IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヨツギ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-固定具 図1
  • 特許-固定具 図2
  • 特許-固定具 図3
  • 特許-固定具 図4
  • 特許-固定具 図5
  • 特許-固定具 図6
  • 特許-固定具 図7
  • 特許-固定具 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】固定具
(51)【国際特許分類】
   B65D 63/14 20060101AFI20240610BHJP
   F16L 57/00 20060101ALI20240610BHJP
   B65D 63/10 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
B65D63/14 B
F16L57/00 A
B65D63/10 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020173078
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064447
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000115382
【氏名又は名称】ヨツギ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166589
【弁理士】
【氏名又は名称】植村 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】川田 淳
(72)【発明者】
【氏名】十川 秋夫
(72)【発明者】
【氏名】池側 勝己
(72)【発明者】
【氏名】粟井 幹人
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-206434(JP,A)
【文献】特開2017-074968(JP,A)
【文献】特開2000-060608(JP,A)
【文献】実開昭60-177306(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0247153(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 63/00-63/18
F16L 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下に埋設される管状の埋設物を保護するシートを、当該埋設物に対して固定するための固定具であって、
前記固定具は、
一定方向に長く形成された紐状部と、
前記紐状部の一方向端部が固定され、
前記紐状部が前記埋設物及び前記シートを一周以上した状態の前記紐状部の反対方向端部側を固定可能な
固定片部と、を有し、
前記固定片部は、
前記紐状部の反対方向側を固定可能な第1貫通穴部を有し、
前記第1貫通穴部には、前記固定片部に挿入された状態の前記紐状部を、管状の埋設物の周方向にガイドする、覆い部を有する
ことを特徴とする固定具。
【請求項2】
地下に埋設される管状の埋設物を保護するシートを、当該埋設物に対して固定するための固定具であって、
前記固定具は、
一定方向に長く形成された紐状部と、
前記紐状部の両端部分が固定され、
前記紐状部が前記埋設物及び前記シートを一周以上した状態の前記紐状部の中央部分側を固定可能な
固定片部と、を有し、
前記固定片部は、
前記紐状部の中央部分側を固定可能な第1貫通穴部を有し、
前記第1貫通穴部には、前記固定片部に挿入された状態の前記紐状部を、管状の埋設物の周方向にガイドする、覆い部を有する
ことを特徴とする固定具。
【請求項3】
前記第1貫通穴部の穴と連続し、前記固定片部の外部まで伸びる第1貫通溝部と、を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の固定具。
【請求項4】
前記紐状部は伸縮性を有し、前記第1貫通溝部は、前記第1貫通穴部又は、自然状態の前記紐状部よりも幅が狭く形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の固定具。
【請求項5】
前記紐状部は伸縮性を有し、前記固定片部は、前記紐状部の反対方向端部側又は中央部分側を固定可能な第2貫通穴部と、
前記第2貫通穴部の穴と連続し、前記固定片部の外部まで伸びる第2貫通溝部を有し、
前記第2貫通溝部は、前記第2貫通穴部又は、前記紐状部よりも幅が狭く形成されている
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の固定具。
【請求項6】
前記貫通穴部の少なくとも1つには、当該貫通穴部に挿入された前記紐状部の抜け止めの返し部が形成されている
ことを特徴とする請求項1~5いずれか1項に記載の固定具。
【請求項7】
前記貫通溝部の少なくとも1つは、隣接する前記貫通穴部の方向に向かうにつれて幅が狭く形成されている
ことを特徴とする請求項3~5いずれか1項に記載の固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設される水道管等の外表面に巻き付けられる防食シートを固定する固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に存在するバクテリアや水分等の影響により、地中に埋設される水道管(あるいはガス管など)の外表面が浸食してしまうといった問題があった。このため、水道管を地中に埋設する前に、浸食を防止するシート(以下、「防食シート」という。)を水道管に巻き付けて施工する対策が施されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
防食シートは、管径サイズの異なる様々な管に対応して、サイズの異なる多くの種類が既に用いられている。そのため、水道管に防食シートを巻き付けるユーザは、被覆される水道管のサイズを確認した上で、サイズの見合った防食シートを適宜選択し、巻き付け作業を行う。
【0004】
そして、防食シートを水道管の表面にフィットさせるため、ユーザは、手作業で防食シートの弛みを抑えるように水道管の表面に巻き付ける。その後、ユーザは、紐状の固定バンド等を用いて、防食シートの位置を固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-87011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような固定バンドを用いる場合、締め具とゴムバンドの折り返し部分をそれぞれ片手で持って引っ張りながら固定するという作業が必要となり、これがユーザにとって負荷となっている。さらに、ゴムバンドに張力を発生させながら固定するため、固定時に手が挟まったり、手からゴムバンドが外れてしまった際に反発力で締め具が暴れたりすることがあり、危険である。
【0007】
本発明では、このような課題に鑑み、利便性を向上することができる固定具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点における固定具は、
地下に埋設される管状の埋設物を保護するシートを、当該埋設物に対して固定するための固定具であって、
前記固定具は、
一定方向に長く形成された紐状部と、
前記紐状部の一方向端部側が固定され、
前記紐状部が前記埋設物及び前記シートを一周以上した状態の前記紐状部の反対方向端部側を固定可能な
固定片部と、を有し、
前記固定片部は、
前記紐状部の反対方向端部側を固定可能な第1貫通穴部を有する
ことを特徴とする。
【0009】
本発明の第2の観点における固定具は、
地下に埋設される管状の埋設物を保護するシートを、当該埋設物に対して固定するための固定具であって、
前記固定具は、
一定方向に長く形成された紐状部と、
前記紐状部の両端部分が固定され、
前記紐状部が前記埋設物及び前記シートを一周以上した状態の前記紐状部の中央部分側を固定可能な
固定片部と、を有し、
前記固定片部は、
前記紐状部の中央部分側を固定可能な第1貫通穴部を有する
ことを特徴とする。
【0010】
より好適には、
前記第1貫通穴部には、前記固定片部に挿入された状態の前記紐状部を、管状の埋設物の周方向にガイドする、覆い部を有する
ことを特徴とする。
【0011】
より好適には、
前記第1貫通穴部の穴と連続し、前記固定片部の外部まで伸びる第1貫通溝部と、を有する
ことを特徴とする。
【0012】
より好適には、
前記紐状部は伸縮性を有し、前記第1貫通溝部は、前記第1貫通穴部又は、自然状態の前記紐状部よりも幅が狭く形成されている
ことを特徴とする。
【0013】
より好適には、
前記紐状部は伸縮性を有し、前記固定片部は、前記紐状部の反対方向端部側又は中央部分側を固定可能な第2貫通穴部と、
前記第2貫通穴部の穴と連続し、前記固定片部の外部まで伸びる第2貫通溝部を有し、
前記第2貫通溝部は、前記第2貫通穴部又は、前記紐状部よりも幅が狭く形成されている
ことを特徴とする。
【0014】
より好適には、
前記貫通穴部の少なくとも1つには、当該貫通穴部に挿入された前記紐状部の抜け止めの返し部が形成されている
ことを特徴とする。
【0015】
より好適には、
前記貫通溝部の少なくとも1つは、隣接する前記貫通穴部の方向に向かうにつれて幅が狭く形成されている
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る固定具によれば、水道管に防食シートを巻き付ける際の作業性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例1(2)に係る固定具を取り付けた状態を示す概略図である。
図2】本発明の実施例1に係る固定具(通常時)を説明する概略図である。
図3】本発明の実施例1に係る固定具(取り付け時)を説明する概略図である。
図4】本発明の実施例2に係る固定具(通常時)を説明する概略図である。
図5】本発明の実施例2に係る固定具(取り付け時)を説明する概略図である。
図6】本発明の実施例1に係る固定具(変形例)を説明する概略図である。
図7】本発明の実施例2に係る固定具(変形例)を説明する概略図である。
図8】本発明の実施例1(2)における第3貫通穴部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る固定具について、実施例にて図面を用いて説明する。なお、下記実施例においては、水道管に防食シートを巻き付けるものとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、地下に埋設される管状の埋設物を保護するシートを当該埋設物に対して固定する場合全般に適用されるものである。
【0019】
[実施例1]
図1に示すように、本実施例に係る固定具1は、水道管3の表面に巻き付けられた防食シート4の表面に巻き付けられることで、防食シート4を水道管3に固定するものであり、主たる構成として紐状部11及び固定片部12を備えている。
【0020】
紐状部11は、一定方向に長く形成されている紐状のものであり、ゴムなどの伸縮性を有する材質からなる。以下では、紐状部11の一方向の端部を一方向端部11a、反対方向の端部を反対方向端部11bと呼称するものとする。
【0021】
図2,3に示すように、固定片部12は、紐状部11の一方向端部11aが(後述の第3貫通穴部12j及び第4貫通穴部12kにより)固定され、紐状部11が水道管3及び防食シート4を一周以上した状態において反対方向端部11b側を固定可能なものであり、略平板状となっている。ただし、一方向端部11aが固定された紐状部11は、固定片部12のウラ面12h側から外に延伸しているものとする。
以下、固定片部12の形状について詳述する。
【0022】
固定片部12は、紐状部11に固定された一方向端部11aから、固定片部12の長手方向に離間した位置において、固定片部12の厚み方向に貫通して形成され、紐状部11の反対方向端部11b側を挿入することで固定可能な第1貫通穴部12aを有している。
【0023】
また、固定片部12は、第1貫通穴部12aの穴と連続(連通)するようにして、固定片部12の厚み方向を貫通して形成され、固定片部12の外部まで伸びる(固定片部12の幅方向一端縁まで連通する)第1貫通溝部12bを有している。
【0024】
第1貫通溝部12bについては、第1貫通穴部12a、及び、自然状態の紐状部11よりも幅が狭く形成されている(第1貫通穴部12a、又は、自然状態の紐状部11よりも幅が狭く形成されているものとしてもよい)。
【0025】
さらに、固定片部12は、第1貫通穴部12aに挿入された状態の紐状部11の反対方向端部11bを、水道管3の周方向にガイドする、覆い部12cを有している。
【0026】
覆い部12cは、固定片部12のオモテ面12iにおいて、第1貫通穴部12aを覆うようにして、第1貫通穴部12aの縁部に形成される球面状のものであり、第1貫通溝部12b側、及び、固定片部12の長手方向における一方向端部11aと反対側が、開口している(第1貫通穴部12aの縁部から離間している)。
【0027】
また、開口した部分は、自然状態の紐状部11の径より狭く、引っ張られた状態の紐状部11の径より広く、したがって、引っ張られた状態の紐状部11は、第1貫通穴部12aから覆い部12cを潜り後述の第2貫通穴部12dに挿入可能である。ただし、この開口した部分は、必ずしも自然状態の紐状部11の径より狭くなくともよい。
【0028】
固定片部12は、第1貫通穴部12aから、固定片部12の長手方向における、両端部分12aと反対側に離間した位置において、固定片部12の厚み方向に貫通して形成され、紐状部11の反対方向端部11bを挿入することで固定可能な第2貫通穴部12dを有している。
【0029】
また、固定片部12は、第2貫通穴部12dの穴と連続(連通)するようにして、固定片部12の厚み方向を貫通して形成され、固定片部12の外部まで伸びる(固定片部12の幅方向他端縁まで連通する)第2貫通溝部12eを有している。
【0030】
第2貫通溝部12eについては、第2貫通穴部12d、及び、自然状態の紐状部11よりも幅が狭く形成されている(第2貫通穴部12d、又は、自然状態の紐状部11よりも幅が狭く形成されているものとしてもよい)。
【0031】
そして、固定片部12は、第1貫通穴部12aに第1返し部12fが、第2貫通穴部12dに第2返し部12gが、それぞれ設けられている。返し部12f,12gはそれぞれ角部であり、貫通穴部12a,12dに挿入された紐状部11の抜け止めとして機能する。第1返し部12fは、第1貫通穴部12aの第1貫通溝部12bとの境界部分に形成され、第2返し部12gは、第2貫通穴部12dの第2貫通溝部12eとの境界部分に形成されている。
【0032】
なお、固定片部12は、紐状部11の一方向端部11aを固定するための第3貫通穴部12j及び第4貫通穴部12kが設けられている。第3貫通穴部12j及び第4貫通穴部12kは、固定片部12の長手方向に並んで形成されており、第3貫通穴部12jよりも第4貫通穴部12kの方が第1貫通穴部12aに近い位置に設けられている。第3貫通穴部12jは、図8に示すように、その内周面に、第3貫通穴部12jに挿入された紐状部11の抜け止めの第3返し部12lが形成されている。この第3返し部12lは、第4貫通穴部12kにも形成されるものとしてもよい。
【0033】
紐状部11の反対方向端部11bは、第4貫通穴部12kに対しウラ面12h側から挿入された後、第3貫通穴部12jに対し、オモテ面12i側から挿入されて引っ張られ、紐状部11の一方向端部11a側のみが第3貫通穴部12jに挿入されずに留まり、結果として、一方向端部11a側が固定片部12に固定された状態となる。
【0034】
以上が、本実施例に係る固定具1の構成についての説明である。
以下、ユーザが、本実施例に係る固定具1を用いて水道管3の表面に巻き付けられた防食シート4を固定する手順を説明する。
【0035】
まず、水道管3の表面に防食シート4を巻き付ける。次に、固定具1を取り付ける。このとき、固定片部12のオモテ面12iが(水道管3の)径方向外側を向くようにして、紐状部11を防食シート4の周面に一周以上巻き付ける。紐状部11の巻き付け方向は、反対側端部11aが固定された位置から、第1貫通穴部12a側と反対方向である。
【0036】
さらに、紐状部11を引っ張った状態で、反対方向端部11b側を、第1貫通溝部12bを通して第1貫通穴部12aに嵌める(第1貫通溝部12bは、自然状態の紐状部11の径では通らないが、引っ張られて縮径した紐状部11であれば通すことができる)ことで、反対方向端部11b側が第1貫通穴部12aに挿入された状態となる。
【0037】
ただしこのとき、第1貫通穴部12aに対し、紐状部11の反対方向端部11b側が固定片部12のウラ面12h側からオモテ面12i側に向けて挿入された状態となるようにする。
【0038】
そして、紐状部11を引っ張った状態で、第1貫通穴部12aに挿入された反対方向端部11bを、覆い部12cに潜らせつつ第2貫通溝部12eに通す。覆い部12cに潜らせた紐状部11は、鋭角に折り返される格好となり、これにより摩擦が大きく発生し、緩み止めとなる。
【0039】
紐状部11は、第2貫通溝部12eに通したあと、第2貫通穴部12dに嵌める(第2貫通溝部12eは、自然状態の紐状部11の径では通らないが、引っ張られて縮径した紐状部11であれば通すことができる)ことで、反対方向端部11bが第2貫通穴部12dに挿入された状態となる。
【0040】
なおこのとき、第2貫通穴部12dに対し、反対方向端部11bがオモテ面12i側から裏面12h側に向けて挿入された状態となる。
【0041】
このようにして設置された固定具1は、図3に示すような状態で、水道管3の表面に巻き付けられた防食シート4を固定する。
以上が、ユーザが本実施例に係る固定具1を用いて水道管3の表面に巻き付けられた防食シート4を固定する手順の説明である。
【0042】
本実施例によれば、第1貫通穴部12aを有するので、防食シート4の周面に一周以上巻き付けられた紐状部11の反対方向端部11b側を第1貫通穴部12aに固定することができ、これにより、水道管3の表面に巻き付けられた防食シート4を固定することができる。
【0043】
本実施例によれば、固定片部12に挿入された状態の紐状部11の反対方向端部11bを、水道管3の周方向にガイドする、覆い部12cを有するので、この覆い部12cを潜らせて紐状部11を引っ張る(絞る)ことで、防食シート4をより確実に固定することができるとともに、紐状部11の反対方向端部11bを第2貫通穴部12dへ導きやすくなる。さらに、一度紐状部11が覆い部12cに沿って引っ張られれば、覆い部12cの内周面と紐状部11とが摺接するため、第1貫通穴部12aの紐状部11の固定が緩みにくくなる。
【0044】
なお、本実施例では、第1貫通溝部12bを有するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、第1貫通溝部12bを設けずに第1貫通穴部12aに紐状部11をそのまま(厚み方向に)挿入することもできる。しかしながら、本実施例で説明したように、第1貫通溝部12bは、紐状部11を第1貫通穴部12aに挿入する際に、第1貫通溝部12bを通してから第1貫通穴部12aに挿入する(横からスライドさせるようにして嵌める)ことにより、紐状部11を第1貫通穴部12aに挿入しやすくなる。
【0045】
なお、もし第1貫通溝部12bが設けられないものとする場合には、覆い部12cの開口部分は、固定片部12の長手方向における一方向端部11aと反対側のみとする。
【0046】
また、本実施例では、第2貫通穴部12d、及び、第2貫通溝部12eを有するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図6に示すような形状としてもよい。すなわち、紐状部11は、第1貫通穴部12aに挿入されさえすれば、水道管3の表面に巻き付けられた防食シート4を固定することができる。
【0047】
また図6に示すように、第1貫通溝部12bは、隣接する第1貫通穴部12aの方向に向かうにつれて幅が狭く形成されているようにしてもよい。このようにすることで、紐状部11を第1貫通溝部12bから第1貫通穴12aにスライドさせる際に、固定片部12の長手方向における両端部分12aと反対方向(図示)に引っ張るようにした場合、紐状部11がブレずに第1貫通穴部12aに収まるようになる。
【0048】
これは、図2の第2貫通溝部12eにも同じことが言える。すなわち、貫通溝部12a,12eのうち少なくとも1つは、隣接する貫通穴部12a,12dの方向に向かうにつれて幅が狭く形成されているようにすることが好ましい。
【0049】
[実施例2]
本実施例では、実施例1と重複する部分を一部削除して説明する。
図4,5に示すように、本実施例に係る固定具2は、主たる構成として紐状部13及び固定片部14を備えている。
【0050】
紐状部13は、一定方向に長く形成されている紐状のものであり、ゴムなどの伸縮性を有する材質からなる。以下では、紐状部13の両端を一纏めにして両端部分13a、延伸方向中央の部分を中央部分13bと呼称するものとする。
【0051】
固定片部14は、紐状部13の両端部分13aが(後述の第3貫通穴部14j及び第4貫通穴部14kにより)固定され、紐状部13が水道管3及び防食シート4を一周以上した状態において中央部分13b側を固定可能なものであり、略平板状となっている。ただし、両端部分13aが固定された紐状部13は、固定片部14のウラ面14h側から外に延伸しているものとする。
以下、固定片部14の形状について詳述する。
【0052】
固定片部14は、紐状部13に固定された両端部分13aから、固定片部14の長手方向に離間した位置において、固定片部14の厚み方向に貫通して形成され、紐状部13の中央部分13b側を挿入することで固定可能な第1貫通穴部14aを有している(紐状部13は中央部分13bで折り返されるため、実質2本分が挿入される)。
【0053】
また、固定片部14は、第1貫通穴部14aの穴と連続(連通)するようにして、固定片部14の厚み方向を貫通して形成され、固定片部14の外部まで伸びる(固定片部14の幅方向一端縁まで連通する)第1貫通溝部14bを有している。
【0054】
第1貫通溝部14bについては、第1貫通穴部14a、及び、自然状態の紐状部13よりも幅が狭く形成されている(第1貫通穴部14a、又は、自然状態の紐状部13よりも幅が狭く形成されているものとしてもよい)。
【0055】
さらに、固定片部14は、第1貫通穴部14aに挿入された状態の紐状部13の中央部分13bを、水道管3の周方向にガイドする、覆い部14cを有している。
【0056】
覆い部14cは、固定片部14のオモテ面14iにおいて、第1貫通穴部14aを覆うようにして、第1貫通穴部14aの縁部に形成される球面状のものであり、第1貫通溝部14b側、及び、固定片部14の長手方向における両端部分13aと反対側が、開口している(第1貫通穴部14aの縁部から離間している)。
【0057】
また、開口した部分は、自然状態の紐状部13の径より狭く、引っ張られた状態の紐状部13の径より広く、したがって、引っ張られた状態の紐状部13は、第1貫通穴部14aから覆い部14cを潜り後述の第2貫通穴部14dに挿入可能である。ただし、この開口した部分は、必ずしも自然状態の紐状部13の径より狭くなくともよい。
【0058】
固定片部14は、第1貫通穴部14aから、固定片部14の長手方向における、両端部分13aと反対側に離間した位置において、固定片部14の厚み方向に貫通して形成され、紐状部13の中央部分13bを挿入することで固定可能な第2貫通穴部14dを有している。
【0059】
また、固定片部14は、第2貫通穴部14dの穴と連続(連通)するようにして、固定片部14の厚み方向を貫通して形成され、固定片部14の外部まで伸びる(固定片部12の幅方向他端縁まで連通する)第2貫通溝部14eを有している。
【0060】
第2貫通溝部14eについては、第2貫通穴部14d、及び、自然状態の紐状部13よりも幅が狭く形成されている(第2貫通穴部14d、又は、自然状態の紐状部13よりも幅が狭く形成されているものとしてもよい)。
【0061】
そして、固定片部14は、第1貫通穴部14aに第1返し部14fが、第2貫通穴部14dに第2返し部14gが、それぞれ設けられている。返し部14f,14gはそれぞれ角部であり、貫通穴部14a,14dに挿入された紐状部11の抜け止めとして機能する。第1返し部14fは、第1貫通穴部14aの第1貫通溝部14bとの境界部分に形成され、第2返し部14gは、第2貫通穴部14dの第2貫通溝部14eとの境界部分に形成されている。
【0062】
なお、固定片部14は、紐状部13の一方向端部13aを固定するための2つの第3貫通穴部14j及び2つの第4貫通穴部14kが設けられている。第3貫通穴部12j同士及び第4貫通穴部12kは固定片部14の幅方向に並んで形成されており、第3貫通穴部14jと第4貫通穴部14kとは、固定片部14の長手方向に並んで形成されており、第3貫通穴部14jよりも第4貫通穴部14kの方が第1貫通穴部14aに近い位置に設けられている。第3貫通穴部14jは、図8に示すように、その内周面に、第3貫通穴部14jに挿入された紐状部13の抜け止めの第3返し部14lが形成されている。この第3返し部14lは、第4貫通穴部14kにも形成されるものとしてもよい。
【0063】
紐状部13の反対方向端部13bは、第4貫通穴部14kに対しウラ面14h側から挿入された後、第3貫通穴部14jに対し、オモテ面14i側から挿入されて引っ張られ、紐状部13の一方向端部13a側のみが第3貫通穴部14jに挿入されずに留まり、結果として、一方向端部13a側が固定片部14に固定された状態となる。
【0064】
以上が、本実施例に係る固定具2の構成についての説明である。
以下、ユーザが、本実施例に係る固定具2を用いて水道管3の表面に巻き付けられた防食シート4を固定する手順を説明する。
【0065】
まず、水道管3の表面に防食シート4を巻き付ける。次に、固定具2を取り付ける。このとき、固定片部14のオモテ面14iが(水道管3の)径方向外側を向くようにして、紐状部13(実質2本分)を防食シート4の周面に一周以上巻き付ける。紐状部13の巻き付け方向は、両端部分13aが固定された位置から、第1貫通穴部14a側と反対方向である。
【0066】
さらに、紐状部13を引っ張った状態で、中央部分13b側を、第1貫通溝部14bを通して第1貫通穴部14aに嵌める(第1貫通溝部14bは、自然状態の紐状部13の径では通らないが、引っ張られて縮径した紐状部13であれば、実質2本分を順に入れることで通すことができる)ことで、中央部分13b側が第1貫通穴部14aに挿入された状態となる。
【0067】
ただしこのとき、第1貫通穴部14aに対し、紐状部13の中央部分13b側が固定片部14のウラ面14h側からオモテ面14i側に向けて挿入された状態となるようにする。
【0068】
そして、紐状部13を引っ張った状態で、第1貫通穴部13aに挿入された中央部分13b側を、覆い部14cに潜らせつつ第2貫通溝部14eに通す。覆い部14cに潜らせた紐状部13は、鋭角に折り返される格好となり、これにより摩擦が大きく発生し、緩み止めとなる。
【0069】
紐状部13は、第2貫通溝部14eに通したあと、第2貫通穴部14dに嵌める(第2貫通溝部14eは、自然状態の紐状部13の径では通らないが、引っ張られて縮径した紐状部13であれば、実質2本分を順に入れることで通すことができる)ことで、中央部分13bが第2貫通穴部14dに挿入された状態となる。
【0070】
なおこのとき、第2貫通穴部14dに対し、中央部分13bがオモテ面14i側から裏面14h側に向けて挿入された状態となる。
【0071】
このようにして設置された固定具2は、図5に示すような状態で、水道管3の表面に巻き付けられた防食シート4を固定する。
以上が、ユーザが本実施例に係る固定具2を用いて水道管3の表面に巻き付けられた防食シート4を固定する手順の説明である。
【0072】
本実施例によれば、第1貫通穴部14aを有するので、防食シート4の周面に一周以上巻き付けられた紐状部13の中央部分13b側を第1貫通穴部14aに固定することができ、これにより、水道管3の表面に巻き付けられた防食シート4を固定することができる。
【0073】
本実施例によれば、固定片部14に挿入された状態の紐状部13の中央部分13bを、水道管3の周方向にガイドする、覆い部14cを有するので、この覆い部14cを潜らせて紐状部13を引っ張る(絞る)ことで、防食シート4をより確実に固定することができるとともに、紐状部13の中央部分13bを第2貫通穴部14dへ導きやすくなる。さらに、一度紐状部13が覆い部14cに沿って引っ張られれば、覆い部14cの内周面と紐状部13とが摺接するため、第1貫通穴部14aの紐状部13の固定が緩みにくくなる。
【0074】
なお、本実施例では、第1貫通溝部14bを有するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、第1貫通溝部14bを設けずに第1貫通穴部14aに紐状部13をそのまま(厚み方向に)挿入することもできる。しかしながら、本実施例で説明したように、第1貫通溝部14bは、紐状部13を第1貫通穴部14aに挿入する際に、第1貫通溝部14bを通してから第1貫通穴部14aに挿入する(横からスライドさせるようにして嵌める)ことにより、紐状部13を第1貫通穴部14aに挿入しやすくなる。
【0075】
なお、もし第1貫通溝部14bが設けられないものとする場合には、覆い部14cの開口部分は、固定片部14の長手方向における両端部分13aと反対側のみとする。
【0076】
また、本実施例では、第2貫通穴部14d、及び、第2貫通溝部14eを有するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図7に示すような形状としてもよい。すなわち、紐状部13は、第1貫通穴部14aに挿入されさえすれば、水道管3の表面に巻き付けられた防食シート4を固定することができる。
【0077】
また図7に示すように、第1貫通溝部14bは、隣接する第1貫通穴部14aの方向に向かうにつれて幅が狭く形成されているようにしてもよい。このようにすることで、紐状部13を第1貫通溝部14bから第1貫通穴14aにスライドさせる際に、固定片部14の長手方向における両端部分13aと反対方向(図示)に引っ張るようにした場合、紐状部13がブレずに第1貫通穴部14aに収まるようになる。
【0078】
これは、図4の第2貫通溝部14eにも同じことが言える。すなわち、貫通溝部14a,14eのうち少なくとも1つは、隣接する貫通穴部14a,14dの方向に向かうにつれて幅が狭く形成されているようにすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、地中に埋設される水道管等の外表面に巻き付けられる防食シートを固定する固定具として好適である。
【符号の説明】
【0080】
1,2 固定具
11,13 紐状部
11a 一方向端部
11b 反対方向端部
13a 両端部分
13b 中央部分
12,14 固定片部
12a,14a 第1貫通穴部
12b,14b 第1貫通溝部
12c,14c 覆い部
12d,14d 第2貫通穴部
12e,14e 第2貫通溝部
12f,14f 第1返し部
12g,14g 第2返し部
12h,14h ウラ面
12i,14i オモテ面
12j,14j 第3貫通穴部
12k,14k 第4貫通穴部
12l,14l 第3返し部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8