(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】開閉チャック装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20240610BHJP
B23Q 7/04 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
B25J15/08 C
B23Q7/04 J
(21)【出願番号】P 2020193041
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-10-16
(31)【優先権主張番号】P 2019211857
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592127965
【氏名又は名称】NKE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【氏名又は名称】原田 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【氏名又は名称】奥山 裕治
(72)【発明者】
【氏名】東 知行
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-203500(JP,A)
【文献】特開2013-163245(JP,A)
【文献】特開平4-348890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
B23Q 7/00 - 7/18
F15B 15/00 - 15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持するためのフィンガーを把持/解除方向に作動させる開閉チャック装置において、
流体により駆動して前記フィンガーを作動させる第1シリンダと、
流体により駆動して前記フィンガーを作動させ且つ前記第1シリンダよりも受圧面積が大きい第2シリンダとを備え、
前記第1シリンダは、
前記フィンガーを把持方向に作動させる先発ピストンと、
前記先発ピストンの移動後に移動する後発ピストンと、
前記先発ピストンと前記後発ピストンとを収容すると共に前記後発ピストンの移動により開かれる導入口を有する第1シリンダケースと
を備え、
前記第2シリンダの第2ピストンは、前記導入口から導入される流体により前記フィンガーを前記把持方向に作動させる
開閉チャック装置。
【請求項2】
前記先発ピストンに連結され且つ前記フィンガーを支持するラックと、
前記ラックに噛合し且つ回転自在に支持されるピニオンと、
前記ピニオンのピニオン軸を覆い且つ前記ピニオン軸の周りを旋回するコイルバネと
をさらに備え、
前記コイルバネは、前記第2ピストンの移動により縮径して前記ピニオン軸を狭持する
請求項1に記載の開閉チャック装置。
【請求項3】
前記先発ピストンに連結され且つ前記フィンガーを支持するラックと、
前記ラックに噛合し且つ回転自在に支持されるピニオンと、
前記ピニオンのピニオン軸と平行に配された支持ピンにより回動可能に支持されたレバーと
をさらに備え、
前記レバーは、前記第2ピストンの移動により前記レバーが回動するように、前記支持ピンを挟んだ一方側が前記第2ピストンに連結され、
前記レバーと前記ピニオンとの対向部分に、前記第2ピストンの移動により互いに嵌合する凹凸部を有する
請求項1に記載の開閉チャック装置。
【請求項4】
前記先発ピストンに連結され且つ前記フィンガーを支持するラックと、
前記ラックに噛合し且つ回転自在に支持されるピニオンと
をさらに備え、
前記第2ピストンは、前記ピニオンのピニオン軸と平行に直線的に移動し、前記第2ピストンの直線運動を前記ピニオン軸の回転運動に変換するスクリュー機構を備える
請求項1に記載の開閉チャック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィンガーを把持・解除方向に作動させて、ワークを把持/解除する開閉チャック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2、3には、ラック-ピニオン機構を利用した開閉チャックが開示されている。これらの一対のフィンガーを同じ力で同期させてワークを把持する。
特許文献4、5には、一方のシリンダの受圧面積を大きくすることでクランプ力を高めている開閉チャックが開示されている。これらの一対のフィンガーは同期しておらず、個別に調整されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-38881号公報
【文献】特開平9-295294号公報
【文献】特許4264918号公報
【文献】特開昭62-74544号公報
【文献】特開2013-163245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ラック-ピニオン機構を利用して一対のフィンガーを同期させるタイプの開閉チャックにおいて、大きな把持力を得ようとする場合、両シリンダの受圧面積を大きくしなければならず、装置全体が大型化する傾向にある。仮に、片方のシリンダの受圧面積を大きくすると、受圧面積が異なるシリンダをピニオン機構で同期させることになり、その同期が難しい。
一方で、受圧面積が異なるシリンダをピニオン機構に頼らずに作動させる場合も、各シリンダを個別に調整することになり、その調整が煩雑である。
【0005】
そこで、本発明は、簡単な構造で、把持力を大きくすることができる開閉チャック装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る開閉チャック装置は、ワークを把持するためのフィンガーを把持/解除方向に作動させる開閉チャック装置において、流体により駆動して前記フィンガーを作動させる第1シリンダと、流体により駆動して前記フィンガーを作動させ且つ前記第1シリンダよりも受圧面積が大きい第2シリンダとを備え、前記第1シリンダは、前記フィンガーを把持方向に作動させる先発ピストンと、前記先発ピストンの移動後に移動する後発ピストンと、前記先発ピストンと前記後発ピストンとを収容すると共に前記後発ピストンの移動により開かれる導入口を有する第1シリンダケースとを備え、前記第2シリンダの第2ピストンは、前記導入口から導入される流体により前記フィンガーを前記把持方向に作動させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の開閉チャック装置によれば、簡易な構成で、把持力を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態1に係る開閉チャック装置を示す斜視図である。
【
図2】(a)は開閉チャック装置の側面図であり、(b)は開閉チャック装置の正面図である。
【
図3】(a)は
図2の(a)のA-A線断面図であり、(b)は
図2の(a)のB-B線断面図である。
【
図5】駆動機構が駆動する様子を示し、且つ、一部に部分拡大図を含む概略工程図である。
【
図6】(a)は後発ピストンの始動直前のシリンダ内の圧力状態を説明するための図であり、(b)は後発ピストンの始動直後のシリンダ内の圧力状態を説明するための図である。
【
図8】(a)は第2シリンダのピストン(大径ピストン)、ピニオン、ラック等を含む部位を示す概略斜視図であり、(b)は
図8の(a)のF-F線断面図である。
【
図9】(a)はコイル収容部周辺の斜視図であり、(b)はコイル収容部の断面斜視図である。
【
図10】(a)はコイル収容部におけるコイルバネの下端部9c付近での断面図であり、(b)はコイル収容部におけるコイルバネの上端部9b付近での断面図である。
【
図11】第1実施形態2に係る付与機構を説明する図であり、(a)は付与機構及びその周辺を取り出した斜視図であり、(b)は(a)における付与機構が位置する部分であってピニオン軸と直交する部分での断面斜視図である。
【
図12】付与機構の分解状態を異なる方向から見た斜視図である。
【
図13】ピニオンの凹凸部とレバーの凸凹部とを説明する拡大図であり、(a)はレバー凹領域がピニオン凸領域に嵌合した状態を示し、(b)はレバー凸領域がピニオン凹領域に嵌合した状態を示す。
【
図14】第2実施形態に係る開閉チャック装置を示す断面図であり、(a)は
図2の(a)のD-Dに相当する部位での断面であり、(b)は
図2の(b)のE-Eに相当する部位での断面である。
【
図15】第2実施形態に係る付与機構を説明する図であり、(a)は付与機構及びその周辺を取り出した斜視図であり、(b)は(a)における付与機構が位置する部分であってピニオン軸を含む部分での断面斜視図である。
【
図16】(a)は付与機構の分解状態を示す斜視図であり、(b)は(a)の分解状態の断面斜視図である。
【
図17】付与機構の動作を説明する図であり、(a)は側方から見た断面図であり、(b)は下方から見た断面図である。
【
図18】付与機構の動作を説明する図であり、(a)は側方から見た断面図であり、(b)は下方から見た断面図である。
【
図19】付与機構の動作を説明する図であり、(a)は側方から見た断面図であり、(b)は下方から見た断面図である。
【
図20】付与機構の動作を説明する図であり、(a)は側方から見た断面図であり、(b)は下方から見た断面図である。
【
図21】給排気機構を説明する図であり、(a)は流路位置での断面斜視図であり、(b)は給気時を説明する図であり、(c)は排気時を説明する図である。
【
図22】給排気機構を説明するための図であり、(a)は流路位置での断面斜視図であり、(b)は(a)の給排気機構の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<概要>
<第1実施形態>
第1実施形態では、後述の第1シリンダのストローク方向と、第2シリンダのストローク方向とが一致する開閉チャック装置について説明する。第1実施形態1では、コイルバネ(9)を利用した付与機構(6)を備える開閉チャック装置1について説明し、第1実施形態2では、ラチェットを利用した付与機構(16)を開閉チャック装置11について説明する。なお、第1実施形態2の開閉チャック装置の符号「11」は、図示されていないが、第1実施形態1の開閉チャック装置1と区別するために、便宜上、「11」とする。
【0010】
<第1実施形態1>
1.概略説明
図1、
図2及び
図3を用いて、第1実施形態1に係る開閉チャック装置の主な構成を説明する。
以降の記載において、前後・左右・上下の方向は、図中に記載された前後・左右・上下で示された矢印の方向を示すものとする。
図1に示すように、開閉チャック装置1はベース部材2を備えている。
図2の(a)に示すように、開閉チャック装置1は、ワークWを把持するための一対のフィンガーF、Fをベース部材2上で把持/解除方向に作動させる。
開閉チャック装置1について、
図3の(a)及び
図3の(b)を用いて詳述する。
図3の(a)に示すように、開閉チャック装置1は、ベース部材2に配設され且つ流体により駆動する一対の第1シリンダ(以後、小径シリンダという。)3、3と、小径シリンダ3、3のそれぞれのストロークにより互いに反対向きに直線運動し且つフィンガーF、Fを支持する一対のラック4、4と、ラック4、4に噛合し且つベース部材2に枢支されるピニオン5とを備えている。
図3の(b)に示すように、開閉チャック装置1は、ピニオン5に対してフィンガーFの把持方向に回転(符号L参照)させる力を付与する付与機構6と、フィンガーFがワークWにほぼ接触した後に付与機構6を駆動させる駆動機構7(
図3の(a)参照)とを備えている。
なお、第1実施形態1では、小径シリンダ3などを駆動させる流体として、圧縮した空気(以後、圧縮空気という)を用いている。
【0011】
2.各構成の説明
(1)ベース部材2
図1に戻って、ベース部材2は、例えば、本体部2aと、その前後にそれぞれ取り付けられる前部2b及び後部2cとからなる。また本体部2aは、主要な部分として3つに分割されている。なお、それら個々の分割体についての説明は省略する。本体部2a、前部2b及び後部2cは、ねじなどの締結具で一体に連結される。
本体部2aの上面には、フィンガーF、F(
図2の(a)参照)の台座であるスライド部材8、8をスライドさせるスライド溝8aが形成されている。
ベース部材2は、本体部2aに設けた貫通孔等を利用して、小径シリンダ3の小径シリンダケース3aや大径シリンダ6の大径シリンダケース6aを構成する。
【0012】
(2)小径シリンダ3
第1実施形態1では右方(図の下方)の小径シリンダ3が駆動機構7を兼ねている(後述する)。このため、まず2本の小径シリンダ3、3について、互いに共通する部分について説明する。
図3の(a)に示すように、小径シリンダ3は、第1シリンダケース(以後、小径シリンダケースという。)3aと、小径シリンダケース3a内に摺動自在に収納される第1ピストン(以後、単に、小径ピストンという。)3bとを備えている。
図3の(a)における小径シリンダ3は、ストローク量がゼロの状態である。このためフィンガーFは開いている(
図2の(a)の状態参照)。小径シリンダ3は複動ピストンであり、圧縮空気の圧力により小径ピストン3bは前後にストロークする。
小径ピストン3bを把持方向に駆動させる場合は、流路11aが利用され、導入口11cから圧縮空気が供給される(
図3の(a)中の矢印「G」である)。
図3の(a)における流路11aは、駆動機構7が設けられている小径シリンダ3側にのみ現れているが、当該導入口11cから他方の小径シリンダ3にも圧縮空気が供給される流路が存在する。
小径ピストン3bを解除方向に駆動(移動)させる場合は、流路11bが利用され、導入口11dから圧縮空気が供給される(図中の矢印「H」である)。
【0013】
(3)ラック4、スライド部材8
図4を用いて、スライド部材8及びラック4を説明する。
小径ピストン3bは、上下方向に延びる連結部材8bによりスライド部材8と連結されている。一方で、スライド部材8は、上下方向に延びる連結部材4aによりラック4と連結されている。このため、小径ピストン3bのストロークは、スライド部材8を介して、ラック4に伝達される。ラック4は、小径ピストン3bと同じ方向に、同じストローク量で直線運動する。
【0014】
(4)ピニオン5
本体部2aの中央付近にはピニオン5等が配設されている。ピニオン5のピニオン軸5aは本体部2aに回転可能に支持されている。具体的には、ピニオン軸5aは、下端部が本体部2aの底領域を構成する底部2fの丸穴2jに回転可能に挿入されている。
【0015】
(5)駆動機構7
以後の説明を容易にするため、付与機構6の前に、先に駆動機構7を説明する。
図3の(a)に示すように、第1実施形態1では、例えば、駆動機構7が、小径シリンダ3のうちの一方(図の下方)の小径シリンダを利用して設けられている。
ベース部材2、特に前部2bにおける、一方の小径シリンダ3(以後、駆動機構7ともいう。)に相当する部位は、前側に有底筒状に突出する筒状部2dとなっており、この筒状部2dを利用して構成されている。なお、筒状部2dは、底部の内面からは後方に延びる筒状の筒状部位2eを有する。
【0016】
(5-1)後発ピストン7a、付勢部材7b、導入口7c
駆動機構7は、例えば、先発ピストン3bに対し前方に設けられる後発ピストン7aと、後発ピストン7aを後方に付勢する付勢部材7bとを備えている。なお以後の説明において、駆動機構7が設けられた小径シリンダ3側の小径ピストン3bを説明する際には、先発ピストン3bとも呼ぶ。
後発ピストン7aは、前部2bの内部と一方の小径シリンダケース3aにおける前部側とを利用して移動可能に挿入されている。後発ピストン7aは、
図3及び
図6に示すように、後部側が小径シリンダケース3aに挿入され、前部側がベース部材2の前部2b内の後発シリンダケース7d内に挿入されている。後発ピストン7aの後部(先発ピストン3b側)の断面積は、前部の断面積よりも小さく構成されている。ここでの後発ピストン7aの前部は、他方の小径シリンダケース3a側に張り出すような形状をしている。これにより、ベース部材2を大きくすることなく、後発ピストン7aの前部の断面積を大きくできる。また、断面積を大きくすることで、後述の後発ピストン7aの始動のタイミングを規制している。
【0017】
後発シリンダケース7d内は、
図3の(a)に示すように、小径ピストン3bを初期位置に戻す(解除方向に移動させる)際に圧縮空気が供給される流路11bの末路で接続されている。つまり、導入口11dから供給される圧縮空気は、後発シリンダケース7d内で行き止まり、後発シリンダケース7dと導入口11dの間に小径ピストン3bへの流路が接続されている。これにより、小径ピストン3bが把持方向に移動する際に小径シリンダケース3a内の空気が、後発シリンダケース7d内の空気よりも優先して排出されることとなり、把持方向へ移動していた先発ピストン3b(フィンガーF)が停止するまで又は停止直後まで、後発シリンダケース7d内に排気圧を作用させることができる。つまり、先発ピストン3bが停止する前に後発ピストン7aが移動するのを規制している。
後発ピストン7aは、筒状をし、その中心軸に沿った貫通孔に筒状部位2eが挿通されている。これにより、後発ピストン、そのストロークがガイドされる。
また、後発ピストン7aの内部と筒状部位2eの内部とは連通しており、小径シリンダ3に供給される圧縮空気の流路11aにされている。
【0018】
付勢部材7bは、例えば、コイルバネである。その付勢部材7bは、そのコイル内に筒状部位2eを通して配設されている。筒状部位2eは付勢部材7bの伸縮方向の動きを支持している。付勢部材7bは、フィンガーFがワークWに当接する前、つまり、先発ピストン3bが停止する前に、後発ピストン7aが移動するのを規制するためのものである。これにより、上述のように後発シリンダケース7d内に排気圧を作用させているが、排気圧が作用しない場合であっても、後発ピストン7aが先発ピストン3bの停止前に移動するのを付勢部材7bにより規制されることになる。したがって、後発ピストン7aが導入口7cを塞ぐことを付勢部材7bにより保証される。
後発ピストン7aは、小径シリンダケース3a内の圧力が所定以上になると移動する。このため、先発ピストン3bの位置に関係なく(ワークWの大きさに関係なく)、後発ピストン7aを移動させることができる。
また、駆動機構7の小径シリンダケース3aには、導入口7cが形成されている(
図5の工程S3の拡大図参照)。その導入口7cを通じて、小径シリンダ3に利用した圧縮空気が付与機構6へ供給される。その供給された圧縮空気により付与機構6は駆動する。
【0019】
(5-2)駆動機構7が駆動する様子
駆動機構7が駆動する様子を
図5を用いて説明する。
なお、
図5の工程S1及び工程S2の図は、
図2の(b)のC-C断面に相当し、工程S3の図は、導入口7cが現れるように
図2の(b)のC-C断面よりも左側に移動した部位での断面である。
【0020】
(工程S1):
図5に示す先発ピストン3bはストローク量がゼロの状態である(初期状態である)。つまり、
図3に示す、導入口11dから圧縮空気が供給され、導入口11cが開放されている。これにより、先発ピストン3b及び後発ピストン7aの初期状態が維持される。
この状態では、先発ピストン3bは後発ピストン7aの後面に接触又は近接し、フィンガーF(
図2の(a)参照)は開いている。なお、先発ピストン3bと後発ピストン7aとが接触又は近接することで、装置の全長(ストローク方向)を短くできる。
一方、後発ピストン7aもストローク量がゼロの状態である。この状態では、後発ピストン7aは導入口7cの上面に位置し、導入口7cを塞いでいる(大径シリンダケース6aと連通していない)。
【0021】
(工程S2):小径シリンダケース3aに流路11aを介して圧縮空気(
図3の(a)における矢印「G」である)が導入され、導入口11dが開放されると、先発ピストン3bは後方(図の右方)にストロークし、フィンガーFも把持方向に移動する(
図2の(a)参照)。この状態では、先発ピストン3b及び他方の小径ピストン3bの移動による小径シリンダケース3a内の空気の排出が優先され、
図6の(a)に示すように、後発シリンダケース7d内に排気圧(図中のKのクロスハッチングであり、大気圧よりも高い)が残存し、前部側の断面積が後部側よりも大きい構成を採用する後発ピストン7aの移動が規制される。なお、小径シリンダケース3a内であって先発ピストン3bと後発ピストン7aとの間の圧力は、先発ピストン3bの停止後の圧力よりも低い(図中のJのハッチングである)。
【0022】
(工程S3):やがて、フィンガーFはワークWに接触する(先発ピストン3bの移動が停止する)と、小径シリンダケース3aからの排気圧の放出がなくなり、後発シリンダケース7d内の排気圧(
図6の(b)のクロスハッチングKであり、放出後は大気圧と同じであり、(a)のKのクロスハッチングより疎に示されている)が放出される。先発ピストン3bのストロークの停止後も、圧縮空気が流路11aを介して引き続き導入され、小径シリンダケース3a内の空気圧(
図6の(b)のハッチングJであり、
図6の(a)のJのハッチングより密に示されている)が上昇する。これにより、後発ピストン7aが前方へと移動を開始する。そして、小径シリンダケース3a内の空気圧がさらに高くなると、付勢部材7bの付勢力に抗して、後発ピストン7aを前方(図の左方)にストロークさせ、やがて、後発ピストン7aが導入口7cの上面から前側へと移動する。これにより、小径シリンダケース3a内に導入口7cが現れ、小径シリンダケース3a内の圧縮空気が導入口7cから付与機構6に供給される。そして、導入口7cを介して供給された圧縮空気により、後述する付与機構6が作動する。
【0023】
把持状態のフィンガーFを解除する際には、小径シリンダケース3aの先発ピストン3bの後方(
図5の右方)の流路11bから圧縮空気(
図3の(a)における矢印「H」である)が供給される。流路11bからの圧縮空気の供給に合わせて、小径ピストン3bを把持方向に駆動するための流路11aが開放される(抜かれる)。これにより、小径ピストン3bと後発ピストン7aが初期状態に戻る。
【0024】
(6)付与機構6
次いで
図7及び
図3の(b)を用いて、付与機構6を説明する。
図7に主に示すように、付与機構6の構成として、第1実施形態1では、例えば、圧縮空気で駆動するシリンダ機構(第2シリンダ)を用いている。
第2シリンダ(以後、大径シリンダという。)6は、小径シリンダ3よりもピストンをストロークさせる受圧面積が大きい。大径シリンダ6は、第2シリンダケース(以後、大径シリンダケースという。)6aと、その大径シリンダケース6a内に摺動自在に収納される第2ピストン(以後、大径ピストンという。)6bとを備えている。
【0025】
第1実施形態1では、付与機構6の構成として、ベース部材2の後部2cの内面に係合された第2付勢部材6cを備えている。第2付勢部材6cは、例えば、コイルバネである。第2付勢部材6cは、大径ピストン6bを大径シリンダケース6aの前側(
図3の(b)の左方)に付勢している。つまり、第2付勢部材6cは、大径ピストン6bの把持方向に配され、大径ピストン6bが把持方向に移動するのを妨げる方向(解除方向)に付勢する。
図に示している状態は、大径ピストン6bのストローク量がゼロの状態で、第2付勢部材6cは自由長の状態又は大径ピストン6bを解除方向に若干付勢した状態である。つまり、駆動機構7が機能していない状態では、大径ピストン6bがストロークがゼロの状態で維持される。
また第1実施形態1において、付与機構6は、ピニオン軸5aの周囲に配置されるコイルバネ9と、そのコイルバネ9の周囲を覆うコイル収容部10とをさらに備えている。
【0026】
(6-1)大径ピストン6b
大径ピストン6bは、
図8に示すように、2本の小径シリンダ3が並設する方向(左右方向)に長い形状(例えば、長円形状)をし、小径シリンダ3のストローク方向と平行(前後方向)な方向に延びている。大径ピストン6bは2本の小径シリンダ3の下方側に配されている。これにより、大径ピストン6bを左右方向に長い形状にすることが可能となり、装置の大型化を招くことなく、大径ピストン6bの受圧面積を大きくできる。
図3の(b)に示すように、大径ピストン6bの前後方向の中央付近には開口部6dが形成されている。その開口部6dの内部にピニオン5、第2付勢部材6c、コイル収容部10が配置されている。また、大径ピストン6bの開口部6dの内面には切欠部6eが形成されている。
なお、大径シリンダケース6aへの圧力空気は、大径シリンダケース6aと前部2bと大径ピストン6bの前端面6fとで形成される密閉空間に導入される。これにより、大径ピストン6bに上記開口部6d等を設けることができる。
【0027】
(6-2)コイルバネ9、コイル収容部10
ここから
図3の(b)と共に、
図8~
図10を加えて説明する。
コイル収容部10は、
図9に示すように、本体部2aの底部2fの上面であってピニオン軸5aの中心軸周りに回転可能に配置されている。コイル収容部10は、内部をピニオン軸5aが貫通する収容本体部10aと、ピニオン軸5aが挿通し且つ収容本体部10aの下側に配された収容下部10bとを有している。
収容下部10bの貫通孔は、コイルバネ9よりも小さく構成されている。これにより、コイルバネ9を確実に収容できる。収容本体部10aと収容下部10bは、コイルバネ9を収容する状態でねじ10cで固定されている。
コイル収容部10は、収容本体部10aに固定された収容連結部10dを介して大径ピストン6bと連結されている。これにより、コイル収容部10は、大径ピストン6bの移動に連動して、ピニオン軸5a(の中心軸)周りに回転する。なお、収容連結部10dも収容本体部10aと収容下部10bとを固定するねじ10cにより収容本体部10aに固定されている。
【0028】
収容連結部10dは、
図8の(a)に示すように、外方へ張り出す張出部分10eを有している。張出部分10eは、収容連結部10dと収容下部10bとの間に配されているスペーサー10fを介して、収容下部10bにピン10gにより連結されている。スペーサー10fは、大径ピストン6bの切欠部6eに嵌合している。これにより、コイル収容部10が大径ピストン6bと連動して回転する。なお、スペーサー10fは、大径ピストン6bの前後方向の運動を、ピニオン軸5a周りの回転運動として伝達する。このため、スペーサー10fが大径ピストン6bの移動方向と直交する方向に若干移動できるように、切欠部6eは構成されている。
【0029】
コイルバネ9はバネ鋼線を密接して螺旋状に巻いたものである。
図10の(b)に示すように、コイルバネ9の上端部9bは螺旋状の本体部9aの径方向に延伸し、下端部9cは本体部9aの接線方向に延伸している。
図9の(b)に示すように、コイルバネ9は、ピニオン軸5aとの間で隙間が存在するように、つまり、ピニオン軸5aの回転(小径ピストン3bのストローク)を邪魔しないように、コイル収容部10に収容されている。
コイルバネ9の上端部9bは、
図10の(b)に示すように、コイル収容部10(収容本体部10a)のねじ孔に螺合する一対のねじ10iにより挟持されることで、固定されている。
【0030】
コイルバネ9の下端部9cは、
図9の(b)及び
図10の(a)に示すように、本体部2aの底部2fに固定された下固定部2gと、下固定部2gに固定される上固定部2hとで挟持されることで固定されている。
これにより、下端部9cが固定され、上端部9bはピニオン軸5a周りに回転可能なコイル収容部10に固定されることとなり、大径ピストン6bの動作によりコイルバネ9が縮径可能となる。なお、コイルバネ9の端部の固定は、上下で反対(下端部が回転可能である)でおこなわれてもよい。
【0031】
(6-3)付与機構6が作動する様子
ここから付与機構6が作動する様子を説明する。
(工程R1):
図3の(b)に戻って、この図の状態は、大径ピストン6bのストローク量がゼロの状態である。駆動機構7の導入口7c(
図5の工程S3参照)が開くと、圧縮空気が大径シリンダケース6a内に注入される。その空気圧により、第2付勢部材6cの付勢力に逆らって、大径ピストン6bが後方(図の右方)にストロークする。
(工程R2):大径ピストン6bのストロークは、スペーサー10f、収容連結部10dを介してコイル収容部10に伝達される。これにより、コイル収容部10はコイルバネ9周りに符号L方向に回動する。L方向はフィンガーFの把持方向である。
【0032】
(工程R3):コイル収容部10が回転すると、コイルバネ9の上端部9bが周方向に移動し、コイルバネ9の下端部9cはベース部材2に固定されているため、本体部9aに引張負荷が作用して、コイルバネ9は縮径する。
この縮径により、コイルバネ9は最終的にピニオン軸5aに密着し(締め付けて)、ピニオン5も同じ方向(把持方向)に回転する。これにより、ワークW(
図2の(a)参照)に把持力を付与することができる。また、コイルバネ9の縮径によりピニオン軸5aの回転がロックされる。このためラック4は解除する方向に移動できない。
この際、大径シリンダ6の受圧面積が、小径シリンダ3よりも大きいため、ワークWを把持する把持力が、小径シリンダ3での把持力よりも大きくなる。
【0033】
(工程R4):大径シリンダケース6aから圧縮空気が抜けると、第2付勢部材6cの付勢力によって、大径ピストン6bは、元の位置(図の前方)に移動する。これにより、コイル収容部10はR方向(解除方向)に回転する。すると、縮径状態のコイルバネ9は拡径し、ピニオン軸5aの密着が解かれる。これにより、ピニオン5が自由に回動できるようになる。なお、大径シリンダケース6aから圧縮空気が抜けると、縮径状態のコイルバネ9の復元力によって、コイル収容部10はR方向(解除方向)に回転する。
【0034】
3.第1実施形態1の特徴
第1実施形態1に関連する開閉チャック装置は、選択された特定の構成に基づいて発明となり得る、以下に示す特徴を有する。なお、第1実施形態2又は第2実施形態と共通する特徴も含む。
(1)第1の特徴
本発明の開閉チャック装置1において、第1シリンダ3と第2シリンダ6の構成等に着目した第1の特徴について説明する。
【0035】
(1-1)第1の特徴を有する開閉チャック装置は、ワークWを把持するためのフィンガーFを把持/解除方向に作動させる開閉チャック装置において、流体により駆動してフィンガーFを作動させる小径シリンダ3と、流体により駆動してフィンガーFを作動させ且つ小径シリンダ3よりも受圧面積が大きい大径シリンダ6とを備え、小径シリンダ3は、フィンガーFを把持方向に作動させる先発ピストン3bと、先発ピストン3bの移動後に移動する後発ピストン7aと、先発ピストン3bと後発ピストン7aとを収容すると共に後発ピストン7aの移動により開かれる導入口7cを有する小径シリンダケースとを備え、大径シリンダ6の大径ピストン6bは、導入口7cから導入される流体によりフィンガーFを把持方向に作動させている。
第1の特徴として、小径シリンダ3内に先発ピストン3b及び後発ピストン7aを備えているので、装置全体がコンパクトである。また、小径シリンダ3よりも受圧面積の大きな大径シリンダ6を備えているので、導入される流体をそのまま大径シリンダ6で利用して、大きな力を得ることができる。例えば、流体にさらなる圧力を加えずに、その流体をそのまま大径シリンダ6に導入することで、大きな把持力をえることができる。
また、小径シリンダ3と大径シリンダ6との駆動に同じ流体を利用しているので、流路の構造が簡単となる。また、流路が一系列となるので全体としてコンパクトとなり、装置全体を小さくすることができる。
【0036】
(1-2)このような第1の特徴を有する開閉チャック装置は、先発ピストン3bに連結され且つフィンガーFを支持するラック4と、ラック4に噛合し且つ回転自在に支持されるピニオン5と、ピニオン5のピニオン軸5aを覆い且つ前記ピニオン軸の周りを旋回するコイルバネ9とをさらに備え、コイルバネ9は、大径ピストン6bの移動により縮径してピニオン軸5aを狭持するものであるのが好ましい。
コイルバネ9の狭持によりピニオン軸5aが回転できなくなるので、ラック4の動きをロックすることができる。さらに、ロック状態で大径シリンダのピストンが移動することで、大きな力でピニオン5を回転することができる。
コイルバネ9は、例えば、一端が固定され、他端が大径ピストン6b側の部材に固定されることで、大径ピストン6bの移動で縮径する。
なお、コイルバネ9の一端は、大径ピストン6bの移動によりコイルバネ9が縮径する際に固定(一端の移動が規制)されていればよく、大径ピストン6bが移動していない状態では、一端は固定されていなくて(移動可能であって)もよい。
【0037】
(2)第2の特徴
開閉チャック装置の構成全体の連動関係に着目した第2の特徴について説明する。この第2の特徴を有する開閉チャック装置においても、装置の大型化を避け、その上で、把持力を大きくすることができる開閉チャック装置を提供するという課題を解決できる。
なお、以下に示す開閉チャック装置は、上記した実施形態の開閉チャック装置1と同じ構成には同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0038】
(2-1)第2の特徴を有する開閉チャック装置は、ワークWを把持するためのフィンガーFを把持/解除方向に作動させると共に、ベース部材2を備えており、そのベース部材2に配設され且つ流体により駆動する小径シリンダ3と、小径シリンダ3のストロークにより直線運動し且つフィンガーFを支持するラック4と、ラック4に噛合し且つベース部材2に枢支されるピニオン5とフィンガーFの把持方向に回転させる力をピニオン5に付与する付与機構6と、フィンガーFがワークWに接触すると付与機構6を駆動させる駆動機構7とを備えている。
例えば、特許文献1、2、3のようなピニオンを用いて、一対のシリンダのストロークの同期を図るタイプの装置では、通常、大きな把持力を得るには、一対のシリンダごと受圧面積を大きくしなければならない傾向にある。
これに対し、第2の特徴を有する開閉チャック装置は、フィンガーFの移動と、フィンガーFへの把持力の付与とを分けているので、把持力の要らない移動用の小径シリンダ3の受圧面積を小さくできる。
例えば、フィンガーFがワークWに接触すると、駆動機構7は付与機構6を駆動させる。そして付与機構6は、フィンガーFにワークWを把持するための把持力を与える。このため、フィンガーFがワークWに接触するまでは、把持力をほとんど有しない小さなシリンダ(移動だけで良いので小型化できる)でフィンガーFを柔らかくワークWに接触させることができる。次いで、フィンガーFに把持力を付与する。このため、移動中のフィンガーFが大きな力でワークWをあらぬ方向に移動させたり、ワークWを破損させたりするのを防止することができる。また、柔らかくワークWに接触するので、ワークWを把持する位置が安定する。
【0039】
(2-2)このような第2の特徴を有する開閉チャック装置において、駆動機構7は、小径シリンダ3を駆動させた流体を付与機構6を作動させる流体として供給する。これにより、小径シリンダ3と、駆動機構7と付与機構6とで同じ流体を利用しているので、流路の構造が簡単となる。また、流路が一系列となるので全体としてコンパクトとなり、装置全体を小さくすることができる。
【0040】
(2-3)このような第2の特徴を有する開閉チャック装置において、駆動機構7が設けられている小径シリンダ3は、小径シリンダケース3a内における一端側に設けられ且つフィンガーFを把持方向に作動させる先発ピストン3bと、小径シリンダケース3a内の他端側に設けられる後発ピストン7aと、小径シリンダケース3aの他端側に設けられ且つ後発ピストン7aのストロークに伴って開閉する導入口7cとを備え、駆動機構7は後発ピストン7aと導入口7cとから構成されている。このように、駆動機構7を小径シリンダ3と一体に設けているので、構造を簡単にできる。また、小径シリンダと別個に駆動機構7を設ける場合に比べて装置全体を小さくすることができる。
【0041】
(2-4)このような第2の特徴を有する開閉チャック装置において、付与機構6は、小径シリンダ3よりも受圧面積の大きな大径シリンダ6を備えている。これにより、導入される流体をそのまま大径シリンダ6で利用して、大きな力を得ることができる。例えば、流体にさらなる圧力を加えずに、その流体をそのまま大径シリンダ6に導入することで、大きな把持力を得ることができる。
【0042】
(2-5)このような第2の特徴を有する開閉チャック装置において、付与機構6が、ピニオン5のピニオン軸5aに通されるコイルバネ9を備え、コイルバネ9は、その一端がベース部材2に固定され、他端が大径シリンダ6の大径ピストン6b側の部材に固定されている。これにより、大径ピストン6bの駆動により、コイルバネ9が縮径し、ピニオン軸5aを狭持して回転させる。このように、フィンガーFがワークWに接触した後に、大径ピストン6bによりピニオン5をさらに回転させ、ラック4側に大きな把持力を与えることができる。また、狭持が進むとピニオン軸5aが反対向きに回転できなくなるので、ラック4が解除方向に移動するのをロックすることができる。つまり、ワークWの把持力を大きい状態で維持できる。
【0043】
(3)第3の特徴
ラック4に噛合するピニオン軸5aに、第2シリンダ側の駆動は伝達させず、第1シリンダ側の駆動のみを伝達する駆動伝達機構に着目した第3の特徴について説明する。この第3の特徴を有する機構では、装置の大型化を避け、簡単な構造で、駆動を選択してフィンガーを作動できる駆動伝達装置を提供するという課題を解決できる。なお、本駆動伝達機構は、第2シリンダ側を基準にすると、第1シリンダ側の駆動に加えて、第2シリンダ側の駆動を伝達するともいえる。
【0044】
(3-1)第3の特徴を有する駆動伝達装置は、第1シリンダ3の駆動及び第2シリンダ6の駆動を選択して、ワークWを把持/解除方向にフィンガーFを作動させるための駆動伝達装置において、第1シリンダ3の第1ピストン3bに連結され且つフィンガーFを支持するラック4と、ラック4に噛合し且つ回転自在に支持されるピニオン5と、ピニオン5のピニオン軸5aの周りを旋回するコイルバネ9とを備え、コイルバネ9は、一端が固定され、他端が第2シリンダ6の第2ピストン側の部材に固定され、第2ピストン6bの移動により縮径してピニオン軸5aを狭持する。
この構成により、第1シリンダ3の駆動によりラック4が作動する際には、コイルバネ9はピニオン軸5aを挟持しておらず、第2シリンダ6がラック4の作動を妨げることがない。一方、コイルバネ9により挟持されたピニオン軸5aが第2ピストン6bにより回転してラック4が把持方向に作動する際には、回転によるラック4の作動方向と第1ピストン3bにより駆動されている方向とが一致するため、ラック4を支持する第1ピストン3bがピニオン軸5aの把持方向への回転を妨げることがない。
なお、第3の特徴を有する駆動伝達装置の第1シリンダは、後発ピストン7aが設けられている第1シリンダと同じ構造であってもよいし、後発ピストン7aが設けられていない第1シリンダと同じ構造であってもよいし、これらと異なる構造であってもよい。
【0045】
(3-2)このような第3の特徴を有する駆動伝達装置は、第1及び第2シリンダは流体により駆動し、第2シリンダ6の受圧面積は第1シリンダの受圧面積よりも大きい。これにより、第1シリンダ3でのフィンガーFの作動はフィンガーFがワークWに接触するまでと、第2シリンダ6でのフィンガーFの作動はワークWに接触してからワークWを把持するまでとの2段式とすることができる。
【0046】
(4)第4の特徴
流体により駆動する複数のシリンダの動作のタイミングを調整する調整機構に着した第4の特徴について説明する。この第4の特徴を有する装置では、簡単な構造で、シリンダの駆動のタイミングを調整できる駆動タイミング調整装置を提供するという課題を解決できる。
第4の特徴を有する駆動タイミング装置は、流体により駆動する第1シリンダ3と、流体により駆動する第2シリンダ6と、第2シリンダ6を第1シリンダ3に対して遅れて駆動させる駆動機構7とを備える駆動タイミング調整装置において、第1シリンダ3は、先に移動する先発ピストン3bと、先発ピストン3bの移動後に移動する後発ピストン7aと、先発ピストン3bと後発ピストン7aとを収容すると共に後発ピストン7aの移動により開かれる導入口7cを有する第1シリンダケース3aとを備え、第2シリンダ6の第2ピストン6bは、導入口7cから導入される流体により駆動する。
この構成により、第1シリンダ3内の圧力が一定になると後発ピストン7aが移動するため、駆動のタイミングを一定にできる。
【0047】
<第1実施形態2>
第1実施形態2に係る開閉チャック装置11は、第1実施形態1に係る開閉チャック装置1と付与機構6が異なり、特に、大径ピストン6bの移動によりピニオン軸を回転させる機構が異なる。
以下、第1実施形態2の特徴部分である付与機構16について説明する。第1実施形態1と同じ構成の部材等については、第1実施形態1と同じ名称、符号を用いてその説明を省略する。なお、第1実施形態2では、付与機構16の符号「16」のように、第1実施形態1の構成に対応する部材(例えば「付与機構6」である)の符号(例えば、「6」である)に対して「10」を加算した符号を用いている。
【0048】
1.付与機構16
図11の(a)に主に示すように、付与機構16の構成として、第1実施形態1と同様に、例えば、圧縮空気で駆動するシリンダ機構(第2シリンダ6)と第2付勢部材(図示省略)6cを用いている。第2シリンダ(以後、大径シリンダともいう。)6は、第2シリンダケース(以後、大径シリンダケースともいい、図示を省略する。)6aと、第2ピストン(以後、大径ピストンともいう。)6bとを備えている。
なお、
図11の(a)に示している状態は、大径ピストン6bのストローク量がゼロの状態ある。
【0049】
第1実施形態2において、
図11の(b)及び
図12に示すように、ピニオン15の下部の外周には凹凸部15bが周方向に設けられ、付与機構16は、大径ピストン6bの移動に連動して、ピニオン軸(ピニオン15の中心軸でもある)と平行な支持ピン17aの回動軸(支持ピン17aの中心軸でもある)周りに回動するレバー18を備える。レバー18には、ピニオン15の凹凸部15bと嵌合する凸凹部18aが設けられている。なお、ピニオン15の凹凸部15bとレバー18の凸凹部18aとでラチェットが構成される。
これにより、大径ピストン6bの移動によりレバー18が回動し、レバー18の凸凹部18aがピニオン15の凹凸部15bに嵌合し、大径ピストン6bのさらなる移動によるレバー18の回動により、ピニオン15を回動させようとする負荷が作用する。
なお、大径ピストン6bの移動によりピニオン15を回動させる負荷が作用する際には、フィンガーFはワークWにすでに当接又は近接しており、ワークWを把持する把持力が一層高まる。
以下、
図12を主に利用して詳細に説明する。
【0050】
付与機構16は、上記のシリンダ機構、第2付勢部材6c、レバー18のほかに、レバー18の嵌合状態をスムーズに解除するための第3付勢部材21と、第3付勢部材21を支持するボディ(支持部材)22と、ボディ22を位置規制するためのストッパー23とを備える。なお、第3付勢部材21に圧縮ばねが利用されている。
【0051】
(1)レバー18
レバー18は、支持ピン17a用の貫通孔18iを有する本体部18bと、本体部18bから大径ピストン6bの切欠部6e側に延伸する第1延伸部18cと、本体部18bから第1延伸部18cと異なる方向に延伸する第2延伸部18dとを有している。
支持ピン17aはベース部材2の底部2fから立設する。レバー18は、支持ピン17aの立設方向から見ると、「L」字状、「へ」字状等の屈曲形状をし、さらには、屈曲部分に本体部18bが位置するような形状をしている。
支持ピン17aの立設方向から付与機構16を見ると、支持ピン17aがピニオン15の凹凸部15bに隣接し、屈曲形状のレバー18がピニオン15の下部側(凹凸部15b)に沿うように配される。
【0052】
本体部18bは、ピニオン15の下部と対向する対向部位に凸凹部18aを有している。
第1延伸部18cは、大径ピストン6bの切欠部6eに左右方向に移動可能に配された可動片17c(
図11の(b)参照)を収容するための収容部分18jと、可動片17cを挿通する連結ピン17b用の貫通孔18kとを有する。なお、凸凹部18aが第1延伸部18cに設けられるとしてもよい。連結ピン17bは支持ピン17aと平行に設けられている。
ここでは、連結ピン17b用の貫通孔18kは、支持ピン17aの両側から大径ピストン6bの切欠部6e側に延伸する一対の延伸片部分18eに設けられ、一対の延伸片部分18e間の溝状の空間が収容部分18jとなる。
第2延伸部18dは、その延伸先端側に第3付勢部材21を支持する凹入部分18fを有している。
【0053】
(2)ボディ22
ボディ22は、立方体状に近い形状の本体部22aを有し、ピニオン15の下部側が挿入される貫通孔22bを有している。なお、ピニオン15は、下部の軸部15cがベース部材2の底部2fの下固定部2gにより回動可能に固定(支持)される。
ボディ22は、レバー18を回動可能に支持する支持ピン17a用の貫通孔22cと、回動可能に支持されるレバー18の本体部18bと第2延伸部18dとを収容するレバー収容部22dとを有する。ここでのボディ22は、レバー収容部22dに隣接して第3付勢部材21を収容する付勢部材収容部22eを有している。
【0054】
貫通孔22cは、支持ピン17aの立設方向からボディ22を見た際に、方形状に近い形状の1つの角部分に設けられている。レバー収容部22dは、貫通孔22cに挿入された支持ピン17aの中間部に対応する部分に設けられ、貫通孔22cがある角に隣接する2辺から内側に凹入するように形成されている。なお、レバー収容部22dとピニオン15用の貫通孔22bとは連通している。
付勢部材収容部22eは、レバー収容部22dに対して支持ピン17aと反対側に形成されている。
【0055】
(3)支持関係
まず、ピニオン15は、ベース部材2の底部2fの下固定部2gを利用して回動可能に支持される。ボディ22は、その貫通孔22bにピニオン15の下部側が挿入されるため、ボディ22の下面が底部2fに支持されながら、ピニオン軸周りに回動可能となる。レバー18は、本体部18bの凸凹部18aがピニオン15の凹凸部15bと対向する状態でボディ22のレバー収容部22dに収容されると共に、ボディ22の貫通孔22cを挿通する支持ピン17aにより回動可能に支持される。
【0056】
(4)凹凸関係
図13に示すように、ピニオン15の凹凸部15bは、円形状の周面に円弧状に凹入する凹領域15dと、周方向に隣接する凹領域15d間に形成された凸領域15eとを有している。なお、後述の凸領域18g及び凹領域18hと区別するために、ピニオン凸領域15e及びピニオン凹領域15dとする。
レバー18の凸凹部18aは、ピニオン凹領域15dの円弧状の半径と略一致する半径で円弧状に突出(膨出)する凸領域18gと、凸領域18gに形成された凹領域18hとを有している。ピニオン凸領域15e及びピニオン凹領域15dと区別するために、レバー凸領域18g及びレバー凹領域18hとする。
レバー凹領域18hは、レバー凸領域18gの周方向の略中央に設けられている。これにより、レバー18の凸凹部18aは、ピニオン15の凹凸部15bに対してピニオン凹領域15dの周方向の1/2のピッチで、ピニオン15の凹凸部15bと嵌合し、大径ピストン6bの少量の移動に対してもレバー18とピニオン15とが嵌合できる。
レバー凹領域18hは、その凹入底に対してピニオン15の把持方向への回転(図中の矢印である)する側と反対の面(回転力を伝える側の面)が、
図13の(a)に示すように、ピニオン凸領域15eに対して把持方向側の凹入面と一致するように構成されている。これにより、レバー凹領域18hとピニオン凸領域15eとが当接する状態で嵌合する。
【0057】
2.付与機構16が作動する様子
付与機構16が作動する様子を説明する。なお、大径ピストン6bが後方へストロークするまでの様子は、第1実施形態1の「(6-3)付与機構6が作動する様子」の(工程R1)と同じであるため、ここでは、大径ピストンがストロークを開始した時点から説明する。
(工程1R2):大径ピストン6bのストロークは、可動片17cを介して、支持ピン17aの周りにレバー18を回転させる。また、レバー18は、第3付勢部材21から同じ回転の向きに付勢される。これにより、レバー18の凸凹部18aがピニオン15の凹凸部15bに嵌合する。
(工程1R3):さらに、大径ピストン6bが移動することで、大径ピストン6bの推力がピニオン15の把持する向きへの回転へと変換される。レバー18の凸凹部18aがピニオン15の凹凸部15bに嵌合した状態で、大径ピストン6bが移動する又は移動する方向に駆動力が作用しているため、ピニオン15の回転がロックされ、ラック4は解除する方向に移動できない。
この際、大径シリンダ6の受圧面積が、小径シリンダ3よりも大きいため、ワークWを把持する把持力が、小径シリンダ3での把持力よりも大きくなる。
(工程1R4):大径シリンダケース6aから圧縮空気が抜けると、第2付勢部材6cの付勢力によって、大径ピストン6bは、元の位置に移動する。これにより、レバー18が解除方向に回転すると、第3付勢部材21によりボディ22が解除方向に回転し、やがてストッパー23に当接してボディ22の回転が停止する。さらに、大径ピストン6bが元の位置に戻ろうとすることで、第3付勢部材21が縮み、レバー18がピニオン15から離れる。なお、この際、第3付勢部材21の圧縮力は、大径ピストン6bが把持方向に移動した際のレバー18を把持方向に回転させる付勢力となる。
【0058】
3.第1実施形態2の特徴
第1実施形態2に関連する開閉チャック装置は、選択された特定の構成に基づいて発明となり得る、以下に示す特徴を有する。
第3の特徴では、ピニオン軸5aに駆動を伝達するために、ピニオン軸5aをコイルバネ9で狭持して固定しているが、第1実施形態2で説明したように、ラチェット機構によりピニオン15を固定するようにしてもよい。
(1)第5の特徴
つまり、ラック4に噛合するピニオン15に、第2シリンダ側の駆動は伝達させず、第1シリンダ側の駆動のみを伝達する駆動伝達機構に着目した第5の特徴について説明する。この第5の特徴を有する機構では、装置の大型化を避け、簡単な構造で、駆動を選択してフィンガーFを作動できる駆動伝達装置を提供するという課題を解決できる。なお、本駆動伝達機構は、第2シリンダ側を基準にすると、第1シリンダ側の駆動に加えて、第2シリンダ側の駆動を伝達するともいえる。
【0059】
第5の特徴を有する駆動伝達装置は、第1シリンダ3の駆動及び第2シリンダ6の駆動を選択して、ワークWを把持/解除方向にフィンガーFを作動させるための駆動伝達装置において、第1シリンダ3の第1ピストン3bに連結され且つフィンガーFを支持するラック4と、ラック4に噛合し且つ回転自在に支持されるピニオン15と、ピニオン15の凹凸部15bに嵌合する凸凹部18aを有するレバー18(ラチェットレバー)とを備え、レバー18は、一端が第2シリンダ6の第2ピストン側の可動片17cに固定され、第2ピストン6bの移動によりレバー18の凸凹部18aがピニオン15の凹凸部15bに嵌合(係合)することでピニオン15を固定する。
この構成により、第1シリンダ3の駆動によりラック4が作動する際には、レバー18はピニオン15に係合しておらず、第2シリンダ6がラック4の作動を妨げることがない。一方、レバー18により係合されたピニオン15が第2ピストン6bの移動により回転してラック4が把持方向に作動する際には、回転によってレバー18がピニオン15を把持方向(押圧する方向)と第1ピストン3bにより駆動されている方向とが一致するため、ラック4を支持する第1ピストン3bがピニオン15の把持方向への回転を妨げることがない。
なお、第5の特徴を有する駆動伝達装置の第1シリンダは、後発ピストン7aが設けられている第1シリンダと同じ構造であってもよいし、後発ピストン7aが設けられていない第1シリンダと同じ構造であってもよいし、これらと異なる構造であってもよい。
【0060】
(2)第3の特徴と第5の特徴
第3の特徴及び第5の特徴の駆動伝達装置は、第1シリンダ3の駆動及び第2シリンダ6の駆動を選択して、ワークWを把持/解除方向にフィンガーFを作動させるための駆動伝達装置において、ワークWを把持する方向に第2ピストン6bが移動した際に、前記ピニオンを拘束して、前記第2ピストンの駆動を前記ピニオンの回転駆動に変換する。
【0061】
<第2実施形態>
1.概略
第2実施形態では、第1シリンダ3のストローク方向と、第2シリンダ6のストローク方向とが交差する(直交する)開閉チャック装置201について説明する。
第2実施形態においても、前後・左右・上下の方向は、第1実施形態と同様とし、第1実施形態と同じ機能を有する部材(構成)の符号も第1実施形態と同様とし、これらの構成の説明や図示がない場合も、第1実形態と同様の機能を有するものとする。
図14に示すように、開閉チャック装置201は、フィンガーF、Fが取り付けられるスライド部材8をスライド可能に支持し且つ第1(小径)シリンダケース3aや第2(大径)シリンダケース216aを構成するベース部材202と、ベース部材202内に配され且つスライド部材8に連結された一対の第1シリンダ(以後、小径シリンダという。)3、3と、各スライド部材8に取り付けられた一対のラック4、4と、ラック4、4と噛み合うピニオン部205aを有するピニオン205とを備える他、ピニオン205に対してフィンガーFの把持方向に回転させる力を付与する付与機構206と、フィンガーFがワークW(
図2の(a)参照)にほぼ接触した後に付与機構206を駆動させる駆動機構7と、フィンガーFの移動をスムーズに行ための給排気機構208を備えている。
【0062】
2.各構成の説明
(1)ベース部材202
図14に戻って、ベース部材202は、例えば、本体部202a、前部202b、後部202c、下部202dからなり、これらは、ねじなどの締結具で一体に連結される。ベース部材202は、本体部202aに形成された前後方向に延伸する貫通孔や下部202dに形成された上下方向に延伸する凹み202e等を利用して、小径シリンダ3,3用の小径シリンダケース3aや大径シリンダ216用の大径シリンダケース216aを構成する。
【0063】
(2)小径シリンダ3
小径シリンダ3,3は、第1シリンダケース(以後、小径シリンダケースともいう。)3aと、小径シリンダケース3a内に摺動自在に収納される第1ピストン(以後、単に、小径ピストンという。)3bとを備え、小径シリンダケース3a内に導入される圧縮空気により前後方向にストロークする。なお、一対の小径シリンダ3の内、一方の小径シリンダ3は駆動機構7を兼ねている。
【0064】
(3)ラック4、ピニオン205
ラック4は、スライド部材8に連結され、
図15に示すように、ピニオン205のピニオン部205aに噛合する。このため、第1ピストン3bの移動によりラック4が前後方向に移動し、上下方向を回動軸(ピニオン軸である)としてピニオン205が回動する。
ピニオン205は、ピニオン軸を軸心に有し、ピニオン軸周りに回動可能な状態で、軸受部材215を介してベース部材202に支持されている。
ピニオン205は、
図16の(a)に示すように、上部がピニオン部(歯車)205a、中部が軸部205b、下部がスクリュー部205cとなっている。スクリュー部205cは、他のスクリュー部と区別するために、ピニオン軸スクリュー部205cと便宜上する。
軸受部材215は、
図14及び
図15に示すように、下方が開放し且つ大ピストンが上下に挿抜可能に挿入する有蓋筒状部215aと、有蓋筒状部215aの下端から径方向の外方へ張り出す張出板部215bと、張出板部215bの下側に設けられたパッキン用の溝部215cとを有する。軸受部材215は、張出板部215bがベース部材202の本体部202aの凹入部分202f(
図14参照)に圧入されることで、ベース部材202に固定される。なお、ピニオン205の中間の軸部205bとピニオン軸スクリュー部205cとが、
図15の(b)に示すように、軸受部材215の有蓋筒状部215aの貫通孔215dから内部に挿入し、ピニオン部205aの下面が有蓋筒状部215aの蓋部分で支持される。また、軸受部材215の固定はねじ等を利用してもよい。
【0065】
(4)駆動機構7
駆動機構7は、第1実施形態と同様に、一方の小径シリンダ3の小径ピストン3bを先発ピストンとして利用し、先発ピストン3bに対し前方に設けられる後発ピストン7aと、後発ピストン7aを後方に付勢する付勢部材7bと、付与機構206側に圧縮空気を供給するための導入口207cとを備えている。なお、導入口207cの符号「207c」は図示されていないが、第1実施形態の導入口7cと区別するために、便宜上、「207c」とする。
後発ピストン7aは、前部202bの内部と一方の小径シリンダケース3aにおける前部側に形成されている後発シリンダケース7d内に移動可能に挿入され、後発ピストン7aが先発ピストン3bと反対側に移動することで導入口207cが露出するように構成されている。なお、導入口207cを一端に有する導入路は、後発シリンダケース7dから下方へ延伸して大径シリンダケース216aにつながる。このため、導入路を容易に設けることができる。
付勢部材7bは、例えば、コイルバネが利用され、フィンガーFがワークWに当接する前(先発ピストン3bが停止する前)に、後発ピストン7aが移動し始めるのを規制する。
これにより、後発ピストン7aは、先発ピストン3bが停止して小径シリンダケース3a内の圧力が所定以上になると移動し、当該移動により導入口207cが露出して、付与機構206への圧縮空気の供給が開始される。
【0066】
(5)付与機構206
次いで
図15及び
図16を用いて、付与機構206を説明する。
付与機構206の構成として、例えば、圧縮空気で駆動するシリンダ機構(第2シリンダ)を用いている。第2シリンダ(以後、大径シリンダという。)216は、小径シリンダ3よりもピストンをストロークさせる受圧面積が大きく、第2シリンダケース(以後、大径シリンダケースという。)216aと、その大径シリンダケース216a内に摺動自在に収納される第2ピストン(以後、大径ピストンという。)216bとを備えている。
大径ピストン216bは、大径シリンダケース216a内に駆動機構7の導入口207cから圧縮空気が供給されると上方に向かって動き出す。
【0067】
第2実施形態では、付与機構206の構成として、大径ピストン216bの上下運動をピニオン軸の回転運動に変換するスクリュー変換機構を有する。
スクリュー変換機構は、ピニオン205の外周に形成されたピニオン軸スクリュー部205cと、内周面に形成されスクリュー部217aと外周面に形成されたスクリュー部217bとを有するピストンスクリュー217と、内周面に形成されたスクリュー部218aを有するカラー218とを有する。
ここで、スクリュー部の区別を容易とするために、ピストンスクリュー217の内周面のスクリュー部をピストン内スクリュー部217aとし、ピストンスクリュー217の外周面のスクリュー部をピストン外スクリュー部217bとし、カラー218のスクリュー部218aをカラースクリュー部218aとする。
ピニオン軸スクリュー部205cはピストン内スクリュー部217aと噛み合い、ピストン外スクリュー部217bはカラースクリュー部218aと噛み合う。
なお、各スクリュー部205c,217a,217bのスクリューの向きは、把持する際に大径ピストン216bの移動に伴ってピニオン205が把持方向に回転するように構成されている。
【0068】
ピニオン軸スクリュー部205cとピストン内スクリュー部217aとは、互いに噛み合えばよく、スクリュー状に形成された凸条部と溝条部とのいずれかを有している。ここでは、ピニオン軸スクリュー部205cは複数本(例えば、6本)の溝条部により構成され、ピストン内スクリュー部217aは、溝条部と同じ本数(例えば、6本である)の凸条部により構成されている。
同様に、ピストン外スクリュー部217bとカラースクリュー部218aとは、互いに噛み合えばよく、スクリュー状に形成された凸条部と溝条部とのいずれかを有している。ここでは、ピストン外スクリュー部217bは複数本(例えば、3本)の溝条部により構成され、カラースクリュー部218aは、溝条部と同じ本数(例えば、3本である)の凸条部により構成されている。
ここでの付与機構206の構成として、付勢部材214を有し、大径ピストン216bが下方に移動した際に、ピニオン軸スクリュー部205cとピストン内スクリュー部217aとの噛み合わせをスムーズに解除できるように構成されている。なお、付勢部材214を他の付勢部材と区別するために、便宜上「第4付勢部材」とする。
【0069】
(5-1)大径ピストン
大径ピストン216bは、
図16に示すように、大径シリンダケース216a内で摺動する摺動部216cと、摺動部216cから上方に突出する筒状部216dとを有する。大径ピストン216bは、筒状部216dに少なくとも、ピストンスクリュー217を収容する。ここでの筒状部216dは、カラー218、第4付勢部材214、ピストンスクリュー217を収容し、上方からピニオン205(ピニオン軸スクリュー部205c)が進退可能に挿入する。
摺動部216cは、例えば長円状をし、外周面の溝216eにパッキンが嵌合する。
筒状部216dは、少なくとも、横断面において内周縁が円形状をしている。筒状部216dは、
図16の(b)に示すように、下部側に形成された張出部分216fと、筒軸方向の中間に形成された段差部分216gと、上部側に形成された溝部分216hとを有する。
張出部分216fは筒軸に向かって張り出す。張出部分216fは、カラー218の周方向に間隔をおいて設けられた突出部218c間に嵌合する。これにより、カラー218の大径ピストン216bに対する回動が規制される。
段差部分216gは、段差の上側部分が径方向の外方に位置するように(上広がり状態で)形成されている。段差部分216gは第4付勢部材214を下側から支持する。
溝部分216hは例えばスナップリング213用である。スナップリング213が溝部分216hに嵌ることで、ピストンスクリュー217等が筒状部216dから抜けるのを防止できる。なお、筒状部216dには、下側から、カラー218、第4付勢部材214、ピストンスクリュー217の順で収容される。
【0070】
(5-2)ピストンスクリュー
ピストンスクリュー217は、円筒部217cと、円筒部217cの上端から径方向に張り出す外鍔部217dとを有する。
円筒部217cは筒軸の中央部分に段差部分217eを有している。段差部分217eは、段差の上側部分が径方向の外方に位置するように(上広がり状態で)形成されている。円筒部217cの内周面であって上部側にはピストン内スクリュー部217aである複数本の溝条部が形成され、円筒部217cの外周面にはピストン外スクリュー部217bである複数本の溝条部が下端から形成されている。
【0071】
円筒部217cにおいて、段差部分217eの下側部分にはカラー218が挿入され、段差部分217eの上側部分には第4付勢部材214が嵌る。なお、段差部分217eの下側部分は、ピストン外スクリュー部217bとカラースクリュー部218aとが噛み合った状態で挿入される。これにより、カラー218(大径ピストン216b)が上下動すると、ピストンスクリュー217がピニオン軸周りに回動する。
外鍔部217dは、
図15の(b)に示すように、その外周縁が大径ピストン216bの筒状部216dの内周面に当接又は近接するように構成されている。外鍔部217dは、円筒部217cの外周側に配される第4付勢部材214が上方に抜けるのを防止する。
【0072】
(5-3)カラー
カラー218は円筒状をしている。カラー218は、円筒部218bと、円筒部218bから下方に突出する突出部218cとを有している。カラー218は大径ピストン216bの筒状部216d内に挿入(嵌合)され、内周側にピストンスクリュー217が挿入される。
円筒部218bの内周面に形成されたカラースクリュー部218aは、カラー218に挿入されるピストンスクリュー217のピストン外スクリュー部217bと噛み合う。
突出部218cは、周方向に間隔を置いて複数個(例えば4個)設けられ、大径ピストン216bの筒状部216d内で周方向に隣接する張出部分216f間に嵌る。なお、カラー218は、大径ピストン216bと一体で上下動する。このため、カラー218と大径ピストン216bとを一体品とすることも可能であるが、加工の観点からは別体とした方がよい。
【0073】
(5-4)付与機構206が作動する様子
ここから付与機構206が作動する様子を
図17~
図20を用いて説明する。
(工程2R1):
図17に示す状態は、大径ピストン216bのストローク量がゼロの状態である。この状態では、ピニオン205のピニオン軸スクリュー部205cの下端部205eは、ピストンスクリュー217のピストン内スクリュー部217aの上方に離間している。つまり、ピニオン軸スクリュー部205cはピストン内スクリュー部217aと噛み合っていない。このため、ピニオン205は、そのピニオン軸周りに回動可能である。
なお、
図17は、ピニオン205のピニオン軸スクリュー部205cとピストンスクリュー217のピストン内スクリュー部217aとが離間している状態が分かるように示したものであり、フィンガーFはワークWに当接していない。
この状態から、やがて、駆動機構7の導入口207cが開き、圧縮空気が大径シリンダケース216a内に注入され、大径ピストン216bが上方へと移動し始める。
【0074】
(工程2R2):
図18に示す状態は、大径ピストン216bが上方に移動し、ピストンスクリュー217のピストン内スクリュー部217aの上端が、ピニオン205の下端に当接した状態である。
この状態では、ピストンスクリュー217のピストン内スクリュー部217aとピニオン205のピニオン軸スクリュー部205cとが噛み合わず、大径ピストン216bの上方への運動はピニオン205の回転運動に変換されない。
この状態においても、大径ピストン216bは上方へと移動する。
なお、
図18は、大径ピストン216bは上方へ移動し、ピストン内スクリュー部217aとピニオン軸スクリュー部205cとが当接しているが、ワークWのサイズ等によって、ピストン内スクリュー部217aとピニオン軸スクリュー部205cとが当接せずに、すんなりと噛み合う場合もある。この場合、工程2R2はなく、次の工程2R3となる。
【0075】
(工程2R3):
図19に示す状態は、ピストンスクリュー217のピストン内スクリュー部217aの上端がピニオン205の下端に当接した(
図19である)まま、大径ピストン216b(カラー218)が上昇し、カラースクリュー部218aとピストン外スクリュー部217bとが噛み合う。これによって、ピストンスクリュー217が回転し、ピストンスクリュー217のピストン内スクリュー部217a(凸条部)がピニオン205のピニオン軸スクリュー部205c(溝条部)内に位置した状態である。このとき、ピストンスクリュー217は、カラー218に近づき、第4付勢部材214から上方への付勢力を受けている。
この状態においても、大径ピストン216bは上方へ移動する。
なお、
図19は、
図18に対して、ピニオン205に対する大径ピストン216bの上下方向の位置、ピニオン205に対するピストンスクリュー217の回転方向の位置、大径ピストン216bに対するピストンスクリュー217の上下方向の位置が異なる。
【0076】
(工程2R4):
図20に示す状態は、大径ピストン216b(カラー218)が上昇し、ピストンスクリュー217がカラー218に当接すると共に、大径ピストン216bと一体で移動するピストンスクリュー217の上昇により、ピニオン205が回転している状態である。
これにより、ワークW(
図2の(a)参照)に把持力を付与することができる。また、大径ピストン216bは上方へと移動するため、ピニオン205の逆方向の回転がロックされる。このためラック4は解除する方向に移動できない。
この際、大径シリンダ216の受圧面積が、小径シリンダ3よりも大きいため、ワークWを把持する把持力が、小径シリンダ3での把持力よりも大きくなる。
【0077】
(工程2R5):把持状態のフィンガーFを解除する際には、大径シリンダケース216a内であって大径ピストン216bの下側の圧縮空気が開放されると共に大径シリンダケース216aにおける大径ピストン216bの上側に導入口216j(
図22の(a)参照)から圧縮空気が供給される。これにより、大径ピストン216bが下がり、ピニオン205のピニオン軸スクリュー部205cが、ピストンスクリュー217から離間し、ピニオン205が回動可能となる。この際、ピストンスクリュー217は第4付勢部材214により上方へと付勢され、大径ピストン216bに対する初期位置に戻る。
【0078】
(6)給排気機構
図21及び
図22を用いて説明する。
(6-1)空気の流れ
小径ピストン3bを把持方向に駆動させる場合は、第1口211cから流路211aを利用して給気され(
図21の(a)中の矢印「G1」である)、第2口211dから流路211bを利用して排気される(
図21の(a)及び
図22の(a)中の矢印「H1」である)。
小径ピストン3bを解除方向に駆動させる場合は、第2口211dから流路211bを利用して吸気され(
図21の(a)及び
図22の(a)中の矢印「G2」である)、第1口211cから流路211aを利用して排気される(
図21の(a)中の矢印「H2」である)。
図21の(a)における流路211aは、スライド部材8B(
図22参照)側の小径シリンダ3側と後発ピストン7a用であり、スライド部材8A(
図22参照)側の小径ピストン3bには、
図21及び
図22では表れていない別の流路が利用される。
図21の(a)及び
図22の(a)における流路211bは、スライド部材8A側の小径ピストン3bと後発ピストン7a用であり、スライド部材8B側の小径ピストン3bには、
図21及び
図22では表れていない別の流路が利用される。
【0079】
(6-2)流路211b
流路211bは、少なくとも、第1流路部211e、第2流路部211f、第3流路部211gを有し、第1流路部211eから、第2流路部211fと第3流路部211gとの分岐部位に給排気機構208が設けられている。
第1流路部211eは第2口211dと給排気機構208とを接続する流路である。第2流路部211fは、給排気機構208と小径シリンダ3とを接続する流路である。第3流路部211gは、給排気機構208と後発シリンダケース7dとを接続する流路である。
給排気機構208は、小径シリンダ3の給気を後発シリンダケース7dの給気よりも優先させて行う。これにより、フィンガーFの移動に際して抵抗が増加しても、フィンガーFの移動が停止するまで後発ピストン7aを停止させることができる。
給排気機構208は、小径シリンダ3の排気を後発シリンダケース7dの排気よりも優先させて行う。これにより、フィンガーFの解除方向への移動をスムーズに行うことができる。
【0080】
給排気機構208は、第1流路部211eと連通する第1連通部208aと、第2流路部211fと第1連通部208aとに連通する第2連通部208bと、第1連通部208a及び第2連通部208bの少なくとも一方と第3流路部211gとに連通し且つ連通口が小さな第3連通部208cと、第1連通部208a及び第2連通部208bの少なくとも一方と第3流路部211gとに連通し且つ横断面が第2連通部208b及び第3連通部208cよりも小さい第4連通部208dと、第3連通部208c内を移動可能であって第3連通部208cへの空気の流入方向と反対方向から第3連通部208cの連通口を閉塞する閉塞体220と、第3連通部208cへの空気の流入方向と反対方向に閉塞体220を連通口側に付勢する付勢部材221とを備える。なお、付勢部材221は、他の付勢部材と区別するために、便宜上、第5付勢部材221とする。
【0081】
上記構成により、給気に際し、第1流路部211eから圧縮空気が第1連通部208a及び第2連通部208bを経由して第2流路部211fへ流れる(
図21の(b)における太い矢印である)。一方、第3連通部208cに連通口を介して流入する圧縮空気は閉塞体220を第5付勢部材221側へと押圧して第3連通部208cと閉塞体220との間の隙間を通って第3流路部211gへ流れ(
図21の(b)における細い矢印である)、横断面積の小さな第4連通部208dにも圧縮空気が流れる(
図21の(b)の細い矢印である)。
このように、給気に際して、第1流路部211eを流れる圧縮空気は、断面積の大きな第2流路部211fと、連通口の小さな第3連通部208cと断面積の小さな第4連通部208dを通って第3流路部211gへと流れる。したがって、第2流路部211fへの給気が第3流路部211gへの給気よりも流量において優先される。
この際、第3連通部208cの連通口(貫通孔208g)の大きさや第4連通部208dの大きさを調整することで、第2流路部211f及び第3流路部211gへ流れる圧縮空気の流量(流量比)を所望の流量にできる。
【0082】
一方、排気に際し、第2流路部211fからの圧縮空気が第2連通部208b及び第1連通部208aを経由して第1流路部211eへ流れる(
図21の(c)における太い矢印である)。一方、第3連通部208c内では、閉塞体220が第5付勢部材221により付勢される方向と閉塞体220に作用する圧縮空気の流れる方向とが一致し、閉塞体220により連通口が閉塞されてほとんど圧縮空気が流れず、第4連通部208dを経由して第1流路部211eへ圧縮空気が流れる(
図21の(c)における細い矢印である)。
このように、排気の際には、第2流路部211fから第1流路部211eに空気が流れ、第3流路部211gから第4連通部208dを経由して第1流路部211eに空気が流れる。この際、第4連通部208dの横断面積が第2連通部208bの横断面積よりも小さく、小径シリンダ3の排気が後発シリンダケース7dの排気よりも優先される。
【0083】
給排気機構208の具体的な構成ついて説明する。
第1連通部208a、第2連通部208b及び第3連通部208cは、ノズル体222に設けられ、当該ノズル体222がベース部材202の収容部202gに配される。第4連通部208dは、収容部202gとノズル体222との間の隙間により構成される。閉塞体220は球体により、第5付勢部材221はコイルバネによりそれぞれ構成される。第3連通部208cにおける第2連通部208b及び第1連通部208aの一方との連通口は、小径の貫通孔208gにより構成され、この貫通孔208gが閉塞体220により開閉可能となる。
【0084】
3.第2実施形態の特徴
第2実施形態に関連する開閉チャック装置は、選択された特定の構成に基づいて発明となり得る、以下に示す特徴を有する。
(1)第6の特徴
大径(第2)ピストン216bの直線運動において、大径ピストン216bが第1方向に移動した際に、大径ピストン216b側のピストンスクリュー217とピニオン205とが干渉した場合に、大径ピストン216b側のピストンスクリュー217の位置を補正する位置補正機構に着目した第6の特徴について説明する。この第6の特徴を有する機構では、大径(第2)ピストン216bの上方向の移動がピニオン205と干渉しても停止することなく、スムーズにピニオン205を回転可能とする課題を解決できる。
なお、この課題は、直線移動体(ピストン)が所定位置まで移動した際に、回転移動体(ピニオン)のスクリュー部と嵌合して、回転移動体を回転させる機構を有する装置においても生じる。
【0085】
(1-1)第6の特徴を有する位置補正機構は、スクリュー部(カラースクリュー部218a)を有する直線移動体(カラー218を含めた大径ピストン216b)と、スクリュー部(ピニオン軸スクリュー部205c)を有する回転移動体(ピニオン205)と、直線移動体(カラー218を含めた大径ピストン216b)に連動して移動する連動部材(ピストンスクリュー217)とを備え、連動部材(ピストンスクリュー217)は、所定位置まで移動した際に回転移動体(ピニオン205)のスクリュー部(ピニオン軸スクリュー部205c)と嵌合する第1スクリュー部(ピストン内スクリュー部217a)を内周面及び外周面の一方(内周面)に有すると共に、直線移動体(カラー218を含めた大径ピストン216b)のスクリュー部(カラースクリュー部218a)と嵌合する第2スクリュー部(ピストン外スクリュー部217b)を内周面及び外周面の他方(外周面)に有する。なお、()内は、第2実施形態で説明した構成である。
(1-2)このような構成を有する位置補正機構は、連動部材と回転移動体とが干渉しても、連動部材は、直線移動体のさらなる移動により回転するため、連動部材の位置を補正できる。
【0086】
(2)第7の特徴
第1流路部211eと、第1流路部211eに連通する第2流路部211fと、第1流路部211e又は第2流路部211fに連通する第3流路部211gとを有し、第1流路部211eからの給気に際して、第2流路部211fへの給気を第3流路部211gへの給気よりも優先し、第1流路部211eからの排気に際して、第2流路部211fの排気を第3流路部211gの排気よりも優先させる給排気機構208に着目した第7の特徴について説明する。
この第7の特徴を有する機構では、例えば、先発ピストンの移動が終了する前に、後発ピストンの移動が開始するような課題を解決できる。なお、この課題は、多くの流路や電磁弁等を利用することで解決できるが、簡単な構成で安価に実施できない。
【0087】
(2-1)第7の特徴を有する給排気機構208は、第1流路部211eに連通する第1連通部208aと、第1連通部208aと第2流路部211fとに連通する第2連通部208bと、第1連通部208aと第3流路部211gとに連通する第3連通部208cとを有し、第3連通部208c内に、第1連通部208aからの流入路(連通口)を閉塞する閉塞体220と、閉塞体220を流入路(連通口)側に付勢する付勢部材221とを備える。
(2-2)このような構成を有する給排気機構208は、給気に際し、第3連通部208c内の閉塞体220により第3流路部211g側への給気量を、第2流路部211fへの給気量よりも少なくできる。排気に際し、第3連通部208c内の閉塞体220により第3流路部211g側からの排気量を、第2流路部211fからの排気量よりも少なくできる。しかも、第2流路部211fへの給気量に対する第3流路部211gの給気量の比率と、第2流路部211fからの排気量に対する第3流路部211gからの排気量の比率を変えることができ、また付勢部材221の付勢力(ばね係数)や連通口(貫通孔)の大きさを調整することで、容易に給排気の流量調整が可能となる。
なお、第2実施形態の給排気機構は、第3流路部側への給気量を第2流路部への給気量よりも少なくして、第3流路部側からの排気量を第2流路部からの排気量よりも少なくしているが、例えば、付勢部材の付勢力(ばね係数)や連通口(貫通孔)の大きさを調整することで、例えば、給気において、第3流路部の給気量を第2流路部の給気量より多く又は同じにし、第3流路部の排気量を第2流路部の排気量よりも少なくすることもできる。
【0088】
<変形例>
以上、第1及び第2実施形態に係る開閉チャック装置について説明したが、これらの実施形態に限られるものではなく、例えば、以下のような変形例であってもよい。また、実施形態と変形例とを組み合わせたものでもよいし、変形例同士を組み合わせたものでもよい。また、第1及び第2実施形態や変形例に記載していない例や要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても上記各発明に含まれる。
【0089】
(1)流体として、空気の他、油などの非圧縮性流体を用いてもよい。なお、第1シリンダを駆動する流体を利用して第2シリンダを駆動する場合を除いて、第2シリンダ6を油圧で駆動するようにしてもよい。
(2)第1シリンダを駆動する流体を利用して第2シリンダを駆動する場合や第3の特徴を有する駆動伝達装置を除いて、駆動機構7として、小径シリンダ3を用いるのではなく、別個のシリンダ機構を用いてもよい。
【0090】
(3)駆動機構7において、ストローク量がゼロのときに、先発ピストン3bの後面に後発ピストン7aの前面が当接していたが、先発ピストン3bや後発ピストン7aをストッパーなど止めることにより、両ピストンが当接しないようにしてもよい。
また駆動機構7において、後発ピストン7aは先発ピストン3bのストローク上に位置している。しかしながら、後発ピストンは、先発ピストン3bを収容する小径シリンダケース3aと連通し且つ先発ピストン3bを駆動させる流体により移動可能であればよく、例えば、後発ピストンのストロークと先発ピストンのストロークとは、交差してもよいし、同一線上にない平行であってもよい。
駆動機構7は、付勢部材7bを用いて、後発ピストン7aの移動のタイミングを調整しているが、他の方法でタイミングを調整してもよい。他の方法としては、後発ピストンの受圧面積を先発シリンダの受圧面積を大きくしたり、後発ピストンの表面と小径シリンダケースの内面との摩擦係数を大きくしたり等で実施できる。
【0091】
(4)後発ピストン7aが前方のストローク端に到達すると、導入口7cの上面が開放されているが、後発ピストン7aがストロークしたらすぐに導入口7cが開放されるようにしてもよい。また、ストロークの移動端までは到達しなくても、いくらか移動した後に導入口7cが解放されるようにしてもよい。
導入口7cは、1個であってもよいし、複数個であってもよい。複数個ある場合、ストローク方向に沿って設けられてもよい(段階的に開放さされる)し、ストロークと直交する方向に設けられてもよい(同時期に開放される)。複数個ある場合、その大きさは同じであってもよいし、異なる大きさであってもよいし、その形状は同じであってもよいし、異なる形状であってもよい。
駆動機構7(後発ピストン7a及び導入口7c)は、一対の第1シリンダ3の一方に設けられていたが、両方の第1シリンダに設けてもよい。
【0092】
(5)先発ピストン3bと後発ピストン7aでストロークの方向が反対向きであったが、それ以外の向きであってもよい。その場合、第1シリンダケース3aの壁の一部を後発ピストン7aとし、その壁を押動して後発ピストン7aのストロークにしてもよい。
(6)駆動機構7が付与機構6を作動させるのは、フィンガーFがワークWに接触した時でもよい。又は接触する直前でもよい。但し、付与機構6の構成を考慮すると、フィンガーFの大移動は不向きであり、ワークWにフィンガーFが接触した後の方が、フィンガーFの移動が少なく、好ましい。
【0093】
(7)第2付勢部材6cを用いる代わりに、大径シリンダ6を復動シリンダとし、流体の力で大径ピストン6bを元の位置へ戻してもよい。
(8)最初から大径シリンダ6に圧縮空気を導入し、且つ、大径ピストン6bをストッパーで止めてストロークさせないようにし、駆動機構7から圧縮空気が導入されると、その圧縮空気によりストッパーが解除されるようにしてもよい。
(9)第2の特徴を有する開閉チャック装置や第3の特徴を有する駆動伝達装置では、大径シリンダ6の代わりに、圧縮空気で駆動するアクチュエータを用い、そのアクチュエータでコイル収容部10を回転させてもよい。
【0094】
(10)実施形態において付与機構6としてシリンダ機構を用いていたが、第2の特徴を有する開閉チャック装置や第3の特徴を有する駆動伝達装置では、電磁式の回動・揺動アクチュエータを用いて、コイル収容部10を回転させてもよい。その際には、駆動機構7として(第1)シリンダケース3aに先発ピストン3bの位置を検出するセンサーを設ける。そのセンサーにより、先発ピストン3bが駆動したことを検出し、回動・揺動アクチュエータを駆動させる。
【0095】
(11)実施形態では、一対のフィンガーFでワークWを把持しているが、例えば、一対のフィンガーFのうち、一方が固定されており、他方が一方のフィンガーFに対して遠近方向に作動するようにしてもよい。
【0096】
(12)フィンガーFは、それを作動させる時又は位置により、必要とされる要件が異なる。例えば、ワークWを把持するためにフィンガーFを移動させるときには、把持力はほぼ不要である。余分な力は、ワークWを動かしてしまったり、フィンガーFのワークWの把持位置が一定しなかったり、ワークWが破損したりするなどの不具合の発生の起因となり得る。反対に、フィンガーFがワークWに触れると、フィンガーFのそれ以上の移動は必要ないから、ワークWを確実に把持する把持力が必要になる。
このため、小径シリンダ3を移動に足りる程度に受圧面積を小さくしてもよい。これにより、装置全体を小さくできる。
【0097】
(13)付与機構6によりピニオン5及びラック4が作動する様子の一例を説明する。通常、ピニオン5とラック4の歯面のうち、接触している歯面以外の部位では、スムーズな噛合のためにいくらか隙間が設けられている。付与機構6によりピニオン5がワークWを把持させる方向に回動されると、ピニオン5は前記隙間を埋めるように移動する。具体的には、ピニオン5の歯山の接触している歯面と反対側の歯面が、対向するラック4の歯面(把持方向の歯山の歯面)に接触し、ラック4を把持方向に押動する。一方で、ラック4は、ピニオン5の前記反対側の歯面がラック4の対向する歯面に接触しているので、ラック4の解除方向の移動がロックされる。
【0098】
(14)付与機構6は、コイルバネ9の他端をピニオン軸5a周りに回転させることで、ピニオン5のピニオン軸5aを覆い且つ前記ピニオン軸5aの周りを旋回するコイルバネ9を縮径させているが、例えば、コイルバネ9の全長が伸びる方向と、回転する方向とに他端を移動させてもよいし、コイルバネ9の両端をピニオン軸5a周りであって逆向きに移動するようにしてもよい。つまり、付与機構6は、コイルバネ9でピニオン軸5aを挟持してコイルバネ9の回転でピニオン軸5aを把持方向に回転させる構成であればよい。
【0099】
(15)スクリュー機構は、大径ピストンの移動に伴ってピニオンが回転できればよく、回転方向(スクリューの向き)は特に限定するものではない。第2実施形態では、ピニオン軸スクリュー部205cがピストンスクリュー217の内側に挿入されているが、ピニオン軸スクリュー部の内部にピストンスクリューが挿入されてもよい。また、ピストンスクリューの内部にカラーや大径ピストンが挿入されてもよい。
【符号の説明】
【0100】
1 開閉チャック装置
3 第1シリンダ(小径シリンダ)
3a 第1シリンダケース(小径シリンダケース)
3b 先発ピストン(第1ピストン、小径ピストン)
4 ラック
5 ピニオン
5a ピニオン軸
6 第2シリンダ(付与機構、大径シリンダ)
6b 第2ピストン(大径ピストン)
7a 後発ピストン
7c 導入孔
9 コイルバネ
F フィンガー
W ワーク