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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】塗料供給経路の洗浄方法及び洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 9/032 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
B08B9/032
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024011406
(22)【出願日】2024-01-30
【審査請求日】2024-02-07
(31)【優先権主張番号】63/615,979
(32)【優先日】2023-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522203499
【氏名又は名称】カーライル フルイド テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Carlisle Fluid Technologies, LLC
【住所又は居所原語表記】16430 N Scottsdale Rd., Suite 450, Scottsdale, AZ 85254 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100098187
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 正司
(72)【発明者】
【氏名】白川 正道
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 守博
(72)【発明者】
【氏名】桜井 学
(72)【発明者】
【氏名】星名 英輝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利啓
【審査官】葛谷 光平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-192455(JP,A)
【文献】特開2017-154214(JP,A)
【文献】特開2012-071217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 9/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料源から塗料を塗装機に供給するための塗料供給経路を洗浄する方法であって、
該塗料供給経路は、ポンプと、該ポンプに通じる吸込管とを有し、
洗浄液を収容し且つ大気に開放した洗浄液タンクに前記吸込管の上流端部を挿入する吸込管設置工程と、
次いで、前記ポンプを起動するポンプ起動工程と、
前記ポンプの吸引力によって、前記吸込管の吸込み口を通じて、洗浄液と一緒にエアを前記吸込管の中に吸い込んで、前記吸込管の上流端部で気泡混じりの洗浄液を生成する気泡混じり洗浄液生成工程と
前記吸込管設置工程の前に、前記洗浄液タンクの中に、大気に開放した追加の容器を設置する容器設置工程とを有し、
前記追加の容器は下端部に流量規制開口を備え、該流量規制開口は、前記洗浄液タンクの洗浄液が前記追加の容器の中に流入するのを許容しつつ、その流入量を制限する機能を有し、
前記吸込管設置工程において、前記吸込管の上流端部が前記追加の容器の中に挿入され、
前記ポンプ起動工程によって前記ポンプが動作して該ポンプの吸引力で前記追加の容器の中の洗浄液を吸い上げて前記塗料供給経路を洗浄する第1ステージの洗浄が行われ、
該第1ステージの洗浄が進むに伴って前記追加の容器の中の洗浄液の液面が低下して、該液面が吸込管の吸込み口の近傍に達すると第2ステージの洗浄に自動的に切り替わって、前記気泡混じり洗浄液生成工程が行われることにより、前記気泡混じりの洗浄液で前記塗料供給経路を洗浄する、塗料供給経路の洗浄方法。
【請求項2】
請求項に記載の塗料供給経路の洗浄方法において、
前記ポンプが洗浄液を吸い込む流量をQpとし、前記流量規制開口を通じて前記追加の容器に流入する洗浄液の流入量をQhとすると、QpとQhとの関係がQp>Qhである、塗料供給経路の洗浄方法。
【請求項3】
請求項に記載の塗料供給経路の洗浄方法において、
前記ポンプが洗浄液を吸い込む流量をQpとし、前記流量規制開口を通じて前記追加の容器に流入する洗浄液の流入量をQhとすると、QpとQhとの関係が0.3xQp<Qh<0.7xQpである、塗料供給経路の洗浄方法。
【請求項4】
請求項に記載の塗料供給経路の洗浄方法において、
前記ポンプが洗浄液を吸い込む流量をQpとし、前記流量規制開口を通じて前記追加の容器に流入する洗浄液の流入量をQhとすると、QpとQhとの関係が0.4xQp<Qh<0.6xQpである、塗料供給経路の洗浄方法。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれか一項に記載の塗料供給経路の洗浄方法において、
前記流量規制開口が単数又は複数の小孔で構成されている、塗料供給経路の洗浄方法。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれか一項に記載の塗料供給経路の洗浄方法において、
前記流量規制開口が単数又は複数のスリットで構成されている、塗料供給経路の洗浄方法。
【請求項7】
ポンプと、該ポンプに通じる吸込管とを有し且つ塗料源から塗料を塗装機に供給するための塗料供給経路を洗浄するために、該塗料供給経路を洗浄するための洗浄液を収容し且つ大気に開放した洗浄液タンクの中で用いられる洗浄装置であって、
前記塗料供給経路を洗浄する洗浄工程の前の準備工程で、前記吸込管の上流端部が前記洗浄液タンクの中に挿入され、
前記洗浄工程において、前記吸込管の上流端部は、前記ポンプの吸引力によって前記吸込管の吸込み口を通じて洗浄液と一緒にエアを前記吸込管の中に吸い込んで、前記吸込管の上流端部で気泡混じりの洗浄液を生成する機能を有し、
前記洗浄装置は、下端が閉塞され且つ上端が大気に開放した追加の容器を更に含み、
該追加の容器は、前記洗浄装置を前記洗浄液タンクの中に設置したときに、該洗浄液タンクの中の洗浄液の液面よりも上方に位置する長さを有し、
前記追加の容器は、下端部に流量規制開口を備え、
該流量規制開口は、前記洗浄タンクの中の洗浄液が前記追加の容器の中に流入するのを許容しつつ、洗浄液が前記追加の容器の中に流入する量を制限する機能を有し、
前記塗料供給経路を洗浄する洗浄工程の前の準備工程で、前記洗浄液タンクの中に設置された前記追加の容器の中に前記吸込管の上流端部が挿入される、洗浄装置。
【請求項8】
請求項に記載の洗浄装置において、
前記追加の容器の下端が、該追加の容器の底面を構成するベースプレートによって閉塞され
該ベースプレートは、前記洗浄装置を前記洗浄液タンクの中に設置したときに、前記洗浄液タンクの底に着底して前記追加の容器が起立した状態を保つ大きさを有する、洗浄装置。
【請求項9】
請求項に記載の洗浄装置において、
前記流量規制開口が単数又は複数の小孔で構成されている、洗浄装置。
【請求項10】
請求項に記載の洗浄装置において、
通路断面積が異なる複数のオリフィス部材を更に有し、
各オリフィス部材は前記小孔に脱着可能に固定可能である、洗浄装置。
【請求項11】
請求項に記載の洗浄装置において、
前記流量規制開口が単数又は複数のスリットで構成されている、洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料源から塗料を塗装機に供給するための塗料供給経路を洗浄する技術に関し、より詳しくは、塗料供給経路の洗浄方法及び洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な例として自動車のボディに塗装を施す塗装工程では、例えば色彩の異なる塗料に変更する「色替え」の際に「洗浄工程」が実施される。洗浄工程では、洗浄液を用いて塗料供給経路の洗浄が行われる。
【0003】
特許文献1は、塗装機を含む塗料供給経路の洗浄工程について詳しく説明している。特許文献1は、圧力下で洗浄液を塗料供給経路に供給して塗装機を含む塗料供給経路の洗浄する方法を開示している。特許文献1の記載を要約すれば、従来は、洗浄工程の初めから終わりまで洗浄液を塗料供給経路に圧力下で供給して塗料供給経路を洗浄していたが、大量の洗浄液が必要であるという問題を有していた。この問題に対して、洗浄液にエアが混入した気泡混じりの洗浄液を用いて塗料供給経路を洗浄する方法が採用されていた。
【0004】
特許文献1の発明者は、洗浄工程において、洗浄液の供給と洗浄効果との相関関係を検証した結果、洗浄液で洗浄し始めた初期は、時間の経過と共に洗浄効率が一気に高くなるが、それ以降は、洗浄効率の上昇が緩慢になるという事実を発見した。この事実に基づいて特許文献1は次の洗浄方法及び洗浄装置を提案している。
【0005】
具体的に説明すると、特許文献1は、所定のタイムチャートに基づいて、先ず所定時間、洗浄液を圧力下で塗料供給経路に供給し、次に、洗浄液からエアに切り換えて、所定時間、エアを塗料供給経路に供給し、次に、エアから洗浄液に切り換えて、所定時間、洗浄液を塗料供給経路に供給する、というように、洗浄液とエアとを交互に切り換えて塗料供給経路を洗浄する方法を提案している。また、特許文献1に開示の洗浄装置は、塗料供給経路の上流端部に洗浄液用開閉バルブ及びエア用開閉バルブを有し、洗浄液用及びエア用の開閉バルブは、所定のタイムチャートに基づいて交互に開閉が切り換えられる。この洗浄装置を用いることで洗浄液の供給とエアの供給とを順次切り換えて、塗料供給経路を洗浄することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-307480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、簡素な構成で洗浄液の使用量を削減することのできる塗料供給経路の洗浄方法及び洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の洗浄方法及び洗浄装置は、従来のやり方つまり圧力下で供給する洗浄液を用いて塗料供給経路を洗浄するのではなく、自らが洗浄液を吸い込んで、この吸い込んだ洗浄液で塗料供給経路を洗浄することに特徴を有している。
【0009】
前記の課題を達成するために、本発明によれば、基本的には、
塗料源から塗料を塗装機に供給するための塗料供給経路を洗浄する方法であって、
該塗料供給経路は、ポンプと、該ポンプに通じる吸込管とを有し、
洗浄液を収容し且つ大気に開放した洗浄液タンクに前記吸込管の上流端部を挿入する吸込管設置工程と、
次いで、前記ポンプを起動するポンプ起動工程と、
前記ポンプの吸引力によって、前記吸込管の吸込み口を通じて、洗浄液と一緒にエアを前記吸込管の中に吸い込んで、前記吸込管の上流端部で気泡混じりの洗浄液を生成する気泡混じり洗浄液生成工程と
前記吸込管設置工程の前に、前記洗浄液タンクの中に、大気に開放した追加の容器を設置する容器設置工程とを有し、
前記追加の容器は下端部に流量規制開口を備え、該流量規制開口は、前記洗浄液タンクの洗浄液が前記追加の容器の中に流入するのを許容しつつ、その流入量を制限する機能を有し、
前記吸込管設置工程において、前記吸込管の上流端部が前記追加の容器の中に挿入され、
前記ポンプ起動工程によって前記ポンプが動作して該ポンプの吸引力で前記追加の容器の中の洗浄液を吸い上げて前記塗料供給経路を洗浄する第1ステージの洗浄が行われ、
該第1ステージの洗浄が進むに伴って前記追加の容器の中の洗浄液の液面が低下して、該液面が吸込管の吸込み口の近傍に達すると第2ステージの洗浄に自動的に切り替わって、前記気泡混じり洗浄液生成工程が行われることにより、前記気泡混じりの洗浄液で前記塗料供給経路を洗浄する、塗料供給経路の洗浄方法を提供する。
【0010】
本発明の作用効果及び他の目的は、下記の本発明の好ましい実施の形態の説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】塗装機に塗料を供給するための周知の塗料供給システムの概要を説明するための図。
図2】塗料供給経路の従来の洗浄方法を説明するための参考図。
図3】実施例の洗浄方法に用いられる洗浄装置の斜視図。
図4】実施例の洗浄方法を実施する前の準備工程が終わった状態を説明するための図。
図5】実施例の洗浄方法の第1ステージを説明するための図。
図6】実施例の洗浄方法の第2ステージを説明するための図。
図7図3に図示の洗浄装置の変形例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0012】
塗装機に塗料を供給するための周知の塗料供給システムの概要を図1に示す。図中、参照符号2は塗装機を示し、参照符号4は塗料源の塗料タンクを示す。塗料タンクは大気に開放されたタンクで構成されている。塗料タンク4と塗装機2との間にはポンプ6、分岐バルブ8が介在し、塗料タンク4の塗料は、ポンプ6によって吸込管10を通じて吸い込まれる。図1は、ポンプ6としてダイヤフラムポンプが採用された例を図示している。ポンプ6から吐出される塗料は、吐出管12を通じて分岐バルブ8に供給され、そして、分岐バルブ8から塗装機2に塗料が供給されて噴霧される。その一方で、使われなかった塗料は戻り管14を通じて塗料タンク4に戻される。すなわち、分岐バルブ8は三方弁で構成され、塗料は、三方弁を通過して塗料タンク4に戻される状態で循環している。吸込管10から三方弁に供給されている塗料は、外部からの信号によって三方弁が動作することによって塗装機2に供給され、そして塗装機2から噴霧される。
【0013】
本発明に従う洗浄方法は、吸込管10、ポンプ6、吐出管12、分岐バルブ8、戻り管14で構成される塗料供給経路20の洗浄に好適に適用することができる。なお、分岐バルブ8から塗装機2の洗浄は別のシステムによって洗浄される。
【0014】
参考のために、塗料供給経路20の従来の洗浄方法を、図2を参照して説明すると、洗浄工程の前の準備工程で、第1に、吸込管10において、吸込み口10aを含む上流端部が塗料タンク4から抜き去られて、吸込管10の上流端部は洗浄液タンク22に挿入される。洗浄液タンク22は大気の開放されたタンクで構成されている。なお、吸込管10の吸込み口10aはフィルタ・アタッチメント40で構成されている。洗浄液タンク22には洗浄液CLが収容されている。準備工程では、第2に、戻り管14の下流端部が塗料タンク4から抜き去られて廃液タンク24に挿入される。廃液タンク24は大気の開放されたタンクで構成されている。上記第1、第2の作業を実行することで準備工程が終了する。
【0015】
準備工程が完了したら、ポンプ6を起動することで塗料供給経路20の洗浄が開始される。洗浄工程で発生した汚染した洗浄液は、戻り管14を通じて廃液タンク24に貯留される。
【0016】
実施例(図3図7):
実施例の洗浄方法では、図3に図示の実施例の洗浄装置30が用いられる。洗浄装置30は、基本的には、ベースプレート32と、追加の容器34とを含む。追加の容器34は、筒状部材の一端(図3において下端)をベースプレート32によって閉塞した形態を有している。すなわち、追加の容器34は、上端が大気に開放され且つ底面がベースプレート32によって構成された形態を有している。なお、洗浄装置30は、洗浄液CLを収容した洗浄液タンク22の中で、大気開放の追加の容器34が、ベースプレート32から上方に向けて起立した状態で用いられる(図4)。
【0017】
図4を参照して、洗浄装置30は、例えばステンレス鋼で作られた比較的重量物であり、ベースプレート32は、洗浄装置30が洗浄液タンク22の中で転倒するのを防止する大きさを有する。洗浄液CLを収容した洗浄液タンク22の中において、洗浄装置30は、ベースプレート32が洗浄液タンク22の底面に着底し、そして、ベースプレート32から起立する追加の容器34はその起立姿勢を保つ。
【0018】
洗浄装置30を洗浄液タンク22の中に設置したとき、追加の容器34は、その開放した上端が、洗浄液タンク22の中の洗浄液CLの液面よりも上方に位置する長さ寸法を有している。
【0019】
追加の容器34は、下端部に円形の小孔36を備えている(図3)。小孔36は、洗浄液タンク22の洗浄液CLが追加の容器34の中に流入することを許容しつつ、その流入量を制限する機能を有している。小孔36を通じて、追加の容器34の中に流入する洗浄液CLの量は、ポンプ6による吸込み量に比べて少ない。追加の容器34は、一つの小孔36を備えていても良いが、複数の小孔36を備えているのが好ましい。
【0020】
小孔36は、洗浄液タンク22から追加の容器34に流入する洗浄液の量を絞り込む流量規制開口の一例である。流量規制開口の形状は任意である。流量規制開口は、単数又は複数の円形の小孔36に代えて、単数又は複数の非円形の孔であってもよいし、単数又は複数のスリットでもよい。
【0021】
小孔36が典型例である流量規制開口は、上述したように、洗浄液タンク22の洗浄液CLが追加の容器34の中に流入することを許容しつつ、その流入量を制限する機能を有する。流入量を制限する機能に関し、以下に好ましい具体例を説明する。
【0022】
ポンプ6が洗浄液を吸い込む流量をQpとし、小孔36を通じて追加の容器34に流入する洗浄液の流入量をQhとすると、Qp>Qhが絶対条件である。QpとQhとの好ましい関係は、0.3xQp<Qh<0.7xQpである。この条件が成立するように、例えば流量規制開口の大きさを設計すれば、洗浄液だけで洗浄する従来の洗浄方法に比べて、洗浄液の使用量を30%ないし70%削減できる。更に好ましくは0.4xQp<Qh<0.6xQpである。この条件が成立するように流量規制開口の大きさ等を設計すれば、洗浄液だけで洗浄する従来の洗浄方法に比べて、洗浄液の使用量を半減させることができる。
【0023】
図3を参照して、実施例の洗浄装置30は、好ましくは、通路断面積が異なる複数のオリフィス部材38を含む。オリフィス部材38はねじ山部38aを有し、他方、円形の小孔36はネジ穴で構成される。必要に応じて、好ましい通路断面積のオリフィス部材38が小孔36に脱着可能にネジ螺合される。これにより、オリフィス部材38によって小孔36の実質的な有効開口面積を調整することができる。適当な通路断面積を有するオリフィス部材38を選択することで、洗浄液CLが追加の容器34の内部に流入する量を調整することができる。
【0024】
オリフィス部材38はネジ螺合によって小孔36に脱着可能であるが、変形例として、オリフィス部材38を小孔36に脱着可能に嵌合させる構成を採用してもよい。
【0025】
大気に開放した追加の容器34の内径InD(図3)は、吸込管10の上流端に配置されたフィルタ・アタッチメント40の直径Diを基準として設定するのが好ましい。具体的には、フィルタ・アタッチメント40を含む上流端部を、追加の容器34の上端開口から容器34の中に挿入可能な且つ好ましくは極力必要最小限の値に設定するのがよい。
【0026】
図4図6を参照して、実施例の洗浄装置30の作用を説明する。なお、図4ないし図6は、線図の錯綜を避けるためにフィルタ・アタッチメント40の図示が省略されている。塗料供給経路20の洗浄を実行する前に次の準備が行われる。図4を参照して、準備工程では、洗浄液CLを収容した洗浄液タンク22の中に洗浄装置30が設置される。洗浄装置30の主要な構成要素である追加の容器34は、その上端が大気に開放されていることから、洗浄液タンク22の中に洗浄装置30を設置すると、直ぐに、洗浄液タンク22の洗浄液CLが小孔36を通じて追加の容器34に流入し、短時間の内に、追加の容器34は洗浄液で満たされた状態になる。次に吸込管10の上流端部が塗料タンク4から抜き去られ、追加の容器34の上端開口から容器34の中に挿入される。吸込管10は、その吸込み口10aが追加の容器34の底から離れた状態で且つ容器34の下端近傍に位置決めされる。また、戻り管14は塗料タンク4から抜き去られ、この戻り管14の下流部分が、大気に開放した廃液タンク24に挿入される。以上の作業を実行することにより、塗料供給経路20を洗浄するための準備が完了する。
【0027】
上記の準備が終わったら、ポンプ6を起動することで洗浄工程が開始される。洗浄工程は時系列に第1ステージと第2ステージとで構成される。第1ステージでは、追加の容器34の中の洗浄液が吸込管10を通じてポンプ6で吸い込まれて、洗浄液を用いた塗料供給経路20の洗浄が行われる(図5)。洗浄に使用した汚染した洗浄液は、大気に開放した廃液タンク24に貯留される。これにより、塗料供給経路20に残留する塗料の大部分が塗料供給経路20から除去される。
【0028】
第1ステージにおいて、吸込管10による洗浄液の吸い込みに伴って追加の容器34の中の洗浄液の液面が低下すると共に、小孔36を通じて、大気に開放した洗浄液タンク22の洗浄液CLが容器34の中に流入する。小孔36を通じて容器34の中に流入する洗浄液の量と、ポンプ6の吸い込み量との関係は、上述した通りである。すなわち、小孔36を通じて追加の容器34の中に流入する洗浄液の量が、上述したように、ポンプ6による吸い込み量よりも少ない値となるように、小孔36の開口面積が設定されている(図3)。小孔36が円形の場合、小孔36の直径は好ましくは1mmないし5mmである。この1mmないし5mmは単なる例示である。
【0029】
第1ステージで行われる洗浄液CLを使った洗浄が進むと、自動的に第2ステージに移行して気泡混じりの洗浄液で洗浄が行われる。すなわち、追加の容器34の中の洗浄液の液面が、吸込管10の吸込み口10aに近づくと、追加の容器34の中の洗浄液よりも上のエアが洗浄液に混入した状態でポンプ6によって吸い込まれる(図6)。すなわち、ポンプ6の吸引力の作用によって、吸込管10の吸込み口10aを通じて洗浄液と一緒にエアが吸込管10の中に吸い込まれ、その結果、吸込管10の上流端部は洗浄装置30の一部を構成し、吸込管10の上流端部で気泡混じりの洗浄液が生成される。これにより、第2ステージでは、吸込管10の上流端部は気泡混じりの洗浄液を生成する機能を発揮して、塗料供給経路20は気泡混じりの洗浄液で洗浄される。
【0030】
上述したように、小孔36を通じて追加の容器34の中に流入する洗浄液CLの量は、ポンプ6の吸い込み量よりも少ない。このことから、第2ステージにおいて、追加の容器34の中の洗浄液の液面が吸込管10の吸込み口10aの近傍まで低下すると、気泡混じりの洗浄液に含まれる気泡が多くなるが、ポンプ6の動作が停止されるまで、気泡混じりの洗浄液で塗料供給経路20の洗浄が継続される。
【0031】
上述した洗浄装置30に含まれるベースプレート32と容器34は、ベースプレート32の上に一つの追加の容器34を配置した構造を有しているが、変形例として、図7に図示するように、一つのベースプレート32の上に、複数(例えば4つ)の追加の容器34を配置した構成を備えていてもよい。図1に図示の塗料供給システムにおいて、ポンプ6としてギヤポンプが採用されている場合には、4つの塗装機2の各々に関連した4つの塗料供給経路20を同時に洗浄することが望まれる。図7に図示の変形例は、この要請に応えることができる。
【符号の説明】
【0032】
2 塗装機
4 塗料タンク(塗料源)
6 ポンプ
8 分岐バルブ
10 吸込管
10a 吸込管の吸込み口
12 吐出管
14 戻り管
20 塗料供給経路
22 大気開放の洗浄タンク
CL 洗浄液タンクに収容された洗浄液
30 洗浄装置
32 ベースプレート
34 大気に開放した追加の容器
36 小孔(流量規制開口)
38 オリフィス部材
【要約】
【課題】簡素な構成で洗浄液の使用量を削減する。
【解決手段】洗浄工程の第1ステージでは、ポンプ6が動作すると吸込管10によって容器34の中の洗浄液が吸い上げられて、洗浄液を用いた洗浄が行われる。小孔36を通じて追加の容器34の中に流入する洗浄液の量は、ポンプ6による吸い込み量よりも少ない。第1ステージの洗浄が進むと、追加の容器34の中の洗浄液の液面が低下する。容器34の中の洗浄液の液面が、吸込管10の吸込み口10aに近づくと、第2ステージに自動的に移行して、追加の容器34の中のエアが洗浄液と一緒にポンプ6によって吸い込まれる。その結果、吸込管10の上流端部で気泡混じりの洗浄液が生成されて、気泡混じりの洗浄液によって塗料供給経路20の洗浄が行われる。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7