(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】固定工具による固定方法
(51)【国際特許分類】
E06B 7/22 20060101AFI20240610BHJP
E04F 21/165 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
E06B7/22 B
E04F21/165 B
(21)【出願番号】P 2023093262
(22)【出願日】2023-06-06
【審査請求日】2023-07-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523215211
【氏名又は名称】篠▲崎▼ 佳和
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 佳和
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-137153(JP,U)
【文献】実開平04-092984(JP,U)
【文献】実開平06-004251(JP,U)
【文献】実開平04-137155(JP,U)
【文献】特開昭55-138559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 7/00-7/36
E06B 9/52
E04F 21/165
B25B 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部分を含む
開き戸用のエアタイトゴムを溝部に嵌合固定させる際に使用する固定工具
による固定方法であって、
前記固定工具は、樹脂製のローラと
、前記ローラを貫通し、かつ、回動自在に支持する支持軸と
、前記支持軸に接続される接続部と
、前記接続部に接続される把持部と
、を備え、
前記ローラは、外周面において径方向に対して凸である凸部が形成されており、
前記凸部の幅は前記エアタイトゴムの前記中空部分の幅に対応しており、
かつ、前記ローラの回動軸方向に沿った断面において、
ローラの外周面全体の幅が10mmとされ、前記凸部の幅が6mmとされることで、前記ローラの外周面全体の幅に対する前記凸部の幅の比は、0.5以上0.7以下
とされており、
前記凸部によって押圧されることで前記エアタイトゴムが変形した部分を、前記ローラの外周面における径方向に凸でない箇所によって前記溝部内にて押さえる
固定工具
による固定方法。
【請求項2】
前記接続部は、
第1方向に延びる直線部と、
前記第1方向と交差する方向である第2方向に曲がる曲げ部とを含み、
前記支持軸は、前記曲げ部の前記第2方向側の端部において前記接続部と接続し、
前記把持部は、前記直線部の前記曲げ部とは反対側の端部において前記接続部と接続する、
請求項1に記載の固定工具
による固定方法。
【請求項3】
前記接続部の前記直線部の長さは、50mm以上100mm以下である、
請求項2に記載の固定工具
による固定方法。
【請求項4】
前記支持軸には、前記ローラを抜け止めする抜止リングが前記ローラの前記第2方向側に位置するように取り付けられている、
請求項2に記載の固定工具
による固定方法。
【請求項5】
前記ローラは、少なくとも前記第2方向側の側面における前記支持軸が貫通する部分を
含む領域において凹部が形成され、
前記支持軸の前記第2方向側の端部と、前記抜止リングとは、前記ローラの側面よりも前記凹部の底部側に位置する、
請求項4に記載の固定工具
による固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアタイトゴムを溝部に嵌合固定するための固定工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ドアや窓等の扉における扉枠の戸当たり部分に形成された溝部にエアタイトゴムが嵌合固定され、扉本体の気密性が確保される。エアタイトゴムの嵌合固定は、エアタイトゴムが比較的硬い部材であるとともに、特に冬季に行うと部材の硬化により手作業が難しい。また、エアタイトゴムは、手作業によれば均一に貼り付けられず、浮きおよび剥がれの原因となるおそれがある。特許文献1には、溝の底面に粘着テープ等の溝部挿入材を押さえながら貼付する、ローラを用いた治具に関する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エアタイトゴムは中空部材である。そのため、ローラを用いてエアタイトゴムを溝部に嵌合固定する場合、ローラの形状等はより効率的にエアタイトゴムに対して押圧力を加えることができるよう工夫されることが好ましい。本発明は、溝部に嵌合固定させるエアタイトゴムに対して、効率的に押圧力を加えることができる固定工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の固定工具は、エアタイトゴムを溝部に嵌合固定させる際に使用する固定工具であって、樹脂製のローラと、前記ローラを貫通し、かつ、回動自在に支持する支持軸と、前記支持軸に接続される接続部と、前記接続部に接続される把持部と、を備え、前記ローラは、外周面において径方向に対して凸である凸部が形成されている。
この構成では、ローラの凸部がエアタイトゴムの材軸の中央部分を中心に第1方向に押圧することによって、押圧力がエアタイトゴム全体に加わりやすくなる。そのため、エアタイトゴムは効率よく第1方向に押圧される。
【0006】
本発明の固定工具において、前記接続部は、第1方向に延びる直線部と、前記第1方向と交差する方向である第2方向に曲がる曲げ部とを含み、前記支持軸は、前記曲げ部の前記第2方向側の端部において前記接続部と接続し、前記把持部は、前記直線部の前記曲げ部とは反対側の端部において前記接続部と接続することが好ましい。
この構成では、ローラは把持部に対して片持ち構造によって取り付けられている。そのため、片手での作業が可能になること、および扉体や建物の壁体に固定工具を接触させることを抑制できる等、エアタイトゴムを溝部に嵌合固定させる際の施工性を向上させることができる。
【0007】
本発明の固定工具において、前記支持軸には、前記ローラを抜け止めする抜止リングが前記ローラの前記第2方向側に位置するように取り付けられていることが好ましい。
この構成では、ローラの回動によるエアタイトゴムの溝部への嵌合固定の際に、ローラの抜け止めができるとともに、ローラの回動等に起因する振動を抑制することができる。
【0008】
本発明の固定工具において、前記ローラは、少なくとも前記第2方向側の側面における前記支持軸が貫通する部分を含む領域において凹部が形成され、前記支持軸の前記第2方向側の端部と、前記抜止リングとは、前記ローラの側面よりも前記凹部の底部側に位置することが好ましい。
この構成では、支持軸の端部および抜止リングは凹部に収納される。そのため、エアタイトゴムを溝部に嵌合固定させる作業時に、固定工具に近接する扉に支持軸の端部が接触することおよび扉を傷つけることが抑制される。
【0009】
本発明の固定工具において、前記ローラの回動軸方向に沿った断面において、前記ローラの外周面全体の幅に対する前記凸部の幅の比は、0.5以上0.7以下であることが好ましい。
この構成では、凸部の幅が溝部に嵌合固定させるエアタイトゴムに合せた寸法となることから、エアタイトゴムを溝部に嵌合固定させやすくなる。
【0010】
本発明の固定工具において、前記接続部の前記直線部の長さは、50mm以上100mm以下であることが好ましい。
この構成では、エアタイトゴム20を溝部30に嵌合固定する作業を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本実施形態に係るローラとエアタイトゴムとの関係を説明するための図である。
【
図3】本実施形態に係る固定工具のローラの構造を示す断面図である。
【
図4】本実施形態に係る固定工具の支持軸および接続部の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一又は対応する要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略される。
【0013】
図1は、本実施形態に係る固定工具10の斜視図である。
図1において(a)および(b)は固定工具10をそれぞれ別の方向から見た斜視図である。図中において、互いに直交する二方向を、+x方向および+y方向とする。図示を省略するが、+x方向とは反対方向を-x方向とし、+y方向とは反対方向を-y方向とする。また、+x方向は第1方向に相当し、+y方向は第2方向に相当する。
【0014】
図示されるように、固定工具10は、ローラ11、支持軸12、接続部13および把持部14を備える。ローラ11は、貫通孔111、凸部112および凹部113を含み、支持軸12は抜止リング121を含む。また、接続部13は直線部131および曲げ部132を含む。各部の詳細については後に説明する。
【0015】
固定工具10は、エアタイトゴム20を溝部30に嵌合固定させる際に使用する工具である。溝部30は、扉枠における扉が当接する部分等に形成されている。なお、以下の説明において、扉は蝶番等の部品によって開閉できるいわゆる開き戸、床部等に形成されたレールに沿って開閉する引き戸および窓を含む。
【0016】
図2を用いて、本実施形態に係るローラ11とエアタイトゴム20との関係を説明する。
図2において(a)は、エアタイトゴム20がローラ11によって押圧される前の状態を示し、(b)は、エアタイトゴム20がローラ11によって溝部30に嵌合固定された状態を示す。エアタイトゴム20は、ローラ11の回動によって+x方向に押圧され、溝部30に嵌合固定される。ローラ11は、エアタイトゴム20を押圧するために例えば樹脂等の硬い部材によって形成されることが好ましい。
【0017】
図示されるように、ローラ11には外周面において径方向に対して凸である凸部112が形成されている。エアタイトゴム20は、材軸方向に直交する断面において、中央部分が中空となっている。そのため、ローラ11の凸部112がエアタイトゴム20の材軸の中央部分を中心に+x方向に押圧することによって、押圧力がエアタイトゴム20全体に加わりやすくなる。そのため、エアタイトゴム20は効率よく+x方向に押圧され、溝部30に嵌合固定される。
【0018】
図3は、本実施形態に係る固定工具10のローラ11の構造を示す図であり、
図1(b)のIII-III線断面図である。図示されるように、支持軸12は貫通孔111を+y方向に貫通し、ローラ11を回動自在に支持する。また、支持軸12には、ローラ11を抜け止めする抜止リング121がローラ11の+y方向側に位置するように取り付けられている。そのため、ローラ11は抜止リング121によって抜け止めされる。なお、抜止リング121は、例えばCリングやワッシャーであってもよいが、これらに限らずローラ11の抜け止めできる部材であればよい。
【0019】
支持軸12には、抜止リング121を取り付けるための溝が設けられる。抜止リング121を設けることによって、ローラ11の回動によるエアタイトゴム20の溝部30への嵌合固定の際に、ローラ11の抜け止めができるとともに、ローラ11の回動等に起因する振動を抑制することができる。
【0020】
また、図中に示されたw1は、ローラ11の回動軸方向に沿った断面におけるローラ11の外周面全体の幅であり、w2は凸部112の幅である。幅w1および幅w2の値は、嵌合固定させるエアタイトゴム20の幅に合せた値であることが好ましく、例えば幅w1は10mm、幅w2は6mmであってもよいがこれに限らない。
【0021】
上記のとおりエアタイトゴム20は中空部材であるから、エアタイトゴム20の中空部分の幅に対応して、ローラ11の凸部112の幅を設定すれば、効率よくエアタイトゴム20を溝部30に嵌合固定させやすくなる。この観点から、幅w1に対する幅w2の比は、0.5以上0.7以下であることが好ましく、0.55以上0.65以下であることがより好ましい。このような幅w1に対する幅w2の比を採用することによって、凸部112の寸法は溝部30に嵌合固定させるエアタイトゴム20に合せた寸法となることから、エアタイトゴム20を溝部30に嵌合固定させやすくなる。
【0022】
また、ローラ11は、少なくとも+y方向側の側面Sにおける支持軸12が貫通する部分を含む領域において凹部113が形成される。凹部113は、ローラ11の-y方向側の側面にも形成されてもよい。支持軸12の+y方向側の端部12Aと、抜止リング121とは、ローラ11の+y方向側の側面Sよりも凹部113の底部側すなわち-y方向側に位置する。すなわち、支持軸12の端部12Aおよび抜止リング121は凹部113に収納される。そのため、エアタイトゴム20を溝部30に嵌合固定させる作業時に、固定工具10に近接する扉に支持軸12の端部12Aが接触することおよび扉を傷つけることが抑制される。
【0023】
図4は、本実施形態に係る固定工具10の支持軸12および接続部13の構造を示す断面図である。支持軸12および接続部13は、ステンレス等を用いた金属製であってもよいが、これに限らない。また、支持軸12および接続部13は一体形成されてもよいし、別部材であってもよい。
【0024】
図示されるように、接続部13は、+x方向に延びる直線部131と、+x方向と直交(交差)する方向である+y方向に曲がる曲げ部132を含む。接続部13は、曲げ部132の+y方向側の端部において支持軸12と接続する。このような構成により、ローラ11は、把持部14に対して片持ち構造によって取り付けられている。そのため、片手での作業が可能になること、および扉体や建物の壁体に固定工具10を接触させることを抑制できる等、エアタイトゴム20を溝部30に嵌合固定させる際の施工性を向上させることができる。
【0025】
また、図示されるように、接続部13は直線部131の曲げ部132とは反対側の端部すなわち-x方向側の端部において把持部14と接続する。把持部14は、樹脂製、木製およびステンレス製であってもよいが、これに限らない。なお、把持部14は
図1に示されるように略円柱形状の丸棒で構成されてもよいが、これに限らず、把持可能な形状であればよい。
【0026】
また、図中に示されたdは、直線部131の長さである。直線部131の長さdの値が大きすぎると、ローラ11の回動時にエアタイトゴム20の固定作業が不安定となる。また、直線部131の長さdの値が小さすぎると、狭い部分での作業を行うことに支障が生じる。このような観点から、直線部131の長さdは50mm以上100mm以下であることが好ましく、60mm以上90mm以下であることがより好ましく、70mm以上80mm以下であることがさらに好ましい。直線部131の長さdを上記のようにすれば、固定工具10を用いてエアタイトゴム20を溝部30に嵌合固定する作業を安定させることができる。
【0027】
上記の実施形態において説明した固定工具10によれば、以下の効果を奏する。
(1)凸部112がエアタイトゴム20の材軸の中央部分を中心に+x方向に押圧することによって、押圧力がエアタイトゴム20全体に加わりやすくなる。そのため、ローラ11の外周面に凸部112を設けることによって、エアタイトゴム20は効率よく+x方向に押圧される。
【0028】
(2)ローラ11は、把持部14に対して片持ち構造によって取り付けられている。そのため、片手での作業が可能になること、および扉体や建物の壁体に固定工具10を接触させることを抑制できる等、エアタイトゴム20を溝部30に嵌合固定させる際の施工性を向上させることができる。
【0029】
(3)支持軸12に抜止リング121を設けることによって、ローラ11の回動によるエアタイトゴム20の溝部30への嵌合固定の際に、ローラ11の抜け止めができるとともに、ローラ11の回動等に起因する振動を抑制することができる。
【0030】
(4)支持軸12の端部12Aおよび抜止リング121は凹部113に収納される。そのため、エアタイトゴム20を溝部30に嵌合固定させる際に、固定工具10に近接する扉に支持軸12の端部12Aが接触することを防ぐことができ、固定工具10を用いた作業によって扉を傷つけることを抑制することができる。
【0031】
(5)ローラ11の回動軸方向に沿った断面におけるローラ11の外周面全体の幅w1に対する当該断面における凸部112の幅w2の比は、0.5以上0.7以下である。このような幅w1に対する幅w2の比を採用することによって、凸部112の寸法は溝部30に嵌合固定させるエアタイトゴム20に合せた寸法となることから、エアタイトゴム20を溝部30に嵌合固定させやすくなる。
【0032】
(6)直線部131の長さdは50mm以上100mm以下であることが好ましく、60mm以上90mm以下であることがより好ましく、70mm以上80mm以下であることがさらに好ましい。直線部131の長さdを上記のようにすれば、エアタイトゴム20を溝部30に嵌合固定させる際の施工性を向上させることができる。
【0033】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれらの例に限定されない。本発明の属する技術の分野の当業者であれば、請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0034】
10…固定工具、11…ローラ、12…支持軸、13…接続部、14…把持部、111…貫通孔、112…凸部、113…凹部、121…抜止リング、131…直線部、132…曲げ部、20…エアタイトゴム、30…溝部、S…側面。
【要約】
【課題】溝部に嵌合固定させるエアタイトゴムに対して、効率的に押圧力を加えることができる固定工具を提供すること。
【解決手段】本発明に係る固定工具は、エアタイトゴムを溝部に嵌合固定させる際に使用する固定工具であって、樹脂製のローラと、上記ローラを貫通し、かつ、回動自在に支持する支持軸と、上記支持軸に接続される接続部と、上記接続部に接続される把持部と、を備え、上記ローラは、外周面において径方向に対して凸である凸部が形成されている。
【選択図】
図3