(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】押圧力及び引張力を検出するコントローラー
(51)【国際特許分類】
G06F 3/0338 20130101AFI20240610BHJP
【FI】
G06F3/0338
(21)【出願番号】P 2022201703
(22)【出願日】2022-12-19
【審査請求日】2024-05-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡津 裕次
(72)【発明者】
【氏名】三浦 農
(72)【発明者】
【氏名】土谷 真一
(72)【発明者】
【氏名】繁成 拓渡
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 真憂弥
(72)【発明者】
【氏名】福田 健悟
(72)【発明者】
【氏名】大場 芙美
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-34742(JP,A)
【文献】国際公開第2021/153700(WO,A1)
【文献】FONTANA Marco et al.,A Three-Axis Force Sensor for Dual Finger Haptic Interfaces, Sensors, Sensors,2012年12月,pp13598-13616,https://pdfs.semanticscholar.org/1d2a/b6042bd5020c3bef8d37baf1861225b746cf.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/0338
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の表面に配置され、ユーザーの指で加えられた3軸の力を検出するように構成されたフィルム型力覚センサーと、
前記フィルム型力覚センサーのアクティブエリア表面を被覆し、前記指の腹による押圧面を有するとともに、前記押圧面から離間する方向に前記指を動かすことにより前記フィルム型力覚センサーの前記アクティブエリア表面に引張力が働くように前記指を拘束する拘束面を有する操作部と、
を備える、押圧力及び引張力を検出するコントローラー。
【請求項2】
前記操作部の前記拘束面が、前記指の背を覆うバンドの前記指側の面によって構成されている、請求項1記載の押圧力及び引張力を検出するコントローラー。
【請求項3】
前記バンドが、2片からなり、前記指を縛る状態と解く状態とを切り替える係止構造を有する、請求項2記載の押圧力及び引張力を検出するコントローラー。
【請求項4】
前記バンドの前記係止構造が、面ファスナーである、請求項3記載の押圧力及び引張力を検出するコントローラー。
【請求項5】
前記バンドの前記係止構造が、リピートタイプの結束バンド構造である、請求項3記載の押圧力及び引張力を検出するコントローラー。
【請求項6】
前記操作部の前記拘束面が、前記指を挟むクリップの前記指側の面によって構成されている、請求項1記載の押圧力及び引張力を検出するコントローラー。
【請求項7】
前記クリップが、前記押圧面から突出して前記指の周囲を反対方向から取り囲む一対の樹脂製突起からなり、前記樹脂製突起の先端どうしの間隔が前記樹脂製突起の弾性によって開閉するものである、請求項6記載の押圧力及び引張力を検出するコントローラー。
【請求項8】
前記フィルム型力覚センサーが、静電容量方式である、請求項1記載の押圧力及び引張力を検出するコントローラー。
【請求項9】
さらに、前記ユーザーの操作姿勢を検出し、前記フィルム型力覚センサーのキャリブレーションに使用される姿勢検出装置を備えた、請求項1記載の押圧力及び引張力を検出するコントローラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指先の動きだけで、押圧力及び引張力を検出するコントローラーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ジョイスティック、十字キー、マウスやタッチパネルでは実現できない新しいアイデアをユーザーインタフェース(UI)の開発現場に提供するものとして、フィルム型3軸力覚センサーが知られている。
【0003】
フィルム型3軸力覚センサーは、3軸(XYZ軸)方向の力を接触点で測定することで、押す力(圧力)や滑りかけの状態、滑っている状態などを検知することができ、ねじる、回す、ずらすなど、従来のコントローラーでは制御できなかった動作を指1点で入力することが可能である。on/off判定にとどまらない力量(ボリューム)測定が可能なので、スピードや移動量などのコントロールにも対応できる。ジョイスティックや十字キーに比べて、ほんのわずかの指先の動きで方向と移動量を同時に入力することができる。また、薄くて軽いフィルム型のセンサーなので、曲面にも実装できる。
【0004】
上記したようなフィルム型3軸力覚センサーとしては、空気層又は弾性層を間に挟んで上部電極と下部電極とを対向する形で配置し、押圧力を加えたときに電極間の距離が変動することによって発生する静電容量値の変化を利用して、押圧力の値を算出する静電容量方式のものが挙げられる(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2020/059766号
【文献】特開2017-156126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のフィルム型3軸力覚センサーを用いたコントローラーでは、指1点で入力することができるといっても、入力に利用できる指先の動きには限界があった。すなわち、実際に利用している指先の動きは、フィルム型3軸力覚センサーの表面を押圧する動き(表面を押し下げるだけでなく表面を擦る動きも含む)だけである。本出願人は、押圧力のみならず引張力を検出することができれば、より多様な入力を実現できることに気づいた。
【0007】
したがって、本発明は、上記の課題を解決し、指先の動きだけで、押圧力及び引張力を検出するコントローラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る押圧力及び引張力を検出するコントローラーは、筐体と、フィルム型3軸力覚センサーと、操作部とを備えている。フィルム型3軸力覚センサーは、筐体の表面に配置され、ユーザーの指で加えられた3軸の力を検出するように構成されている。操作部は、フィルム型3軸力覚センサーのアクティブエリア表面を被覆している。また、操作部は、指の腹による押圧面を有するとともに、押圧面から離間する方向に指を動かすことによりフィルム型3軸力覚センサーのアクティブエリア表面に引張力が働くように指を拘束する拘束面を有する。
【0009】
上記の押圧力及び引張力を検出するコントローラーにおいて、操作部の拘束面が、指の背を覆うバンドの指側の面によって構成されていてもよい。
【0010】
上記の押圧力及び引張力を検出するコントローラーにおいて、バンドが、2片からなり、指を縛る状態と解く状態とを切り替える係止構造を有していてもよい。
【0011】
上記の押圧力及び引張力を検出するコントローラーにおいて、バンドの係止構造が、面ファスナーであってもよい。また、バンドの係止構造が、リピートタイプの結束バンド構造であってもよい。
【0012】
上記の押圧力及び引張力を検出するコントローラーにおいて、操作部の拘束面が、指を挟むクリップの指側の面によって構成されていてもよい。
【0013】
上記の押圧力及び引張力を検出するコントローラーにおいて、クリップが、押圧面から突出して指の周囲を反対方向から取り囲む一対の樹脂製突起からなるものであってもよい。この樹脂製突起の先端どうしの間隔は、樹脂製突起の弾性によって開閉する。
【0014】
上記の押圧力及び引張力を検出するコントローラーにおいて、フィルム型3軸力覚センサーが、静電容量方式であってもよい。
【0015】
上記の押圧力及び引張力を検出するコントローラーにおいて、さらに、ユーザーの操作姿勢を検出し、フィルム型3軸力覚センサーのキャリブレーションに使用される姿勢検出装置を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のコントローラーによれば、指先の動きだけで、押圧力及び引張力を検出することができる。その結果、より多様な入力を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る押圧力及び引張力を検出するコントローラーの模式図である。
【
図2】
図1のコントローラーにおける操作部の形状例を示す模式図である。
【
図3】静電容量方式のフィルム型3軸力覚センサーの一例を示す模式図である。
【
図4】押圧力が働いた時の一例を示す模式図である。
【
図5】引張力が働いた時の一例を示す模式図である。
【
図6】コントローラーにおける操作部の別の形状例を示す模式図である。
【
図7】コントローラーにおける操作部の別の形状例を示す模式図である。
【
図8】コントローラーにおける操作部の別の形状例を示す模式図である。
【
図9】コントローラーにおける操作部の別の形状例を示す模式図である。
【
図10】コントローラーにおける操作部の別の形状例を示す模式図である。
【
図11】姿勢検出装置を使用したキャリブレーションの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を、図面に基づき説明する。
<コントローラーの全体構造>
まず、本発明の一実施形態に係る入力装置1の全体構造について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、本発明に係る押圧力及び引張力を検出するコントローラーの模式図である。
図2は、
図1のコントローラーにおける操作部の形状例を示す模式図である。
【0019】
コントローラー1は、筐体10、フィルム型3軸力覚センサー2、操作部3を備えている(
図1及び
図2参照)。
フィルム型3軸力覚センサー2は、筐体10の表面に配置され、ユーザーの指11で加えられた3軸の力を検出するように構成されている。
操作部3は、フィルム型3軸力覚センサー2のアクティブエリア2a表面を被覆している。また、操作部3は、指11の腹11aによる押圧面3aを有するとともに、押圧面3aから離間する方向に指11を動かすことによりフィルム型3軸力覚センサー2のアクティブエリア2a表面に引張力が働くように指11を拘束する拘束面3bを有する。
以下、上記した各構成について、さらに詳細に説明する。
【0020】
<筐体>
筐体10の材料としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AN樹脂などの汎用樹脂を挙げることができる。また、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂などの汎用エンジニアリング樹脂やポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアリル系耐熱樹脂などのスーパーエンジニアリング樹脂を使用することもできる。
【0021】
<フィルム型3軸力覚センサー>
フィルム型3軸力覚センサー2としては、一般に静電容量式が知られている。
図3は、静電容量方式のフィルム型3軸力覚センサーの一例を示す模式図である。
図3に示すフィルム型3軸力覚センサー例では、上部支持体22上に形成された複数の電極からなる上部電極23を有する上部電極部材24と、上部電極部材24と対向する形で配置され、下部支持体25上に複数の電極からなる下部電極26を有する下部電極部材27と、上部電極部材24と下部電極部材27との間に挟まれる空気層又は弾性層21とを備えている。下部電極部材27の下部電極26が、島状パターンからなる。また、上部電極部材24の上部電極23が、上部支持体22の両面に別々に形成された表側上部電極231と裏側上部電極232の二層からなり(
図3(a)参照)、かつ表側上部電極231と裏側上部電極232とが平面視において交差する複数本の線状パターンからなり(
図3(b)参照)、下部電極26が島状パターンの一部が表側上部電極231のパターンの一部及び裏側上部電極232のパターンの一部と平面視においてそれぞれ重なるパターンとすることができる。
表側上部電極231と裏側上部電極232との交差する角度は、
図3(b)に示す例では、表側上部電極231の線状パターンがX軸方向に伸びてY軸方向に並び、裏側上部電極232の線状パターンがY軸方向に伸びたX軸方向に並ぶように90°(すなわち直交)となっているが、これに限定されない。交差する角度が直交する場合、下部電極26のパターンは長方形状の碁盤目になり、交差する角度が直交しない場合、下部電極26のパターンは平行四辺形状の碁盤目になる。
【0022】
このような構成のフィルム型3軸力覚センサー2は、力(X軸方向,Y軸方向及びZ軸方向の分力はそれぞれF
x,F
y,F
z)を加えたときに電極間の距離が変動することによって発生する静電容量値の変化を利用して、加えられた力F
x,F
y,F
zの値を算出する。
つまり、上部電極23がフィルム型3軸力覚センサー2の表面に対して指11によって斜め下方向に力(押圧力F1)が加わると、弾性層21が変形し、その力の強度に応じて上部電極部材24の表側上部電極231及び裏側上部電極232が水平方向(XY軸方向)及び垂直方向(Z軸方向)に移動し(
図4参照、図中の二点鎖線は押圧前の状態)、島状パターンの下部電極26と表側上部電極231との間、島状パターンの下部電極26と裏側上部電極232との間の距離及び重なり面積が変化する。その結果として電極間の静電容量値がそれぞれ変化する。したがって、それぞれの静電容量値の変化を測定すれば、垂直方向の力(Z軸方向の分力F
z)だけでなく、水平方向の力(表側上部電極231の線状パターンが並ぶY軸方向の分力F
y、裏側上部電極232の線状パターンが並ぶX軸方向の分力F
x)の強度も測定できる。
【0023】
上部支持体22及び下部支持体25を構成する材料としては、アクリル、ウレタン、フッ素、ポリエステル。ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド、オレフィン等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂シートのほか、シアノアクリレート等の紫外線硬化型樹脂シート等が挙げられるが、とくに限定されない。このような上部支持体22及び下部支持体25からなるフィルム型3軸力覚センサー2は、筐体10の形状に沿って配置できるので、例えば柱面などにも実装が可能である。
【0024】
上部電極23及び下部電極26は、導電性を有する材料により構成できる。導電性を有する材料としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、アルミニウム、ロジウム等の金属膜のほか、これらの金属粒子や金属ナノファイバー、カーボンナノチューブなどの導電材料を樹脂バインダーに分散させた導電ペースト膜等が挙げられるが、特に限定されない。形成方法は、金属膜の場合は、メッキ法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等で導電膜を全面形成した後にエッチングによりパターニングする方法が挙げられ、導電ペースト膜の場合は、スクリーン、グラビア、オフセット等の印刷法で直接パターン形成する方法が挙げられる。
【0025】
弾性層21としては、例えば、シリコーン、フッ素、ウレタン、エポキシ、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ブタジエンゴムなどの弾力性を有する合成樹脂シートや伸縮性のある不織布シートなどが挙げられる。とくにシリコーンゲル、シリコーンエラストマーなどのシリコーン樹脂系の弾性体シートは、低温から高温までの幅広い温度域で耐久性に優れ、かつ弾力性にも優れていうので、より好ましい。なお、弾性層21は押し出し成形などの一般的なシート成形法によりシート化されたものに限定されず、印刷やコーターなどによって形成されたコーティング層であってもよい。
また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの樹脂を弾性層21の材料として選択する場合は、これらの合成樹脂単体では弾力性が低いので、合成樹脂中にガスを細かく分散させ、発泡体の状態にしておくことが好ましい。
【0026】
なお、静電容量方式のフィルム型3軸力覚センサー2は、上記した説明のものに限定されず、公知の静電容量方式のフィルム型3軸力覚センサー2を採用することができる。例えば、前述の特許文献1及び特許文献2中に記載の各実施形態や変形例を適用できる。
【0027】
<操作部>
操作部3は、フィルム型3軸力覚センサー2のアクティブエリア2a表面を被覆している。また、操作部3は、指11の腹11aによる押圧面3aを有するとともに、押圧面3aから離間する方向に指11を動かすことによりフィルム型3軸力覚センサー2のアクティブエリア2a表面に引張力が働くように指11を拘束する拘束面3bを有する(
図1及び
図2参照)。
図1及び
図2に示す例では、コントローラー1は、操作部3の拘束面3bが、指11の背11bを覆うバンド31の指11側の面によって構成されている。
【0028】
操作部3において、フィルム型3軸力覚センサー2のアクティブエリア2a表面を被覆し、指11の腹11aによる押圧面3aを有するシート部30は、フィルム型3軸力覚センサー2の表面と貼り合わせられている。また、操作部3において、バンド31は、シート部30と一体化されている。したがって、押圧面3aから離間する方向(例えば、斜め上方向)に指11を動かすと、指11を拘束するバンド31がシート部30を引っ張ることになる。その結果、シート部30と貼り合わせられているフィルム型3軸力覚センサー2のアクティブエリア2a表面にも引張力F2が働く。
このようにフィルム型3軸力覚センサー2のアクティブエリア2a表面にも引張力F2が働くと、その引っ張る強度に応じて上部電極部材24の表側上部電極231及び裏側上部電極232が水平方向(XY軸方向)及び垂直方向(Z軸方向)に移動し(
図5参照、図中の二点鎖線は引張り前の状態)、島状パターンの下部電極26と表側上部電極231との間、島状パターンの下部電極26と裏側上部電極232との間の距離及び重なり面積が変化する。その結果として電極間の静電容量値がそれぞれ変化する。
したがって、それぞれの静電容量値の変化を測定すれば、垂直方向の引張力(Z軸方向の分力F
z、但し、押圧力検出時とは逆方向)だけでなく、水平方向の引張力(表側上部電極231の線状パターンが並ぶY軸方向の分力F
y、裏側上部電極232の線状パターンが並ぶX軸方向の分力F
x)の強度も測定できる。
【0029】
操作部3のシート部30及びバンド31の材料としては、幅広い材料が使用できる。例えば、ABS、ポリカーボネート、PS、PETなどの一般的な樹脂、シリコーン、NR、NBRなどのゴム、布、皮革などが挙げられる。シート部30には、表面の滑りにくい材料を用いる方が水平方向(XY軸方向)に入力しやすい。また、バンド31には、弾性がある材料を用いる方が指11にフィットして装着感が良い。よって、操作部3のシート部30及びバンド31の材料としては、ゴムが最適である。なお、
図1及び
図2に示す例では、操作部3のシート部30とバンド31とが繋目のない一つの物体として描かれているが、本発明のコントローラー1の操作部3はこれに限定されない。例えば、シート部30とバンド31とを別部材として用意して両者を接着や縫い合わせなどによって接合してもよい。このシート部30とバンド31とを別部材として用意する場合には、両者は異なる材料とすることができる。
【0030】
<その他の構成>
筐体10内には、図示しない制御回路が収容され、フィルム型3軸力覚センサー2に電気的に接続されている。
制御回路としては、CPUやその他の電子部品により形成されている。
【0031】
また、筐体10内には、図示しない通信部が収容されていてもよい。
通信部は、WI-FI(登録商標)、BLUETOOTH(登録商標)、NFC、などの無線LANを介して外部電子デバイスと通信する。通信部は、一方向又は双方向で通信することができる。なお、本実施形態のコントローラー1は、同時又は個々のいずれかで、複数の外部電子デバイスを制御することもできる。
通信する外部電子デバイスとしては、例えば、XRで使用するヘッドマウントディスプレイやスマートグラスのほか、スマートテレビ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、自動車のオーディオシステム、家庭用、仕事用、若しくは環境用自動制御装置、又は任意の他のそのようなデバイス若しくはシステムとすることができるが、これらに限定されない。
【0032】
また、筐体10内には、図示しない電池が収容されていてもよい。
電池としては、リチウム電池などの再充電式電池を用いることができる。再充電式電池の場合、ユーザーはUSBを通じて、あるいはコントローラー1を充電パッドの上に置くだけで、充電することができる。また、電池9として非充電式電池を用い、筐体10の内部より取り出し交換するようにしてもよい。
【0033】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を、図面に基づき説明する。
図6は、コントローラーにおける操作部の別の形状例を示す模式図である。
第1実施形態では、操作部3のシート部30とバンド31で構成される中空空間に、その開口端部から指11を挿入するように構成されていたが、本発明のコントローラー1の操作部3はこれに限定されない。例えば、
図6に示すように、バンドが、2片(図中の31A,31B)からなり、指11を縛る状態と解く状態とを切り替える係止構造310を有するように構成されていてもよい。
【0034】
本実施形態では、バンド31A,31Bの係止構造310は、スナップボタン312a,312bである。一般的なスナップボタン312a,312bは、
図6に示すように、凹と凸の一対のパーツからなる金属製又はプラスチック製の留め具である(
図6の円内拡大部分を参照)。これは、押し合わせて留めるタイプであり、ボタンホールが要らない(別名、プレススタッド、スナップファスナー、スナップ・クロージャー等とも呼ばれる)。2片のバンド31A,31Bの重なり合う面にスナップボタン312a,312bは設けられる。
なお、
図6に示す例では2片のバンド31A,31Bの長さが異なり、図中右側に係止構造310が設けられているが、本発明の係止構造310の位置は、これに限定されない。例えば、2片のバンド31A,31Bの長さが同程度で、図中中央に係止構造310が設けられていてもよい。
【0035】
本実施形態の場合、2片のバンド31A,31Bの材料としては、第1実施形態と同様に、ABS、ポリカーボネート、PS、PETなどの一般的な樹脂、シリコーン、NR、NBRなどのゴム、布、皮革などを用いることができる。より好ましくは、指11に巻き付けて縛ることができるように、バンド31A,31Bには柔らかい材料を用いる。よって、バンド31A,31Bの材料としては、ゴムが最適である。
【0036】
このように押圧力及び引張力を検出するコントローラー1を構成することによって、第1実施形態と比較すると、本実施形態は指11の操作部3への装着が容易である。つまり、第1実施形態で指11を挿入する際には、シート部30とベルト31との間の開口面積が指11の断面サイズに合わせて小さいので、指11の先がバンド31の側面にぶつかりやすい。バンド31の材料が柔らかければ、ベルト31の開口端部を圧し潰してしまうこともある。これに対して、本実施形態では、バンド31A,31Bを解いた状態でシート部30の押圧面3b上に指11を置いたのち、バンド31A,31Bを巻き付けるように指11を縛るだけなので、指11の装着時にシート部30とベルト31との間の開口面積を気にしなくてよい。
【0037】
その他の構成については、第1実施形態と同様であるから説明を省略する。
【0038】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態を、図面に基づき説明する。
図7は、コントローラーにおける操作部の別の形状例を示す模式図である。
第2実施形態では、バンド31A,31Bが係止構造310を有する例として、スナップボタン312a,312bが示されていたが、本発明のコントローラー1の操作部3はこれに限定されない。例えば、
図7に示すように、バンド31A,31Bの係止構造310が、面ファスナー311a,311bであってもよい。
【0039】
面ファスナー311a,311bは、面的に着脱できるファスナーである。一般的な面ファスナー311a,311bは、ループ状に密集して起毛された側311aとフック状に起毛された側311bとを押し付けるとそれだけで貼り付くようになっており(
図7の円内拡大部分を参照)、貼り付けたり剥がしたりすることが自在にできる。それ以外にも、フックとループ両方が植え込まれており、フック面とループ面との区別のないタイプやマッシュルーム状に起毛されていて結合力が強いクリックタイプ、鋸歯状のシャークバイト(鮫歯)タイプなどのバリエーションがある。2片のバンド31A,31Bの重なり合う面に面ファスナー311a,311bは設けられる。
【0040】
このように押圧力及び引張力を検出するコントローラー1を構成することによって、面ファスナー311a,311bの貼り付け位置を指11の周囲方向にずらして、シート部30とベルト31A,31Bとの間の開口面積を調整することができる。したがって、コントローラー1のユーザーが別の人に変わっても、ユーザー毎の指11の断面サイズに適応できる。
【0041】
その他の構成については、第2実施形態と同様であるから説明を省略する。
【0042】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態を、図面に基づき説明する。
図8は、コントローラーにおける操作部の別の形状例を示す模式図である。
第3実施形態では、ユーザー毎の指11の断面サイズに適応できる係止構造310の例として、面ファスナー311a,311bが示されていたが、本発明のコントローラー1の操作部3はこれに限定されない。例えば、
図8に示すように、バンド31A,31Bの係止構造310が、リピートタイプの結束バンド構造313a~fであってもよい。
【0043】
結束バンド構造313a~fについて、さらに詳しく説明する。
本実施形態において、2片のバンド31A,31Bのうち一方のバンド31Aの端は開口部313eを有するヘッド部313dであり、他方のバンド31Bの端で先細くなったテール部313cを差し込み可能となっている(
図8参照)。バンド31Aのヘッド部313dの開口部313e内には爪313bが設けられている。また、バンド31Bの爪313bに対向する面にはセレーション313aと呼ばれるギザギザが設けられている。
このギザギザは断面形状が直角三角形をした突起の連続体であり、当該突起の傾斜面はテール部313c側に向いている。ヘッド部313dの爪313bの形状は、セレーション313aのギザギザに嵌る形状である。したがって、ヘッド部313dの開口部313eの反対側から出てきたテール部313cを引っ張ると、開口部313e内の爪313bがバンド31Bのセレーション313aの傾斜面で押されて上下動しながら、シート部30とベルト31A,31Bとの間の開口面積を小さくなっていく。バンド31Aのヘッド部313内をバンド31Bが後退しようとしても、セレーション313aのギザギザの垂直面が爪313bの垂直面に引っ掛かるため、バンド31Bは後退することはなく、指11を縛り付け固定することができる。
なお、本実施形態の係止構造310は、結束バンド構造313a~fがリピートタイプである。バンド31Aのヘッド部313には、指で摘まめるレバー313fを有しており、これをセレーション313aのギザギザの垂直面に沿って持ち上げることによって、爪313bがセレーション313aのギザギザから離れ、バンド31Bは後退させることができる。すなわち、指11の縛り固定を解くことができる。
【0044】
本実施形態の場合、2片のバンド31A,31Bは、セレーション313aを爪313bに引っ掛けて固定するため、適度な強度が必要となる。すなわち、バンド全体としてはリング状に曲げられるが、他方で爪やギザギザは引っ掛けでも欠けたりしない程度の強度も有する材料を使用する。例えば、 ナイロン、ポリプロピレン、フッ素系樹脂などが挙げられる。
【0045】
このように押圧力及び引張力を検出するコントローラー1を構成することによって、セレーション313aと爪313bの勘合位置を指11の周囲方向にずらして、シート部30とベルト31A,31Bとの間の開口面積を調整することができる。したがって、第3実施形態と同様に、コントローラー1のユーザーが別の人に変わっても、ユーザー毎の指11の断面サイズに適応できる。
【0046】
その他の構成については、第2、第3実施形態と同様であるから説明を省略する。
【0047】
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態を、図面に基づき説明する。
図9及び
図10は、コントローラーにおける操作部の別の形状例を示す模式図である。
第1~4実施形態では、操作部3の拘束面3bが、指11の背を覆うバンド31又は2片のバンド31A、31の指11側の面によって構成されていたが、本発明のコントローラー1の操作部3はこれに限定されない。例えば、
図9及び
図10に示すように、操作部3の拘束面3bが、指11を挟むクリップ32,33の指11側の面によって構成されていてもよい。
【0048】
本実施形態では、クリップ32,33は、指11の周囲面を押し付けて、指11を外側から嵌めこむものである。すなわち、クリップ32,33は、操作部3の押圧面3aから突出して指11の周囲を反対方向から取り囲む一対の樹脂製突起からなり、樹脂製突起32,33の先端どうしの間隔34が樹脂製突起32,33の弾性によって開閉する(
図9及び
図10参照)。
図9に示す例では、クリップ32,33の長さが同程度で、その先端どうしの間隔34が図中中央に位置している。また、
図10に示す例では、一方のクリップ32が他方の33よりも長く、その先端どうしの間隔34が図中左側に位置している。
指11を操作部3に装着する際は、指11を自立したクリップ32,33の外側より隙間34に押し入れる。クリップ32,33は、弾性のある樹脂製突起であるので、指11を押し入れる力によってその先端どうしの間隔34が開き、指11をクリップ32,33の内側の空間に受け入れるように変形する。指11がクリップ32,33の内側に入ると、間隔34が開いていたクリップ32,33は、再び間隔34が閉まる方向に復元する。この間隔34が閉まる方向に復元する力で指11は操作部3に固定される。
なお、クリップ32,33の先端は、指11をガイドするように外側に向かって曲がっているのが好ましい(
図9及び
図10参照)。
【0049】
クリップ32,33を構成する弾性のある樹脂製突起の材料としては、例えば、ABS、ポリカーボネート、ナイロン,ポリプロピレン、フッ素系樹脂などが挙げられる。
【0050】
このように押圧力及び引張力を検出するコントローラー1を構成することによって、第1実施形態と比較すると、指11の操作部3への装着が容易である。本実施形態では、リップ32,33に対して指11の周囲面を押し付けて嵌めこむだけなので、指11の装着時にシート部30とベルト31との間の開口面積を気にしなくてよい。
【0051】
なお、
図9及び
図10に示した例では、操作部3の押圧面3aがフィルム型3軸力覚センサー2の表面と平行であるが、押圧面3aは指11の周囲のうち腹側半分と密着するように曲面を形成していてもよい(図示しない)。このようにすると、指11と操作部3の押圧面3aとの間の隙間が無くなり、指11を動かしたときの遊びが少なくなる。その結果、操作に対するフィルム型3軸力覚センサー2の応答を遅延させることがなく、操作感が良くなるというメリットがある。
【0052】
その他の構成については、第1実施形態と同様であるから説明を省略する。
【0053】
[第6実施形態]
以下、本発明の第6実施形態を、図面に基づき説明する。
図11は、姿勢検出装置を使用したキャリブレーションの説明図である。
本実施形態では、コントローラー1が、ユーザーの操作姿勢を検出し、フィルム型3軸力覚センサー2のキャリブレーションに使用される姿勢検出装置9をさらに備えている。このコントローラー1をXRデバイスで用い、コントローラー1の操作によって仮想空間12内の球体のオブジェクト13を移動させるアプリケーションを例として、本実施形態を説明する。
【0054】
操作部3に加えられる力は、フィルム型3軸力覚センサー2によって、その面に対して法線方向の力F
z
Sensと、それらに直交する2軸の力(すなわちせん断力)F
x
Sens、F
y
Sensを検出する。それをベクトル量として以下のようにF
Sens(文字上に右向き矢印)として表すことにする。
【数1】
上記F
Sens(文字上に右向き矢印)は、フィルム型3軸力覚センサー2に対して指11が押している力の向きと強さを表わしている。
【0055】
XRデバイスのヘッドマウントディスプレイやスマートグラスなどで表示される仮想空間12では、コントローラー1に加えられたF
Sens(文字上に右向き矢印)に応じて、仮想空間12内の球体のオブジェクト13にも仮想的に力が加えられ、オブジェクト13が移動する。これによって、3次元の仮想空間12内を操作者はオブジェクト13を指一本で自由に移動させることができる。
仮想空間12内に表示されたオブジェクト13に仮想的に加えられる力のベクトル量は、F
Sens(文字上に右向き矢印)に対して以下のようにF
Act(文字上に右向き矢印)として表すことにする。
【数2】
【0056】
ここで、行列Мは、コントローラー1の姿勢によって決定する。具体的には、コントローラー1の姿勢が、基準の姿勢から、3D空間にX軸周りにθ
x、Y軸周りにθ
y、Z軸周りにθ
zだけ回転していると検出されたら、行列Мは、以下のようになる。
【数3】
【0057】
ところで、操作者はコントローラー1を手に持つため、仮想空間12に対して、コントローラー1の姿勢は無関係に変更される。つまり、
図11に示すように、仮想空間12に対して、(a)のように構えたり、(a)よりもコントローラー1を立てて(b)のように構えたりする。
そのため、仮想空間12に対して操作者が違和感なくオブジェクト13を操作するためには、どのような姿勢でも全く同じように仮想空間12上で力F
Act(文字上に右向き矢印)を働かせる必要がある。すなわち、姿勢に応じてセンサーの検出値をキャリブレーション(較正)しなければならない。具体的には、姿勢検出装置9で検出した操作姿勢の情報に基づいて、それぞれ異なる行列М(
図11においては、М
a,М
b)との内積によってF
Sens(文字上に右向き矢印)をF
Act(文字上に右向き矢印)に変換する。
【0058】
姿勢検出装置9としては、コントローラー1内に収納した重力方向に対する傾きに応じたデータを出力する加速度センサー、方位に応じたデータを出力する磁気センサー、回転運動に応じたデータを出力するジャイロセンサーなどを用いることができる。
また、姿勢検出装置9は、コントローラー1と外部装置との協働によるものであってもよい。例えば、現実空間に赤外線発光素子を設置し、コントローラー1のカメラで赤外線発光素子からの光を撮影し、画像を解析することにより操作姿勢を検出する。逆に現実空間にカメラを設置し、コントローラー1内に赤外線発光素子を設けてもよい。
【0059】
このように構成することによって、現実空間でどのような姿勢でコントローラー1が操作されているのか検出してキャリブレーションを行なうことができるので、コントローラー1の操作姿勢が変わっても、ヘッドマウントディスプレイやスマートグラスで見えている仮想空間12でオブジェクトに押圧力及び引張力の作用する方向が同じとなる。したがって、ユーザーの手元と仮想空間12の動きにズレのない自然な操作が行なえる。
【0060】
その他の構成については、第1~第5実施形態と同様であるから説明を省略する。
【0061】
[変化例]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【0062】
上記第5実施形態では、クリップ32,33は弾性のある樹脂製突起で構成され、その先端どうしの間隔34が閉まる方向に弾性に起因する復元する力で指11が固定される場合について説明しているが、洗濯バサミのようにバネと組み合わせればクリップに弾性は不要である。すなわち、クリップによって指11を挟んで固定できればよい。
【0063】
上記各実施形態では、フィルム型3軸力覚センサー2が、静電容量方式の場合について説明しているが、本発明のコントローラー1はこれに限定されない。フィルム型3軸力覚センサー2として、圧電式やひずみゲージ式など公知のものを採用することができる。
【0064】
また、上記各実施形態では、コントローラー1は図示しない通信部を有しているが、外部電子デバイスをUSBケーブル等の有線で操作する場合にはコントローラー1から通信部を省略してもよい。また、コントローラー1から電池5を省略してもよい。さらにコントローラー1がLCD等の表示装置やマイク、スピーカー等を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 コントローラー
2 フィルム型3軸力覚センサー
2a アクティブエリア
21 弾性層
22 上部支持体
23 上部電極
231 表側上部電極
232 裏側上部電極
24 上部電極部材
25 下部支持体
26 下部電極
27 下部電極部材
3 操作部
3a 押圧面
3b 拘束面
30 シート部
31,21A,31B バンド
310 係止部
311a,311b 面ファスナー
312a,312b スナップボタン
313a セレーション
313b 爪
313c デール部
313d ヘッド部
313e 開口部
313f レバー
32,33 クリップ(樹脂製突起)
34 間隔
9 姿勢検出装置
10 筐体
11 指
11a 腹
11b 背
12 仮想空間
13 オブジェクト
F1 押圧力
F2 引張力
【要約】
【課題】 指先の動きだけで、押圧力及び引張力を検出するコントローラーを提供する。
【解決手段】 本発明の押圧力及び引張力を検出するコントローラー1は、筐体10と、フィルム型3軸力覚センサー2と、操作部3とを備えている。フィルム型3軸力覚センサー2は、筐体10の表面に配置され、ユーザーの指11で加えられた3軸の力を検出するように構成されている。操作部3は、フィルム型3軸力覚センサー2のアクティブエリア2a表面を被覆している。また、操作部3は、指11の腹11aによる押圧面3aを有するとともに、押圧面3aから離間する方向に指11を動かすことによりフィルム型3軸力覚センサー2のアクティブエリア2a表面に引張力が働くように指11を拘束する拘束面3bを有する。
【選択図】
図2