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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】注文飲食物搬送装置
(51)【国際特許分類】
   A47G 23/08 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
A47G23/08 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020058168
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021153946
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】390010319
【氏名又は名称】株式会社石野製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石野 晴紀
(72)【発明者】
【氏名】松井 智史
(72)【発明者】
【氏名】新村 武史
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-147019(JP,A)
【文献】特開平06-298331(JP,A)
【文献】特表2003-509213(JP,A)
【文献】実開昭51-045789(JP,U)
【文献】実開昭51-050776(JP,U)
【文献】特開2018-075295(JP,A)
【文献】特開2009-269741(JP,A)
【文献】特開2016-152904(JP,A)
【文献】国際公開第2016/129147(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲食店の厨房側から客席へ至る搬送路を形成する第1のベルトコンベアと、
前記第1のベルトコンベアの前記厨房側に延設されており、前記搬送路を延伸する第2のベルトコンベアと、
搬送開始操作が行われると、前記第1のベルトコンベアと前記第2のベルトコンベアを作動させ、前記第2のベルトコンベアに載置された飲食物の皿を前記客席へ搬送する制御手段と、
前記第1のベルトコンベアと前記第2のベルトコンベアとの間に形成されており、ベルトに直接付着した付着物である炊飯された状態の米粒が通過可能な隙間と、を備え、
前記第2のベルトコンベアは、前記隙間を形成する前記第2のベルトコンベアの終端部分に配置されており、ベルトの進行方向を反対方向へ折り返すローラーを有しており、
前記ローラーは、前記第2のベルトコンベアが飲食物を60m/minの搬送速度で作動させた場合に、前記米粒が付着しているベルトの付着部分が前記ローラーで折り返されると、前記第2のベルトコンベアに落ちて付着した前記米粒に付着力を超える遠心力を作用させる所定のローラー径である直径34mm以下のローラー径となっており、
前記付着力は、炊飯された状態の米粒が前記第2のベルトコンベア上に自然落下した際に生じる付着力である、
注文飲食物搬送装置。
【請求項2】
前記所定のローラー径とは、直径が30mm以下である、
請求項1に記載の注文飲食物搬送装置。
【請求項3】
前記所定のローラー径とは、直径が28mm以下である、
請求項1に記載の注文飲食物搬送装置。
【請求項4】
前記第2のベルトコンベアを、前記第2のベルトコンベアが形成する搬送路の方向に沿って前記第1のベルトコンベアから離れる方向にスライド可能なスライド機構が設けられた基部を更に備える、
請求項1から3の何れか一項に記載の注文飲食物搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注文飲食物搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、飲食店においては、搬送装置を使った飲食物の提供が行なわれている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-147019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
注文された飲食物を客席へ効率的に搬送する搬送装置として、例えば、特許文献1に開示されているように、厨房から客席へ至る搬送路をベルトコンベアで構成した注文飲食物搬送装置が提案されている。このような注文飲食物搬送装置であれば、客が注文した飲食物を厨房から客席へ速やかに搬送できるため、様々な注文に対して速やかに対応することができる。
【0005】
ところで、飲食物を載せた皿をベルトコンベアで搬送すると、食材がベルトに付着する場合がある。ベルトに付着し得る食材は、搬送する飲食物の種類によって様々であるが、例えば、回転寿司店に設置される注文飲食物搬送装置であれば、シャリのご飯粒、鮮魚の切り身といった各種ネタの小片、その他の様々なものが挙げられる。これらの食材がベルトに付着すると、衛生感が損なわれる。
【0006】
よって、注文飲食物搬送装置を備える飲食店では、ベルトに付着した食材等の付着物を除去する清掃作業を定期的に行う必要がある。しかし、店舗の営業時間中にこのような清掃作業を行うことは容易でないため、営業時間中にベルトに食材等が付着すると、ベルトに付着物が付着した状態の注文飲食物搬送装置で飲食物の搬送を続けざるを得ない。また、ベルトに付着した付着物を自動的に除去する機構を注文飲食物搬送装置に設けると、ベルトを動かすモータの負荷が増加し、或いは、装置構成を複雑化させることになる。
【0007】
そこで、本願は、付着物除去用の機構を追加しなくても、ベルトに付着した付着物を減らすことが可能な注文飲食物搬送装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、飲食店の厨房側から客席へ至る搬送路を形成するベルトコンベアのローラーを、飲食物の付着物が付着しているベルトの付着部分が当該ローラーで折り返されると、付着物に付着力を超える遠心力を作用させるローラー径にした。
【0009】
詳細には、本発明は、注文飲食物搬送装置であって、飲食店の厨房側から客席へ至る搬送路を形成する第1のベルトコンベアと、第1のベルトコンベアの厨房側に延設されており、搬送路を延伸する第2のベルトコンベアと、搬送開始操作が行われると、第1のベルトコンベアと第2のベルトコンベアを作動させ、第2のベルトコンベアに載置された飲食物の皿を客席へ搬送する制御手段と、第1のベルトコンベアと第2のベルトコンベアとの間に形成されており、ベルトに付着した付着物が通過する隙間と、を備え、第2のベルト
コンベアは、隙間を形成する第2のベルトコンベアの終端部分に配置されており、ベルトの進行方向を反対方向へ折り返すローラーを有しており、ローラーは、第2のベルトコンベアが飲食物を搬送する速度で作動中、飲食物の付着物が付着しているベルトの付着部分がローラーで折り返されると、付着物に付着力を超える遠心力を作用させる所定のローラー径である。
【0010】
ここで、所定のローラー径とは、ベルトが引き回されるローラーの外周面を形成する円の直径であり、34mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましく、28mm以下であることがより好ましい。ローラー径がこれらの値である場合、第2のベルトコンベアは、飲食物を60m/minで搬送することが好ましい。
【0011】
このような注文飲食物搬送装置であれば、第2のベルトコンベアの終端部分でベルトから付着物が離脱するので、付着物除去用の機構を追加しなくても、ベルトに付着した付着物を減らすことが可能となる。
【0012】
なお、上記の注文飲食物搬送装置は、第2のベルトコンベアを、第2のベルトコンベアが形成する搬送路の方向に沿って第1のベルトコンベアから離れる方向にスライド可能なスライド機構が設けられた基部を更に備えるものであってもよい。
【0013】
ここで、スライド状態とは、第2のベルトコンベアの位置が、注文飲食物搬送装置による飲食物の搬送を行うことが可能な通常状態の位置に無い場合を意味している。よって、スライド状態には、例えば、第2のベルトコンベアがスライドされて動いている最中の状態のみならず、第2のベルトコンベアが第1のベルトコンベアから離れた位置で止まっている状態も含まれる。また、スライド機構とは、副ベルトコンベアを基部に対して前後、左右あるいは上下に相対移動させる機構であり、例えば、副ベルトコンベアを基部上で水平方向に移動させることが可能なスライドレールが挙げられる。
【0014】
このような注文飲食物搬送装置であれば、第2のベルトコンベアをスライド状態にすることにより、第2のベルトコンベアの終端部分で遠心力によりベルトから離脱した付着物を、第1のベルトコンベアと始端部分と第2のベルトコンベアの終端部分との間にある隙間から清掃作業で容易に取り除くことができる。
【発明の効果】
【0015】
上記注文飲食物搬送装置であれば、付着物除去用の機構を追加しなくても、ベルトに付着した付着物を減らすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態に係る注文飲食物搬送装置の全体構成図である。
図2図2は、主ベルトコンベアと副ベルトコンベアの概略構成図である。
図3図3は、副ベルトコンベアのスライド機構を示した図である。
図4図4は、副ベルトコンベアのスライド状態を示した図である。
図5図5は、注文飲食物搬送装置の制御装置が実行する制御内容のフローチャートを示した図である。
図6図6は、皿の搬送状態を示した図である。
図7図7は、副ベルトコンベアの終端部分においてベルトの付着物に加わる遠心力を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本願発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態は、本願発明の一態様であり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。下記に示す各実施形態や変形
例は、例えば、寿司や飲料物、そばやうどんといった丼物、から揚げや天ぷらといった各種の飲食物を提供する飲食店に好適である。
【0018】
図1は、実施形態に係る注文飲食物搬送装置10の全体構成図である。注文飲食物搬送装置10は、客の注文を受けて用意された飲食物の皿1を飲食店の厨房2からテーブル3へ搬送する装置であり、図1に示すように、客が飲食するテーブル3の横を通る搬送路を形成する。注文飲食物搬送装置10は、飲食店の厨房2側からテーブル3へ至る搬送路を形成する主ベルトコンベア20(本願でいう「第1のベルトコンベア」の一例である)と、主ベルトコンベア20の厨房2側に延設され、搬送路を延伸する副ベルトコンベア30(本願でいう「第2のベルトコンベア」の一例である)と、を備えている。なお、本実施形態では、主ベルトコンベア20が直線状に形成されているが、主ベルトコンベア20を複数組み合わせることにより、主ベルトコンベア20がコーナー部分を有する搬送路を形成するようにしてもよい。また、図1では、注文飲食物搬送装置10が2つ図示されているが、注文飲食物搬送装置10は1つであってもよいし3つ以上であってもよい。
【0019】
主ベルトコンベア20と副ベルトコンベア30は、飲食物の皿1を搭載可能な横幅を有する。また、主ベルトコンベア20と副ベルトコンベア30には、互いに独立して回転制御可能な駆動モータが各々設けられている。そして、各駆動モータは、図示しない制御装置に繋がっており、操作パネルに入力された操作内容や各センサからの信号に基づいて制御される。
【0020】
図2は、主ベルトコンベア20と副ベルトコンベア30の概略構成図である。主ベルトコンベア20は、図2に示されるように、搬送面を形成する無端状のベルト21を有する。ベルト21は、主ベルトコンベア20の始端部分と終端部分にそれぞれ配置されるローラー21Rにおいて折り返すように引き回されている。主ベルトコンベア20の下部には、主ベルトコンベア20の終端部分においてローラー21Rにより折り返され、主ベルトコンベア20の始端部分へ送られるベルト21を下側から支持する補助ローラー21Hが設けられている。副ベルトコンベア30も主ベルトコンベア20と同様であり、図2に示されるように、搬送面を形成する無端状のベルト31を有する。ベルト31は、副ベルトコンベア30の始端部分と終端部分にそれぞれ配置されるローラー31Rにおいて折り返すように引き回されている。副ベルトコンベア30の下部には、副ベルトコンベア30の終端部分においてローラー31Rにより折り返され、副ベルトコンベア30の始端部分へ送られるベルト31を下側から支持する補助ローラー31Hが設けられている。
【0021】
図3は、副ベルトコンベア30のスライド機構を示した図である。副ベルトコンベア30には、ローラー31Rやその他の部材を固定するためのフレームメンバー31Fが備わっている。
【0022】
フレームメンバー31Fには、スライドレール34が設けられている。スライドレール34は、ベルト31が形成する搬送路の左右両側に対称に設けられている。スライドレール34は、リニアガイドであり、インナーメンバー34Nとアウターメンバー34Sとを有する。インナーメンバー34Nは、ボールリテーナーに保持されたボールを介して、アウターメンバー34S内に形成されたボール溝に嵌合されている。インナーメンバー34Nは、フレームメンバー31Fに固定されている。また、アウターメンバー34Sは、図示しない取付金具を介して架台11に固定されている。よって、副ベルトコンベア30の主要部分は、インナーメンバー34Nとアウターメンバー34Sが直線状に相対移動することにより、架台11の上でスライドさせることができる。なお、副ベルトコンベア30の主要部分は、スライドレール34によって支持されるのみならず、架台11の上面に貼着された摩擦力低減用の樹脂製プレートにより、下側からも支持されている。
【0023】
また、副ベルトコンベア30には、フレームメンバー31Fがスライド可能な範囲を制限するためのストッパーや、通常状態において予期せずにスライドするのを防ぐための固定用のマグネット、ベルト31の張力を調整するための調整機構が設けられている。また、副ベルトコンベア30の付近には、副ベルトコンベア30の位置が通常状態であるか否かを示す位置表示マークが設けられている。よって、作業者は、この位置表示マークを確認することにより、副ベルトコンベア30の位置が通常状態であるか否かを確認することができる。これらの機構や部材は、搬送路の両側に取り付けられるカバーで覆われる。よって、通常の使用状態ではこれらの機構や部材を外部から視認できない。
【0024】
図4は、副ベルトコンベア30のスライド状態を示した図である。上述したように、副ベルトコンベア30にはスライドレール34が設けられているため、副ベルトコンベア30の主要部分は、架台11の上でスライドさせることができる。よって、例えば、図4(A)に示すような通常状態において、副ベルトコンベア30と主ベルトコンベア20との間にある隙間に落下した異物を清掃作業で取り除きたい場合、作業者は、副ベルトコンベア30が主ベルトコンベア20から離れる方向に副ベルトコンベア30を手で動かしてスライドさせることができる。副ベルトコンベア30が主ベルトコンベア20から離れる方向に副ベルトコンベア30をスライドさせると、図4(B)に示されるように、主ベルトコンベア20と副ベルトコンベア30との間が開いたスライド状態になる。副ベルトコンベア30がスライド状態になっていれば、作業者は、主ベルトコンベア20と副ベルトコンベア30との間に手を入れて清掃作業を行うことができる。このため、副ベルトコンベア30と主ベルトコンベア20との間にある隙間から落下した異物を容易に除去することができる。
【0025】
以下、制御装置によって実現される注文飲食物搬送装置10の動作を説明する。図5は、注文飲食物搬送装置10の制御装置が実行する制御内容のフローチャートを示した図である。
【0026】
注文飲食物搬送装置10の制御装置は、厨房に設けられた操作パネルで搬送開始ボタンが押下されたことを検知すると、以下の処理を実行する。すなわち、制御装置は、皿1を検知するセンサの情報に基づき、副ベルトコンベア30に皿1が載っているか否かの判定処理を行う(S101)。そして、制御装置は、ステップS101の処理で肯定判定を行った場合、主ベルトコンベア20と副ベルトコンベア30を起動する(S102)。そして、制御装置は、ステップS102の処理を実行した後、起動した副ベルトコンベア30に載っていた飲食物が主ベルトコンベア20に載ったか否かを判定する(S103)。制御装置は、副ベルトコンベア30に載っていた飲食物が主ベルトコンベア20に載ったことを、図示しない通過センサ等により検知する。制御装置は、ステップS103の処理で肯定判定を下した場合、副ベルトコンベア30を停止する(S104)。副ベルトコンベア30が停止すれば、飲食物の皿1が主ベルトコンベア20で搬送中であっても、次に搬送したい飲食物の皿1を副ベルトコンベア30に載せることができる。
【0027】
制御装置は、ステップS104の処理を実行した後、主ベルトコンベア20に載っている飲食物の皿1が搬送先のテーブル3に到着したか否かを判定する(S105)。制御装置は、飲食物が到着したか否かの判定を、例えば、搬送先のテーブル3付近に設置したセンサの検知結果に基づいて判定してもよいし、搬送先のテーブル3の位置毎に予め設定された搬送開始からの経過時間に基づいて判定してもよい。制御装置は、ステップS105の処理において肯定判定を下した場合、主ベルトコンベア20を停止する(S106)。
【0028】
一方、制御装置は、ステップS101の処理で否定判定を行った場合、副ベルトコンベア30がスライド状態であるか否かの判定処理を行う(S107)。制御装置は、副ベルトコンベア30がスライド状態であるか否かの判定を、皿1を検知するために設けられて
いる光学センサ、或いは、副ベルトコンベア30のスライド状態を検知するためのセンサの情報等に基づいて行う。
【0029】
制御装置は、ステップS107の処理で否定判定を行った場合、一連の処理を終了する。また、制御装置は、副ベルトコンベア30がスライド状態にある場合、すなわち、ステップS107の処理で肯定判定を行った場合、副ベルトコンベア30がスライド状態にある旨を厨房2のスタッフに通知する処理を実行する(S108)。副ベルトコンベア30がスライド状態にある旨の通知は、例えば、厨房2に設置されている操作パネルにおける表示、警告音の発報、表示灯の点滅、その他各種の通知手段が適用可能である。
【0030】
図6は、皿1の搬送状態を示した図である。例えば、図6(A)に示されるように、副ベルトコンベア30に皿1が載置された状態で搬送開始操作が行われると、ステップS101で肯定判定が行われ、ステップS102の処理が実行される。ステップS102の処理が実行されると、図6(B)に示されるように、飲食物の皿1が厨房2からテーブル3へ向かって移動する。そして、ステップS105の処理で肯定判定が行われ、ステップS106の処理が実行されると、図6(C)に示されるように、飲食物の皿1が、指定された搬送先のテーブル3付近で停止する。
【0031】
一方、ステップS101で否定判定が行われると、ステップS102からステップS106までの一連の処理が実行されないため、主ベルトコンベア20と副ベルトコンベア30は作動しない。また、ステップS107で肯定判定が行われた場合、副ベルトコンベア30がスライド状態にある旨の通知が厨房2のスタッフに対して行われる。よって、本実施形態の注文飲食物搬送装置10であれば、副ベルトコンベア30をスライド状態にして清掃作業が行われた後、副ベルトコンベア30が通常状態に戻されないままで搬送開始操作が行われても、飲食物の皿1が主ベルトコンベア20と副ベルトコンベア30との間に誤って落ちることが無い。
【0032】
ところで、ローラー31Rのローラー径は、以下のように決定されている。
【0033】
図7は、副ベルトコンベア30の終端部分においてベルト31の付着物に加わる遠心力を示した図である。ベルト31に付着している付着物は、副ベルトコンベア30の作動によりベルト31と共に動き、副ベルトコンベア30の終端部分でローラー31Rにより進行方向が反対方向へ折り返される。よって、ベルト31に付着している付着物には、ローラー31Rの外周面に沿って進路が曲がる際、遠心力Fが作用する。ベルト31に付着している付着物に作用する遠心力Fは、付着物の質量をm、ローラー31Rの半径をr、ベルト31の速度をvとした場合、F=mv/rで表される。
【0034】
そして、ベルト31の速度vは、搬送効率の都合により、加速完了後の最大速度が概ね60m/minとなるように設計されている。また、例えば、回転寿司店でシャリに使用される炊飯された状態の米一粒の質量は、概ね0.046gである。また、炊飯された状態の米一粒がアクリル樹脂の表面に付着した場合の粘着力は、「米質評価における米飯のねばりに関する実験的研究(第2報)」清水直人(他4名)、農業施設28巻1号1997.6.31~38によれば、アクリル樹脂へ粒が20%の圧縮力で押し付けた場合に0.054N、40%の圧縮力で押し付けた場合に0.101Nとされている。よって、ベルト31へ落ちた米粒の付着力は、米粒に圧縮力が殆ど加わらないので、0.054Nの半分の0.027Nと仮定する。
【0035】
そうすると、ベルト31に落ちて付着した米粒を、副ベルトコンベア30の終端部分で遠心力によりベルト31から離脱させるには、付着力を上回る遠心力を米粒に作用させればよいから、遠心力の数式F=mv/rより、ローラー31Rのローラー径(直径)を
34mm以下にすべきであることが判る。また、ローラー31Rのローラー径を30mmにすると、0.031N程度の付着力でベルト31に付着した米粒であっても副ベルトコンベア30の終端部分で遠心力によりベルト31から離脱できる。また、ローラー31Rのローラー径を28mmにすると、0.033N程度の付着力でベルト31に付着した米粒であっても副ベルトコンベア30の終端部分で遠心力によりベルト31から離脱できる。
【0036】
そこで、ローラー31Rのローラー径を互い違いにした2種類の注文飲食物搬送装置10を用意して実験を行い、副ベルトコンベア30の終端部分における付着物の離脱の様子を確認した。本実施形態の一例に相当するものとして、ローラー31Rのローラー径が28mmのものを用意した。また、比較例として、ローラー31Rのローラー径が40mmのものを用意した。両者を比較したところ、ローラー31Rのローラー径が28mmのものについては、ベルト31に落ちて付着した米粒が副ベルトコンベア30の終端部分で隙間Sを通過し、遠心力でベルト31から離脱して隙間Sの下に落ちることが確認された。一方、ローラー31Rのローラー径が40mmのものについては、ベルト31に落ちて付着した米粒が副ベルトコンベア30の終端部分で隙間Sを通過した後、ベルト31から離脱せずに付着した状態となるものが確認された。なお、ベルト31には、何れも食品用ポリウレタン素材を用いたが、PET(Polyethyleneterephthalate)やフッ素樹脂等の各
種素材であっても同様の効果を発揮すると考えられる。これらの素材は、付着物が剥離しやすいため、ベルト31に用いれば、ローラー31Rにおける遠心力でより容易に付着物が剥離すると考えられる。
【0037】
以上より、ローラー31Rのローラー径を34mm以下にすれば、副ベルトコンベア30の終端部分でベルト31から付着物を離脱させ、ベルト31の汚損を抑制できることが判る。また、ベルト31の汚損をより抑制するには、ローラー31Rのローラー径を30mmにすることが好ましく、ローラー31Rのローラー径を28mmにすることがより好ましいことが判る。
【0038】
また、ローラー31Rのローラー径が小さいと、副ベルトコンベア30の装置自体の厚さを薄型化することも可能となる。よって、例えば、注文飲食物搬送装置10を上下に複数段設ける場合に好適である。ローラー21Rのローラー径がローラー31Rと同様に小さければ、注文飲食物搬送装置10全体を薄型化できるため、例えば、注文飲食物搬送装置10を上下に複数段設ける場合により好適である。
【0039】
なお、付着物は厨房2で飲食物の皿1を副ベルトコンベア30に載せる際に付着しやすいため、上記実施形態では、副ベルトコンベア30のローラー31Rのローラー径について解説したが、主ベルトコンベア20のローラー21Rのローラー径についても同様である。ローラー21Rのローラー径を34mm以下にすれば、主ベルトコンベア20の終端部分でベルト21から付着物を離脱させ、ベルト21の汚損を抑制できる。また、ベルト21の汚損をより抑制するには、ローラー21Rのローラー径を30mmにすることが好ましく、ローラー21Rのローラー径を28mmにすることがより好ましい。
【0040】
また、上記実施形態の注文飲食物搬送装置10は、1本の搬送路が主ベルトコンベア20と副ベルトコンベア30の2つのコンベアで構成されていたが、搬送路は3つ以上のベルトコンベアで構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1・・皿
2・・厨房
3・・テーブル
10・・注文飲食物搬送装置
11・・架台
20・・主ベルトコンベア
21・・ベルト
30・・副ベルトコンベア
31・・ベルト
34・・スライドレール
21R・・ローラー
21H・・補助ローラー
31R・・ローラー
31H・・補助ローラー
31F・・フレームメンバー
34S・・アウターメンバー
34N・・インナーメンバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7