(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】頭髪処理装置
(51)【国際特許分類】
A45D 19/02 20060101AFI20240610BHJP
A45D 24/22 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
A45D19/02 B
A45D24/22 B
A45D24/22 D
(21)【出願番号】P 2020106942
(22)【出願日】2020-06-22
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】513092958
【氏名又は名称】株式会社DIC
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 照男
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-000219(JP,A)
【文献】特開平11-318544(JP,A)
【文献】特開2008-237693(JP,A)
【文献】実開昭49-025697(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0211437(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0221242(US,A1)
【文献】特開2005-081143(JP,A)
【文献】特表2005-533548(JP,A)
【文献】実開平04-095727(JP,U)
【文献】特開2012-000412(JP,A)
【文献】特開2013-223656(JP,A)
【文献】米国特許第06012462(US,A)
【文献】米国特許第5695293(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 19/00-19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭髪に頭髪処理剤を塗布する頭髪処理装置であって、
前記頭髪処理装置が、複数のユニットと、複数の前記ユニットを並列状態で支持するハンドルと、を含み、
各々の前記ユニットが、頭髪を梳く髪梳き筒と、頭髪処理剤を貯留するタンクから前記髪梳き筒に頭髪処理剤を送るポンプと、を含み、
各々の前記ユニットに含まれる前記ポンプは、
各々異なる頭髪処理剤を貯留可能に設けられ、
前記髪梳き筒が、該髪梳き筒を分岐してなる一対の挟持筒を含み、
前記挟持筒が、対となる前記挟持筒と対向する領域に、前記ポンプから送られた頭髪処理剤を頭髪に向けて吐出する吐出口を含み、
前記ハンドルは、各々の前記ユニットの前記ポンプを同時に加圧可能に設けられたことを特徴とする頭髪処理装置。
【請求項2】
前記吐出口は、前記挟持筒の長手軸線方向に複数配列されている請求項1に記載の頭髪処理装置。
【請求項3】
前記髪梳き筒の長手軸線が頭皮の丸みに合わせて湾曲している請求項1または2に記載の頭髪処理装置。
【請求項4】
前記頭髪処理剤の逆流を防止する逆流防止部を備えた請求項1~3の何れか一項に記載の頭髪処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭髪をカラーリングするための頭髪処理装置用のユニットおよび頭髪処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、頭髪にカラーリングや脱色を施す頭髪処理装置が知られている。例えば、特許文献1には、カラーリング製品を供給するリザーバ(20)と、リザーバから供給されたカラーリング製品を毛髪に塗布するコーム(30)を備えた毛髪への製品塗布装置が開示されている。また、特許文献2には、ヘアカラーリング添加剤用の容器(3)と、ブラシ状の基部(6)を備え、基部(6)に設けられた添加剤供給口(8)からヘアカラーリング添加剤を吐出するヘアカラーリング装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-81143号公報
【文献】特表2005-533548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、人々の美意識が高まるにつれ、自身の外見に大きな変化をもたらすヘアカラーへの要望も、複雑化・高度化が進んでいる。このような人々の要望に応えるべく、理容業界では、頭髪全体を一色にカラーリングする方法だけではなく、頭髪を複数の細かい髪束に分け、髪束ごとに異なるカラーリング剤を塗布し、頭髪全体でグラデーションとなるようにカラーリングする方法も行われている。
【0005】
しかし、所望のグラデーションカラーを施すには、施術者は、頭髪全体を適量の細かい髪束に分け、髪束ごとに異なるカラーリング剤を塗り分ける必要がある。このため、単色のカラーリングに比べて施術の難易度が高く、手間もかかるという問題があった。また、従来の装置によれば、頭髪処理剤の容器と流路が一つであるため、異なる種類のカラーリング剤を入れ替えて塗布する必要があり、手作業の場合と同様に、施術の難しさや手間の問題が生ずる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、容易にグラデーションカラーを施すことが可能な頭髪処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の頭髪処理装置に用いられるユニットは、
(1)頭髪に頭髪処理剤を塗布する頭髪処理装置に用いられるユニットであって、頭髪処理剤を貯留するタンクと、頭髪を梳く髪梳き筒と、タンクから髪梳き筒に頭髪処理剤を送るポンプと、を含み、髪梳き筒に、ポンプからの頭髪処理剤を頭髪に向けて吐出する吐出口が形成されていることを特徴とする。
【0008】
(2)また、髪梳き筒の外周面に、吐出口が髪梳き筒の長手軸線方向に複数配列されるように構成することも可能である。
【0009】
(3)髪梳き筒が、頭髪を左右から挟む一対の挟持筒を含み、挟持筒に吐出口を設けても良い。
【0010】
(4)髪梳き筒の長手軸線が頭皮の丸みに合わせて湾曲するように設けることも可能である。
【0011】
(5)さらに、頭髪処理剤の逆流を防止する逆流防止部を備えることも好適に採用できる。
【0012】
また、本発明の頭髪処理装置は、上記(1)~(5)のいずれか一つに記載のユニットを複数、左右に並べて支持するハンドルを備え、ハンドルは、複数のユニットのポンプを一時に加圧することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の頭髪処理装置用のユニットおよび頭髪処理装置によれば、異なるカラーリング剤を貯留したユニットを左右に並べ、ハンドルを用いて並列された全ポンプを一時に加圧することで、異なるカラーリング剤を一時に吐出口から吐出して頭髪に塗布することができる。このため、容易にグラデーションカラーを施術できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例1の頭髪処理装置の斜視図である。
【
図2】
図1の頭髪処理装置の内部構成を模式的に表した平面図である。
【
図3】
図1の頭髪処理装置のA-A線断面図である。
【
図4】
図1の頭髪処理装置の組立状態を示す分解斜視図である。
【
図5】
図1の頭髪処理装置の内部構成を模式的に表した要部平面図と、B-B線断面図である。(a)ポンプ非加圧状態、(b)ポンプ加圧状態を示す。
【
図6】(a)逆流防止部の内部構造を模式的に表した拡大平面図(b)C-C線断面図、(c)D-D線断面図である。
【
図7】頭髪処理装置の作用を示す挟持筒の断面図である。
【
図8】本発明の実施例2の頭髪処理装置の外観斜視図である。
【
図9】
図7の頭髪処理装置の
図2(a)A-A線による断面図である。
【
図10】
図7の頭髪処理装置の作用を示す髪梳き筒の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による頭髪処理装置の実施形態を図面に基づいて説明する。各実施例において、同一または類似する構成要素は図面に同じ符号で示されている。
【実施例1】
【0016】
図1に示すように、実施例1の頭髪処理装置1は、頭髪処理装置1に用いられるユニット11と、複数のユニット11を左右に並べて支持するハンドル16を備える。本実施例では、3つのユニットが支持されている。頭髪処理剤Wとしては、例えば、頭皮を保護する保護剤、頭髪Hを保護するためのトリートメント剤、頭髪Hを脱色するブリーチ剤、前処理剤、頭髪Hを染めるためのカラーリング剤、パーマ用の薬剤、ストレートパーマ用の薬剤などがある。
【0017】
図2,3に示すように、ユニット11は、頭髪処理剤Wを貯留する筒状のタンク12と、頭髪Hを梳く髪梳き筒13と、タンク12から髪梳き筒13に頭髪処理剤Wを送るポンプ14を備える。タンク12および髪梳き筒13は、アルミニウム等の金属材料または樹脂材料で断面略長方形のパイプ状に形成され、ポンプ14は、樹脂材料などの弾力性を備えた材料で断面略長方形のパイプ状に形成されている。
【0018】
タンク12のポンプ14側基端12aには、頭髪処理剤Wを流出させる流出口22が形成され、末端部には頭髪処理剤Wを注入する注入口21が形成されている。また、流出口22とポンプ14の接続部には、ポンプ14内からタンク12内への頭髪処理剤Wの逆流を防止する逆流防止部15が設けられている。なお、タンク12本体は、末端部から基端部に向かって傾斜して設けられている。この傾斜により、頭髪処理剤Wは、自重で注入口21から流出口22に向けて流下し、自動的に流出口22に集まる。
【0019】
髪梳き筒13のポンプ14側基端13aには、頭髪処理剤Wを流入させる流入口31が形成され、末端側には、頭髪Hを左右から挟む一対の挟持筒32が設けられている。流入口31とポンプ14の接続部には、髪梳き筒13内からポンプ14内への頭髪処理剤Wの逆流を防止する逆流防止部15が設けられている。髪梳き筒13は、長手軸線が頭皮の丸みに合わせて湾曲するように形成されているが、長手軸線が直線となるように形成することも可能である。なお、流入口31とポンプ14の接続部に、バイブレータ17を設けても良い。バイブレータ17を設けた場合、頭髪処理剤Wに振動を与えて、さらにしっかりと頭髪Hに塗布することができる。
【0020】
挟持筒32は、頭髪Hに差し入れやすいように先端部に向けて薄くなるように傾斜が設けられている。また、挟持筒32は、頭髪処理剤Wを頭髪Hに向けて吐出する吐出口33を備える。吐出口33は、挟持筒32の、対となる挟持筒32と対向する側面に、髪梳き筒13の長手軸線方向に複数配列されて設けられている。ポンプ14から髪梳き筒13の流入口31に流入した頭髪処理剤Wは、挟持筒32の流路34に向けて送り込まれ、最後に吐出口33から頭皮または頭髪Hに向けて吐出される。また、一対の挟持筒32の間隔D1は、同色にカラーリングする髪束の太さを勘案して設けられている。
【0021】
このとき、吐出口33は、互いに対向するように側面32aに設けることができる。このように設けることで、挟持した頭髪Hに適切にカラーリング剤などの頭髪処理剤Wを頭髪Hに塗布することができる。一方、吐出口33は、底面32bに設けることもできる。このように設けた場合には、保護剤など頭皮に直接塗布するタイプの頭髪処理剤Wを適切に塗布することができる。
【0022】
図4に示すように、ハンドル16は上下に分解可能な一対の部材から構成され、各々の部材が複数の立壁16aを備えている。立壁16a間にユニット11のポンプ14を嵌め込み/取り外しすることによって、ユニット11を容易に取り付け/取り外しすることができる。本実施例では、3つのユニットを取り付けているが、立壁16aの数を増減し、取り付けるユニット11の数を調整することも可能である。
【0023】
図5は、ポンプ14の作用を表した断面図である。
図5(a)に示すように、ハンドル16を解放した状態では、立壁16a間の間隔D2は広く開けられており、ポンプ14も加圧されない。ハンドル16を握ると、
図5(b)に示すように、立壁16a間の間隔D2が狭まり、ポンプ14が加圧される。このとき、頭髪処理剤Wは、ポンプ14から髪梳き筒13の内側に送られる。その後、再びハンドル16を解放すると、立壁16a間の間隔D2が広がり、ポンプ14の加圧も無くなる。このとき、タンク12内の頭髪処理剤Wがポンプ14に供給される。
【0024】
図6(a)は、逆流防止部15の内部構造を模式的に表した拡大水平断面図である。逆流防止部15は、タンク12側に配置された断面円形状の上流側開口部51と、髪梳き筒13側に配置された断面矩形状の下流側開口部52と、上流側開口部51および下流側開口部52の間に設けられた球状の栓53を備える。頭髪処理剤Wが順方向に流動した場合は、
図6(b)に示すように、栓53は下流側開口部52と当接し、隙間54から頭髪処理剤Wを流出させる。一方、頭髪処理剤Wが逆方向に流動した場合は、
図6(b)に示すように、栓53は上流側開口部51を閉塞し、頭髪処理剤Wの逆流を防止する。
【0025】
続いて、実施例1の頭髪処理装置1を用いて頭髪Hに頭髪処理剤Wを塗布する手順を説明する。まず、タンク12の注入口21からタンク12毎に異なるカラーの頭髪処理剤Wを注入する(
図1参照)。次に、
図7に示すように、髪梳き筒13を頭髪Hの付け根近くまで差し込み、頭髪Hを隣接する挟持筒32の間に分配する。
【0026】
続いて、ハンドル16を握って、タンク12内の頭髪処理剤Wを挟持筒32内に送り、吐出口33から頭髪Hに向けて吐出する。このようにすれば、一時に異なるカラーの頭髪処理剤Wを頭髪Hに塗布することができる。また、挟持筒32に頭髪Hを挟持しつつ塗布するため、ほぼ同量の髪束ごとに頭髪処理剤Wを塗布することができる。さらに、吐出口33が挟持筒32の側面に設けられているため、頭髪処理剤Wが直接頭皮に塗布されることを防止することもできる。
【0027】
ところで、ストレートパーマ剤には、縮毛矯正度合いの異なる複数種類の薬剤がある。本願の頭髪処理装置1を用い、一時に複数種類の薬剤を用いることによって、適度な強弱を与えて縮毛矯正することにより、より自然なストレートパーマに仕上げることができるという効果も有する。
【実施例2】
【0028】
図8,9に示すように、実施例2の頭髪処理装置1では、タンク12内が隔離壁23によって2つの部屋24に隔離され、これらの部屋24にはそれぞれ注入口21が形成されている。内部構成を模式的に表した平面図については、
図2と同様のため省略する。挟持筒32内には、2つの流路34が形成され、これらの流路34には、それぞれ吐出口33が形成されている。また、2つの部屋24は、異なるポンプ14を介して2つの流路34に接続されている。本実施例の頭髪処理装置1を用いた場合、
図10に示すように、1つのユニットから異なる頭髪処理剤Wを吐出でき、より繊細なバリエーションカラーに仕上げることが可能となる。
【0029】
その他、本願発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状や構成を適宜に変更して実施することも可能である。例えば、実施例2のタンク12の部屋数、ポンプ14の数、流路34の数を適宜増加させることも可能である。また、タンク12を用いることなく、直接、頭髪処理剤Wを収容したケースと接続し、頭髪処理剤Wをポンプ14に取り込むように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 頭髪処理装置
11 ユニット
12 タンク(a:基端)
13 髪梳き筒(a:基端)
14 ポンプ
15 逆流防止部
16 ハンドル(a:立壁)
21 注入口
22 流出口
23 隔離壁
24 部屋
31 流入口
32 挟持筒(a:側面、b:底面)
33 吐出口
34 流路
51 上流側開口部
52 下流側開口部
53 栓
54 隙間