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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】口腔滞留装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61J 7/00 20060101AFI20240610BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240610BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20240610BHJP
   A61K 31/195 20060101ALI20240610BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20240610BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
A61J7/00 A
A61K9/20
A61K31/198
A61K31/195
A61K31/522
A61K31/155
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2023517740
(86)(22)【出願日】2021-09-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 CN2021119120
(87)【国際公開番号】W WO2022057905
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】202010980311.4
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520255676
【氏名又は名称】シャンハイ ダブリュディー ファーマシューティカル カンパニー,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】リャンチャン トン
(72)【発明者】
【氏名】チェン シーシャン
(72)【発明者】
【氏名】ウー カン
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/223753(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 7/00
A61K 9/20
A61K 31/198
A61K 31/195
A61K 31/522
A61K 31/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用吻合部材と薬剤担持部材が含まれ、前記歯科用吻合部材は前記薬剤担持部材に接続され、ここで、前記歯科用吻合部材は口腔内の歯にブリッジし、前記歯にマッチングするために使用され、前記薬剤担持部材は少なくとも1つの錠剤を収容することができ、前記錠剤を口腔内に滞留させるために使用され、前記歯科用吻合部材と前記薬剤担持部材はそれぞれの側で接続され、及び/又は、前記薬剤担持部材はメッシュ構造又は非メッシュ構造であり、前記薬剤担持部材の断面の形状は、円形、楕円形、多角形又は異型の閉環又は開環構造であり、
前記薬剤担持部材は、少なくとも1つの環本体及び少なくとも1つの位置制限部材を含み、前記環本体は錠剤挿入用の開口部を備え、前記位置制限部材は前記錠剤を前記薬剤担持部材内に規制するための構造を有し、前記位置制限部材は、大臼歯と切歯によって形成される水平方向において切歯側に位置し、かつ/又は前記環本体は、大臼歯と切歯によって形成される水平方向において大臼歯側に位置する、口腔滞留装置。
【請求項2】
記開口部は、大臼歯と切歯とによって形成される水平方向に大臼歯に向いており、前記水平方向に前記大臼歯から前記切歯の方向に前記錠剤を挿入するために使用される請求項1に記載の口腔滞留装置。
【請求項3】
前記錠剤は、浸透圧ポンプ錠剤である、請求項2に記載の口腔滞留装置。
【請求項4】
前記浸透圧ポンプ錠剤は活性薬物及び補助材を含み、前記活性薬物の成分は、レボドパ又はレボドパのエステル、カルビドパ、バクロフェン、アシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル、メトホルミン及びガバペンチンの1つ又は複数であり、又はレボドパ又はそのエステル及びカルビドパの1つ又は複数である、請求項3に記載の口腔滞留装置。
【請求項5】
前記環本体は開環本体又は閉環本体である、請求項2に記載の口腔滞留装置。
【請求項6】
前記環本体は、円形、楕円形、多角形又は異型の閉環本体又は開環本体である、請求項2に記載の口腔滞留装置。
【請求項7】
前記位置制限部材は円弧状の中空形状又は中実形状であり、又は、前記位置制限部材は、一つの閉環本体と該閉環本体に垂直一つの半円とが連結されて形成されており、及び/又は、前記位置制限部材は前記環本体に隣接し、又は、前記位置制限部材は前記環本体と間隔を置いて配置される、請求項2に記載の口腔滞留装置。
【請求項8】
前記位置制限部材及び前記環本体は、一体成型によって隣接しているか、又は、連結構造によって連結されていることを特徴とする、請求項7に記載の口腔滞留装置。
【請求項9】
前記位置制限部材の数は1つであり及び/又は、前記環本体の数は1つであ、請求項2に記載の口腔滞留装置。
【請求項10】
前記歯科用吻合部材は、口腔内の任意の1つ又は複数の歯に吻合することができ、及び/又は、前記歯科用吻合部材の長さは2~5歯の長さである、請求項1に記載の口腔滞留装置。
【請求項11】
前記歯は下顎永久歯である、請求項10に記載の口腔滞留装置。
【請求項12】
前記歯は下顎大臼歯である、請求項11に記載の口腔滞留装置。
【請求項13】
前記歯は、下顎の第一大臼歯及び第二大臼歯、又は、第一大臼歯、第二大臼歯及び第二小臼歯、又は、第一大臼歯、第二大臼歯及び第三大臼歯、又は第一大臼歯、第二大臼歯、第三大臼歯及び第二小臼歯である、請求項12に記載の口腔滞留装置。
【請求項14】
前記歯科用吻合部材は、前記歯科用吻合部材と吻合される歯に巻き付け、埋め込み、はめ込み又は挿入されることを特徴とする、請求項1に記載の口腔滞留装置。
【請求項15】
前記口腔滞留装置の材料は、口腔用の安定性材料であり、前記口腔用の安定性材料は、口腔安定性金属又は熱可塑性エラストマーから選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の口腔滞留装置。
【請求項16】
前記口腔安定性金属は、歯科用の、チタン、ステンレス鋼、コバルトクロミウム合金、コバルト-クロミウム-モリブデン合金又は貴金属の中の1つであり、前記熱可塑性エラストマーは、ポリカプロラクトン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリウレタン、シリコンポリマー、ポリエステル、ポリ(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)、ポリ(スチレン-イソプレン-スチレン)の中から選択される1つ又は2つのコポリマーである、請求項15に記載の口腔滞留装置。
【請求項17】
前記歯科用吻合部材及び薬剤担持部材の材料は、コバルトクロム合金であることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の口腔滞留装置。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の口腔滞留装置を製造するための方法であって、前記方法は、3Dプリント、射出成形又はインプレッション成形から選択されるいずれか1つであり、
ここで、前記3Dプリントは下記のステップ
(0)デザインソフトウェアにおいて、前記錠剤のサイズデータに従って薬剤担持部材模型をデザイン及び保存し、かつ/又は前記デザインソフトウェアにおいて、対象の歯のサイズデータに従って、歯科用吻合部材模型をデザインするステップ、
(1)存された薬剤担持部材模型を加え、歯科用吻合部材模型と組み合わせて一体化された口腔滞留装置模型を形成させ、3Dプリント可能なファイルをエクスポートするステップ、
(2)前記3Dプリント可能なファイルを3Dプリンタにインポートし、前記口腔滞留装置をプリントするステップを含み、
ここで、前記射出成形は、下記のステップ
(1)歯科模型に従って、歯科用吻合部材模型を製造するステップ、
(2)錠剤のサイズに従って、薬剤担持部材模型を製造するステップ、
(3)歯科用吻合部材と薬剤担持部材が一体化された口腔滞留装置模型を得るステップ、
(4)通常の射出成形技術により、個性化された口腔滞留装置を製造するステップ、
を含む、方法。
【請求項19】
前記3Dプリントのステップ(2)において、前記3Dプリントは、レーザー焼結プロセスを使用する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記3Dプリントでは、スキャナを使用してスキャンすることによって前記錠剤のサイズデータ及び/又は対象の歯のデータを取得し、前記歯科模型は通常の形取り方法によって製造され、前記射出成形では、前記歯科模型は通常の形取り方法によって製造されるか、又は口腔スキャニング技術及びプリントによって対象の歯のデータを取得することによって製造される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記射出成形において、前記歯科用吻合部材模型、前記薬剤担持部材模型及び前記口腔滞留装置模型の材質がデンタルワックスであり、及び/又は、前記歯科模型の材質が石膏又は樹脂である、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は出願日が2020年9月17日である中国特許出願2020109803114の優先権を主張する。本出願は上記の中国特許出願の全文を引用する。
【0002】
本発明は、医療器械分野に関し、特に、口腔滞留装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
レボドパ(Levodopa、LD)又はそのエステル、カルビドパ(CD)、バクロフェン、アシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル、メトホルミン、ガバペンチンなどを含む多くの医薬品有効成分は、その吸収窓が上部消化管に限定されている。これらの医薬品有効成分を通常の徐放性剤形に製造すると、バイオアベイラビリティが低下するだけではなく、治療範囲を延長することができなくなる。先行技術ではすでに、医薬品有効成分の胃内での滞留時間を延長するための多くの技術が開示されている。これらの技術は下記に示された通りである。これらの技術は、拡張(US4,735,804、US5,002,772及びUS6,685,962など)、膨張(US4,434,153、US5,750,585、US5,972,389、US6,120,803、US6,660,300B1、US2007/0196396A1及びUS9,439,851など)、フローティング(US4,167,558、US5,232,704及びUS6,261,601など)、ラフトフォーミング(raft-forming)(US4,140,760、US5,068,109など)、シンキング(US4,193,985、US4,900,557など)及び粘膜付着(US6,207,197及びUS11/204,106など)である。上記の技術は、特にこれらの技術を使用する経口剤形が絶食状態で投与される場合、非常に限られた成功しか収めていない。
【0004】
従って、これらの医薬品有効成分を長時間曝露し、その吸収窓が上部消化管に限定された新しい薬物制御放出システムが必要とされている。口腔滞留装置とこれらの薬物を医薬機器組成物に合成することで、口腔滞留投与システムを形成し、吸収窓を上部消化管に制限してこれらの薬物の長時間曝露を提供することができる。
【0005】
現在、口腔滞留装置に関する関連研究は少なく、米国特許出願US10/668,274(特許文献1)及び中国特許出願CN1997421A(特許文献2)は、電気によって薬物放出を制御し、錠剤の挿入問題に関与していない電気制御薬物放出メカニズムに基づく口腔内薬物含有容器を開示している。更に、当該特許に請求されている薬物含有容器と電気制御システムは実行が難しく、当該特許明細書には実例もなく、どのように電気制御薬物放出メカニズムを使用して浸透圧ポンプ錠剤を薬物貯留装置として実行し、上部消化管での薬物吸収を実現して、長期的に安定した血中薬物濃度を達成するかについて説明されていない。
【0006】
更に、中国特許出願CN1925823A(特許文献3)は、虫歯の治療及び/又は予防を改善するためにフッ化物丸薬を歯に取り付けるための歯科用ブラケットを開示している。当該特許出願は、上部消化管における薬物の吸収と長期的に安定した血中薬物濃度に関するものではなく、また錠剤の挿入方法に関するものでもない。
【0007】
更に、中国特許出願CN105873631A(特許文献4)は、薬物投与のための外力として電子ポンプ又は機械ポンプを必要とし、錠剤を挿入する方法に関与しない口腔滞留装置を開示している。
【0008】
錠剤を前から後ろ(切歯から臼歯方向)に挿入する方法は、装置の前(切歯側)から錠剤が滑り落ちやすく、患者が落下した錠剤を誤って飲み飲んでしまい窒息する危険性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願US10/668,274
【文献】中国特許出願CN1997421A
【文献】中国特許出願CN1925823A
【文献】中国特許出願CN105873631A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、胃内での医薬品有効成分の滞留時間が短いため、バイオアベイラビリティが低いという技術的問題を解決するために、錠剤を口腔内に留まらせ、容易に脱落しない新規な口腔滞留装置を提供する。具体的には、本発明は、錠剤が後方から前方に挿入される口腔滞留装置を提供しているが、後方が喉に近いため、頬脂肪体の先端及び翼突下顎皺襞などの口腔組織によりブロックされ、錠剤が口腔装置から脱落しなく、誤飲による窒息がない。
【0011】
本発明の第1の側面では、口腔滞留装置を提供する。前記口腔滞留装置には、歯科用吻合部材と薬剤担持部材が含まれ、前記歯科用吻合部材は前記薬剤担持部材に接続され、ここで、前記歯科用吻合部材は口腔内の歯にブリッジし、前記歯にマッチするために使用され、前記薬剤担持部材は少なくとも1つの錠剤を収容することができ、前記錠剤を口腔内に滞留させるために使用される。
【0012】
好ましい実施形態において、前記歯科用吻合部材と前記薬剤担持部材はそれぞれの側で接続され、及び/又は、前記薬剤担持部材はメッシュ構造又は非メッシュ構造であり、前記薬剤担持部材の断面の形状は、円形、楕円形、多角形又は異型の閉環又は開環構造、あるいはその組み合わせである。前記断面は、前記歯科用吻合部材の長軸の方向に垂直する(前記歯科用吻合部材の長軸の方向は、前記歯科用吻合部材と口腔内の歯にマッチした後に形成される水平面と実質的に等しい)断面である。
【0013】
好ましい実施形態において、前記薬剤担持部材は、少なくとも1つの環本体及び少なくとも1つの位置制限部材を含み、又は、前記薬剤担持部材は、少なくとも1つの位置制限部材から構成され、ここで、前記環本体は錠剤挿入用の開口部を備え、前記位置制限部材の構造は錠剤を薬剤担持部材に制限するために使用される。
【0014】
好ましい実施形態において、前記開口部は、大臼歯と切歯によって形成される水平方向に大臼歯に向いており、前記水平方向で大臼歯から切歯の方向に錠剤を挿入するために使用され、又は、前記開口部は前記水平方向と垂直に設定され、前記錠剤は前記水平方向と垂直する方向に上から下に向かって挿入され、又は、前記開口部は前記水平方向と垂直に頬側に向いており、前記錠剤は前記水平方向と垂直に頬側から舌側に向かって挿入される。本明細書に記載の水平方向は、口腔滞留装置を水平に放置した時の歯科用吻合部材の最長軸が位置する水平方向と実質的に等しく、口腔滞留装置を歯科用吻合部材によって対象の口腔内の歯にマッチした後、前記口腔滞留装置及びその歯科用吻合部材の最長軸の水平方向と実質的に等しい。
【0015】
好ましくは、本発明の錠剤の形状は経時的に変化せず、浸透圧ポンプ錠剤である。好ましい実施形態において、前記浸透圧ポンプ錠剤は活性薬物及び補助材を含む。前記活性薬物の成分は、レボドパ又はそのエステル、カルビドパ、バクロフェン、アシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル、メトホルミン及びガバペンチンのいずれか1つであり、又はレボドパ又はそのエステル及びカルビドパの1つ又は2つである。前記錠剤はフィルム制御錠剤であり、放出制御フィルムは水不溶性酢酸セルロース補助材であり、錠剤コアが不溶性補助材骨格又はブースター層によって支持され、錠剤が口腔内で薬物を完全に放出した後、錠剤の外観は依然として完全な錠剤の形状である。
【0016】
好ましくは、前記環本体は開環本体又は閉環本体である。
【0017】
好ましくは、前記閉環本体は、円形、楕円形、多角形又は異型の閉環本体であり、前記開環本体は、一部が欠けた(非閉環)円形、楕円形、多角形又は異型の開環本体である。
【0018】
好ましい実施形態において、前記位置制限部材は円弧状の中空又は中実であり、又は前記位置制限部材は、1つの閉環本体と閉環本体に垂直する1つの半円とが連結されて形成し、及び/又は、前記位置制限部材は前記環本体に隣接し、又は、前記位置制限部材は前記環本体と間隔を置いて配置される。
【0019】
好ましくは、前記隣接は、一体形成されているか、又は、連結構造によって連結されている。
【0020】
好ましい実施形態では、前記位置制限部材の数は1つであり、前記位置制限部材は、前記水平方向において切歯に近づいた側に位置し、及び/又は、前記環本体の数は1つであり、前記環本体は、大臼歯と切歯によって形成される水平方向において大臼歯に近づいた側に位置する。
【0021】
好ましくは、前記歯科用吻合部材は、口腔内の任意の1つ又は複数の歯に吻合することができ、及び/又は、前記歯科用吻合部材の長さは2~5歯の長さである。
【0022】
好ましくは、前記歯は下顎永久歯である。好ましくは、下顎大臼歯である。最も好ましくは、第一大臼歯及び第二大臼歯、又は、第一大臼歯、第二大臼歯及び第二小臼歯、又は、第一大臼歯、第二大臼歯及び第三大臼歯、又は第一大臼歯、第二大臼歯、第三大臼歯及び第二小臼歯である。
【0023】
好ましくは、前記歯科用吻合部材は、個体の歯の大きさ、形状に従って製造される。前記歯科用吻合部材は、それと吻合される歯に巻き付け、埋め込み、スナップイン又は挿入される。
【0024】
好ましくは、前記口腔滞留装置の材料は、口腔用の安定性材料であり、前記口腔用の安定性材料は、口腔安定性金属又は熱可塑性エラストマーから選択される。
【0025】
好ましくは、前記口腔安定性金属は、歯科用チタン、ステンレス鋼、コバルトクロミウム合金、コバルト-クロミウム-モリブデン合金又は貴金属の中の1つから選択され、前記熱可塑性エラストマーは、ポリカプロラクトン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリウレタン、シリコンポリマー、ポリエステル、ポリ(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)、ポリ(スチレン-イソプレン-スチレン)の中の1つ又は2つから選択されるポリマーである。
【0026】
より好ましくは、前記歯科用吻合部材及び薬剤担持部材の材料は、コバルトクロム合金である。
【0027】
本発明の第2の側面では、本発明の第1の側面の口腔滞留装置を製造する方法を提供する。前記方法は、3Dプリント、射出成形又はインプレッション成形の中のいずれか1つから選択される。
【0028】
前記の本発明の第1の側面の口腔滞留装置を製造する方法は、3Dプリントであり、それは下記のステップを含み、
(1)デザインソフトウェアにおいて、保存された薬剤担持部材のプロトコルを加え、歯科用吻合部材のプロトコルと組み合わせて一体化された口腔滞留装置のプロトコルを形成し、3Dプリント可能なファイルをエクスポートし、前記デザインソフトウェアは、好ましくは3Shape Dental Systemであり、
(2)前記3Dプリント可能ファイルを3Dプリンタにインポートし、前記口腔滞留装置をプリントし、前記3Dプリントは、好ましくはレーザー焼結プロセスを使用し、
好ましくは、前記ステップ(1)の前に、更に、(0)ソフトウェアにおいて、錠剤のサイズデータに従って薬剤担持部材のプロトコルをデザイン及び保存し、前記ソフトウェアは、好ましくはSolidWorks又はZW3Dプラットフォーム設計ソフトウェアであり、及び/又は、前記デザインソフトウェアにおいて、対象の歯のサイズデータに従って、歯科用吻合部材のプロトコルをデザインするステップを含み、
より好ましくは、前記錠剤のサイズデータ及び/又は前記対象の歯のデータは、スキャナを使用して錠剤及び/又は対象の歯又は対象の歯科模型をスキャンすることによって得られ、前記歯科模型は通常の形取り技術によって製造され、前記スキャナは、好ましくは3Shape TRIOS(登録商標)スキャナである。
【0029】
具体的な実施形態において、口腔内スキャナ「3Shape TRIOS(登録商標)」を使用して錠剤のサイズデータをスキャンし、次に、データを「SolidWorks」ソフトウェアにインポートし、薬剤部分を担持する薬剤担持部材のプロトコルを設計し、そのプロトコルを「標準添付」ファイルとして作成・保存し、口腔内スキャナ「3Shape TRIOS」を使用して対象の歯をスキャンし、データを「3Shape Dental System」ソフトウェアにインポートし、歯のデータに従って歯科用吻合部材を設計し、「3Shape Dental System」ソフトウェアに、「標準添付」を入れ、歯科用吻合部材と組み合わせて一体化された口腔滞留装置を形成し、3Dプリント可能なファイルをエクスポートし、前記3Dプリント可能なファイルを3Dプリンタにインポートし、前記口腔滞留装置をプリントする。前記3Dプリントは、好ましくはレーザー焼結工程を使用する。
【0030】
ここで、前記3Dプリントは、通常のプリンタ基本的に同じの動作原理を有する。3Dプリンタには、金属、セラミック、プラスチック、砂などのさまざまな「プリント材料」が搭載されており、プリンタとコンピューターを接続した後、コンピューター制御によって「プリント材料」をレイヤーごと積み重ね、最終的にコンピューター上の設計図を実物に変えることができる。3Dプリントは、通常のプリントの技術原理を参照しており、その中で積層加工の工程はインクジェットプリントと非常に似ており、このようなプリント技術は3Dプリント技術と呼ばれている。3Dプリントには多くの異なる技術があり、それらの違いは、利用可能な材料の方法と、異なるレイヤー構造で部品を構築することである。3Dプリントの通常に使用される材料は、ナイロンガラス繊維、ポリ乳酸、ABS樹脂、耐久性ナイロン材料、石膏材料、アルミニウム材料、金属チタン、チタン合金、ステンレス鋼、銀メッキ、金メッキ、コバルトクロム合金、コバルトクロムモリブデン合金又はゴム材料などである。3Dプリントの利点は、操作を自動化でき、生産速度が速く、デザイン図面をコンピューターから実物に直接的に及びより正確に変換できることであり、小規模な受注生産製造にも適していることである。
【0031】
別の実施形態において、前記本発明の第1の側面の口腔滞留装置を製造する方法は、射出成形であり、それは下記のステップを含み、
(1)歯科模型に従って、歯科用吻合部材模型を製造するステップ、
(2)錠剤のサイズに従って、薬剤担持部材模型を製造するステップ、
(3)歯科用吻合部材と薬剤担持部材が一体化された口腔滞留装置模型を得るステップ、
(4)通常の射出成形技術により、個性化された口腔滞留装置を製造するステップ、
好ましくは、前記歯科模型は通常の形取り技術によって製造されるか、又は口腔スキャニング技術によって、対象の歯のデータを取得してプリントし、
より好ましくは、前記歯牙吻合部材模型、薬剤担持部材模型及び口腔滞留装置模型の材質はデンタルワックスであり、及び/又は、前記歯科模型の材質は石膏又は樹脂である。
【0032】
射出成形は、インジェクション成形とも呼ばれ、射出及び成形をあわせた成形方法であり、即ち、所定の温度で、完全に溶融した材料をスクリューで攪拌し、高圧で金型キャビティに射出し、冷却固化させた後、成形品が得られる方法である。当該方法は、複雑な形状の部品の大量生産に適しており、重要な加工法の1つである。射出成形法の利点は、生産速度が速く、効率が高く、自動操作ができ、色柄の種類が多く、形状は単純なものから複雑なものまで、サイズは大きなものから小さなものまであり、また製品のサイズが正確で、製品の更新が容易で、形状が複雑な製品を成形することができ、射出成形は大量生産及び複雑な形状製品などの成形加工分野に適している。
【0033】
別の実施形態において、前記本発明の第1の側面の口腔滞留装置を製造する方法は、インプレッション成形であり、それは下記のステップを含み、
錠剤の大きさに合わせて薬剤担持部材を設計し、ポリカプロラクトン(PCL)を材料として歯科用吻合部材を製造し、コバルトクロム合金を材料として薬剤担持部材を製造し、歯牙吻合部材及び薬剤担持部材を完全な口腔滞留装置に組み立てる。
【0034】
具体的な実施形態において、まず、通常の射出成形プロセスにより浸透圧ポンプ錠剤を担持できる薬剤担持部材を製造し、次に熱可塑性シートを加熱して軟化させて歯科用吻合部材を製造し、同時に、軟化した歯科用吻合部材及び薬剤担持部材を嵌合させ、冷却させた後一体化された口腔滞留装置を形成し、口腔から取り出す。
【0035】
当技術分野の常識に違反しない限り、前記各好ましい条件は、任意に組み合わせて、本発明の各好ましい実施例を得ることができる。
【0036】
本発明で使用される試薬及び原料は市販品として入手できる。
【0037】
本発明の積極的な進歩効果:錠剤が喉から切歯の方向に挿入される口腔滞留装置を提供し、口腔滞留装置の後側が喉に近いため、口腔粘膜組織のブロックにより錠剤が口腔から脱落しにくい。錠剤を口腔滞留装置に挿入して医薬機器組成物を形成し、医薬機器組成物を口腔内の吻合する歯に固定して所定時間内に薬物の持続放出を実現する。0~24時間保持した後、医薬機器組成物を取り出し、新しい錠剤に交換し、医薬機器組成物を再び口腔内の吻合する歯に固定して、薬物を継続的で安定的に放出させる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一実施形態に係る錠剤後方挿入型口腔滞留装置であり、歯科用吻合部材11と薬剤担持部材41から構成され、ここで、薬剤担持部材41は、位置制限部材21と環本体31からなり、環本体31には開口部311を有している。
図2】本発明の一実施形態に係る錠剤前方挿入型口腔滞留装置であり、歯科用吻合部材12と薬剤担持部材42から構成され、ここで、薬剤担持部材42は、位置制限部材22と環本体32からなり、環本体32には開口部321を有している。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、挙げられた好ましい実施形態、及び図面を併せて本発明をより明確かつ完全に説明する。なお、別途に説明しない限り、これらの実施形態で説明された部品及びステップの相対配置及び数値は本発明の範囲を限定しないことに留意されたい。
【0040】
実施例1:コバルトクロム合金の後方挿入式口腔滞留装置
【0041】
図1で示される実施形態において、前記錠剤後方挿入型口腔滞留装置は、歯科用吻合部材11と薬剤担持部材41を連結して構成されている。前記歯科用吻合部材11は、対象の口腔内の歯に密合することができ、前記薬剤担持部材41のサイズは、少なくとも1つの錠剤を収容でき、また前記錠剤を口腔内に滞留させる。前記歯科用吻合部材11と薬剤担持部材41はいずれもコバルトクロム合金で製造され、前記歯科用吻合部材11と前記薬剤担持部材41はそれぞれの側で接続される。前記薬剤担持部材は、環本体31と端部に位置する位置制限部材21とを含み、前記環本体31は円形の閉環本体であり、錠剤挿入用開口部311を有している。前記位置制限部材と前記環本体は間隔を置いて配置され、それぞれ歯科用吻合部材11に接続され、別の実施形態において、前記位置制限部材は、前記環本体と一体形成された後、歯科用吻合部材に固定されてもよく、前記環本体と前記歯科用吻合部材が一体形成されるように製造してもよい。口腔滞留装置が歯科用吻合部材によって対象の口腔内の歯にマッチした後、前記開口部311は大臼歯と切歯によって形成される水平方向において大臼歯に向かって開口し(前記環本体31は、前記水平方向において大臼歯に近づいた側に位置し、即ち、環本体31の位置は位置制限部材21の位置よりも大臼歯に近く位置する)、前記錠剤は前記水平方向に大臼歯から切歯の方向に挿入される。前記制限部材は円弧状の中空形状であり、その構造は錠剤を薬剤担持部材に制限するために使用される。前記歯科用吻合部材11は、対象の口腔内の下顎第一大臼歯、第二大臼歯及び/又は第三大臼歯と吻合し、吻合により歯を巻き付ける。
【0042】
口腔内に錠剤を装填した後の実施例の口腔滞留装置を使用すると、強力なうがいにより薬剤の速放層が急速に溶解しても錠剤はしっかりと固定され、装置から滑り落ちることがない。
【0043】
実施例2:コバルトクロム合金の前方挿入式口腔滞留装置
【0044】
図2で示される実施形態において、前記錠剤前方挿入型口腔滞留装置は、歯科用吻合部材12と薬剤担持部材42を連結して構成される。前記歯科用吻合部材12は、対象の口腔内の歯に密合することができ、前記薬剤担持部材42のサイズは、少なくとも1つの錠剤を収容でき、また前記錠剤を口腔内に滞留させる。前記歯科用吻合部材12と薬剤担持部材42はいずれもコバルトクロム合金で製造され、前記歯科用吻合部材12と前記薬剤担持部材42はそれぞれの側に接続される。前記薬剤担持部材42は、環本体32と端部に位置する位置制限部材22とを含み、前記環本体32は円形の閉環本体であり、錠剤挿入用開口部321を有している。前記位置制限部材と前記環本体は間隔を置いて配置され、それぞれ歯科用吻合部材11に接続され、別の実施形態において、前記位置制限部材は、前記環本体と一体形成された後、歯科用吻合部材に固定されてもよく、前記環本体と前記歯科用吻合部材が一体形成されるように製造してもよい。前記開口部321は大臼歯と切歯によって形成される水平方向において切歯に向かって開口し(前記環本体32は、大臼歯と切歯によって形成される水平方向において大臼歯に近づいた側に位置し、即ち、環本体32の位置は位置制限部材22の位置よりも切歯に近く位置する)、前記錠剤は大臼歯と切歯によって形成される水平方向に切歯から大臼歯の方向に挿入される。前記位置制限部材は円弧状の中空形状であり、前記位置制限部材の構造は錠剤を薬剤担持部材に制限するために使用される。前記歯科用吻合部材11は、対象の口腔内の下顎第一大臼歯、第二大臼歯及び/又は第三大臼歯と吻合し、吻合により歯を巻き付ける。
【0045】
口腔内に錠剤を装填した後の実施例の口腔滞留装置を使用すると、強力にうがいをした場合、薬剤の速放層が急速に溶解する過程において、錠剤は装置から滑り落ちる可能性があり、装着中にも装置から滑り落ちる可能性があるが、それでも所定の使用価値を有している。
【0046】
実施例3:3Dプリントによるのコバルトクロム合金の後方挿入式口腔滞留装置の製造
【0047】
本実施例のコバルトクロム合金の後方挿入式口腔滞留装置の製造方法は、下記のステップを含み、
【0048】
ステップ1:「3Shape Dental System」スキャナで錠剤のサイズデータをスキャンする。次に、「SolidWorks」ソフトウェアを使用して、薬物部分を担持できる薬剤担持部材を設計し、「標準添付」ファイルとして作成・保存する。「3Shape Dental System」ソフトウェアで口腔滞留装置を設計するたびに、「標準添付」を入れ、歯科用吻合部材と組み合わせて一体化された口腔滞留装置を形成させる。
【0049】
ステップ2:口腔内又は歯科模型のスキャンを実行する。
a.スキャンソフトウェアを開き、
b.新規患者、新規症例を作成し、
c.研究モデルを選択し、
d.下顎のスキャンを実行し、
d.上顎のスキャンを実行し、
f.咬合関係のスキャンを実行し、
g.ファイルを後処理して、大臼歯及び小臼歯のすべてのデータのスキャンが完全で、欠陥がないことを確認する。上下歯の咬合のスキャンが正確であることを確認し、
h.3OXZ又はSTL形式のファイルを保存する。
【0050】
当該ステップにおいて、スキャンは、例えば3Shape TRIOS(登録商標)口腔内スキャナなどの当技術分野における通常のスキャナ又は例えばQscanデンタルスキャナなどの通常のスキャナを使用してもよいため、例えば3Shape TRIOS(登録商標)口腔内スキャナなどのスキャンソフトウェア又はQscanデンタルスキャナ自体に付属するシステムソフトウェアを使用してもよい。
【0051】
ステップ3:装置をデザインする。
a.デザインソフトウェアを開き、
b.新規注文を作成し、
c.歯の位置を選択し、
d.ベースクラウンのデザインを選択し、
e.口腔内スキャン歯データ(STLファイル)をインポートし、パーソナライズされた大臼歯吻合部材のデザインを実行し、
f.「標準添付」を入れ、歯科用吻合部材と組み合わせて一体化された口腔滞留装置を形成させ、開口部が大臼歯と切歯によって形成される水平方向において大臼歯に向かって開口して、錠剤が大臼歯と切歯によって形成される水平方向に位置し、切歯から大臼歯の方向に錠剤を挿入できるようにする。
g.デザインが完了した後、3OXZ又はSTL形式のファイルをエクスポートする。
当該ステップにおいて、例えば、3Shape Dental Systemデザインソフトウェアなどの当技術分野における通常のデザインソフトウェアを使用してもよい。
【0052】
ステップ4:3Dプリントし/サンディングし、研磨してクリーニングする。
a.CAMプログラムを入力し、
b.EOSレーザーで鋳造し、
c.サンディング・研磨し、装置は図1に示された通りであり、
d.クリーニングし、
e.完成品を検査する。
【0053】
図1で示されるように、本実施例で製造されたコバルトクロム合金の後方挿入式口腔滞留装置には、歯科用吻合部材11と薬剤担持部材が含まれ、前記歯科用吻合部材11と前記薬剤担持部材はそれぞれの側で接続され、歯科用吻合部材は口腔内の歯に密合することができ、薬剤担持部材は少なくとも1つの錠剤を収容することができ、錠剤を口腔内に滞留させることができる。錠剤は、制御放出製剤であってもよく、好ましくは浸透圧ポンプ錠剤である。前記浸透圧ポンプ錠剤は活性薬物及び補助材を含み、前記活性薬物の成分は、レボドパ又はそのエステル、カルビドパ、バクロフェン、アシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル、メトホルミン及びガバペンチンのいずれか1つであり、又はレボドパ又はそのエステル及びカルビドパの1つ又は2つである。薬剤担持部材の断面の形状は、円形の閉環である。薬剤担持部材は、メッシュ構造又は非メッシュ構造である。薬剤担持部材は、少なくとも1つの環本体31と少なくとも1つの端部の位置制限部材21を含み、環本体31は錠剤挿入用の開口部311を形成する。位置制限部材は、円弧状の中空形状である。開口部は大臼歯と切歯によって形成される水平方向において大臼歯に向かっており、錠剤が前記水平方向で、大臼歯から切歯の方向に挿入される。
【0054】
実施例4:射出成形されたコバルトクロム合金の口腔滞留装置の製造
【0055】
まず、通常の形取り技術によって患者/ボランティアの歯の石膏模型を製造し、次に、伝統的な手作業で、歯科用ワックスを材料として使用して、石膏模型上で歯のワックス模型を製造し、最後に、コバルトクロム磁器合金を材料として使用し、通常の射出成形プロセスにより口腔滞留装置を製造する。
【0056】
実施例5:3Dプリントによって製造されたコバルトクロム合金の前方挿入型口腔滞留装置
【0057】
図2で示される口腔滞留装置であって、実施例3の方法と同様の方法で製造され、ステップ3のfにおいて、薬剤担持部材の環本体及び位置制限部材の位置が実施例3と逆である、図2に記載の口腔保持装置。薬剤担持部材42の環本体32は錠剤挿入用開口部321を形成し、開口部は大臼歯と切歯によって形成される水平方向において切歯に向かって開口し、錠剤は前記水平方向に切歯から大臼歯の方向に挿入される。錠剤は、制御放出製剤であってもよく、好ましくは浸透圧ポンプ錠剤である。
なお、本開示の態様には以下のものも含まれる。
〔態様1〕
歯科用吻合部材と薬剤担持部材が含まれ、前記歯科用吻合部材は前記薬剤担持部材に接続され、ここで、前記歯科用吻合部材は口腔内の歯にブリッジし、前記歯にマッチングするために使用され、前記薬剤担持部材は少なくとも1つの錠剤を収容することができ、前記錠剤を口腔内に滞留させるために使用されることを特徴とする、口腔滞留装置。
〔態様2〕
前記歯科用吻合部材と前記薬剤担持部材はそれぞれの側で接続され、及び/又は、前記薬剤担持部材はメッシュ構造又は非メッシュ構造であり、前記薬剤担持部材の断面の形状は、円形、楕円形、多角形又は異型の閉環又は開環構造であり、
好ましくは、前記薬剤担持部材は、少なくとも1つの環本体及び少なくとも1つの位置制限部材を含み、又は、前記薬剤担持部材は、少なくとも1つの位置制限部材から構成され、ここで、前記環本体は錠剤挿入用の開口部を備え、前記位置制限部材の構造は錠剤を薬剤担持部材に制限するために使用され、
より好ましくは、前記開口部は、大臼歯と切歯とによって形成される水平方向に大臼歯に向いており、前記水平方向に大臼歯から切歯の方向に錠剤を挿入するために使用され、又は、前記開口部は前記水平方向と垂直に配置され、前記錠剤は前記水平方向と垂直する方向に上から下に向かって挿入し、又は、前記開口部は前記水平方向と垂直に頬側に向いており、前記錠剤は前記水平方向と垂直に頬側から舌側に向かって挿入することを特徴とする、態様1に記載の口腔滞留装置。
〔態様3〕
前記錠剤は、浸透圧ポンプ錠剤であり、好ましくは、前記浸透圧ポンプ錠剤は活性薬物及び補助材を含み、前記活性薬物の成分は、レボドパ又はそのエステル、カルビドパ、バクロフェン、アシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル、メトホルミン及びガバペンチンの1つ又は複数であり、又はレボドパ又はそのエステル及びカルビドパの1つ又は複数であることを特徴とする、態様2に記載の口腔滞留装置。
〔態様4〕
前記環本体は開環本体又は閉環本体であり、好ましくは、前記環本体は、円形、楕円形、多角形又は異型の閉環本体又は開環本体であることを特徴とする、態様2に記載の口腔滞留装置。
〔態様5〕
前記位置制限部材は円弧状の中空形状又は中実形状であり、又は、前記位置制限部材は、一つの閉環本体と閉環本体に垂直する一つの半円とが連結されてなり、及び/又は、前記位置制限部材は前記環本体に隣接し、又は、前記位置制限部材は前記環本体と間隔を置いて配置され、好ましくは、前記隣接は、一体形成されているか、又は、連結構造によって連結されていることを特徴とする、態様2に記載の口腔滞留装置。
〔態様6〕
前記位置制限部材の数は1つであり、前記位置制限部材は、大臼歯と切歯によって形成される水平方向において切歯に近づいた側に位置し、及び/又は、前記環本体の数は1つであり、前記環本体は、大臼歯と切歯によって形成される水平方向において大臼歯に近づいた側に位置することを特徴とする、態様2に記載の口腔滞留装置。
〔態様7〕
前記歯科用吻合部材は、口腔内の任意の1つ又は複数の歯に吻合することができ、及び/又は、前記歯科用吻合部材の長さは2~5歯の長さであり、望ましくは、前記歯は下顎永久歯であり、好ましくは下顎大臼歯であり、より好ましくは、下顎の第一大臼歯及び第二大臼歯、又は、第一大臼歯、第二大臼歯及び第二小臼歯、又は、第一大臼歯、第二大臼歯及び第三大臼歯、又は第一大臼歯、第二大臼歯、第三大臼歯及び第二小臼歯であることを特徴とする、態様1に記載の口腔滞留装置。
〔態様8〕
前記歯科用吻合部材は、それと吻合される歯に巻き付け、埋め込み、はめ込み又は挿入されることを特徴とする、態様1に記載の口腔滞留装置。
〔態様9〕
前記口腔滞留装置の材料は、口腔用の安定性材料であり、前記口腔用の安定性材料は、口腔安定性金属又は熱可塑性エラストマーから選択され、
好ましくは、前記口腔安定性金属は、歯科用チタン、ステンレス鋼、コバルトクロミウム合金、コバルト-クロミウム-モリブデン合金又は貴金属の中の1つから選択され、前記熱可塑性エラストマーは、ポリカプロラクトン、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリレート、ポリウレタン、シリコンポリマー、ポリエステル、ポリ(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)、ポリ(スチレン-ブタジエン-スチレン)、ポリ(スチレン-イソプレン-スチレン)の中の1つ又は2つから選択されるポリマーであり、
より好ましくは、前記歯科用吻合部材及び薬剤担持部材の材料は、コバルトクロム合金であることを特徴とする、態様1~8のいずれか一つに記載の口腔滞留装置。
〔態様10〕
前記方法は、3Dプリント、射出成形又はインプレッション成形から選択されるいずれか1つであり、
ここで、前記3Dプリントは下記のステップを含み、
(1)デザインソフトウェアにおいて、保存された薬剤担持部材のプロトコルを加え、歯科用吻合部材のプロトコルと組み合わせて一体化された口腔滞留装置のプロトコルを形成させ、3Dプリント可能なファイルをエクスポートし、前記デザインソフトウェアは、好ましくは3Shape Dental Systemであるステップ、
(2)前記3Dプリント可能なファイルを3Dプリンタにインポートし、前記口腔滞留装置をプリントし、前記3Dプリントは、好ましくはレーザー焼結プロセスを使用し、
好ましくは、前記ステップ(1)の前に、更に、(0)ソフトウェアにおいて、錠剤のサイズデータに従って薬剤担持部材のプロトコルをデザイン及び保存し、前記ソフトウェアは、好ましくはSolidWorks又はZW3Dデザインソフトウェアであり、及び/又は、前記デザインソフトウェアにおいて、対象の歯のサイズデータに従って、歯科用吻合部材のプロトコルをデザインするステップを含み、
より好ましくは、前記錠剤のサイズデータ及び/又は前記対象の歯のデータは、スキャナを使用して錠剤及び/又は対象の歯又は歯科模型をスキャンすることによって得られ、前記歯科模型は通常の形取り方法によって製造され、前記スキャナは、好ましくは3Shape TRIOS(登録商標)スキャナであり、
ここで、前記射出成形は、下記のステップを含み、
(1)歯科模型に従って、歯科用吻合部材模型を製造するステップ、
(2)錠剤のサイズに従って、薬剤担持部材模型を製造するステップ、
(3)歯科用吻合部材と薬剤担持部材が一体化された口腔滞留装置模型を得るステップ、
(4)通常の射出成形技術により、個性化された口腔滞留装置を製造するステップ、
好ましくは、前記歯科模型は通常の形取り技術によって製造されるか、又は口腔スキャニング技術によって、対象の歯のデータを取得してプリントし、
より好ましくは、前記歯科用吻合部材模型、薬剤担持部材模型及び口腔滞留装置模型の材質がデンタルワックスであり、及び/又は、前記歯科模型の材質が石膏又は樹脂であることを特徴とする、態様1~9のいずれか一つに記載の口腔滞留装置の製造方法。
〔符号の説明〕
【符号の説明】
【0058】
11:後方挿入式口腔滞留装置の歯科用吻合部材
21:後方挿入式口腔滞留装置の位置制限部材
31:後方挿入式口腔滞留装置の環本体
311:後方挿入式口腔滞留装置の環本体の開口部
41:後方挿入式口腔滞留装置の薬剤担持部材
12:前方挿入式口腔滞留装置の歯科用吻合部材
22:前方挿入式口腔滞留装置の位置制限部材
32:前方挿入式口腔滞留装置の環本体
321:前方挿入式口腔滞留装置の環本体の開口部
42:前方挿入式口腔滞留装置の薬剤担持部材
図1
図2