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特許7500092PV層シーケンスを作り出すための室温印刷方法およびこの方法を使用して得られるPV層シーケンス
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  • 特許-PV層シーケンスを作り出すための室温印刷方法およびこの方法を使用して得られるPV層シーケンス 図1a
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】PV層シーケンスを作り出すための室温印刷方法およびこの方法を使用して得られるPV層シーケンス
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0352 20060101AFI20240610BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20240610BHJP
   H01L 31/042 20140101ALI20240610BHJP
【FI】
H01L31/04 340
H01L31/04 422
H01L31/04 440
H01L31/04 500
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022117478
(22)【出願日】2022-07-22
(62)【分割の表示】P 2019523162の分割
【原出願日】2017-07-11
(65)【公開番号】P2022163082
(43)【公開日】2022-10-25
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】102016008383.2
(32)【優先日】2016-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517296961
【氏名又は名称】ダイナミック ソーラー システムズ アクツィエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】DYNAMIC SOLAR SYSTEMS AG
【住所又は居所原語表記】Friedrich-Ebert-Anlage 49,60308 Frankfurt,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】リンダー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】リンダー,パトリック
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-317534(JP,A)
【文献】特開平04-207085(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0153027(US,A1)
【文献】国際公開第98/015983(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0157702(US,A1)
【文献】米国特許第04614835(US,A)
【文献】特表2013-504861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H01L 31/18-31/20
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PV層シーケンスを作り出すための方法であって、印刷方法によって
- 室温で、
- 無機コア成分が
- 水溶液および/または水分散液を使用して処理されて、
電極を介して接触が形成され得る完全なPV層シーケンスを得る、方法において、前記方法が以下のステップを含むこと、すなわち
- ステップa)で、少なくとも2つの元素からなる、最大サイズ30±15マイクロメートルの半導電粒子(100)が水性反応溶液(200)中に分散され、酸化または還元によって部分的に溶かされ、キャリア(300)の領域にわたって塗布され、
- ステップb)で、前記反応溶液(200)は、体積収縮で硬化反応溶液層(201)に変換され、前記粒子(100)は、前記硬化反応溶液層(201)を越えて突出し、前記反応溶液層(201)中に固定された底部側と前記反応溶液層(201)を越えて突出する上側とを有し、
- ステップc)で、前記粒子の前記上側は、少なくとも部分的に上側接触部(400)を設けられ、
前記ステップa)で酸化されたいくつかの複数の前記粒子(100)は、少なくとも1つの塩基性の前記水性反応溶液(200)によって酸化された粒子であり、前記ステップa)で還元されたいくつかの複数の前記粒子(100)は、少なくとも1つの酸性の前記水性反応溶液(200)によって還元された粒子であることにより、前記複数の前記粒子(100)は、還元処理された粒子の領域(102)および酸化処理された粒子の領域(103)として領域セクションを形成することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、さらなる方法ステップで、鎖状、網状、網状管からなる群から選択される少なくとも1つの構造を含むナノスケール構造が前記上側の領域セクションである、少なくとも1つの領域セクションの粒子(100)と直接接触して形成されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、少なくとも1つのさらなる方法ステップで、少なくとも1つのキャリア電極(301)および/または上側接触(400)を含む電極は、2次元材料に準備的に塗布され、最終的に前記2次元材料内で前記PV層シーケンスに接着されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の方法において、前記PV層シーケンスのために使用される前記キャリアは、連続的な、平らな材料のシートを含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の方法において、粉砕された50マイクロメートル以下の粒径を有する粒子(100)が使用されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の方法において、粉砕された30±15マイクロメートルの粒径を有する粒子が使用されることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至の何れか一項に記載の方法において、粉砕された0.5~10マイクロメートルの粒径を有する粒子が使用されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1乃至の何れか一項に記載の方法において、ステップa)で、最大サイズ30±15マイクロメートルの半導電SiC粒子(100)が、緩やかなガスの発生を伴って、水酸化ナトリウムでアルカリ化されたシリカ溶液からなる水性反応溶液(200)中に分散され、酸化によって部分的に溶かされ、予め塗布されたキャリア電極(301)を有するフィルムキャリアおよび/または紙キャリア(300)のセクションの前記領域にわたって塗布され、
- ステップb)で、前記反応溶液(200)は、体積収縮で硬化反応溶液層(201)に変換され、前記粒子(100)は、前記硬化反応溶液層(201)を越えて突出し、前記反応溶液層(201)中に固定された底部側と前記反応溶液層(201)を越えて突出する上側とを有し、
- 上側領域セクションは、酸化的または還元的に調整され、それによって還元処理された粒子(102)の領域または酸化処理された粒子(103)の領域が定められ、次に、
- 鎖状、網状、網状管からなる群から選択される少なくとも1つの構造を含むナノスケール構造が、少なくとも1つの領域セクション中の粒子(100)と直接接触して形成され、
- 前記ステップa)で酸化されたいくつかの複数の前記粒子(100)は、少なくとも1つの塩基性の前記水性反応溶液(200)によって酸化された粒子であり、前記ステップa)で還元されたいくつかの複数の前記粒子(100)は、少なくとも1つの酸性の前記水性反応溶液(200)によって還元された粒子であることにより、前記複数の前記粒子(100)は、還元処理された粒子(102)の領域(102)および酸化処理された粒子(103)の領域(103)として領域セクションを形成し、
- ステップc)で、前記粒子の前記上側は、少なくとも部分的に上側接触部(400)を設けられ、前記粒子(100)の交互に調整された前記領域セクションは、直列に接続され、最終的な接触電極に接着される
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法において、前記接触電極は、埋込みフィルムの内側に印刷および/または配置され、前記方法によって得られた前記PV層シーケンスは、前記埋込みフィルム中に積層されて、埋込み材料から導かれる電気的接触を作り出すことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野は、一般に「電気的薄層」という用語で説明することができる。この種の薄層は、マイクロメートルの端数から数百マイクロメートルの厚さを有し、電力の生産、処理、制御、調節、測定および伝導に用途を見いだす。
【0002】
具体的には、本発明は、電流が光子から作り出される、光起電力の電気システムに基づいている。「光起電力」は、ここで-および以下同様に-簡単に「PV」と略される。本出願人は、長い間PV分野における複数の関連会社の従業者であった。実例として、この財産権のファミリで引用され探求された文献とともに、ここに関連する技術的PV分野における印刷システムのための基本的な技術的背景とみなすことができる、国際公開第2014-019560 A1号パンフレットを参照する。
【0003】
既知の確立されたシステムから進んで、本出願人は、これらが最小の生産コストでロバストかつ長期的な方式でPVエネルギーを生成し、処理し、貯蔵し、利用することができるように、方法および生成物を研究し開発した。実例として、それらの技術的教示が本発明の基盤であり関連する知識および能力の有意義な概観を与える、独国特許第10 2015 102 801.8号明細書、独国特許第10 2015 01 54 35.4号明細書、独国特許第10 2015 01 56 00.4号明細書および独国特許出願公開第10 2016 002 213.2 A号明細書の財産権のファミリを参照する。準備として、従来技術を踏まえた前述の財産権の教示および核心を以下に簡潔に概説する。
【背景技術】
【0004】
本発明は、PV層シーケンスを作り出すための室温法に関し、独立請求項の前文に記載の方法に基づくPV層シーケンスに関する。
【0005】
本発明の不可欠な構成要素は、水分散液および溶液を用いた室温における無機コア成分の製造であることが分かっている。
【0006】
無機コア成分は、対応する有機システムよりもかなり長い有効寿命を有する。有機PV層シーケンスが数日から数か月の間持続するのに対して、最大30年のシミュレーションされた寿命での標準化された空調室試験における無機のPV活性成分は、初期性能の少なくとも90%を常に示し、対応する試験は、有機修飾剤、助剤および添加剤、例えば、PV活性薄層組合せのガラス-ガラスキャリアまたは有機繊維複合キャリアのための重合体埋込み材料によって失敗したが、金属製給電線を有する発電コア成分は、極端に外気にさらされ見苦しい全体的な生成物にもかかわらず、望ましい機能を果たし続けて発電した。本発明者らは、これを、当然重合体または有機炭化水素化合物を何も含まないPV層シーケンスのコア成分の無機的性質に起因すると考える。
【0007】
室温法は、層の形成および確立のために化学反応エネルギーを導入する反応システムによって可能にされた。「室温」は、工業的製造のための通常の温度範囲を含み、それは、工場の場所によって、ゼロを超えた摂氏数度から摂氏80度の間とすることができる。室温で進行する反応は、既知の圧縮および/または焼結ステップと比較して、より広い、場合によっては極端に異なるバンドギャップ構造を提供することがここで分かった。したがって、狭い波長範囲窓で温水からの接触熱放射を電力に具体的に変換することができる層構造を作り出すことが初めて可能であった。
【0008】
水分散液および溶液は、PV市場で確立されていない。作り出すことが難しい通常のシリコンウエハは、湿気と両立できない。特に、導電ペーストおよび導電性の塗布可能な電極材料の供給者は、被覆または蒸着ステップと並行して少なくとも150℃において真空システム中で最終的に圧縮および焼結され得る、完全に無水のシステムを提供するという要求に直面することが多い。発明者らは、これが、水性ペーストに基づく既知の印刷システムおよび印刷溶液がここで使用されない理由であると確信している。しかしながら、「室温」の尺度と組み合わせると、このような古い方法は、予想に反して、用途を見いだすことができる。PV活性半導体、金属-非金属化合物および金属-金属カルコゲン化物ならびに金属-金属ハロゲン化物化合物は、それらが水分散液または溶液中で処理され印刷されたときでさえも、摂氏100度未満の温度で十分に安定していることが分かる。
【0009】
ここで既知の印刷システムおよび印刷溶液は、前述の出願に引用され、同様に、例えば、印刷関連文献独国特許出願公開第122 1651 A号明細書、独国特許第2012 651 B号明細書、独国特許第2529 043 B2号明細書、独国特許出願公開第10004997 A号明細書、独国特許第1 907 582 B号明細書、独国特許出願公開第2 017 326 A号明細書、独国特許発明第23 45 493 C2号明細書、英国特許出願公開第1 449 821 A号明細書、独国特許出願公開第27 33 853 A号明細書、独国特許出願公開第34 47 713 A号明細書、特開平043 688 87 A号公報、特開平06 001 852 A号公報および独国特許出願公開第43 22 999 A1号明細書に開示される、手段、特徴ならびに修飾剤および助剤を含む。特に、独国特許発明第197 20 004 C1号明細書は、この文献が、電気工学目的の現在開発されている反応性印刷手段と並行して考慮され得、既知の印刷手段を用いた反応性印刷システムの実現性の技術的論証を与える、インクジェット印刷方法における相互に整合した反応性カラーインクの連続的な使用を開示しているから、ここで言及するに値する。
【0010】
しかしながら、本発明者らは、室温で接触接続を実際に完成させる電気入出力線を含む完全な無機PV層シーケンスの生産に一貫して依存する、競合業者からの前文によるタイプの印刷方法を何も知らない。
【0011】
不都合なことに、従来技術は、PV層シーケンスの構成要素として、有害な有機溶媒を含有し、および/または有毒な重金属、例えば鉛、カドミウムまたはセレンを含み、および/または電流受け取り導体および完全な接触接続を含むPV活性層シーケンスが存在する前におよそ100℃以上の温度で焼結/圧縮されなければならない、ペーストまたは材料を常に想定する。電極を含む完全なPV層シーケンスを室温において適切な形で得ることができる、完全かつ最終的な教示を開示している文献はない。さらなる不都合は、確立されたPV層シーケンスが、PV活性を確実に提供することが可能であるために、コストのかかる非常に純粋な出発原料に常に頼らなければならないことである。
【0012】
より具体的には、底部側第1電極が第1の側でPV活性層と接触接続されなければならず、第2の側が上側対向電極によって反対側として接触接続されなければならない、PV層シーケンスの従来的な層構造は、不都合であることが分かる。PV活性層中の細孔、ピンホールおよび割れ目は、液体またはペーストシステムが割れ目および欠陥を介して2つの電極層を互いに短絡させることがあるので、液体またはペーストシステムとの上側接触接続を事実上不可能にし、それは、PV活性が大きな2次元範囲でもはや実行可能に電力に変換できないことを意味する。PV電流は、短絡/割れ目を通ってPV活性層の反対側に直接流れ、もはや利用可能でなく、層は、PV電流の結果として熱くなり、電気的摩耗は、影響を受ける領域をかなり老朽化させ早々に風化させる。
【0013】
したがって、本発明の目的は、従来技術の不都合を克服し、室温での工業的処理、無機コア成分、ならびに水溶液および/または水分散液の使用にもかかわらず、完成した、接触接続可能な層複合物の一部として完全なPV層シーケンスを提供する、方法およびその方法によるPV層シーケンスを提供することであった。
【0014】
この目的は、独立請求項に記載の特徴によって達成される。有利な実施形態は、従属請求項および以下の説明から明らかになろう。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、PV層シーケンスを作り出すための方法であって、
印刷方法によって、-室温で、-無機コア成分が水溶液および/または水分散液を使用して処理されて、電極を介して接触が形成され得る完全なPV層シーケンスを得る、方法において、この方法が以下のステップを含むこと、すなわち、ステップa)で、少なくとも2つの要素からなる、サイズ0.5~100マイクロメートルの半導電粒子100が水性反応溶液200中に分散され、酸化または還元によって部分的に溶かされ、キャリア300の領域にわたって塗布され、ステップb)で、反応溶液200は、体積収縮で硬化反応溶液層201に変換され、ここで粒子100は、硬化反応溶液層201を越えて突出し、反応溶液層201中に固定された底部側と反応溶液層201を越えて突出する上側とを有し、ステップc)で、粒子の上側は、少なくとも部分的に上側接触部400を設けられることを特徴とする方法を提供する。
【0016】
本発明のPV層シーケンスは、上述の方法によって得られ、領域セクションでキャリア上に印刷されそれらのPV特性が付随する化学反応によって調節される粒子100を特徴とする。
【0017】
発明および有利な特徴の説明
PV層シーケンスの生産のための本発明の方法は、すでに開発されたものを踏まえて、最初は、印刷方法によって水溶液および/または水分散液を使用して室温で無機PV活性コア成分を処理して、アクセプタ電極を介して接触接続可能な完全なPV層シーケンスを与えることを想定する。
【0018】
不可欠なことは、本方法が以下のステップを含むことであり、ステップa)で、少なくとも2つの要素からなる、サイズ0.5~100マイクロメートルの半導電粒子100が水性反応溶液200中に分散され、酸化または還元によって部分的に溶かされ、キャリア300の領域にわたって塗布される。少なくとも2つの要素からなるPV活性材料は、部分的溶解によって活性化され、その化学量論比が変更される。結果として、以前は均等で同一のドーピングまたは組成物は、薄い外層でかなりの改変を受ける。この改変は、室温で速度論的に制御され、最も速くアクセス可能な相および化合物が形成され、それにより、本質的に少なくとも準安定であり、熱力学的に安定した生成物とかなり異なる生成物がもたらされる。
【0019】
ステップb)で、反応溶液200は、体積収縮で硬化反応溶液層201に変換される。層は、粒子間の空隙容積が水性反応溶液によって本質的に満たされた分散液として予め作り上げられ印刷されていた。したがって、体積収縮の結果、溶液が最初ある程度沈み粒子100の一部を露出させることになる。再形成された準安定相は固定され、粒子100はキャリア300にしっかりと固定される。粒子100は、最終的に硬化反応溶液層201を越えて突出する。したがって、最終結果は、粒子が反応溶液層201中に固定された底部側と反応溶液層201を越えて突出する上側とを有することになる。ここで付随する反応は徐々に停止し、反応溶液200との接触が長いほど、硬化中の溶解反応が進行している。本発明者らは、この反応的調整が、少なくとも上側で、硬化中の接触時間を反映する粒子中の勾配を作り出し、それがPV活性を促進しアクセス性を改善すると仮定する。
【0020】
ステップc)で、粒子100の上側は、少なくとも部分的に上側接触部400を設けられる。
【0021】
このようにして得られたPV層シーケンスは、具体的な実施例でSiC粒子を用いて、数百ミリボルトの使用可能電位差を示す。本発明者らは、これが、反応中に作り出される粒子100の外表面からの準化学量論的化合物および欠陥に起因すると考えられる、バンドギャップ内の追加のエネルギー準位によって解説され得ると仮定する。したがって、最初は均質的な粒子として導入され、反応的にかつ特許請求された方法に従って印刷されて、それらの化学量論比を変更する、原則として知られているPV活性材料の組合せを使用して、特に単純で安価な方式でPV活性層シーケンスを作り出すことが可能である。確立された可能なPV活性材料の組合せの例を独国特許発明第39 36 666 C2号明細書に実例として見いだすことができ、同じように、既知の金属-金属酸化物および金属-金属ハロゲン化物の組合せが上述のように用途を見いだすことができる。
【0022】
好ましくは、本方法は、粒子100が、少なくとも1つの追加のステップで、少なくとも1つの表面セクションにおいて酸化または還元調整され、それによって還元処理された粒子102の領域または酸化処理された粒子103の領域が定められることを特徴とする。具体的な実施例で、SiC粒子中で、酸化/塩基性または還元/酸性の調整によって、実体的な光電流の符号を反転させることが可能であった。ここでは、暗闇で光なしで同様に進行する純粋に電気化学的な方法を引き起こすことになる暗電流を何も測定することができなかった。本発明者らは、バンドギャップ内の少なくとも2つの準位が酸化または還元手段によってここであふれるかまたは空にされており、その結果、2つのエネルギー準位間の大多数の電荷キャリアの性質が調整に従ってアクセプタ伝導またはドナー伝導に調節されると仮定する。
【0023】
好ましくは、本方法は、さらなる方法ステップで、鎖状、網状、網状管からなる群から選択される少なくとも1つの構造を含むナノスケール構造が、好ましくは上側の領域セクションである、少なくとも1つの領域セクションの粒子100と直接接触して形成されることを特徴とする。異なる長さの原子鎖または分子鎖への電気的結合によって、エネルギー準位を付加的に修正することが可能である。具体的な実験で、反応溶液200中のカーボンブラック、カーボンナノチューブならびに鎖形成ハロゲンおよび金属ハロゲン化物に基づく添加物は、PV層シーケンスのPV活性が検出可能である、より広くかつ改善された波長範囲をもたらした。これは、粒子の外側をナノチューブおよび鎖と電気的に接触させて改変することによって合理的に解説することができる。
【0024】
好ましくは、本方法は、粒子100の相互に隣接する領域セクションが、異なる溶液で調整されて、次に還元処理された粒子102のセクションおよび酸化処理された粒子103のセクションとして交互シーケンスで粒子100の相互に隣接する領域セクションを形成することを特徴とする。より好ましくは、領域は、それぞれ組合せとして形成されて互いに小さい距離で配置され、それを用いて、上側接触部400が特に単純な方式で部分領域の直列接続を提供することができる。このようにして、部分領域を互いに組み合わせて、PV活性の電位が加算的であるカスケードを形成することが可能である。実用的な実験では、木製のキャリア300上の配置で、これは、専ら上側でカスケード接続されて、1~2ボルトの印刷された粒子状PV層の実体的な電圧をもたらした。
【0025】
好ましくは、本方法は、少なくとも1つのさらなる方法ステップで、少なくとも1つのキャリア電極301および/または上側接触層400を含む電極が、2次元材料に準備的に塗布され、最終的に2次元材料を通してPV層シーケンスに接着されることを特徴とする。この目的で、空気乾燥および/または反応的硬化電極溶液を透明フィルム上に印刷することが特に優先され、次いで印刷されたPV活性層に特定の位置で2次元にフィルムが接着される。
【0026】
好ましくは、本方法は、PV層シーケンスのために使用されるキャリアが、連続的な、平らな材料のシート、好ましくはフィルムのシートおよび/または紙のシート、より好ましくは麻紙のシートを含むことを特徴とする。麻には、それが流酸塩を使用しない方式で製造され得るという利点があり、追加の湿気防止剤および/または殺生物剤を与えられると、このような麻紙は、黄変または著しい機械的劣化またはその特性のどんな低下もなく、有利に高温に耐えることができる。
【0027】
好ましくは、本方法は、粉砕された、好ましくは機械的に粉砕された、50マイクロメートル以下の粒径を有し、好ましくは30±15マイクロメートルの粒径を有し、より好ましくは0.5~10マイクロメートルの粒径を有する粒子100が使用されることを特徴とする。機械的に粉砕された粒子は、コーナーおよびエッジを有し、それらは、印刷方法において改善された方式でキャリア中に押し込んでキャリア上に固定することができる。
【0028】
好ましくは、本方法は、接触電極が埋込みフィルムの内側に印刷および/または配置され、本方法によって得られたPV層シーケンスが埋込みフィルム中に積層されて、埋込み材料から導かれる電気的接触を作り出すことを特徴とする。これにより、独国特許出願公開第40 18 013 A号明細書に電極線について同様に説明されるように、モジュール全体の同時形成および接触接続が特に効率的に可能になる。
【0029】
さらなる利点および有利な手段は、実施例および以下の説明から明らかになろう。実施例は、限定的なものとみなすべきではない。説明される追加の特徴および追加の手段、ならびに従来技術から知られている追加の有利な手段および追加の手段は、本発明の範囲を逸脱することなく独立請求項の範囲内で特許請求された主題において有利に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1a図1aは、反応溶液200中に粒子100を含む層がキャリア300に塗布されている、方法のステップa)の結果を概略図で例示する。
図1b図1bは、反応溶液200がより薄い層、すなわち硬化反応溶液201に硬化されている、方法のステップb)の結果を概略図で例示し、ここで、粒子100は、それらの下側でキャリア300上に硬化層によってすでに固定されており、それらの上側で硬化反応溶液201から突出する。
図1C図1Cは、上側接触部400の最終的な塗布後の図1a)および1b)による層を概略図で例示する。
図2図2は、キャリア300上に硬化反応溶液201を用いた方法によって固定されている、上側101と還元処理された底部側102とを有する粒子100を概略図で例示する。
図3図3は、底部側対向電極(図示されない)を有する単純なPV層シーケンスにおける図2による粒子100の印刷された部分領域の配置および接触接続を概略図で例示する。
図4図4は、それぞれ、底部側キャリア電極301および上側に取り付けられた受け取り側接触部によって、ここではコンデンサとして例示されるPV測定アセンブリ500にセクションが接続されている、a)酸化処理されたセクション103およびb)還元処理されたセクション102を有するPV層シーケンスの印刷された部分領域の可能な接続および結果として生じる符号を概略図で例示する。
図5図5は、キャリア300上に印刷され粒子100を含む一連の小セクションの可能な接続を概略図で例示し、ここでは、各小セクションで、酸化処理されたセクション102が還元処理されたセクション103と組み合わされ、すべての小セクションは、上側接触部400を介して直列にカスケード接続され、カスケードは、PV測定アセンブリ500に接続される。
図6図6は、セクション内でも接触接続によって相互間でも、還元処理されたセクション102および酸化処理されたセクション103のカスケード接続された配置を有する、粒子100を含む印刷された小セクションにおける可能な電流フローを概略図で例示する。
図7図7は、キャリア300、底部側キャリア電極301、粒子100を含むセクション、および上側接触部400を含む層シーケンスの配置を概略図で例示する。
図8図8は、キャリア300、キャリア電極301および凸版印刷によって作り出された非導電性境界302の強調された要素を用いて図7による配置を詳細に概略図で例示する。
図9図9は、Cu-Ni裏側電極601の表面を有し、断面で見て、裏側電極602の後、TCO層603がそれに隣接し、Siに基づきTCO外層およびAR外層を有するPV活性層604がそれに続き、最終的に、上面を有する上側ガラスキャリア605がそれに続く、従来技術によるPV層シーケンスに対するSEM画像および同様に描かれた参照符号付きの概略図を例示し、5マイクロメートルのスケール606によれば、層複合物全体は厚さ数マイクロメートルである。
図10図10は、反応溶液で調整されて固定され、硬化したガラス状非晶質反応溶液702によって被覆されて固定された、機械的に粉砕された粒子701を有する、本方法によって得られるPV層シーケンスに対するSEM画像および同様に描かれた参照符号付きの概略図を例示し、ここで、20マイクロメートルのスケール703は、形態の明らかに異なるサイズ比を例示する。
図11図11は、相互貫入する形であり固定するように粒子803を取り囲んでいる相801および802を有する、本方法によって得られるPV層シーケンスに対するSEM画像および同様に描かれた参照符号付きの概略図を例示し、ここで、5マイクロメートルのスケール804は、形態の明らかに異なるサイズ比を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
実施例を使用した本発明の詳細な説明
有利な実施形態で、方法が案内され、この方法において、ステップa)で、技術等級純度の、最大サイズ30±15マイクロメートルの半導電SiC粒子100が、緩やかなガスの発生を伴って、水酸化ナトリウムでアルカリ化されたシリカ溶液からなる水性反応溶液200中に分散され、酸化によって部分的に溶かされ、予め塗布されたキャリア電極301を有し好ましくは追加の印刷された境界302を有するフィルムキャリアおよび/または紙キャリア300のセクションの領域にわたって塗布され、
- ステップb)で、反応溶液200は、体積収縮で硬化反応溶液層201に変換され、ここで粒子100は、硬化反応溶液層201を越えて突出し、反応溶液層201中に固定された底部側と反応溶液層201を越えて突出する上側とを有し、
- 上側領域セクションは、酸化的または還元的に調整され、それによって還元処理された粒子102の領域または酸化処理された粒子103の領域が定められ、次に、
- 鎖状、網状、網状管からなる群から選択される少なくとも1つの構造を含むナノスケール構造、好ましくはCNT鎖および/またはハロゲン鎖が、少なくとも1つの領域セクション中の粒子100と直接接触して形成され、
- 粒子100の相互に隣接する領域セクションは、異なる溶液で調整されて、還元処理された粒子102のセクションおよび酸化処理された粒子103のセクションとして交互シーケンスで粒子100の相互に隣接する領域セクションを形成し、
- ステップc)で、粒子の上側は、少なくとも部分的に上側接触部400を設けられ、粒子100の交互に調整された領域セクションは、直列に接続され、最終的な接触電極に接着される。
【0032】
ハロゲン化物鎖形成添加物として、ルゴール液が数重量パーセントの割合で反応溶液200に加えられた。
【0033】
弾力性調整剤として、水分散性でんぷんポリエーテルが0.1~2重量パーセントで反応溶液に加えられた。
【0034】
調整のために使用される助剤は、第1に水性酸性界面活性剤および第2に水性アルカリ性ポリオールであり、界面活性剤およびポリオールは、湿潤助剤として機能し、水相を介して同時蒸発可能であり、両方の助剤は、硬化セクションの調整のために、薄層から極薄層において平方メートル当たり約1グラムで領域にわたって印刷され、蒸発する水相は、吸引によって除去された。例示的な図によれば、異なるモードの接触接続によって、非常に異なる利点および用途にアクセス可能になる。単一セクションシーケンスの直接カスケード接続によって、存在している光の強度を正確に反映する光起電力電位の取り出しが可能になり、したがって印刷された光センサが入手可能である。2次元電極ならびに最適化されたセクションサイズおよび層の厚さは、対照的に、有効電力を最大化し、印刷されたPV層の組合せをおよそ10%の標準効率で従来的なPV電源として使う選択肢を提示する。2つの手段の組合せによって、特定の器具または用途に必要な電圧を具体的に提供するために、最大使用可能電圧を調節することが可能になる。
【0035】
図9図11は、本方法の生成物の形態上非常に異なる特性を同様に例示しており、同時蒸発または他の気相生成物によって得られる確立されたシステムおよびPV層から外れて、本発明の方法の特大の塊および粗い粒子は、かなり粗削りに見える。しかしながら、具体的な方法手段のおかげで、これらの安価で使用可能な、技術等級純度の原材料を実行可能かつ極めて安価な方式で長寿命かつ競争力のあるPV層シーケンスに組み込むことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
確立されたPV層シーケンスおよび対応する生産方法の不都合は、それらが処理に関して複雑であり、PV活性を確実に提供することができるためにコストのかかる純粋な出発原料を必要とすることである。
【0037】
したがって、対処した問題は、その不都合を克服し、非常に低い生産コストにもかかわらず、確実にかつ長寿命の方式でPV機能を提供することができる、方法およびその方法によって得られるPV層シーケンスを提供することであった。
【0038】
解決策は、室温印刷方法において無機粒子の反応的調整によって行われ、表面の反応的調整は、PV活性を正確に調節し、速度論的に制御された反応生成物を与え、およそ97%の技術等級純度の出発原料の場合でも、望ましいPV活性を保証することができる。
【符号の説明】
【0039】
特許請求の範囲に関する参照符号のリスト
100 粒子
101 上側
102 還元処理されたセクション
103 酸化処理されたセクション
200 反応溶液
201 硬化反応溶液
300 キャリア
301 キャリア電極
302 境界(例えば凸版印刷)
400 上側接触部
【0040】
明細書に関する参照符号のリスト
100 粒子
101 上側
102 還元処理されたセクション
103 酸化処理されたセクション
200 反応溶液
201 硬化反応溶液
300 キャリア
301 キャリア電極
302 境界(例えば凸版印刷)
400 上側接触部
500 PV測定アセンブリ
601 裏側電極
602 断面図における裏側電極
603 TCO層
604 TCO外層およびAR外層を有するPV活性Si層
605 ガラスキャリアおよび上側
606 5マイクロメートルスケール
701 反応溶液で調整された粒子
702 硬化した、ガラス状非晶質反応溶液
703 20マイクロメートルスケール
801 2つの相互貫入相から構成されるマトリクスの相1
802 2つの相互貫入相から構成されるマトリクスの相2
803 マトリクス中に固定された粒子
804 5マイクロメートルスケール
図1a
図1b
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11