(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】温熱療法用入浴装置
(51)【国際特許分類】
A61H 33/00 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
A61H33/00 F
A61H33/00 L
(21)【出願番号】P 2021546965
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2020035384
(87)【国際公開番号】W WO2021054423
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-03-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2019186362
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594103862
【氏名又は名称】松井 嗣光
(74)【代理人】
【識別番号】240000039
【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 嗣光
【合議体】
【審判長】中村 則夫
【審判官】横溝 顕範
【審判官】北中 忠
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-276170(JP,A)
【文献】実開平7-356(JP,U)
【文献】特開2017-192931(JP,A)
【文献】特開2007-319538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00
A61N 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水温度を42~43℃に温度調整して給湯する給湯装置ないし給湯設備を具備し、給湯された温水を通過させて磁化させる磁化温水生成装置と、当該磁化温水生成装置で磁化された磁化温水を曝気する曝気装置とを浴槽(16)に付設してなる温熱療法用入浴装置であって、
前記磁化温水生成装置は、前記浴槽(16)の貯水中に設置される流水ポンプ(1)と、この流水ポンプ(1)の通水管(3)に接続され、永久磁石(6)を組み込んだ吸気部(5)を備え、大気を吸入する吸気管(4)と、前記通水管(3)の先端に取り付けられた
第1の曝気水噴出ノズル(8)とからなり、
前記
第1の曝気水噴出ノズル(8)は、外筒となるイジェクター管(2)と前記通水管(3)と連通する内筒となるからなる二重管構造とされ、イジェクター管(2)の外周面に複数の吸水孔(2a)が設けられ、これら複数の吸水孔(2a)から流入した水は内筒の外周面に水の流出方向に向かって刻設された複数の溝条(11)又は砂地粗面(12)に衝突しながら乱流を発生させると共に、内筒内部に配置された
第1のスタティックミキサー(13)によって旋回流を発生させると共に、発生した旋回流によって発生する減圧作用によるキャビテーション効果及び大気が加圧溶解された水流を減圧手段で圧力開放するベンチュリ効果により微細気泡を発生させ、磁界を付与しながら磁化微細気泡含水流を吐出させることを特徴とする温熱療法用入浴装置。
【請求項2】
溝条又は砂地粗面(12)が
第1の曝気水噴出ノズル(8)の内筒の内周面に
も刻設されていることを特徴とする請求項1記載の温熱療法用入浴装置。
【請求項3】
第1のスタティックミキサー(13)が、少なくとも2本直交して配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の温熱療法用入浴装置。
【請求項4】
第2の曝気水噴出ノズル(9)
は、第
2のスタティックミキサー(13)
を備えており、当該第2のスタティックミキサー(13)に発生する負圧を利用して空気を微細気泡として導入する自吸式の吸気孔(2b)を備え
るとともに、浴槽(16)の貯水外部に取り付けられていることを特徴とする請求項3記載の温熱療法用入浴装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴によって身体を所定温度の温水で温める温熱療法用入浴装置に関するものである。とくに、水流の発生を兼ね備えた曝気装置を用いて微細気泡を効率良く発生させ、供給する水に磁気を作用させて温熱療法に有用な微細気泡磁化水を生成する入浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスや癌細胞が正常な細胞に比べて熱に脆弱であることが知られていることから、体内にウイルスや癌細胞が増殖しないように、身体深部を所定温度温める温熱療法が有効であることが知られている。因みにウイルスや癌細胞が熱に弱いという理由は、以下のように考えられている。すなわち、ヒトの細胞は、42℃まで体温が上がっても生体内部環境の恒常性(ホメオスタシス)が働いて細胞周囲の血管が拡張し、体温を下げるため、生存が可能である。尚、体温が42.5℃以上に上がると、細胞内の酵素が働かなくなり、生体内部環境の恒常性(ホメオスタシス)が破綻して細胞が変質し、凝固して死滅する。
【0003】
一方、癌細胞には、このような生体内部環境の恒常性が働かず、例えば、41℃~42℃を超える高温では癌細胞の血管は収縮するため、熱が籠りやすく、癌幹部は熱に弱いものと考えられている。
【0004】
従来から温熱療法では、体温を42℃に一定時間だけ維持することで正常細胞を損傷することなく、癌細胞だけ障害を与えることができると考えられる温熱方法で体温を上げ、その体温を適当な時間維持するように温水など加熱媒体の熱量を制御するようにしている。(例えば、特許文献1、2及び3参照。)
【0005】
また、このような温熱療法によってヒトの細胞の蛋白質が変質し始めると、熱ショック蛋白70(Heat Shock Prtein 70;HSP70とも略称される。)という蛋白質が分泌されることが知られており、これにより高熱や細胞のストレス性の障害に対してこれを修復する作用がある。
【0006】
このようにヒトの健康状態に好ましい影響を与える温熱療法において、体温を上げるための温水やサウナ装置は、通常の入浴温度よりも高温に設定されているから、入浴者が熱によるストレスを感じることがあり、療法に必要な体温に上昇するまでの長時間入浴することは困難な場合が多くなる。
【0007】
このような熱ストレスは、肌で知覚された熱が脳でストレスとして感じられるのであるが、温浴による脳ストレスをできるだけ軽減させるために、例えば、浴槽に蓋をして患者の頭部のみを蓋の外へ露出させたり、頭部を含めて患者の身全体を浴槽に入れ、蓋を貫通させたパイプから酸素や麻酔ガスなどを供給するような装置が提案されている(特許文献4参照。)。
【0008】
この文献では、温浴に用いる水に青色系、その他の着色水を採用したり、目に色光を当てながら温浴することが知られており、また、音楽を聴きながら温浴すること、鍼灸、低周波、レーザーなどで経絡を刺激しながら温浴すること、頭部を冷やしたり、2種以上の宝石や金属イオンや磁場を働かせて脳ストレスを緩和して温浴することも提案されている。
【0009】
しかし、上記した公知技術によってストレスを緩和しながら行う温浴では、脳ストレスの緩和の程度は充分でなく、熱を知覚する皮膚から脳は刺激を感じ、皮膚は赤く炎症を起こしたりする場合もあり、温浴者の温度感受性を充分に抑制しているとはいえなかった。
【0010】
そこで、特許文献5では、浴槽を用いた温熱療法用装置において、42℃を超えるような高温水を用いて入浴しても皮膚に対する熱刺激が少なく、温水に対する体感温度ができるだけ低くなるようにし、可及的に快適に温熱療法のできる入浴装置を提供することを目的として、浴槽に付設された水の酸化還元電位の低減装置により浴槽内に入れた水の酸化還元電位が減じ、例えば、43℃の高温水でも体感温度が少なくとも1~2℃低くなり、皮膚に受ける熱刺激も小さくなり、そのために通常の入浴に使用される湯温39~41℃よりも高温、例えば、42~43℃でも比較的長時間の入浴が可能になるものが提案されている。
【0011】
一方、飲水に永久磁石の磁界を作用させて、健康増進に役立てるといったことは、古来より行われていた。例えば天然の磁鉄鉱の塊を井戸水に入れ、暫く放置した後にその水を飲み、病気の治療に役立てるといったことが行われていた。本発明者は、地球自体が磁性体であり、その自転と共に宇宙空間を磁界が転動し、それらの環境下で生物は地磁気に反応する羅針盤的機能を持ち合わせていることに着目した。例えば、1960年に磁気感知細菌が発見されているように、磁気細菌はマグネタイト微粒子を体内に保持している。そして、北半球に生息する磁気細菌はS極を指標として、南半球に生息する磁気細菌はN極を指標として行動することが判明している。そして、人や動物などの生体機能も内在する磁気物質が関与しているものと考察できる。
【0012】
また、水に磁気を作用させて磁化水を製造する装置は公知である。例えば、流体が流れる配管を挿通可能な挿通孔を有するホルダ部材と、このホルダ部材に組み込まれる複数の磁界発生器とからなる磁化水器(特許文献6参照。)、磁化室を複数個具備するとともに、それら複数の磁化室を通路により連通することによって内側磁化流路をなす内部ケーシングを形成し、磁化室に永久磁石とそれに磁気吸着するヨーク板とを組み合わせた磁化器を配置し、内部ケーシングの外側を外部ケーシングにより覆うことによって、内部ケーシングから流出した磁化水を履行させるとともに、その間に再度磁化作用を受ける外部磁化流路を形成して、管路を流れる水に磁気を作用させる水の磁化装置(特許文献7参照。)、水道管や供給管の通水路のまわりに磁力を着磁した磁気ブロックを水の流れ方向に位置と角度をずらして配設し、通過する水を磁気ブロックの磁力で旋回運動させて磁化水にするもの(特許文献8参照。)、右側半体と左側半体とを開閉すべくそれらを略枢着回転自在に連結する連結部と、右側半体に対し摺動自在に内設された左側超強力磁石とを備えた磁化水製造器(特許文献9参照。)等が提案されている。
【0013】
機械的な曝気システムとしては、例えば、液体中に気体が加圧溶解された気液溶解流体を減圧弁で圧力開放し、微細気泡を発生させながら吐出孔から液槽内に噴出吐出させるようにした微細気泡発生装置がある(特許文献10参照。)。また、原水の流れにより濾材層を流動化させながら曝気を行うもので、水の比重よりもやや大きな比重の粒形の濾材を用いて原水を上向きに通水し、濾材層を流動化させる流動床式曝気装置がある(例えば、特許文献11参照。)。
【0014】
浄化槽内底面とは所定の空間が存在するように、水中に没するように配置された反応筒と、反応筒内下部に配置され、エアレーションパイプに接続されて反応筒内にエアーを噴出するディフーザーと、反応筒内にフェノール露出基のある化合物を含む微生物代謝産物もしくは腐植物からなる溶出充填材が充填された充填層と、安山岩質、流紋岩質等の活性化した珪酸分が含まれる砕石からなる溶出充填材が充填された充填層と、浄化槽内に沈積した汚泥を引き抜く汚泥引抜管を備えた魚飼育用浄水装置が提案されている(例えば、特許文献12参照。)。
【0015】
水の構造は、水分子が水素によって互いに引きつけあった結合体(クラスター)から成っており、水道水のクラスターは、例えば、平均12個の水分子からできている。水は、磁気(磁力)の影響を受けると活性化するという性質を有しており、このため、水道水を磁力が働いている磁場を通過させると、例えば平均6個の水分子クラスターからなる磁化水が生成されるといった報告がある。水に磁界を作用させた場合の水の物理的変化だけでなく、水に含まれる活性水素といった化学的変化にも着目すると、永久磁石のS極とS極を対向させた環境下で活性水素が安定に存在しやすい。ここで、活性水素とは原子状水素原子のことで、活性酸素と容易に結合して水に変わることから、活性酸素の除去に効果があり、そのことが結果として、健康増進に働くことが報告されている。
【0016】
水の中には水素イオン(H+)、水酸イオン(OH-)が含まれていて、水素イオンは水酸イオンから電子を受け取り容易に原子状水素を生成するが、生成した活性水素は水中の溶存酸素及びカルシウム、ナトリウム、マグネシウムなどの陽イオンと接触することにより水や水素イオンになってしまうため非常に不安定である。しかし、原子状水素が生成したときにS極とS極あるいはN極とN極の同極同士を対向させた環境下にあると、原子状水素は磁気モーメントの方向が定まらない磁性原子と言っても良いため、本発明装置のS極とS極を対向させた環境下では活性水素は磁気モーメントの方向が定まらずに、水中をフラフラ動くことになるが、結果的には活性水素にとっては安定した環境であり、このことが磁化水中に活性水素が多く存在する結果となり磁化水の健康増進効果が発揮されるものと考察される。
【0017】
水に磁気を作用させて磁化水を製造する装置は公知である。例えば、流体が流れる配管を挿通可能な挿通孔を有するホルダ部材と、このホルダ部材に組み込まれる複数の磁界発生器とからなる磁化水器(特許文献13参照。)、磁化室を複数個具備するとともに、それら複数の磁化室を通路により連通することによって内側磁化流路をなす内部ケーシングを形成し、磁化室に永久磁石とそれに磁気吸着するヨーク板とを組み合わせた磁化器を配置し、内部ケーシングの外側を外部ケーシングにより覆うことによって、内部ケーシングから流出した磁化水を履行させるとともに、その間に再度磁化作用を受ける外部磁化流路を形成して、管路を流れる水に磁気を作用させる水の磁化装置(特許文献14参照。)、水道管や供給管の通水路のまわりに磁力を着磁した磁気ブロックを水の流れ方向に位置と角度をずらして配設し、通過する水を磁気ブロックの磁力で旋回運動させて磁化水にするもの(特許文献15参照。)、右側半体と左側半体とを開閉すべくそれらを略枢着回転自在に連結する連結部と、右側半体に対し摺動自在に内設された左側超強力磁石とを備えた磁化水製造器(特許文献16参照。)等が提案されている。
【0018】
また、水道水が介在するように対の電極を配置し、両電極に電圧を印加する電源を設け、さらに電極間電場に晒された水道水に気泡を生じさせる気泡発生手段を設け、水道水の塩素成分を除去する浄水器(特許文献15参照。)。噴出ノズルの胴部内にて、その管路に対して斜めに走る透水孔に水を通すことによって、流水に旋回力を与え、噴出ノズルの先端を管体の入水口に差込み、空気吸引間隙を設けた入水口の近傍で勢い良く流水を噴出させることで、流水に空気を取込み、これにより大気泡を生成し、この大気泡を旋回する流水のせん断力に応じて破裂させて、さらに小さな微細気泡を生成する微細気泡生成器(特許文献16参照。)。水道の蛇口部のネジに合わせて、微細気泡生成器本体にネジを施し、二次処理室導入口部に突起を施し、さらに永久磁石を置くことで気泡の微細化と比率を上げるようにされた微細気泡生成器(例えば、特許文献17参照。)等も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【文献】実公平6-5790号公報
【文献】特開2006-75320号公報
【文献】特開2008-142397号公報
【文献】WO03/057098再公表公報
【文献】特開2007-319538号公報
【文献】特開2005-169358号公報
【文献】特開2005-40694号公報
【文献】特開平11-165278号公報
【文献】特開2003-24949号公報
【文献】特開2001-347145号公報
【文献】特開平3-38289号公報
【文献】特公平7-41246号公報
【文献】特開平11-165278号公報
【文献】特開2003-24949号公報
【文献】特開2001-232365号公報
【文献】特開2007-117799号公報
【文献】実用新案登録第3145914号公報
【文献】WO03/002044再公表公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は上記のような従来技術の課題に鑑み、浴槽を用いた温熱療法用装置において、42℃を超えるような高温水を用いて入浴しても皮膚に対する熱刺激が少なく、長時間の入浴が可能になり可及的に快適に温熱療法のできる入浴装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために、本発明に係る温熱療法用入浴装置は温水温度を42~43℃に温度調整して給湯する給湯装置ないし給湯設備を具備し、給湯された温水を通過させて磁化させる磁化温水生成装置と、当該磁化温水生成装置で磁化された磁化温水を曝気する曝気装置とを浴槽(16)に付設してなる温熱療法用入浴装置であって、
前記磁化温水生成装置は、前記浴槽(16)の貯水中に設置される流水ポンプ(1)と、この流水ポンプ(1)の通水管(3)に接続され、永久磁石(6)を組み込んだ吸気部(5)を備え、大気を吸入する吸気管(4)と、前記通水管(3)の先端に取り付けられた第1の曝気水噴出ノズル(8)とからなり、
前記第1の曝気水噴出ノズル(8)は、外筒となるイジェクター管(2)と前記通水管(3)と連通する内筒となるからなる二重管構造とされ、イジェクター管(2)の外周面に複数の吸水孔(2a)が設けられ、これら複数の吸水孔(2a)から流入した水は内筒の外周面に水の流出方向に向かって刻設された複数の溝条(11)又は砂地粗面(12)に衝突しながら乱流を発生させると共に、内筒内部に配置された第1のスタティックミキサー(13)によって旋回流を発生させると共に、発生した旋回流によって発生する減圧作用によるキャビテーション効果及び大気が加圧溶解された水流を減圧手段で圧力開放するベンチュリ効果により微細気泡を発生させ、磁界を付与しながら磁化微細気泡含水流を吐出させることを第1の特徴とする。
また、溝条又は砂地粗面(12)が第1の曝気水噴出ノズル(8)の内筒の内周面にも刻設されていることを第2の特徴とする。また、第1のスタティックミキサー(13)が、少なくとも2本直交して配置されることを第3の特徴とする。
さらに、第2の曝気水噴出ノズル(9)は、第2のスタティックミキサー(13)を備えており、当該第2のスタティックミキサー(13)に発生する負圧を利用して空気を微細気泡として導入する自吸式の吸気孔(2b)を備えるとともに、浴槽(16)の貯水外部に取り付けられていることを第4の特徴とする。
【0022】
温熱処理温度は、処理時間との関係で一概には特定できないが、42℃~44℃の温度が望ましく、43℃が最適である。42℃未満では増殖抑制効果が不十分であり、44℃を超えると、増殖する平滑筋細胞の強い抑制はみられるが、増殖能力をもたない正常な収縮型平滑筋細胞をも細胞死に至らしめ、加えて血管内皮細胞の増殖も抑制され始める。また、温熱処理時間は、90~180分の範囲が好適で、120分が最適である。処理時間が90分未満では所望の増殖抑制効果は認められず、180分を超えても120分と略同程度の増殖抑制しか認めらない。加えて、増殖能力を持たない正常な収縮型血管平滑筋細胞及び血管内皮細胞の増殖に対して悪影響を与えるおそれがあり、以上のことから、血管平滑筋細胞を増殖刺激して2時間経過後に、43℃、2時間の温熱処理を加えるのがもっとも望ましいという報告がされている(特許文献18参照。)。
【0023】
本発明によれば、以下の優れた効果がある。
(1)内部体温を42℃に一定時間維持することで正常細胞を損傷することなく、癌細胞だけ毀損することができる。
(2)湯温よりも体感温度が少なくとも1~2℃低くなり、皮膚が受ける熱刺激も小さくなり、そのために通常の入浴に使用される湯温39~41℃よりも高温、例えば、42~43℃でも比較的長時間の入浴が可能になる。
(3)ベンチュリ管の曝気水吐出側の端部に、側面視で略U字状断面の凹条又は砂地粗面を形成することにより、渦流との相互作用により微細気泡がさらに細分化され微細気泡の発生量を大幅に増加させることができる。
(4)浴槽内の温水の循環、圧送のために別途液流発生装置を設ける必要がなく、小型、軽量、省スペース化を図ることができる。
(5)1台の装置で酸素供給及び水流の発生が同時にでき、吸気又は流水により自ずと交番磁界が付与されるので、磁界を発生させるために特段の動力を要しない。
(6)曝気水噴出ノズルにアルモファス磁性体を具備することで、温水の磁化作用効果はより一層確実に奏される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る温熱療法用入浴装置の一実施例を示す模式図である。
【
図4】イジェクター管の一例を示す(a)は側面断面図、(b)は正面図である。
【
図5】イジェクター管への溝条の刻設例を示す斜視図である。
【
図6】本発明に係る曝気装置の他の実施例を示す模式図である。
【
図8】曝気水噴出ノズルを示す(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。
【
図9】温熱療法用入浴装置の一実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施形態を以下に示す実施例に基づいて説明する。
図1に示す実施例の温熱療法用入浴装置は、浴槽に水温調整可能な温湯のボイラーによる供給又はガス又は電気ヒーターなどによる保温可能な保温用ヒーターを備えた給湯設備を具備し、曝気磁化水生成装置15は、水中に設置される流水ポンプ1と、水上に設けられた磁石6を組み込んだ吸気部5と、流水ポンプ1に接続された吸水管7と減圧部として機能する通水管(ベンチュリ管)3と、この通水管3に接続された吸気管4と、イジェクター管2を備えた
第1の曝気水噴出
ノズル8とからなることを基本的な構成としている。
【0026】
給湯装置(図示せず)は、ボイラーから湯と水とを貯水タンクに混合して湯温を調整するばかりでなく、浴槽内の定量の湯を循環させて保温可能とするために、通常は、循環経路を有している。循環経路は、保温のためばかりではなく、浴槽内の湯を何度も磁化水生成装置に通過させてその作用を確実にするために利用される。
【0027】
吸気部5は、
図2に示すように、両端部が潰された扁平な吸気口5aを持つものや、
図3に示すように、磁石6を内蔵したプロペラ10を備え、吸入した大気Aを吸気管4に送出する。通水管3は、吸気部5から吸入した大気Aを減圧及び加圧するベンチュリ効果を利用したもので、上流側から下流側に向かって拡径した長いテーパ部3aが形成され、このテーパ部3aの吐出側の端部(出口部分)が外向きラッパ状に形成されている。そして、外気Aを取り込んで気泡が混合された気液混合水AWを生成する。
【0028】
通水管3では、流水中に発生した気泡がテーパ状管内を通過する際に流速が速くなると共に減圧されて膨張し、その後は断面積が増加するにしたがって加圧されて収縮するが、この時に生じるせん断力によって気泡が細分化され微細気泡が発生する。
【0029】
図4乃至
図5に示すように、さらに、水流はイジェクター管2を備えた
第1の曝気水噴出
ノズル8に導入され、その内壁面に沿って旋回流となり、発生した遠心力によりその中心部には吸引力が発生し、イジェクター管2の吸水口2aから貯水を吸引する。同時に旋回水流が大気を吸引し、管内部に突設された4本の
第1のスタティックミキサー13の流水誘導溝14により、水流が出口方向に下降、出口付近は下からの逆の吸引力とのせめぎ合いによってせん断され微細気泡となる。さらに、
第1の曝気水噴出
ノズル8出口周りの内外周面に形成した溝条11や砂地粗面12に旋回流を衝突させることで発生する乱流等で空洞現象(キャビテーション)が発生し、さらに微細化発泡を促進する。
【0030】
すなわち、水槽又は水域の貯水W中に設置される流水ポンプ1と、この流水ポンプ1の通水管3に接続され大気を吸入する吸気管4と、この通水管3の先端に取り付けられた第1の曝気水噴出ノズル8とからなり、この第1の曝気水噴出ノズル8外部から内部へ貯水を吸引する吸水部2aが設けられ、第1の曝気水噴出ノズル8内部で旋回流を発生させると共に、発生した旋回流によって発生するよる減圧作用によるキャビテーション効果及び大気が加圧溶解された水流を減圧手段で圧力開放するベンチュリ効果により微細気泡を発生させ磁界を付与しながら磁化微細気泡含水流を吐出させる。
【0031】
また、
図6乃至
図8に示すように、供給水にN、Sの交番磁界を創出するための複数の永久磁石6と
第2のスタティックミキサー13を付し、吸気孔2bから大気を吸入して、そのキャビテーション作用により微細気泡を発生させる
第2の曝気水噴出ノズル9を貯水外部に取り付ける形式のものでもよい。この場合、水の磁化と同時に曝気を行って溶存酸素を補うことができ、例えば、養殖池への供給水ノズルとして使用して有益である。尚、
第2のスタティックミキサー13に換えて
図10に示すように、プロペラ10を使用して曝気を行ってもよく、所期の効果を得ることができる。
【0032】
尚、大気の吸気部としてはスタティックなインペラーに発生する負圧に向って空気が吸込まれる方式のものも利用でき、上記実施例のほか、インペラーに沿う円筒パイプの孔から空気が吸込まれるもの、パイプの通気口と通気可能に固定した中空箱型のインペラーの背面に気体噴出孔を穿設したもの、パイプに螺旋状に取付けたインペラーの回転方向の背面に沿う円筒パイプに螺旋状に気体噴出口を取付けたもの等も利用できる。
【0033】
このような自吸式の吸気部は、多量の大気Aを極微細気泡として流水中に発生させることができる。すなわち、流水中に強力な真空圧を発生させ、小さなエネルギーで大気を流水中に吸引させることができる。また、空気が極微細化されるため酸素の溶解効率を高めることができる。
【0034】
本発明で使用する永久磁石としては、例えば、ネオジウム系磁石、サマリウム系磁石などの表面3000ガウス以上の永久磁石が好ましい。とくにアモルファス磁性体であれば、温水の磁化作用効果はより一層確実に奏される。
【0035】
このように磁化された温水は、水分子のクラスターが小さくなっている(単分子水又はそれに近いもの)など、分子レベルで水の状態が変化しているものと考えられており、接触通過した鉱物性無機物質から溶出した無機イオン(例えば、2価又は3価の無機イオン、例えば鉄イオンなど)を含み、また種々の物質によく浸透する物性がある他、通常の水道水などの水に比べて酸化還元電位(ORP)が低下した物性を有している。
【0036】
また、磁生体に接触した際に、Fe2+、Fe3+などのイオンの溶出、水分子のクラスターを崩壊させる小クラスター化、または溶け出したイオンを中心にするなどして小分子集団化させると考えられ、これに伴って水素結合が切れて活性水素量が増加するなどの何らかの物理化学作用により、結果的に接触した温水の酸化還元電位(ORP)も低下させていると考察される。
【0037】
図9に示すように、実施例の給湯装置は、図外の上水道などの水供給源に接続されており、水はボイラーを経由して所定温度(通常は60℃程度)に加熱された湯として直接に供給される場合もあるが、水供給源の外気温程度またはそれにより低温非加熱の水と、貯湯タンク内で混合されて所定温度(46℃程度)に温度調整され、この温水がパイプを経由してポンプを介して給湯循環兼用水路を経由し、磁化された温水が浴槽16内に給湯される。尚、図中17は水中の流水ポンプ1を安置させる沈下用ウエイトである。
【0038】
上記構成の温熱療法用入浴装置を用いて温熱療法のため、温湯を42.5~43℃に調整して入浴させると、細胞の酸性が強くなり、酸性化により熱感受性が大きく、熱ショック蛋白(Hsp)の産生により癌細胞が非自己であると抗原提示され、体温上昇により活性化された免疫細胞の効果的な攻撃を助長する。癌細胞の生存率は42.5℃以上で大きく低下し、加温温度が高いほど、時間が長くなるほど生存率は低下すると考察される。
【0039】
その最に、温水の酸化還元電位は曝気磁化水生成装置15よって減じられるため、実際に43℃の高温水では体感温度が少なくとも1~2℃は低くなり、長時間の熱ストレスのない入浴による温熱療法が可能になる。実際、水の酸化還元電位は、原水の水道水では500~550mV(酸性側)であったのに対して、酸化還元電位(ORP)低下装置を通過させた実施形態の浴槽内の水では190mVであり、これは人間の体表面の電位-50~100mVに極めて近いORP値(アルカリ性側)であることが確認できた。
【0040】
そして、皮膚における熱刺激も小さくなり、そのため通常では熱ストレスのために入浴が難しいと思われる内部体温39~40℃(±0.5℃の範囲で制御)に維持するための、例えば約42~43℃の湯水でもそれほど熱く感じられず、30~40分又はそれ以上でも入浴が可能となり、上記の温熱療法の治療用として極めて有利なものであることが複数の使用者のアンケート調査よっても明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0041】
DNA損傷が多いために修復できなかったり、修復にミスが起きたりして異常な遺伝子が残ることで突然変異を持つようになった細胞は自殺させられるが(アポトーシス)、これは癌抑制遺伝子の働きによるものである。遺伝子異常をもったままアポトーシスできない細胞が残って突然変異が蓄積されると発癌のリスクが増える。本発明装置によれば、このように蓄積された癌細胞を恣意的に異常体温状態に導きアポトーシスさせることで寛解の一助となり得ると考察される。
【符号の説明】
【0042】
1 流水ポンプ
2 イジェクター管
2a吸水孔
2b吸気孔
3 通水管
4 吸気管
5 吸気部
5a吸気口
6 永久磁石
7 吸水管
8 第1の曝気水噴出ノズル
9 第2の曝気水噴出ノズル
10磁石内蔵プロペラ
11溝条
12砂地粗面
13第1又は第2のスタティックミキサー
14流水誘導溝
15曝気磁化水生成装置
16浴槽
17沈下用ウエイト
W 水流
A 大気