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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】履物
(51)【国際特許分類】
   A43B 13/14 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
A43B13/14 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024521331
(86)(22)【出願日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 JP2024001000
【審査請求日】2024-04-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514008516
【氏名又は名称】株式会社BMZ
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 毅
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/021622(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/210045(WO,A1)
【文献】特開2010-051657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底の足の母趾球と小趾球が載る部分に対応した趾球底部に、下方に突出する凸部を備えており、少なくとも前記趾球底部から靴底の爪先側の第1底部に至る全領域に、帯板状の付勢部材を有し、
前記凸部が接地したとき、前記爪先側の第1底部が浮いた状態となり、
歩行時に足指で爪先側を蹴って踏み出すと、前記爪先側の第1底部が接地して、前記付勢部材の付勢力により足に前方への推進力を得る形態を有する、
履物。
【請求項2】
前記第1底部と踵側の第2底部が略面一である、
請求項1に記載の履物。
【請求項3】
前記第1底部と前記第2底部の間の第3底部が浮いた状態となり、
前記第3底部のうちの前記趾球底部に、前記凸部を備える、
請求項2に記載の履物。
【請求項4】
前記付勢部材は、前記趾球底部から前記爪先側の底部に至る領域を覆う第1部分と、前記第1部分の後端部に連続し、靴底の前記趾球底部の後方に位置する底部の領域を覆う第2部分と、を備え、
前記第2部分は、靴底の幅方向中途部のみを覆う、
請求項1から3のいずれかに記載の履物。
【請求項5】
前記第2部分の後端は、靴底の踵を支持する踵底部より手前に終端する、
請求項4に記載の履物。
【請求項6】
靴底の爪先側の第1底部と踵側の第2底部が略面一であり、
前記第1底部と前記第2底部の間の第3底部が上に凸の湾曲形状を呈する状態となり、
前記第3底部のうち、足の母趾球と小趾球が載る部分に対応する趾球底部に、下方に突出する凸部を備えており、歩行時に体重が掛かると前記凸部が接地して、爪先側の前記第1底部が浮いた状態となり、
足指で爪先側を蹴ると前記第1底部が接地して、前記凸部と前記第2底部に体重が掛からなくなり、前記第3底部が上に凸の湾曲形状を呈する状態に、前記靴底の状態を戻すための靴底復元力により足に前方への推進力を得る形態を有する、
履物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、靴底の爪先側を、上方に湾曲(トウスプリング)させて歩行性能を向上させた履物がある。トウスプリングは、足指を地面よりも高い位置に維持して、歩行時やランニング時につまずかないなどの利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-002850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の構造は、トウスプリングの機能により、歩行時やランニング時に足指を余り使わなくなり、足の生体力学的特性が低下する虞がある。
そこで、本発明の目的は、上述した従来の課題を解消し、足の生体力学的特性の低下を抑制できる履物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、靴底の足の母趾球と小趾球が載る部分に対応した趾球底部に、下方に突出する凸部を備えており、少なくとも前記趾球底部から靴底の爪先側の第1底部に至る全領域に、帯板状の付勢部材を有し、前記凸部が接地したとき、前記爪先側の第1底部が浮いた状態となり、歩行時に足指で爪先側を蹴って踏み出すと、前記爪先側の第1底部が接地して、前記付勢部材の付勢力により足に前方への推進力を得る形態を有する。
【0006】
本発明は、靴底の爪先側の第1底部と踵側の第2底部が略面一であり、前記第1底部と前記第2底部の間の第3底部が上に凸の湾曲形状を呈する状態となり、前記第3底部のうち、足の母趾球と小趾球が載る部分に対応する趾球底部に、下方に突出する凸部を備えており、歩行時に体重が掛かると前記凸部が接地して、爪先側の前記第1底部が浮いた状態となり、足指で爪先側を蹴ると前記第1底部が接地して、前記凸部と前記第2底部に体重が掛からなくなり、前記第3底部が上に凸の湾曲形状を呈する状態に、前記靴底の状態を戻すための靴底復元力により足に前方への推進力を得る形態を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、足の生体力学的特性に良い影響を及ぼすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る履物の分解斜視図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る靴底の斜視図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る靴底の側面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る靴底の下面図である。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る靴底の上面図である。
図6図6は、本発明の実施の形態に係る履物の側面図である。
図7図7は、本発明の実施の形態に係る履物を履いた際の側面図である。
図8図8は、本発明の実施の形態に係る立脚期後期の履物の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態1]
以下、図面を参照して本発明の実施の形態1について説明する。
図1は、履物1の分解斜視図である。図1中、UPは上方、FRは前方、INは内側を示している。履物1は、アッパー2と靴底3とを備える。アッパー2は、履物1の上部および側面部を構成し、着用者の足を覆う袋状の形状を有している。
アッパー2の底には、着用者の足が載置される靴底3が接着されている。靴底3は、足裏を覆う部材であり、略扁平な形状を有している。靴底3は、アウトソール50と、アウトソール50の上部に支持されるミッドソール60と、を有する。
【0010】
本実施の形態1では、靴底3の上部には、履物1の中底であるインソール70が支持されている。ミッドソール60とインソール70の間には、付勢部材100が配置されている。アウトソール50、ミッドソール60、およびインソール70は、履物1の内部輪郭に倣った形状に形成される。
【0011】
図2は、靴底3を表面側から見た斜視図である。図3は靴底3の側面図、図4は同裏面図、図5は同表面図である。
【0012】
アウトソール50は、爪先側の第1底部10と、踵側の第2底部20と、第1底部10および第2底部20の間の第3底部15と、を備える。
アウトソール50は、図3に示すように、平坦面Mに置いた状態で、爪先側の第1底部10と、踵側の第2底部20とが、平坦面Mに接触する。第1底部10と第2底部20は、略面一である。平坦面Mの上に置いた状態で、第1底部10と第2底部20の間の第3底部15は、平坦面Mから上方に浮いた状態となる。
アウトソール50は、第1底部10と、第2底部20が略面一であり、第3底部15が上に凸の湾曲形状を呈する。
【0013】
第3底部15は、趾球底部40を含み、趾球底部40には、下方に突出する第1支持凸部(凸部)51が形成されている。第1支持凸部51は、平坦面Mにアウトソール50を置いた状態で、平坦面Mから上方に浮いた状態となる。趾球底部40は、第3底部15の前部分に相当し、足の母趾球と小趾球とが載る部分に対応する。なお、足の母趾球と小趾球は、図示を省略している。
第1支持凸部51は、アウトソール50の裏面に、一体物として形成されている。第1支持凸部51は、図5に破線で示すように、履物1の幅方向に略一杯に延び、足の母趾球と小趾球とを支持している。第1支持凸部51の前後方向の所定幅Wは、足の母趾球と小趾球とが載る幅であればよい。
【0014】
アウトソール50は、足の踵が載る部分に対応する踵底部55に、下方に突出する第2支持凸部52を備えている。第2支持凸部52は、アウトソール50の裏面に、一体物として形成されている。
【0015】
アウトソール50の表面には、図1に示すように、ミッドソール60が重ねられる。ミッドソール60は、爪先相当部が切断され、ミッドソール60がアウトソール50に重ねられると、各ソール50,60の表面が面一となる。
アウトソール50とミッドソール60の表面には、前端から第1支持凸部51の間にかけて、履物1の幅方向に延び、下方に窪む複数の溝部61が構成される。溝部61が設けられることで、第1底部10は、剛性が低くなり、曲げやすくなる。溝部61は、幅方向内側に形成される内側溝部62と、中心部から幅方向外側にかけて形成される外側溝部63とで、構成される。本実施の形態では、内側溝部62は二条形成されており、外側溝部63は三条形成されている。
【0016】
本実施の形態1では、図2に示すように、靴底3の表面に付勢部材100が配置されている。付勢部材100は、曲げ強度や剛性に優れた材料が用いられている。本実施の形態1では、付勢部材100は、カーボン製で、帯板状の板材により形成される。
付勢部材100は、靴底3の内部輪郭に倣った形状に形成され、図5に示すように、趾球底部40から爪先側の第1底部10に至る領域を覆う第1部分100aと、第1部分100aの後端部に連続する第2部分100bと、を有する。
第2部分100bは、趾球底部40の後方領域を覆う。第2部分100bは、靴底3の幅方向中途部のみを覆っている。
第1部分100aは、靴底3の幅方向一杯に延在し、第2部分100bは、第1部分100aよりも幅狭に形成されている。
【0017】
図6は、履物1の側面図である。図7図8は歩行動作の一部を示した図である。
歩行動作は、足が接地する「立脚期」を有する。
立脚期は、踵底部のみが接地する「立脚期初期」と、足の略全面が接地する「立脚期中期」(図7参照)と、踵が接地面から離れる「立脚期後期」(図8参照)と、爪先が接地面から離れる「立脚期最終期」とに分かれる。これらを順番に移行させて、足が接地面を蹴り出し、足に前方推力を得る。
【0018】
本実施の形態1では、履物1は、図6に示すように、第1底部10および第2底部20を接地し、第3底部15が浮いた状態であるアーチ状の履物である。着用者が履物1を履いたときには、図7に示すように、履物1には、靴底3の全体に荷重が掛かり、第1支持凸部51と第2支持凸部52が接地しながら、爪先側の第1底部10が浮く略フラットな状態となる。この状態は、「立脚期中期」に相当する。着用者の足は、足の踵が第2支持凸部52に負荷を掛け、足の母趾球と小趾球とが第1支持凸部51に負荷を掛け、足指がフリーの状態となる。
【0019】
歩行を開始すると、図8に示すように、踵側の第2支持凸部52が接地面から離れることで、履物1の爪先側に負荷が掛かり、爪先側の第1底部10および第1支持凸部51が接地する。この際、履物1は、逆アーチ状へと変形し、立脚期中期から立脚期後期へと移行する。歩行をさらに進めると、爪先側の第1底部10が接地したまま、第1支持凸部51と、踵側の第2支持凸部52とが、さらに大きく接地面から離れる。
続いて、歩行動作で爪先側を蹴ることによって、図示は省略したが、爪先が接地面から離れる。この状態は、「立脚期最終期」に相当する。
【0020】
歩行動作で爪先側を蹴る段階では、第1支持凸部51と、踵側の第2支持凸部52とが、大きく接地面から離れるため、第1支持凸部51と、第2支持凸部52には体重が掛からなくなり、靴底3には、図6の状態への復元力が付加されて、足に前方への推進力が得られる。それと同時に、本実施の形態1では、靴底3に、付勢部材100による靴底復元力が付加されて、さらに前方への推進力が得られる。
付勢部材100は、履物1の靴底3に支持されている。付勢部材100は、履物1と同様に立脚期に応じて、形状を変化させて、付勢部材100が元の形状へと戻る際の付勢力が付加されることで、足に前方への推進力を得る。
【0021】
この履物1は、以下の4つの歩行時形態を有する。第1形態は、履物1を平坦面Mに置いたときの形態である。第1形態では、図6に示すように、爪先側の第1底部10と、踵側の第2底部20とが、略面一で、第3底部15が、平坦面Mから上方に浮いた状態となる。すなわち、履物1および付勢部材100は、アーチ形状となる。
【0022】
第2形態は、履物1を履いたときの形態である。第2形態では、図7に示すように、靴底3が略フラットな状態になり、第1支持凸部51と第2支持凸部52が接地し、爪先側の第1底部10と第3底部が浮いた状態となる。すなわち、履物1および付勢部材100は、略フラットな形状となる。
【0023】
第3形態は、歩行を開始したときの形態である。第3形態では、図8に示すように、爪先側の第1底部10と第1支持凸部51の一部が接地し、踵側の第2支持凸部52が接地面から離れる。すなわち、履物1および付勢部材100は、後上方に延びる形状となり、逆アーチ形状となる。
【0024】
第4形態は、歩行をさらに進めたときの形態である。第4形態では、爪先側の第1底部10と第1支持凸部51が接地し、踵側の第2底部20が、図8の状態よりも大きく接地面から離れる。すなわち、第3形態より、より反った逆アーチ形状となる。
【0025】
本実施の形態1によれば、履物1を履いて歩行する際、第1形態から第4形態まで追従して、靴底3が変形可能なように、靴底3の剛性、柔軟性が設定される。
【0026】
履物1の靴底3は、図6に示すように、第1底部10と第2底部20が略面一で、第3底部15が、上に凸の湾曲形状を呈するため、履物1を履いた状態では、図7に示すように、第1支持凸部51が接地すると、爪先側の第1底部10が僅かに浮いた状態になり、足指がフリーの状態になる。
【0027】
足指がフリーの状態になるため、歩行動作を開始するときに、足指で地面を掴むような動作が可能となり、足の生体力学的特性の低下を抑制できる。
【0028】
図8に示す状態では、爪先側の第1底部10を除いて、第1支持凸部51と、踵側の第2底部20には体重が掛からない。そのため、靴底3には、図6に示す状態、すなわち第1底部10と第2底部20が略面一であり、第3底部15が上に凸の湾曲形状を呈する状態に戻すための靴底復元力が作用する。
本実施の形態1によれば、歩行動作で爪先側を蹴るときに、靴底復元力が付加されて、足に前方への推進力が得られる。また、同様に、付勢部材100も靴底と同様に、元の形状に戻ろうとする復元力が付加されるため、より前方への推進力が得られる。
付勢部材100は、第2部分100bが、履物1の靴底幅中央のみに設けられていることから、左右の剛性が強くなりすぎることを抑制しており、歩行中の左右への体重移動を妨害しない。
【0029】
以上説明したように、本実施の形態1によれば、履物の靴底3に付勢部材100を設けることで、付勢部材100からの反力を前方推進力として得ることができ、長時間歩行をしても疲れにくい履物1を提供できる。
【0030】
付勢部材100は、前記趾球底部40からつま先側の第1底部10に至る全領域を覆う第1部分100aと、第1部分100aの後端部に連続し、靴底3の趾球底部40の後方に位置する底部の領域を覆う第2部分100bと、を備え、第2部分100bは、靴底3の幅方向中途部のみを覆う。
この構成によれば、左右に発生する剛性を抑制することで、歩行時の左右への体重移動において、かかる負荷を軽減できる。
【0031】
第2部分100bの後端は、靴底3の踵を支持する踵底部より手前に終端する。
この構成によれば、靴底3の爪先部先端から踵底部より手前に付勢部材100を設けることで、付勢部材100からの反力を前方推進力として得ることができ、長時間歩行をしても疲れにくい履物1を提供できる。
【0032】
上述した実施の形態では、履物1の形状は、アーチ形状の履物1を利用して構成を説明した。しかし、爪先側が前上がり形状である履物に適用しても良く、爪先側が平らな形状である履物にも適用が可能である。
履物1の形状は、第1底部10と、第2底部20と、第3底部15と、が略面一であり、第3底部15に設けられた凸部51と、第2底部20が接地することで、爪先側が浮き上がる形状であっても良い。
【0033】
上述した実施の形態では、靴底3に溝部61を設ける構成を説明した。しかし、溝部61の数、形状、大きさ、および窪みの深さは、適宜変形が可能である。また、溝部61を設けなくても良い。
【0034】
上述した付勢部材100は、第1部分100aと第2部分100bを形成し、第1底部10から第3底部15にかけて設けられた。しかし、付勢部材100は、歩行時の反発力を得られれば良く、ミッドソール60全面に設けても良い。
【0035】
上述した実施の形態では、付勢部材100はミッドソール60の上部に取り付けた。しかし、付勢部材100は、ソールのいずれかに取り付ければよく、例えば、アウトソール50やインソール70に取り付けても良い。また、接着による取り付けだけでなく、埋め込み等により取り付けてもよい。
【0036】
本実施の形態では、アウトソール50およびミッドソール60を別体として設け、靴底3を形成していたが、アウトソール50およびミッドソール60は一体で形成しても良い。また、インソール70も含めて、一体で形成してもよく、インソール70とミッドソール60を一体で形成しても良い。
【0037】
[実施の形態2]
上記実施の形態1では、ミッドソール60の上部に、付勢部材100が取付けられている。実施の形態2では、靴底3の付勢部材100が省略される。それ以外の構成は、図1図8に示す実施の形態1と同様に構成される。なお、以下では、実施の形態2を、図6図8を参照して、説明する。
【0038】
本実施の形態2では、履物1は、図6に示すように、第1底部10および第2底部20を接地し、第3底部15が浮いた状態であるアーチ状の履物である。着用者が履物1を履いたときには、図8に示すように、履物1には、靴底3の全体に荷重が掛かり、第1支持凸部51と第2支持凸部52が接地しながら、爪先側の第1底部10が浮く略フラットな状態となる。この状態は、上述した「立脚期中期」に相当する。着用者の足は、足の踵が第2支持凸部52に負荷を掛け、足の母趾球と小趾球とが第1支持凸部51に負荷を掛け、足指がフリーの状態となる。
【0039】
足指がフリーの状態になるため、歩行動作を開始するときに、足指で地面を掴むような動作が可能となり、足の生体力学的特性の低下を抑制できる。
【0040】
歩行を開始すると、図8に示すように、踵側の第2支持凸部52が接地面から離れることで、履物1の爪先側に負荷が掛かり、爪先側の第1底部10および第1支持凸部51が接地する。この際、履物1は、逆アーチ状へと変形し、立脚期中期から立脚期後期へと移行する。歩行をさらに進めると、爪先側の第1底部10が接地したまま、第1支持凸部51と、踵側の第2支持凸部52とが、さらに大きく接地面から離れる。
【0041】
続いて、歩行動作で爪先側を蹴ることによって、図示は省略したが、爪先が接地面から離れる。この状態は、上述した「立脚期最終期」に相当する。
【0042】
図8に示す状態では、爪先側の第1底部10を除いて、第1支持凸部51と、踵側の第2底部20には体重が掛からない。そのため、靴底3には、図6に示す状態、すなわち第1底部10と第2底部20が略面一であり、第3底部15が上に凸の湾曲形状を呈する状態に戻すための靴底復元力が作用する。
本実施の形態2によれば、歩行動作で爪先側を蹴るときに、靴底復元力が付加されて、足に前方への推進力が得られる。
【0043】
実施の形態2によれば、付勢部材100が省略されているが、履物1は、第3底部15が上に凸で、靴底3の裏面がアーチ形状を呈するため、歩行時の履物1には、図7に示すように、靴底3がフラットな状態から、靴底3の裏面が湾曲形状となる図6の状態に戻すための靴底復元力が作用し、歩行のための前方推進力が得られ、歩行時に疲れにくい履物1を提供できる。実施の形態2によれば、実施の形態1と同様に、履物1を履いて歩行する際、上記第1形態から上記第4形態まで追従して、靴底3が変形可能なように、靴底3の剛性、柔軟性が設定される。
【0044】
上述した実施の形態2では、履物1の形状は、アーチ形状の履物1を利用して構成を説明した。しかし、靴底3の第3底部15が上に凸の湾曲形状を呈し、靴底3の裏面がアーチ形状であれば、爪先側が前上がり形状である履物に適用してもよく、爪先側が平らな形状である履物にも適用が可能である。
【0045】
上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形および応用が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 履物
2 アッパー
3 靴底
10 第1底部
15 第3底部
20 第2底部
40 趾球底部
50 アウトソール
51 第1支持凸部(凸部)
52 第2支持凸部
55 踵底部
60 ミッドソール
61 溝部
62 内側溝部
63 外側溝部
70 インソール
100 付勢部材
100a 第1部分
100b 第2部分
M 平坦面
W 所定幅
【要約】
本発明は、足の生体力学的特性の低下を抑制できる履物を提供する。
本発明の履物は、靴底の足の母趾球と小趾球が載る部分に対応する趾球底部に、下方に突出する凸部を備えており、少なくとも前記趾球底部から爪先側の底部に至る全領域に、帯板状の付勢部材を有し、前記凸部が接地したとき、爪先側の前記底部が浮いた状態となり、足指で爪先側を蹴ると前記底部が接地し、前記付勢部材の付勢力により足に前方への推進力を得る形態を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8