(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】コロナ処理装置
(51)【国際特許分類】
B41J 29/00 20060101AFI20240610BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240610BHJP
B41J 29/377 20060101ALI20240610BHJP
H01T 19/02 20060101ALN20240610BHJP
【FI】
B41J29/00 H
G03G21/00 530
B41J29/377 101
H01T19/02
(21)【出願番号】P 2020076687
(22)【出願日】2020-04-23
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000109727
【氏名又は名称】株式会社デュプロ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】金田 孝則
(72)【発明者】
【氏名】角田 和隆
(72)【発明者】
【氏名】山本 周平
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-155785(JP,A)
【文献】特開2013-095562(JP,A)
【文献】特開2008-142946(JP,A)
【文献】特開2000-080184(JP,A)
【文献】特開昭61-023168(JP,A)
【文献】特開2007-286291(JP,A)
【文献】特開2011-191711(JP,A)
【文献】特開2008-185697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00
G03G 21/00
B41J 29/377
H01T 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電部および受電部を有するコロナ処理部と、
前記コロナ処理部を収容するハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは搬入口と搬出口とを有し、当該搬入口から搬入されたシートは前記放電部と前記受電部との間を経由して当該搬出口から搬出され、
前記ハウジングは排気口を有し、当該排気口からは前記ハウジング内の空気が排気され、
前記ハウジングは、前記搬出口の上縁から前記ハウジング内に延在する延在部を有し、当該延在部の下面は上流側に向かって下り傾斜となっていることを特徴とするコロナ処理装置。
【請求項2】
放電部および受電部を有するコロナ処理部と、
前記コロナ処理部を収容するハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは搬入口と搬出口とを有し、当該搬入口から搬入されたシートは前記放電部と前記受電部との間を経由して当該搬出口から搬出され、
前記ハウジングは排気口を有し、当該排気口からは前記ハウジング内の空気が排気され、
前記ハウジングの下流側側面において前記
搬出口を構成するとともに前記ハウジング内へ空気が流入可能な隙間の高さ方向の長さは、前記放電部と前記受電部との距離よりも長いことを特徴とするコロナ処理装置。
【請求項3】
放電部および受電部を有するコロナ処理部と、
前記コロナ処理部を収容するハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは搬入口と搬出口とを有し、当該搬入口から搬入されたシートは前記放電部と前記受電部との間を経由して当該搬出口から搬出され、
前記ハウジングは、前記放電部側に形成される第1排気口と、前記受電部側に形成される第2排気口とを有し、当該第1、第2排気口からは前記ハウジング内の空気が排気され、
前記ハウジング内にシートが進入していないとき、前記第2排気口からの排気量は前記第1排気口からの排気量よりも多いことを特徴とするコロナ処理装置。
【請求項4】
放電部および受電部を有するコロナ処理部と、
前記コロナ処理部を収容するハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは搬入口と搬出口とを有し、当該搬入口から搬入されたシートは前記放電部と前記受電部との間を経由して当該搬出口から搬出され、
前記ハウジングは、前記放電部側に形成される第1排気口と、前記受電部側に形成される第2排気口とを有し、当該第1、第2排気口からは前記ハウジング内の空気が排気され、
前記第2排気口からの排気経路の最小経路断面積は、前記第1排気口からの排気経路の最小経路断面積よりも大きいことを特徴とするコロナ処理装置。
【請求項5】
放電部および受電部を有するコロナ処理部と、
前記コロナ処理部を収容するハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは搬入口と搬出口とを有し、当該搬入口から搬入されたシートは前記放電部と前記受電部との間を経由して当該搬出口から搬出され、
前記ハウジングは、前記放電部側に形成される第1排気口と、前記受電部側に形成される第2排気口とを有し、当該第1、第2排気口からは前記ハウジング内の空気が排気され、
本コロナ処理装置はさらに、第1排気口から空気を排気するための第1吸引装置と、第2排気口から空気を排気するための第2吸引装置と、を備え、
前記第2吸引装置は、前記第1吸引装置よりも、設定可能な吸引量の最大値が高いことを特徴とするコロナ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートに印刷やコーティングする際の付着性、つまり濡れ性(親和性)を高めるために、シートの表面をコロナ放電により改質することが知られている。従来では、コロナ放電により発生するオゾンを排気可能なコロナ処理装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はこうした状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、安定したコロナ放電を得ることができるコロナ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のコロナ処理装置は、放電部および受電部を有するコロナ処理部と、コロナ処理部を収容するハウジングと、を備える。ハウジングは搬入口と搬出口とを有し、当該搬入口から搬入されたシートは放電部と受電部との間を経由して当該搬出口から搬出され、ハウジングは排気口を有し、当該排気口からはハウジング内の空気が排気され、ハウジングは、搬出口の上縁からハウジング内に延在する延在部を有し、当該延在部の下面は上流側に向かって下り傾斜となっている。
【0006】
本発明の別の態様もまた、コロナ処理装置である。この装置は、放電部および受電部を有するコロナ処理部と、コロナ処理部を収容するハウジングと、を備える。ハウジングは搬入口と搬出口とを有し、当該搬入口から搬入されたシートは放電部と受電部との間を経由して当該搬出口から搬出され、ハウジングは排気口を有し、当該排気口からはハウジング内の空気が排気され、搬出口には、ハウジングの下流側側面において、高さ方向に所定の長さにわたってハウジング内へ空気が流入可能な隙間が形成され、所定の長さは、放電部と受電部との距離よりも長い。
【0007】
本発明のさらに別の態様もまた、コロナ処理装置である。この装置は、放電部および受電部を有するコロナ処理部と、コロナ処理部を収容するハウジングと、を備える。ハウジングは搬入口と搬出口とを有し、当該搬入口から搬入されたシートは放電部と受電部との間を経由して当該搬出口から搬出され、ハウジングは、放電部側に形成される第1排気口と、受電部側に形成される第2排気口とを有し、当該第1、第2排気口からはハウジング内の空気が排気され、ハウジング内にシートが進入していないとき、第2排気口からの排気量は第1排気口からの排気量よりも多い。
【0008】
本発明のさらに別の態様もまた、コロナ処理装置である。この装置は、放電部および受電部を有するコロナ処理部と、コロナ処理部を収容するハウジングと、を備える。ハウジングは搬入口と搬出口とを有し、当該搬入口から搬入されたシートは放電部と受電部との間を経由して当該搬出口から搬出され、ハウジングは、放電部側に形成される第1排気口と、受電部側に形成される第2排気口とを有し、当該第1、第2排気口からはハウジング内の空気が排気され、第2排気口からの排気経路の最小経路断面積は、第1排気口からの排気経路の最小経路断面積よりも大きい。
【0009】
本発明のさらに別の態様もまた、コロナ処理装置である。この装置は、放電部および受電部を有するコロナ処理部と、コロナ処理部を収容するハウジングと、を備える。ハウジングは搬入口と搬出口とを有し、当該搬入口から搬入されたシートは放電部と受電部との間を経由して当該搬出口から搬出され、ハウジングは、放電部側に形成される第1排気口と、受電部側に形成される第2排気口とを有し、当該第1、第2排気口からはハウジング内の空気が排気され、本コロナ処理装置はさらに、第1排気口から空気を排気するための第1吸引装置と、第2排気口から空気を排気するための第2吸引装置と、を備え、第2吸引装置は、第1吸引装置よりも、設定可能な吸引量の最大値が高い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安定したコロナ放電を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態の印刷システムを模式的に示す側面図である。
【
図2】実施の形態の印刷システムを模式的に示す平面図である。
【
図4】比較例のコロナ処理装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0013】
図1、2は、実施の形態に係るコロナ処理装置26が用いられる印刷システム10を模式的に示す図である。
図1は側面図であり、
図2は平面図である。印刷システム10は、シートを搬送しながらシートに所定の印刷を施す装置である。シートの素材は、紙、布、樹脂、金属などさまざまである。以降、シートが搬送される方向(
図1、2において右から左に向かう方向)を搬送方向Y、搬送方向Yと直交する方向(
図1において紙面に直交する方向であって
図2の上下方向)を幅方向Xと呼ぶ。
【0014】
印刷システム10は、シートを1枚ずつ給紙する給紙装置12と、1枚ずつ給紙されるシートにニスを塗布するニス塗布装置14と、ニスのタック性を利用してシート上のニスに箔を転写する箔押し装置16と、シートを蓄積するスタッカ18と、印刷システム10を統合的に制御する制御装置20と、を備える。給紙装置12、ニス塗布装置14、箔押し装置16、スタッカ18は、搬送方向Yに上流側(
図1、2では右側)からこの順に一列に並ぶ。制御装置20は、給紙装置12、ニス塗布装置14、箔押し装置16およびスタッカ18とネットワーク2を介して接続される。
【0015】
給紙装置12は、フィーダ22と、コロナ処理装置26と、レジスト部24と、を備える。フィーダ22は、テーブル28と、吸着ヘッド30と、を含む。テーブル28にはシートが積載される。テーブル28は、昇降可能に構成される。吸着ヘッド30は、テーブル28に積載されたシートを上から順に1枚ずつ送り出す。
【0016】
コロナ処理装置26は、フィーダ22が送り出したシートに対して、コロナ放電によりその表面の改質を行う。コロナ処理装置26の詳細な構成は後述する。
【0017】
レジスト部24は、レジスト基準ガイド32に突き当てることによって、フィーダ22が送り出したシートの幅方向Xの位置を揃える。
【0018】
ニス塗布装置14は、シートセンサ42と、一対のCCDセンサ44と、少なくとも1つのニス吐出部46と、半硬化用紫外線ランプ48と、本硬化用紫外線ランプ50と、を含む。一対のCCDセンサ44、ニス吐出部46、半硬化用紫外線ランプ48、本硬化用紫外線ランプ50は、この順に上流側から並ぶように配置される。図示の例では、ニス塗布装置14は3つのニス吐出部46を含んでいるが、これには限定されず、ニス塗布装置14は幅方向Xの全域にわたって延在する1つのニス吐出部46を含んでもよいし、2つまたは4つ以上のニス吐出部46を含んでもよい。半硬化用紫外線ランプ48および本硬化用紫外線ランプ50には紫外線を照射するLEDを用いるが、紫外線を照射するものであれば、電球や蛍光灯などの他の光源であってもよい。光源は出力調整可能なものが望ましい。
【0019】
シートセンサ42は、給紙装置12から給紙されたシートを検出する。
【0020】
ニス吐出部46は、特に限定しないがライン型のインクジェットヘッドである。ニス吐出部46は、シートセンサ42によるシートの先端エッジの検出をトリガとして、ニス吐出データに従って紫外線硬化性ニスを吐出し、シートに紫外線硬化性ニスを塗布する。ニス吐出データは、シートのどこにニスを塗布するのかを示すデータである。
【0021】
給紙装置12が給紙するシートには、予め、下地画像と、下地画像の位置を特定する基準となる複数のレジストレーションマークと、が印刷されていてもよい。ニス塗布装置14は、シートにおけるニスの塗布部分を規定するニス吐出データに従って、下地画像と所定の関係を有するようにニスを塗布するものであり、例えば下地画像に重なるように、ニスを塗布してもよい。
【0022】
ここで、シートの下地画像がずれていたり歪んでいたりすることもあり得る。したがって、下地画像と所定の関係を有するようにニスを塗布する場合は、ずれや歪みを考慮してニス吐出データを補正しておく必要がある。例えば、CCDセンサ44が、シートセンサ42によるシートの検出をトリガとしてシートを撮像し、制御装置20がCCDセンサ44による撮像データを画像解析し、複数のレジストレーションマークの理論位置との相違により、レジストレーションマークに囲まれた領域のニス吐出データを補正してもよい。なお、当該補正には、本出願人が先に出願した特開2016-083898号公報に記載の方法を適用できる。
【0023】
半硬化用紫外線ランプ48は、シート上のニスに出力の比較的弱い紫外線を照射し、ニスを半硬化させる。半硬化は、ニスの流動性を低下させつつも完全には硬化させない程度に軽く(例えばさらに硬化させることができる状態に)硬化させることをいう。ニスの少なくとも表面を半硬化することにより、ニスのタック性を維持しつつも、ニスがシート上を流れるのを防止してニスのシート上での位置を安定させることができる。半硬化状態のニスは、箔押し装置16において本硬化される。シートに箔押ししない場合は、通常、半硬化用紫外線ランプ48をオフにする。なお、箔押ししない場合に半硬化用紫外線ランプ48を使用してもよい。例えば、シート上に塗布したニスが滲みやすい場合、半硬化用紫外線ランプ48をオンにしてニスの少なくとも表面を半硬化させる。これにより、ニスの滲みを抑えることができる。
【0024】
本硬化用紫外線ランプ50は、シートに塗布されたニスに紫外線を照射し、ニスを本硬化させる。シートに箔押しする場合は、本硬化用紫外線ランプ50をオフにする。
【0025】
つまり、シートに箔押しする場合は、半硬化用紫外線ランプ48によってニスを半硬化させ、箔押し装置16の箔押し用紫外線ランプ66によって半硬化状態のニスを本硬化させる。この場合、本硬化用紫外線ランプ50はオフにする。シートに箔押ししないすなわちシートにニスを塗布するだけの場合は、本硬化用紫外線ランプ50でニスを本硬化させる。この場合、半硬化用紫外線ランプ48および箔押し装置16の箔押し用紫外線ランプ66はオフにする。なお、上述したように、半硬化用紫外線ランプ48は、箔押ししない場合でもオンにすることがある。また、箔押し用紫外線ランプ66の光源には紫外線を照射するLEDを用いるが、紫外線を照射するものであれば他の光源でもよい。
【0026】
箔押し装置16は、ウェブ52をロール・ツー・ロールで搬送する。ウェブ52は、フィルムに箔(例えば金属箔)が保持された箔保持フィルムである。箔押し装置16では、ウェブ52とシートとを搬送しながら接触させる。シート上の半硬化状態のニスには、そのタック性により、ウェブ52が保持する箔が接着する。この状態、すなわち箔がウェブ52に保持されつつも半硬化状態のニスに接着した状態で、箔押し用紫外線ランプ66が当該ニスに紫外線を照射し、ニスを本硬化させる。ニスが本硬化すると、ウェブ52が箔を保持する力よりも本硬化したニスが箔を接着する力の方が強い状態となる。この状態で、シートを搬送してシートとウェブ52とを分離させると、ウェブ52に保持されていた箔は、シート上のニスが塗布された部分に転写される。
【0027】
スタッカ18は、箔押し装置16から搬出されたシートを蓄積する。
【0028】
制御装置20は、例えばPCなどの情報処理端末である。制御装置20は、印刷ジョブの定義についての入力を受け付ける。制御装置20は、所定のジョブ管理画面を表示し、当該ジョブ管理画面を介して、ジョブの定義についての入力を受け付けてもよい。ジョブの定義には、例えば、印刷を施すシートの枚数(印刷部数)、印刷を施すシートのシートサイズ、ニス吐出データ、コロナ処理の有無、箔押しの有無、およびピニングの強度(半硬化の硬化度合い)の調節等、が含まれる。制御装置20は、ジョブの定義に基づいて、給紙装置12、ニス塗布装置14および箔押し装置16を制御する。
【0029】
以上が印刷システム10の基本構成である。
【0030】
変形例として、印刷システム10は、給紙装置12に代えて、シートに下地画像とレジストレーションマークを印刷するプリンタを備え、プリンタから1枚ずつシートを給紙してもよい。
【0031】
また、印刷システム10は、箔押し装置16とスタッカ18との間に、シートを切断したり綴じたりする後処理装置を備えてもよい。
【0032】
つづいて、コロナ処理装置26の構成について詳細に説明する。
図3は、コロナ処理装置26を示す断面図である。コロナ処理装置26は、2つのコロナ処理部102と、ハウジング104と、吸引装置106と、を備える。
【0033】
コロナ処理部102は、搬送路120の上方に配置される放電部110と、放電部110と上下で対向するように搬送路120の下方に配置される受電部112と、を含む。放電部110および受電部112は、幅方向Xの長さが、シートSの幅方向Xの長さ、すなわちシートSの幅よりも長い。受電部112は、放電部110との間でコロナ放電を行うことができるものであれば特に限定されない。本実施の形態の受電部112は、幅方向Xに垂直な断面が円弧状の上面112aを有する。受電部112は、幅方向Xに垂直な断面が円形の回転ローラであってもよいし、回転しない円柱状の部材であってもよい。この例では、コロナ処理装置26は2つのコロナ処理部102を備えるが、コロナ処理部102の数は特に限定されない。
【0034】
ハウジング104は、上ハウジング130と、下ハウジング140と、を含む。上ハウジング130は、上面が開いた箱状の上ハウジング着脱部132と、下面が開いた箱状の上ハウジング固定部134と、を含む。上ハウジング着脱部132は、各コロナ処理部102の放電部110を収容する。上ハウジング着脱部132の下面は、放電部110の下方が開口している。上ハウジング着脱部132は、放電部110と一体となって着脱可能なように構成される。上ハウジング着脱部132が取り付けられた状態において、上ハウジング着脱部132と上ハウジング固定部134とは、上ハウジング着脱部132の上面の着脱側開口133と上ハウジング固定部134の下面の固定側開口135とを介して、連通する。下ハウジング140は、上面が開いた箱状で、各コロナ処理部102の受電部112を収容する。下ハウジング140の上面の開口部には、ガイドプレート108が設けられている。ガイドプレート108は、コロナ処理装置26を通過するシートSの下面を支持する。ガイドプレート108は、放電部110と受電部112とが対向する部分が開口している。
【0035】
上ハウジング着脱部132の搬送方向上流側の上ハウジング上流側側面132aと、下ハウジング140の搬送方向上流側の下ハウジング上流側側面140aとの隙間は、シートSをハウジング104内に搬入するための搬入口150を構成する。上ハウジング着脱部132の搬送方向下流側の上ハウジング下流側側面132bと、下ハウジング140の搬送方向下流側の下ハウジング下流側側面140bとの隙間は、シートSをハウジング104外に搬出するための搬出口152を構成する。
【0036】
ハウジング104外およびハウジング104内の少なくとも一方には、シートSを搬送するための搬送手段(不図示)が設けられている。シートSは、ガイドプレート108に支持されながら、搬入口150からハウジング104内に搬入され各コロナ処理部102の放電部110と受電部112との間を経由して、搬出口152からハウジング104外に搬出される。ガイドプレート108の上面は、シートSが搬送される搬送路120を構成する。
【0037】
シートSが各コロナ処理部102の放電部110と受電部112との間を搬送されるとき、放電部110に高周波電圧が印加されると、放電部110と受電部112との間にコロナ放電が発生し、受電部112の表面に沿って移動するシートSの表面(上面)にコロナ処理が施される。放電部110および受電部112は、シートS以上の幅を有するため、コロナ処理はシートSの搬送にともなってシートSの全面に対し施される。コロナ処理により、ハウジング104内の空気中には、オゾン(O3)が発生する。
【0038】
ハウジング104には、放電部110側(すなわち搬送路120よりも上側)に第1排気口160が形成されている。詳しくは、上ハウジング130に第1排気口160が形成されている。図示の例では、上ハウジング固定部134の上面に第1排気口160が形成されている。ハウジング104には、複数の第1排気口160が設けられてもよい。例えば、幅方向Xに並ぶように複数の第1排気口160が上ハウジング固定部134に形成されてもよい。また、搬送方向Yに並ぶように複数の第1排気口160が上ハウジング固定部134に形成されてもよい。この場合、各コロナ処理部102の上方に、第1排気口160が形成されてもよい。
【0039】
また、ハウジング104には、受電部112側(すなわち搬送路120よりも下側)に第2排気口162が形成されている。つまり、下ハウジング140に第2排気口162が形成されている。図示の例では、下ハウジング140の下面に第2排気口162が形成されている。ハウジング104には、複数の第2排気口162が設けられてもよい。例えば、幅方向Xに並ぶように複数の第2排気口162が下ハウジング140に形成されてもよい。また、搬送方向Yに並ぶように複数の第2排気口162が下ハウジング140に形成されてもよい。この場合、各コロナ処理部102の下方に、第2排気口162が形成されてもよい。
【0040】
第1排気口160および第2排気口162からは、吸引装置106によって、ハウジング104内のオゾンを含む気体が吸引され、排気される。なお、ハウジング104内の気体の吸引および排気は、コロナ処理部102を冷却する効果もある。
【0041】
本実施の形態では、吸引装置106によるハウジング104内からの気体の吸引量、すなわち第1排気口160および第2排気口162からの排気量は、シートSがハウジング104内に搬入されていないとき(すなわち下ハウジング140の上面の開口が塞がれていないとき)において、放電部110側(上側)の第1排気口160からの排気量よりも受電部112側(下側)の第2排気口162からの排気量を多くする。
【0042】
ここで、放電部110と受電部112との間を搬送されるシートSが受電部112から浮き上がると、たとえばシートSの裏面(下面)側でコロナ放電が発生してシートSの表面(上面)側でコロナ放電が発生しなくなるなど、安定したコロナ放電を得ることができなくなる。これに対し、本実施の形態では、上述の排気量の関係を満たすことにより、放電部110と受電部112との間を搬送されるシートSは第1排気口160からの吸引(すなわち上向きの吸引)によって受電部112から浮き上がることもなく、受電部112上を摺動する。これにより、安定したコロナ放電を得ることができる。
【0043】
単一の吸引装置106によって第1排気口160および第2排気口162から吸引する場合、あるいは同一の吸引量が設定された別々の吸引装置106によって第1排気口160および第2排気口162から吸引する場合、第2排気口162からの排気経路である第2排気経路168の最小経路断面積を、第1排気口160からの排気経路である第1排気経路166の最小経路断面積よりも大きくすることによって、上述の排気量の関係を満たしてもよい。たとえば、第1排気口160の開口面積が第1排気経路166の最小経路断面積で、第2排気口162の開口面積が第2排気経路168の最小経路断面積である場合、第2排気口162の開口面積を第1排気口160の開口面積よりも大きくすることによって、上述の排気量の関係を満たしてもよい。
【0044】
あるいはまた、別々の吸引装置106によって第1排気口160および第2排気口162から吸引する場合、第2排気口162から吸引する吸引装置106には、第1排気口160から吸引する吸引装置106よりも、設定可能な吸引量の最大値が高いものを採用してもよい。そして、第2排気口162から吸引する吸引装置106の吸引量の設定値を、第1排気口160から吸引する吸引装置106の吸引量の設定値よりも高くすることによって、上述の排気量の関係を満たしてもよい。
【0045】
上ハウジング着脱部132は、上ハウジング上流側側面132aの下端から搬送方向下流側に延在する延在部を有する。入口側延在部136は、搬入口150の上縁からハウジング内に延在すると捉えることもできる。また、上ハウジング着脱部132は、上ハウジング下流側側面132bの下端から搬送方向上流側に延在する出口側延在部138を有する。出口側延在部138は、搬出口152の上縁からハウジング内に延在すると捉えることもできる。延在部136,138は、放電部110が外部から視認されないよう放電部110を隠蔽するとともに、ユーザが放電部110に触れるのを防ぐ。
【0046】
入口側延在部136ひいては入口側延在部136の下面である入口側下面136aは、搬送方向下流側ほど下側に位置するように、搬送方向下流側に向かって下り傾斜となっている。また、出口側延在部138ひいては出口側延在部138の下面である出口側下面138aは、搬送方向上流側ほど下側に位置するように、搬送方向上流側に向かって下り傾斜となっている。
【0047】
図4は、比較例のコロナ処理装置226の断面図である。比較例のコロナ処理装置226では、出口側延在部238の出口側下面238aはガイドプレート108の上面に対して傾斜しておらず、出口側下面238aとガイドプレート108の上面とが平行である点で、
図3に示す実施の形態のコロナ処理装置26と異なる。本発明者らは、
図4に示す比較例のコロナ処理装置226を稼働させ、シートSを通過させたところ、搬送方向下流側の放電部110の近傍でシートSがばたつくことを確認した。一方、
図3に示す実施の形態のコロナ処理装置26を稼働させ、シートSを通過させたところ、シートSのばたつきを抑制できることを確認した。これは以下の理由によるものと考えられる。
【0048】
ハウジング104内の気体が第1排気口160および第2排気口162から吸引されることにより、搬入口150および搬出口152からは周囲の空気が流入する。搬出口152から流入する空気は特に、搬出口152から搬出されるシートSにとって向かい風であるため、これが搬出中のシートSの先端に当たることでシートSがばたつくと考えられる。シートSがばたつくと、シートSが受電部112から浮き上がり、安定したコロナ放電が得られなくなるおそれがある。
図4に示すように、出口側下面238aとガイドプレート108の上面とが平行であると、出口側下面238aに沿って流入した空気がシートSに対して向かい風となる範囲が広く、シートSを下向きに抑えることができず、シートSのばたつきが生じやすいと考えられる。
【0049】
これに対し、
図3に示す本実施の形態では、上述のように出口側延在部138の出口側下面138aは搬送方向上流側に向かって下り傾斜となっているため、搬出口152から流入する空気の一部は、出口側下面138aに沿って流れることによって下向きの速度成分をもつことになる。つまり、搬出口152からハウジング104内に斜め下向きに流入する。これにより、シートSは下向きに押さえつけられ、ばたつくのが抑えられると考えられる。ばたつくのが抑えられることで、安定したコロナ放電が得られると考えられる。
【0050】
また、搬出口152の上下方向(高さ方向)の長さ、詳しくはガイドプレート108から上ハウジング着脱部132の上ハウジング下流側側面132bの下端までの距離L1は、放電部110と受電部112との距離L2よりも長い。従来は、搬出口152の上下方向の長さは、放電部110と受電部112との距離と同じかそれ以下であったため、本実施の形態では従来よりも搬出口152が広くなっている。これにより、そうでない場合と比べて搬出口から流入する空気の流速が遅くなり、シートSのばたつきが抑えられ、安定したコロナ放電が得られる。
【0051】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0052】
10 印刷システム、 26 コロナ処理装置、 102 コロナ処理部、 104 ハウジング、 110 放電部、 112 受電部、 150 搬入口、 152 搬出口、 160 第1排気口、 162 第2排気口。