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特許7500161患者の体内における剛性ツールのトラッキング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】患者の体内における剛性ツールのトラッキング
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20240610BHJP
   A61B 17/24 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B17/24
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018246881
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2019118827
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】15/859,969
(32)【優先日】2018-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0187915(US,A1)
【文献】特開平11-290340(JP,A)
【文献】特開2017-060757(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0082280(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/20
A61B 17/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
医療装置に連結された位置トラッキングシステムの、前記医療装置上の3つ以上の位置センサの相互の既知の相対的位置を示す値を保持するよう構成された、メモリと、
該位置トラッキングシステムにより測定された、該位置センサの推定位置を示す複数の信号を受信し、
受信した前記複数の信号に基づいて、前記3つ以上の位置センサの推定位置を算出し、
それぞれの前記推定位置に基づいて、前記3つ以上の位置センサの相互の相対的な推定位置を算出し、
前記既知の相対的位置と前記相対的な推定位置とを比較し、
前記既知の相対的位置と前記相対的な推定位置との間の不一致の検出によって、前記3つ以上の位置センサの1つまたは2つ以上の前記推定位置が、歪んだ位置の算出値であることを検出し、
且つ、前記既知の相対的位置と前記相対的な推定位置との間の一致の検出によって、当該一致が検出された記位置センサの前記推定位置が、歪んでいない位置の算出値であることを検出した場合に、
前記既知の相対位置を示す値及び前記歪んでいない位置の算出値を用いて、前記歪んだ位置の算出値を修正するよう構成された、プロセッサと、
を含む、装置。
【請求項2】
装置であって、
医療装置に連結された位置トラッキングシステムの、前記医療装置上の複数の位置センサの、前記医療装置上の所定の基準位置の位置センサに対する既知の相対的位置を示す値を保持するよう構成された、メモリと、
該位置トラッキングシステムにより測定された、該位置センサの推定位置を示す複数の信号を受信し、
受信した前記複数の信号に基づいて、前記複数の位置センサの推定位置及び前記所定の基準位置の推定位置を算出し、
それぞれの前記推定位置に基づいて、前記複数の位置センサの推定位置の前記所定の基準位置の推定位置に対する相対的な推定位置を算出し、
前記既知の相対的位置と前記相対的な推定位置とを比較し、
前記既知の相対的位置と前記相対的な推定位置との間の不一致の検出によって、前記検出された不一致をユーザに警告するよう構成された、プロセッサと、
を含む、装置。
【請求項3】
前記医療装置が、耳鼻咽喉(ENT)ツールを含み、前記位置センサが、該ENTツールの長手方向軸に沿って連結されている、請求項1又は2に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に医療装置に関し、具体的には患者の体内において医療装置をトラッキングするための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な医療処置は、患者の体内の空洞にツールを挿入することを含む。患者の体内で医療装置をトラッキングするための技術が、当該技術分野で知られている。
【0003】
例えば、米国特許出願公開第2012/0065481号は、患者のある領域をナビゲートするための画像ガイドによるカテーテルナビゲーションシステムについて記述している。このカテーテルは、撮像装置、トラッキング装置、コントローラ、及びディスプレイを含む。この撮像装置は、その患者の当該領域の画像を生成する。このトラッキング装置は、その患者の当該領域におけるカテーテルの位置をトラッキングする。このコントローラは、カテーテルの位置に基づいて、撮像装置から生成された画像上に、カテーテルを表すアイコンを重ね合わせる。このディスプレイは、カテーテルの現在位置において、画像上にカテーテルが重ねられた領域の画像を表示する。
【0004】
米国特許出願公開第2011/0251814号は、物体の位置をトラッキングするための方法を記述している。この方法は、物体に関連付けられた磁場センサを用いて、2つ以上の磁場発生器により生成された磁場の強度を測定することを含み、この磁場強度のうち少なくとも1つの測定値が、歪みの対象となる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に述べられる本発明の一実施形態は、メモリ及びプロセッサを含む装置を提供する。このメモリは、医療装置に連結された位置トラッキングシステムの複数の位置センサの既知の相対的位置を示す値を保持するよう構成されている。このプロセッサは、位置トラッキングシステムにより測定された、位置センサの推定位置を示す1つ又は2つ以上の信号を受信するように構成され、かつ、既知の相対的位置と推定位置との間の不一致の検出に応じて、対応アクションを開始するよう構成されている。
【0006】
いくつかの実施形態において、このプロセッサは、既知の相対的位置を示す値に基づいて、検出された不一致を補正するよう構成されている。他の実施形態において、このプロセッサは、検出された不一致をユーザに警告するよう構成されている。更に他の実施形態において、このプロセッサは、1つ又は2つ以上の受信信号に基づいて、推定位置を算出するよう構成されている。
【0007】
一実施形態において、このプロセッサは、既知の相対的位置の値と推定位置の値とを比較して、不一致を検出するよう構成されている。別の一実施形態において、この既知の相対的位置は、医療装置に連結された第1、第2及び第3の位置センサの既知の相対的位置を含み、この受信信号は、第1、第2及び第3の位置センサの推定位置を示す信号を含む。このプロセッサは、(i)第1の位置センサの既知の相対的位置と、第1の位置センサの推定位置との間の不一致を検出することにより、第1の位置センサの1つ又は2つ以上の歪んだ測定値を検出することと、(ii)第2及び第3の位置センサの受信信号に基づいて、及び、第1、第2及び第3の位置センサの既知の相対的位置に基づいて、この不一致を補正することと、を行うよう構成されている。更に別の一実施形態において、この医療装置は、耳鼻咽喉(ENT)ツールを含み、この位置センサは、ENTツールの長手方向軸に沿って連結されている。
【0008】
本発明の一実施形態に従って、更に、医療装置に連結された位置トラッキングシステムの複数の位置センサの既知の相対的位置を示す値を保持することを含む方法が提供される。位置トラッキングシステムによって測定された、位置センサの推定位置を示す1つ又は2つ以上の信号が受信される。既知の相対的位置と推定位置との間の不一致を検出することに応じて、対応アクションが開始される。
【0009】
本発明は、以下の発明を実施するための形態を図面と併せて考慮すると、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態による、ENTシステムを用いた耳鼻咽喉(ENT)処置の概略的絵図である。
図2A】本発明の一実施形態による、ENT処置に適用されるENTツールの概略描画図である。
図2B】本発明の一実施形態による、ENT処置に適用されるENTツールの概略描画図である。
図3】本発明の一実施形態による、患者体内でENTツールをトラッキングするための方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
概略
一部の医療処置(例えば耳鼻咽喉(ENT)処置)では、患者頭部内に剛性ENTツールをナビゲートする必要がある。
【0012】
原理的には、ENTツールは、ツールの遠位端に、磁気位置トラッキングシステムの位置センサを連結することにより、患者の頭部内でトラッキングすることができる。位置測定は、磁気位置トラッキングシステムを使用して、予め定義された磁場を印加することと、位置センサの位置を推定することとによって、較正することができる。しかしながら、場合によっては、(例えば、ENT処置中に)位置トラッキングシステムにより印加される磁場は、例えば、ENT処置中に導入される金属製物体(例えば、追加のツール)によって歪むことがある。磁場に生じる歪みを考慮していない場合には、患者頭部内でのENTツールのトラッキング精度が低下するおそれがある。
【0013】
本明細書において下記に述べる本発明の実施形態は、歪みのある磁場の存在下で患者頭部内での剛性ENTツールをトラッキングするための改善された技法を提供する。いくつかの実施形態において、単一の位置センサを使用する代わりに、磁気位置トラッキングシステムの複数(例えば、3つ)の位置センサが、メモリに格納された既知の相対的位置で(例えば、ENTツールの長手方向軸に沿って)連結される。ENTツールは剛性であるため、各位置センサは、他の位置センサに対して固定された既知の位置を有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、プロセッサは、位置トラッキングシステムによって測定された、位置センサの推定位置を示す信号を受信するよう構成され、かつ、既知の相対的位置の値と推定相対的位置の値とを比較するように構成されている。いくつかの実施形態において、プロセッサは、既知の相対的位置の値と推定相対的位置の値との間の不一致の検出に応じて、好適なアクションを開始するよう構成されている。
【0015】
いくつかの実施形態において、プロセッサは、複数の位置センサの間の既知の相対的位置を使用して、1つ又は2つ以上の位置センサにより実行される1つ又は2つ以上の歪んだ測定値を検出かつ補正するよう構成されている。
【0016】
本開示の技法は、関与するツールの位置トラッキングの精度を低下させることなく、磁場に歪みを引き起こす可能性のある複数のENTツール又は他の物体を導入することを可能にすることによって、低侵襲性医療処置の質の改善を実現する。
【0017】
更に、本開示の技法は、時間により変動する条件及び干渉へのリアルタイム適応を可能にする。
【0018】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、ENTシステム20を用いた耳鼻咽喉(ENT)処置の概略的絵図である。いくつかの実施形態において、ENTシステム20はENTモジュール28を含み、これはENT処置(例えば、患者22の1つ又は2つ以上の洞48の感染症を治療するなど)を実行するよう構成されている。
【0019】
いくつかの実施形態において、ENTモジュール28は、医師24が患者22の鼻26に挿入する遠位端に連結されたENTツール38を備える。モジュール28は、ENTツール38の近位端に連結され、ツール38を患者22の頭部41内にナビゲーションする際に医師24を支援するよう構成された、ハンドヘルド装置30を更に備える。
【0020】
いくつかの実施形態において、装置30は更に、吸引を適用するよう構成されており、これによって、感染症を起こした洞48から感染物を除去する。ENT吸引ツール38は、以下の図2で更に詳細に説明される。
【0021】
一実施形態において、システム20は、頭部41内の1つ又は2つ以上の位置センサの位置をトラッキングするように構成された磁気位置トラッキングシステムを更に備える。磁気位置トラッキングシステムは、磁場発生器44と、以下の図2A及び図2Bに示す複数の位置センサとを備える。位置センサは、磁場発生器44によって生成された外部磁場の検出に応答して位置信号を生成し、それによって、以下に説明するように、プロセッサ34が各センサの位置を推定することを可能にする。
【0022】
この位置検知方法は、様々な医療用途において、例えば、Biosense Webster Inc.(Irvine,Calif.)により製造されているCARTO(商標)システムにおいて実施されており、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号及び同第2004/0068178(A1)号に詳述されており、これらの開示は全て、参照により本明細書に組み込まれている。
【0023】
システム20は位置特定パッド40を更に備え、位置特定パッド40は、フレーム46上に固定された磁場発生器44を備える。図1に示す例示的な構成では、パッド40は、5つの磁場発生器44を備えるが、代替的に、任意の他の好適な数の発生器44を備えることができる。パッド40は、発生器44が頭部41の外部の固定された既知の位置に位置決めされるように、患者22の頭部41の下に配置された枕(図示せず)を更に備える。
【0024】
いくつかの実施形態において、システム20はコンソール33を更に備え、コンソール33は、メモリ49と、頭部41の周囲の空間内の事前定義された作業体積内に磁場を発生させるためにケーブル37を介して好適な信号で磁場発生器44を駆動するよう構成された駆動回路42とを備えている。
【0025】
いくつかの実施形態において、コンソール33はプロセッサ34を備え、プロセッサ34は、一般的には、ケーブル32を介して複数の磁気センサ(以下の図2に示す)が取り付けられたツール28からの信号を受信し、かつ本明細書に記載のシステム20の他の構成要素を制御するための、好適なフロントエンド及びインタフェース回路を有する汎用コンピュータである。
【0026】
いくつかの実施形態において、プロセッサ34は、各位置センサの位置を推定するよう構成されている。プロセッサ34は、各センサの推定位置に基づいて、磁気位置トラッキングシステムの座標系においてツール28の遠位端(以下の図2に示す)の位置及び向きを導出するように構成されている。
【0027】
いくつかの実施形態において、プロセッサ34は、外部のCTシステム(図示せず)を用いて取得した、頭部41の各セグメント化二次元(2D)スライスを描写するコンピュータ断層撮影(CT)画像などの、1つ又は2つ以上の解剖学的画像を、インタフェース(図示せず)を介して受信するように構成されている。「セグメント化」という用語は、CTシステム内の組織のそれぞれの減衰を測定することによって、各スライス内で識別される様々な種類の組織を表示することを指す。
【0028】
コンソール33は、コンソールの操作を制御するための入力装置39と、ユーザディスプレイ36とを更に備え、ユーザディスプレイ36は、プロセッサ34から受信したデータ(例えば、画像)を表示するように、及び/又は、入力装置39を用いてユーザ(例えば、医師24)によって挿入された入力を表示するように、構成されている。
【0029】
いくつかの実施形態において、プロセッサ34は、CT画像の中から1つ又は2つ以上(mode)のスライスを選択し(例えば画像35)、その選択したスライスをユーザディスプレイ36に表示するよう構成されている。図1の実施例において、画像35は患者22の1つ又は2つ以上の洞48の前断面図を示す。
【0030】
図1は、簡潔性かつ明瞭性のため、開示技法に関連する要素のみを示す。システム20は、典型的に、開示技法に直接には関連せず、したがって図1及び対応する説明から意図的に省略されている付加的なモジュール及び要素を備える。
【0031】
プロセッサ34は、システムによって使用される機能を実行するように、かつソフトウェアによって処理されるか、又は別様に使用されるデータをメモリ49に格納するようにプログラムされ得る。このソフトウェアは、例えばネットワークを介して電子的形態でプロセッサにダウンロードされてもよく、又は光学的、磁気的、若しくは電子的メモリ媒体など、非一時的な有形媒体上に提供されてもよい。代替的に、プロセッサ34の機能の一部又は全ては、専用の又はプログラム可能なデジタルハードウェア構成要素によって実行されてもよい。
【0032】
歪んだ磁場における剛性ENTツールのトラッキング
図2Aは、本発明の一実施形態による、例えば上述の図1に示すENT処置に適用されるENTツール38の概略的絵図である。いくつかの実施形態において、ENTツール38は、例えばENTツール38の長手方向軸56に沿って、ENTツール38上の好適な既知の相対的位置で連結されている、複数の位置センサ(例えば位置センサ50、52及び54)を備える。
【0033】
本開示の文脈において、用語「既知の相対的位置」は、センサ50、52及び54の互いに対する、又は、ツール38上の事前定義された基準位置に対する、又は、任意の他の好適な方法を用いた、実際の位置を指す。位置センサの実際の相対的位置は典型的に、ツールの設計において定義され、製造中に、任意の好適な測定手段を用いて測定することができる。
【0034】
一実施形態において、ツール38は、例えば図2Aに示すように、直線的形状を有し得る。この実施形態において、センサ50とセンサ52との間の既知の相対的位置は、これら位置センサの間の距離51によって定義され得る。同様に、センサ52とセンサ54との間の既知の相対的位置は、距離53によって決定され得る。この実施例において、センサ50とセンサ54との間の既知の相対的位置は、距離51と距離53を合計することによって得られる。
【0035】
他の実施形態において、既知の相対的位置を得るために、任意の他の好適な定義及び測定が適用されてもよい。例えば、ENTツールが湾曲形状又は不規則な形状を有する場合、ツールに沿って連結された各対の位置センサ間の既知の相対的位置は、大きさ(又は長さ)及び方向を有するユークリッドベクトルの形で決定され得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、センサ50、52及び54の既知の相対的位置は、システム20のメモリ49に格納される。この既知の相対的位置は、例えば、ENTツール製造メーカーにより提供され得る。
【0037】
いくつかの実施形態において、ENT処置中に、磁場発生器44は磁力線62により示される磁場60を印加する。上述の図1に示すように、プロセッサ34は、位置センサ50、52及び54から受信される、磁気位置トラッキングシステムの座標系におけるそれぞれの位置を示す信号に基づいて、位置センサ50、52及び54のそれぞれの位置を推定するよう構成されている。
【0038】
いくつかの実施形態において、プロセッサ34は、その推定位置に基づいて、センサ50、52及び54のそれぞれの推定相対的位置を計算するよう構成されている。この推定相対的位置は、例えば、センサ50とセンサ52との間の第1の推定距離(これは既知距離51に対応する)と、センサ52とセンサ54との間の第2の推定距離(これは既知距離53に対応する)の、2つの距離として定義され得る。
【0039】
いくつかの実施形態において、プロセッサ34は、この第1の推定距離と既知距離51とを比較し、更にこの第2の推定距離と既知距離53とを比較するよう構成されている。
【0040】
いくつかの実施形態において、プロセッサ34は、所与の既知距離と対応する推定距離との間に不一致が存在するかどうかを判定するための、閾値を(メモリ49内に、又はプロセッサ34のメモリ内に)格納する。この不一致を判定する閾値は、少なくとも2つの既知距離の間で異なっていてもよく、あるいは、全ての既知距離に対して同様であってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態において、ツール38は、典型的には処置を実施する前に、1つ又は2つ以上の事前定義された磁場に対して較正が行われ、これによって初期の不一致レベルを最小限に抑える。
【0042】
図2Bは、本発明の一実施形態による、ENT処置に適用されるENTツール38の概略描写図である。図2Bの実施例において、医師はツール38を、金属製の物体58(例えば別の医療装置の金属製遠位端、又は患者22の頭部41内にある金属製インプラント装置)の近くに(is proximity to)ナビゲートする。
【0043】
物体58の存在により、特に、物体58とツール38の遠位端との間が近接することにより、磁力線62(図2Bにおいて点線で示される)の歪みが生じ、これによって、歪んだ磁場70の歪んだ磁力線72が代わりに形成され得る。
【0044】
磁力線の歪みは、位置センサ50の近くを通る磁力線72において起こっており、センサ52及び54の近くを通る磁力線では、この磁場の歪みによる影響が少ないことに注意されたい。
【0045】
いくつかの実施形態において、プロセッサ34は、第1の推定距離の値と既知距離51の値との間で、事前定義された閾値を上回る不一致を検出するよう構成され、一方、第2の推定距離の値と既知距離53の値は、互いに対して一致している(すなわち、検出される不一致が、事前定義された閾値を下回る)。
【0046】
いくつかの実施形態において、プロセッサ34は、第1の推定距離と既知距離51との間の不一致の検出に応じて、対応アクションを開始することができる。
【0047】
一実施形態において、対応アクションを適用する際に、プロセッサ34は医師24に対して(例えば、ディスプレイ36上に)ENT処置を保留するよう警告メッセージを表示することができる。別の一実施形態において、プロセッサ34は、少なくとも1つの位置センサ(例えばセンサ50)により実行される、1つ又は2つ以上の歪んだ位置の測定値を検出するように構成されている(例えば、センサ50の既知の相対的位置(例えばセンサ52からの距離51)と、センサ50により測定された歪んだ位置との間の不一致(例えば、センサ50及び52の推定位置の間の距離)を検出することによって)。
【0048】
いくつかの実施形態において、プロセッサ34は、センサ50、52及び54の既知の相対的位置を決定する距離51及び53と、位置センサ52及び54により実行される測定値とに基づいて、センサ50により実行される歪んだ位置の測定値を補正するよう構成されている。
【0049】
いくつかの実施形態において、センサ50の歪んだ位置の測定値を補正した後、プロセッサ34は、例えば、ユーザディスプレイ36上に、その歪んだ位置の測定値が成功裏に補正されたことを示すメッセージを表示し、これにより医師24はENT処置を進めることができる。
【0050】
システム20の構成、及び特にENTツール38の構成は、概念を明瞭に表すために(for the same of)単に一例として示されている。他の実施形態において、任意の代替的な構成を使用することができ、例えば、位置センサの数、各対の位置センサ間の距離は変化してもよく、これにより、医学的、規制的、又は技術的要件など様々な要件に準拠することができる。
【0051】
図3は、本発明の一実施形態による、患者の頭部41内でENTツール38をトラッキングするための方法を概略的に示すフローチャートである。この方法は測定工程100から始まる。工程100では、ENT処置を実施する前に、技術者が例えば、ENTツール38に沿って、位置センサ50、52及び54の相対的位置(例えば、上述の図2Aに示す距離51及び53)を測定する。いくつかの実施形態において、技術者又は別のユーザが、距離51及び53をコンソール33のメモリ49に格納する。
【0052】
ツールナビゲーション工程102において、医師24はENTツール38を患者頭部41に挿入し、位置トラッキングシステムにより測定された信号に基づいて、センサ50、52及び54の推定位置を、プロセッサ34から受け取る。いくつかの実施形態において、プロセッサ34は、この推定位置に基づいて、センサ50とセンサ52の間の第1の推定相対的距離と、センサ52とセンサ54の間の第2の推定相対的距離とを計算する。
【0053】
比較工程104において、プロセッサ34は、相対的距離の計算された値と、対応する推定位置とを比較する。例えば、プロセッサ34は、第1の推定距離の値と既知距離51の値とを比較して、センサ50及び52の相対的位置に関して不一致がある(例えば、事前定義された閾値を上回る)かどうかを検出する。プロセッサは他の値(例えば、第2の推定距離と既知距離53との間)について比較を繰り返すことができ、これにより、センサ52及び54の相対的位置に関して不一致があるかどうかを検出することができる。
【0054】
他の実施形態において、プロセッサ34は、任意の他の好適な技法を用いて、既知の相対的距離と推定相対的距離とを比較するのではなく、センサ50、52及び54の測定された相対的位置と推定相対的位置とを比較することができる。
【0055】
不一致検出工程106において、プロセッサ34は、メモリ49に格納されている任意の測定された(すなわち、既知の)相対的位置の値と、位置トラッキングシステムにより測定されたセンサ50、52及び54の位置に基づいて得られた推定相対的位置の値との間に、不一致があるかどうかをチェックする。
【0056】
不一致が検出されない場合、この方法はナビゲーション完了工程108に進み、この工程でプロセッサ34又は医師24は、ENTツール38が頭部41内の標的位置に配置されているかどうかをチェックし、これにより、医師24はツール38を適用してENT処置を実施することができる。
【0057】
不一致が検出された場合、この方法は対応アクション工程112に進み、この工程でプロセッサ34は医師24に対して不一致の検出を通知し、所望により、1つ又は2つ以上の補正アクション(例えば、上述の図2Bにおいて記載されているように、センサ50により実行された歪んだ位置の測定値を補正するなど)を実施する。
【0058】
他の実施形態において、工程112で実施される対応アクションの一環として、プロセッサ34は、適切なメッセージを表示することによって、ユーザに対して推奨を行うことができ、及び/又は、医師24は処置を終了してツール38を患者22の体内から引き抜くことを決断することができる。
【0059】
プロセッサ34がセンサ50により実行された歪んだ位置の測定値を補正する場合、この方法は、検出工程106に戻り、この工程でプロセッサ34は、工程106で検出された全ての不一致が補正されたかどうか(例えば、事前定義された閾値を下回るようになったかどうか)をチェックする。
【0060】
全ての不一致が修正されている場合、この方法は、ナビゲーション完了工程108に進み、ここでENTツールが標的位置にあるかどうかをチェックし、そうでない場合は、ナビゲーション工程102へ戻る。
【0061】
ナビゲーションが完了した場合、この方法はENT処置工程110へ進み、ここでこの方法は終了する。工程110において、ENTツールは頭部41内の標的位置(例えば、洞48)に配置され、医師24はENT処置を実施することができる(例えばENTツール38を適用して、感染症を起こした洞48から感染物を吸引するなど)。
【0062】
本明細書に記載される実施形態は主にENT処置に対処するが、本明細書に記載される方法とシステムは更に、耳鼻咽喉学、心臓学、又は神経学などの他の用途に用いられ得る。
【0063】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に具体的に示し説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていないそれらの変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0064】
〔実施の態様〕
(1) 装置であって、
医療装置に連結された位置トラッキングシステムの複数の位置センサの既知の相対的位置を示す値を保持するよう構成された、メモリと、
該位置トラッキングシステムにより測定された、該位置センサの推定位置を示す1つ又は2つ以上の信号を受信するように構成され、かつ、該既知の相対的位置と該推定位置との間の不一致の検出に応じて、対応アクションを開始するよう構成された、プロセッサと、
を含む、装置。
(2) 前記プロセッサが、前記既知の相対的位置を示す前記値に基づいて、前記検出された不一致を補正するよう構成されている、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記プロセッサが、前記検出された不一致をユーザに警告するよう構成されている、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記プロセッサが、前記1つ又は2つ以上の受信信号に基づいて、前記推定位置を算出するよう構成されている、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記プロセッサが、前記既知の相対的位置の値と前記推定位置の値とを比較して、前記不一致を検出するよう構成されている、実施態様1に記載の装置。
【0065】
(6) 前記既知の相対的位置が、前記医療装置に連結された第1、第2及び第3の位置センサの既知の相対的位置を含み、前記受信信号が、該第1、第2及び第3の位置センサの推定位置を示す信号を含み、前記プロセッサが、
(i)該第1の位置センサの既知の相対的位置と、該第1の位置センサの推定位置との間の不一致を検出することにより、該第1の位置センサの1つ又は2つ以上の歪んだ測定値を検出することと、
(ii)該第2及び第3の位置センサの該受信信号に基づいて、及び、該第1、第2及び第3の位置センサの該既知の相対的位置に基づいて、該不一致を補正することと、
を行うよう構成されている、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記医療装置が、耳鼻咽喉(ENT)ツールを含み、前記位置センサが、該ENTツールの長手方向軸に沿って連結されている、実施態様1に記載の装置。
(8) 方法であって、
医療装置に連結された位置トラッキングシステムの複数の位置センサの既知の相対的位置を示す値を保持することと、
該位置トラッキングシステムによって測定された、該位置センサの推定位置を示す1つ又は2つ以上の信号を受信することと、
該既知の相対的位置と該推定位置との間の不一致を検出することに応じて、対応アクションを開始することと、
を含む、方法。
(9) 前記対応アクションを開始することが、前記既知の相対的位置を示す前記値に基づいて、前記検出された不一致を補正することを含む、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記対応アクションを開始することが、前記検出された不一致をユーザに警告することを含む、実施態様8に記載の方法。
【0066】
(11) 前記1つ又は2つ以上の受信信号に基づいて、前記推定位置を算出することを含む、実施態様8に記載の方法。
(12) 前記不一致を検出することが、前記既知の相対的位置の値と前記推定位置の値とを比較することを含む、実施態様8に記載の方法。
(13) 前記既知の相対的位置が、前記医療装置に連結された第1、第2及び第3の位置センサの既知の相対的位置を含み、前記受信信号が、該第1、第2及び第3の位置センサの推定位置を示す信号を含み、前記不一致を検出することが、
(i)該第1の位置センサの既知の相対的位置と、該第1の位置センサの推定位置との間の不一致を検出することにより、該第1の位置センサの1つ又は2つ以上の歪んだ測定値を検出することと、
(ii)該第2及び第3の位置センサの該受信信号に基づいて、及び、該第1、第2及び第3の位置センサの該既知の相対的位置に基づいて、該不一致を補正することと、
を含む、実施態様8に記載の方法。
(14) 前記医療装置が、耳鼻咽喉(ENT)ツールを含み、前記位置センサが、該ENTツールの長手方向軸に沿って連結される、実施態様8に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図3