(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】プリンティングおよび他の用途のために感光性材料を光硬化させる方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20240610BHJP
B29C 35/16 20060101ALI20240610BHJP
B29C 64/129 20170101ALI20240610BHJP
B29C 64/25 20170101ALI20240610BHJP
B29C 64/286 20170101ALI20240610BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20240610BHJP
B29C 64/321 20170101ALI20240610BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240610BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240610BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240610BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C35/16
B29C64/129
B29C64/25
B29C64/286
B29C64/295
B29C64/321
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2021510027
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(86)【国際出願番号】 US2019045214
(87)【国際公開番号】W WO2020040976
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-05-19
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518113546
【氏名又は名称】ネクサ3ディー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】メダルジー イズハル
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/006018(WO,A1)
【文献】特表2018-515379(JP,A)
【文献】特開平04-135827(JP,A)
【文献】特表2018-503545(JP,A)
【文献】特開2017-047603(JP,A)
【文献】特開2018-051951(JP,A)
【文献】特表2018-521888(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0050389(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0022379(US,A1)
【文献】特表2020-506082(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105014974(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
B29C 35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
光硬化液体樹脂(18)を収容するよう構成されたタンク(10)を有し、前記タンク(10)は、側壁、および、底部開口部(11)を備えた底部を含み、前記側壁のうちの少なくとも2つは、側壁開口部(38、42)を含み、
前記タンクの前記底部上に配置され、前記底部開口部(11)を覆う柔軟性メンブレン(14)と、
平行化された紫外線を前記タンク(10)の底部開口部(11)に向かって放出するように構成された光源(26)と、
前記柔軟性メンブレン(14)と前記光源(26)との間に設けられたマスク(25)と、を有し、前記光源(26)によって放出された前記
平行化された紫外線は、前記柔軟性メンブレン(14)を通って前記タンク(10)中に入る前に、
マスクのどの領域が光を通すかおよびどの領域が光を遮断するかを制御する前記マスク(25)によって濾波され、
前記タンク(10)内に設けられていて、前記光硬化液体樹脂(18)の硬化部分(24)から形成された物体(22)が取り付けられる取り出しプレート(20)と、
前記タンク(10)の前記底部の上方における前記取り出しプレート(20)の垂直位置を制御するよう構成された高さアジャスタ(41)と、
前記タンク(10)の内側に配置され、前記光硬化液体樹脂(18)の第1の温度を検出するように構成された温度センサ(76)と、
前記タンク(10)の内側に配置され、前記タンク(10)の前記底部開口部(11)における前記マスク(25)を通してビルトエリア(31)における前記光硬化液体樹脂(18)の第2の温度を検出するように構成された少なくとも1つの熱的イメージング装置(28)と、
前記高さアジャスタ(41)を作動させて前記物体のプリンティング中、前記柔軟性メンブレン(14)の第1の表面からの前記取り出しプレート(20)の変位量を調整し、かつ、前記タンク(10)の少なくとも1つの熱的イメージング装置(28)に配置された前記温度センサ(76)、および、前記タンク(10)の外側に配置された前記少なくとも1つの熱的イメージング装置(28)の両方からの樹脂温度読みをサンプリングするように構成されたコントローラ(50)と、
樹脂循環システム(30)と、を有し、前記樹脂循環システム(30)は、
配管の第1のセグメント(36)を介して前記側壁開口部の第1の側壁開口部(38)に流体的に結合され、および、配管の第2のセグメント(39)を介してリザーバ(32)の第1の開口部に流体的に結合された第1のポンプ(34a)と、
前記リザーバ(32)と、
配管の第3のセグメント(40)を介して前記側壁開口部の第2の側壁開口部(42)に流体的に結合され、および、配管の第4のセグメント(44)を介して前記リザーバ(32)の第2の開口部に流体的に結合された第2のポンプ(34b)と、を含み、
前記第1の側壁開口部(38)および前記第2の側壁開口部(42)は、前記タンク(10)の最も短い横方向寸法を定める前記タンク(10)の互いに反対側の横方向側部に位置しており、
前記第1および第2のポンプ(34a、34b)は、物体(22)のプリンティング中、前記光硬化液体樹脂(18)を、前記タンク(10)の前記最も短い横方向寸法を横切って、かつ、前記高さアジャスタ(41)が前記取り出しプレート(20)を沿って変位させる方向と直交した方向に変位させるように構成されており、
前記リザーバ(32)の前記第1の開口部は、前記リザーバ(32)の前記第2の開口部と別個であり、
前記樹脂循環システム(30)は、前記タンク(10)の少なくとも1つの熱的イメージング装置(28)に配置された前記温度センサ(76)、および、前記タンク(10)の外側に配置された前記少なくとも1つの熱的イメージング装置(28)の両方からの樹脂温度読みによる前記コントローラ(50)の制御下において、第1の体積の前記光硬化液体樹脂を前記タンク(10)から前記第1の側壁開口部(38)経由で前記リザーバ(32)中にポンプ送りするように前記第1のポンプ(34a)を制御し、第2の体積の前記光硬化液体樹脂を前記リザーバ(32)から前記第2の側壁開口部(42)経由で前記タンク(10)中にポンプ送りするように前記第2のポンプ(34b)を制御するように構成されている、装置。
【請求項2】
前記樹脂循環システム(30)は、熱交換器(46a,46b,46c)を含む、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記第1および第2のポンプ(34a、34b)は、前記コントローラの制御下において作動可能な蠕動ポンプを含む、請求項1記載の装置。
【請求項4】
方法であって、
光源(26)およびマスク(25)を制御して物体(22)の光硬化済み液体樹脂の第1の層を形成するステップを含み、前記物体(22)は、光硬化液体樹脂(18)を収容したタンク(10)内に配置され、前記タンク(10)は、タンク開口部(11)を有し、前記タンク開口部(11)は、放射線透過柔軟性メンブレン(14)によって封止され、
高さアジャスタ(41)を制御して前記物体(22)を前記タンク(10)中に向いた前記放射線透過柔軟性メンブレン(14)の第1の表面に対して第1の軸線に沿って変位させるステップと、
前記光源(26)および前記マスク(25)を制御して前記物体(22)の光硬化済み液体樹脂の第2の層を形成するステップと、
ポンプ送り装置(30)を制御して前記物体(22)の光硬化済み液体樹脂の前記第1の層および前記第2の層を形成しながら、前記タンク(10)を通ってある量の前記光硬化液体樹脂を循環させるステップと、
前記光硬化液体樹脂を前記第1の軸線と直交する軸線に沿って前記タンク中に導入したり前記タンクから取り出したりするステップと、を含み、
前記光硬化液体樹脂(18)は、前記タンク(10)の第1の側壁開口部(42)中に導入され、および、前記タンク(10)の第2の側壁開口部(38)から取り出され、
前記第1の側壁開口部(38)および前記第2の側壁開口部(42)は、前記タンク(10)の最も短い横方向寸法を定める前記タンク(10)の互いに反対側の横方向側部に位置しており、
前記第1および第2の層を形成しながら、前記ある量の前記光硬化液体樹脂は、前記タンク(10)の前記最も短い横方向寸法を横切って前記第1の軸線と直交する方向に循環される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、放射線への選択的暴露を介して硬化される感光性樹脂を採用するフォトリソグラフィーシステム、特に、三次元物体を製作するときにかかる感光性樹脂を放射線への暴露により硬化させるアディティブマニュファクチュアリングシステムおよび方法に関する。
【0002】
〔関連出願の参照〕
本願は、2018年8月20日に出願された米国特許出願第16/105,307号の優先権主張出願であり、この米国特許出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
様々なシステムが感光性樹脂の選択的効果を利用している。例えば、フォトリソグラフィーシステムは、二次元パターンを基材上にプリントするためのかかる技術を採用している。加うるに、いわゆる三次元(”3D”)プリンタは、粘性のある液体樹脂(典型的には液体ポリマー)を層ごとに光硬化させて所望の物体を形成することによって多層構造体を作る。この後者の場合、形成されるべき三次元物体を表すデータを一連の二次元層として組織化し、かかる一連の二次元層は、物体の横断面を表し、ビルドがそのデザインに従って進行する(トップダウン(上から下へ)かボトムアップ(下から上へ)かのいずれかで)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体樹脂を所望の物体層に凝固させる重合プロセスは、発熱を伴う。少なくとも3Dプリンタの場合、恐らくは樹脂の粘性が高いために、このプロセスによって生じる熱は、プリンティングが起こる領域、すなわち、いわゆるビルドエリア(build area)内に局所化状態のままである傾向がある。これは、特に連続的なまたはほぼ連続的なプリンティング作業においては極めて有害な場合があり、というのは、ビルドエリア中の過度の熱が例えば樹脂の望ましくない硬化の一因となることによってプリント中の層の品質に悪影響を及ぼすからである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
種々の実施形態では、本発明は、放射線への選択的暴露によるタンク内の液体樹脂の光硬化を介して物体を形成する方法およびシステムを提供し、プリンティング作業中、タンク内の液体樹脂は、例えばリザーバを通って再循環される。その結果、プリントまたはビルドエリア内の光硬化液体樹脂は、連続的にまたはほとんどの場合連続的に変化し、その結果、ビルドエリア内の液体樹脂の温度は、造形されている物体の硬化中の層の品質に悪影響を及ぼすほど高くならないように管理される。さらに、本発明の種々の実施形態では、物体のプリンティングが行われているときに、ある体積の光硬化樹脂を、タンクから取り出し、冷却し、次にタンク内に再導入することによって、冷却装置中に通して循環させるのが良い。光硬化液体樹脂をこのようにリサイクルすることは、タンク内の液体樹脂の温度の管理をさらに助ける。
【0006】
一実施形態では、本発明に従って構成された装置は、光硬化液体ポリマーを収容するよう構成されたタンクを有する。タンクは、側壁を有し、側壁のうちの1つまたは2つ以上は、側壁開口部および底部開口部が設けられた底部を有する。柔軟性メンブレンがタンクの底部に被着された状態で開口部を覆う。光源が視準された(例えば、テレセントリックレンズ系によって)紫外線をタンクの底部開口部に向かってかつ柔軟性メンブレンと光源との間に設けられているマスク(例えば、荷電着色剤粒子を複数の2状態セル内の光学的に透明な流体内に分散させるマスク)に通して放出するよう構成されている。幾つかの実施形態では、ガラス部材がメンブレンとマスクとの間に配置されるのが良い。光源によって放出された視準紫外線は、柔軟性メンブレンを通ってタンク中に入る前にマスクによって濾波される。
【0007】
取り出しプレートがタンク内に設けられていて、光硬化液体ポリマーのところどころの硬化部分から形成された物体を取り出しプレートに取り付けることができ、この取り出しプレートの垂直変位量(タンクの底部からの)は、高さ調節器によって制御される。コントローラが高さアジャスタを作動させて物体のプリンティング中、取り出しプレートの垂直変位量を調整するよう構成されている。さらに、樹脂循環システムがコントローラの制御下において、第1の体積の光硬化液体樹脂をタンクから側壁開口部のうちの1つ経由でリザーバ中にポンプ送りするとともに第2の体積(オプションとして、第1の体積と同体積)の光硬化液体樹脂をプリンティング中、例えば第2の側壁開口部経由でリザーバからタンク中にポンプ送りするよう構成されている。
【0008】
好ましくは、第1の側壁開口部と第2の側壁開口部は、タンクの互いに反対側の横方向側部に位置している。タンクのこれら互いに反対側に位置する横方向側部は、タンクの最も短い横方向寸法を定める。かくして、樹脂循環システムは、光硬化液体樹脂を高さアジャスタによる取り出しプレートの並進軸線と直交する軸線に沿ってタンクを通って光硬化液体樹脂を循環させるよう構成されている。樹脂循環システムは、熱交換器およびコントローラの制御下において作動可能な1基または2基以上の蠕動ポンプを含むのが良い。追加の冷却装置が例えば冷気をマスクの下側に吹き付けることによってマスクの下側を冷却するために設けられるのが良い。
【0009】
加うるに、1つまたは2つ以上の熱的イメージング装置がプリンティング作業中、フィードバックをコントローラに提供するために用いられるのが良い。
【0010】
別の実施形態では、放射線への選択的暴露を介してタンク内に入れられている液体樹脂の光硬化により物体を形成するアディティブマニュファクチュアリング装置が取り出しプレート、放射線源、およびタンクを有し、タンクは、タンクの底部の少なくとも一部分として放射線透過柔軟性メンブレンを有する。放射線透過柔軟性メンブレンは、取り出しプレートと放射線源との間に位置決めされ、取り出しプレートは、取り出しプレートと放射線源の相対位置によって定められた第1の軸線に沿って変位可能であるよう構成されている。タンクは、タンクを通って光硬化液体樹脂を第1の軸線と直交した第2の軸線に沿って再循環させるポートを有する。したがって、アディティブマニュファクチュアリング装置は、ポート相互間に設けられていて、ある体積の光硬化液体樹脂を冷却装置の通過後にタンク中にリサイクルするポンプ送り装置を有するのが良い。
【0011】
かかる冷却装置は、ある体積の光硬化液体樹脂を運搬する1本の管を含むのが良く、1本の管は、ヒートシンクと接触状態にある。代替的にまたは追加的に、冷却装置は、ペルチエ素子を含むのが良い。ポンプ送り装置は、1本の管と接触状態にある蠕動ポンプおよび光硬化液体樹脂のリザーバを含むのが良い。
【0012】
本発明の諸実施形態では、光源およびマスクを制御して光硬化液体樹脂を収容したタンク内に配置されている物体の光硬化済み液体樹脂の第1の層を(例えば、硬化させることによって)形成する。タンクは、放射線透過柔軟線メンブレンによって封止されたタンク開口部を有する。高さアジャスタを制御して物体をタンク中に向いた放射線透過柔軟性メンブレンの第1の表面に対して第1の軸線に沿って変位させる。光源およびマスクをさらに制御して物体の光硬化済み液体樹脂の連続する層を形成し、その時間の間、ポンプ送り装置を制御してこれらの層を形成しながら、タンクを通ってある量の光硬化液体樹脂を循環させ、その結果、光硬化液体樹脂を第1の軸線と直交する軸線に沿ってタンク中に導入したりタンクから取り出したりする。
【0013】
マスクは、マスクの2状態セルを明るい状態のセルと暗い状態のセルに配列することによって所望のパターン(例えば、製作中の物体の層のパターンを表示するよう)制御される。セルのそれぞれの状態は、一実施形態では、明るい状態のセルの着色剤粒子を明るい状態のセルに設けられた凹部内に詰め込み、そして暗い状態のセルの着色剤粒子についてはこれらを詰めないようにすることによって実現される。セルのそれぞれの状態は、バイアス電圧を所望のパターンに従ってセルの電極に印加することにより制御される。
【0014】
本発明のこれら実施形態および別の実施形態を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】3Dプリンティングシステムの概略断面図であり、放射線透過柔軟性メンブレンが光硬化液体樹脂を収容したタンクの開口部を封止するために用いられ、このタンク内において、プリンティング作業中、光硬化液体樹脂を本発明の一実施形態に従って、タンク内の液体樹脂からの物体の取り出し軸線と直交する軸線沿いにビルドエリアに対して変位させるステップを示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に従ってテレセントリックレンズを利用した
図1の3Dプリンティングシステムのための光源の一例を示す図である。
【
図3A】
図1の3Dプリンティングシステムを用いた物体の製造における種々のステップのうちの一つを示す図である。
【
図3B】
図1の3Dプリンティングシステムを用いた物体の製造における種々のステップのうちの一つを示す図である。
【
図3C】
図1の3Dプリンティングシステムを用いた物体の製造における種々のステップのうちの一つを示す図である。
【
図4】3Dプリンティングシステムを示す図であり、本発明の一実施形態に従って樹脂循環システムの諸観点を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に従って構成された3Dプリンティングシステムのための制御システムの諸観点を示す図である。
【
図6】本発明の方法を例示化するコンピュータ可読命令を記憶して実行することができるプロセッサ利用コントローラのコンポーネントを示す図である。
【
図7】本発明の種々の実施形態によって使用できるマスクのセルの暗い状態および明るい状態の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態についての以下の説明において、明細書の一部をなす添付の図面を参照し、添付の図面には、実例として特定の実施形態が示され、これら特定の実施形態によって本発明を具体化できる。理解されるべきこととして、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書において提供された教示に基づいて他の実施形態を実現することができる。図のうちの任意の1つと関連した説明を同一または類似のコンポーネント/ステップを含む別の図に利用することができる。
【0017】
上述したように、感光性樹脂の硬化により物体を製作する3Dプリンタにおける重合プロセスの発熱性により、物品の製作原料である樹脂のバット内に高温の望ましくなくしかも局所化された領域(エリア)が生じる場合がある。種々の実施形態では、本発明は、樹脂を物体のためのビルドエリアに対して変位させることによってかかる局所化加熱の副作用を減少させまたはなくす方法およびシステムを提供する。実際には、これは、樹脂からの物体の取り出し軸線と直交する軸線沿いにビルドエリアを通ってある体積の樹脂を循環させることによって達成される。これは、一実施形態では、プリンティングプロセス中、第1の体積の樹脂をタンクから取り出し、そして第2の体積(これは、第1の体積と等しくても良くまたは異なっていても良い)をタンク中に導入することによって行われる。樹脂をこのようにそしてオプションとしてリザーバに通して循環させることによってビルドエリア内の光硬化液体樹脂を連続的に新たに補充しまたは大部分そのようにする。その結果、ビルドエリア内の液体樹脂の温度は、製作されている物体の硬化中の層の品質に悪影響を及ぼすことのないレベルに維持される。加うるに、本発明の種々の実施形態では、光硬化液体樹脂をタンク中に再導入する前に冷却装置に通して循環させる。これは、タンク内の液体樹脂の温度を管理するのを一層助ける。
【0018】
図1は、電磁放射線(例えば、紫外線)を用いて光硬化液体ポリマー18を硬化させて物体22(例えば、3D物体)を製作する3Dプリンティングシステム100の断面図である。物体22を層ごとに製作するのが良く、すなわち、物体22の底面に隣接して位置する液体ポリマー18の層を光硬化させることによって物体22の新たな層を形成するのが良く、物体を取り出しプレート20によって引き上げるのが良く、それにより光硬化液体ポリマー18の新たな層を新たに形成された層の下に引き込むことができ、プロセスは、追加の層を形成するために繰り返される。
【0019】
3Dプリンティングシステム100は、光硬化液体ポリマー18を収容するタンク10を含む。タンク10の底部は、光源26からの電磁放射線12がタンク10に入ることができるようにするための底部開口部11を有する。オプションとしての放射線透過裏当て部材16(例えば、硼珪酸ガラスまたは強化ガラス、例えば厚さが約100μmのアルカリ‐アルミノ珪酸ガラス)を用いてタンク開口部11を封止する(すなわち、光硬化液体ポリマー18がタンク10から漏れ出るのを阻止する)のが良く、それと同時に、電磁放射線がタンク10に入って液体ポリマーを硬化させるのが良い。マスク25(例えば、荷電着色剤粒子が複数のセル内の光透過性流体内に分散されたマスク)を光源26と光硬化液体ポリマーの間に配置するのが良く、それにより液体ポリマーの選択的硬化を可能にする(それにより、複雑な形状/パターンをもつ3D物体の形成が可能である)。種々の実施形態では、いわゆる電子インクパネルを用いるのが良い。本明細書で用いられる「電子インクパネル」は、電気泳動、電気対流、電気浸透、電気化学的相互作用、および/または他の動電学的現象のうちの1つまたは2つ以上を用いて可視像を形成するディスプレイパネルである。一実施形態では、マスク25は、中国深セン(またはシェンチェン)所在のデュオボンド・ディスプレイ・テクノロジー・カンパニー・リミテッド(Duobond Display Technology Co. Ltd.)によって製造されたDBT133BIU40E0パネルである。
【0020】
例えば、マスク25は、2状態セル78a,78bで構成されるのが良く、これら2状態セルの各々は、荷電着色剤粒子80が光学的に透明な流体82内に存在しているかあるいは存在していないかによって提供される暗いまたは不透明な状態および明るいまたは透明な状態を有する。
図7に示されているように、セルの明るい状態は、着色剤粒子80が例えばセルに設けられた凹部84内に詰め込まれたときに達成され、暗い状態は、着色剤留置がセル全体にわたって分散しているときに達成される。着色剤粒子80は、セルの互いに反対側の側部に設けられた透明な基材(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ガラス、または他の適当な材料)88a,88b上に設けられた電極86a,86bに印加されるバイアス電圧に応答して詰まりまたは分散する。電極は、透明な導電性酸化物、例えばITO(インジウム錫酸化物)、もしくは透明な導電性ポリマー、例えばPEDOT(ポリ3,4‐エチレンジオキシチオフェン)、または他の適当な材料で作られるのが良い。凹部84は、誘電構造体90によって画定され、これら凹部は、透明な誘電体のシートに設けられた凹部として形成されるのが良い。マスクの複数のセル(ピクセル)の制御により、所望のパターンを達成することができる。すなわち、荷電着色剤粒子80が電極86a,86bに印加されたバイアス電圧に応じて指定された(アドレス指定された)セルの凹部内に集まるようにさせられるのが良く、この場合、バイアス電圧は、プリントされるべき所望のパターンに応じて印加される。
【0021】
光源26は、一実施形態では、350~700nm、例えば365~430nmの波長範囲内にあり、特に410nmまたは415nmである放射線の視準されたルミナスフロー(luminous flow)を提供する。一実施形態では、放射線のルミナスフローは、個々の発光体のアレイ、特に、2018年1月8日に出願された共通所有者の米国特許出願第15/864,510号明細書に記載されているように365~430nmの波長、特に410nmまたは415nmの放射線を放出するよう構成された発光ダイオード(LED)源のアレイによって生じ、この米国特許出願を参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。本明細書で示されているように、視準光源は、バッフルのアレイおよびレンズのアレイを含むのが良く、バッフルは、LED源のアレイ中の個々のLED源の各々のビーム幅をレンズアレイのうちの一レンズのほぼ直径に制限するよう配置され、レンズのアレイは、LED源のアレイから一焦点距離分離れて配置されている。他の実施形態では、光源26は、3565~430nmの波長、特に410nmまたは415nmの放射線を放出するよう構成された光源、およびテレセントリックレンズ組立体を用いて放射線の視準されたルミナスフローを提供することができる。当該技術分野において知られているように、テレセントリックレンズは、点光源から視準された光線を生じさせる複合レンズである。この場合、像空間テレセントリックレンズが用いられる。変形例として、バイテレセントリックレンズを用いても良い。
【0022】
図2は、テレセントリックレンズ72が用いられている光源26の一部分の一実施例を示している。365~430nmの波長、特に410nmまたは415nmの放射線74を放出する1つまたは2つ以上のLED70が放射線をテレセントリックレンズ構造体72に向かって放出するよう配置されている。テレセントリックレンズ構造体72は、その入射瞳に入射した放射線を集めて視準された放射線12をその出射瞳のところで放出する。次に、この視準放射線は、マスク(この図には示されていない)に入射する。マスクに向かっている光線が図を平面中のあらゆる所に同一の入射角度および同一の視角を有するので、マスクの表面は、均一に照明される。
【0023】
図1に戻ってこれを参照すると、マスク25は、複数のアドレス指定可能ピクセルを含むLCDまたは電子インクパネルである。ピクセルを入射放射線12に対して個別的に透明にまたは不透明に作るのが良い。ピクセルのうちの透明なピクセルを通過した入射放射線の作用効果により、光硬化液体ポリマー18内のビルドエリア
31のところに像が結ばれる。個々のピクセルは、製作中の層の像のビットマップ(または他の)バージョンを提供するプロセッサまたは他のコントローラの制御下においてバイアス電圧を個々のピクセルに印加することによりまたは印加しないことによって透明にまたは不透明に作られる。
【0024】
2つのパラメータのうちのいずれか一方または両方の制御は、光源とマスクの組み合わせのコントラスト比に影響を及ぼすことになる。一方は、光源26によって生じた放射線の視準度または視準レベルである。他方は、光源26によって生じた光の波長である。マスク25内において、約150~250nm直径の個々のおおよそ球形の着色剤粒子が存在するものとする。マスクのセルが暗い状態にあるとき、これら粒子は、セル内の運搬流体内にほぼ一様に分散する。理想的には、これら粒子相互間には、光源26からの放射線を通す隙間が存在しないよう配置されるが、実際には、セルが暗い状態にあるときに粒子の配置が制御されないので、これを保証することができない。それにもかかわらず、着色剤粒子は通常、十分に分散されて互いにオーバーラップされ、その結果、十分に視準された光線が大部分遮断されるようになる。視準度が大きければ大きいほど、光線がそれだけ一層遮断される。この理由で、テレセントリックレンズ構造体の使用が好ましく、その理由は、このテレセントリックレンズ構造体が最適視準レベルを提供する傾向があるからである。
【0025】
同様に、光源26によって生じた光の長い波長は、良好なコントラストをもたらす傾向があり、というのは、これら長い波長は、マスク25のセル内のナノ粒子によってより容易に遮断されるからである。テレセントリック光学系および415nmの紫外線を用いると、最大1:500のコントラスト比が達成可能である。他の光学構造体および415nmの紫外線を用いた場合であっても、最大1:200のコントラスト比が達成された。
【0026】
この種の3Dプリンティングシステムが直面する一課題は、物体22への付着に加えて、新たに形成された層がタンクの底部にくっつく傾向があることである。その結果、物体が取り付けられている取り出しプレートが引き上げられると、新たに形成された層は、裂けるとともに/あるいは物体から分離状態になる場合がある。この問題に取り組むため、柔軟性メンブレン14が裏当て部材16(存在している場合)に隣接してまたはタンクの底部(裏当て部材が用いられていない場合)に隣接して設けられる。柔軟性メンブレン14は、シリコーンまたは別の材料で形成されるのが良く、そしてオプションとして、新たに形成された層がタンク10の底部にくっつく恐れを減少させるために非粘着性物質、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で被覆されるのが良い。柔軟性メンブレン14は、光源26によって放出された放射線の波長に対して透明であり(またはほぼ透明であり)、それによりその放射線がタンク10に入って液体ポリマー18を硬化させることができるようになっている。
【0027】
柔軟性メンブレン14の代替手段として、浸透性または半浸透性のビルド表面を備えた光学的に透明な重合防止剤を用いることができる。かかる構成は、例えば米国特許第9,205,601号明細書に記載されており、この米国特許出願を参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。概要を述べると、重合防止剤および半浸透性ビルド表面は、タンクの底部とビルドエリアとの間に、樹脂が紫外線への暴露時に重合を行うことを阻止するゾーンを提供する。
【0028】
オプションとして、1つまたは2つ以上の熱的イメージング装置28が3Dプリンティングシステム100内に存在している。これらイメージング装置は、タンク10の底部開口部11内のLCDパネル25越しにビルドエリア31を観察するよう差し向けられている。イメージング装置28は、物体22の製作、すなわち、物体の層を構成する液体ポリマーの重合を観察するために用いられるのが良い。イメージング装置は、スペクトルの赤外および/または可視部分に像を提供することができ、これらイメージング装置は、赤外イメージング装置、CCD、および/または他のイメージング装置であるのが良い。層の像が形成されているときに層の像を評価することによって、コントローラ(図示せず)が光源によって生じた放射線の強度を変化させる(例えば、1つまたは2つ以上のフィルタを用いて)とともに/あるいは物体の考えられる破損個所(例えば、不十分な重合、過熱などに起因する)を検出することができる。
【0029】
コントローラは、例えば、イメージング装置28からの赤外像を受け取るとともにこれらの像を評価して(例えば、色または他の特性に基づいて)各層が作られているときに各層の特性を判定するよう構成された(適当なソフトウェア命令下で)コンピュータ利用コントローラであるのが良い。例えば、イメージング装置28において提供された赤外像のピクセルは、製作が行われている物体の横断面層モデルに対して評価されてこの層に対応した液体ポリマーのエリアが適正に形成されているかどうかを判定するのが良い。同様に、物体の横断面層の一部をなしていない液体ポリマーの隣接のエリアは、これらが重合されていないことを確かめるよう評価されるのが良い。種々の実施形態では、UVフィルタまたはフィルムがマスク25とイメージング装置28との間に位置決めされて紫外線が像と干渉することがないようにするのが良い。これら素子は、図面を不必要にわかりにくくしないように図示されていない。
【0030】
図3A~
図3Cは、3Dプリンティングシステム100を用いた物体22の1つの層の製作において順次実施可能なステップを示している。
図3Aに示されているように、電磁放射線12を光源26からタンク開口部11およびマスク25に通してタンク10内に放出する。電磁放射線は、液体ポリマー18の少なくとも部分的な硬化を生じさせて物体22にくっつく新たな層24を形成する。硬化した層24は、メンブレン14が設けられているためにタンク10の底面にはくっつかない。硬化済み層24を形成した後、電磁放射線12の放出を一時的に中断させるのが良い(または、連続プリンティングの場合はそうではない)。検査ステップを実施して新たに形成された層24の品質を評価するのが良い。具体的に説明すると、新たに形成された層24に関する情報を得るには、イメージング装置28によって提供された熱画像を評価するのが良い。
【0031】
新たに形成された層24をいったん評価すると、形成されるべき光硬化済み液体ポリマーの次の層に備えて
図3Bに示されているように物体22をタンク10内で引き上げるのが良い。物体22をタンク10内で引き上げている間、光硬化液体ポリマー18を物体22の引き上げによって生じたボイド中に引き込むのが良く、かかる光硬化液体ポリマー18は、物体22の次の層の形成を可能にする。
【0032】
変形例として、
図3Cに示されているように、樹脂循環システム30を用いてタンク10およびリザーバ32を通って液体ポリマー18を循環させるのが良い。樹脂循環システム30は、1つまたは2つ以上のポンプ34a,34bを含み、これらポンプは、一実施形態では、蠕動ポンプである。ポンプ34aは、例えば配管36によりタンク10の側壁に設けられた出口ポート38に流体結合されている。ポンプ34aは、ある体積の液体ポリマー18をタンク10から引き出してこれを配管48経由でリザーバ32中に送り込む。ポンプ34bは、例えばハイナン44によりタンク10の別の側壁に設けられた入口ポート42に流体結合されている。ポンプ34bは、ある体積の液体ポリマー18を配管44経由でリザーバ32から引き出し、そしてこれを配管40および入口ポート42経由でタンク10内に送り込む。タンクから引き出された液体ポリマーの体積は、タンク内で取って代わった液体ポリマーの体積に等しくても良く、これよりも多くても良く、あるいはこれよりも少なくても良い。さらに、リザーバ32および/または配管構造体
39,44は、液体ポリマー18を冷やすために関連の熱交換器46a,46b,46cを有するのが良い。
【0033】
入口ポート42および出口ポート38は、好ましくは、タンク10の互いに反対側の側壁に形成され、物体22のためのビルドエリアがこれら側壁相互間に位置する。これら2つの側壁は、タンク10の横方向寸法を定め、この横方向寸法は、別の一対の互いに反対側に位置する側壁によって形成された直交する横方向寸法と同一の寸法であるかこれよりも短い寸法であるかのいずれかである。このように、液体ポリマーをポンプ34a,34bの作用によってタンク10の最も短い横方向寸法にわたってかつプリンティング中における取り出しプレート20の変位(物体22を引き上げるための)軸線と直交する方向に変位させる。
【0034】
樹脂循環システム30は、光硬化液体樹脂18がタンク10の出口ポートから戻って入口ポートを通ってタンク内に入っているときに光硬化液体樹脂18を冷却するよう構成されている。例えば、このシステムは、かかる目的のために1つまたは2つ以上の熱交換器46a,46b,46cを含むのが良い。1つの事例では、何本かの配管をヒートシンクとして作用する冷却板に沿って蛇行路を成して通すのが良い。リザーバ32の外部に沿って、冷蔵コイルを用いるのが良い。代替的にまたは追加的に、熱電冷却手段、例えばペルチエ型冷却器を樹脂冷却装置の一部として採用して樹脂冷却システム30内の樹脂を冷却するのを助けるのが良い。
【0035】
図示していないが、1つまたは2つ以上の粒子フィルタを樹脂循環装置内に設けるのが良く、その目的は、重合プロセスの望ましくない副生物またはプリンタ環境から樹脂中に導入される汚染物を除去することにある。フィルタを樹脂の流れの観点から見てリザーバ32の前にまたはこの後に配置することができる。リザーバ32は、タンクからの樹脂の排出を可能にする排出ポートをさらに有するのが良い。同様に、リザーバ32は、システム中への未使用の樹脂の導入を可能にするポートを有するのが良い。
【0036】
上述したように、タンク開口部11を封止するために裏当て部材16を設けることは、オプションである。
図4に示されているように、システム200では、マスク25は、タンク開口部11内に配置されるとともにタンク開口部を封止するためにガスケット27によって包囲されるのが良い。かかる実施形態では、柔軟線メンブレン14は、タンク10の底部およびマスク25の頂面の真上に配置されるのが良い。このようにして構成されたシステムの作動は、上述の説明に従っており、かかる作動では、樹脂循環システムを用いるのが良い。
【0037】
次に
図5を参照すると、取り出しプレート20の垂直変位量は、高さ調整手段
41によって制御され、この高さ調整手段
41は、コントローラ50によって作動される。コントローラ50はまた、樹脂循環システム30のポンプおよび冷却要素(わかりやすくするためにこの図では示されていない)を作動させるのが良い。取り出しプレート20の垂直位置は、例えばタンクの後部に位置決めされた単一のレール/軌道に沿って調整されるのが良く、単一のアクチュエータが同一の観点で用いられる。一実施形態では、アクチュエータは、取り出しプレートを一方向にまたは他方の方向に垂直軸線に沿って前進させるよう構成されたステッピングモータであるのが良い。代替手段は、電流の印加時(例えば、コントローラ50の制御下において)規定された方向に膨張する圧電セラミックを含む圧電変換器をもちいることである。セラミックは、これが膨張する際に(コントローラ50の制御下における電流の印加時に)取り出しプレート20が結晶の膨張方向において垂直軸線に沿って動かされるよう配向されている。一般に、多くの圧電変換器を用いると取り出しプレートを動かすことができ、種々の圧電変換器を同時に(またはほぼ同時に)付勢するのが良く、その結果、これらの作用が互いに協調されるようになる。かくして、圧電変換機は、これらが同一方向において取り出しプレートに垂直の動きを与えるよう配置されているのが良く、並進距離は、圧電変換器に印加された電流の大きさに比例するのが良い。幾つかの実施形態では、圧電変換器の各起動に対応した取り出しプレートの並進距離は、数ミクロンから数ミリメートルのオーダーである。本発明の実施形態で採用可能な圧電変換器は、セラミック中の電界がその分極方向に印加される長手方向圧電アクチュエータ、セラミック中の電界がその分極方向と直交して印加される圧電剪断アクチュエータ、または半径方向に分極される管型アクチュエータのうちの任意のものであって良く、管型アクチュエータは、セラミックの外面に取り付けられた電極を有し、その結果、その分極方向に平行な電界もまた、半径方向に延びるようになっている。
【0038】
図6に示されているように、一実施形態では、コントローラ50は、本明細書に説明した方法を定めるコンピュータ可読命令(すなわち、コンピュータプログラムまたはルーチン)を実行するプロセッサ52を含み、かかる方法は、例示化され、そして非一過性コンピュータ可読媒体、例えば、メモリ54で実施される。かかるプロセッサは、任意のコンピュータ言語で表示されて任意適当なプログラム可能ロジックハードウェア上で実行されるのが良い。本発明の方法を実施することができるようにしまたはその手段としてのプロセッサ利用コントローラ50は、代表的には、情報のやり取りをするバスまたは他の通信機構56、バスに結合されていて、情報を記憶装置とともにプロセッサによって実行されるべき命令を記憶したりプロセッサによって実行されるべき命令の実行中に一時的な変数または他の中間情報を記憶したりするメインメモリ54、RAMまたは他の動的記憶装置、およびバスに結合されていて、静的情報を記憶するとともにプロセッサのための命令を記憶するROM58または他の静的記憶装置を含む。記憶装置60、例えばハードディスクまたはソリッドステートドライブもまた、情報および命令を記憶するためにバスに結合された状態で設けられるのが良い。本発明のコントローラは、幾つかの場合、バスに結合されていて情報をユーザに表示するディスプレイ62を有する。かかる場合、英数字および/または他のキーを含む入力装置64もまた、情報および指令の選択をプロセッサに伝えるためにバスに結合されるのが良い。他形式のユーザ入力装置、例えばカーソル制御装置66もまた、方向の上方および指令選択をプロセッサに伝えるとともにカーソルの動きをディスプレイ上で制御するためにバスに結合された状態で設けられるのが良い。
【0039】
コントローラ50は、バスを介してプロセッサに結合された通信インターフェース68をさらに有するのが良く、かかる通信インターフェースは、例えばローカルエリアネットワーク(LAN)経由で2方向、すなわち、コントローラへのワイヤードおよび/またはワイヤレスデータ通信、およびコントローラからのワイヤードおよび/またはワイヤレスデータ通信を可能にする。通信インターフェースは、種々の形式の情報を表すデジタルデータストリームを伝送する電気、電磁、または光信号を送受信する。例えば、コントローラ50は、データ通信をユーザによって操作されるホストコンピュータまたは他の機器に提供するよう遠隔ユニット(図示せず)とネットワークを組むのが良い。かくして、コントローラは、必要ならばエラーをトラブルシューティングするのを助ける診断情報を含むメッセージおよびデータを遠隔ユニットとやり取りするのが良い。
【0040】
本明細書において言及しているプロセスは、メインメモリ54に格納されたコンピュータ可読命令の適当なシーケンスを実行するプロセッサ52によって実施されるのが良い。かかる命令は、別のコンピュータ可読媒体、例えば記憶装置60からメインメモリ54に読み込み可能であり、メインメモリ54に格納されている命令もシーケンスの実行により、プロセッサ52は、関連の動作を実行する。変形実施形態では、ハードワイヤード回路またはファームウェア制御処理ユニットがプロセッサ52および本発明を実行するためのその関連コンピュータソフトウェア命令に代えてまたはこれらと組み合わせて使用できる。
【0041】
プリンティング作業中に取り出しプレート20の変位を制御することに加えて、コントローラ50はまた、光源26を制御する(例えば、光のタイミングおよび/または強度を制御する)とともにマスク25を制御する(例えば、マスクのどの領域が光を通すかおよびどの領域が光を遮断するかを制御する)ことができる。さらに、
図3Cを参照すると、コントローラ50は、プリンティング中、タンク10を通って樹脂18を再循環するために1つまたは2つ以上のポンプ34a,34bを作動させるのが良い。本発明の種々の実施形態では、物体22のプリンティングが行われているときに、ある体積の光硬化樹脂を、タンクから取り出し、冷却し、次にタンク10内に再導入することによって、冷却装置30中に通して循環させるのが良い。光硬化液体樹脂をこのようにリサイクルすることは、タンク内の液体樹脂の温度およびマスク25の温度の管理をさらに助ける。マスク25の温度もまた、冷気をマスクの下側に吹き付けることによって管理可能である。
【0042】
樹脂温度は、例えばタンク10内に設けられた温度センサ76(
図5参照)を用いて管理可能である。かかるセンサからの(および/またはイメージング装置28からの)温度の読みは、コントローラ50によってサンプリングされるのが良く、これに基づいて、タンクを通って液体樹脂を循環させる速度を増大させ、減少させ、または維持することができる。例えば、タンク内の樹脂の温度(例えば、ビルドエリア近くの)が高すぎるとみなされた場合、樹脂循環速度を増大させて(例えば、ポンプ送り速度を増大させることによって)高温の樹脂がビルドエリアから迅速に除去されるようにするのが良い。タンク内の樹脂の温度(例えば、ビルドエリア近くの)が低すぎるとみなされた場合、樹脂循環速度を下げて(例えば、ポンプ送り速度を下げることによって)高温の樹脂がビルドエリア内に維持されるようにするのが良い。タンク内の樹脂の温度(例えば、ビルドエリア近くの)が許容可能でみなされた場合、樹脂循環速度をその時点の速度に維持するのが良い。かかるやり方とともに、熱交換器を作動させて樹脂循環システム内の樹脂の冷却度に影響を及ぼすのが良い。
【0043】
かくして、本発明の実施形態は、放射線源およびマスクを制御して光硬化済み液体樹脂の連続した層を液体樹脂の入っているタンク内に所望の形状に形成することによって液体樹脂の光硬化により物品のプリンティングを可能にする。タンクは、液体樹脂を選択的に硬化させる放射線を導入させる放射線に対して透明な柔軟線メンブレンによって封止された開口部を有する。プリンティング中、高さ調節器を制御してタンク内に向いている放射線に対して透明な柔軟性メンブレンの第1の表面に対して形成中の物体を第1の軸線に対して変位させる。物体のプリンティング中、ポンプ送り装置を制御してタンクを通って、すなわちビルドエリアを通ってある体積の光硬化液体樹脂を循環させながら物体の光硬化済み液体樹脂の層を形成して光硬化液体樹脂が両方とも第1の軸線と直交する軸線に沿ってタンク中に導入したりタンクから取り出したりするようにするのが良い。ある体積の光硬化液体樹脂をタンクからの取り出し後であってタンクへの再導入前に、かかる循環中に冷却するのが良い。
【0044】
プリンティング中、光硬化済み液体樹脂の層を熱的イメージング装置の使用によりモニタするのが良い。かかるモニタリングは、製作中の物体のありうる破損個所の検出およびさらにビルドプロセスの調整を可能にする。例えば、光源からの放射線の強度を変更して(例えば、暴露時間、暴露強度、暴露波長等の使用により)ビルドプロセスに影響を及ぼすのが良い。加うるに、熱的イメージング装置は、ビルドエリア内で生じている温度に関するフィードバックを提供し、それによりポンプ送り装置に対する制御がビルドエリアを通る樹脂の循環速度を制御することができる。
【0045】
かくして、放射線への選択的暴露より硬化される感光性樹脂を採用するフォトリソグラフィーシステム、特に、かかる感光性樹脂が三次元物体の製作時に放射線への暴露によって硬化されるかかるシステムおよび方法について説明した。