下部保護部材が結合されていても、この下部保護部材を逃げるための第1切欠き部を、アクリル製カバー体の下部に容易に且つ精度よく成形可能となる。
【0018】
また第2の特徴によれば、可動仕切板の下部には、下部保護部材を介してスライダが結合され、歩行面には、スライダを介して可動仕切板の下部を摺動可能に案内、支持する下部支持枠が埋設されるので、スライダと下部支持枠とで開閉移動時の可動仕切板の下端部の移動を案内しつつ振れを抑制する振れ止め機能を発揮できる、しかも第1切欠き部は下部保護部材及び下部支持枠を逃げるように形成されるので、受け部材と受け部材直下の下部支持枠を逃げるための第1切欠き部を、透明なカバー体の下部に容易に且つ精度よく成形可能となる。
【0019】
また第4の特徴によれば、平面視で緩やかな先細り状に形成されるスライダの上端面と、下部保護部材の下端面との間に弾性材が介装されるので、可動仕切板の振れ止めの際の衝撃を吸収緩和することができる。
【0020】
また第5の特徴によれば、可動仕切板の上部には、これよりも幅広に形成されて該上部を被覆保護する上部保護部材が結合され、カバー体の上部には、上部保護部材を逃げるための第2切欠き部が形成されるので、可動仕切板の上部に幅広の上部保護部材が結合されていても、この上部保護部材を逃げるための第2切欠き部を、アクリル製カバー体の上部に容易に且つ精度よく成形可能となる。
【0021】
また第6の特徴によれば、天井内部に設置される開閉駆動装置が、天井内部で可動仕切板に沿って水平に延びる案内レールと、案内レールにその長手方向に走行可能に支持されてアクチュエータにより走行駆動可能な可動支持体とを備え、上部保護部材と可動支持体との間が連結されていて、該上部保護部材を介して可動仕切板が可動支持体に一体的に走行し得るよう吊持される。これにより、天井内部の開閉駆動装置の可動支持体に連結されて可動仕切板を可動支持体に吊持させるための幅広の保持部材が可動仕切板の上部に結合されていても、この幅広の保持部材を逃げるための第2切欠き部を、アクリル製カバー体の上部に容易に且つ精度よく成形可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態に係る出入口付き仕切壁構造の全体正面図及び要部水平断面図である。
【
図2】上記仕切壁における可動仕切板だけを示す拡大正面図である。
【
図3】上記仕切壁におけるカバー体及びその周辺部を示す要部断面図(
図1の3X-3X線拡大断面図)である。
【
図4】(A)は
図3の4AX-4AX線断面図、また(B)は
図3の4BX-4BX線断面図である。
【
図5】(A)はスライダの拡大正面図(即ち
図2の5AX矢視部の拡大図)、また(B)は同じく拡大右側面図、さらに(C)は同じく拡大底面図である。
【
図6】(A)は
図3の6AX-6AX線断面図、また(B)は
図3の6BX-6BX線断面図である。
【
図7】カバー体を構成するアクリル製透明板だけを示す拡大正面図である。
【
図8】
参考形態に係る出入口付き仕切壁構造の全体正面図及び要部平断面図(即ち
図1対応図)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1実施形態を、添付図面により以下に具体的に説明する。
【0024】
先ず、
図1において、建物(例えばマンション、オフィスビル等)の出入口O周辺の歩行面1と天井面2との間には、内方側の第1空間と外方側の第2空間とを仕切る、出入口O付きの仕切壁Wが配設される。この実施形態の仕切壁Wは、建物の入口空間を、外方空間たとえば雨除け用庇付きエントランスホールRoと、内方空間たとえば風除室Riとに仕切るものであって、風除室Riが第1空間の一例として、またエントランスホールRoが第2空間の一例としてそれぞれ示される。そして、その風除室RiとエントランスホールRoとの間で、出入口Oを通して人の出入りが可能となっている。
【0025】
上記した仕切壁Wは、
図1で明らかなように、正面視で出入口Oを挟むように配置される左右一対の固定仕切板Fと、出入口Oを開閉すべく左右一対の固定仕切板Fに沿ってそれぞれ開閉移動可能な(即ち出入口Oに対する開閉扉として機能する)左右一対の可動仕切板Dと、各々の固定仕切板Fの、出入口O側の側端部に連設されて上下方向に延び、且つ固定仕切板Fと可動仕切板Dとの間の隙間を可動仕切板Dの開閉移動を許容しつつ覆う帯板状のカバー体Cとを備えている。
【0026】
各々の固定仕切板Fの、出入口Oとは反対側の側端部は、各固定仕切板Fに隣接する建物の壁体3,4に従来周知の手法でそれぞれ接続、固定される。
【0027】
次に
図2~
図7を併せて参照して、仕切壁Wの具体的構成例を説明する。
【0028】
固定仕切板Fは、これの出入口O側の側端部と、この側端部と対向するカバー体Cの外側面(板面)との間が、その間の小間隙を埋めるように充填配備されるシーラント40(例えばシリコンシーラント)を介して一体的に接続、固定される。
【0029】
そして、固定仕切板F及び可動仕切板Dは、その各々の全部又は大部分が透明体(第1実施形態では強化ガラス板)で構成される。一方、カバー体Cもその全部又は大部分が透明板で構成されるが、その透明板としてはアクリル製の透明板が使用される。
【0030】
建物のフロア構造材S1(例えば床スラブ、並びに床スラブ上面に接合されるモルタル等の床材、及び表面仕上材等を含む)には、可動仕切板D及び固定仕切板Fの板面に沿う方向に延び且つ上面が歩行面1と略面一の下部支持枠10が、従来周知の手法で埋設、固定される。
【0031】
その下部支持枠10は、
図3,
図4で明らかなように、可動仕切板Dの開閉移動軌跡の直下に位置してその移動軌跡に沿って延びる第1下支持枠部11と、固定仕切板Fの直下に位置してその下端部に沿って延びる第2下支持枠部12と、第2下支持枠部12の出入口O側の端縁部と第1下支持枠部11との間を一体的に接続、固定する接続枠部13とを備える。
【0032】
上記した第1下支持枠部11は、可動仕切板Dの下端部を摺動、案内可能な上向きの第1支持溝11aを有する。また第2下支持枠部12は、固定仕切板Fの下端部をシーラント41(例えばシリコンシーラント)を介して嵌挿・固定可能な上向きの第2支持溝12aを有する。
【0033】
さらに接続枠部13は、これと第1下支持枠部11の中間段部11m及び第2下支持枠部12との間に、カバー体Cの下端部(後述する第1切欠き部Ck1の特設で幅狭となった部分)をシーラント41(例えばシリコンシーラント)を介して嵌挿・固定可能な上向きの第3支持溝13aを有している。
【0034】
可動仕切板Dの下端部には、
図3で明らかなように、可動仕切板Dよりも幅広に形成されて該下端部を左右全域に亘り被覆保護する横断面U字状の受け部材H1が結合(例えばシーラント45又は接着剤を介して接合)される。而して、受け部材H1は、下部保護部材の一例である。
【0035】
図3,
図5で明らかなように、この受け部材H1の下面には、そこから下向きに張出す複数のスライダ14が互いに間隔をおいて固定される。各スライダ14は、これに設けた複数のボルト挿通孔14bを貫通して受け部材H1に螺合した複数のボルト15で受け部材H1に締結される。
【0036】
また各スライダ14は、
図5(C)で明らかなように、左右方向(可動仕切板Dの移動方向)両端部両側面14sが平面視で緩やかな先細り状に形成される。スライダ14の上端面と受け部材H1の下端面との間には、
図5(A)(B)で明らかなようにゴムシート等の弾性材16が介装され、その弾性材16の弾性により、後述する可動仕切板Dの振れ止めの際の衝撃が吸収緩和される。
【0037】
上記したスライダ14は、表面が滑り易い合成樹脂材で構成される。そして、このスライダ14が前記第1支持溝11aの両内側面に摺動可能に接触することで、第1支持溝11aと協働して開閉移動時の可動仕切板Dの下端部の移動を案内しつつ振れを抑制する振れ止め機能を発揮する。
【0038】
図3で明らかなように、アクリル板で形成されたカバー体Cは、可動仕切板Dと対向する側端部を、可動仕切板Dの板面に向けて受け部材H1と上下方向で重なる位置まで突出させるとともに、カバー体Cの下部には、受け部材H1及び第1下支持枠部11の中間段部11mを逃げるための第1切欠き部Ck1が形成される。第1切欠き部Ck1は
、図7で明らかなように、カバー体Cの下部を矩形状に切欠いて形成されており、鉛直面部Ck1vと、その鉛直面部Ck1vの上端に連なる水平面部Ck1hとを有している。
【0039】
一方、建物の天井構造材S2(例えば天井スラブ、並びに天井スラブ下面に接合される天井材及び仕上材等を含む)には、可動仕切板D及び固定仕切板Fの板面に沿う方向に延び且つ下面が天井面2より下方に若干張り出した上部支持枠20が、従来周知の手法で埋設、固定される。尚、図示はしないが、上部支持枠20の下面を天井面2と略面一に配置形成するようにしてもよい。
【0040】
その上部支持枠20は、可動仕切板Dの開閉移動軌跡に対しその左右一方側に配置されるものであって、それは、
図3,
図6で明らかなように、上記開閉移動軌跡に沿って延び且つ可動仕切板Dの上端部(より具体的には、後述する保持部材H2の内側面)にクリアランスを挟んで対面する下向きの第1上支持枠部21と、その第1上支持枠部21の一部領域(即ち固定仕切板Fの上端部に対応する領域)に連設されて固定仕切板Fを上方より覆う第2上支持枠部22と、第2上支持枠部22の出入口O側の端部と第1上支持枠部21との間を一体的に接続する接続枠部23とを備える。
【0041】
上記した第2上支持枠部22は、固定仕切板Fの上端部をシーラント42(例えばシリコンシーラント)を介して嵌挿・固定可能な下向きの固定仕切板用支持溝22aを有している。また接続枠部23は、これと第1,第2上支持枠部21,22との間に、カバー体Cの上端部(後述する第2切欠き部Ck2の特設で幅狭となった部分)をシーラント42(例えばシリコンシーラント)を介して嵌挿・固定可能な下向きのカバー体用支持溝24を有している。
【0042】
可動仕切板Dの上端部には、
図3で明らかなように、可動仕切板Dよりも幅広に形成されて該上端部を左右全域に亘り被覆保護する横断面逆U字状の保持部材H2が結合(例えばシーラント46又は接着剤を介して接合)される。而して、保持部材H2は、上部保護部材の一例である。
【0043】
一方、カバー体Cの上部には、
図3,
図7で明らかなように、上部保護部材H2を逃げるための第2切欠き部Ck2が形成される。第2切欠き部Ck2は、カバー体Cの上部を矩形状に切欠いて形成されており、鉛直面部Ck2vと、その鉛直面部Ck2vの下端に連なる水平面部Ck2hとを有している。
【0044】
ところで可動仕切板Dは、建物の天井CEの内部に設置される開閉駆動装置Aにより開閉駆動される。この開閉駆動装置Aは、
図3で明らかなように、天井CEの内部に固定されるハウジング31と、ハウジング31の内壁に固定されて可動仕切板Dに沿って水平に延びる案内レール32と、この案内レール32にその長手方向に走行可能に支持されてアクチュエータとしてのモータ33により走行駆動可能な可動支持体としての複数のハンガ34とを備える。ハンガ34には、案内レール32の下面に摺動可能に係合する従来周知の脱輪防止部材37が着脱可能に付設されている。
【0045】
その複数のハンガ34は、可動仕切板Dの真上で案内レール32上を転動可能な複数の戸車35を各々有しており、上部保護部材H2の上端部に各々複数のボルト36で且つ左右方向に互いに間隔をおいて結合される。また図示はしないが、ハンガ34と、アクチュエータとしてのモータ33との間には、モータ33の出力をハンガ34の走行駆動力(延いては可動仕切板Dの開閉駆動力)に変換すべくモータ33及びハンガ34間を連動連結する従来周知の連動機構が介設されている。
【0046】
尚、上記連動機構としては、例えば案内レール32に沿って配備されてモータ駆動される巻掛式伝動機構の伝動帯にハンガ34を直接又は連係部材を介して連動連結した機構、その他の種々の連動機構を実施可能である。
【0047】
ところで建物の風除室Ri及びエントランスホールRoの周辺(例えば天井面2)には、周辺の人の動きを検知可能な不図示の非接触式センサ(例えば超音波センサ等の人感センサ)が設置されており、このセンサ及びモータ33が、建物内の不図示の制御装置に接続される。そして、センサが仕切壁Wに対する人の接近・離間を検出すると、その検出信号に基づいて制御装置がモータ33を作動制御して可動仕切板Dを自動的に開閉動作させるようになっている。
【0048】
而して、上記した開閉駆動装置Aの構成は、天井CEに配備される自動ドア用開閉駆動装置として従来周知であるため、これ以上の説明は省略する。
【0049】
次に第1実施形態の作用を説明する。前記した出入口O付きの仕切壁構造では、固定仕切板F及び可動仕切板Dを透明体としたことで開放感を演出可能となり、その上、固定仕切板F及び可動仕切板D間のカバー体Cも透明体としたことで、カバー体Cだけが不透明で目立ってしまうような虞れもなくなる。これにより、カバー体Cの存在で上記開放感が阻害されたり或いは外観上の体裁を損なうことが回避できるため、仕切壁W全体として開放感の更なる向上が図られ、仕切壁Wの全体的な商品価値が高められる。
【0050】
また第1実施形態のカバー体Cは、アクリル製の透明板で構成されるので、カバー体C(透明板)各部の成形加工が容易となり、これにより、歩行面1の下部構造や天井面2の上部構造が比較的複雑な形態であっても、それら上・下部構造にそれぞれ適合したカバー体Cの上・下部形態を容易に且つ精度よく製作可能となる。
【0051】
また第1実施形態の可動仕切板Dの下部には、これよりも幅広に形成されて該下部を被覆保護する下部保護部材としての受け部材H1が結合されており、カバー体Cの下部には、受け部材H1(下部保護部材)を逃げるための第1切欠き部Ck1が形成される。従って、可動仕切板Dの下部にこれより幅広の受け部材H1が結合されていても、この受け部材H1を逃げるための第1切欠き部Ck1を、アクリル製カバー体Cの下部に容易に且つ精度よく成形可能となる。
【0052】
また第1実施形態の可動仕切板Dの上部には、これよりも幅広に形成されて該上部を被覆保護する上部保護部材としての保持部材H2が結合され、カバー体Cの上部には、保持部材H2を逃げるための第2切欠き部Ck2が形成される。従って、可動仕切板Dの上部にこれより幅広の保持部材H2(上部保護部材)が結合されていても、この保持部材H2を逃げるための第2切欠き部Ck2を、アクリル製カバー体Cの上部に容易に且つ精度よく成形可能となる。
【0053】
更に第1実施形態の可動仕切板Dの下部には、これよりも幅広に形成した受け部材H1を介してスライダ14が結合され、歩行面1には、スライダ14を介して可動仕切板Dの下部を摺動可能に案内、支持する第1支持溝11a付きの下部支持枠10が埋設され、カバー体Cの下部には受け部材H1及び下部支持枠10を逃げるための第1切欠き部Ck1が形成されている。
【0054】
これにより、可動仕切板Dの下部にスライダ14を支持する幅広の受け部材H1が結合されていても、この幅広の受け部材H1と受け部材H1直下の下部支持枠10を逃げるための第1切欠き部Ck1を、アクリル製カバー体Cの下部に容易に且つ精度よく成形可能となる。
【0055】
更にまた第1実施形態では、天井CEの内部に設置される開閉駆動装置30が、天井内部で可動仕切板Dに沿って水平に延びる案内レール32と、案内レール32にその長手方向に走行可能に支持されてモータ33(アクチュエータ)により走行駆動可能なハンガ34(可動支持体)とを備え、可動仕切板Dの上部には可動仕切板Dよりも幅広の保持部材H2が固定されると共に、その保持部材H2とハンガ34との間が連結されていて、保持部材H2を介して可動仕切板Dがハンガ34に一体的に走行し得るよう吊持され、カバー体Cの上部には、保持部材H2を逃げるための第2切欠き部Ck2が形成されている。
【0056】
これにより、天井内部に配した開閉駆動装置30のハンガ34に連結して可動仕切板Dをハンガ34に吊持するための幅広の保持部材H2が可動仕切板Dの上部に結合されていても、この幅広の保持部材H2を逃げるための第2切欠き部Ck2を、アクリル製カバー体Cの上部に容易に且つ精度よく成形可能となる。
【0057】
ところで第1実施形態では、出入口O付き仕切壁Wが、出入口Oを挟む左右一対の固定仕切板F,Fと、出入口Oを開閉すべく左右一対の固定仕切板F,Fに沿って開閉移動可能な左右一対の可動仕切板D,Dと、固定仕切板Fと可動仕切板Dとの間の隙間を可動仕切板Dの開閉移動を許容しつつ覆うカバー体Cとを備えていて、左右一対の可動仕切板D(開閉扉)を所謂両開き式のものを例示したが、本発明は、このような両開き式のものに限定されない。
【0058】
例えば、
図8に示す
参考形態に係る仕切り壁Wにおいては、出入口Oに隣接した固定仕切板Fと、出入口Oを開閉すべく固定仕切板Fに沿って開閉移動可能な単一の可動仕切板Dと、固定仕切板Fと可動仕切板Dとの間の隙間を可動仕切板Dの開閉移動を許容しつつ覆うカバー体Cとを備えていて、可動仕切板Dが所謂片開き式のものに本発明を実施してもよ
い。
【0059】
而して、
参考形態においても、可動仕切板Dが片開き式である点を除いて、第1実施形態と基本的に同様の構成を有しており、
図8では、
参考形態の各構成要素に、これと対応する第1実施形態の構成要素の参照符号と同じ参照符号を付している。
【0060】
而して、この参考形態でも、第1実施形態の前記作用効果と同等の作用効果を発揮可能である。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はその実施形態に限定されることなく、本発明の範囲内で種々の実施形態を実施可能である。
【0062】
例えば、前記実施形態では、可動仕切板D及び固定仕切板Fを透明なガラス材で構成したものを示したが、本発明の第1,第2の特徴によれば、可動仕切板D及び固定仕切板Fの少なくとも一方をアクリル材で構成してもよい。
【0063】
また前記実施形態では、スライダ14が下部支持枠10(より具体的には第1支持溝11a)に摺動可能に直接係合、即ち面接触又は線接触するものを示したが、スライダ14の構造は前記実施形態に限定されず、例えばスライダ14に鉛直軸線回りに回転可能なローラを付設し、そのローラを介してスライダ14が下部支持枠10に接触するようにしてもよい。
【0064】
また前記実施形態では、人の動きを検知可能な非接触式センサに応動する開閉駆動装置Aを用いて、可動仕切板Dをアクチュエータとしてのモータ33で自動的に開閉駆動するものを例示したが、本発明は、可動仕切板Dを手動で開閉操作するものに実施してもよく、この場合は、可動仕切板Dに操作用の把手が付設される。
【0065】
また前記実施形態では、可動仕切板Dの自動開閉制御に関しオートロック設備の有無が説明されていないが、本発明は、オートロック設備の有る建物にも、また無い建物にも適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
A…開閉駆動装置、CE…天井、C…カバー体、Ck1,Ck2…第1,第2切欠き部、Ck1h,Ck2h…第1,第2切欠き部の水平面部、Ck1v,Ck2v…第1,第2切欠き部の鉛直面部、D…可動仕切板、F…固定仕切板、H1…下部保護部材としの受け部材、H2…上部保護部材としの保持部材、O…出入口、Ri…第1空間としての風除室、Ro…第2空間としてのエントランスホール、W…仕切壁、1…歩行面、2…天井面、10…下部支持枠、11…第1支持枠部、12…第2支持枠部、13…接続枠部、14…スライダ、14s…スライダの移動方向の両端部両側面、16…弾性材、32…案内レール、33…アクチュエータとしてのモータ、34…可動支持体としてのハンガ、14…シーラント
【要約】
【課題】建物の天井面と歩行面間に配設されて建物の第1空間と第2空間とを仕切る、出入口付きの仕切壁が、透明板より構成されて出入口を挟む一対の固定仕切板と、同じく透明板より構成されて出入口を開閉すべく一対の固定仕切板に沿って開閉移動可能な一対の可動仕切板と、固定仕切板の、出入口側の側端部に連設されて上下方向に延び、且つ固定仕切板と可動仕切板との間の隙間を可動仕切板の開閉移動を許容しつつ覆うカバー体とを備えた、建物における出入口付きの仕切壁構造において、固定仕切板及び可動仕切板を透明としたことで得られる開放感がカバー体の存在で阻害されたり或いは外観上の体裁を損なわれるのを回避して、仕切壁全体として開放感を更に向上させ、商品価値を高める。
【解決手段】上記課題を解決するために、カバー体Cが透明体より構成される。
【選択図】
図3