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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】エアロゲル粒子の連続超臨界乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/28 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
C08J9/28 102
C08J9/28 CEP
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021514077
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2019074394
(87)【国際公開番号】W WO2020053349
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】18193962.0
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】322010648
【氏名又は名称】エアロゲル-イット ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】モファード,ゾーアイル
(72)【発明者】
【氏名】レルスベルク,ヴィブケ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァインリヒ,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】フリッケ,マルク
(72)【発明者】
【氏名】スブラーマニアン,ラマン
(72)【発明者】
【氏名】スミルノヴァ,イリーナ
(72)【発明者】
【氏名】グリコフ,パフェル
(72)【発明者】
【氏名】ミスフェルト,フィン
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-505940(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第00773549(GB,A)
【文献】特表2019-524611(JP,A)
【文献】特表2001-513012(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0086297(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 8/00-8/46
B01J 10/00-12/02
B01J 14/00-19/32
B01D 11/00-12/00
C01B 33/00-33/193
C08J 9/00-9/42
F26B 1/00-25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル粒子を乾燥させるための、特にエアロゲルを製造するための方法であって、
(i)ゲル粒子(P1)と溶媒(LM)を含む懸濁液を提供する工程と、
(ii)前記懸濁液を二酸化炭素が向流で流れるカラムに自由落下で導入する工程と、
(iii)前記カラムから乾燥したエアロゲル粒子を除去する工程と、
を含み、
前記懸濁液は前記カラムの頂部領域に導入され、前記乾燥したエアロゲル粒子は前記カラムの下部領域で除去され、
前記カラムの圧力及び温度は、二酸化炭素と溶媒の混合物が実質的に超臨界、又は超臨界であるように設定され、得られた前記エアロゲル粒子は、キャピラリーを介してバルブフリー方式で連続的に除去され
前記カラムは、前記エアロゲル粒子が重力の結果として落下する中間捕集容器の上に設置されており、
前記カラム内に搬送や関連する更なる内部構造体を必要としない、方法。
【請求項2】
前記ゲル粒子が向流中で沈降する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
CO質量流量は乾燥したエアロゲル粒子が得られるように設定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ゲル粒子は、20μmから1000μmの範囲の平均直径を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ゲル粒子は、2から100nmの範囲の平均細孔径を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒(LM)は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール及びヘキサノールからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
医療及び医薬用途のための、食品のための添加剤又は添加剤の担体材料としての、触媒担体としての、化粧品、衛生、洗浄及びクリーニング用途のための、センサー製造のための、断熱材のための、又はVIPのコア材料としての、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法によって得られた又は得ることができるエアロゲル粒子の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル粒子の乾燥方法、特にエアロゲルを製造するための方法であって、ゲル粒子(P1)及び溶媒(LM)を含む懸濁液を提供すること、該懸濁液を二酸化炭素が向流で流れるカラムに導入すること、乾燥したエアロゲル粒子をカラムから除去することを含み、該懸濁液がカラムの頂部領域に導入され、乾燥したエアロゲル粒子がカラムの下部領域で除去され、カラム内の圧力及び温度は、二酸化炭素及び溶媒の混合物が実質的に超臨界状態にあるか、又は超臨界状態にあるように設定されている、ゲル粒子の乾燥方法、特にエアロゲルを製造するための方法に関する。エアロゲル粒子は、排出容器及び連続減圧の両方を介して排出され得る。本発明はさらに、このようなプロセスによって得ることができる又は得られたエアロゲル粒子、及び、医療及び医薬のための、食品のための添加剤又は添加剤の担体材料としての、触媒担体としての、化粧品、衛生、洗浄、クリーニング用途のための、センサー製造のための、断熱材のための、又は、VIPのコア材料としての、本発明によるエアロゲル粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
無機エアロゲル又は有機エアロゲルなどの多孔質材料は、様々な用途に適している。例えば、数ミクロメートルの粒径範囲及び少なくとも70%の高い気孔率を有する多孔質材料は、理論的考察では特に優れた断熱材である。
【0003】
有機及び無機エアロゲル及びキセロゲル、ならびにそれらの製造方法は、先行技術から知られている。ゲルから多孔質材料、例えばエアロゲルを得るためには、液体を除去しなければならない。簡単のために、以下では、この工程を乾燥と呼ぶ。
【0004】
加圧装置で連続的に粒子を製造する場合、周囲圧に製造される粒子の連続的な減圧が特に問題となる。バルブを用いて粒子流体流を減圧する際に生じる問題としては、特に、バルブの摩耗やブロッキングが挙げられる。バルブを介する連続的な減圧又は排出容器を介する半連続的減圧に加えて、出口流量を調節するために様々な装置を使用した粒子流体流を減圧するための連続バルブフリーの方法が知られている。
【0005】
ゲルの超臨界乾燥のための方法もまた、先行技術から知られている。超臨界乾燥では、多孔質粒子、特にメソ多孔質及びマクロ多孔質粒子の特性が、収縮中に完全に又は部分的に失われるため、メソ多孔質粒子中に存在する流体の界面張力は、乾燥時のメソ多孔質及びマクロ多孔質粒子の収縮を大きく防止する目的で完全に又は大幅に除去される。このようなゲルの超臨界乾燥によって得られる生成物をエアロゲルと呼ぶ。特別な注意を払わないゲルの体積が大きく収縮してキセロゲルが生成される従来の乾燥とは異なり、臨界点付近又は臨界点以上での乾燥では、わずかな体積収縮(15%未満)しか起こらない。
【0006】
US2868280及びUS4845056は、超臨界乾燥によってエアロゲル粒子を製造するための連続方法を開示している。ここでは、ポンプを使用して、ゲル粒子を取り囲む流体の臨界圧力以上の圧力に、ゲル懸濁液を加圧する。懸濁液は、加熱されたパイプを通って流れ、流体の臨界温度を超える温度になり、次いで断熱的に減圧される。形成されたエアロゲル粒子は、ガスサイクロン及び/又はフィルタによってガス流から分離される。
【0007】
US2868280は、超臨界乾燥された無機エアロゲル粒子を製造するための連続方法を記載している。ゾルは、高温高圧で管状反応器内で連続的にゲル化され、流体が超臨界状態にある反応器の末端でバルブを介して減圧される。
【0008】
US4845056は、管状反応器内で、液相の臨界圧力を超えてアルコキシドの加水分解によるゾルの連続製造を有するエアロゲル-セラミック粉末の連続製造方法を開示している。加水分解後、ゾルは連続的に加熱ゾーンに運ばれ、液相の臨界温度を超える温度に達した後、超臨界流体中に懸濁して存在するセラミック粉末は、断熱的に減圧される。
【0009】
エアロゲルを連続的に減圧するためには、2つのタイプのエアロゲル製造:1.高温超臨界乾燥(HTSCD)と、2.低温超臨界乾燥(LTSCD)を区別しなければならない。上記で規定された方法は、HTSCD方法を用いた連続的方法であり、それはエアロゲル粒子の連続的減圧をも含む。
【0010】
超臨界流体としてCOを用いるLTSCD方法では、粒子を連続的に減圧する真に連続な方法は存在しない。現在の先行技術では、CO乾燥エアロゲルは、バッチで、0.05~5バール/分の遅い減圧速度によって減圧される。(US7,781,492B2、US9,073,759B2、US2017/0081494A1、WO2018/007740A1、US5,306,555)
【0011】
US5,686,031では、エアロゲルを頑丈な容器に封入するための特別な装置が、通常の20~200倍の減圧速度を選択することを可能にしている。通常の減圧速度として0.35バール/分が与えられている。
【0012】
WO2018/007740A1は、より迅速な減圧を可能にするために、減圧前にCOを窒素と置換している。減圧速度は正確には規定されていないが、減圧が数時間以内ではなく数分以内で可能となる。
【0013】
US6,670,402は、減圧速度を増加させるために、減圧前又は減圧中に、超臨界COを非反応性、非凝縮性の流体と置換し、物質移動を促進するために、様々な周波数の圧力パルスを適用する技術を開示している。
【0014】
US3,195,613は、長いパイプにおけるエチレン重合の例を用いて、約30バールから周囲圧力までの固液混合物の連続減圧の方法を開示している。該減圧により、液体の(部分的な)フラッシュ蒸発が起こり、それに伴う体積膨張により、圧力降下がさらに増大する。出口流は、不活性ガス流でブランケットするか、又は出口ノズルの断面積又は長さを変えることで調整される。
【0015】
US7,731,783B2は、圧力降下を増加させるための追加の内部構造体を有する長尺パイプと、出口粒子ガス流を調節するための装置を介して、ガス-固体系を連続的に減圧するための方法を開示している。
【0016】
HTSCDプロセスによる連続乾燥のための前記方法の欠点は、並流で乾燥流体及びゲル粒子を誘導することである。粒子が懸濁している流体流全体は、出口において超臨界状態でなければならない。この流体の臨界温度の加熱のためには、大量のエネルギーを必要とする。さらに、必要とされる高温のために、該方法は、例えばバイオポリマー系のゲルなどの有機物の連続的な超臨界乾燥には適していない。
【0017】
温度感受性エアロゲルの超臨界乾燥のために広く使用されている方法は、混合物の臨界圧力を超える圧力及びCOの臨界温度を超える温度でのCOを用いて溶媒を抽出することである。これは通常、バッチで行われる。これは、方法の最後には、CO流中の溶媒の出口濃度を1~2%未満にする必要があるため、エアロゲル1kgあたりで大量のCOを消費する。
【0018】
バッチプロセスの代替として、超臨界流体を用いる固体の抽出で通例となっているように、カスケード操作による向流での準連続乾燥がある。しかし、この方法は、多数の容器(段数=容器の数)のために、高いプロセス関連費用と、高い装置コストに関連する。
【0019】
US5962539は、シミュレート連続運転モードで運転されるCOによるエアロゲルの超臨界乾燥のための半連続方法を記載している。ここでは、n個の圧力容器が並行して運転され、超臨界乾燥の抽出プロセスでそれぞれ時間Δtだけオフセットして配置されている。このようにして、一定の排出流量及び一定の必要な入口流量が時間の経過とともに生じる。
【0020】
KR20100086297は、超臨界流体を用いたエアロゲル粒子の連続的な向流乾燥のための方法を開示している。0.1~1mmの直径を有するエアロゲル粒子が、超臨界CO又は超臨界メタノールに向流しながら搬送スクリューで導かれる。
【0021】
特許US6516537は、向流モードでミクロ多孔質シリカビーズ(2~12mm)の連続の超臨界又は近超臨界の乾燥を行うための方法を開示しており、この方法では、粒子は、イソプロパノールからなる乾燥流体流に対向して移動床で導かれる。粒子は、超臨界流体又は流体の超臨界混合物中で容器の底部に位置し、排出容器又は2つの交互の排出容器を介して減圧される。
【0022】
先行技術から知られている方法は、高い装置費用と関連し、及び/又は長い滞留時間と高い材料消費を伴うという欠点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】US2868280
【文献】US4845056
【文献】US7,781,492B2
【文献】US9,073,759B2
【文献】US2017/0081494A1
【文献】WO2018/007740A1
【文献】US5,306,555
【文献】US5,686,031
【文献】US6,670,402
【文献】US3,195,613
【文献】US7,731,783B2
【文献】US5962539
【文献】KR20100086297
【文献】特許US6516537
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
先行技術に続いて、本発明の目的は、経済的に運転でき、かつ低い装置費用で運転できるメソ多孔質及びマクロ多孔質ゲル粒子の乾燥方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この目的は、ゲル粒子を乾燥させる方法、特にエアロゲルを製造する方法による、本発明によって達成され、該方法は以下の工程、
(i)ゲル粒子(P1)と溶媒(LM)を含む懸濁液を提供する工程と、
(ii)前記懸濁液を二酸化炭素が向流で流れるカラムに導入する工程と、
(iii)前記カラムから乾燥したエアロゲル粒子を除去する工程と、
を含み、
前記懸濁液は前記カラムの頂部領域に導入され、前記乾燥したエアロゲル粒子は前記カラムの下部領域で除去され、
前記カラムの圧力及び温度は、二酸化炭素と溶媒の混合物が超臨界、又は実質的に超臨界であるように設定される。
【0026】
本発明の目的のために、ゲルは、液体(ソルボゲル又はリヨゲルとして知られている)又は液体としての水(アクアゲル又はハイドロゲル)と接触するポリマーに基づく架橋系である。ポリマー相は、連続した三次元ネットワークを形成する。
【0027】
本発明の文脈において、「超臨界」という用語は、作動圧力がそれぞれの動作温度において混合物の臨界圧力を超えるときに、COと溶媒の混合物は超臨界状態にあることを意味すると理解される。
【0028】
本発明の文脈において、溶媒とCOの混合物の状態は、混合物の圧力及び/又は温度が混合物の臨界圧力及び/又は臨界温度を下回るが、相間に生じる界面張力が細孔構造の破壊につながらないようにすでに減少されているとき、「実質的に超臨界状態」と呼ばれる。
【0029】
適切な圧力及び温度範囲が、広い範囲内で変化し得る。例えば、溶媒としてエタノールが使用される場合、本方法は、例えば、30から260℃の範囲の温度及び70から160バールの範囲の圧力で実施される。
【0030】
本発明によれば、COは、例えばサイドドローを介して、例えば部分的な横断流によって、供給及び除去され得る。この運転モードは、より長い乾燥時間及び/又はより大きな粒子径に特に有利であることが証明されている。
【0031】
本発明の文脈では、粒子は、2つ以上の交互排出容器を介して半連続的に除去され得る。有利には、カラムは、粒子が重力の結果として容器内に落下するように、排出容器の上方に設置され得る。
【0032】
別の実施形態では、キャピラリーを介してバルブフリー方法で連続的に除去することも可能である。この場合、カラムは、好ましくは、粒子が重力の結果として落下する中間捕集容器の上に設置されている。キャピラリー入口のブロッキングを防ぐために、CO流によって中間容器から粒子を排出するように流動化助剤が使用されるのが好ましい。
【0033】
さらなる実施形態によれば、本発明は、したがって、得られるエアロゲル粒子がバルブフリー方法で連続的に除去される、上述したようなゲル粒子を乾燥させる方法に関する。
【0034】
この方法では、例えば、エアロゲル粒子は、キャピラリーを介して加圧された保存容器、例えば向流抽出カラムから、周囲の圧力まで、バルブフリー方法で連続的に減圧される。本発明の文脈では、この場合、圧力は、例えば80~200バールの範囲、好ましくは100~150バールの範囲であり得る。パイプの全長にわたる流体-壁摩擦、粒子-壁摩擦及び粒子-粒子摩擦/衝突による圧力降下は、ガス質量流量に応じて、好ましくは、保存容器と環境との間の圧力差を克服するのに正確に十分大きくなければならない。その結果、追加の圧力降下を形成するためのバルブが必要とされない。周囲圧力(又は実質的に周囲圧力)まで減圧された粒子は、最終的にサイクロン分離器又はフィルタによってガス流から分離され、回収される。
【0035】
本発明によれば、乾燥は超臨界条件下で行われる。このような乾燥方法は、それ自体、当業者に知られている。超臨界条件とは、CO又はゲル化溶媒を除去するために使用される任意の特定の溶媒混合物が超臨界状態にある温度及び圧力を示す。このようにして、溶媒が除去されたときのゲル本体の収縮を低減することができる。二酸化炭素は、特にその31℃という好ましい臨界温度のため、特に温度感受性物質に好適である。一般に、乾燥流体の選択は様々な点に依存する。「近」臨界条件を設定したい場合、特に、乾燥される粒子又は最終生成物の熱安定性が、乾燥流体の選択を決定し、したがって、乾燥流体の臨界温度も制限する。
【0036】
連続的な減圧は、圧力降下を大きく保つために、小径のパイプ/キャピラリーによって行われるのが好ましい。しかし、ブロッキングすることなく粒子を搬送するために、一定の直径を維持する必要がある。適切なパイプ内径は1.5mm~50mmの範囲、好ましくは1.6mm~20mmの範囲である。パイプ内径、固体の体積割合、パイプの長さ、内部構造体の種類と数、ガスの質量流量によって、パイプライン全体の圧力降下が決定される。
【0037】
パイプ長さは30mから400mの範囲であり得、ガス質量流量は3kg/時間から20t/時間の範囲であり得る。
【0038】
保存容器からの、例えば連続乾燥のためのカラムの底部からのキャピラリーへの粒子の排出は、好ましくは流動化助剤及び計量装置を用いて行われるが、エアロゲルの材料特性に応じて流動化助剤及び計量装置を用いずに行われることも可能である。減圧は、エアロゲルの細孔内でのCOの凝縮やCOの凍結を防ぐために、外部から加熱されたキャピラリーを介して行われる。加熱のために、管束熱交換器の場合と同様、パイプライン/キャピラリーは、単一のパイプで導かれ、熱伝導流体を有するシェルを多数通過させることができる。圧力降下を増加させるために、パイプ収縮及びパイプ拡張などの様々な内部構造体を、キャピラリーに組み込むことができる。
【0039】
本発明のさらなる実施形態では、例えば窒素などの、より圧縮性が低い、超臨界CO混和性の不活性ガスを、減圧の前、又は減圧の間に添加することができる。その結果、ガス混合物の圧力依存性の体積変化は小さくなり、発生する減圧速度が、同じ総ガス質量流量を有するサイクロンによるガス流の事前の部分的分離によって減少され得る。
【0040】
本発明のさらなる実施形態では、減圧はまた、段階的に実施することができる:段階的減圧は、例えば上述の熱交換器のような2つ以上のキャピラリー部から構成される。キャピラリー部/熱交換器は、例えば、ジュールトムソン効果を補償するために必要なエネルギーを低減するために、又は低圧でジュール-トムソン効果をゾルの冷却に利用するために、異なる温度レベルで運転され得る。
【0041】
例えば、異なる温度レベルを有する段階的減圧においては、第1段階では、50℃で60から120バールの範囲の圧力で運転させることができ、更なる段階では、25℃で40から60バールの範囲の圧力で運転させることができ、第3段階では、5℃で1から40バールの範囲の圧力で運転させることができる。
【0042】
段階的減圧のさらなる実施形態は、段階間のサイクロンの相互接続である。個々の減圧段階の間では、エアロゲル粒子は、サイクロン又はフィルタでガス流の一部から分離されることができる。粒子のないガス流は、その後、リサイクルすることができる。粒子を含む残りのガス流は、次の減圧段階に進む。このようにして、減圧ガス流に必要な圧縮作業を低減することができる。
【0043】
段階的減圧の両実施形態の組み合わせももちろん可能である。
【0044】
本発明によれば、例えば、異なる温度レベルでの段階的減圧及びCOの部分的なリサイクルは、サイクロンでの分離と組み合わせることができる。例として、50℃で80から120バールの範囲の圧力での第1段階、サイクロンでの分離、40℃で55から80バールの範囲の圧力での更なる分離段階、25℃で40から55バールの範囲の圧力での更なる段階、及び任意に5℃で1から40バールの範囲の圧力での更なる段階が可能である。
【0045】
向流の確立及び維持のための、材料流と、乾燥流体と乾燥される粒子の流速の適切な比率又は適切な設定は、当技術分野での慣例的な実験の範囲内で当業者によって決定され得る。この設定は、特に、カラムの高さ、乾燥される粒子の内部物質移動及び熱移動、ならびに流動化点、すなわち乾燥される多孔質粒子の密度及び粒子径/粒子径分布、に依存する。
【0046】
本発明の文脈では、方法は、好ましくは連続的に実施される。さらなる好ましい実施形態によれば、二酸化炭素の流れは循環される。
【0047】
驚くべきことに、本発明による方法により、ゲル粒子を迅速かつ穏やかに乾燥させることができることが見出された。本発明によれば、特に、敏感な材料であっても十分に乾燥させることができるように、低温で乾燥を実施することが可能である。
【0048】
本発明によれば、本方法は、ゲル粒子が好ましくは二酸化炭素の流れの中で沈降するよう、ここで実施される。
【0049】
さらなる実施形態によれば、本発明は、したがって、ゲル粒子が向流で沈降する上述したようなゲル粒子を乾燥させる方法に関する。
【0050】
CO出口における溶媒の質量比の適切な範囲は、COの質量流量及びカラムの高さに依存して広い範囲内で変化し得る。本発明の文脈では、溶媒、例えば、CO中のエタノールの出口質量比は、約30%から98%までの範囲で変化することができる。
【0051】
本発明の文脈では、質量流量は、粒子が依然として沈降するように、それ自体当業者に周知の原則によってカラムの直径に依存して設定される。
【0052】
さらなる実施形態によれば、本発明は、したがって、乾燥したエアロゲル粒子が得られるようにCO質量流量が設定される、上述したようなゲル粒子を乾燥させる方法に関する。
【0053】
本発明の文脈では、CO質量流量は、例えば、0.75kg/時間から25t/時間の範囲に設定される。
【0054】
さらなる実施形態によれば、本発明は、したがって、CO質量流量が0.75kg/時間から25t/時間の範囲に設定される、上述したようなゲル粒子を乾燥させる方法に関する。
【0055】
本発明の文脈では、例えば平均直径が20μmから1000μmの範囲、好ましくは20μmから500μmの範囲、より好ましくは50μmから250μmの範囲であるゲル粒子を乾燥させることが可能である。
【0056】
さらなる実施形態によれば、本発明は、したがって、ゲル粒子が20μmから1000μmの範囲の平均直径を有する、上述したようなゲル粒子を乾燥させる方法に関する。
【0057】
粒子は、好ましくは、超臨界COに向流して自由落下でカラムを通って導かれる。驚くべきことに、移動床と比較して著しく短い自由落下の滞留時間が、粒子を乾燥させるのに十分であることと、搬送や関連する更なる内部構造体が必要ないことが示された。
【0058】
提示された方法は、特に20μmから500μmの範囲の比較的小さな粒子の連続的向流乾燥に適し、及び、乾燥容器内に搬送スクリューや移動内部構造体が必要ないという利点を有している。
【0059】
エアロゲル粒子は、一種の向流抽出カラムにおいて混合物の臨界点以上でCOと向流で連続的に乾燥される。COに容易に溶解する有機溶媒に懸濁したゲル粒子からなるゲル粒子懸濁液は、ポンプでカラムの頂部に供給される。ゲル粒子は、上向きに流れるCOに対向して重力場の中でカラムの底部に沈降する。超臨界COはカラムの底部から頂部へ流れ、その過程でゲル粒子から溶媒を抽出する。完全に乾燥した(無溶媒)、好ましくはメソ多孔質なエアロゲル粒子は、このようにしてカラムの底部で得られ、一方、高負荷の溶媒/CO流がカラムの頂部で得られる。
【0060】
粒子径は、連続的な向流抽出において決定的な要因となる。CO質量流量が一定の場合、粒子径は乾燥時間とカラム内の滞留時間を決定する。処理条件が一定の場合、粒子径が増加するとともに、乾燥時間/滞留時間の比率が増加する、これは第一に必要な乾燥時間が長くなり、同時に滞留時間が短くなるからである。
【0061】
同様に、粒子径が一定の場合、乾燥時間/滞留時間の比率は、特に処理パラメータによって滞留時間を変化させることによって、設定されることができる。滞留時間は、CO密度と上向きのCO質量流量によって影響される。粒子の落下方向に対向して上向きのCO質量流量を増加させることは、相対速度を変えないという条件では、粒子の絶対速度を低下させ、したがって滞留時間を増加させる。必要な乾燥時間/滞留時間の比は、1未満であることが好ましい。
【0062】
ゲル粒子を製造するための適切な方法は、それ自体が知られている。本発明の文脈において、ゲルは、例えば、有機ゲル又は無機ゲルであってよい。
【0063】
原則として、ゲルは、好適な前駆体の加水分解及びそれに続く縮合(ゲル化)によって製造することができる。
【0064】
無機又はハイブリッド材料に適切なゲル材料前駆体は、無機、又は有機成分と無機成分の混合物であり得る。ゾルは、様々な方法でゲル化を誘導するために触媒され得る。例としては、希釈した金属酸化物ゾルのpH及び/又は温度を、ゲル化が生じる点に設定することが含まれる。無機エアロゲルを形成するのに適した材料としては、金属の酸化物、遷移金属、及び酸化物を形成することが可能な半金属、例えばシリコン、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、バナジウムなどが挙げられる。
【0065】
無機エアロゲルを形成するための主な合成経路は、適当な金属アルコキシドの加水分解及び縮合であってよい。
【0066】
有機ゲルのゲル化のための適切な前駆体は、当業者には同様に知られている。
【0067】
適切なゲルは、例えば多糖類含有材料に基づくもの、例えばアルギン酸塩などである。例えば、アルギン酸ナトリウムなどのアルカリ金属アルギン酸塩は水溶性であるのに対し、アルギン酸カルシウムなどのアルカリ土類金属アルギン酸塩は水に不溶性であることが知られている。したがって、ゲルは、水溶性多糖類、特にアルギン酸塩などの天然多糖類から製造することができる。本発明によれば、好ましくは、水溶性多糖類を用いてゲルを形成することが可能である。これらの中でも、天然多糖類及び/又はその誘導体の使用は、その安定性、利用可能性、再生可能性、及び低毒性の点で特に魅力的である。
【0068】
本発明に関して、「水溶性」とは、水への溶解度が、ゲルを生成するのに使用できる溶液を形成するのに十分であることを意味する。本発明によれば、ゲルは、水溶性多糖類と適切な架橋剤とから形成される。本発明の方法に使用される多糖類は、架橋剤を用いてゲルを形成するのに適したものでなければならず、特に、適切な官能基を有していなければならない。寒天、アルギン酸、カラギーナン、セルロース、ヒアルロン酸、ペクチン、デンプン、キサンタンガムなどの天然多糖類、及び改質セルロース、キチン、キトサンなどの半合成多糖類が特に好ましい。
【0069】
本発明によれば、ヒドロゲルが形成され、該ヒドロゲルは、次いで溶媒交換を受ける。本発明によれば、水溶性多糖類は、好ましくは、寒天、アルギン酸、カラギーナン、セルロース、ヒアルロン酸、ペクチン、デンプン、キサンタンガム、改質セルロース、キチン及びキトサンからなる群から選択される。
【0070】
さらなる天然又は合成親水コロイド形成ポリマーは、水溶液系でゲル又は粘性溶液を形成する(部分的に)水溶性の天然又は合成ポリマーを含む。それらは、さらなる天然多糖類、その合成的に加工された誘導体、又は合成ポリマーから慎重に選択される。さらなる多糖類としては、例えば、カラギーナン、ペクチン、トラガカント、グアーガム、イナゴマメ種子粉、寒天、アラビアガム、キサンタンガム、天然及び加工デンプン、デキストラン、デキストリン、マルトデキストリン、キトサン、グルカン、例えばβ-カルボキシメチルセルロース、1,3-グルカン、β-1,4-グルカン、セルロース、ムコ多糖類、特にヒアルロン酸が挙げられる。合成ポリマーとしては、セルロースエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、合成セルロース誘導体、例えばメチルセルロース、カルボキシセルロース、カルボキシメチルセルロース、特にナトリウムカルボキシメチルセルロース、セルロースエステル、セルロースエーテル、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリメタクリレート(PMA)、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。これらのポリマーの混合物もまた使用することができる。
【0071】
反応温度は、0から100℃、好ましくは5から75℃、特に10から50℃の範囲であり得る。ゾル濃度、すなわち溶媒中の試薬の濃度は、0.25質量%から65質量%、好ましくは0.5質量%から60質量%、特に1質量%から10質量%の範囲であり得る。
【0072】
原則として、任意の溶媒(LM)は、二酸化炭素と混和性があること、又は結果として得られるゲルから溶媒を除去することが可能である十分な沸点を有することがある限り使用され得る。一般に、溶媒は、当該分野で知られている他の液体を使用することもできるが、低分子量の有機化合物、すなわち、1から6個の炭素原子、好ましくは2から4個の炭素原子を有するアルコールである。可能な溶媒の例としては、ケトン、アルデヒド、アルキルアルカノエート、ホルムアミド、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドンなどのアミド、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド、脂肪族及び脂環式ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化芳香族化合物、ならびにフッ素含有エーテルなどが挙げられる。上記化合物の2つ以上の混合物も可能である。
【0073】
他の有用な液体の例としては、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、アセトン、ジクロロメタン、イソプロパノール、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、プロピレンカルボネートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
溶媒のさらなる可能性は、アセタール、特にジエトキシメタン、ジメトキシエタン及び1,3-ジオキソランである。
【0075】
ジアルキルエーテル及び環状エーテルもまた、溶媒として適している。好ましいジアルキルエーテルは、特に2~6個の炭素原子を有するものであり、特にメチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、プロピルエチルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、プロピルイソプロピルエーテル、ジイソプロピルエステルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルイソブチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、エチルn-ブチルエーテル、エチルイソブチルエーテル、及びエチルt-ブチルエーテルである。好ましい環状エーテルは、特にテトラヒドロフラン、ジオキサン及びテトラヒドロピランである。溶媒としてアルデヒド及び/又はケトンが特に好ましい。溶媒として好適なアルデヒド又はケトンは、特に、一般式R2-(CO)-R1に対応するものであり、式中、R1及びR2は、それぞれ水素であるか、又は1、2、3、4、5、6又は7個の炭素原子を有するアルキル基である。好適なアルデヒド又はケトンは、特にアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソペントアルデヒド、2-メチルペントアルデヒド、2-エチルヘキサアルデヒド、アクロレイン、メタクロレイン、クロトンアルデヒド、フルフラール、アクロレイン二量体、メタクロレイン二量体B、1,2,3,6-テトラヒドロベンズアルデヒド、6-メチル-3-シクロヘキセンアルデヒド、シアノアセトアルデヒド、エチルグリオキシレート、ベンズアルデヒド、アセトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn-ブチルケトン、メチルペンチルケトン、ジプロピルケトン、エチルイソプロピルケトン、エチルブチルケトン、ジイソブチルケトン、5-メチル-2-アセチルフラン、2-アセチルフラン、2-メトキシ-4-メチルペンタン-2-オン、5-メチルヘプタン-3-オン、2-ヘプタノン、オクタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、及びアセトフェノンなどが挙げられる。
【0076】
また、上述したアルデヒドやケトンを混合物の形態で使用することもできる。多くの場合、特に好適な溶媒は、上記溶媒から選択される2つ以上の完全に混和性のある化合物を使用することによって得られる。
【0077】
したがって、さらなる実施形態によれば、本発明は、溶媒(LM)がメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール及びヘキサノールからなる群から選択される、上述したようなゲル粒子を乾燥させる方法に関する。
【0078】
さらに、本発明によれば、1つ以上の補助剤が懸濁液中に存在してよい。補助剤としては、充填剤、緩衝物質などのpH調整剤、安定剤、共溶媒、薬学的及び美容学的に慣用的な又は他の染料及び顔料、防腐剤、栄養補助食品、ビタミン、活性剤、可塑剤、滑剤及び潤滑剤が挙げられる。
【0079】
本発明の方法はまた、更なる工程、例えば好適な処理工程を含むことができる。
【0080】
超臨界抽出の終了時には、適切な時間消費と組み合わせて最適な材料特性を可能にする速度で圧力が解放され、粒子がカラムから除去される。
【0081】
本発明による方法によれば、改善された粒子径及び気孔率を有するエアロゲル粒子を得ることができることが見出された。特に、高表面積と高細孔容積を有する安定で乾燥した高多孔質エアロゲル粒子が得られる。
【0082】
バルブを介したLTSCD方法による乾燥後の温度感受性物質の連続減圧は、現在存在しない、なぜなら、ジュールトムソン効果を補償するために、減圧前にエアロゲル粒子-CO流を強く加熱しなければならないからである。提示した方法では、適切な温度でより長い距離にわたって加熱が行われるため、エアロゲル製品が受ける最高温度を低減することが可能となる。
【0083】
連続バルブフリー減圧は知られているが、これまで多孔質材料には使用されていなかった。特にエアロゲルの場合、細孔構造を得るために必要とされる先行技術で規定されている低い減圧率のため、連続減圧は可能ではないように思われた。エアロゲルのバルブフリー連続減圧により、LTSCD方法によるエアロゲルの真に連続的な製造方法が初めて可能となった。これは、別個の大容量の排出容器を必要としないことを意味する。バルブフリー減圧はまた、粒子の減圧のためのバルブの使用に伴う摩耗及びブロッキングの問題が回避されるという結果を有する。
【0084】
本発明の方法で得られる生成物は、体積比で少なくとも70%の気孔率を有する多孔質エアロゲルから形成されたマイクロメートルサイズの粉末である。粒子の大きさは一般に様々であり得、粒子の大きさは20μmから1000μmの範囲である。本発明によって得られるエアロゲルは、無機エアロゲル又は有機エアロゲルであり得る。
【0085】
さらなる実施形態では、エアロゲルは、約2nmから約100nm、例えば、5nmから55nmの範囲内、又は10nmから50nmの範囲内の平均細孔径を有する。さらなる実施形態では、乾燥ゲル材料の平均細孔径は、約4nm、約6nm、約8nm、約10nm、約12nm、約14nm、約16nm、約18nm、約20nm、約25nm、約30nm、約35nm、約40nm又は約45nm、約50nm又は他に約55nmであり得る。本発明の文脈において、表面積、細孔サイズ及び細孔容積は、特に明記されていない限り、ISO 9277:2010に従ってBETにより測定された。この国際規格は、Brunauer-Emmett-Teller(BET)法による物理的に吸着したガスの量の測定によって、分散体(例えば、ナノ粉体)又は多孔質固体の外部の比表面積と内部の比表面積との合計を決定する方法について規定している。これは、1984年及び1994年の国際純粋応用化学連合(IUPAC)の推奨を考慮している。
【0086】
さらなる態様によれば、本発明は、したがって、ゲル粒子が2から100nmの範囲の平均細孔径を有する、上述したようなゲル粒子を乾燥させる方法に関する。
【0087】
さらなる態様によれば、本発明はまた、上述したようなゲル粒子を乾燥させる方法によって得ることができる又は得られたエアロゲル粒子に関する。
【0088】
本発明の方法によって得られた又は得ることができるエアロゲル粒子は、様々な用途に適している。
【0089】
本発明はまた、粉状ナノ多孔質材料を含む建築材料及び真空断熱パネル、並びに断熱材のための粉状ナノ多孔質材料の使用にも関する。本発明により得られる材料は、好ましくは、特に建物の熱に関する絶縁のため、又は、特に移動輸送用途又は固定用途、例えば移動用途の冷却装置の保冷に関する絶縁のために使用される。繊維は、機械的補強の添加剤として使用され得る。
【0090】
さらなる態様によれば、本発明はまた、医療及び医薬用途のための、食品のための添加剤又は添加剤の担体材料としての、触媒担体としての、化粧品、衛生、洗浄及びクリーニング用途のための、センサー製造のための、断熱材のための、又はVIPのコア材料としての、上述のようなゲル粒子を乾燥させる方法によって得ることができる又は得られたエアロゲル粒子の使用に関する。
【0091】
本発明のさらなる実施形態は、特許請求の範囲及び実施例に見出すことができる。本発明による主題/方法の特徴、又は上記に列挙され、以下に説明される本発明による使用の特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれの場合において特定された組合せだけでなく、他の組合せにおいても使用できることが理解されるであろう。したがって、例えば、好ましい特徴と特に好ましい特徴との組み合わせ、又は、さらに特徴づけられていない特徴と特に好ましい特徴などの組み合わせも、この組み合わせが明示的に言及されていないとしても、暗黙的に包含される。
【0092】
本発明の例示的な実施形態を以下に列挙するが、本発明を限定するものではない。本発明はまた、特に、従属の参照から生じるそれらの実施形態、それゆえ以下に特定される組み合わせを包含する。
【0093】
1.ゲル粒子を乾燥させるための方法であって、該方法は、
(i)ゲル粒子(P1)と溶媒(LM)を含む懸濁液を提供する工程と、
(ii)前記懸濁液を二酸化炭素が向流で流れるカラムに導入する工程と、
(iii)前記カラムから乾燥したエアロゲル粒子を除去する工程と、
を含み、
前記懸濁液は前記カラムの頂部領域に導入され、前記乾燥したエアロゲル粒子は前記カラムの下部領域で除去され、
前記カラムの圧力及び温度は、二酸化炭素と溶媒の混合物が実質的に超臨界、又は超臨界であるように設定される、方法。
【0094】
2.前記ゲル粒子が向流中で沈降する、実施形態1による方法。
【0095】
3.得られた前記エアロゲル粒子は、バルブフリー方式で連続的に除去される、実施形態1及び2による方法。
【0096】
4.CO質量流量は乾燥したエアロゲル粒子が得られるように設定される、実施形態1~3のいずれか1つによる方法。
【0097】
5.CO質量流量は0.75kg/時間から25t/時間の範囲に設定される、実施形態1から4までのいずれか1つによる方法。
【0098】
6.前記ゲル粒子は、20μmから1000μmの範囲の平均直径を有する、実施形態1から5のいずれかに1つによる方法。
【0099】
7.前記ゲル粒子は、2から100nmの範囲の平均細孔径を有する、実施形態1から6までのいずれか1つによる方法。
【0100】
8.前記溶媒(LM)は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール及びヘキサノールからなる群から選択される、実施形態1から7のいずれか1つによる方法。
【0101】
9.実施形態1から8のいずれか1つによる方法によって得ることができる又は得られたエアロゲル粒子。
【0102】
10.ゲル粒子を乾燥させるための方法によって得ることができる又は得られたエアロゲル粒子であって、該方法は、
(i)ゲル粒子(P1)と溶媒(LM)を含む懸濁液を提供する工程と、
(ii)前記懸濁液を二酸化炭素が向流で流れるカラムに導入する工程と、
(iii)前記カラムから乾燥したエアロゲル粒子を除去する工程と、
を含み、
前記懸濁液は前記カラムの頂部領域に導入され、前記乾燥したエアロゲル粒子は前記カラムの下部領域で除去され、
前記カラムの圧力及び温度は、二酸化炭素と溶媒の混合物が実質的に超臨界、又は超臨界であるように設定される、エアロゲル粒子。
【0103】
11.前記ゲル粒子が向流中で沈降する、実施形態10によるエアロゲル粒子。
【0104】
12.得られた前記エアロゲル粒子は、バルブフリー方式で連続的に除去される、実施形態10又は11によるエアロゲル粒子。
【0105】
13.CO質量流量は乾燥したエアロゲル粒子が得られるように設定される、実施形態10から12のいずれか1つによるエアロゲル粒子。
【0106】
14.CO質量流量は、0.75kg/時間から25t/時間の範囲に設定される、実施形態10から13のいずれか1つによるエアロゲル粒子。
【0107】
15.前記ゲル粒子は、20μmから1000μmの範囲の平均直径を有する、実施形態10から14のいずれか1つによるエアロゲル粒子。
【0108】
16.前記ゲル粒子は、2から100nmの範囲の平均細孔径を有する、実施形態10から15のいずれか1つによるエアロゲル粒子。
【0109】
17.前記溶媒(LM)は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール及びヘキサノールからなる群から選択される、実施形態10から16のいずれか1つによるエアロゲル粒子。
【0110】
18.医療及び医薬用途のための、食品のための添加剤又は添加剤の担体材料としての、触媒担体としての、化粧品、衛生、洗浄及びクリーニング用途のための、センサー製造のための、断熱材のための、又はVIPのコア材料としての、実施形態10から17のいずれか1つによるエアロゲル粒子の使用、又は実施形態1から8のいずれか1つによる方法によって得られた又は得ることができるエアロゲル粒子の使用。
【0111】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0112】
実施例
I.構成例
いくつかの概略的な計算と構成例を以下に示す。以下の構成では、運転条件(120バール、50℃)と粒子特性(粒子の気孔率ε=0.93、ねじれ率τ=2.5)は一定であると仮定されている。以下では、スループットも初期は非常に低いと想定されており、つまり流体相は純粋なCOで近似的に表されている。
【0113】
1.乾燥時間の計算
様々な直径の粒子の乾燥時間を、1次元の物質移動を仮定して、シミュレートした。流体(COとエタノール)の物理変数は、適切な混合則を有するPeng-Robinson状態方程式を用いてモデル化した。粒子は、気孔率ε=0.93(Vpores=8cm/gに相当)とねじれ率τ=2.5を介して表されている。
【0114】
1.1 粒子内の拡散
以下の乾燥時間(表1)を、律速段階が粒子内での拡散であると仮定して計算した。粒子から周囲の流体相への物質移動は非常に大きいと仮定された。5μmの大きな粒子の乾燥時間はわずか数ミリ秒であり、100μmまでの範囲では1秒未満である。
【0115】
【表1】
【0116】
1.2 物質移動の考慮
表2に示した乾燥時間は、粒子から周囲の流体相への物質移動を考慮したものである。平均物質移動係数は、単一球体のSh相関に基づいて計算された。興味深いことに、物質移動係数は粒子径のみの関数であり、流速の関数ではない、なぜなら、相対速度、したがってReは一定であり、粒子が排出されると変化するだけだからである。
【0117】
【表2】
【0118】
物質移動係数が無限と仮定した場合に対する、物質移動を考慮した場合の乾燥時間の相対的な変化は、小さい粒子径で最大になり、粒子径が大きくなるにつれて小さくなる。しかし、絶対的乾燥時間の変化は比較的少なく、乾燥時間は同程度のオーダーを維持する。
【0119】
2.粒子の排出:CO 質量流量と粒子径
乾燥時間の他に、向流カラムでの連続超臨界乾燥のもう1つの重要な態様は、粒子の流体力学と関連する滞留時間である。粒子の下降速度は、アルキメデス数とレイノルズ数の関係で表すことができる。ストークス領域とニュートン領域の間の遷移領域については、MARTINに従って以下が適用される:
【数1】
【0120】
Re数から計算される(下降)速度は、粒子と周囲の流体の間の相対速度を表し、粒子径に依存する。したがって、上向きのCO流の大きさにより、粒子の絶対降下速度が減少するか、又は粒子がカラムの頂部を経由してCO流とともに排出される。
【0121】
内径d=20.57mm、したがって自由断面積A=3.32E-04m、カラム高さ500mmのカラムについて、様々な直径のアルギン酸塩エアロゲル粒子の計算された滞留時間が、様々なCO質量流量について表3にまとめられている。これは、湿潤粒子と完全乾燥粒子からなる粒子の平均見かけ密度に基づいている。
【0122】
【表3】
【0123】
エアロゲル粒子の気孔率は、CO流中の粒子の理論的な下降速度と滞留時間に大きな影響を与える。表4からわかるように、比較的低い気孔率には、より小さな粒子も排出されることなく乾燥することができ、そして/又は、より高いCO流量(すなわち、より高い粒子スループット)を同じカラム高さにおいて選択することができる。
【0124】
【表4】
【0125】
3.所要乾燥時間/滞留時間の比に対する質量流量の影響
当然のことながら、カラムの長さを設定する場合、乾燥時間に対する滞留時間の比は1を超える必要がある。表5はカラム高さ500mmの場合の滞留時間/乾燥時間の比を示す。直径500μmの粒子は、0.5kg/時間~3kg/時間のCO質量流量では、完全に乾燥しない。これは、COの質量流量をさらに増加させれば相殺することができるが、ただし、より小さな粒子が排出されることになる。あるいは、カラムの高さを長くすると滞留時間が比例して増加し、滞留時間/乾燥時間比が比例して増加する。カラムの高さを例えば1mに倍増すると、滞留時間/乾燥時間の比率が倍増し、直径d=500μmの粒子はより小さな粒子が排出されることなく乾燥する。
【0126】
【表5】
【0127】
【表6】
【0128】
4.乾燥に及ぼす粒子装荷の影響
前の大まかな計算では、ほぼ純粋なCOが出口にも存在する、すなわち、非常に低い粒子装荷だけで運転されると仮定されていた。産業用途において、向流運転の狙いは、エアロゲル1kgあたりのCO使用量を削減するために、エタノール(EtOH)を可能な限り多く含むCO流をカラムの頂部から取り出すことである。そのためには、乾燥時間の延長を、対応するカラム高さの増加によって補う必要がある。例えば、表6に示されている、高さ1mのカラムで500μmの粒子を1l/時間で乾燥させるには、1kg/時間以下のCO質量流量では達成されない(表7参照)。しかし、カラムを3mに増加すると、1kg/時間のCOで乾燥が達成され、64%(質量比)のEtOHの高い排出比率を維持することができる。
【0129】
【表7】
【0130】
II.実施例
乾燥方法の原理的な実現可能性はパイロットプラントで実証できた。
【0131】
エタノール中に50~300μm(14%(体積比))の直径を有するアルギン酸ゲル粒子の懸濁液を23ml/分で保存容器から長さ0.5m、内径d=20.6mmのカラムの頂部に搬送した。運転圧力120バール、運転温度50℃で、超臨界COを40g/分で粒子流に対して向流で搬送した。実験後、捕集容器を減圧した。
【0132】
ゲル粒子はCO流に逆で沈降し、遊離エタノールは、COよりも同様に高いエタノール-CO混合物の密度にもかかわらず、CO-エタノール混合流の頂部を介して排出される。移動床に比べて粒子の比較的短い滞留時間は、驚くべきことにエアロゲル粒子の完全な乾燥をもたらした。捕集容器に落下した粒子は、9.4cm/gの細孔容積と500m/gのBET表面積を有し、同じゲル化方法で製造され、バッチで乾燥されたエアロゲル粒子と同様の特性を有する。