(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】リザーバタンク
(51)【国際特許分類】
F01P 11/00 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
F01P11/00 C
(21)【出願番号】P 2020191352
(22)【出願日】2020-11-18
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡部 誠介
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-144437(JP,A)
【文献】特開2006-329052(JP,A)
【文献】特開2003-265984(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0112966(US,A1)
【文献】実開昭49-097876(JP,U)
【文献】特開2018-028291(JP,A)
【文献】特開平05-209522(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0350307(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 11/00
B01D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液冷式冷却システムの冷却液経路に設けられるリザーバタンクであって、
冷却液を貯留するタンク本体と、
冷却液経路からタンク本体に冷却液を送り込む流入管と、
タンク本体から冷却液経路に冷却液を排出する排出管を有しており、
前記タンク本体は、少なくとも1つのタンク室を有し、
前記タンク室の底面もしくは底面に隣接する位置に排出口が設けられて、
前記排出管は前記排出口に接続されており、
平面視で前記排出口を覆うように、排出口の上側に遮蔽体が配置されて
おり、
前記遮蔽体は、排出口やタンク室の底面に対し上方に所定の距離だけ離間した位置に配置され、
遮蔽体の周縁部と、排出口の周縁部の間が、
所定の区間にわたって、略鉛直方向に延在する周壁により冷却液の流れが塞がれる一方で、
前記区間の反対側では、遮蔽体の周縁部と排出口の周縁部の間が解放されている、
リザーバタンク。
【請求項2】
前記周壁が設けられる区間が、平面視において、遮蔽体の中心部に対し、タンク室の中心部側に位置する、
請求項
1に記載のリザーバタンク。
【請求項3】
タンク室には冷却液が流れ込む流入口が設けられており、
前記周壁が設けられる区間が、平面視において、遮蔽体の中心部に対し、流入口の側に位置する、
請求項
1に記載のリザーバタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リザーバタンクに関する。特に液冷式冷却システムの冷却液経路に設けられるリザーバタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
液冷式冷却システムは、内燃機関や電気素子、電子基板等の冷却に活用されている。液冷式の冷却システムでは、冷却液を循環させて、冷却対象部材から熱を集めて、熱放出器から熱を放散して、冷却対象部材を冷却する。液冷式の冷却システムにおいて、冷却液を循環させる冷却液経路中に、冷却液のタンク、すなわちリザーバタンクを設けることがある。リザーバタンクは、冷却液の気化等による減少を補ったり、冷却液の温度変化による体積変化を吸収したりする。また、冷却液中に気泡が生じると、冷却効率が低下することがあるため、リザーバタンクにより冷却液中の気泡を分離する、すなわち気液分離を行うことがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、リザーバタンク本体の中に、矩形状のバッフルプレートを、特定の向きの風車状となるように配置する技術が開示されている。当該リザーバタンクによれば、通水抵抗の増加や構造の複雑化を招かずに冷却液から気泡を分離できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、冷却システムをより高性能化するために、特許文献1のようなリザーバタンクを通過する冷却液の流量をより増加させたいとの要請が生じてきている。しかしながら、リザーバタンクを通過する冷却液の流量が増加すると、タンク本体内部に流れ込んだ冷却液が、タンク内の空気を巻き込んで気泡が発生してしまい、期待するレベルの気液分離効果が得られにくいことが判明した。
【0006】
本発明の目的は、リザーバタンクから排出される冷却液への空気や気泡の混入を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、鋭意検討の結果、タンク内に渦が生じると空気が竜巻状になって冷却液排出口に吸い込まれる現象が生ずることを発見した。そして、かかる現象が、冷却液に空気が混入する原因の一つになっていることを発見した。
発明者は、さらに鋭意検討を行い、タンク室の排出口を覆うように遮蔽体を設け、遮蔽体を排出口やタンク室の底面に対し上方に所定距離だけ離間させて配置すると、排出口への空気の吸込みが抑制できることを知見し、本発明を完成させた。
【0008】
液冷式冷却システムの冷却液経路に設けられるリザーバタンクであって、冷却液を貯留するタンク本体と、冷却液経路からタンク本体に冷却液を送り込む流入管と、タンク本体から冷却液経路に冷却液を排出する排出管を有しており、前記タンク本体は、少なくとも1つのタンク室を有し、前記タンク室の底面もしくは底面に隣接する位置に排出口が設けられて、前記排出管は前記排出口に接続されており、平面視で前記排出口を覆うように、排出口の上側に遮蔽体が配置されており、前記遮蔽体は、排出口やタンク室の底面に対し上方に所定の距離だけ離間した位置に配置され、遮蔽体の周縁部と、排出口の周縁部の間が、所定の区間にわたって、略鉛直方向に延在する周壁により冷却液の流れが塞がれる一方で、前記区間の反対側では、遮蔽体の周縁部と排出口の周縁部の間が解放されている、
リザーバタンク。(第1発明)。
【0009】
第1発明において、好ましくは、前記周壁が設けられる区間が、平面視において、遮蔽体の中心部に対し、タンク室の中心部側に位置する(第2発明)。また、さらに、第1発明において、好ましくは、タンク室には冷却液が流れ込む流入口が設けられており、前記周壁が設けられる区間が、平面視において、遮蔽体の中心部に対し、流入口の側に位置する(第3発明)。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリザーバタンク(第1発明)によれば、タンク室内の空気が竜巻状になって、冷却液とともに排出口から排出されてしまうことが抑制され、冷却液への空気や気泡の混入を抑制できる。
【0011】
さらに、第2発明ないし第3発明のようにされた場合には、タンク室に流れ込んできた冷却液に含まれる気泡がそのまま排出口から排出されてしまうことが抑制され、冷却液への空気や気泡の混入がより抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態のリザーバタンクの構造を示す縦断面図である。
【
図2】第1実施形態のリザーバタンクの構造を示す横断面図である。
【
図3】第1実施形態のリザーバタンクの遮蔽体付近の構造を示す図である。
【
図4】第1実施形態のリザーバタンクの作用を示す縦断面図および横断面図である。
【
図5】遮蔽体の変形例の形状を示す平面図および縦断面図である。
【
図6】参考例のリザーバタンクの作用を示す縦断面図および横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照しながら、自動車の内燃機関の液冷式冷却システムに設けられるリザーバタンクを例として、発明の実施形態について説明する。発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。液冷式冷却システムの用途は、内燃機関に限定されず、パワー素子やインバータなどの電気素子や電子回路基板等の電気部品を冷却する用途であってもよく、他の用途であってもよい。
【0014】
図1、
図2に第1実施形態のリザーバタンク10の構造を示す。
図1では、リザーバタンク10の縦断面図を示し、
図2では、リザーバタンク10の横断面図を示している。
図1の縦断面図は、
図2のX-X線を通る鉛直面で取ったX-X断面図である。また、
図2の横断面図は、
図1のY-Y線を通る水平面で取ったY-Y断面図である。
リザーバタンク10は、中空のタンク本体17に流入管15と排出管16が接続されて構成されている。液冷式冷却システムの冷却液経路の中で、リザーバタンク10は、流入管15から中空のタンク本体17内に冷却液が流れこみ、中空のタンク本体17から排出管16を通じて冷却液が流れ出ていくように、冷却液経路中に配置・接続されて使用される。
【0015】
図1の縦断面図では、図の上側が鉛直方向上側を示している。本実施形態では、下側ケース11と上側ケース12とが一体化されて、リザーバタンク10が構成されている。下側ケース11と上側ケース12とが一体化されることにより、中空のタンク本体17が構成される。本実施形態では、流入管15および排出管16は下側ケース11に一体成形されているが、流入管15および排出管16は別の構成によってタンク本体17に一体化されていてもよい。
【0016】
タンク本体17には、冷却液Lが貯留される。タンク本体17の鉛直方向上部には、空気が貯留されている。必須ではないが、タンク本体17に、冷却液を注入するための注入口19が設けられていてもよい。注入口19には、適宜キャップCが設けられる。
【0017】
タンク本体17は、少なくとも一つのタンク室17bを有する。タンク室は1つであってもよく、2つ以上であってもよい。本実施形態では、タンク本体17は、タンク室17bと、タンク室よりも上流側に設けられた前タンク室17aを有する。
【0018】
必須ではないが、本実施形態では、流入管15は、前タンク室17aに接続されている。好ましくは、流入管15は、タンク本体17内部に貯留される冷却液Lの液面Sよりも鉛直方向下側でタンク本体に接続されている。
【0019】
排出管16は、タンク室17bに設けられた排出口17cに接続されている。すなわち、タンク室17bと排出管16は、排出口17cを通じて連通している。排出口17cは、タンク室17bの底面17eに設けられている。排出口17cは、タンク室17bの底面17eに隣接する位置に設けられていてもよい。
【0020】
タンク室17bと前タンク室17aは、隔壁13により仕切られている。隔壁13には、穴やスリットが設けられていて、この穴やスリットを通じて、タンク室17bと前タンク室17aが互いに連通している。タンク室17bには、この穴やスリットが流入口17dとなって、冷却液が流れ込む。
【0021】
以上のように、本実施形態のリザーバタンク10では、冷却システムの冷却液経路から、流入管15を通じて前タンク室17aに冷却液が流れ込み、前タンク室17aから、流入口17dを通じてタンク室17bへと冷却液が流れ、タンク室17bから排出口17c、排出管16を通じて、冷却システムの冷却液経路へと冷却液が戻っていく。
【0022】
タンク室17bの排出口17cの上側に、遮蔽体14が設けられている。遮蔽体14は、
図2に示したように、平面視で排出口17cを覆うように設けられる。また、好ましくは、
図1に示したように、遮蔽体14は、排出口17cの鉛直方向上側に、排出口から所定の距離だけ離間した位置に配置される。後述する他の実施形態のように、排出口と隣接して遮蔽体が設けられていてもよい。
【0023】
遮蔽体14は、タンク室17bの上側の空間と排出口17cとの間で、上下方向に冷却液が直接行き来することを妨げる。遮蔽体14は、気体や液体を通しにくい材質、好ましくは、気体や液体を通さない材質により形成される。典型的には、上側ケース12や下側ケース11と同じ材質により形成される。
【0024】
遮蔽体14は、平面視で排出口17cを覆うように設けられるが、排出口17cを実質的に覆う限りにおいて、遮蔽体14は排出口17cよりも小さくてもよく、大きくてもよい。本実施形態のように、遮蔽体14と排出口17cが同じ大きさであると、遮蔽体14を下側ケース11に一体成型しやすく、好ましい。典型的には、遮蔽体14は平面視で排出口17cとほぼ同じ大きさの板状に設けられる。なお、遮蔽体の形状は、板状でなくてもよく、ブロック状であってもよく、中空体であってもよい。
【0025】
遮蔽体14が排出口17cやタンク室の底面17eに対し上方に隔たる距離は、好ましくは、排出口の直径の0.2倍~1.2倍程度である。遮蔽体14の周縁と排出口17cの周縁の間に開口した部分の面積が、排出口17cの断面積よりも大きくなるように、遮蔽体が排出口から隔たる距離が設定されることが好ましい。
【0026】
必須ではないが、好ましくは、
図3に示したように、遮蔽体14の周縁部と、排出口17cの周縁部の間が、所定の区間(
図3で矢印Aにわたる区間)にわたって、略鉛直方向に延在する周壁18により塞がれる一方で、前記区間の反対側(
図3で矢印Bにわたる区間)では、遮蔽体14の周縁部と排出口17cの周縁部の間が解放されている。周壁18も遮蔽体14と同様な材質により構成される。この周壁の構成により、周壁18が設けられた区間Aでは、冷却液が排出口17cに流れ込まず、周壁18が設けられずに解放されている区間Bの部分から、冷却液が排出口17cに流れ込むことになる。
【0027】
周壁18は、遮蔽体14の全周長に対し、1/4~2/3程度、より好ましくは1/3~1/2程度の長さを塞ぐように設けることが好ましい。周壁18を利用して遮蔽体14をタンク本体に対し支持してもよく、遮蔽体14や周壁18をタンク本体17と一体成型してもよい。また、遮蔽体や周壁は、別部材としたものをタンク本体に取り付けるようにしてもよい。周壁18は、区間Aにわたって連続したものであることが好ましいが、断続的に設けられていてもよい。
【0028】
また、必須ではないが、本実施形態のように、周壁18が設けられる区間Aが、平面視において、遮蔽体14の中心部に対し、タンク室の中心部O側に位置することが好ましい。
【0029】
また、必須ではないが、本実施形態のように、タンク室17bには冷却液が流れ込む流入口17dが設けられており、周壁18が設けられる区間Aが、平面視において、遮蔽体14の中心部に対し、流入口17dの側に位置することが好ましい。
【0030】
また、必須ではないが、本実施形態のように、周壁18が設けられる区間Aが、平面視において、遮蔽体14の中心部に対し、タンク室17bに生ずる渦の流れの上流側に位置することが好ましい(
図4)。
【0031】
リザーバタンク10のタンク本体17や遮蔽体14、周壁18、流入管15、排出管16が構成できる限りにおいて、具体的に、どのような部材に分割してかかる構造を実現するかは特に限定されない。本実施形態では、下側ケース11と上側ケース12の2つに分割して組み立て、かかる構成を実現したが、別の部材構成によりこうした構造を実現してもよい。たとえば、タンク本体17が鉛直面で2分割されるようにしつつ、遮蔽体を別部材として、各構成部材を形成し、それらを組み立ててかかる構成を実現してもよい。
【0032】
また、上記実施形態のリザーバタンク10を構成する材料や、リザーバタンク10の製造方法は特に限定されず、公知の材料や公知の製造方法により、リザーバタンク10を製造できる。典型的には、リザーバタンク10は、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂により構成される。使用される冷却液の種類や温度、圧力などに応じて、リザーバタンクの材料や補強構造等が決定される。また、典型的には、リザーバタンク10は、上記下側ケース11、上側ケース12に相当する部材を、それぞれ射出成型により形成し、これら部材を振動溶着や熱板溶着などにより一体化して製造することができる。その場合、流入管15や排出管16、遮蔽体14、周壁18、注入口19は、それぞれ、下側ケース11もしくは上側ケース12に一体成型しておくことが好ましいが、別部材としておいて、後で組み立てて一体化してもよい。
【0033】
上記第1実施形態のリザーバタンク10の作用および効果について説明する。上記第1実施形態のリザーバタンク10によれば、タンク室内の空気が竜巻状になって、冷却液とともに排出口から排出されてしまうことが抑制され、冷却液への空気や気泡の混入を抑制できる。
【0034】
図6に、参考例1のリザーバタンク9における冷却液の流れを、縦断面図および横断面図で示す。参考例1は、遮蔽体14および周壁18を備えていない点をのぞいて、第1実施形態のリザーバタンク10と同じ構成である。
【0035】
参考例のリザーバタンク9では、流入管から冷却液が勢いよく流れ込んでくると、(流れ込む冷却液の流れQを白抜き矢印で示す、)タンク本体の前室9aに流れ込んだ冷却液は、流入口9dを通じてタンク室9bに流れ込み、タンク室9bから排出管へと流れ出ていく。ここで、タンク室9bに対する流入口9dの位置関係などにより、タンク室9b内に渦が生ずる。こうした渦は、タンク室9bにおける気液分離にも貢献するので、タンク室9b内に積極的に渦が生ずるように設計する場合もある。
【0036】
タンク室9b内で、渦の中央部には、下向きの円錐状に空気が集まる。発明者らは、渦中央部の空気の円錐の頂点に相当する部分が、竜巻状に、冷却液中に細長く伸びて、排出口9cや排出管まで達してしまう現象を発見した。タンク室内の渦が強いと、このような竜巻状の空気柱が発生しやすい。この現象が生ずると、竜巻状の空気柱から排出口に空気が供給されるようになって、冷却液と一緒に空気が送りだされ、冷却液に空気や気泡が混入してしまう。
【0037】
冷却液中の空気や気泡は、冷却液の循環効率を低下させたり、冷却液による熱輸送効率を低下させたりして、冷却システムの冷却性能の低下につながる。
【0038】
上記第1実施形態のリザーバタンク10では、平面視で排出口17cを覆うように、排出口17cの上側に遮蔽体14が配置されている。遮蔽体14があることにより、
図4に示すように、タンク室内17b内に渦が生じ、渦の中心の空気が竜巻状に冷却液中に伸びる場合であっても、竜巻状の空気柱が排出口17cに達して空気が流出することが抑制される。これにより、冷却液への空気や気泡の混入を抑制できる。
【0039】
また、遮蔽体14が排出口17cやタンク室の底面17eから上方に所定の距離だけ離間した位置に配置され、遮蔽体14の周縁部と、排出口17cの周縁部の間が、所定の区間Aにわたって、略鉛直方向に延在する周壁18により塞がれる一方で、区間Aの反対側(区間B)では、遮蔽体14の周縁部と排出口17cの周縁部の間が解放されているようにした場合には、タンク室17b内を流れる冷却液を、選択的に排出口17cに導くことができ、タンク室に流れ込んできた冷却液に含まれる気泡がそのまま排出口から排出されてしまうことを抑制できる、これにより、気泡が冷却液から分離されやすくなり、冷却液への空気や気泡の混入がより抑制される。
【0040】
特に、周壁18が設けられる区間Aが、平面視において、遮蔽体14の中心部に対し、タンク室17bの中心部O側に位置する場合には、より、冷却液への空気や気泡の混入が抑制される。タンク室17bで渦が発生すると、タンク室の中心に前記した竜巻状の空気柱が生じやすく、周壁18がタンク室17bの中心部側に位置すれば、竜巻状の空気柱が排出口17cに達することを阻止しやすくなるからである。
【0041】
また、特に、タンク室17bには冷却液が流れ込む流入口17dが設けられており、周壁18が設けられる区間Aが、平面視において、遮蔽体14の中心部に対し、流入口17dの側に位置する場合には、より、冷却液への空気や気泡の混入が抑制される。仮に流入口17dからタンク室17bに流れ込む冷却液に気泡が混入していたとしても、周壁18が設けられていることにより、冷却液や気泡が排出口17cに直接吸い込まれてしまうことが抑制され、気泡がタンク室17bの中で冷却液から分離されやすくなるためである。
【0042】
また、特に、周壁18が設けられる区間Aが、平面視において、タンク室17bに生ずる渦の流れの上流側に位置する場合には、より、冷却液への空気や気泡の混入が抑制される。仮にタンク室内を渦状に流れる冷却液に気泡が混入していたとしても、周壁18が設けられていることにより、冷却液や気泡が排出口17cに直接吸い込まれてしまうことが抑制され、気泡がタンク室17bの中で冷却液から分離されやすくなるためである。
【0043】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分については同じ番号を付して説明し、その詳細な説明を省略する。また、これら実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0044】
図5には、遮蔽体を有するリザーバタンクの他の形態例を示す。
図5は遮蔽体14周辺の平面図および断面図である。本実施形態では、遮蔽体14は、3本の柱状の支持体14S、14Sによって底面17eに支持されている。このように、遮蔽体14は周壁を備えない構成であってもよく、遮蔽体14が排出口17cを上側から覆うように配置され、遮蔽体により竜巻状の空気が排出口17cや排出管16に達しないように構成されていればよい。
【0045】
本実施形態や第1実施形態の遮蔽体14のように、遮蔽体が、排出口17cと同じ大きさもしくは排出口17cよりもやや小さい大きさとされていると、遮蔽体14とタンク底面17eや排出管16、周壁18、支持体14Sなどを、射出成型により一体成型しやすくなり、好ましい。
【0046】
また、上記第1実施形態では、排出口17cがタンク室17bの底面17eに設けられていたが、排出口は、タンク室の底面17eに隣接する位置に設けられていてもよい。この場合、排出口を略水平方向に開口させて、排出管16を略水平方向に延出させることもできる。この場合、遮蔽体は、排出口の上縁部よりも上側に、好ましくは、排出口の上縁部に隣接する位置に、平面視で前記排出口を覆うように設けられれば良い。
【0047】
上記第1実施形態では、タンク室の底面17eは、略水平な平面状であったが、タンク室の底面の形状は他の形状であってもよい。例えば、タンク室の底面17eは、傾斜していてもよい。また、タンク室の底面17eは、湾曲した曲面や、球殻状の曲面であってもよい。また、タンク室の底面17eの周縁部がそりあがるようにされて、お盆状の底面であってもよい。
【0048】
上記実施形態のリザーバタンク10では、タンク本体17やタンク室17bは直方体状であったが、リザーバタンクのタンク本体やタンク室の形状は直方体状に限定されない。例えば、タンク室17bは球状であってもよい。タンク室の形状は特に限定されず、円筒状、楕円筒状、楕円体状など他の形状であってもよい。
【0049】
また、上記実施形態の説明では、前タンク室17aとタンク室17bが隔壁により区画された実施形態を説明したが、両室が隔壁で隔てられることは必須ではない。例えば、タンク本体に前タンク室17aとタンク室17bが独立して設けられていて、前タンク室17aとタンク室17bの間を管状の流入口で連通させるようにリザーバタンクを構成してもよい。
【0050】
また、リザーバタンクが有するタンク室の数は、1つであってもよく、複数であってもよい。3つ以上のタンク室を有していてもよい。また、リザーバタンクは気液分離構造を有していてもよい。気液分離構造としては複数のタンク室をラビリンス状に冷却液が流れながら気泡が分離される構造のものであってもよく、タンク室内部に渦を作り出すなどして遠心力を利用して気液分離を行う構造のものであってもよい。
【0051】
また、上記実施形態の説明では、タンク室17bの排出口17cに直接排出管が接続されている例を説明したが、排出口17cに排出管16が直接接続されることは必須ではない。例えば、排出口17cと排出管16の間に、さらに別のタンク室や通路が配置されて、両者が接続されていてもよい。
【0052】
また、流入管15は、タンク本体内部に延長されていてもよい。例えば、流入管を、タンク本体17の外部に設けられた外部管(15)と、タンク本体17の内側に設けられた内部管(延長部)とにより構成してもよい。外部管と内部管は互いに接続されていて、一本の管路を形成する。なお、内部管はタンク本体17と壁面の一部を共有していてもよい。
【0053】
流入管の延長部分、すなわち内部管により、流入管から流れ込む冷却液の流れを好ましい方向(例えば鉛直方向下向き)に向けることができる。また、流入管がタンク内部に延長されて設けられることにより、タンク本体17の外側に位置する流入管(15)の配置の自由度を高めることができる。したがって、内部管は管路が略鉛直方向に延在する部分を有していてもよい。
【0054】
本発明のリザーバタンクは、更に他の構成を有していてもよい。たとえば、リザーバタンクには、取り外し可能なキャップCが設けられていてもよい。このようなキャップを通じてタンクや冷却液経路内部に冷却液を満たすことができる。また、キャップに圧力開放弁を設けてもよい。また、リザーバタンクには、必要に応じ、車体等に取り付けるためのステーやボス部材などが一体化されていてもよい。また、リザーバタンクに要求される耐圧性等に応じて、リザーバタンクには、リブ等の補強構造が設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
上記リザーバタンクは冷却システムの冷却液経路中に使用でき、冷却液中の気泡の発生を抑制でき、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0056】
10 リザーバタンク
11 下側ケース
12 上側ケース
13 隔壁
14 遮蔽体
15 流入管
16 排出管
17 タンク本体
17a 前タンク室
17b タンク室
17c 排出口
17d 流入口
17e 底面
18 周壁
L 冷却液
S 冷却液の液面