(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】水玉鑑賞方法
(51)【国際特許分類】
H04N 5/74 20060101AFI20240610BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20240610BHJP
G03B 21/608 20140101ALI20240610BHJP
B05B 17/06 20060101ALI20240610BHJP
B05B 17/08 20060101ALI20240610BHJP
B05B 1/20 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
H04N5/74 C
G03B21/00 D
G03B21/608
B05B17/06
B05B17/08
B05B1/20 101
(21)【出願番号】P 2020135653
(22)【出願日】2020-08-11
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】598136714
【氏名又は名称】株式会社ウォーターパール
(74)【代理人】
【識別番号】110002033
【氏名又は名称】弁理士法人東名国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 定
(72)【発明者】
【氏名】戸島 太郎
【審査官】益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-091019(JP,A)
【文献】米国特許第04294406(US,A)
【文献】米国特許第09223192(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0181242(US,A1)
【文献】特開平04-319983(JP,A)
【文献】特開平04-132102(JP,A)
【文献】特開2004-046027(JP,A)
【文献】成田岳 他5名,1000fps・8bit階調と低レイテンシ投影を実現する高速プロジェクタの開発,第20回日本バーチャルリアリティ学会大会論文集,2015年09月11日,pp.162-165
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/74
H04N 9/31
G03B 21/00
B05B 17/06
B05B 17/08
B05B 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流水中に振動を付与することでノズル先端から水玉を吐出する水玉吐出装置と、水玉に光を照射する光照射装置とを備えた水玉鑑賞装置を用い、前記光照射装置の光源を明滅させることで、水玉を鑑賞可能とする方法であって、
前記水玉吐出装置は、横方向に所定間隔を隔てて配置された多数のノズルから水玉を吐出するとともに、当該吐出した水玉を略鉛直面内に沿って下方に落下させるように構成され、
前記光照射装置は、リフレッシュレートが300Hz以上の高速プロジェクタによって構成され、前記鉛直面内の水玉をスクリーンとみなして、明滅のデューティー比が20%以下となるように前記プロジェクタの連続する画面を、画面若しくは画像を表示するコマと、画面を表示しないコマを使い分け投影することで、当該投影された領域内で前記水玉が目視可能に設けられていることを特徴とする水玉鑑賞方法。
【請求項2】
前記画面の一部をマスキングすることにより、前
記スクリーンの一部の領域に水玉が見えるようにした請求項1記載の水玉鑑賞方法。
【請求項3】
前記水玉に光を投影する位置と、投影する光の明滅の周波数や位相を同時にコントロールして水玉が上下左右に動いて見えるようにした
請求項1記載の水玉鑑賞方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上方から落下する多数の水玉に光を当てることで水玉を目視鑑賞する方法に係り、更に詳しくは、略鉛直面内で落下する水玉群をスクリーンのように利用してプロジェクタの映像を投影することで、当該映像に対応する領域内で水玉を光らせて見せることができる水玉鑑賞方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のノズルが所定間隔を隔てて一連に配置されたタンク内の流水中に所定周波数の振動を付与することにより、ノズル先端から水玉を吐出(射出)するように構成し、その水玉にストロボの光をあてることにより、水玉を目視することができる水玉鑑賞装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
流水に付与する振動はバイブレータにより構成されており、このバイブレータの振動周波数を例えば60Hzに設定することにより、1秒間に60個の水玉をノズルより吐出させ、同時に、60Hz前後の周波数で明滅するストロボの光をあてることにより、点々と輝いて落下する水玉を目視鑑賞することができ、建物のエントランスホール等、様々な空間に導入可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した水玉鑑賞装置にあっては、ノズルから吐出した水が、水玉となって落下する態様を光って見せるという演出がなされるだけで、全体的には単調なものといえ、例えば、水玉の動きを部分的に代えたり、水玉が見える領域を変化させたりするといった多様なバリエーションを付加する演出はできない。
そこで、多様な演出効果を付与するために、通常若しくは汎用型のプロジェクタを利用して水玉を見せる試みを行ったが、落下する水玉を一つずつ明瞭に見せることはできなかった。
そこで、本発明者は、その原因を検討した結果、プロジェクタのリフレッシュレートと、明滅のデューティー比に原因があることを知見した。すなわち、プロジェクタによる明滅のデューティー比が50%では綺麗に水玉を演出することができず、数百Hzのリフレッシュレートを持つ高速プロジェクタでなければならないことを知見した。
【0005】
[発明の目的]
本発明は、かかる従来例の水玉鑑賞装置における問題に着目し、前記知見に基づいて案出されたものであり、その目的は、高速プロジェクタを利用することによって多様なバリエーションで水玉の演出を行うことができる水玉鑑賞方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、特許請求の範囲に記載した構成を採用したものである。具体的には、流水中に振動を付与することでノズル先端から水玉を吐出する水玉吐出装置と、水玉に光を照射する光照射装置とを備えた水玉鑑賞装置を用い、前記光照射装置の光源を明滅させることで、水玉を鑑賞可能とする方法であって、
前記水玉吐出装置は、横方向に所定間隔を隔てて配置された多数のノズルから水玉を吐出するとともに、当該吐出した水玉を略鉛直面内に沿って下方に落下させるように構成され、
前記光照射装置は、リフレッシュレートが300Hz以上の高速プロジェクタによって構成され、前記鉛直面内の水玉をスクリーンとみなして、明滅のデューティー比が20%以下となるように前記プロジェクタの連続する画面を、画面若しくは画像を表示するコマと、画面を表示しないコマを使い分け投影することで、当該投影された領域内で前記水玉が目視可能に設けられる、という手法を採っている。なお、上記「コマ」とは、プロジェクタが投影する連続する画面のうちの1つの画面、及び画面を表示するための時間を指す。ただし、このコマが指す時間は、点灯した状態の画面を表示する時間だけでなく、消灯した状態の真っ黒の画面を表示する時間も表すものである。
【0007】
本発明の高速プロジェクタは、リフレッシュレートが300Hz以上、デューティー比が20%以下の明滅性能を備えたものである。これを光照射装置の条件としたのは、さもないと、上下方向に隣り合う水玉が線のように見える傾向が強くなり、水玉を一つずつ独立して綺麗に見せることができなくなるためである。
なお、より高速のプロジェクタとして、リフレッシュレートが600Hz、デューティー比10%、リフレッシュレート960Hz、デューティー比6.25%のもの等を用いることが例示でき、これによれば、水玉を更に一層明瞭且つ綺麗に見せることが可能となる。
【0008】
本発明において、前記画面の一部をマスキングすることにより、前記スクリーンの一部の領域だけに水玉が見えるようにする、という手法を採ることができる。
このマスキングは、前述した画面を表示するコマと表示しないコマを使い分け、「画面を表示するコマ」で表示するコマを真っ白の画面の代わりに、一部のみが白い画面、例えば、黒地に白い丸が描かれた画面を表示することで、一部の水玉のみに光が投影されてスクリーン内の一部で水玉が見えるようになる。
【0009】
また、請求項1記載の水玉鑑賞方法において、前記水玉に光を投影する位置と、投影する光の明滅の周波数や位相を同時にコントロールして水玉が上下左右に動いて見えるようにすることもできる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前記略鉛直面に落下する多数の水玉群をスクリーンとしてみなしたときに、当該スクリーンに高速プロジェクタの画像を投影することで、水玉を見せることができる。
高速プロジェクタのリフレッシュレートが300Hz以上、デューティー比が20%以下であることにより、上下方向において隣り合う水玉相互間は分断され、一つずつ独立した水玉を目視鑑賞することができる。従って、投影される画像の変化に応じて、見える水玉の位置や、動く方向、あるいは色彩等を変化させることが可能となり、多様なバリエーションをもって水玉を鑑賞することができる。
プロジェクタにおける画面若しくは画像の一部をマスキングした場合には、スクリーン全体に水玉を見せるのではなく、スクリーンの一部に水玉を見せることができるようになり、また、マスキングする位置を変化させることによって、スクリーンの領域内で、水玉が見える位置を変化させることが可能となる。
更に、投影位置と、光の明滅の周波数や位相のコントロールを行えば、水玉がスクリーン内で動いて見えるように演出することができる。
また、上記の方法を任意に組み合わせれば、更に異なる態様で水玉を見せることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態における水玉鑑賞装置を用いて水玉にプロジェクタの画面を投影して水玉を見せる方法を説明するための概略斜視図。
【
図2】画面を構成するコマと水玉の関係を示す説明図。
【
図3】水玉群の一部の領域を光らせている状態を示す概略斜視図。
【
図4】コマに光を通すタイミングによって水玉の見え方を異ならせる状態を示す説明図。
【
図5】位相差を利用して水玉を上下左右に動くように見せる疑似移動の原理を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しつつ、本実施形態に係る水玉鑑賞方法について説明する。
【0013】
図1に示されるように、本実施形態における水玉鑑賞装置は、水玉吐出装置11と、光照射装置としての高速プロジェクタ12とを備えて構成されている。
水玉吐出装置11は、床面に設置されて一定量貯水可能な水槽13と、この水槽13の上方に配置されるとともに、水槽13の幅方向に沿って延びるタンク14と、当該タンク14の上面に所定間隔を隔てて配置された多数のノズル15と、水槽13からタンク14に水を供給してノズル15から水を吐出(射出)させるように循環させるポンプ16と、タンク14内の水に所定周波数で振動を付与する図示しないバイブレータ等からなる振動付与手段とを備えて構成されている。
【0014】
前記ノズル15は、振動付与手段に設定される周波数に応じて水玉Wを吐出するようになっており、例えば、60Hzで振動が付与された場合に、1秒間に60個の水玉Wを吐出できるようになっている。なお、水玉Wの大きさは、ノズル15の開口径によって決定される。
【0015】
ノズル15は、図示されているように、それぞれが水槽13側に傾いた略同一姿勢でタンク14に支持されている。この傾きにより、各ノズル15から吐出する水玉Wが上方で放物線を描き、その後、略鉛直面で下方に落下する水玉群によるスクリーンSを形成し得るようになっている。なお、各ノズル15から吐出した水玉Wは、厳密には単一の鉛直面内で落下するとは限らず、当該鉛直面と直交する方向に多少のずれを生じて落下する水玉の列も存在し得るが、この場合でも、単一の鉛直面にあるものと見做して支障ないものである。
【0016】
前記高速プロジェクタ12は、LEDを光源として用いたもので、リフレッシュレート300Hz、デューティー比20%(明滅の点灯:消灯が1:4)のもの、リフレッシュレート600Hz、デューティー比1:9のもの、リフレッシュレート960Hz、デューティー比が6.25%のもの等が採用される。
上記高速プロジェクタ12は、東京エレクトロンデバイス株式会社によるプロジェクタ「TB-UK-DYNAFLASH」、或いは「TB-V3-DYNAFLASH」を利用することができるがこれに限定されるものではない。
【0017】
図2には、600Hzのリフレッシュレート、デューティー比10%の高速プロジェクタと、60Hzの振動周波数を有する水玉吐出装置を用いて水玉を光らせる場合のコマ(画面)と、水玉の関係が示されている。同図に示されるように、1コマ目と、11コマ目に真っ白な画面(画面を表示するコマ)を表示する一方、2~10コマ目、12~20コマ目に真っ黒な画面(画面を表示しないコマ)を表示することにより、水玉Wを見せることができ、
図1に示されるように、スクリーンSの全域において全体的にほぼ等しく空中に静止して見える水玉Wを鑑賞者Hに見せることができる。
【0018】
このように、本実施形態の水玉鑑賞方法は、水玉Wによって形成されるスクリーンに対して投影する画面を作成しておき、その画面に光をあてることで、水玉Wを見せることができる。
【0019】
図3には、スクリーンS内の水玉Wの一部のみの水玉を光らせて見せる場合が示されている。これは、前述した画面を表示するコマと表示しないコマを使い分け、「画面を表示するコマ」で表示するコマを真っ白の画面の代わりに、一部のみが白い画面(黒地に白いAが描かれた画面)を表示することで、スクリーンの一部の水玉を光らせるようになっている。
図3では、黒地に白の「A」が描かれた画面を投影した状態が示されており、「A」の部分の水玉が光って見えるようになっている。なお、
図3では、「A」の領域外にも水玉を示しているが、実際には、この部分は、真っ黒にマスキングされた画面を用いているので、外光が入らない室内の場合、水玉は見えない。
【0020】
図4には、他の水玉演出方法として、水玉の部分ごとに異なる周波数の光を投影している状態が示されている。
この例は、600Hzのプロジェクタと、60Hzの振動周波数を有する水玉吐出装置を用いて水玉を吐出する構成とした場合において、スクリーンにおける水玉の部分(領域)ごとに異なる周波数の光を投影した場合である。ここでは、スクリーンの中央部左側の領域では、10コマごとに1回発光させる(白い画面を投影する)ことで水玉が空中に静止しているように見せることができる。この一方、スクリーンSの中央部右側の領域では、9コマごとに1回発光させる(白い画面を投影する)ように設けられ、これにより、右側の領域では、白い画面を投影して光を通すタイミングが左側の領域よりも相対的に早くなり、水玉が上昇しているように見えるようになる。
【0021】
図5には、水玉を見せる上述の方法を組み合わせることで、光っている水玉が上下左右に動いて見えるようにする原理(疑似移動)が示されている。
ここでは、600Hzの高速プロジェクタを使用し、60Hzで水玉を吐出(射出)した場合の、ある時間と、水玉の位置との関係が示されている。
本実施形態では、プロジェクタ12が十分に高速となるため、リフレッシュレートと水玉吐出装置11における振動周波数を固定したまま、プロジェクタ12を光らせる位相をずらすことで、水玉が上下に移動して当該水玉が移動していっているかのように見せることが可能となる。つまり、
図5において、発光させる周期を10コマのまま変えずに発光させるタイミングを1コマずつ変えることで、水玉が疑似的に空中に静止した状態のまま位置を上下に移動させることができる。
従って、このような位相を利用することにより、例えば、水玉がボールのように跳ねているように見せたり、音楽に合わせて上下に踊っているような複雑な動きを見せることができる。なお、横方向の動きは、水玉吐出装置11におけるノズル15の間隔に依存するが、縦方向の動きは、600Hzのうちのどのタイミングで光を投影するかを変えることで、1秒間に水玉が落ちる距離を600分割した細かさで、水玉を上下に移動させることができる。
【0022】
なお、本発明における映像は、予め画像として作成し保存したものを、プロジェクション・マッピング専用の映像プレイヤーに読み込ませることにより、映し出すことができる。また、プロジェクション・マッピング専用の投影アプリケーション内で、プログラミングによりリアルタイムに画面を生成し、映し出す投影のタイミングは、どちらも、ソフトウェア内で計算によって決定することができる。
具体的には、設置されたプロジェクタと水玉吐出装置のノズルの位置を元に、水玉の軌跡を三次元上にシュミレーションし、水玉吐出装置のコントローラーからノズルを振動させるための信号を取り出して入力信号として用いることで、水玉がどの時刻に空間上のどの位置にあるかを把握し、プロジェクタをどのタイミングで発光させれば狙った位置の水玉に光が投影できるかを計算によって導き出すことができる。
【0023】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
【0024】
例えば、前記実施形態では、鑑賞者Hがスクリーンを挟んでプロジェクタの反対側に位置している場合を図示したが、プロジェクタ側から鑑賞するようにしてもよい。但し、この場合は、光が通る域外に鑑賞者が位置することとなる。
【0025】
また、プロジェクタのリフレッシュレートは、300Hz以上あればよく、水玉吐出装置の振動周波数は60Hzに限定されるものではなく、水玉が形成できる範囲で変更することができる。
【0026】
更に、本発明は、プロジェクタのデューティー比を固定した場合に限定されるものではく、画面を表示するコマの数を変化させることで、明滅のデューティー比を変化させ、見える水玉の上下方向の長さをリアルタイムに伸縮させる演出を行うことも可能である。
【0027】
また、ノズル15は、上向き方向に配置しなくてよく、タンク14から垂下するように配置してもよい。これによれば、落下する水玉の各列が、精度よく1つの鉛直面内に位置するようになる。
【符号の説明】
【0028】
11 水玉吐出装置
12 高速プロジェクタ
15 ノズル
H 鑑賞者
S スクリーン
W 水玉