(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】振動の立体的位置での評価による不釣合い修正方法及びその方法を自動化可能な工作機械
(51)【国際特許分類】
G01M 1/38 20060101AFI20240610BHJP
B24B 45/00 20060101ALI20240610BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20240610BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240610BHJP
B23Q 17/12 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
G01M1/38
B24B45/00 B
B24B49/10
B23Q11/00 A
B23Q17/12
(21)【出願番号】P 2020145612
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000174987
【氏名又は名称】三井精機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098279
【氏名又は名称】栗原 聖
(72)【発明者】
【氏名】浅井 岳見
(72)【発明者】
【氏名】今川 啓太郎
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-289660(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0174658(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 1/00- 1/38
B23Q 11/00-13/00
17/00-23/00
B24B 41/00-51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具回転軸と、該工具回転軸により回転される工具とを備える工作機械であって、該工作機械の少なくとも2軸以上の駆動軸を使って前記工具をワークに対して移動させることにより該ワークの加工を行う工作機械における振動の評価による不釣合い修正方法であって、
前記ワークの加工中に前記工具が動く範囲内で立体的ないし平面的な座標位置を決めて、加工中に使う各回転数と各座標位置の組み合わせを使って振動の不釣合いを評価して一定の重み付けを行い、どの位置および回転数でも振動が均等に良好になるように数値最適化手法を用いて振動の不釣合い修正を行うことを特徴とする振動の立体的位置での評価による不釣合い修正方法。
【請求項2】
工具回転軸と、該工具回転軸により回転される工具とを備える工作機械であって、該工作機械の少なくとも2軸以上の駆動軸を使って前記工具をワークに対して移動させることにより該ワークの加工を行う工作機械において、
前記ワークの加工中に前記工具が動く範囲内で立体的ないし平面的な座標位置を決めて、加工中に使う各回転数と各座標位置の組み合わせを使って振動の不釣合いを評価して一定の重み付けを行い、どの位置および回転数でも振動が均等に良好になるように数値最適化手法を用いて振動の不釣合い修正を行
う工作機械であって、前記不釣合い修正を実行するための自動不釣合い修正機構を搭載したことを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動の立体的位置での評価による不釣合い修正方法及びその方法を自動化可能な工作機械に関し、特に、砥石を含む回転工具を使用する場合に、工具及びその回転軸に内在する不釣合いに起因する振動を防止するために、その不釣り合いに対応する修正を行う機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、砥石を含む回転工具を使用する場合、工具の釣り合い状態によっては振動を発生し、これを不釣合いと称する。この不釣合いは、工具に限らず工具を回転させる回転軸自体に内在している場合もある。この振動が問題になる場合には、工具または回転軸側にこの不釣合いに対応する修正機構を設けていることも多い。釣り合わせの実態は評価に用いる何らかの振動センサ(変位計や速度計や加速度計)の位置で振動の重ね合わせが0に近づくように振動を発生させる錘を回転体に追加するということである。この現実のため、センサ位置では振動は0に見えて工具先端の振動が抑えられないということも起こりうる。また、遠心力により曲げモーメントが発生する場合には、回転数によって振動が0にならないという状態も発生し得る。そこで、一般に冗長なセンサを設けて最小二乗法などの数値最適化手法を用いてどのセンサが感じる振動も0に近づく方向に錘をつけるとかどの回転数でも0に近づく方向に錘をつけるということを行う(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
また、曲げモーメントに対する対応として回転軸方向に複数修正面を設けるということもよく行われる。この、曲げモーメントに対する対応は剛体ロータであれば回転数によって不釣合いは一定であるが、現実の弾性体ロータでは回転数によって不釣合いは変化することがある。また、固有振動数の関係で工具の位置(ワークと主軸の相対位置)によって同じ不釣合いでも振動の大きさが変化することが普通である。そのため通常、位置と回転数を一定として不釣合いを評価し、それを打ち消すように不釣合いを修正していた。尚、下記の非特許文献1は、本発明において使用する回転機械の振動解析の公知技術に関するものであり、後述する本発明の説明において引用して述べる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】回転機械の振動-実用的振動解析の基本(松下修己ほか)コロナ社、2009年10月2日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、工作機械によるワークの加工中には、工具回転軸の回転数も可変させるし、工具によるワークの加工位置も変位する。そこで、どの位置および回転数でも均等に良好になるように不釣合い修正を行うことが可能な技術の開発が切望される。また、不釣合いの修正を自動不釣合い修正機構を搭載して、全自動化する工作機械の開発が望まれている。
【0006】
本発明は上述のような事情から為されたものであり、その目的は、工作機械によるワークの加工中に、どの位置および回転数でも均等に良好になるように不釣合い修正を行うことが可能な技術を提供することにある。また、本発明の他の目的は、不釣合いの修正を自動不釣合い修正機構を搭載して、全自動化する工作機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上述した工作機械によるワークの加工中に、どの位置および回転数でも均等に良好になるように不釣合い修正を行うことが可能な技術について鋭意研究した結果、上述した非特許文献1に記載の技術を応用することで、そのような工作機械の構成と、その不釣合い修正方法に関する新規且つ有用な着想を得るに至った。
【0008】
本発明では、非特許文献1に記載の技術を加工中の動く範囲周辺で立体的(直線でないということを表現している)に位置を決めて加工中に使う回転数と位置の組み合わせを使って不釣合いを評価して一定の重み付けを行い、どの位置および回転数でも均等に良好になるように数値最適化手法を用いて不釣合い修正を行う。また、不釣合いの修正を自動不釣合い修正機構を搭載して、全自動化する工作機械を構成する。即ち、本発明の不釣合い修正方法では、工具回転軸と、該工具回転軸により回転される工具とを備える工作機械であって、該工作機械の少なくとも2軸以上の駆動軸で前記工具をワークに対して直線移動ないし回転移動及びその組み合わせをさせることにより該ワークの加工を行う工作機械における振動の評価による不釣合い修正方法であって、前記ワークの加工中に前記工具が動く範囲内で立体的な座標位置を決めて、加工中に使う各回転数と各座標位置の組み合わせを使って振動の不釣合いを評価して一定の重み付けを行い、どの位置および回転数でも振動が均等に良好になるように数値最適化手法を用いて振動の不釣合い修正を行うことを特徴とする。
また、本発明の工作機械では、工具回転軸と、該工具回転軸により回転される工具とを備える工作機械であって、該工作機械の少なくとも2軸以上の駆動軸を使って前記工具をワークに対して移動させることにより該ワークの加工を行う工作機械において、前記ワークの加工中に前記工具が動く範囲内で立体的ないし平面的な座標位置を決めて、加工中に使う各回転数と各座標位置の組み合わせを使って振動の不釣合いを評価して一定の重み付けを行い、どの位置および回転数でも振動が均等に良好になるように数値最適化手法を用いて振動の不釣合い修正を行う工作機械であって、前記不釣合い修正を実行するための自動不釣合い修正機構を搭載したことを特徴とする。
尚、被工作物を回転する場合の振動の釣り合わせについても同様の修正方法及び工作機械を構成可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、工作機械によるワークの加工中に、どの位置および回転数でも均等に良好になるように不釣合い修正を行うことが可能な技術を提供することができる。また、不釣合いの修正を自動不釣合い修正機構を搭載して、全自動化する工作機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】非特許文献1に記載の公知技術を説明するための図である。
【
図2】
図1のような装置を備えた工作機械の一例を示す図である。
【
図3】
図1のような装置を備えた工作機械の他の一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る振動の立体的位置での評価による不釣合い修正方法において、振動を評価させる座標を立体的に分布させることを説明するための図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る振動の立体的位置での評価による不釣合い修正方法の部分サイクルである振動測定の1サイクルを示すフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態に係る振動の立体的位置での評価による不釣合い修正方法を示すフローチャートである。
【
図7】
図5に示した振動測定の1サイクルを一般化した例で示すフローチャートである。
【
図8】
図6に示した不釣合い修正方法を一般化した例で示すフローチャートである。
【
図9】修正錘の空間と振動評価の空間の対応関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明の理解を容易にするため、
図1を参照して、上述した非特許文献1に記載の公知技術について述べる。非特許文献1に従えば、例えば、以下のように考え得る。即ち、
図1に示すような回転機械を想定する。
図1に示すように、この回転機械では、回転体10の修正面11、12、13には、ねじ穴(図示せず)があって、ねじ(図示せず)を錘(図示せず)として残せるようになっていたり、駄肉部分(特には、図示せず)があり、その駄肉部分を削れるようになっていたり、錘(図示せず)を動かして固定できるようになっていたりする。尚、
図1中、16は、ツールや砥石、17、18は、それぞれ加速度センサの一例である。
【0012】
ここで、非特許文献1の103頁から104頁に記載されているように、バランス修正面をm面、振動測定箇所をn箇所とする。初期振動A
0を計測する。以下の数式(1)が得られる。
【数1】
各要素は各センサの振動観測の結果である。軸方向にn箇所にセンサが配置されていて、振動を観測できるとする。ここでは、ある回転数S
1における振幅と位相の情報を有する複素数とする。このような観測はロックインアナライザ(たとえば、得られる振動計の信号に回転に同期した90度位相の異なる正弦波をかけて直流成分だけを捉える)などの回転同期型のフィルタを用いて行われるとなお良い。
【0013】
次に、不釣合い修正面1に試しおもりW
1(位相と大きさを持つ複素数)を付加したときの同じ回転数で回転したとき各センサの観測する振動A
1を計測する。以下の数式(2)が得られる。
【数2】
よって、修正面1に試しおもりをつける効果を単位おもり当たりに換算した係数α
1は、以下の数式(3)により得られる。
【数3】
ただしαi,jはi番目のセンサ位置、j修正面番号をあらわす。この手順を各修正面について繰り返しすべての係数を求める(各修正面の単位おもりが各センサに与える影響係数)。以下の数式(4)が得られる。
【数4】
釣り合わせでは、初期振動A
0を打ち消すように各修正面におもりC
j(大きさと位相を持つ複素数)をつければよく、次の数式(5)のように得られる。
【数5】
ただし、次の数式(6A)(6B)が成り立つ。
【数6】
よく行われるのはn=m=1またはn=m=2である。n=mの場合には、次の数式(7)として求まる。
【数7】
参考文献にあるとおり、n>mの場合には、最小二乗法として、次の数式(8)が成り立つ。
【数8】
なお、数(9A)は数(9B)の共役転置を表現しただけである。
【数9】
また、影響係数α
iについて各修正面について繰り返しすべての係数を求める計算には、上述のように右辺がA
0との差をとりそのとき追加した試し錘で割る形式であることは必要なく、以下の数式(10)のような形式でもよい。
【数10】
この場合には、ある修正面に試し錘をつけて振動を評価したら、一つ前までにつけた試し錘を残したまま各修正面に錘を増やしたときの影響係数を計算するということになる。特に駄肉部分を削るような不釣合い修正面を使う場合には、一旦削り落とすと元に戻せないのでこのような形式となることがある。
【0014】
通常、多くのフィールドバランサ(現場で不釣合いを評価しまた修正するための道具)では評価の回転数は一定にしてくださいと記述されているが、
ここで、回転数S
1を変え複数の回転数S
1 ,S
2 ,
…S
kで試験をする場合にはA
0、…、A
mの要素数nを拡張する。つまり、回転数ごとに別センサの出力と考える。
このことを、例えば次の数式(11)のように表現して考える。
【数11】
ここで、先ほどまでnとしていた要素数は「振動測定箇所」の「回転数の個数」倍で、n×kになる。
結果的には、α
0、…、α
mの要素数を拡張することにも繋がる。よって次の数式(12)が成り立つ。
【数12】
ただし、注意すべき点はCの要素数mは拡張しない。
どんどん先述のn(要素数)⋙ mに近づいていく。手計算では面倒でも、このような計算をこなす不釣合い修正システムは多面多速度釣り合わせ対応と称され商品化されている(例えば、シグマ電子工業株式会社SB-7705Rなど)。逆にCを置けば不釣合い修正で残る予測(各回転数ごと)も次の数式(13)により可能である。
【数13】
【0015】
通常、上述のような複数速度を扱える装置であっても、機械の座標は一定にしてくださいと説明される。これは、回転体の不釣合いを0にすればこれを工具回転機構として使用した場合、振動を生じさせる力である加振力は0なのでどの座標に工具回転装置を持っていっても振動は0であるとの考えに基づく。しかし、釣り合わせとは実際にはセンサの位置で振動を打ち消すように調整するものであるので、完全に加振力は0にするものではないことは当然である。この残留する加振力が機械の座標を移したときに共振を生み振動を大きくし得る。ある座標で0に出来ても座標を転じた場合に振動が大きくなる状況を生じうる。
作業者によってはこれを「工具の座標によってバランスが変化する」と表現する場合があるが、多くの場合には、回転体の不釣合いはそのままでの座標の変化で残留した振動が共振しやすくなったり共振しにくくなったりするということの方が多い。もちろん、現実の弾性体ロータでは回転数によって不釣合いが変化することがある。
【0016】
そこで、上の考えを拡張して、機械の座標P
1を変え複数の座標P
1,P
2,
…P
iで試験をする場合にも、A
0、…、A
mの要素数nを再度拡張する。つまり、回転数のみならず座標ごとに別センサの出力と考える。
このことを、例えば次の数式(14)のように表現して考える。
【数14】
結果的には、次の数式(15)
【数15】
の計算から、α
0、…、α
mの要素数を拡張することにも繋がる。これにより先ほどまでnとしていた要素数はn×k×lと飛躍的に増加するが、電子計算器を用いれば容易に計算可能である。
回転数S
1 ,S
2 ,
…S
kでおよび機械の座標P
1,P
2,
…P
iは使用する範囲内で分布させる。特に座標は複数の送り軸および回転軸を使用する場合にはその範囲内で立体的に分布させる。
このようにとったとき、最小二乗法によって得られる修正の指示は、回転数S
1 ,S
2 ,
…S
kでおよび機械の座標P
1,P
2,
…P
iの範囲内で全体的に振動を小さく保つ指示に近い。
ここで,P
iとはX-Y-Zの3軸を有する機械なら3次元,5軸を有する機械なら5次元の要素を有し得るベクトル変数である。
【0017】
尚、このような観測はロックインアナライザ(たとえば、得られる振動計の信号に回転に同期した90度位相の異なる正弦波をかけて直流成分だけを捉える)などの回転同期型のフィルタなどの装置が無い場合にも、非特許文献1には、互いに平行でない3つの位相にそれぞれ試し錘をつける場合と試しおもりをつけない場合について評価すると作図によって影響係数を求められることを示している(非特許文献1の128頁から130頁参照)。
【0018】
次に、本発明の実施形態に係る振動の立体的位置での評価による不釣合い修正方法及びその方法を自動化可能な工作機械について述べる。まず、上述した
図1のような切削工具または砥石の回転モータ装置を考える。この装置には手動で調整可能な不釣り合い修正面が2つ内蔵されておりまた工具の側に1つ修正面が設けられており合計3つの修正面で不釣り合いに対応できる。釣り合わせ用に2つの加速度計(センサ)を搭載している。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に係る不釣合い修正方法を自動化可能な工作機械で、
図1のような装置を備えた一例を示す図である。即ち、この工作機械は、
図2に示すように、相互に直交するX軸とZ軸、X軸廻りの旋回A軸、Z軸廻りの旋回C軸を備え、X送りモータ21、A回転モータ22、Z送りモータ23、C回転モータ24、砥石モータ25、ツール(砥石)26を有し、ワークWを加工する工作機械であり、
図1のような装置を砥石モータ25の箇所に備えている。
【0020】
図3は、本発明の実施形態に係る不釣合い修正方法を自動化可能な工作機械で、
図1のような装置を備えた他の一例を示す図である。即ち、この工作機械は、
図3に示すように、相互に直交するX軸、Y軸、Z軸と、Z軸廻りの旋回C軸を備え、X送り装置31、Z送り装置32、工具主軸33、工具34、ワークテーブル35、C回転装置36を有し、工具34によりワークWを加工する工作機械であり、
図1のような装置を工具主軸33の箇所に備えている。尚、Y送り装置は図示を省略している。即ち、ここでは、
図3のようなX-Y-Zを備える工作機械を考える。C軸座標はある加工中は一意の座標をとるとする。たとえば、P
0=(x, y, z) = (0, 0, 0), P
1=(-200, 0, 0), P
2=(0, -200, 0), P
3=(-200, -200, 0), P
4=(0, 0, -200), P
5=(-200, 0, -200), P
6=(-200, -200, -200)とする。回転数についてもたとえばS
1 = 1000, S
2 = 2000とする。
【0021】
図4は、本発明の実施形態に係る振動の立体的位置での評価による不釣合い修正方法において、振動を評価させる座標を立体的に分布させることを説明するための図である。
図4に示すように、立体的とは,平面上や直線上ではなく使う範囲内で座標を分布させること。ただし、1軸や2軸しか使わない場合はその限りではない。
また、
図4に示すように、残りの軸(回転軸)についても分布させるし、回転数についても分布させる。
【0022】
図5は、本発明の実施形態に係る振動の立体的位置での評価による不釣合い修正方法の部分サイクルである振動測定の1サイクルを示すフローチャートである。即ち、
図5に示すように、振動測定の1サイクル500では、1サイクルが開始されると(S501)、i=1とし(S502)、iが6(座標数)以下であるか否かを判定し(S503)、6(座標数)以下であれば(S503でYes)、座標Piに移動する(S504)。j=1とし(S505)、jが2(回転数)以下であるか否かを判定し(S506)、2(回転数)以下であれば(S506でYes)、j=j+1とし(S507)、回転数Sjに変更する(S508)。そして、n個のセンサで振動を評価する(S509)ように、S506からS508までの処理を繰り返す。一方、S506でjが2(回転数)以下でなければ(S506でNo)、i=i+1とし(S510)、S503以降の処理を繰り返す。また、S503でiが6(座標数)以下でなければ(S503でNo)、この1サイクルが終了する(S511)。このような振動評価のサイクルにより、3×6×2(つまりn×(座標点数l)×(回転数の数k))の振動評価(大きさと位相を持つ情報、ただし2センサ分を1つと数えた場合)が得られる。なお位置及び回転数の変更、各条件での振動評価は、工作機械の制御装置により自動的に行わせることが出来る。
【0023】
図6は、本発明の実施形態に係る振動の立体的位置での評価による不釣合い修正方法を示すフローチャートである。即ち、
図6に示すように、
図5に示した振動測定を1サイクル実行し(S600)、修正の試し錘を付加しないで初期振動の測定を行う。そして、まず、修正面1に試し錘を付加(S601)した上で、振動測定を1サイクル実行する(S602)。次に、修正面2に試し錘を付加(S603)した上で、振動測定を1サイクル実行する(S604)。このとき、修正面1に付加した試し錘(S602)は除去する。更に、修正面3に試し錘を付加(S605)した上で、振動測定を1サイクル実行する(S606)。このとき、修正面2に付加した試し錘(S603)は除去する。以上のS601からS606の処理により、試し錘の影響を測定する。この後、最適修正量を計算し(S607)、最終修正を行う(S608)。これらS607及びS608の処理により不釣り合いの修正がなされる。最後に、振動測定を1サイクル実行する(S609)が、これは効果の確認のためのサイクルである。上記S606の振動測定1サイクルを実行した時点で、4×2×6×2(4:1初期の測定+3試し錘つきの測定、2:回転数の個数、6:座標の個数、2:センサ数)の要素を振動評価(大きさと位相を持つ情報)が得られる。
ところで、
図6のように一面ずつ試し錘を付けて振動を評価すると、試し錘の影響測定が終わると、各面の振動の各要素への影響を影響係数として、以下の数式(16)で計算できる。
【数16】
なお、修正面に試し錘をつけるときに、一々、一つ前の試し錘を除去すると記述したが、しない場合や出来ない場合には、影響係数の計算式を以下の数式(17)のように変更する。
【数17】
なおこの影響係数が厳密に有効なのは、各面への錘の追加と振動の大きさの関係が線形の場合に限る。ただ、最終の修正の時の錘の追加と試し錘が数十倍の差がなければ評価として有用である。以下の数式(18)
【数18】
と置き、εの絶対値が最小になるように、C
1, C
2, C
3を探す数値最小化問題として扱うことができる。その一解法として最小二乗法が適用できる。
以上を一般化すると、以下の
図7と
図8のようになる。
【0024】
図7は、
図5に示した振動測定の1サイクルを一般化した例で示すフローチャートである。即ち、
図7に示すように、振動測定の1サイクル700では、1サイクルが開始されると(S701)、i=1とし(S702)、iがl(座標数)以下であるか否かを判定し(S703)、l(座標数)以下であれば(S703でYes)、座標Piに移動する(S704)。j=1とし(S705)、jがk(回転数)以下であるか否かを判定し(S706)、k(回転数)以下であれば(S706でYes)、j=j+1とし(S707)、回転数Sjに変更する(S708)。そして、n個のセンサで振動を評価する(S709)ように、S706からS708までの処理を繰り返す。一方、S706でjがk(回転数)以下でなければ(S706でNo)、i=i+1とし(S710)、S703以降の処理を繰り返す。また、S703でiがl(座標数)以下でなければ(S703でNo)、この1サイクルが終了する(S711)。このような振動評価のサイクルにより、n×(座標点数l)×(回転数の数k)の振動評価(大きさと位相を持つ情報)が得られる。
【0025】
図8は、
図6に示した不釣合い修正方法を一般化した例で示すフローチャートである。即ち、
図8に示すように、
図7に示した振動測定を1サイクル実行する(S800)。そして、修正面1を試し、錘を付加(S801)した上で、振動測定を1サイクル実行する(S802)。次に、修正面2を試し、錘を付加(S803)した上で、振動測定を1サイクル実行する(S804)。これを、修正面mを試し、錘を付加(S805)した上で、振動測定を1サイクル実行する(S806)まで繰り返す。この後、最適修正量を計算し(S807)、最終修正を行う(S808)。最後に、振動測定を1サイクル実行する(S809)が、これは効果の確認のためのサイクルである。
【0026】
図9は、修正錘の空間と振動評価の空間の対応関係を説明するための図である。即ち、ここまでは、陽に影響係数α
iを解いているが、各修正面に錘の組み合わせCaをつけて振動の評価をAaとし、
図9に示すように修正錘と振動評価に一定の関数があると仮定し、以下の数式(19A)と(19B)のように、振動評価Aaの大きさを最小化するCaを探索する問題として直接扱うことも可能である。
【数19】
【符号の説明】
【0027】
10 回転体、 11、12、13 修正面、 16 ツール(砥石)、 17、18 加速度センサ、
21 X送りモータ、 22 A回転モータ、 23 Z送りモータ、24 C回転モータ、 25 砥石モータ、 26 ツール(砥石)、 W ワーク、
31 X送り装置、 32 Z送り装置、 33 工具主軸、 34 工具、 35 ワークテーブル、 36 C回転装置