(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】マイク用被覆部材
(51)【国際特許分類】
H04R 1/12 20060101AFI20240610BHJP
H04R 1/08 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
H04R1/12
H04R1/08
(21)【出願番号】P 2020119545
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】720005943
【氏名又は名称】大東伸線工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】横尾 崇弘
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-157506(JP,U)
【文献】特開平07-111690(JP,A)
【文献】特開2011-214204(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0085529(KR,A)
【文献】登録実用新案第3042223(JP,U)
【文献】特開平07-143586(JP,A)
【文献】特開平07-107584(JP,A)
【文献】特開平07-288889(JP,A)
【文献】実開平4-55896(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/12
H04R 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイク部を有するマイクロフォンに対して着脱可能なマイク用被覆部材であって、
表面が銅又は銅合金で構成された網状部を有し、
前記網状部は、前記マイクロフォンに取り付けたときに、少なくとも前記マイク部を覆う
ものであり、
前記網状部は、筒状であって、伸縮可能であり、
無負荷状態における前記網状部の最大内径は、前記マイク部の最大外径よりも小さく、
前記マイクロフォンは、前記マイク部に集音部と連通する複数の開口部を有し、
前記網状部は、複数の開口部を有し、
前記網状部の開口部は、前記マイク部の開口部よりも開口面積が大きい、マイク用被覆部材。
【請求項2】
前記網状部は、表面が銅又は銅合金で構成された複数本の金属線をメリヤス編みして形成されている、請求項
1に記載のマイク用被覆部材。
【請求項3】
前記網状部は、一方の端部が閉塞されている、請求項
1又は
2に記載のマイク用被覆部材。
【請求項4】
前記網状部は、デミスターで構成されている、請求項
1~
3のいずれか1項に記載のマイク用被覆部材。
【請求項5】
マイク部を有するマイクロフォンに対して着脱可能なマイク用被覆部材であって、
表面が銅又は銅合金で構成された網状部を有し、
前記網状部は、前記マイクロフォンに取り付けたときに、少なくとも前記マイク部を覆うものであり、
前記マイクロフォンは、前記マイク部に集音部と連通する複数の開口部を有し、
前記網状部は、複数の開口部を有し、
前記網状部の開口部は、前記マイク部の開口部よりも開口面積が大きく、
前記マイクロフォンは、把持部を有するものであり、
前記網状部は、前記マイク部から前記把持部に跨がっている
、マイク用被覆部材。
【請求項6】
前記網状部の外側を覆う固定リングを有し、
前記マイクロフォンを取り付けたときに、前記固定リングは、前記把持部とともに前記網状部を挟持する、請求項
5に記載のマイク用被覆部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラオケ等に使用されるマイクロフォンのマイク部を覆うマイク用被覆部材に関する。
【背景技術】
【0002】
カラオケ店等に設置されるマイクロフォン(以下、単にマイクともいう)は、店内において複数の歌唱者がマイク部に口を近づけて1曲ずつ順番に歌唱していく。
歌を熱唱する場合、発声とともに口から唾液の飛沫がマイク部に対して発せられ、歌唱者によっては、口をマイク部に接触させるものもいる。すなわち、ウイルスや病原菌を保有する歌唱者が歌唱すると、それ以降にマイクを使用する歌唱者の口がマイク部に触れるとウイルスや病原菌を感染させてしまう問題がある。
【0003】
特に近年では、コロナウイルスが流行しており、コロナウイルス感染者は、無症状であっても感染させる。そのため、コロナウイルス感染者が歌唱すると、マイク部にコロナウイルスが付着し、それ以降にマイクを使用する歌唱者の口がマイク部に触れるとコロナウイルスに感染するおそれがある。
また、マイク部は、スチール等で形成されており、コロナウイルスが表面に付着すると、2日~3日残存してしまう。そのため、マイク部の表面をアルコール等で拭いたとしても、拭きが十分でなくコロナウイルスの残渣が残っていると、感染させてしまうおそれがある。
【0004】
そこで、上記した感染症の対策としては、特許文献1の方策が考えられる。
特許文献1では、歌唱者の一人ひとりが専用のマイクカバーを使用し、歌唱する際に、マイク部にプラスチック製のマイクカバーを取り付け、歌唱が終わる度に当該マイクカバーを交換することで、伝染を抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のマイクカバーは、集音のための穴が設けられているものの、穴の数が少なく開口面積が小さいため、マイク部を覆うと、集音部への音の伝達が遮られてしまい、十分に集音できない問題がある。
また、特許文献1のマイクカバーにおいて、集音するべく穴の数を多くし開口面積を大きくすると、特許文献1のマイクカバーは、プラスチック製であるため、強度が著しく低下し、マイクカバーを取り付ける際に亀裂が入ったり、割れてしまったりする問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、従来に比べてウイルスや雑菌の繁殖を抑制でき、歌唱等を行う際に音を遮りにくいマイク用被覆部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、マイク部を有するマイクロフォンに対して着脱可能なマイク用被覆部材であって、表面が銅又は銅合金で構成された網状部を有し、前記網状部は、前記マイクロフォンに取り付けたときに、少なくとも前記マイク部を覆うものであり、前記網状部は、筒状であって、伸縮可能であり、無負荷状態における前記網状部の最大内径は、前記マイク部の最大外径よりも小さく、前記マイクロフォンは、前記マイク部に集音部と連通する複数の開口部を有し、前記網状部は、複数の開口部を有し、前記網状部の開口部は、前記マイク部の開口部よりも開口面積が大きい、マイク用被覆部材である。
すなわち、本発明は、マイク部を有するマイクロフォンに対して着脱可能なマイク用被覆部材であって、表面が銅又は銅合金で構成された網状部を有し、前記網状部は、前記マイクロフォンに取り付けたときに、少なくとも前記マイク部を覆う。
【0009】
本発明の構成によれば、マイクロフォンに対して着脱可能であるため、容易に交換が可能である。
本発明の構成によれば、表面が銅又は銅合金で構成された網状部でマイク部を覆うため、ウイルスの増殖や雑菌の増殖を抑制でき、歌唱等を行う際に音を遮りにくい。
【0010】
請求項1に記載の発明は、前記網状部は、筒状であって、伸縮可能であり、無負荷状態における前記網状部の最大内径は、前記マイク部の最大外径よりも小さい。
【0011】
本発明の構成によれば、常時、網状部の復元力が働き、網状部がマイク部に密着する方向に力が働くので、マイク部から外れにくい。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記網状部は、表面が銅又は銅合金で構成された複数本の金属線をメリヤス編みして形成されている、請求項1に記載のマイク用被覆部材である。
【0013】
本発明の構成によれば、網状部を容易に伸縮させることができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記網状部は、軸方向の一方の端部が閉塞されている、請求項1又は2に記載のマイク用被覆部材である。
【0015】
本発明の構成によれば、取り付ける際に、マイク部が筒状の網状部を突き抜けず、マイク部を覆いやすい。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記網状部は、デミスターで構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のマイク用被覆部材である。
【0017】
本発明の構成によれば、量産品を使用しているので製造が容易である。
【0018】
請求項1に記載の発明は、前記マイクロフォンは、前記マイク部に集音部と連通する複数の開口部を有し、前記網状部は、複数の開口部を有し、前記網状部の開口部は、前記マイク部の開口部よりも開口面積が大きい。
【0019】
本発明の構成によれば、網状部によって音が遮られにくい。
【0020】
請求項5に記載の発明は、マイク部を有するマイクロフォンに対して着脱可能なマイク用被覆部材であって、表面が銅又は銅合金で構成された網状部を有し、前記網状部は、前記マイクロフォンに取り付けたときに、少なくとも前記マイク部を覆うものであり、前記マイクロフォンは、前記マイク部に集音部と連通する複数の開口部を有し、前記網状部は、複数の開口部を有し、前記網状部の開口部は、前記マイク部の開口部よりも開口面積が大きく、前記マイクロフォンは、把持部を有するものであり、前記網状部は、前記マイク部から前記把持部に跨がっている、マイク用被覆部材である。
すなわち、本発明は、前記マイクロフォンは、把持部を有するものであり、前記網状部は、前記マイク部から前記把持部に跨がっている。
【0021】
本発明の構成によれば、網状部が把持部にまで跨がって設けられているため、マイク部全体を覆いやすい。
【0022】
請求項6に記載の発明は、前記網状部の外側を覆う固定リングを有し、前記マイクロフォンを取り付けたときに、前記固定リングは、前記把持部とともに前記網状部を挟持する、請求項5に記載のマイク用被覆部材である。
【0023】
本発明の構成によれば、固定リングによって網状部が保持されるため、より外れにくい。
【発明の効果】
【0024】
本発明のマイク用被覆部材によれば、従来に比べてウイルスや雑菌の繁殖を抑制でき、歌唱等を行う際に音を遮りにくい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態のマイクロフォンにマイク用被覆部材を取り付けた状態を模式的に示した斜視図である。
【
図2】
図1のマイクロフォン及びマイク用被覆部材の一部破断平面図である。
【
図3】
図1の網状部をマイク部に取り付ける際の説明図であり、(a)は網状部をマイク部に取り付ける直前の断面図であり、(b)は網状部をマイク部に取り付ける途中の断面であり、(c)は網状部をマイク部に取り付けた状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0027】
本発明の第1実施形態のマイク用被覆部材1は、
図1のように、マイクロフォン100の集音部103を囲繞するマイク部101に対して取り付けられるものである。
【0028】
マイクロフォン100は、主に、カラオケ店等で使用されるダイナミックマイクである。
マイクロフォン100は、
図1,
図2のように、主要構成部材としてマイク部101と、把持部102と、集音部103を備えている。
マイク部101は、いわゆるマイクグリルであり、集音部103を保護するものである。マイク部101は、網状であって、集音部103と連通する複数の開口部105が形成されている。
把持部102は、歌唱者等が把持する部位であり、マイク部101から延びた棒状部位である。
集音部103は、マイク部101の内部に設けられ、開口部105を通過した音を集音する部位である。
【0029】
マイク用被覆部材1は、
図1,
図2のように、網状部2と、固定リング3で構成されている。
網状部2は、筒状であって、内部にマイク部101を挿入可能な挿入空間5を備えている。挿入空間5は、軸方向の一方の端部が閉塞され、他方の端部が開放されている。
具体的には、網状部2は、デミスターを加工したものであり、複数本の銅線又は銅合金線を立体交差させてメリヤス状に編み込まれた生地で筒状に形成され、その端部が閉塞されたものである。すなわち、網状部2は、複数の開口部6を備えており、軸方向及び径方向において伸縮可能となっている。
本実施形態の網状部2は、銅製又は銅合金製のメリヤス生地の端部を接着し、表裏を折り返されて形成されている。
【0030】
無負荷状態の網状部2の最大内径は、マイク部101の最大外径よりも小さいことが好ましく、マイク部101の最大外径の80%以上98%以下であることがより好ましい。
この範囲であれば、網状部2をマイク部101に取り付ける際に網状部2の変形を網状部2の弾性限界内に維持しやすい。
【0031】
網状部2の充填密度は、75kg/m3以上440kg/m3以下であることが好ましく、140kg/m3以上220kg/m3以下であることがより好ましい。
網状部2の接触表面積は、150m2/m3以上1800m2/m3以下であることが好ましく、275m2/m3以上910m2/m3以下であることがより好ましい。
網状部2の空間率(開孔率)は、94%以上100%未満であることが好ましく、97%以上98.5%以下であることがより好ましい。
これらの範囲であれば、音を遮りにくい。
【0032】
固定リング3は、円環状のリングであり、マイクロフォン100の把持部102とともに網状部2の位置を固定する固定部材であり、周方向に弾性変形な弾性リングである。
固定リング3の最大内径は、固定リング3の弾性限界によって適宜変更可能であるが、例えば、マイク部101の最大外径未満であり、把持部102の最小外径の80%以上であることが好ましい。
【0033】
続いて、本実施形態のマイク用被覆部材1をマイクロフォン100に取り付けるときの手順を各部材の位置関係とともに説明する。
【0034】
まず、
図3(a),
図3(b)のように、マイクロフォン100のマイク部101の頂部(把持部102から最も離れた位置)側を網状部2の開放端部側から覆い、挿入空間5内にマイク部101を挿入する。
【0035】
このとき、網状部2の最大内径はマイク部101の最大外径よりも小さいので、網状部2がマイク部101によって押し広げられ、広がった状態でマイク部101を覆う。そのため、網状部2は、マイク部101に対して復元力が働く状態となる。
【0036】
続いて、
図3(c)のように、網状部2がマイク部101の外面全体を覆い、把持部102まで跨ると、固定リング3を把持部102の基端部(マイク部101とは反対側の端部)側から挿入し、網状部2の端部を把持部102の外面と固定リング3の内面とで挟む。こうすることで、網状部2は、固定リング3と把持部102とによって挟持され、マイク部101から外れにくくなる。
【0037】
本実施形態のマイク用被覆部材1によれば、網状部2がマイク部101に対して着脱可能であるため、容易に交換が可能である。
【0038】
本実施形態のマイク用被覆部材1によれば、銅又は銅合金で構成された網状部2でマイク部101を覆うため、網状部2にウイルスや雑菌が付着しても、ウイルスの増殖や雑菌の増殖を抑制でき、歌唱等を行う際に音を遮りにくい。また、本実施形態のマイク用被覆部材1によれば、ウイルスがコロナウイルスの場合であっても、例えば、閉店後や空き時間に網状部2を付けた状態で4~6時間放置するだけで、コロナウイルスを死滅させることができる。
【0039】
本実施形態のマイク用被覆部材1によれば、最大内径がマイク部101の最大外径よりも小さく伸縮自在な網状部2でマイク部101を覆うので、常時網状部2は広がった状態となる。そのため、常時、網状部2に復元力が働き、マイク部101から外れにくい。
【0040】
本実施形態のマイク用被覆部材1によれば、網状部2の一方の端部が閉塞され、他方の端部が開放されている。そのため、マイク部101を挿入空間5に挿入する際に、マイク部101の挿入方向の先端部が網状部2の閉塞された端部で遮られてマイク部101が網状部2を突き抜けず、網状部2でマイク部101を覆いやすい。
【0041】
本実施形態のマイク用被覆部材1によれば、マイクロフォン100に取り付けた状態において、網状部2の開口部6の開口面積がマイク部101の開口部105の開口面積よりも大きい。そのため、網状部2がマイク部101の内部の集音部103への音の伝達の妨げになりにくい。
【0042】
本実施形態のマイク用被覆部材1によれば、網状部2がマイク部101から把持部102に跨がって設けられているため、マイク部101の外面全体を覆いやすい。
【0043】
本実施形態のマイク用被覆部材1によれば、網状部2を固定リング3と把持部102で挟持して固定するため、マイク部101から網状部2が外れにくい。
【0044】
上記した実施形態では、網状部2を複数本の銅線又は銅合金線をメリヤス編みすることで形成していたが、本発明はこれに限定されるものではない。網状部2を金網で構成できれば、生地の編み方又は織り方は特に限定されるものではない。網状部2は、例えば、平織金網や綾織金網、畳織金網などの織金網で構成してもよい。また、網状部2は、例えば、亀甲金網で構成してもよいし、菱形金網で構成してもよい。
【0045】
上記した実施形態では、銅線又は銅合金線によって網状部2が形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。めっき等により、表面が銅又は銅合金で構成された金属線によって網状部2を形成してもよい。
【0046】
上記した実施形態では、固定リング3によって網状部2をマイクロフォン100に対して固定していたが、本発明はこれに限定されるものではない。他の部材、例えば、粘着テープ等によって網状部2をマイクロフォン100に対して固定してもよい。
【0047】
上記した実施形態では、固定リング3は、周方向に伸縮可能な弾性リングであったが、本発明はこれに限定されるものではない。固定リング3は、実質的に伸縮しない剛性リングであってもよい。この場合、固定リング3の最大内径は、マイク部101の最大外径未満でかつ把持部102の最小外径以上となる。
【0048】
上記した実施形態では、マイク部101の全面を網状部2で覆っていたが、本発明はこれに限定されるものではない。マイク部101の一部のみを覆っていてもよい。
【0049】
上記した実施形態では、網状部2は、マイク部101から把持部102の一部に跨っていたが、本発明はこれに限定されるものではない。網状部2は、マイク部101から把持部102の全体を覆っていてもよい。
【0050】
上記した実施形態では、マイクロフォン100として、ダイナミックマイクを使用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。マイクロフォン100はコンデンサーマイクであってもよい。
【0051】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【符号の説明】
【0052】
1 マイク用被覆部材
2 網状部
3 固定リング
5 挿入空間
6 開口部
100 マイクロフォン
101 マイク部
102 把持部
103 集音部
105 開口部