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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】染毛用および脱色用第2剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20240610BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20240610BHJP
   A61Q 5/08 20060101ALI20240610BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240610BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20240610BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
A61K8/86
A61Q5/10
A61Q5/08
A61K8/34
A61K8/39
A61K8/02
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020036284
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021138633
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】松崎 晃一
【審査官】井上 莉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-154987(JP,A)
【文献】特開2004-269466(JP,A)
【文献】特開2005-162665(JP,A)
【文献】特開2019-081737(JP,A)
【文献】特開2021-098664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
染毛用および脱色用第1剤組成物と用時混合して使用する染毛用および脱色用第2剤組成物であって、
(A)ステアリルアルコール、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン性界面活性剤を含有し、
前記(B)成分は(B1)エチレンオキシドの付加モル数が20未満であるポリエチレン鎖を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン性界面活性剤および(B2)エチレンオキシドの付加モル数が20以上であるポリエチレン鎖を有するポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン性界面活性剤であり、
前記(A)成分の含有量が2~7.5質量%であり、前記(B)成分の含有量が3.9~6質量%であり、
20℃における粘度:V(20℃)に対する40℃における粘度:V(40℃)の粘度比:V(40℃)/V(20℃)が0.9~1.1であることを特徴とする染毛用および脱色用第2剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染毛用および脱色用第2剤組成物に関する。さらに詳しくは、染毛用および脱色用第1剤組成物と用時混合して使用する染毛用および脱色用第2剤組成物であって、高温時でも良好な使用性を維持し、かつ高温時での経時安定性に優れた染毛用および脱色用第2剤組成物に関する。
【0002】
近年のファッション意識の高まりから、手軽に髪の色を変化させることのできるヘアカラーリング剤は、男女問わず多くの人に受け入れられている。ヘアカラーリング剤には、永久染毛剤、半永久染毛料、脱色剤および一時着色料など、様々な種類があり、それぞれのニーズによって使用される。中でも永久染毛剤および脱色剤は、染毛および脱色効果に優れ、この特性から現在多くの人に使用されているヘアカラーリング剤である。
【0003】
永久染毛剤および脱色剤として、酸化染料を含有し、あるいは含有せず、アルカリ剤を含有する第1剤組成物と、過酸化水素などの酸化剤を含有する第2剤組成物からなる二剤式が広く利用されている。これらは使用の直前にトレーやボトル状の容器で予め染毛用および脱色用第1剤組成物と第2剤組成物を混合してから毛髪上に塗布する方法またはブラシなどを用いて毛髪上で混合する方法などがあり、いずれの使用方法においても、塗布時に混合物の垂れ落ちや飛び散りが起こらないことが求められ、これまでにいくつかの染毛用および脱色用組成物が提案されている(特許文献1~特許文献3)。
【0004】
一般的に染毛用および脱色用第1剤組成物および第2剤組成物の剤型としては、クリーム状、乳液状またはゲル状などがあり、これらは界面活性剤や高分子による乳化組成物、可溶化組成物や増粘組成物などがある。
【0005】
また、二剤式の染毛用および脱色用第1剤組成物と第2剤組成物の粘度は、その剤形、使用方法および混合方法により適宜設定される。一般的には、混合性の観点から、染毛用および脱色用第1剤組成物と第2剤組成物の粘度は同程度に設定されることが多い。
【0006】
ところで、ヘアカラーリング剤は、消費者のニーズによって様々な色調が望まれる。二剤式永久染毛剤の場合、色調により染毛用第1剤組成物中の酸化染料やアルカリ剤の種類や含有量は異なり、そのため色調ごとに処方が異なる。一方で、染毛用第2剤組成物は、色調の種類を問わず共通のものを使用するため、多くの処方を用意する必要がない。
【0007】
また、二剤式の染毛用および脱色用第1剤組成物と第2剤組成物の混合比率は1:1や1:2など、第1剤組成物に対して第2剤組成物は同量もしくはそれ以上であることが多い。このため、混合物の粘度は第2剤組成物の粘度に依存する傾向にある。
【0008】
従って、染毛用および脱色用第2剤組成物が良好な使用性を有すれば、様々な染毛用および脱色用第1剤組成物と組み合わせても、良好な使用性を有する染毛用および脱色用組成物を得ることが容易である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2003-81790号公報
【文献】特開2003-238371号公報
【文献】特開2004-83454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
染毛用および脱色用組成物が乳化組成物の場合、乳化組成物の温度が上昇するほど、粘度は低下し、使用時に垂れ落ちや飛び散りが起こる恐れがある。冷暖房機器を使用している場合の一般的な室温は20℃前後であるが、真夏時に冷房機器を使用しない場合の室温は40℃(本発明において、高温を意味する)に達することもある。また、倉庫などで保管される場合、夏場では高温環境下で長期間保管されることもある。乳化組成物は高温環境下では、合一やクリーミングが促進され、分離を引き起こしやすい。特に、染毛用および脱色用第2剤組成物は過酸化水素を含有し、pHも低いため、一般的な乳化組成物よりも経時安定性が低下しやすい。従って、20℃~40℃の温度領域において、良好な使用性を維持し、かつ高温時での経時安定性に優れた染毛用および脱色用第2剤組成物が求められる。
【0011】
しかしながら、いずれの特許文献においても、高温時における使用性および高温時における経時安定性については考慮されていなかった。
【0012】
そこで本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、染毛用および脱色用第1剤組成物と用時混合して使用する染毛用および脱色用第2剤組成物であって、高温時でも良好な使用性を維持し、かつ高温時での経時安定性に優れた染毛用および脱色用第2剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、染毛用および脱色用第1剤組成物と用時混合して使用する染毛用および脱色用第2剤組成物の20℃における粘度:V(20℃)に対する40℃における粘度:V(40℃)の粘度比:V(40℃)/V(20℃)を、特定の範囲内にすることにより、上記課題が解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、染毛用および脱色用第1剤組成物と用時混合して使用する染毛用および脱色用第2剤組成物であって、20℃における粘度:V(20℃)に対する40℃における粘度:V(40℃)の粘度比:V(40℃)/V(20℃)が0.8以上であることを特徴とする染毛用および脱色用第2剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の染毛用および脱色用第2剤組成物は、染毛用および脱色用第1剤組成物と用時混合して使用する染毛用および脱色用第2剤組成物であって、高温時でも良好な使用性を維持し、かつ高温時での経時安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、含有量を示す単位は、特に明記しない限り全て質量%である。
【0017】
本発明の染毛用および脱色用第2剤組成物について説明する。
【0018】
本発明における染毛用および脱色用第2剤組成物は、高温時でも良好な使用性を維持する観点から、20℃における粘度:V(20℃)に対する40℃における粘度:V(40℃)の粘度比:V(40℃)/V(20℃)が0.8以上である。
【0019】
本発明における染毛用および脱色用第2剤組成物の前記粘度比:V(40℃)/V(20℃)は0.8以上であればよく、上限値は特に限定されないが、高温時でも良好な使用性の維持および高温時での経時安定性の観点から、0.8~1.2であることが好ましく、0.9~1.1がより好ましい。前記粘度比:V(40℃)/V(20℃)が0.8未満の場合、高温時に安定した使用性を維持できない恐れがある。また前記粘度比:V(40℃)/V(20℃)が1.2を超える場合、高温時での染毛用および脱色用第1剤組成物との混合性が悪くなる恐れがある。
【0020】
本発明における染毛用および脱色用第2剤組成物の20℃の条件下における粘度:V(20℃)は、常法にて調製して得られた染毛用および脱色用第2剤組成物を140g容量のサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、20℃で1日間静置し調温した後に、ヘリカルスタンド付B型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)により、4号ローターにて1分間、粘度50,000mPa・s未満では回転速度12rpm、粘度50,000mPa・s以上では回転速度6pmの条件下で測定したものである。
【0021】
本発明における染毛用および脱色用第2剤組成物の40℃の条件下における粘度:V(40℃)は、常法にて調製して得られた染毛用および脱色用第2剤組成物を140g容量のサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、40℃で1日間静置し調温した後に、ヘリカルスタンド付B型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)により、4号ローターにて1分間、粘度50,000mPa・s未満では回転速度12rpm、粘度50,000mPa・s以上では回転速度6pmの条件下で測定したものである。
【0022】
本発明における染毛用および脱色用第2剤組成物の粘度比:V(40℃)/V(20℃)とは、前記の測定法により測定された40℃での粘度:V(40℃)を20℃での粘度:V(20℃)で除した値である。
【0023】
本発明における染毛用および脱色用第2剤組成物は、高温時でも良好な使用性を維持する観点から(A)ステアリルアルコールを含有する。
【0024】
本発明で用いられる前記(A)成分の含有量は、特に限定されないが、高温時でも良好な使用性の維持および高温時での経時安定性の観点から、1~10%が好ましく、2~7.5%がより好ましい。前記(A)成分の含有量が1%未満の場合、高温時に良好な使用性を維持できない恐れおよび高温時での経時安定性が低下する恐れがある。前記(A)成分の含有量が10%を超える場合、高温時に良好な使用性を維持できない恐れがある。
【0025】
本発明における染毛用および脱色用第2剤組成物は、乳化安定性の観点から、(B)ポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン性界面活性剤を含有する。
【0026】
本発明で用いられる前記(B)成分としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレン(以下、POEという)ラウリルエーテル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEベヘニルエーテルなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を含有することができる。その中でも、臭いのなさの観点から、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテルが好ましい。
【0027】
本発明に用いる前記(B)成分は、高温時での経時安定性の観点から、2種以上含有することが好ましく、(B1)エチレンオキシドの付加モル数が20未満であるポリエチレン鎖を有するPOEアルキルエーテル型ノニオン性界面活性剤および(B2)エチレンオキシドの付加モル数が20以上であるポリエチレン鎖を有するPOEアルキルエーテル型ノニオン性界面活性剤を含有することがより好ましい。
【0028】
本発明で用いられる前記(B1)成分としては、特に限定されないが、例えば、POE(2)ラウリルエーテル(HLB:6.42)、POE(4.2)ラウリルエーテル(HLB:9.72)、POE(9)ラウリルエーテル(HLB:13.61)、POE(2)セチルエーテル(HLB:5.33)、POE(5)セチルエーテル(HLB:9.52)、POE(5.5)セチルエーテル(HLB:10.43)、POE(7)セチルエーテル(HLB:11.2)、POE(8)セチルエーテル(HLB:11.85)、POE(10)セチルエーテル(HLB:12.9)、POE(13)セチルエーテル(HLB:14.05)、POE(15)セチルエーテル(HLB:14.63)、POE(2)ステアリルエーテル(HLB:4.92)、POE(4)ステアリルエーテル(HLB:7.89)、POE(11)ステアリルエーテル(HLB:12.84)、POE(15)ステアリルエーテル(HLB:14.19)、POE(2)オレイルエーテル(HLB:4.92)、POE(7)オレイルエーテル(HLB:10.69)、POE(10)オレイルエーテル(HLB:12.43)、POE(15)オレイルエーテル(HLB:14.22)、POE(5)ベヘニルエーテル(HLB:8.06)、POE(10)ベヘニルエーテル(HLB:11.49)などが挙げられ、これらは1種または2種以上を含有することができる。その中でも、高温時でも良好な使用性を維持および臭いのなさの観点から、POE(2)セチルエーテル(HLB:5.33)、POE(5)セチルエーテル(HLB:9.52)、POE(5.5)セチルエーテル(HLB:10.43)、POE(7)セチルエーテル(HLB:11.2)、POE(8)セチルエーテル(HLB:11.85)、POE(10)セチルエーテル(HLB:12.9)、POE(13)セチルエーテル(HLB:14.05)、POE(15)セチルエーテル(HLB:14.63)が好ましい。
【0029】
本発明で用いられる前記(B2)成分としては、特に限定されないが、例えば、POE(21)ラウリルエーテル(HLB:16.65)、POE(25)ラウリルエーテル(HLB:17.11)、POE(20)セチルエーテル(HLB:15.69)、POE(23)セチルエーテル(HLB:16.14)、POE(25)セチルエーテル(HLB:16.39)、POE(30)セチルエーテル(HLB:16.9)、POE(40)セチルエーテル(HLB:17.58)、POE(150)セチルエーテル(HLB:19.29)、POE(20)ステアリルエーテル(HLB:15.3)、POE(30)ステアリルエーテル(HLB:16.6)、POE(40)ステアリルエーテル(HLB:17.34)、POE(100)ステアリルエーテル(HLB:18.84)、POE(20)オレイルエーテル(HLB:15.33)、POE(50)オレイルエーテル(HLB:17.83)、POE(20)ベヘニルエーテル(HLB:14.59)、POE(30)ベヘニルエーテル(HLB:16.04)などが挙げられ、これらは1種または2種以上を含有することができる。その中でも、高温時での良好な使用性を維持および臭いのなさの観点から、POE(20)セチルエーテル(HLB:15.69)、POE(23)セチルエーテル(HLB:16.14)、POE(25)セチルエーテル(HLB:16.39)、POE(30)セチルエーテル(HLB:16.9)、POE(40)セチルエーテル(HLB:17.58)が好ましい。
【0030】
本発明に用いられる前記(B)成分の含有量は、特に限定されないが、高温時でも良好な使用性の維持する観点から、1~6%が好ましく、3.9~6%がより好ましい。前記(B)成分の含有量が1%未満の場合、高温時に良好な使用性を維持できない恐れがある。前記(B)成分の含有量が6%を超える場合、すすぎ時の指通りが悪くなる恐れがある。
【0031】
本発明に用いられるPOEアルキルエーテル型ノニオン性界面活性剤の平均HLB値は、特に限定されないが、高温時でも良好な使用性の維持および高温時での経時安定性の観点から、11.7~17.1が好ましく、14.5~15.8がより好ましい。POEアルキルエーテル型ノニオン性界面活性剤の平均HLB値が11.7未満の場合、高温時での経時安定性が低下する恐れがある。POEアルキルエーテル型ノニオン性界面活性剤の平均HLB値が17.1を超える場合、高温時に良好な使用性を維持できない恐れがある。
【0032】
本発明における「HLB」とは、親水性と親油性のバランス:HYDROPHILE―LIPOPHILE BALANCEの略称であって、界面活性剤の分子が持つ親水性と親油性の相対的な強さを表すパラメーターである。HLBの値が大きいほど親水性が強く、HLBの値が小さいほど親油性が強い。
【0033】
本発明におけるHLB値は、Griffinの式により求められる値であり、平均HLB値とは、POEアルキルエーテル型ノニオン性界面活性剤を1種単独で用いる場合はそのもの単独のHLB値を意味する。また、2種以上のPOEアルキルエーテル型ノニオン性界面活性剤を組み合わせて用いる場合は、Griffinの式および各々の含有量を基に求められるこれら複数のPOEアルキルエーテル型ノニオン性界面活性剤全体の平均HLB値を意味する。
【0034】
本発明における染毛用および脱色用第2剤組成物は、粘度調整の観点から、前記(A)成分以外の炭素数12~22の高級アルコールを含有する。
【0035】
本発明で用いられる前記(A)成分以外の炭素数12~22の高級アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベヘニルアルコールなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を含有することができる。その中でも、乳化安定性の観点から、セチルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが好ましく、セチルアルコールおよびベヘニルアルコールがより好ましい。
【0036】
本発明で用いられる前記(A)成分以外の炭素数12~22の高級アルコールの含有量は、特に限定されないが、染毛用および脱色用第1剤組成物との混合性の観点から、0.5~10%が好ましい。前記(A)成分以外の炭素数12~22の高級アルコールの含有量が0.5%未満の場合、乳化安定性が低下する恐れがある。前記(A)成分以外の炭素数12~22の高級アルコールの含有量が10%を超える場合、染毛用および脱色用第1剤組成物との混合性が低下する恐れがある。
【0037】
本発明における染毛用および脱色用第2剤組成物は、粘度調整およびすすぎ時の指通りの観点から、炭化水素を含有する。
【0038】
本発明で用いられる炭化水素としては、特に限定されないが、例えば、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、スクワランなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を含有することができる。その中でも、すすぎ時の指通りの観点から、流動パラフィンが好ましい。
【0039】
本発明で用いられる炭化水素の含有量は、特に限定されないが、粘度調整および染毛後の毛髪のべたつきの観点から、1~10%が好ましい。炭化水素の含有量が1%未満の場合、所望の粘度が得られない恐れがある。炭化水素の含有量が10%を超える場合、染毛後の毛髪にべたつきを与える恐れがある。
【0040】
本発明における染毛用および脱色用第2剤組成物には、染毛性および脱色性の観点から、酸化剤を含有する。
【0041】
本発明で用いられる酸化剤は、特に限定されないが、例えば、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、過酸化塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物、臭素酸ナトリウムなどが挙げられ、これらは1種または2種以上を含有することができる。その中でも、染毛性および脱色性の観点から、過酸化水素が好ましい。
【0042】
本発明で用いられる酸化剤の含有量は、特に限定されないが、染毛性および脱色性の観点から、2~6%が好ましい。前記酸化剤の含有量が2%未満の場合、十分な染毛性および脱色性が得られない恐れがある。また前記酸化剤の含有量が6%を超える場合、染毛性および脱色性はそれ以上の向上を期待できにくい。
【0043】
本発明における染毛用および脱色用第2剤組成物は、酸化剤の安定性を向上させる観点から、酸または金属封鎖剤を含有する。
【0044】
本発明で用いられる酸または金属封鎖剤は、特に限定されないが、リン酸、エデト酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸およびそれらの塩類などが挙げられ、これらは1種または2種以上を含有することができる。
【0045】
本発明における染毛用および脱色用第2剤組成物は、上記成分の他に必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で上記成分以外の通常の化粧料、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種成分、例えば、界面活性剤、両性高分子、カチオン性高分子、アニオン性高分子、油性成分、保湿剤、増粘剤、薬効成分、蛋白誘導体、加水分解蛋白、アミノ酸類、植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、防腐剤、pH調整剤、香料などから選ばれる1種または2種以上を含有することができる。ただし、これら例示に限定されるものでない。
【0046】
本発明における染毛用および脱色用第2剤組成物の剤型は、クリーム状、乳液状またはゲル状であることが好ましい。
【0047】
本発明における染毛用および脱色用第2剤組成物の粘度は、染毛用および脱色用第1剤組成物との混合性との観点から、20℃の条件下で3,000~100,000mPa・sであることが好ましい。
【0048】
本発明における染毛用および脱色用第2剤組成物のpHは、20℃の条件下で1.5~3.5であることが好ましい。
【0049】
本発明における染毛用および脱色用第2剤組成物の20℃の条件下でのpHは、常法にて調製して得られた染毛用および脱色用第2剤組成物を20℃で1日間静置し調温した後に、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(F-71、株式会社堀場製作所製)にて測定したものである。
【0050】
本発明に用いられる染毛用第2剤組成物は、ポリ容器、アルミチューブ容器、エアゾール容器、パウチ容器などの各種容器に充填され、使用時まで保存される。
【0051】
本発明の染毛用および脱色用第1剤組成物について説明する。
【0052】
本発明における染毛用第1剤組成物は、染毛性の観点から、酸化染料を含有する。
【0053】
本発明で用いられる酸化染料としては、特に限定されないが、例えば、パラフェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン、オルトアミノフェノール、パラアミノフェノール、メタアミノフェノール、5-アミノオルトクレゾール、2,6-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、1-ナフトール、レゾルシンおよびそれらの塩類などが挙げられ、その他、「医薬部外品原料規格2006 統合版」(2013年11月発行、薬事日報社)に収載されたものも適宜用いることができる。これらの1種または2種以上を含有することができる。
【0054】
本発明で用いられる酸化染料の含有量は、特に限定されないが、染毛性の観点から、0.2~10%が好ましく、1~8%がより好ましく、2~6%がさらに好ましい。酸化染料の含有量が0.2%未満の場合、十分な染毛性が得られない恐れがある。酸化染料の含有量が10%を超える場合、染毛性はそれ以上の向上を期待できにくい。
【0055】
本発明における染毛用および脱色用第1剤組成物は、染毛性および脱色性の観点からアルカリ剤を含有する。
【0056】
本発明で用いられるアルカリ剤としては、特に限定されないが、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン類、モルホリン、グアニジンなどの有機アミン類、アンモニアなどの無機アルカリ、アルギニン、リジンなどの塩基性アミノ酸及びそれらの塩などが挙げられ、これらの1種または2種以上を含有することができる。その中でも染毛性と脱色性の観点からから、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン類、アンモニアなどの無機アルカリが好ましく、使用時の刺激臭の観点からモノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン類がより好ましい。
【0057】
本発明で用いられるアルカリ剤の含有量は、特に限定されないが、染毛性および脱色性の観点から、0.5~8%が好ましい。アルカリ剤の含有量が0.5%未満の場合、十分な染毛性および脱色性が得られない恐れがある。アルカリ剤の含有量が8%を超える場合、染毛性および脱色性はそれ以上の向上を期待できにくい。
【0058】
本発明における染毛用および脱色用第1剤組成物は、上記成分の他に必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で上記成分以外の通常の化粧料、医薬部外品、医薬品などに用いられる各種成分、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、HC染料、界面活性剤、両性高分子、カチオン性高分子、アニオン性高分子、油性成分、保湿剤、増粘剤、薬効成分、蛋白誘導体、加水分解蛋白、アミノ酸類、金属封鎖剤、酸化防止剤、植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、防腐剤、色素、顔料、粉体、pH調整剤、紫外線吸収剤、香料などから選ばれる1種または2種以上を含有することができる。ただし、これら例示に限定されるものでない。
【0059】
本発明における染毛用および脱色用第1剤組成物の剤型は、クリーム状、乳液状またはゲル状であることが好ましい。
【0060】
本発明における染毛用および脱色用第1剤組成物の粘度は、染毛用および脱色用第2剤組成物との混合性の観点から、20℃の条件下で3,000~100,000mPa・sであることが好ましい。
【0061】
本発明における染毛用および脱色用第1剤組成物の20℃の条件下における粘度は、常法にて調製して得られた染毛用および脱色用第1剤組成物を140g容量のサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、20℃で1日間静置し調温した後に、ヘリカルスタンド付B型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)により、4号ローターにて1分間、粘度50,000mPa・s未満では回転速度12rpm、粘度50,000mPa・s以上では回転速度6pmの条件下で測定したものである。
【0062】
本発明における染毛用および脱色用第1剤組成物のpHは、染毛性および脱色性の観点から、20℃の条件下で9~12であることが好ましい。染毛用および脱色用第1剤組成物のpHが9未満の場合、十分な染毛性および脱色性が得られない恐れがある。染毛用および脱色用第1剤組成物のpHが12を超える場合、染毛性および脱色性はそれ以上の向上を期待できにくい。
【0063】
本発明における染毛用および脱色用第1剤組成物の20℃の条件下でのpHは、常法にて調製して得られた染毛用および脱色用第1剤組成物を20℃で1日間静置し調温した後に、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(F-71、株式会社堀場製作所製)にて測定したものである。
【0064】
本発明に用いられる染毛用および脱色用第1剤組成物は、ポリ容器、アルミチューブ容器、エアゾール容器、パウチ容器などの各種容器に充填され、使用時まで保存される。
【実施例
【0065】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0066】
本明細書に示す評価試験において、染毛用および脱色用第2剤組成物に含まれる成分およびその含有量を変更しながら実施した。各成分の含有量を示す単位は全て質量%であり、これを常法にて調製した。
【0067】
<高温時でも良好な使用性の維持>
本明細書に示す「高温時でも良好な使用性の維持」に係る評価試験においては、常法にて調製して得られた染毛用および脱色用第2剤組成物を20℃または40℃で1日間静置し調温した後に、80g量り取り、ブラシを用いてウィッグ(人毛黒毛100%、ビューラックス社製、型番:クイーン・カットNo.775N)に塗布し、20℃と40℃における染毛用および脱色用第2剤組成物の使用性の差異を、10名のパネラーにより、下記の評価基準のように評価し、その合計点を評価結果として評価した。なお、使用性とは、毛髪への塗布性、伸び性、たれ落ちおよび飛び散りなどを総合的に評価したものである。
【0068】
<高温時でも良好な使用性の維持の評価基準>
20℃と40℃で使用性に差を感じない :3点
20℃と40℃で使用性にやや差を感じる:2点
20℃と40℃で使用性に差を感じる :1点
【0069】
<高温時でも良好な使用性の維持の評価結果>
◎:24点~30点
〇:17点~23点
×:10点~16点
【0070】
<高温時での経時安定性>
本明細書に示す「高温時での経時安定性」に係る評価試験においては、常法にて調製して得られた染毛用および脱色用第2剤組成物を140gのサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填した後に、40℃条件下で保存し、目視にて外観状態を確認し、以下に示すように評価した。
<高温時での経時安定性の評価基準>
◎:3ヶ月以上経過しても組成物に変化が確認されなかった。
〇:3ヶ月未満で分離が確認された。
×:1ヶ月未満で分離が確認された。
【0071】
表1の実施例1~実施例7では、前記(A)成分の含有量を代えても、比較例1および比較例2と比較して、高温時でも良好な使用性を維持し、かつ高温時での経時安定性に優れる結果が得られた。
【0072】
【表1】
【0073】
表2の実施例8~実施例20では、前記(B)成分の種類および含有量を代えても、比較例3と比較して、高温時でも良好な使用性を維持し、かつ高温時での経時安定性に優れる結果が得られた。
【0074】
【表2】
【0075】
下記の染毛用第1剤組成物-1~染毛用第1剤組成物-3または脱色用第1剤組成物-1と実施例1~実施例20の染毛用および脱色用第2剤組成物を20℃または40℃で1日間静置し調温した後に1:2の比率で混合し、得られた混合物80gを用いて、上記評価試験<高温時でも良好な使用性の維持>と同様の評価試験を実施した結果、いずれにおいても良好な結果が得られた。
【0076】
<染毛用第1剤組成物-1>
成分 含有量(質量%)
塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノール 0.02
トルエン-2,5-ジアミン 1.50
パラアミノフェノール 0.34
メタアミノフェノール 0.05
レゾルシン 1.00
5-アミノオルトクレゾール 0.14
モノエタノールアミン 3.60
セチルアルコール 3.50
ステアリルアルコール 2.50
POE(5)ベヘニルエーテル 0.80
POE(40)セチルエーテル 2.20
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 1.20
流動パラフィン 3.00
メチルポリシロキサン(5cSt/25℃) 1.00
メチルポリシロキサン(3,000cSt/25℃) 1.00
亜硫酸ナトリウム 0.20
L-アスコルビン酸 0.50
ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム液 1.00
DL-リンゴ酸ナトリウム 1.00
ポリ塩化ジメチルジメチレンピロリジニウム液 1.00
精製水 74.45
合計 100.00
粘度(20℃) 28,700mPa・s
pH(20℃) 10.8
【0077】
<染毛用第1剤組成物-2>
成分 含有量(質量%)
トルエン-2,5-ジアミン 0.85
パラアミノフェノール 1.00
メタアミノフェノール 0.05
レゾルシン 0.55
5-アミノオルトクレゾール 0.25
モノエタノールアミン 6.40
セチルアルコール 3.50
ステアリルアルコール 4.50
POE(5)ベヘニルエーテル 0.90
POE(40)セチルエーテル 1.10
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 4.00
流動パラフィン 3.00
メチルポリシロキサン(5cSt/25℃) 1.00
メチルポリシロキサン(3,000cSt/25℃) 1.00
亜硫酸ナトリウム 0.20
L-アスコルビン酸 0.50
ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム液 1.00
DL-リンゴ酸ナトリウム 0.20
ポリ塩化ジメチルジメチレンピロリジニウム液 1.00
精製水 69.00
合計 100.00
粘度(20℃) 41,700mPa・s
pH(20℃) 10.7
【0078】
<染毛用第1剤組成物-3>
成分 含有量(質量%)
トルエン-2,5-ジアミン 0.60
パラアミノフェノール 0.20
メタアミノフェノール 0.20
5-アミノオルトクレゾール 1.40
モノエタノールアミン 6.40
セチルアルコール 1.20
ステアリルアルコール 6.20
POE(15)セチルエーテル 2.00
POE(40)セチルエーテル 1.00
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 1.60
流動パラフィン 3.00
メチルポリシロキサン(5cSt/25℃) 1.00
メチルポリシロキサン(3,000cSt/25℃) 1.00
亜硫酸ナトリウム 0.20
L-アスコルビン酸 0.50
ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム液 1.00
DL-リンゴ酸ナトリウム 0.20
ポリ塩化ジメチルジメチレンピロリジニウム液 1.00
精製水 71.30
合計 100.00
粘度(20℃) 27,300mPa・s
pH(20℃) 10.8
【0079】
<脱色用第1剤組成物-1>
成分 含有量(質量%)
アンモニア水(28%) 8.00
セチルアルコール 2.00
ステアリルアルコール 2.00
POE(2)セチルエーテル 1.00
POE(20)セチルエーテル 0.70
POE(40)セチルエーテル 2.00
塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム 2.50
流動パラフィン 3.00
メチルポリシロキサン(3,000cSt/25℃) 1.00
メチルポリシロキサン(10,000cSt/25℃) 1.00
メチルフェニルポリシロキサン 1.00
ポリ塩化ジメチルジメチレンピロリジニウム液 1.00
エデト酸四ナトリウム四水塩 0.50
精製水 74.30
合計 100.00
粘度(20℃) 12,200mPa・s
pH(20℃) 11.5
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、染毛用および脱色用第1剤組成物と用時混合して使用する染毛用および脱色用第2剤組成物であって、高温時でも良好な使用性を維持し、かつ高温時での経時安定性に優れた染毛用および脱色用第2剤組成物を提供することができる。