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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】ドローン用位置合わせ装置
(51)【国際特許分類】
   B64F 3/00 20060101AFI20240610BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20240610BHJP
   B64U 10/14 20230101ALI20240610BHJP
   B64U 60/50 20230101ALI20240610BHJP
   B64U 70/97 20230101ALI20240610BHJP
【FI】
B64F3/00
B64C27/08
B64U10/14
B64U60/50
B64U70/97
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021026895
(22)【出願日】2021-02-23
(65)【公開番号】P2022128559
(43)【公開日】2022-09-02
【審査請求日】2024-01-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306048797
【氏名又は名称】有限会社福島熔材工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100146732
【弁理士】
【氏名又は名称】横島 重信
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 修一
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特許第6763588(JP,B1)
【文献】国際公開第2016/143806(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0207484(US,A1)
【文献】特開2022-98949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64F 3/00
B64C 27/08
B64C 39/02
B64F 1/12
B64U 70/97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドローンが面内で移動自在に設置されるドローン着陸面と、
当該ドローン着陸面に設置されたドローンの脚部に接して移動を生じさせる第一のガイド部と、ドローンの脚部に接して移動を生じさせる第二のガイド部とが、当該ドローン着陸面と平行な第一の平面内において所定の角度を成すように含む第一の治具と、
当該ドローン着陸面に設置されたドローンの脚部に接して移動を生じさせる第三のガイド部と、ドローンの脚部に接して移動を生じさせる第四のガイド部とが、上記ドローン着陸面と平行な第二の平面内において所定の角度を成すように含む第二の治具と、
上記第二のガイド部と第四のガイド部が相対し、且つ上記第一のガイド部と第三のガイド部が相互に略平行である状態を維持しながら、当該上記第一のガイド部と第三のガイド部の距離を変化させるように第一の治具及び/又は第二の治具を直線的に移動させる駆動手段を有し、
上記駆動手段が上記第一の治具及び/又は第二の治具を移動させる移動方向を基準として、上記第一のガイド部が当該移動方向と成す角度が45度未満であり、上記第二のガイド部の接線が当該移動方向と成す角度が、当該第一のガイド部が当該移動方向と成す角度よりも大きく、
上記第三のガイド部が当該移動方向と成す角度が45度未満であり、上記第四のガイド部の接線が当該移動方向と成す角度が、当該第三のガイド部が当該移動方向と成す角度よりも大きいことを特徴とするドローン用位置合わせ装置。
【請求項2】
上記第一の平面と上記ドローン着陸面の距離と、上記第二の平面と当該ドローン着陸面の距離が異なることによって、
上記第一のガイド部と第四のガイド部が交錯した状態で上記第一の治具及び/又は第二の治具が移動可能であることを特徴とする請求項1に記載のドローン用位置合わせ装置。
【請求項3】
上記第一のガイド部と上記第二のガイド部の接線が上記第一の平面内において成す角度、及び上記第三のガイド部と上記第四のガイド部の接線が上記第二の平面内において成す角度の少なくとも一方が略直角であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のドローン用位置合わせ装置。
【請求項4】
上記第一のガイド部と上記第二のガイド部の接線が上記第一の平面内において成す角度、及び上記第三のガイド部と上記第四のガイド部の接線が上記第二の平面内において成す角度の少なくとも一方が90度未満であることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のドローン用位置合わせ装置。
【請求項5】
上記第二のガイド部と上記第四のガイド部の少なくとも一方が曲線であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のドローン用位置合わせ装置。
【請求項6】
上記第二のガイド部と上記第四のガイド部は直線であり、当該第二のガイド部が上記移動方向と成す角度が、上記第一のガイド部が当該移動方向と成す角度よりも大きく、
当該第四のガイド部が当該移動方向と成す角度が、上記第三のガイド部が当該移動方向と成す角度よりも大きいことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のドローン用位置合わせ装置。
【請求項7】
上記請求項1~6のいずれかに記載のドローン用位置合わせ装置を有することを特徴とするドローン用補給施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる「ドローン」等と称される自律型の無人航空機に対応する補給施設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モーター等を駆動源として無人飛行する飛行体は、従来「ラジコン飛行機」等と称され、主に遊具として使用されてきた。一方、近年、当該無人飛行を行う飛行体の姿勢制御や飛行経路等を予めプログラムすることにより、所定の飛行を行う際に人による制御を介在させず、飛行体が自ら自己の姿勢や位置、周囲の風の状況等を収集して、自律的に離着陸や飛行(移動)等をさせることが可能にされており、特に無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)等とも称されている。そして、当該無人航空機の自律性を活かして、単に飛行させることを楽しむ遊具として使用するだけでなく、空中からの撮影、荷物の運搬、空中からの薬剤の散布等の産業的な手段として使用されるようになってきている。
【0003】
上記自律型の無人航空機(以下、「ドローン」と称する場合がある。)の形態には各種のタイプがあり、いわゆる「飛行機」に分類されるような翼によって揚力を発生し、その推進力をプロペラ等で発生させるタイプや、「ヘリコプター」に分類されるような、揚力と推進力の両方を複数のプロペラで発生させるマルチコプター等と呼ばれるタイプ、その中間的なタイプ等が存在する。一方、産業的な手段として使用されるドローンでは、主に離着陸の際に広いスペースを必要としないとの理由により、垂直の離着陸が可能な形態のドローンが一般的に使用される。
【0004】
ドローンを産業的な手段として使用する際には、その使用者が予め飛行に必要となるバッテリーの準備や搭載物の搭載等の飛行準備を行い、その後に自律的な飛行を開始させることが一般的である。
一方、特に垂直離着陸型のドローンにおいては、その駆動源であるモーターに給電するバッテリーの給電持続時間が最長でも数10分程度であり、例えば、遠距離の荷物の運搬を行う場合や、長時間の飛行が必要となる薬剤の散布の場合には、その途中で着陸してバッテリーの充電等を行う必要を生じる。その際に、地上の作業者が、その着陸の都度、バッテリーの充電等の飛行準備を行った場合には、その飛行中を通じて所定の作業者が実質的に拘束されることになり、コスト等の面で好ましくない。また、山間部等を挟んだ長距離の飛行の場合には、ドローンの飛行に先立って作業者がドローンの補給地に駐在する必要を生じ、ドローンを使用して無人で荷物の搬送をする意義が失われる結果となる。
【0005】
上記の問題点を解決するために、例えば、特許文献1~3に記載されるようにドローンが離発着するための補給施設を予め設け、当該基地に対してドローンが着陸することでバッテリーへの充電等を含めて無人で行うことを可能とすることで、作業者が介在せずに飛行の全行程を完了する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-97271号公報
【文献】WO2016/143806号パンフレット
【文献】特開2017-124758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようなドローンの充電等を行う地上施設にドローンを着陸させる際には、予め当該施設の位置情報をドローンに保持させることでドローンを当該施設付近に誘導すると共に、当該施設の表面に所定のマークを設けることでドローンが保持する撮像装置等を用いた制御等により着陸位置を精密に把握させて着陸させる等が行われている。
【0008】
一方、特にドローンが着陸する直前の風向きの変化等に起因してドローンの着陸位置には最大で数10cm程度の誤差を生じることが避けられない。このため、上記特許文献1~3等には、目的に応じた精度でドローンの位置合わせを行うための設備を着陸位置の周囲に設け、ドローンが着陸した後にドローンを移動させて最終の打ち合わせを行うための位置合わせ装置に係る技術が提案されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1~3等に記載の位置合わせ装置によれば、装置が複雑となって高価になったり、充電等のための接点を確保するには十分な位置合わせ精度が確保できない等の課題が存在し、必ずしも現実の使用に適したものではないという問題が存在する。
【0010】
本発明は、上記課題を解決しようとするものであり、新規な構成によって着陸した後のドローンの位置合わせを行うための位置合わせ装置、及び、当該位置合わせ装置を有するドローン用補給施設等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は以下の発明を提供する。
(1)ドローンが面内で移動自在に設置されるドローン着陸面と、当該ドローン着陸面に設置されたドローンの脚部に接して移動を生じさせる第一のガイド部と、ドローンの脚部に接して移動を生じさせる第二のガイド部とが、当該ドローン着陸面と平行な第一の平面内において所定の角度を成すように含む第一の治具と、当該ドローン着陸面に設置されたドローンの脚部に接して移動を生じさせる第三のガイド部と、ドローンの脚部に接して移動を生じさせる第四のガイド部とが、上記ドローン着陸面と平行な第二の平面内において所定の角度を成すように含む第二の治具と、上記第二のガイド部と第四のガイド部が相対し、且つ上記第一のガイド部と第三のガイド部が相互に略平行である状態を維持しながら、当該上記第一のガイド部と第三のガイド部の距離を変化させるように第一の治具及び/又は第二の治具を直線的に移動させる駆動手段を有し、上記駆動手段が上記第一の治具及び/又は第二の治具を移動させる移動方向を基準として、上記第一のガイド部が当該移動方向と成す角度が45度未満であり、上記第二のガイド部の接線が当該移動方向と成す角度が、当該第一のガイド部が当該移動方向と成す角度よりも大きく、上記第三のガイド部が当該移動方向と成す角度が45度未満であり、上記第四のガイド部の接線が当該移動方向と成す角度が、当該第三のガイド部が当該移動方向と成す角度よりも大きいドローン用位置合わせ装置。
【0012】
(2)上記第一の平面と上記ドローン着陸面の距離と、上記第二の平面と当該ドローン着陸面の距離が異なることによって、上記第一のガイド部と第四のガイド部が交錯した状態で上記第一の治具及び/又は第二の治具が移動可能であるドローン用位置合わせ装置。
【0013】
(3)上記第一のガイド部と上記第二のガイド部の接線が上記第一の平面内において成す角度、及び上記第三のガイド部と上記第四のガイド部の接線が上記第二の平面内において成す角度の少なくとも一方が略直角であるドローン用位置合わせ装置。
【0014】
(4)上記第一のガイド部と上記第二のガイド部の接線が上記第一の平面内において成す角度、及び上記第三のガイド部と上記第四のガイド部の接線が上記第二の平面内において成す角度の少なくとも一方が90度未満であるドローン用位置合わせ装置。
【0015】
(5)上記第二のガイド部と第四のガイド部の少なくとも一方が曲線であるドローン用位置合わせ装置。
(6) 上記第二のガイド部と上記第四のガイド部は直線であり、当該第二のガイド部が上記移動方向と成す角度が、上記第一のガイド部が当該移動方向と成す角度よりも大きく、当該第四のガイド部が当該移動方向と成す角度が、上記第三のガイド部が当該移動方向と成す角度よりも大きいドローン用位置合わせ装置。
【0016】
(7)上記のドローン用位置合わせ装置を有するドローン用補給施設。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、単純な機構により、平面内の回転方向も含めた多脚型のドローンの位置合わせが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ドローンの概略を示す模式図である。
図2】本発明に係る位置合わせ装置の動作を示す模式図である。
図3】本発明に係る位置合わせ装置の一例を示す模式図である。
図4】本発明に係る位置合わせ装置の一例を示す模式図である。
図5】本発明に係る位置合わせ装置の動作機構を示す模式図である。
図6】本発明に係る位置合わせ装置における動作角度と動作の関係を示す図である。
図7】本発明に係る位置合わせ装置の他の例を示す模式図である。
図8】本発明に係る位置合わせ装置の他の例を示す模式図である。
図9】本発明に係る位置合わせ装置の他の例を示す模式図である。
図10】本発明に係る位置合わせ装置の使用例を示す模式図である。
図11】従来の位置合わせ装置を示す模式図である。
図12】従来の位置合わせ装置を示す模式図である。
図13】従来の位置合わせ装置の動作機構を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1には、垂直離着陸型ドローンの一般的な形態を示す。垂直離着陸型ドローンでは、一般に4個~10個程度のプロペラ23を付けた駆動手段(モーター)22が直接的/間接的に所定のフレーム材21に取り付けられると共に、バッテリー、制御手段等の飛行を可能とするための機構部材26がフレーム材に取り付けられることで飛行体が構成される。また、特に荷物の運搬や、空中からの撮影や測定、測量等の各種の目的のために使用される産業用のドローンにおいては、上記フレーム材21の下部に各種の形態の搭載部25が設けられており、その使用目的に応じた荷物や各種機材等の搭載物を吊り下げて搭載されることが一般的である。
【0020】
そして、ドローンが着陸する際には、当該搭載物が接地しないように、所定の長さを有する脚部24が当該フレーム材に対して直接又は間接的に取り付けられており、この脚部が接地することにより、安定して起立した状態を保持できるようにされることが一般的である。
飛行体としてのドローンにおいては、その可搬重量を大きくし、また飛行の際の消費電力を抑制するために、ドローン自体を軽量にすることが望まれる。このため、特に上記ドローンの脚部24は、搭載物を搭載した状態で安定して起立状態を維持できる範囲で、極力軽量になるように構成されることが一般的である。一方、搭載物の形状等の自由度を確保するため、各脚部24の間に形成される空間をなるべく広く確保したいという要請が存在する。
【0021】
上記産業用のドローンの脚部に関して存在する要請に対応するために、当該脚部は軽量な炭素複合材や樹脂材料、アルミ合金等で構成される薄肉のパイプ材(管状材)等を4本又は6本使用して、例えば、重量物である駆動手段(モーター)22の下部付近に、相互の間隔をなるべく広くして、接地面と垂直、或いは垂直に近い角度になるように設けた構造とされることが一般的である。その結果、ドローンが着陸した際に、その脚部が地面と接触する点の配置が正方形や長方形等の四角形、或いは、2回対称、3回対称、6回対称(正六角形)等の対称性を有する六角形の接地形状をなす多脚型のドローンが多く用いられる。
【0022】
ドローンの姿勢制御や飛行経路等を予めプログラムすることにより、自律的に離着陸や飛行を行うドローンについては、予め着陸地点の位置情報をドローンに保持させることで着陸地点付近に誘導すると共に、当該着陸地点に所定のマークを設ける等により、比較的高い精度で、所定の地点に所定の向きで着陸させることが可能である。一方、特に着陸の直前の風向きの変化等のドローンが有する着陸位置の制御が追従できない要因によって、実際の着陸位置等に、例えば数cm程度の誤差を生じることが避けられない。
【0023】
他方、ドローンが着陸する発着基地において、無人でバッテリーの充電や交換、搭載物の脱着等を行おうとする際には、ドローンの位置を例えば数mm程度の誤差範囲に収める必要があり、そのためには着陸したドローンに外部から機械的な力を加えることで位置合わせを行う必要を生じる。そして、例えば、バッテリーの充電のための接点の確保等、地上施設との間で機械的な整合を確保するためには、当該位置合わせにおいては、着陸面上でのドローンの位置(X-Y成分)の修正と共に、ドローンの向き(R成分)の誤差を所定の範囲に収めることが求められる。
【0024】
上記のように着陸したドローンに外部から機械的な力を加えて位置合わせを行う発着基地を構成する際には、例えば、上記特許文献1,2等にも記載されるように、上記ドローンの脚部24に対して移動を生じるための力を加えることが一般的である。
これは、図1に示すように、一般的なドローンにおいては脚部以外の部分の形態が複雑である一方、脚部は比較的高い対称性を以って配置可能であり、且つ外部から確実に接触可能であるためである。一方、一般にドローンの脚部24は横方向からの力に対して必ずしも十分な強度を有しておらず、横方向から力が加えられた際には所定の範囲で弾性変形が可能であると共に、所定以上の力が加えられることで容易に損傷を生じるという課題が存在する。
【0025】
上記のような着陸等したドローンに対して外部から機械的な力を加えることで位置合わせを行う装置について発明者が種々の検討を行った結果、本発明に至ったものである。
図11には、従来から用いられる物品の位置合わせの装置について示す。図11に示す装置においては、2つのガイド部を所定の角度で組み合わせることで全体としてV字型を有する治具を相互に対向して配置して、当該治具により物品を両側から挟み込むことにより、当該挟み込む過程で当該物品が2つのV字の間の空間に追い込まれることを利用して、当該物品の位置合わせを行うものである。図11においては、特に各治具におけるガイド部の成す角度を90°として、円形断面を有する物品の位置合わせを行う様子を示している。
【0026】
図11に示すとおり、上記の装置によれば、予め対向して配置された治具の間に円形断面を有する物品が存在することで、治具がY方向に移動することに伴って、物品がX方向とY方向に移動して、最終的に所定の位置に移動させることができる。つまり、図11に示す装置によれば、治具を一軸方向に移動するという単純な動作によって、対象とする物品にX方向、Y方向の二成分の移動を生じさせて位置合わせを行うことが可能である。図11に示す装置は、上記のような物品の位置合わせの装置としての他、各種の物品を機械的に把持する装置として広く用いられている。
【0027】
図12には、図11に示す位置合わせ装置を、略正方形の断面形状を有する物品に適用した際について示す。図12(a)に示すように、対向して配置された治具の間に存在する物品が所定の姿勢を有する際には、当該治具間の距離を狭める動作によって当該物品がX-Y方向に移動すると共に、所定の回転運動(R成分の運動)が誘起されて、上記円形断面を有する物品と同様に所定の位置合わせを行うことが可能である。
【0028】
一方、略正方形の断面形状を有する物品の位置合わせを行う過程で、例えば、図12(b)に示すように、当該物品の隣接する角が一方の治具の二つのガイド部に所定の対称性を持ってそれぞれ接する状態になった際には、当該治具のY方向の並進運動によって物品の回転運動を誘起することが困難になり、結果として意図する位置合わせを行うことが困難となる場合がある。
【0029】
図12に示すように、対向するV字型の治具によって略正方形の物品の位置合わせを行う際において、特に治具のガイド部と物品の辺が非平行であり、その後に更に回転運動(R成分の運動)を生じることが必要とされる場合の当該治具と物品間の接触の形態には、以下の3種の形態が存在する。
【0030】
(A1)物品の一つの角が、治具のいずれかのガイド部に接触。
(A2)物品の隣接する二つの角が、治具のいずれか別のガイド部にそれぞれ接触。
(A3)物品の四つの角が、治具の別のガイド部にそれぞれ接触。
そして、対向する治具の間にランダムに置かれた略正方形の物品の位置合わせを行う際には、一般的には上記(A1),(A2)の形態を経由して(A3)の形態に至るものと考えられる。
【0031】
図13には、上記(A3)の接触形態において、当該治具から物品に付加されると考えられる応力の状態を示す。図13に示すように、治具がY方向に移動しようとする際には、当該治具のガイド部と物品の角部の当接点を作用点として、当該ガイド部と垂直な方向に応力(垂直抗力)が物品の各角部(4箇所)に生じると考えられる。そして、図13(a)に示すように、当該応力の作用方向が物品の回転中心30から外れる場合には、当該応力は物品を回転させようとする偶力として作用し、当該偶力が物品の周囲に存在する摩擦力を上回ることで物品の角部とガイド部との間にスリップが生じて、当該物品は当該偶力の方向31に回転運動を生じて治具のガイド部と物品の辺が平行となって位置合わせを完了すると考えられる。
【0032】
一方、図13(b)に示すように、上記ガイド部と物品の角部の当接点に生じる応力の作用方向が物品の回転中心30に近い場合には、当該応力に起因する偶力が物品の周囲に存在する摩擦力よりも小さいことで物品の回転運動を生じることが困難であり、位置合わせが困難になるものと考えられる。
【0033】
つまり、図13に示すようなV字型の治具によって略正方形の物品の位置合わせを行おうとする際には、位置合わせの開始の際の当該物品の状態等に起因して、特に当該物品の回転運動を誘起できず、位置合わせが困難になる場合が存在するものと考えられる。そして、着地面に対して脚部の接地点が略正方形等となるように脚部が構成されたドローンの位置合わせを行おうとする場合にも、同様の理由によって特に回転方向の位置合わせが困難になるものと考えられる。
【0034】
図2には、本発明に係るドローン用の位置合わせ装置の構成の一例を示す。図2は、主に水平に設けられるドローン着陸面12の上において、第一の治具1と第二の治具2が相互に対向して設置され、ドローン20が第一の治具1と第二の治具2間に挟持されて位置合わせが完了した状態(図2(a))、及び、当該位置合わせ前の状態であって、第一と第二の治具の間隔が大きい状態(図2(b))を、それぞれドローン着陸面の垂直上方から観察した際の模式図である。図2(a)においては、当該ドローン20の構成の一例として、4本の脚部A~Dを有し、当該脚部A~Dがドローン着陸面12に接地する点が正方形を成す場合について示している。
【0035】
上記第一の治具1は、ドローンの脚部に接して移動を生じさせるための第一のガイド部3と第二のガイド部4を、ドローン着陸面と平行な面内で所定の角度を成すように保持して構成される。図2においては、特に第一のガイド部3と第二のガイド部4が略直角を成す場合について記載している。また、第一の治具1を用いてドローン用の位置合わせを行う際の治具の移動方向10を基準として、上記第一のガイド部3が当該移動方向と成す角度(φ)7が45度未満になるように配置されている。
【0036】
また、図2において、第二の治具2は上記第一の治具1と同一の形態を有し、特にその第三のガイド部5が、上記第一のガイド部3と略平行になるように、第一の治具1に対向して配置されている。当該状態においては、治具1が有する第二のガイド部4と、治具2が有する第四のガイド部6の間に、第一のガイド部3又は第三のガイド部5が存在しないことによって、当該第二のガイド部4と第四のガイド部6が相対して配置される。
【0037】
なお、図2においては、第一の治具1、第二の治具2は、板状体に各ガイド部を形成するようにV字状の切り欠きを設けた例を示すが、本発明はこれに限定されず、例えば、各ガイド部を構成する二本の棒材を所定の角度で組み合わせることで治具1,2とする等、各ガイド部は適宜の手段によって構成することが可能である。
【0038】
図2に記載する位置合わせ装置は、図2(a)に示すように、位置合わせを行うドローン20を治具1,2の間に形成される空間(図では略正方形)で挟持した状態を基礎として、当該略正方形等の対角線と非平行の方向を移動方向10として、第一及び第二の治具1,2間の間隔が広がる(図2(b))ように動作可能としたものに相当する。
なお、以下では、ドローン20の脚部が略正方形の頂点でドローン着陸面12に接する形態の場合について主に説明するが、ドローン20の脚部が長方形等の頂点でドローン着陸面12に接する形態の場合にも、治具1,2によって当該長方形を挟持した状態を基礎として、第一及び第二の治具1,2間の間隔を広げることにより、同様に位置合わせが可能である。
【0039】
位置合わせの対象であるドローン20を略正方形等の空間で挟持した状態(図2(a))から、当該略正方形の対角線と非平行の方向を移動方向10として上記第一及び第二の治具1,2の間の間隔を広げた際には、当該第一及び第二の治具1,2の間には略長方形の空間17が形成される。つまり、図2中のガイド部の変位量11に示すように、第一及び第二の治具1,2が移動方向10に所定量の移動をする際に、第一のガイド部3(第三のガイド部5)が当該ガイド面と垂直な方向へ移動する移動量と、第二のガイド部4(第四のガイド部6)の移動量とが相違するために、第一及び第二の治具1,2間の間隔を広げた際には、当該相違量に応じた短辺と長辺を有する略長方形の空間17が形成される。
【0040】
つまり、図2に記載する位置合わせ装置においては、第一及び第二の治具1,2間に略長方形の空間17を形成した状態でドローン20を着陸等させて、その後に当該第一及び/又は第二の治具1,2を移動方向10に移動することで、第一及び第二の治具1,2間の間隔を縮小すると共に、第一及び第二の治具間の空間の形状が略正方形等に移行する過程によってドローン20の位置合わせを行うものである。
【0041】
図2に記載する位置合わせ装置においては、ドローン20を略正方形の空間で挟持した状態(図2(a))から、当該略正方形の対角線と非平行の方向を移動方向10として第一及び第二の治具1,2間の間隔を広げた状態(図2(b))を始点として位置合わせの動作が行われる。このために、当該移動方向10に対して第一のガイド部3(第三のガイド部5)が成す角度(φ)7と、第二のガイド部4(第四のガイド部6)が成す角度8が相違することとなる。
【0042】
以下の説明においては、移動方向10と成す角度が小さい第一のガイド部3、第三のガイド部5を「狭辺」と称し、当該角度が大きい第二のガイド部4、第四のガイド部6を「広辺」と称する場合がある。
【0043】
図3,4には、図2に示す位置合わせ装置によって、略正方形の脚部の配置を有するドローン20の位置合わせを行う際の様子を示す。図3(a)は、ドローン20の位置合わせの過程の一例であり、ドローン20の脚部A,Cがそれぞれ対向する第一のガイド部3、第三のガイド部5に接し、またドローン20の隣接する脚部を結ぶ線と第一のガイド部3等が成す角度(θ)9が比較的小さい場合を示す。
【0044】
上記で説明したように、図2に示す位置合わせ装置によって位置合わせを行う過程においては、第一及び第二の治具間1,2に形成される空間が略長方形であるため、略正方形に配置されるドローン20の脚部の全てがガイド部に接することは困難である。そして、当該過程では、上記「狭辺」間の距離が「広辺」間の距離と比べて小さいために、ドローン20の脚部A~Dの内の対角に存在する二本に着目した際に、当該二本に接触して挟むことができるのは「狭辺」の間に限定され、主に当該「狭辺」に接触した二本の脚に治具からの応力が付加されて、位置合わせが行われる。
【0045】
例えば、図12に示すように、治具の移動方向に対して対称にV字を成す2つのガイド部が存在する場合には、位置合わせの過程においてドローン20の全ての脚部(4本)がそれぞれガイド部が接触する。これに対して、本発明に係る位置合わせ装置においては、ドローン20が有する脚部の中で主に特定の二本に対してガイド部が接触して単純な応力状態で位置合わせが行われることで、着陸等したドローン20に対して所定の回転運動(R成分の運動)を誘起するための偶力等を生じ易くすることが可能である。
【0046】
図3(a)に示す状態の後、図示しない駆動装置によって、上記「狭辺」間の間隔を縮小するように第一及び/又は第二の治具1,2を継続して移動させることにより、脚部A,Cに対してそれぞれ「狭辺」と垂直な方向に応力が加えられる。そして、ドローンの隣接する脚部間を結ぶ線と第一のガイド部3が成す角度(θ)9が小さい場合には、当該応力の作用線がドローン20の回転中心から離れているために大きな偶力を生じ、当該偶力が「狭辺」と脚部A,Cとの接触部や、脚部A~Dとドローン着陸面12との接触部に生じる摩擦力を上回ることで、「狭辺」と脚部A,Cとの間でスリップを生じてドローン20が反時計回りの回転を生じ、図3(b)に示す形態に追い込まれることにより位置合わせが終了する。
つまり、当該角度(θ)9が小さい場合には、図13(a)の場合と同様に、各ガイド部とドローン20の脚部の間で生じるスリップによってドローン20に回転を生じることが可能であり、当該角度(θ)9を更に縮小してドローンの隣接する脚部間を結ぶ線と第一のガイド部3が平行になることで回転方向の位置合わせが完了する。
【0047】
図4(a)には、図3(a)と比較してドローン20の隣接する脚部間を結ぶ線と第一のガイド部が成す角度(θ)9が大きい場合であって、特に当該角度が45度に近い場合について示す。図4(a)に示すように、ドローン20の隣接する脚部間を結ぶ線と第一のガイド部が成す上記角度(θ)9が45度付近である場合には、脚部A,Cに加えられる応力の作用線がドローン20の回転中心に近づくために、当該応力は各種の摩擦力を上回ってドローン20を回転させるために十分な大きさの偶力を生じないと考えられる。この結果として、上記図3で説明したような「狭辺」と脚部A,Cとの間のスリップによりドローン20を回転させることが困難となり、脚部A,Cは摩擦力によって各「狭辺」に固着されるものと考えられる。
【0048】
図5には、上記図4(a)の状態において、第一の治具1の移動に伴って脚部A付近に生じる変位について説明する図を示す。図5に示すように、摩擦力によって「狭辺」(第一のガイド部3)に固着された脚部Aに対しては、当該脚部Aに接触する第一の治具(第一のガイド部3)の変位13が加えられる。この際に、脚部A,C間の強度が高いことで脚部Aに当該変位13の変形成分15を生じ得ない場合には変位13は実現されず、この結果、図13(b)に示す場合と同様に第一と第二の治具1,2間の間隔を縮小することができず、位置合わせを完了することが困難となる。
【0049】
一方、一般のドローンでは脚部の横方向の剛性が低いために、上記変形成分15に相当する弾性変形を比較的容易に生じることが可能であり、この結果として、脚部Aには上記の変位13を生じるものと考えられる。また、図5に示す状態においては、ドローン20の脚部B,Dはガイド部に接しておらず、脚部Aと共にガイド部に接する脚部Cには脚部Aとは逆方向の変位13が付加されると考えられる(図4(a))。この結果、上記の変位13の回転成分14は脚部A,Cを介してドローン20を回転させるように作用し、この回転によって上記角度(θ)9が45度の点を越えて拡大するものと考えられる。
【0050】
そして、上記角度(θ)9が45度の点を越えて拡大することで、脚部A,Cに対して「狭辺」と垂直な方向に加えられる応力の作用線がドローン20の回転中心から離れて偶力が拡大し、当該偶力がドローン20の周囲に存在する摩擦力を上回ることで、図3(a)と同様の機構によりガイド部(「狭辺」)と脚部A,Cとの間のスリップを伴う時計回りの回転を生じ、図4(b)に示す形態に追い込まれることにより位置合わせを終了することが可能となる。
【0051】
以上で説明したように、本発明に係る位置合わせ装置においては、ドローン20の位置合わせの過程で、ドローン20の脚部と治具1,2が接触する接触点を減少させ、主に上記「狭辺」によってドローン20の対向する2本の脚部に力を作用させることで、回転方向の位置合わせを円滑に行うものである。
【0052】
本発明に係る位置合わせ装置によれば、特に当該応力に起因する偶力が小さく、当該偶力によって脚部がガイド部とスリップして生じるドローン20の回転を誘起し難い状態に至った際(図5)に、ガイド部に固着した対向する二本の脚部を逆方向に変位させることで、結果としてドローン20に回転を生じさせることが可能となり、当該回転によってガイド部とのスリップによる回転が可能になる姿勢にドローン20が誘導されるために、その円滑な位置合わせが可能となるものである。
【0053】
本発明に係る位置合わせ装置においては、位置合わせの過程において、上記のようにドローン20の脚部と治具1,2間の接触点を減少させるための手段として、対向して配置されることでドローン20の位置合わせを行う第一及び第二の治具1,2の双方において、当該治具1,2に保持されるガイド部の一方と治具の移動方向10がなす角度(φ)7が45度未満の「狭辺」とされ、且つ、他方のガイド部が治具の移動方向10となす角度が当該角度(φ)7よりも大きい「広辺」とされたものである。
【0054】
図6には、当該「狭辺」と治具の移動方向10がなす角度(φ)7を45度から減少させた場合において、治具1,2を単位量だけ移動させた際に「狭辺」と「広辺」に生じる移動量の変化(左縦軸)を示す。また、当該「狭辺」と「広辺」の移動量の比率(右縦軸)を示す。なお、図6では、図2に示すような、「狭辺」と「広辺」が直角である場合について示す。
【0055】
図6に示すように、上記角度(φ)が45度の場合には「狭辺」と「広辺」は移動方向10に対して対称となり、治具1,2を単位量だけ移動させた際のそれぞれの移動量は同一(=1/√2)となる。そして、上記角度(φ)が減少するに従って「狭辺」の移動量は略直線的に減少し、「広辺」の相対移動量は1に漸近するものと考えられる。
【0056】
そして、当該「狭辺」と「広辺」が所定の位置に存在してドローン20の位置合わせが完了した状態(図2(a))から、上記角度(φ)を所定の値に維持しながら治具1,2の間隔を広げることにより、相対移動量の小さい「狭辺」と、相対移動量の大きい「広辺」とにより長方形の空間17等の対称性が低い空間が形成される(図2(b))。
【0057】
本発明に係る位置合わせ装置によってドローン20の位置合わせを行う際には、上記治具1,2間に形成される長方形の空間17等の内側にドローン20を着陸等させた後、治具1,2の間隔を縮小することにより、図3~5に示す過程を経て位置合わせを終了することができる。
【0058】
図6に示すように、「狭辺」と治具の移動方向10がなす角度(φ)7の大きさに応じて、「狭辺」と「広辺」の相対移動量が変化し、位置合わせ装置の過程でドローン20が配置される空間の形状を変化させることができる。例えば、「狭辺」と「広辺」が共に直線であり、相互に直角である場合には、治具1,2間に形成される長方形の空間17の長辺と短辺の比率を変更することができる。
【0059】
本発明に係る位置合わせ装置によって、例えば4本の脚部を、その接地点が正方形になるように有するドローン20の位置合わせを行う際には、図3,4等に示すように、その対角方向に位置する一対の脚部A,Cを「狭辺」に接触させて挟み込むようにし、その際に残りの脚部B,Dの両方がそれぞれ「広辺」に接触することが防止されることが好ましい。当該状況を形成するためには、例えば図5に示す形態で脚部A,Cが「狭辺」に接触した際に、「広辺」間の間隔が「狭辺」間の間隔と比べて、例えば、数cm程度大きいことにより、脚部A,Cが弾性変形した際にも、脚部B,Dの両方がそれぞれ「広辺」に接触することを防止することができる。
【0060】
上記の事項を、例えば、隣接する脚部の間隔が50cm程度の中型ドローンに当て嵌めた際には、「狭辺」に対する「広辺」の移動量の比率が1.2倍程度であれば、図5に示す形態で脚部A,Cが「狭辺」に接触した際に、「広辺」間の間隔が「狭辺」間の間隔よりも5cm程度大きくなるために、ドローン20の回転を妨げないと考えられる。そして、「狭辺」と治具の移動方向10がなす角度(φ)7を40度以下とすることにより、当該「狭辺」と「広辺」の移動量の比率を生じることが図6から読み取れる。
【0061】
上記「広辺」間での脚部の接触を防止するために必要となる上記角度(φ)7の上限について、隣接する脚部の間隔が100cm程度の大型ドローンでは概ね43度以下と見積もられる一方で、当該間隔が30cm程度の小型ドローンでは35度以下と見積もられる等、使用するドローンの大きさや脚部間の剛性等を考慮して、角度(φ)7を44度以下、或いは40度以下等とすることができる。
【0062】
他方、図5に示すように、摩擦力によって「狭辺」に脚部が固着した状態でドローン20を回転させる際には、当該角度(φ)7を小さくすることによって、当該脚部に与える変形量15が小さな範囲でドローン20を回転可能になる点で好ましい。一方、図6に示すように、例えば、当該角度(φ)7が10度以下になると、治具1,2が移動した際に「狭辺」が移動する量が低下するため、ドローンの着陸可能領域を広くする点からは、当該角度(φ)7を10度以上、或いは15度以上とすることが好ましい。
【0063】
上記で説明したように、本発明に係るドローンの位置合わせ装置は、位置合わせのための治具1,2のガイド部3~6からドローンの脚部に付加される応力に起因する偶力が小さく、当該偶力によってドローンの回転を誘起し難い状態においてもドローン20の回転を誘起可能であることを特徴の一つとする。一方、当該偶力によってドローンの回転が誘起され難い範囲を狭くして、円滑な位置合わせを可能とする観点から、ドローンの回転を阻害する各種の摩擦を低減することが好ましい。
【0064】
例えば、ガイド部とドローンの脚部間に生じる摩擦を低減するために、両者を金属製、或いは表面を平滑にした炭素材等からなるパイプ等で構成することによって、ガイド部とドローンの脚部間の接触が点接触となり、摩擦を低下することが可能である。また、ドローンの脚部が接地するドローン着陸面と当該脚部間の摩擦を低減するために、脚部の先端の形状を球状の曲面とする、ドローン着陸面12の変形強度を確保して脚部が接触した際の変形を防止する、相互の材質として低摩擦の材質を使用する等を行うことが望ましい。
【0065】
また、上記図2図4では、位置合わせを行う際に、治具1,2の双方が移動して位置合わせを完了する方法を説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば治具1,2のいずれか一方のみをその移動方向10に移動することによって位置合わせを完了することも可能である。当該方法によれば、最終的な位置合わせ位置から離れた位置を着陸目標としてドローン20が着陸した後、治具1,2のいずれかによってドローン着陸面12上でドローン20を移動させることにより、対向する治具1,2間でドローン20を挟む以前に必要な回転運動を誘起する機会が増えるため、より円滑な位置合わせが可能となる。
【0066】
また、上記図2図4では、位置合わせを行う際に、主にドローン着陸面12と平行な面内で治具1,2を移動させて位置合わせを完了する方法を説明したが、本発明はこれに限定されず、上記「狭辺」間が略平行に保たれる範囲内において、例えば、治具1,2がドローン着陸面12と垂直な方向の成分を有する移動を行う等により、位置合わせの過程で治具1,2のドローン着陸面12からの高さを変化させても良い。
【0067】
本発明に係る位置合わせ装置は、例えば図2(b)に示すように、治具1,2間の間隔を広げた状態で、当該治具1,2の間に形成される空間にドローン20を着陸等させて、当該着陸等を確認した後に適宜の駆動手段によって治具1,2間の間隔を縮小させて図3,4に示すような過程を経ることでドローン20の位置合わせを終了することができる。位置合わせの終了は、上記治具1,2を駆動する駆動手段にリミットセンサーを設ける他、脚部に付加される応力のセンサ、画像処理等の適宜の方法で検出することができる。
【0068】
上記治具1,2の駆動は、例えば、モーター等を駆動源とする直動部品等により行うことができる。また、特に駆動源としてステッピングモーターを使用する等により、治具1,2に不連続な変位動作を与えて、ドローンの脚部に接するガイド部3~6に振動を付与することで、ガイド部と脚部間のスリップを生じやすくすることも可能である。
【0069】
図1に示すように、一般的な産業用のドローンにおいては、その下部に搭載した搭載物が接地することを防止するために、脚部が長尺とされている。本発明に係る位置合わせ装置を用いて治具1,2に設けられた各ガイド部をドローン20の脚部に当接して位置合わせを行う際に、当該ガイド部が脚部に当接する高さ方向の位置は特に限定されず、脚部の強度等に応じて、フレーム材21に近い位置の脚部や、ドローン着陸面12との接地点に近い位置の脚部、脚部の中央付近など、適宜の位置で脚部に当接することができる。
【0070】
本発明に係る位置合わせ装置を使用してドローンの補給施設を構成することによって、例えば、ドローン20に設けられた電気接点を所定の位置に保持することが可能となり、当該接点を介してドローンのバッテリー装置に対して給電して充電するための補給施設とすることができる。その他、本発明に係る位置合わせ装置を使用してドローンの位置合わせが可能な補給施設により、ドローンのバッテリーの交換、ドローンが散布する薬剤の補給、ドローンが運搬する搭載物の搭載や荷下ろし等を人の介在無しに行うことが可能となる。
【0071】
図7には、本発明に係るドローン用の位置合わせ装置の他の一例を示す。図7に示す位置合わせ装置においては、上記第一のガイド部3と第二のガイド部4を含む平面(第一の治具1の面)と、上記第三のガイド部5と第四のガイド部6平面(第二の治具2の面)とが、それぞれドローン着陸面12と略平行であり、且つ当該ドローン着陸面からの距離を異なったものとすることで、上記第一のガイド部3と第四のガイド部6、第二のガイド部4と第三のガイド部5がそれぞれ交錯して移動可能としたものである。
【0072】
図7に示す構造にすることによって、ドローン20の位置合わせを終了した時点(図7(b))において、ドローンの脚部A~Dを各ガイド部が交差する谷間に追い込むことが可能となり、図3,4等の構成と比較して、特に位置合わせの精度を高めることが可能となる。また、対向する治具に保持されるガイド部間の交錯が可能になることで、位置合わせを行うドローン20の大きさに比べて長尺のガイド部3~6を有する治具1,2を使用することが可能となり、ドローン20の着陸位置の偏倚に対してより広い範囲で対応可能となる点で好ましい。
【0073】
上記で説明したとおり、本発明に係るドローン用の位置合わせ装置においては、ドローン20が有する脚部の内で、特に対角方向に位置する2本の脚に対して、治具1,2における「狭辺」を当接させて位置合わせのための応力を加えることで、図13等に記載の方法を用いる場合と比較してドローン20に加える応力の対称性を低下させることにより、必要な回転運動をドローン20に誘起できない事態が生じることを防止することを特徴の一つとする。この結果として、一軸方向の変位を使用して、ドローン20の3軸の位置合わせを可能とするものである。
【0074】
本発明に係る位置合わせ装置を用いたドローンの位置合わせは、以下のように評価することも可能である。つまり、本発明に係る位置合わせ装置を用いた位置合わせでは、典型的に以下のような各工程を経ることで位置合わせが完了すると考えられる。
【0075】
(B1)間隔の小さな「狭辺」間にドローンを挟み込む工程で、ドローン20の中心が当該「狭辺」の中央に一致し、「狭辺」に垂直な方向(以下、「X’軸」と称することがある。)の位置合わせが行われる。
(B2)次に、治具1,2の移動に伴って「狭辺」間の間隔が更に縮小する工程でドローン20に回転を生じて、ドローン20の隣接する脚部を結ぶ線が「狭辺」と平行になることで、回転方向の位置合わせが行われる。
(B3)上記B2工程と同時に、「広辺」がドローン20の両側から接近して「広辺」間にドローンを挟み込む工程を生じ、「広辺」に垂直な方向(以下、「Y’軸」と称することがある。)の位置合わせが行われる。
【0076】
つまり、本発明に係るドローン用の位置合わせ装置において、「狭辺」は、主に上記X’軸方向の位置合わせと同時に、回転方向の位置合わせを担うものである。そして、上記B2工程において、その際のドローンと治具1,2の位置関係に応じて、時計回り、又は反時計回りの回転を生じて回転方向の位置合わせが行われる(図3,4等)。
【0077】
上記「狭辺」間の間隔が更に縮小する工程において、脚部との当接点の位置に依らずドローン20に時計回り及び反時計回りの回転を対称に生じさせる点から、当該「狭辺」である第一のガイド部3と第三のガイド部5においてドローン20の脚部と接する範囲は共に直線であることが好ましい。また、治具1,2の移動の際に、第一のガイド部3と第三のガイド部5が略平行に保たれることが望ましい。
なお、本発明において、第一のガイド部3と第三のガイド部5が略平行と記載する際には、第一のガイド部3及び第三のガイド部5の直線部分が、本発明に係る位置合わせ装置の作用を発揮可能な程度の平行度を有していることを意味するものとする。
【0078】
一方、「広辺」の役割は主に上記Y’軸方向の位置合わせであり、特に回転方向の位置合わせに寄与する必要性を有しないものと考えられる。このため、「広辺」の形態はY’軸方向の位置合わせが可能な範囲内で特に限定されず適宜決定することが可能であり、図2等に示すように狭辺と直角に、直線的な形態とすることも可能である。一方、以下に説明するように、特にドローン20の回転運動を阻害しない形態にすることで、ドローン20の回転方向の位置合わせをより円滑に行うことができる。
【0079】
図8には、本発明に係るドローン用の位置合わせ装置の他の一例を示す。図8に記載の位置合わせ装置においては、図2等と比較した際に、特に「狭辺」が移動方向と成す角度7と、「広辺」が移動方向と成す角度8の合計が90度未満の角度(鋭角)となるように形成されている点で相違する。つまり、治具1,2において、それぞれ「狭辺」と「広辺」がなす角度が鋭角とされている。
【0080】
図8(a)は、ドローン20の脚部A,Bを結ぶ線と「狭辺」がなす角度(θ)9が45度に近い状態であり、その後に図5で説明した機構によってドローン20が時計方向に回転した後に、「狭辺」から脚部A,Cに付加される応力に起因する偶力によって回転して図8(b)に至る途中過程を示す図であって、特に脚部Bが「広辺」(第四のガイド部6)に接している状態を示す図である。
【0081】
図8(a)に示すように、「狭辺」に摩擦力で固着された脚部A,Cを弾性変形させることでドローン20を回転させる際に、治具1,2において「狭辺」と「広辺」がなす角度が鋭角とされることによって、脚部Bがドローン20の回転によって略左方向に移動する際に、「広辺」が脚部Bの移動を妨げることがなくなり、ドローン20の回転運動を円滑に行うことが可能となる。
【0082】
つまり、本発明に係る位置合わせ装置においては、ドローン20の脚部A,Bを結ぶ線と「狭辺」がなす角度(θ)9が45度に近く、図5で説明した機構によってドローン20が回転運動をする際に、その回転方向が予め定まっている。このため、「広辺」を当該回転運動の妨げにならない形態にすることによって、「狭辺」間にドローン20の対向する脚部A,Cを挟み込む過程で、他の脚部が「広辺」に接した場合でも、円滑に回転方向の位置合わせを行うことが可能である。
【0083】
治具1,2において「狭辺」と「広辺」がなす角度(角度7と角度8の合計)は、90度未満とすることで、上記のようにドローン20の回転運動の阻害を抑制することが可能である。また、位置合わせの過程の所定の時期に「広辺」に接する脚部が存在して、ドローン20と治具1,2が3点で接触した状態になった場合にも、上記角度を85度以下、又は80度以下にすることで、ドローン20の回転運動に伴って当該「広辺」に接していた脚部が「広辺」から離脱して2点接触の状態に戻すことが可能になる。
【0084】
一方、当該角度が60度以下になることで、結果として「広辺」が移動方向と成す角度8が減少することで、治具の移動の際の「狭辺」と「広辺」の移動量の比率が縮小し、「狭辺」を設ける意義が低下することになる。また、当該角度が60度以下になることで、治具1,2が有するV字形状の開き角が減少し、治具1,2間に形成される空間が縮小する結果、同程度のドローン着陸面12の面積を確保しようとする際に、位置合わせ装置の全体の大きさが拡大することとなる。このため、治具1,2において「狭辺」と「広辺」がなす角度は、90~60度とすることが好ましく、特に90度未満であって、80度以上、又は75度以上とすることが好ましい。
【0085】
図9には、本発明に係るドローン用の位置合わせ装置の他の一例を示す。図9に記載の位置合わせ装置においては、上記「広辺」(第四のガイド部6)が曲線的に設けられている。図8,9に示す位置合わせ装置においては、治具1,2間に形成されるガイド部の谷間にドローン20の対角方向の脚部(図8では、脚部A,C)を追い込むことで位置合わせが完了する。このため、当該「広辺」(第四のガイド部6)の形態を、例えば図9に示すような曲線形状にして、位置合わせの過程でドローン20の脚部と接する範囲内で、その接線と対向する「狭辺」とがなす角度が90度未満となり、また当該「広辺」(第四のガイド部6)接線が治具1,2の移動方向と成す角度が「狭辺」(第三のガイド部5)が当該移動方向と成す角度よりも大きくなるような適宜の曲線形状とし、同時に対向する治具に含まれる「狭辺」と略90度の角度で交錯することで位置合わせの精度を高めることも可能である。
【0086】
なお、本発明において、上記第四のガイド部6の「接線」が治具1,2の移動方向と成す角度等と記載する場合において、第四のガイド部6等が「直線」である際には、当該「接線」の方向は当該「直線」の方向を意味するものとする。
また、図9に示すように、対向する「広辺」の形状は非対称とされてもよく、例えば、治具1,2から非対称となる位置をドローン20の着陸予定位置とする等との組合せによって、位置合わせの際の経路の非対称性を増加することで、円滑な位置合わせを行うことができる。
【0087】
図10には、脚部がドローン着陸面12に接地する接地点のなす形状が略正方形以外のドローンについて、本発明に係る位置合わせ装置で位置合わせを行った際の概略図を示す。図10(a)に示すように、治具1,2において「狭辺」と「広辺」がなす角度が鋭角である場合にも、4本の脚部の接地点が長方形を成すドローンの位置合わせを行うことができる。また、特に「狭辺」と「広辺」がなす角度を鋭角にすることで、図10(b)に示すように6本の脚部を有し、当該6本の脚部の接地点が略正六角形を成すドローンについても、所定の位置に一義的に誘導する位置合わせが可能となる。
その他、例えば、8本以上の脚部を所定の対称性で有するドローン等に対しても、本発明に係る位置合わせ装置によって位置合わせが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明に係るドローン用の位置合わせ装置等によれば、予め設定されたプログラムに従って、人が介在すること無しにドローンの位置合わせが可能であり、所定の補給等を繰り返しながら飛行を継続することが可能となる。
【符号の説明】
【0089】
1 第一の治具
2 第二の治具
3 第一のガイド部
4 第二のガイド部
5 第三のガイド部
6 第四のガイド部
7 狭辺(第一のガイド部)が移動方向と成す角度
8 広辺(第二のガイド部)が移動方向と成す角度
9 ドローンの隣接する脚部間を結ぶ線と第一のガイド部が成す角度
10 治具の移動方向
11 ガイド部の変位量
12 ドローン着陸面
13 接触点の変位量(総量)
14 接触点の変位量(回転成分)
15 接触点の変位量(変形成分)
16 治具のオフセット量
20 ドローン
21 フレーム材
22 駆動手段
23 プロペラ
24 脚部
A ドローンの脚部A
B ドローンの脚部B
C ドローンの脚部C
D ドローンの脚部D
25 搭載部
26 機構部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13