(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】太陽光発電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20240610BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
H02J3/38 130
H02J13/00
(21)【出願番号】P 2024014011
(22)【出願日】2024-02-01
【審査請求日】2024-02-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513326761
【氏名又は名称】株式会社 FD
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 政司
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-170935(JP,A)
【文献】特開2017-55598(JP,A)
【文献】特開2009-33802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力消費施設とともに同じ引き込み線で系統に接続される太陽光発電システムであって、
太陽電池と、
前記太陽電池と前記系統との間で電力変換するパワーコンディショナと、
前記引き込み線から前記系統へ流れる逆電力を検出したときに、前記パワーコンディショナの運転を停止させる逆電力継電器と、
前記系統を管理する事業者から発信される出力制御信号を受信する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、平常時は前記逆電力継電器を無効化しておくとともに、前記出力制御信号を受信したときに、前記逆電力継電器を有効化する、
太陽光発電システム。
【請求項2】
前記系統から前記引き込み線へ流れる順電力を測定する電力計をさらに備え、
前記制御装置は、前記出力制御信号を受信したときに、前記パワーコンディショナに発電抑制を指令し、
前記パワーコンディショナは、前記発電抑制を指令されたときに、前記電力計によって測定される前記順電力がゼロとならないように、前記太陽電池による発電電力を制御する、請求項1に記載の太陽光発電システム。
【請求項3】
前記パワーコンディショナは、前記発電抑制を指令されたときに、前記電力計によって測定される前記順電力がゼロよりも大きい所定値以上に維持されるように、前記太陽電池による発電電力を制御する、請求項2に記載の太陽光発電システム。
【請求項4】
前記パワーコンディショナを外部の系統用蓄電システムへ電気的に接続するバイパス配線と、
前記バイパス配線を電気的に導通及び遮断するバイパス遮断器と、をさらに備え、
前記制御装置は、平常時は前記バイパス遮断器を開放しておくとともに、前記出力制御信号を受信したときに、前記バイパス遮断器を閉成する、請求項1から3のいずれか一項に記載の太陽光発電システム。
【請求項5】
前記系統と前記パワーコンディショナとの間に介在する変圧器をさらに有し、
前記バイパス配線は、前記系統と前記変圧器との間から分岐して、前記系統用蓄電システムへ電気的に接続されている、請求項4に記載の太陽光発電システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記バイパス遮断器を閉成する前に、前記系統用蓄電システムへ所定の通知信号を送信する、請求項5に記載の太陽光発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、太陽光発電システムに関し、特に、電力系統に接続される系統連携型の太陽光発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統(単に系統とも称する)では、電気の使用量(需要)と発電量(供給)とのバランスを維持する必要があり、使用量が発電量を上回るような場合には、発電設備に対して出力制御が行われる。出力制御とは、発電設備に対して発電を禁止又は制限することを意味する。従来、出力制御は主に火力発電に対して行われ、これによって需給のバランスが十分に維持されてきた。
【0003】
しかしながら、近年は、太陽光発電の普及に伴い、火力発電に対する出力制御だけでは足りず、太陽光発電に対しても出力制御が行われている。太陽光発電に対して出力制御が行われることは、太陽光発電を含め、再生可能エネルギーのさらなる普及を図る上で、好ましいことではない。そのことから、例えば我が国の政府機関においても、太陽光発電に対する出力制御を抑制するための施策が検討されている(非特許文献1)。
【0004】
また、太陽光発電に対する出力制御を抑制する一つの手段として、系統用蓄電池(系統に接続される大規模な定置用蓄電池)の活用が検討されている。具体的には、出力制御が必要とされる場合に、系統を管理する一般送配電事業者が、その系統内に存在する系統用蓄電池に対して、充電指令を与えるというものである。しかしながら、系統用蓄電池は個々の規模が比較的に小さく、今後も多数の導入が見込まれることから、その全てを一般送配電事業者が管理することは、現実的ではないとされている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】2023年10月16日開催 経済産業省 資源エネルギー庁 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会新エネルギー小委員会/電力・ガス事業分科会電力・ガス基本政策小委員会 系統ワーキンググループ(第48回)の配布資料 資料1「再生可能エネルギーの出力制御の抑制に向けた取組等について」
【文献】2023年10月16日開催 経済産業省 資源エネルギー庁 総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会新エネルギー小委員会/電力・ガス事業分科会電力・ガス基本政策小委員会 系統ワーキンググループ(第48回)の配布資料 資料3「系統用蓄電池の接続・利用の在り方について」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
出力制御は、実際の需給バランスに応じて、リアルタイムに行われることが好ましい。そのため、太陽光発電に対する出力制御においても、オンライン出力制御の普及が進められている。オンライン出力制御では、太陽光発電システムと一般送配電事業者とがオンラインで接続され、出力制御が必要となったときに、一般送配電事業者から太陽光発電システムへ出力制御信号が送信される。そして、出力制御信号を受信した太陽光発電システムでは、パワーコンディショナの運転が強制的に停止される。
【0007】
パワーコンディショナの運転が停止することで、太陽光発電システムから系統への逆潮流は確実に防止される。その一方で、太陽光発電システムは発電できない状態となることから、太陽光発電システムの発電電力を自己消費することも禁止されてしまう。このことは、太陽光発電システムの利用機会を過剰に逸失させるものであって、太陽光発電のさらなる普及を阻害する要因にもなり得る。
【0008】
上記を鑑み、本明細書は、太陽光発電に対する出力制御(特に、オンライン出力制御)において、太陽光発電に対する過剰な制限を回避するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書が開示する技術は、太陽光発電システムであって、特に、電力消費施設とともに同じ引き込み線で系統に接続される太陽光発電システム(以下、単にシステムと称することがある)に具現化される。このシステムは、太陽電池と、太陽電池と系統との間で電力変換するパワーコンディショナと、引き込み線から系統へ流れる逆電力を検出したときに、パワーコンディショナの運転を停止させる逆電力継電器と、系統を管理する事業者から発信される出力制御信号を受信する制御装置とを備える。制御装置は、平常時は逆電力継電器を無効化しておくとともに、出力制御信号を受信したときに、逆電力継電器を有効化する。
【0010】
発電施設に対する出力制御は、系統における需給バランスの維持を目的としており、発電設備による発電自体を制限することが目的ではない。即ち、仮に発電施設が発電を継続していても、その発電施設から系統への電力供給(即ち、逆潮流)が確実に禁止されるのであれば、出力制御の目的は十分に果たされる。この知見に基づいて、本技術に係る太陽光発電システムでは、系統連系型のシステムではあるものの、逆電力継電器(RPRとも称される)が用意されている。
【0011】
逆電力継電器は、太陽光発電システムから系統への逆電力(即ち、逆潮流)を防止する手段であり、従来は、自家消費型のシステムのみに設けられてきた。即ち、系統連系型の太陽光発電システムについては、系統への電力供給を前提としているため、仮に逆電力継電器が存在していると、系統への電力供給ができなくなってしまう。そのことから、本技術に係る太陽光発電システムでは、平常時、逆電力継電器が無効化されており、それによって系統への電力供給が許容される。一方、系統を管理する事業者(例えば一般送配電事業者)から出力制御信号が送信されたときは、逆電力継電器が有効化されることによって、系統への逆電力(即ち、逆潮流)が防止される。なお、逆電力継電器が有効化されても、パワーコンディショナの運転は直ちに停止されない。即ち、電力消費施設による自家消費電力が、太陽電池による発電電力を上回るかぎり、パワーコンディショナの運転は許容され、太陽光発電を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例の太陽光発電システム10と、それに隣接する系統用蓄電システム50の構成を示すブロック図。
【
図2】実施例の太陽光発電システム10が出力制御信号を受信したときの動作状態を示す。
【
図3】実施例の太陽光発電システム10が出力制御信号を受信したときの動作状態であって、さらにバイパス遮断器32が閉成された場合を示す。
【
図4】平常時において、太陽光発電システム10による発電電力Aの経時変化と、電力消費施設による消費電力Bの経時変化とをそれぞれ示す。
【
図5】出力制御の発令時において、太陽光発電システム10による発電電力Aの経時変化と、電力消費施設による消費電力Bの経時変化とをそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本技術の一実施形態において、太陽光発電システムは、系統から引き込み線へ流れる順電力を測定する電力計をさらに備えてもよい。この場合、制御装置は、出力制御信号を受信したときに、パワーコンディショナに発電抑制を指令するとよい。そして、パワーコンディショナは、発電抑制を指令されたときに、電力計によって測定される順電力がゼロとならないように、太陽電池による発電電力を制御してもよい。このような構成によると、逆電力継電器が作動することを回避して、太陽光発電を長時間に亘って継続することができる。
【0014】
本技術の一実施形態において、パワーコンディショナは、発電抑制を指令されたときに、電力計によって測定される順電力が、ゼロよりも大きい所定値以上に維持されるように、太陽電池による発電電力を制御してもよい。このような構成によると、系統への逆電力が発生すること、即ち、逆電力継電器が作動してパワーコンディショナの運転が禁止されることを、より確実に回避することができる。
【0015】
本技術の一実施形態において、太陽光発電システムは、パワーコンディショナを外部の系統用蓄電システムへ電気的に接続するバイパス配線と、バイパス配線を電気的に導通及び遮断するバイパス遮断器とをさらに備えてもよい。この場合、制御装置は、平常時はバイパス遮断器を開放しておくとともに、出力制御信号を受信したときは、バイパス遮断器を閉成してもよい。このような構成によると、太陽光発電システムは、出力制御の対象となった場合に、太陽電池による発電電力を、系統を介することなく系統用蓄電システムへ供給することができる。
【0016】
加えて、上記の構成によると、系統用蓄電システムにおいても、系統を管理する事業者からの信号等を受信することなく、太陽光発電システムによる発電電力を充電することによって、系統の需給バランス改善に貢献することができる。換言すると、系統を管理する管理者は、多数の導入が見込まれる系統用蓄電池について、その全てを管理する必要がなくなる。
【0017】
上記の実施形態において、太陽光発電システムは、系統とパワーコンディショナとの間に介在する変圧器をさらに有してもよい。この場合、バイパス配線は、系統と変圧器との間から分岐して、系統用蓄電システムへ電気的に接続されていてもよい。このような構成によると、太陽光発電システムは、パワーコンディショナから出力される交流電力を昇圧して、系統用蓄電システムに供給することができる。これにより、送電ロスを抑制することができるとともに、系統用蓄電システムでは、太陽光発電システムから供給される交流電力を、系統から供給される交流電力と同様に受け取ることができる。
【0018】
上記の実施形態において、制御装置は、バイパス遮断器を閉成する前に、系統用蓄電システムへ所定の通知信号を送信してもよい。このような構成によると、太陽光発電システムは、系統用蓄電システムへの電力供給を開始する際に、そのことを系統用蓄電システムへ事前に通知することができる。これにより、系統用蓄電システムは、太陽光発電システムからの受電に際して必要な処理や操作を、事前に実施することができる。
【実施例】
【0019】
図面を参照して、実施例の太陽光発電システム10(以下、システム10と略記することがある)について説明する。本実施例のシステム10は、電力消費施設とともに、引き込み線4を介して系統2と電気的に接続されている。電力消費施設は、例えば工場、倉庫、空港、学校、病院、行政施設、大規模小売店舗のような、比較的に大型の施設である。本実施例のシステム10は、そのような電力消費施設に付設され、その発電電力が電力消費施設において自家消費される。また、システム10は、系統連系型の太陽光発電システムであって、太陽光発電による発電電力の一部又は全部を、系統2へ供給することもできる。
【0020】
システム10の発電規模(発電量)については、特に限定されない。システム10の発電規模は、数キロワットであってもよいし、1メガワットを上回ってもよい。また、システム10が接続される系統2の電圧も特に限定されない。系統2の電圧は、例えば特別高圧(20キロボルト以上)であってもよいし、高圧(6000ボルト)であってもよい。
【0021】
図1に示すように、本実施例のシステム10は、複数のソーラパネル12と、パワーコンディショナ14と、系統連系装置16とを備える。ソーラパネル12は、太陽電池の一例であって、複数の太陽電池がマトリクス状に配置されたパネル材である。パワーコンディショナ14は、複数のソーラパネル12と系統2との間に設けられており、複数のソーラパネル12から出力される直流電力を交流電力に変換する。また、詳しくは後述するが、パワーコンディショナ14は、複数のソーラパネル12による発電電力を、制御可能に構成されている。
【0022】
系統連系装置16は、システム10を系統2へ電気的に接続する装置である。系統連系装置16は、引き込み線5を介して、系統2に接続されている。また、系統連系装置16は、系統2とパワーコンディショナ14との介在しており、両者を電気的に接続する。系統連系装置16は、例えば系統連系キュービクルであってよい。
【0023】
系統連系装置16は、第1遮断器18と変圧器20とを有する。第1遮断器18には、引き込み線4が接続されている。これにより、第1遮断器18は、パワーコンディショナ14を含め、太陽光発電システム10と系統2との間を、電気的に接続及び遮断することができる。変圧器20は、第1遮断器18とパワーコンディショナ14との間に介在しており、パワーコンディショナ14から出力される交流電力を昇圧して、系統2側へ出力するように構成されている。また、変圧器20は、系統2から供給される交流電力を降圧して、電力消費施設へ出力するように構成されている。
【0024】
システム10は、電力計22と、逆電力継電器24と、制御装置26とをさらに有する。これらの機器22、24、26は、特に限定されないが、系統連系装置16の配置されている。電力計22は、引き込み線4を流れる電力の大きさ及び向きを測定する。即ち、電力計22は、系統2から系統連系装置16へ向かう電力(順電力)と、系統連系装置16から系統2へ向かう電力(逆電力)とを、区別して測定することができる。電力計22による測定値は、パワーコンディショナ14へ無線又は有線によって教示される。また、電力計22は、例えばスマートメータであってよく、その測定値が外部へ無線又は有線によって送信されてもよい。
【0025】
逆電力継電器24は、引き込み線4から系統2へ流れる逆電力(逆潮流)を監視しており、当該逆電力を検出したときに、パワーコンディショナ14の運転を停止させるように構成されている。但し、本実施例における逆電力継電器24は、その機能の有効化/無効化を切替可能に構成されている。即ち、逆電力継電器24が無効化されているときは、引き込み線4から系統2へ逆電力が流れた場合でも、パワーコンディショナ14の運転は許容される。一方、逆電力継電器24が有効化されているときは、引き込み線4から系統2へ逆電力が流れたときに、パワーコンディショナ14の運転が停止される。
【0026】
制御装置26は、逆電力継電器24の動作を制御する。例えば、制御装置26は、パワーコンディショナ14に対して、その機能を有効化/無効化する指令を与える。平常時、制御装置26は、逆電力継電器24を無効化している。これにより、複数のソーラパネル12による発電電力が、系統2へ供給されることが許容される。なお、制御装置26が逆電力継電器24を有効化した場合でも、パワーコンディショナ14の運転は必ずも禁止されない。逆電力継電器24が有効化された後、引き込み線4から系統2へ流れる逆電力(逆潮流)が発生した時点で、パワーコンディショナ14の運転は禁止される。
【0027】
制御装置26は、パワーコンディショナ14の動作も制御する。例えば、制御装置26は、パワーコンディショナ14に対して、発電抑制指令を与えることができる。パワーコンディショナ14は、制御装置26から発電抑制指令を受け取ると、複数のソーラパネル12による太陽光発電に対して、発電抑制を実施する。この発電抑制では、電力計22によって測定される順電力が、ゼロよりも大きい所定の範囲内に維持されるように、複数のソーラパネル12による発電電力が制御される。
【0028】
図2に示すように、制御装置26は、外部から出力制御信号を受信可能に構成されている。出力制御信号は、系統2を管理する一般送配電事業者からオンラインで送信される信号である。一般送配電事業者は、系統2における需給バランスの維持を目的として、太陽光発電に対する出力制御が必要であると判断したときに、該当エリア内に存在する太陽光発電施設(本実施例のシステム10を含む)に対して、出力制御信号を送信する。
【0029】
制御装置26は、出力制御信号を受信すると、パワーコンディショナ14に指令を与え、パワーコンディショナ14を有効化する。これにより、出力制御が発令された後は、システム10から系統2への逆電力が確実に防止される。加えて、制御装置26は、パワーコンディショナ14に対して、前述の発電抑制指令を与える。これにより、パワーコンディショナ14は、電力計22によって測定される順電力が、ゼロよりも大きい所定値以上に維持されるように(又は、所定値に維持されるように)、複数のソーラパネル12による発電電力を制御する。パワーコンディショナ14が発電抑制を実施することで、システム10から系統2への逆電力が発生することが未然に防止される。これにより、逆電力継電器24の作動が防止又は抑制される。即ち、一般送配電事業者による出力制御の発令中であっても、パワーコンディショナ14の運転は禁止されることがなく、システム10は発電を継続することができる。
【0030】
但し、例えば不足の事態により、システム10から系統2へ逆電力が発生することも想定される。このような場合は、逆電力継電器24が作動して、パワーコンディショナ14の運転は直ちに禁止され、系統2への逆電力が速やかに中止される。このように、本実施例の太陽光発電システム10によると、一般送配電事業者による出力制御の要請に応えつつ、太陽光発電を継続して電力消費施設に電力を供給し続けることができる。
【0031】
一例ではあるが、システム10は、外部の系統用蓄電システム50と電気的に接続されたバイパス配線30を備えてもよい。系統用蓄電システム50は、系統2を介して充放電されることで、系統2に対する調整力として機能する。一般に、系統用蓄電システム50は、一又は複数の系統用蓄電池52と、パワーコンディショナ54と、系統連系装置56(例えば系統連系キュービクル)とを備える。系統連系装置56は、系統2に対して並列及び解列するための第2遮断器58や、系統2の電圧に応じた変圧器60等を有する。
【0032】
バイパス配線30は、系統2を介することなく、太陽光発電システム10と系統用蓄電システム50との間を電気的に接続している。バイパス配線30の接続位置については、特に限定されない。バイパス配線30は、太陽光発電システム10のパワーコンディショナ14を、系統用蓄電システム50へ電気的に接続するものであればよい。バイパス配線30には、バイパス遮断器32が設けられている。バイパス遮断器32は、バイパス配線30を電気的に導通及び遮断することができる。
【0033】
バイパス遮断器32の動作は、制御装置26によって制御される。制御装置26は、平常時、バイパス遮断器32を開放しておく(
図1参照)。一方、
図3に示すように、制御装置26は、出力制御信号を受信したときに、バイパス遮断器32を閉成することによって、太陽光発電システム10と系統用蓄電システム50との間を電気的に接続する。このような構成によると、太陽光発電システム10は、出力制御の対象となった場合でも、より多くの電力を発電することができる。太陽光発電システム10による発電電力は、系統2を介さずに系統用蓄電システム50へ供給される。従って、系統2の需給バランスに影響を与えることがなく、一般送配電事業者による出力制御の要請に応えることができる。系統用蓄電システム50においても、一般送配電事業者による管理を必要とすることなく、系統2の需給バランス改善に貢献することができる。
【0034】
なお、制御装置26は、バイパス遮断器32を閉成する前に(例えば、出力制御信号を受信したときに)、系統用蓄電システム50へ所定の通知信号を送信する。これにより、太陽光発電システム10は、系統用蓄電システム50への電力供給を開始する際に、そのことを系統用蓄電システム50へ事前に通知する。系統用蓄電システム50は、太陽光発電システム10からの通知信号を受けると、第2遮断器58を開放して自身を系統2から解列させる。これにより、太陽光発電システム10及び系統用蓄電システム50が、二以上の経路によって系統2へ接続されることが防止される。
【0035】
一例ではあるが、本実施例におけるバイパス配線30は、太陽光発電システム10の系統連系装置16において、第1遮断器18と変圧器20との間から分岐している。そして、系統用蓄電システム50の系統連系装置56において、第2遮断器58と変圧器60との間へ接続されている。このような構成によると、太陽光発電システム10は、そのパワーコンディショナ14から出力される交流電力を昇圧して、系統用蓄電システム50に供給することができる。これにより、送電ロスを抑制することができるとともに、系統用蓄電システム50では、太陽光発電システム10から供給される交流電力を、系統2から供給される交流電力と同様に受け取ることができる。
【0036】
以上のように、本実施例の太陽光発電システム10は、平常時、電力消費施設に電力を供給しつつ、余剰の発電電力を系統2へ供給することができる。即ち、
図4に示すように、太陽光発電システム10による発電電力Aが、電力消費施設による消費電力Bを上回る時間帯に、余剰の発電電力を系統2へ供給することができる。従って、太陽光発電システム10(及び電力消費施設)の引き込み線4には、発電電力Aと消費電力Bとの大小関係に応じて、順電力が流れたり逆電力が流れたりする。
【0037】
一方、一般送配電事業者から出力制御信号を受信すると、制御装置26が、逆電力継電器24を有効化するとともに、パワーコンディショナ14へ発電抑制指令を与える。例えば、
図4に対応する
図5において、時刻t1に出力制御信号を受信したとする。このとき、消費電力Bが発電電力Aを上回っており、引き込み線4に十分な大きさの順電力が流れていれば、パワーコンディショナ14の運転が禁止されることはない。また、パワーコンディショナ14による発電抑制も行われない。
【0038】
その後、発電電力Aが増大していくと、引き込み線4に流れる順電力は減少していく。そして、時刻t2において順電力が所定値Dに達したとすると、そのタイミングでパワーコンディショナ14による発電抑制が開始される。即ち、引き込み線4に流れるの順電力が所定値D以下に維持されるように、ソーラパネル12による発電電力が制御される。これにより、一般送配電事業者による出力制御の発令中であっても、パワーコンディショナ14の運転は禁止されることがなく、システム10は発電を継続することができる。
【0039】
なお、制御装置26は、時刻t1のタイミングでバイパス遮断器32を閉成して、太陽光発電システム10から系統用蓄電システム50への電力供給を開始してもよい。あるいは、制御装置26は、時刻t1のタイミングでバイパス遮断器32を閉成して、太陽光発電システム10から系統用蓄電システム50への電力供給を開始してもよい。いずれにしても、
図5における消費電力Bを増大させることによって、太陽光発電システム10による発電電力を増大させることができる。
【0040】
本実施例に対する一変形例として、パワーコンディショナ14による発電抑制は必ずしも必要とされない。この場合、
図5に示す時刻t2において、パワーコンディショナ14の運転は禁止されるが、少なくとも時刻t1から時刻t2までの間は、パワーコンディショナ14の運転が許容される。即ち、出力制御が発令された後でも、消費電力Bが発電電力Aを上回るかぎり、システム10は太陽光発電を継続することができる。
【符号の説明】
【0041】
2:系統、 4:引き込み線、 10:太陽光発電システム、 12:ソーラパネル、 14:パワーコンディショナ、 16:系統連系装置、 18:第1遮断器、 20:変圧器、22:電力計、 24:逆電力継電器、 26:制御装置、 30:バイパス配線、 32:バイパス遮断器、 50:系統用蓄電システム、 52:系統用蓄電池、 54:パワーコンディショナ、 56:系統連系装置、 58:第2遮断器、 60:変圧器
【要約】
【課題】 系統側からの出力制御に対して、太陽光発電が過剰に制限されることを回避する。
【解決手段】 太陽光発電システムは、電力消費施設とともに、同じ引き込み線で系統に接続される。このシステムは、太陽電池と、太陽電池と系統との間で電力変換するパワーコンディショナと、引き込み線から系統へ流れる逆電力を検出したときに、パワーコンディショナの運転を停止させる逆電力継電器と、系統を管理する事業者から発信される出力制御信号を受信する制御装置とを備える。制御装置は、平常時は逆電力継電器を無効化しておくとともに、出力制御信号を受信したときに、逆電力継電器を有効化する。
【選択図】
図1