(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】保護膜形成用複合シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240610BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240610BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240610BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20240610BHJP
B32B 27/42 20060101ALI20240610BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240610BHJP
【FI】
B32B27/00 M
B32B27/20 Z
B32B27/30 A
B32B27/38
B32B27/42 101
C09J7/38
(21)【出願番号】P 2019158473
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】小升 雄一朗
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/195071(WO,A1)
【文献】特開2017-163147(JP,A)
【文献】特開2010-278427(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0279109(US,A1)
【文献】特開2011-122100(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0361443(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101924055(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09J 7/00-7/50
H01L 21/78-21/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を備え、前記基材の一方の面上に、エネルギー線硬化性粘着剤層及び保護膜形成用フィルムがこの順に、互いに接触して積層されており、
前記粘着
剤層が、アクリル系樹脂を含有し、
前記保護膜形成用フィルムが、エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が100000~2000000の化合物、又はエネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が100~80000の化合物を含有し、
前記粘着剤層のゲル分率が80%以上90%以下である、保護膜形成用複合シートであって、
前記保護膜形成用フィルムが充填材(D)を含有し、
前記保護膜形成用フィルムにおいて、前記保護膜形成用フィルムの総質量に対する、前記充填材(D)の含有量の割合が、40質量%以上80質量%以下であり、
前記エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が100000~2000000の化合物が、他の化合物が有する基と反応可能な官能基を有するアクリル系重合体と、前記官能基と反応する基、及びエネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性化合物と、が反応してなるアクリル系樹脂であり、
前記エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が100~80000の化合物が、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、又は、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂である、保護膜形成用複合シート。
【請求項2】
基材を備え、前記基材の一方の面上に、エネルギー線硬化性粘着剤層及び保護膜形成用フィルムがこの順に、互いに接触して積層されており、
前記粘着
剤層が、アクリル系樹脂を含有し、
前記保護膜形成用フィルムが、エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が100000~2000000の化合物又はエネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が100~80000の化合物を含有し、
前記粘着剤層のゲル分率が20%以上80%未満であって、
前記保護膜形成用フィルムのガラス転移温度が3℃以上である、保護膜形成用複合シートであって、
前記保護膜形成用フィルムが充填材(D)を含有し、
前記保護膜形成用フィルムにおいて、前記保護膜形成用フィルムの総質量に対する、前記充填材(D)の含有量の割合が、40質量%以上80質量%以下であり、
前記エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が100000~2000000の化合物が、他の化合物が有する基と反応可能な官能基を有するアクリル系重合体と、前記官能基と反応する基、及びエネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性化合物と、が反応してなるアクリル系樹脂であり、
前記エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が100~80000の化合物が、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、又は、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂である、保護膜形成用複合シート。
【請求項3】
前記保護膜形成用フィルムのガラス転移温度が3℃以上である、請求項1に記載の保護膜形成用複合シート。
【請求項4】
前記保護膜形成用フィルムの23℃における損失弾性率が3MPa以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の保護膜形成用複合シート。
【請求項5】
前記保護膜形成用フィルムにおいて、前記保護膜形成用フィルムの総質量に対する、前記充填材(D)の含有量の割合が、50質量%以上
80質量%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の保護膜形成用複合シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護膜形成用複合シートに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造過程においては、目的物を得るために加工を必要とするワークを、保護膜で保護することがある。
例えば、フェースダウン(face down)方式と呼ばれる実装法を適用した半導体装置の製造時においては、回路面上にバンプ等の電極を有する半導体ウエハがワークとして用いられ、半導体ウエハやその分割物である半導体チップにおいて、クラックの発生を抑制するために、半導体ウエハ又は半導体チップの回路面とは反対側の裏面を保護膜で保護することがある。また、半導体装置の製造過程では、ワークとして後述する半導体装置パネルが用いられ、このパネルにおいて反りやクラックの発生を抑制するために、パネルのいずれかの部位を保護膜で保護することがある。
【0003】
このような保護膜を形成するためには、例えば、支持シートを備え、保護膜を形成するための保護膜形成用フィルムを、さらに前記支持シートの一方の面上に備えて構成された保護膜形成用複合シートが使用される。
保護膜形成用フィルムは、その硬化によって保護膜として機能するものであってもよいし、硬化していない状態で保護膜として機能するものであってもよい。また、支持シートは、保護膜形成用フィルム又はその硬化物を備えたワークを固定するために利用できる。例えば、ワークとして半導体ウエハを用いた場合、支持シートは、半導体ウエハを半導体チップへと分割するときに必要なダイシングシートとして利用可能である。支持シートとしては、例えば、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えたもの;基材のみからなるもの等が挙げられる。支持シートが粘着剤層を備えている場合、粘着剤層は、保護膜形成用複合シートにおいては、基材と保護膜形成用フィルムとの間に配置される。
【0004】
上述の保護膜形成用複合シートを用いる場合には、まず、ワークの目的とする箇所に、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを貼付する。
次いで、このような保護膜形成用複合シートを備えた状態のワークにおいて、必要に応じて加工を行うことにより、ワーク加工物を得る。例えば、ワークとして半導体ウエハを用いた場合、保護膜形成用複合シートが、その中の保護膜形成用フィルムによって、ワークの裏面に貼付された後は、それぞれ適したタイミングで、保護膜形成用フィルムの硬化による保護膜の形成、保護膜形成用フィルム又は保護膜の切断、半導体ウエハの半導体チップへの分割(ダイシング)、切断後の保護膜形成用フィルム又は保護膜を裏面に備えた半導体チップ(保護膜形成用フィルム付き半導体チップ又は保護膜付き半導体チップ)の、支持シートからのピックアップ等が適宜行われる。保護膜形成用フィルム付き半導体チップをピックアップした場合には、保護膜形成用フィルム付き半導体チップは、保護膜形成用フィルムの硬化によって、保護膜付き半導体チップとされ、最終的に保護膜付き半導体チップを用いて、半導体装置が製造される。
【0005】
特許文献1には、基材上に粘着剤が積層されたダイシングテープ上に、熱硬化樹脂成分と、ガラス転移温度が25℃以上200℃以下の熱可塑性樹脂成分とにより形成されているフリップチップ型半導体裏面用フィルムが積層された、ダイシングテープ一体型半導体裏面用フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような保護膜形成用複合シートとしては、加熱により硬化する粘着剤層を備えた支持シートを備えたものの他に、紫外線等のエネルギー線の照射により硬化する粘着剤層を備えた支持シートが利用されている。
エネルギー線硬化性粘着剤は、通常、光重合性樹脂と光重合開始剤とからなり、エネルギー線を照射することにより、光重合性樹脂が光重合開始剤により架橋して、硬化するが、エネルギー線硬化前は、架橋していない光重合性樹脂と光重合開始剤が、粘着剤層から保護膜形成用フィルムへ移行したり、保護膜形成用フィルムの成分が、粘着剤層に移行したりするという問題がある。このような成分の移行が生じると、エネルギー線照射後の粘着剤層の硬化が不十分となったり、粘着剤層と保護膜形成用フィルムの間で架橋が生じたりすることにより、硬化した保護膜を裏面に備えた半導体チップ(保護膜付き半導体チップ)を支持シートからピックアップする際に、保護膜付き半導体チップを支持シートから剥離できず、半導体チップと保護膜との間で剥離してしまう可能性がある。
【0008】
本発明は、基材を備え、前記基材の一方の面上に、エネルギー線硬化性粘着剤層及び保護膜形成用フィルムがこの順に、互いに接触して積層されており、保護膜付き半導体チップを支持シートからピックアップする際に、半導体チップと保護膜との間で剥離することなく、保護膜付き半導体チップを支持シートから剥離することが可能な保護膜形成用複合シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基材を備え、前記基材の一方の面上に、エネルギー線硬化性粘着剤層及び保護膜形成用フィルムがこの順に、互いに接触して積層されており、前記粘着剤層のゲル分率が80%以上である、保護膜形成用複合シートを提供する。
本発明は、基材を備え、前記基材の一方の面上に、エネルギー線硬化性粘着剤層及び保護膜形成用フィルムがこの順に、互いに接触して積層されており、前記粘着剤層のゲル分率が20%以上80%未満であって、前記保護膜形成用フィルムのガラス転移温度(Tg)が3℃以上である、保護膜形成用複合シートを提供する。
【0010】
本発明の保護膜形成用複合シートは、前記保護膜形成用フィルムの23℃における損失弾性率が3MPa以上であることが好ましい。
本発明の保護膜形成用複合シートは、前記保護膜形成用フィルムが充填材(D)を含有し、前記保護膜形成用フィルムにおいて、前記保護膜形成用フィルムの総質量に対する、前記充填材(D)の含有量の割合が、50質量%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、基材を備え、前記基材の一方の面上に、エネルギー線硬化性粘着剤層及び保護膜形成用フィルムがこの順に、互いに接触して積層されており、保護膜付き半導体チップを支持シートからピックアップする際に、半導体チップと保護膜との間で剥離することなく、保護膜付き半導体チップを支持シートから剥離することが可能な保護膜形成用複合シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの他の例を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートを用いた場合の、保護膜付き半導体チップの製造方法の一例を、模式的に説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
◇保護膜形成用複合シート
本発明の第1実施形態に係る保護膜形成用複合シートは、基材を備え、前記基材の一方の面上に、エネルギー線硬化性粘着剤層及び保護膜形成用フィルムがこの順に、互いに接触して積層されており、前記粘着剤層のゲル分率が80%以上である。
前記保護膜形成用複合シートの前記粘着剤層のエネルギー線硬化性粘着剤のゲル分率を前記下限値以上とすることにより、エネルギー線硬化前の前記エネルギー線硬化性粘着剤層と、保護膜形成用フィルムと、の間で成分が相互に移行することを抑制することができ、保護膜付き半導体チップを支持シートからピックアップする際に、半導体チップと保護膜との間で剥離することなく、保護膜付き半導体チップを支持シートから剥離することが可能となる。
【0014】
本発明の第2実施形態に係る保護膜形成用複合シートは、基材を備え、前記基材の一方の面上に、エネルギー線硬化性粘着剤層及び保護膜形成用フィルムがこの順に、互いに接触して積層されており、前記粘着剤層のゲル分率が20%以上80%未満であって、前記保護膜形成用フィルムのガラス転移温度が3℃以上である。
前記保護膜形成用フィルムのガラス転移温度が3℃以上であると、前記粘着剤層のエネルギー線硬化前のゲル分率が20%以上80%未満であっても、エネルギー線硬化前の前記エネルギー線硬化性粘着剤層と、保護膜形成用フィルムと、の間で成分が相互に移行することを抑制することができ、保護膜付き半導体チップを支持シートからピックアップする際に、半導体チップと保護膜との間で剥離することなく、保護膜付き半導体チップを支持シートから剥離することが可能となる。
【0015】
本発明の保護膜形成用複合シートは、前記保護膜形成用フィルムの23℃における損失弾性率E’’が3MPa以上であることが好ましく、5MPa以上であることがより好ましく、10MPa以上であることがさらに好ましく、例えば、17MPa以上、及び45MPa以上のいずれかであってもよい。前記保護膜形成用フィルムの23℃における損失弾性率が前記下限値以上であることにより、前記エネルギー線硬化性粘着剤の光重合性樹脂や光重合性開始剤等の低分子成分の、保護膜形成用フィルムへの移行を抑制することが可能となる。
【0016】
前記保護膜形成用フィルムの23℃における損失弾性率E’’は、100MPa以下が好ましく、90MPa以下がより好ましい。前記保護膜形成用フィルムの23℃における損失弾性率E’’が前記下限値以下であることにより、保護膜形成用フィルムのワークへの貼付の取り扱い性を高めることができる。
【0017】
本発明の保護膜形成用複合シートは、前記保護膜形成用フィルムが充填材(D)を含有し、前記保護膜形成用フィルムにおいて、前記保護膜形成用フィルムの総質量に対する、前記充填材(D)の含有量の割合は、50質量%以上であることが好ましく、53質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることがさらに好ましく、例えば、60質量%であってもよい。前記保護膜形成用フィルムにおいて、前記保護膜形成用フィルムの総質量に対する、前記充填材(D)の含有量の割合が、前記下限値以上であることにより、前記エネルギー線硬化性粘着剤の光重合性樹脂や光重合性開始剤等の低分子成分の、保護膜形成用フィルムへの移行をより抑制することができる。
【0018】
前記保護膜形成用フィルムにおいて、前記保護膜形成用フィルムの総質量に対する、前記充填材(D)の含有量の割合は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。前記保護膜形成用フィルムにおいて、前記保護膜形成用フィルムの総質量に対する、前記充填材(D)の含有量の割合が、前記下限値以下であることにより、保護膜形成用フィルムのワークへの貼付性が向上する。
【0019】
本実施形態の保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムは、硬化性であってもよいし、非硬化性であってもよい。
【0020】
本明細書においては、保護膜形成用フィルムが硬化した後であっても、支持シートと、保護膜形成用フィルムの硬化物と、の積層構造が維持されている限り、この積層構造体を「保護膜形成用複合シート」と称する。
【0021】
また、本明細書において、単なる「粘着剤層」との記載は、「硬化前の粘着剤層」を意味する。
【0022】
本実施形態の保護膜形成用複合シートは、本発明の効果を損なわない範囲で、基材と、粘着剤層と、保護膜形成用フィルムと、剥離フィルムと、のいずれにも該当しない、他の層を備えていてもよい。
前記他の層の種類は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
前記他の層の配置位置、形状、大きさ等も、その種類に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、保護膜形成用フィルムの大きさは、ワークよりも大きい方が好ましい。
【0023】
本実施形態の保護膜形成用複合シートの貼付対象であるワークの厚さは、特に限定されないが、後述するワーク加工物への加工(例えば分割)がより容易となる点では、30~1000μmであることが好ましく、70~400μmであることがより好ましい。
【0024】
本実施形態の保護膜形成用複合シートは、ワークへの貼付用であるが、貼付対象であるワークで好ましいものとしては、例えば、半導体ウエハが挙げられる。前記保護膜形成用複合シートは、半導体ウエハの裏面への貼付用であることが好ましい。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの一例を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート101は、支持シート10と、支持シート10の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)10a上に設けられた保護膜形成用フィルム13と、を備えて構成されている。
支持シート10は、基材11と、基材11の一方の面11a上に設けられた粘着剤層12と、を備えて構成されている。保護膜形成用複合シート101中、粘着剤層12は、基材11と保護膜形成用フィルム13との間に配置されている。
すなわち、保護膜形成用複合シート101は、基材11、粘着剤層12及び保護膜形成用フィルム13がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。
支持シート10の保護膜形成用フィルム13側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)10aは、粘着剤層12の基材11側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)12aと同じである。
【0026】
保護膜形成用複合シート101は、さらに保護膜形成用フィルム13上に、治具用接着剤層16及び剥離フィルム15を備えている。
保護膜形成用複合シート101においては、粘着剤層12の第1面12aの全面又はほぼ全面に、保護膜形成用フィルム13が積層され、保護膜形成用フィルム13の粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13aの一部、すなわち、周縁部近傍の領域に、治具用接着剤層16が積層されている。さらに、保護膜形成用フィルム13の第1面13aのうち、治具用接着剤層16が積層されていない領域と、治具用接着剤層16の保護膜形成用フィルム13側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)16aに、剥離フィルム15が積層されている。
【0027】
保護膜形成用複合シート101の場合に限らず、本実施形態の保護膜形成用複合シートにおいては、剥離フィルム(例えば、
図1に示す剥離フィルム15)は任意の構成であり、本実施形態の保護膜形成用複合シートは、剥離フィルムを備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
【0028】
治具用接着剤層16は、リングフレーム等の治具に、保護膜形成用複合シート101を固定するために用いる。
治具用接着剤層16は、例えば、接着剤成分を含有する単層構造を有していてもよいし、芯材となるシートの両面に接着剤成分を含有する層が積層された複数層構造を有していてもよい。
【0029】
保護膜形成用複合シート101は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム13の第1面13aにワーク(図示略)のいずれかの箇所が貼付され、さらに、治具用接着剤層16の第1面16aが、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0030】
図2は、本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの他の例を模式的に示す断面図である。
なお、
図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0031】
ここに示す保護膜形成用複合シート102は、保護膜形成用フィルムの形状及び大きさが異なり、治具用接着剤層が保護膜形成用フィルムの第1面ではなく、粘着剤層の第1面に積層されている点以外は、
図1に示す保護膜形成用複合シート101と同じである。
【0032】
より具体的には、保護膜形成用複合シート102において、保護膜形成用フィルム23は、粘着剤層12の第1面12aの一部の領域、すなわち、粘着剤層12の幅方向(
図2における左右方向)における中央側の領域に、積層されている。さらに、粘着剤層12の第1面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない領域、すなわち、周縁部近傍の領域に、治具用接着剤層16が積層されている。そして、保護膜形成用フィルム23の粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)23aと、治具用接着剤層16の第1面16aとに、剥離フィルム15が積層されている。
【0033】
ここまでは、治具用接着剤層を備えた保護膜形成用複合シートについては、
図1に示す保護膜形成用複合シート101、及び
図2に示す保護膜形成用複合シート102を示しているが、これは、治具用接着剤層を備えた他の保護膜形成用複合シートの一例である。
【0034】
このような治具用接着剤層を備えた保護膜形成用複合シートは、治具用接着剤層の第1面が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
このように、本実施形態の保護膜形成用複合シートは、支持シート及び保護膜形成用フィルムがどのような形態であっても、治具用接着剤層を備えたものであってもよい。
【0035】
治具用接着剤層を備えていない保護膜形成用複合シートとしては、例えば、
図2に示す保護膜形成用複合シート102において、治具用接着剤層16を備えていないものも挙げられる。ただし、これは、治具用接着剤層を備えていない他の保護膜形成用複合シートの一例である。
【0036】
図1及び
図2においては、保護膜形成用複合シートを構成するものとして、基材、粘着剤層、保護膜形成用フィルム及び剥離フィルムを示しているが、本実施形態の保護膜形成用複合シートは、これらのいずれにも該当しない、前記他の層を備えていてもよい。
図1及び
図2に示す保護膜形成用複合シートが前記他の層を備えている場合、その配置位置は、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの間を除き、特に限定されない。
【0037】
本実施形態の保護膜形成用複合シートにおいて、各層の大きさ及び形状は、目的に応じて任意に選択できる。
以下、保護膜形成用複合シートの構成について、詳細に説明する。
【0038】
◇支持シート
本発明の一実施形態に係る支持シートは、例えば、後述するように、保護膜形成用フィルムと積層することで、保護膜形成用複合シートを構成できる。
【0039】
本実施形態の支持シートは、後述する保護膜形成用フィルム又はその硬化物をいずれかの箇所に備えたワークを固定するために利用できる。
ワークとしては、例えば、半導体ウエハ、半導体装置パネル等が挙げられる。半導体装置パネルとは、半導体装置の製造過程で取り扱うものであり、その具体例としては、1枚の回路基板に複数個の電子部品が搭載されて構成されたものが挙げられる。
本明細書においては、ワークを加工したものを「ワーク加工物」と称する。例えば、ワークが半導体ウエハである場合、ワーク加工物としては半導体チップが挙げられる。
例えば、ワークが半導体ウエハである場合には、本実施形態の支持シートは、保護膜形成用フィルム又はその硬化物を裏面に備えた半導体ウエハを固定するために利用できる。
【0040】
前記支持シートとしては、例えば、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えたもの等が挙げられる。支持シートが粘着剤層を備えている場合、粘着剤層は、後述する保護膜形成用複合シートにおいては、基材と保護膜形成用フィルムとの間に配置される。
【0041】
基材及び粘着剤層を備えた支持シートを用いた場合には、保護膜形成用複合シートにおいて、支持シートと保護膜形成用フィルムとの間の粘着力又は密着性を容易に調節できる。
基材のみからなる支持シートを用いた場合には、低コストで保護膜形成用複合シートを製造できる。
基材及び粘着剤層を備えた支持シートを用いた場合には、支持シート又は保護膜形成用複合シートへの、新たな機能の付与が可能である。また、支持シートと保護膜形成用フィルムとの間の粘着力又は密着性を、上述の粘着剤層の場合よりもさらに容易に調節できる。
【0042】
◎基材
前記基材は、シート状又はフィルム状であり、前記基材の構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン;エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA);ポリ塩化ビニル(PVC);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル;ポリエーテルサルフォン、ポリアクリル酸エステル;ポリカーボネート(PC)等が挙げられる。
【0043】
基材を構成する樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0044】
基材は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0045】
本明細書においては、基材の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0046】
基材の厚さは、50~300μmであることが好ましく、60~140μmであることがより好ましく、80~100μmであることが特に好ましい。基材の厚さがこのような範囲であることで、前記保護膜形成用複合シートの可撓性と、ワーク又はワーク加工物への貼付性がより向上する。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0047】
基材は、厚さの精度が高いもの、すなわち、部位によらず厚さのばらつきが抑制されたものが好ましい。上述の構成材料のうち、このような厚さの精度が高い基材を構成するのに使用可能な材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0048】
基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0049】
基材は、透明であってもよいし、不透明であってもよく、粘着剤層のエネルギー線硬化性が担保される程度において、着色されていてもよいし、他の層が蒸着されていてもよい。
例えば、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性を有する場合には、基材はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
例えば、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、基材を介して光学的に検査するためには、基材は透明であることが好ましい。
【0050】
基材は、その上に設けられる層(例えば、粘着剤層、保護膜形成用フィルム等)との密着性を向上させるために、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理;コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理等が表面に施されていてもよい。また、基材は、表面がプライマー処理されていてもよい。
また、基材は、帯電防止コート層;保護膜形成用複合シートを重ね合わせて保存する際に、基材が他のシートに接着することや、基材が吸着テーブルに接着することを防止する層等を有していてもよい。
【0051】
基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0052】
◎粘着剤層
前記粘着剤層は、シート状又はフィルム状であり、粘着剤を含有する。
前記粘着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の粘着性樹脂が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。
【0053】
なお、本明細書において、「粘着性樹脂」には、粘着性を有する樹脂と、接着性を有する樹脂と、の両方が包含される。例えば、前記粘着性樹脂には、樹脂自体が粘着性を有するものだけでなく、添加剤等の他の成分との併用により粘着性を示す樹脂や、熱又は水等のトリガーの存在によって接着性を示す樹脂等も含まれる。
【0054】
粘着剤層は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0055】
粘着剤層の厚さは1~14μmであることが好ましく、2~12μmであることがより好ましく、例えば、3~8μmであってもよい。粘着剤層の厚さが前記下限値以上であることで、粘着剤層を設けたことによる効果が、より顕著に得られる。粘着剤層の厚さが前記上限値以下であることで、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルム又はその硬化物に、より良好に印字できる。そして、この印字を、保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、支持シート越しに、より良好に視認できる。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0056】
本実施形態において、粘着剤層は、エネルギー線硬化性粘着剤を用いて形成されたものである。すなわち、粘着剤層は、エネルギー線硬化性である。エネルギー線硬化性の粘着剤層は、硬化前及び硬化後での物性を容易に調節できる。例えば、後述する保護膜付き半導体チップ又は保護膜形成用フィルム付き半導体チップのピックアップ前に、エネルギー線硬化性の粘着剤層を硬化させることにより、これら半導体チップをより容易にピックアップできる。
【0057】
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
また、本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
【0058】
第1実施形態の保護膜形成用複合シートにおいて、粘着剤層のゲル分率は80%以上、好ましくは、85%以上、より好ましくは90%以上である。粘着剤層のゲル分率が80%以上であることにより、エネルギー線硬化前の前記エネルギー線硬化性粘着剤層と、保護膜形成用フィルムと、の間で成分が相互に移行することを抑制することができ、保護膜付き半導体チップを支持シートからピックアップする際に、半導体チップと保護膜との間で剥離することなく、保護膜付き半導体チップを支持シートから剥離することが可能となる。
【0059】
第2実施形態の保護膜形成用複合シートにおいて、粘着剤層のゲル分率は20%以上80%未満、好ましくは、30%以上80%未満、より好ましくは40%以上80%未満である。粘着剤層のゲル分率が80%未満であっても、後述の保護膜形成用フィルムのガラス転移温度(Tg)が3℃以上であることにより、エネルギー線硬化前の前記エネルギー線硬化性粘着剤層と、保護膜形成用フィルムと、の間で成分が相互に移行することを抑制することができ、保護膜付き半導体チップを支持シートからピックアップする際に、半導体チップと保護膜との間で剥離することなく、保護膜付き半導体チップを支持シートから剥離することが可能となる。
第2実施形態の保護膜形成用複合シートにおいて、粘着剤層のゲル分率が上記の範囲であると、粘着剤層を容易に形成することができる。前記ゲル分率が20%未満であると、前記粘着剤層が、保護膜形成用フィルムに残り、保護膜付き半導体チップの信頼性が低下する。
【0060】
粘着剤層のゲル分率は、公知の方法で測定できる。具体的には、以下の方法により測定できる。
ポリエチレンテレフタレート製の基材フィルム(厚さ38μm)の一方の面上に、シリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離フィルムを用意する。次いで、粘着剤組成物を、この剥離フィルムの剥離処理面に塗工して乾燥し、厚さ20μmの粘着剤層を形成する。
次いで、この粘着剤層を50mm×100mmの大きさに裁断して試料とし、100mm×150mmのナイロンメッシュシート(メッシュサイズ200)で包み、試験片とする。試料のみの質量M1を精密天秤で秤量し、次いで、上記試験片を、25℃の酢酸エチル(100mL)に24時間浸漬した後、試験片を取り出し、120℃で1時間乾燥させ、さらに23℃、相対湿度50%の条件下で1時間放置して調湿を行う。次いで、試験片のメッシュシートの質量を除いた、試料のみの質量M2を精密天秤で秤量する。そして、下記式により、試料(すなわち粘着剤層)のエネルギー線照射前のゲル分率を算出する。
粘着剤層のゲル分率(%)=(M2/M1)×100
【0061】
<<粘着剤組成物>>
粘着剤層は、粘着剤を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。例えば、粘着剤層の形成対象面に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に粘着剤層を形成できる。粘着剤組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層における前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0062】
粘着剤組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0063】
粘着剤組成物の乾燥条件は、特に限定されない。粘着剤組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。溶媒を含有する粘着剤組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で乾燥させることが好ましい。
【0064】
基材上に粘着剤層を設ける場合には、例えば、基材上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、基材上に粘着剤層を積層すればよい。また、基材上に粘着剤層を設ける場合には、例えば、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層の露出面を、基材の一方の表面と貼り合わせることで、基材上に粘着剤層を積層してもよい。この場合の剥離フィルムは、保護膜形成用複合シートの製造過程又は使用過程のいずれかのタイミングで、取り除けばよい。
【0065】
本発明において、粘着剤はエネルギー線硬化性である。エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)(以下、「粘着性樹脂(I-1a)」と略記することがある)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-1);前記粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)(以下、「粘着性樹脂(I-2a)」と略記することがある)を含有する粘着剤組成物(I-2);前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-3)等が挙げられる。
【0066】
[粘着性樹脂(I-1a)]
前記粘着剤組成物(I-1)、粘着剤組成物(I-2)及び粘着剤組成物(I-3)(以下、これら粘着剤組成物を包括して、「粘着剤組成物(I-1)~(I-3)」と略記する)における前記粘着性樹脂(I-1a)は、アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0067】
前記アクリル系樹脂としては、例えば、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有するアクリル系重合体が挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキルエステルを構成するアルキル基の炭素数が1~20であるのものが挙げられ、前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
【0068】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様であり、例えば、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念である。
【0069】
前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有することが好ましい。
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、前記官能基が後述する架橋剤と反応することで架橋の起点となったり、前記官能基が後述する不飽和基含有化合物中の不飽和基と反応することで、アクリル系重合体の側鎖に不飽和基の導入を可能とするものが挙げられる。
【0070】
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0071】
前記アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位、及び官能基含有モノマー由来の構成単位以外に、さらに、他のモノマー由来の構成単位を有していてもよい。
前記他のモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等と共重合可能なものであれば特に限定されない。
前記他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。
【0072】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)において、前記アクリル系重合体等の前記アクリル系樹脂が有する構成単位は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0073】
前記アクリル系重合体において、官能基含有モノマー由来の構成単位の含有量は、構成単位の全量に対して、1~35質量%であることが好ましい。
【0074】
粘着剤組成物(I-1)又は粘着剤組成物(I-3)が含有する粘着性樹脂(I-1a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0075】
粘着剤組成物(I-1)において、粘着剤組成物(I-1)の総質量に対する、粘着性樹脂(I-1a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましい。
【0076】
[粘着性樹脂(I-2a)]
前記粘着剤組成物(I-2)及び(I-3)における前記粘着性樹脂(I-2a)は、例えば、粘着性樹脂(I-1a)中の官能基に、エネルギー線重合性不飽和基を有する不飽和基含有化合物を反応させることで得られる。
【0077】
前記不飽和基含有化合物は、前記エネルギー線重合性不飽和基以外に、さらに粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と反応することで、粘着性樹脂(I-1a)と結合可能な基を有する化合物である。
前記エネルギー線重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2-プロペニル基)等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と結合可能な基としては、例えば、水酸基又はアミノ基と結合可能なイソシアネート基及びグリシジル基、並びにカルボキシ基又はエポキシ基と結合可能な水酸基及びアミノ基等が挙げられる。
【0078】
前記不飽和基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0079】
粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)が含有する粘着性樹脂(I-2a)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0080】
粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)において、粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)の総質量に対する、粘着性樹脂(I-2a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましい。
【0081】
[エネルギー線硬化性化合物]
前記粘着剤組成物(I-1)及び(I-3)における前記エネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
【0082】
エネルギー線硬化性化合物のうち、モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオール(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート;ポリエーテル(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、オリゴマーとしては、例えば、上記で例示したモノマーが重合してなるオリゴマー等が挙げられる。
【0083】
粘着剤組成物(I-1)又は(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0084】
前記粘着剤組成物(I-1)において、粘着剤組成物(I-1)の総質量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量の割合は、1~95質量%であることが好ましい。
前記粘着剤組成物(I-3)において、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~300質量部であることが好ましい。
【0085】
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-1a)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-1)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
また、粘着性樹脂(I-2a)として、例えば、粘着性樹脂(I-1a)におけるものと同様の、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル系重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)は、さらに架橋剤を含有していてもよい。
【0086】
前記架橋剤は、例えば、前記官能基と反応して、粘着性樹脂(I-1a)同士又は粘着性樹脂(I-2a)同士を架橋する。
架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤(イソシアネート基を有する架橋剤);エチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤(グリシジル基を有する架橋剤);ヘキサ[1-(2-メチル)-アジリジニル]トリフオスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤);アルミニウムキレート等の金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤);イソシアヌレート系架橋剤(イソシアヌル酸骨格を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0087】
粘着剤組成物(I-1)又は(I-2)が含有する架橋剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0088】
前記粘着剤組成物(I-1)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-1a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、例えば、0.01~35質量部、及び0.01~20質量部のいずれかであってもよい。
前記粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、例えば、0.01~35質量部、0.01~20質量部、及び0.01~10質量部のいずれかであってもよい。
【0089】
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-1)~(I-3)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0090】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン等のキノン化合物が挙げられる。
また、前記光重合開始剤としては、例えば、アミン等の光増感剤等を用いることもできる。
【0091】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)が含有する光重合開始剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0092】
粘着剤組成物(I-1)において、光重合開始剤の含有量は、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
粘着剤組成物(I-2)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、例えば、0.01~10質量部、及び0.01~5質量部のいずれかであってもよい。
粘着剤組成物(I-3)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)及び前記エネルギー線硬化性化合物の総含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
【0093】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)のゲル分率は、粘着剤組成物の材料となるポリマーの分子量や、架橋起点となる官能基量、架橋剤の配合量等により調整することができる。例えば、架橋剤の配合量を増やすことにより、前記粘着剤組成物のゲル分率を高くすることができる。
【0094】
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填材、防錆剤、着色剤(顔料、染料)、増感剤、粘着付与剤、反応遅延剤、架橋促進剤(触媒)等の公知の添加剤が挙げられる。
なお、反応遅延剤とは、例えば、粘着剤組成物(I-1)~(I-3)中に混入している触媒の作用によって、保存中の粘着剤組成物(I-1)~(I-3)において、目的としない架橋反応が進行するのを抑制するものである。反応遅延剤としては、例えば、触媒に対するキレートによってキレート錯体を形成するものが挙げられ、より具体的には、1分子中にカルボニル基(-C(=O)-)を2個以上有するものが挙げられる。
【0095】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)が含有するその他の添加剤は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0096】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)のその他の添加剤の含有量は、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0097】
[溶媒]
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)は、溶媒を含有していてもよい。粘着剤組成物(I-1)~(I-3)は、溶媒を含有していることで、塗工対象面への塗工適性が向上する。
なお、本明細書において、「溶媒」とは、特に断りのない限り、対象成分を溶解させるものだけでなく、対象成分を分散させる分散媒も含む概念とする。
【0098】
前記溶媒は有機溶媒であることが好ましく、前記有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル(カルボン酸エステル);テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;シクロヘキサン、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール等が挙げられる。
【0099】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0100】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)の溶媒の含有量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0101】
<<粘着剤組成物の製造方法>>
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)等の粘着剤組成物は、前記粘着剤と、必要に応じて前記粘着剤以外の成分等の、粘着剤組成物を構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0102】
◇保護膜形成用フィルム
保護膜形成用フィルムは、例えば、後述するように、粘着剤層を備えた支持シートと積層することで、保護膜形成用複合シートを構成できる。
【0103】
前記保護膜形成用フィルムは、ワーク及びワーク加工物のいずれかの箇所を保護するための保護膜を形成する。ワークが半導体ウエハである場合には、本実施形態の保護膜形成用フィルムを用いることで、半導体ウエハ及び半導体チップの回路形成面とは反対側の面(本明細書においては、いずれの場合も「裏面」と称することがある)に保護膜を形成できる。本明細書においては、このように保護膜を備えたワーク加工物を「保護膜付きワーク加工物」と称することがあり、裏面に保護膜を備えた半導体チップを「保護膜付き半導体チップ」と称することがある。
前記保護膜形成用フィルムは、軟質であり、ワーク及びワーク加工物等の貼付対象物に、容易に貼付できる。
【0104】
前記保護膜形成用フィルムは、その硬化によって保護膜として機能するものであってもよいし、硬化していない状態で保護膜として機能するものであってもよい。硬化していない状態で保護膜として機能する前記保護膜形成用フィルムは、例えば、ワークの目的とする箇所に貼付された段階で、保護膜を形成したと見做せる。
【0105】
前記保護膜形成用フィルムは、上述のとおり、硬化性であってもよいし、非硬化性であってもよい。
硬化性の保護膜形成用フィルムは、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであってもよく、熱硬化性及びエネルギー線硬化性の両方の特性を有していてもよい。
本明細書において、「非硬化性」とは、加熱やエネルギー線の照射等、如何なる手段によっても、硬化しない性質を意味する。
【0106】
保護膜形成用フィルムを熱硬化させて、保護膜を形成する場合には、エネルギー線の照射によって硬化させる場合とは異なり、保護膜形成用フィルムは、その厚さが厚くなっても、加熱によって十分に硬化するため、保護性能が高い保護膜を形成できる。また、加熱オーブン等の通常の加熱手段を用いることによって、多数の保護膜形成用フィルムを一括して加熱し、熱硬化させることができる。
保護膜形成用フィルムを、エネルギー線の照射によって硬化させて、保護膜を形成する場合には、熱硬化させる場合とは異なり、保護膜形成用複合シートは耐熱性を有する必要がなく、幅広い範囲の保護膜形成用複合シートを構成できる。また、エネルギー線の照射によって、短時間で硬化させることができる。
保護膜形成用フィルムを硬化させずに保護膜として用いる場合には、硬化工程を省略できるため、簡略化された工程で保護膜付きワーク加工物を製造できる。
【0107】
保護膜形成用フィルムが硬化性及び非硬化性のいずれであるかによらず、そして、硬化性である場合には、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであるかによらず、保護膜形成用フィルムは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。保護膜形成用フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0108】
保護膜形成用フィルムが硬化性及び非硬化性のいずれであるかによらず、そして、硬化性である場合には、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであるかによらず、保護膜形成用フィルムの厚さは、1~100μmであることが好ましく、3~80μmであることがより好ましく、5~60μmであることが特に好ましく、例えば、5~40μm、及び5~20μmのいずれかであってもよい。保護膜形成用フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、保護能がより高い保護膜を形成できる。保護膜形成用フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、過剰な厚さとなることが避けられる。
ここで、「保護膜形成用フィルムの厚さ」とは、保護膜形成用フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる保護膜形成用フィルムの厚さとは、保護膜形成用フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0109】
第1実施形態の保護膜形成用複合シートにおいて、保護膜形成用フィルムのガラス転移温度(Tg)は3℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましく、15℃以上がさらに好ましく、例えば、10℃以上、20℃以上である。保護膜形成用フィルムのガラス転移温度が前記下限値以上であることにより、エネルギー線硬化前の前記エネルギー線硬化性粘着剤層と、保護膜形成用フィルムと、の間で成分が相互に移行することを抑制することができ、保護膜付き半導体チップを支持シートからピックアップする際に、半導体チップと保護膜との間で剥離することなく、保護膜付き半導体チップを支持シートから剥離できる効果がより向上する。
【0110】
第2実施形態の保護膜形成用複合シートにおいて、保護膜形成用フィルムのガラス転移温度(Tg)は3℃以上であり、5℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましく、例えば、10℃以上である。保護膜形成用フィルムのガラス転移温度が前記下限値以上であることにより、前記粘着剤層のエネルギー線硬化前のゲル分率が20%以上80%未満であっても、エネルギー線硬化前の前記エネルギー線硬化性粘着剤層と、保護膜形成用フィルムと、の間で成分が相互に移行することを抑制することができ、保護膜付き半導体チップを支持シートからピックアップする際に、半導体チップと保護膜との間で剥離することなく、保護膜付き半導体チップを支持シートから剥離することが可能となる。
【0111】
第1実施形態の保護膜形成用複合シート及び第2実施形態の保護膜形成用複合シートにおいて、保護膜形成用フィルムの23℃における損失弾性率E’’は3MPa以上が好ましく、5MPa以上がより好ましく、例えば、10MPa以上、15MPa以上、20MPa以上、25MPa以上、30MPa以上、40MPa以上、50MPa以上等である。
保護膜形成用フィルムの23℃における損失弾性率E’’の上限値は特に制限はされない。例えば、100MPa以下である保護膜形成用フィルムは、容易に製造できる。
【0112】
保護膜形成用フィルムのガラス転移温度(Tg)及び23℃における損失弾性率E’’の測定方法は、公知の方法で測定できる。具体的には以下の方法により測定できる。
サンプルを厚さ200μm程度の厚さまで積層して得られた積層体を、幅4mm、長さ(チャック間距離)30mmのサイズに加工し、試験片を用意する。この試験片を自動動的粘弾性試験機(オリエンテック社製、製品名「Rheovibron DDV-0.1FP」)を用いて、測定周波数1Hzで23℃における引張損失弾性率E’’を測定し、その際のtanδのピーク温度をガラス転移温度(Tg)とする。
【0113】
<<保護膜形成用組成物>>
保護膜形成用フィルムは、その構成材料を含有する保護膜形成用組成物を用いて形成できる。例えば、保護膜形成用フィルムは、その形成対象面に保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、形成できる。保護膜形成用組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、保護膜形成用フィルムにおける前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
熱硬化性保護膜形成用フィルムは、熱硬化性保護膜形成用組成物を用いて形成でき、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物を用いて形成でき、非硬化性保護膜形成用フィルムは、非硬化性保護膜形成用組成物を用いて形成できる。なお、本明細書においては、保護膜形成用フィルムが、熱硬化性及びエネルギー線硬化性の両方の特性を有する場合、保護膜の形成に対して、保護膜形成用フィルムの熱硬化の寄与が、エネルギー線硬化の寄与よりも大きい場合には、保護膜形成用フィルムを熱硬化性のものとして取り扱う。反対に、保護膜の形成に対して、保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化の寄与が、熱硬化の寄与よりも大きい場合には、保護膜形成用フィルムをエネルギー線硬化のものとして取り扱う。
【0114】
保護膜形成用組成物の塗工は、例えば、上述の粘着剤組成物の塗工の場合と同じ方法で行うことができる。
【0115】
保護膜形成用フィルムが硬化性及び非硬化性のいずれであるかによらず、そして、硬化性である場合には、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれであるかによらず、保護膜形成用組成物の乾燥条件は、特に限定されない。ただし、保護膜形成用組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。そして、溶媒を含有する保護膜形成用組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で、加熱乾燥させることが好ましい。ただし、熱硬化性保護膜形成用組成物は、この組成物自体と、この組成物から形成された熱硬化性保護膜形成用フィルムと、が熱硬化しないように、加熱乾燥させることが好ましい。
【0116】
以下、熱硬化性保護膜形成用フィルム、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム及び非硬化性保護膜形成用フィルムについて、順次説明する。
【0117】
◎熱硬化性保護膜形成用フィルム
熱硬化性保護膜形成用フィルムをワークの目的とする箇所に貼付し、熱硬化させて、保護膜を形成するときの硬化条件は、保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り、特に限定されず、熱硬化性保護膜形成用フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、熱硬化性保護膜形成用フィルムの熱硬化時の加熱温度は、100~200℃であることが好ましく、110~180℃であることがより好ましく、120~170℃であることが特に好ましい。そして、前記熱硬化時の加熱時間は、0.5~5時間であることが好ましく、0.5~3時間であることがより好ましく、1~2時間であることが特に好ましい。
【0118】
好ましい熱硬化性保護膜形成用フィルムとしては、例えば、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するものが挙げられる。重合体成分(A)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分である。また、熱硬化性成分(B)は、熱を反応のトリガーとして、硬化(重合)反応し得る成分である。なお、本明細書において重合反応には、重縮合反応も含まれる。
【0119】
<熱硬化性保護膜形成用組成物(III-1)>
好ましい熱硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する熱硬化性保護膜形成用組成物(III-1)(本明細書においては、単に「組成物(III-1)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0120】
[重合体成分(A)]
重合体成分(A)は、熱硬化性保護膜形成用フィルムに造膜性や可撓性等を付与するための成分である。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する重合体成分(A)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0121】
重合体成分(A)としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル、ウレタン系樹脂、アクリルウレタン樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、フェノキシ樹脂、熱可塑性ポリイミド等が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。
【0122】
重合体成分(A)における前記アクリル系樹脂としては、公知のアクリル重合体が挙げられる。
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量が前記下限値以上であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの形状安定性(保管時の経時安定性)が向上する。また、アクリル系樹脂の重量平均分子量が前記上限値以下であることで、被着体の凹凸面へ熱硬化性保護膜形成用フィルムが追従し易くなり、被着体と熱硬化性保護膜形成用フィルムとの間でボイド等の発生がより抑制される。
なお、本明細書において、「重量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0123】
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、3℃以上70℃以下であることが好ましく、3℃以上50℃以下であることがより好ましい。アクリル系樹脂のTgが前記下限値以上であることで、エネルギー線硬化前に、前記エネルギー線硬化性粘着剤と保護膜形成用フィルムとの間で成分が相互に移行することを抑制することができ、保護膜付き半導体チップを支持シートからピックアップする際に、半導体チップと保護膜との間で剥離することなく、保護膜付き半導体チップを支持シートから剥離できる効果がより向上する。また、アクリル系樹脂のTgが前記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルム及びその硬化物の被着体との接着力が向上する。
【0124】
アクリル系樹脂としては、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの重合体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される2種以上のモノマーの共重合体等が挙げられる。
【0125】
アクリル系樹脂を構成する前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イミド;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等の置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基を意味する。
【0126】
アクリル系樹脂は、例えば、前記(メタ)アクリル酸エステル以外に、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される1種又は2種以上のモノマーが共重合してなるものでもよい。
【0127】
アクリル系樹脂を構成するモノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0128】
アクリル系樹脂は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の他の化合物と結合可能な官能基を有していてもよい。アクリル系樹脂の前記官能基は、後述する架橋剤(F)を介して他の化合物と結合してもよいし、架橋剤(F)を介さずに他の化合物と直接結合していてもよい。アクリル系樹脂が前記官能基により他の化合物と結合することで、保護膜形成用複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性が向上する傾向がある。
【0129】
本発明においては、重合体成分(A)として、アクリル系樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「熱可塑性樹脂」と略記することがある)を、アクリル系樹脂を用いずに単独で用いてもよいし、アクリル系樹脂と併用してもよい。前記熱可塑性樹脂を用いることで、保護膜の支持シートからの剥離性が向上したり、被着体の凹凸面へ熱硬化性保護膜形成用フィルムが追従し易くなり、被着体と熱硬化性保護膜形成用フィルムとの間でボイド等の発生がより抑制されることがある。
【0130】
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1000~100000であることが好ましく、3000~80000であることがより好ましい。
【0131】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、3℃以上150℃以下であることが好ましく、3℃以上120℃以下であることがより好ましい。
【0132】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0133】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0134】
組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する重合体成分(A)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、重合体成分(A)の含有量の割合)は、重合体成分(A)の種類によらず、10~85質量%であることが好ましく、15~70質量%であることがより好ましく、20~60質量%であることがさらに好ましく、例えば、20~45質量%、及び20~35質量%のいずれかであってもよく、35~60質量%、及び45~60質量%のいずれかであってもよい。
【0135】
重合体成分(A)は、熱硬化性成分(B)にも該当する場合がある。本発明においては、組成物(III-1)が、このような重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の両方に該当する成分を含有する場合、組成物(III-1)は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するとみなす。
【0136】
[熱硬化性成分(B)]
熱硬化性成分(B)は、熱硬化性保護膜形成用フィルムを硬化させるための成分である。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する熱硬化性成分(B)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0137】
熱硬化性成分(B)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂等が挙げられ、エポキシ系熱硬化性樹脂が好ましい。
【0138】
(エポキシ系熱硬化性樹脂)
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなる。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0139】
・エポキシ樹脂(B1)
エポキシ樹脂(B1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
【0140】
エポキシ樹脂(B1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂よりもアクリル系樹脂との相溶性が高い。そのため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いることで、保護膜形成用複合シートを用いて得られた保護膜付きワーク加工物の信頼性が向上する。
【0141】
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を有する基に変換されてなる化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、エポキシ基へ(メタ)アクリル酸又はその誘導体を付加反応させることにより得られる。
また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した化合物等が挙げられる。
不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、その具体的な例としては、エテニル基(ビニル基)、2-プロペニル基(アリル基)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、アクリロイル基が好ましい。
【0142】
エポキシ樹脂(B1)の数平均分子量は、特に限定されないが、熱硬化性保護膜形成用フィルムの硬化性、並びに、その硬化物である保護膜の強度及び耐熱性の点から、300~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましく、300~3000であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂(B1)のエポキシ当量は、100~1000g/eqであることが好ましく、150~950g/eqであることがより好ましい。
【0143】
エポキシ樹脂(B1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0144】
・熱硬化剤(B2)
熱硬化剤(B2)は、エポキシ樹脂(B1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(B2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0145】
熱硬化剤(B2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド等が挙げられる。
【0146】
熱硬化剤(B2)は、不飽和炭化水素基を有していてもよい。
不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(B2)としては、例えば、フェノール樹脂の水酸基の一部が、不飽和炭化水素基を有する基で置換されてなる化合物、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合してなる化合物等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)における前記不飽和炭化水素基は、上述の不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂における不飽和炭化水素基と同様のものである。
【0147】
熱硬化剤(B2)としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、保護膜の支持シートからの剥離性が向上する点から、熱硬化剤(B2)は、軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
【0148】
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
【0149】
熱硬化剤(B2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0150】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化剤(B2)の含有量は、エポキシ樹脂(B1)の含有量100質量部に対して、0.1~100質量部であることが好ましく、0.5~50質量部であることがより好ましく、例えば、0.5~25質量部、0.5~10質量部、及び0.5~5質量部のいずれかであってもよい。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記下限値以上であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの硬化がより進行し易くなる。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの吸湿率が低減されて、保護膜形成用複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0151】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化性成分(B)の含有量(例えば、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)の総含有量)は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、5~120質量部であることが好ましく、5~80質量部であることがより好ましく、例えば、5~40質量部、5~20質量部、及び5~10質量部のいずれかであってもよく、40~80質量部、50~75質量部、及び60~75質量部のいずれかであってもよい。熱硬化性成分(B)の前記含有量がこのような範囲であることで、例えば、保護膜形成用フィルムの硬化物と支持シートとの接着力が抑制されて、支持シートの剥離性が向上する。
【0152】
[硬化促進剤(C)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、硬化促進剤(C)を含有していてもよい。硬化促進剤(C)は、組成物(III-1)の硬化速度を調整するための成分である。
好ましい硬化促進剤(C)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0153】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する硬化促進剤(C)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0154】
硬化促進剤(C)を用いる場合、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、硬化促進剤(C)の含有量は、熱硬化性成分(B)の含有量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~7質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(C)の前記含有量が前記下限値以上であることで、硬化促進剤(C)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。硬化促進剤(C)の含有量が前記上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(C)が、高温・高湿度条件下で熱硬化性保護膜形成用フィルム中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなる。その結果、保護膜形成用複合シートを用いて得られた保護膜付きワーク加工物の信頼性がより向上する。
【0155】
[充填材(D)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、充填材(D)を含有していてもよい。熱硬化性保護膜形成用フィルムが充填材(D)を含有することにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムとその硬化物(すなわち保護膜)は、熱膨張係数の調整が容易となり、この熱膨張係数を保護膜の形成対象物に対して最適化することで、保護膜形成用複合シートを用いて得られた保護膜付きワーク加工物の信頼性がより向上する。また、熱硬化性保護膜形成用フィルムが充填材(D)を含有することにより、保護膜の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
【0156】
充填材(D)は、有機充填材及び無機充填材のいずれであってもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましい。
【0157】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する充填材(D)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0158】
組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、充填材(D)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、充填材(D)の含有量の割合)は、50質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましい。充填剤(D)の含有量の割合の上限値は、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることが好ましく、例えば、50質量%以上80質量%以下、及び55質量%以上80質量%以下のいずれかであってもよく、50質量%以上70質量%以下、55質量%以上70質量%以下のいずれかであってもよい。前記割合がこのような範囲であることで、エネルギー線硬化前に、前記エネルギー線硬化性粘着剤と保護膜形成用フィルムとの間で成分が相互に移行することを抑制することができる。
【0159】
[カップリング剤(E)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、カップリング剤(E)を含有していてもよい。カップリング剤(E)として、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するものを用いることにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムの被着体に対する接着性及び密着性を向上させることができる。また、カップリング剤(E)を用いることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの硬化物は、耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。
【0160】
カップリング剤(E)は、重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0161】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有するカップリング剤(E)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0162】
カップリング剤(E)を用いる場合、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、カップリング剤(E)の含有量は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の総含有量100質量部に対して、0.03~10質量部であることが好ましく、0.05~5質量部であることがより好ましく、0.1~2質量部であることが特に好ましい。カップリング剤(E)の前記含有量が前記下限値以上であることで、充填材(D)の樹脂への分散性の向上や、熱硬化性保護膜形成用フィルムの被着体との接着性の向上など、カップリング剤(E)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、カップリング剤(E)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
【0163】
[架橋剤(F)]
重合体成分(A)として、上述のアクリル系樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、架橋剤(F)を含有していてもよい。架橋剤(F)は、重合体成分(A)中の前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための成分であり、このように架橋することにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムの初期接着力及び凝集力を調節できる。
【0164】
架橋剤(F)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0165】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する架橋剤(F)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0166】
架橋剤(F)を用いる場合、組成物(III-1)において、架橋剤(F)の含有量は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが特に好ましい。架橋剤(F)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(F)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、架橋剤(F)の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤(F)の過剰使用が抑制される。
【0167】
[エネルギー線硬化性樹脂(G)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していてもよい。熱硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していることにより、エネルギー線の照射によって特性を変化させることができる。
【0168】
エネルギー線硬化性樹脂(G)は、エネルギー線硬化性化合物を重合(硬化)して得られたものである。
前記エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0169】
前記アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等の環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;エポキシ変性(メタ)アクリレート;前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート;イタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
【0170】
前記エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0171】
重合に用いる前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0172】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有するエネルギー線硬化性樹脂(G)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0173】
エネルギー線硬化性樹脂(G)を用いる場合、組成物(III-1)において、組成物(III-1)の総質量に対する、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量の割合は、1~95質量%であることが好ましく、5~90質量%であることがより好ましく、10~85質量%であることが特に好ましい。
【0174】
[光重合開始剤(H)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有する場合、エネルギー線硬化性樹脂(G)の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤(H)を含有していてもよい。
【0175】
組成物(III-1)における光重合開始剤(H)としては、例えば、上述の粘着剤組成物が含有していてもよい光重合開始剤と同じものが挙げられる。
【0176】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する光重合開始剤(H)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0177】
光重合開始剤(H)を用いる場合、組成物(III-1)において、光重合開始剤(H)の含有量は、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、2~5質量部であることが特に好ましい。
【0178】
[着色剤(I)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、着色剤(I)を含有していることが好ましい。着色剤(I)を用いることにより、光(266nm)の透過率が60%以下である保護膜形成用フィルムを、より容易に製造できる。
【0179】
着色剤(I)としては、例えば、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料等、公知のものが挙げられる。
【0180】
前記有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ジオキサジン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色素等が挙げられる。
【0181】
前記無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
【0182】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する着色剤(I)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0183】
着色剤(I)を用いる場合、熱硬化性保護膜形成用フィルムの着色剤(I)の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよい。例えば、熱硬化性保護膜形成用フィルムの着色剤(I)の含有量を調節し、保護膜の光透過性を調節することにより、保護膜に対してレーザー印字を行った場合の印字視認性を調節できる。また、熱硬化性保護膜形成用フィルムの着色剤(I)の含有量を調節することで、保護膜の意匠性を向上させたり、半導体ウエハの裏面の研削痕を見え難くすることもできる。これらの点を考慮すると、組成物(III-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、着色剤(I)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムにおける、熱硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、着色剤(I)の含有量の割合)は、0.1~10質量%であることが好ましく、0.1~7.5質量%であることがより好ましく、0.1~5質量%であることが特に好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、着色剤(I)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、前記割合が前記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの光透過性の過度な低下が抑制される。
【0184】
[汎用添加剤(J)]
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲内において、汎用添加剤(J)を含有していてもよい。
汎用添加剤(J)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ゲッタリング剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0185】
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する汎用添加剤(J)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムの汎用添加剤(J)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0186】
[溶媒]
組成物(III-1)は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する組成物(III-1)は、取り扱い性が良好となる。
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
組成物(III-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0187】
組成物(III-1)が含有する溶媒で、より好ましいものとしては、例えば、組成物(III-1)中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル等が挙げられる。
【0188】
組成物(III-1)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0189】
<熱硬化性保護膜形成用組成物の製造方法>
組成物(III-1)等の熱硬化性保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
熱硬化性保護膜形成用組成物は、例えば、配合成分の種類が異なる点以外は、先に説明した粘着剤組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0190】
◎エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムをワークの目的とする箇所に貼付し、エネルギー線硬化させて、保護膜を形成するときの硬化条件は、保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り特に限定されず、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化時における、エネルギー線の照度は、120~280mW/cm2であることが好ましい。そして、前記硬化時における、エネルギー線の光量は、100~1000mJ/cm2であることが好ましい。
【0191】
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムとしては、例えば、エネルギー線硬化性成分(a)を含有するものが挙げられ、エネルギー線硬化性成分(a)及び充填材を含有するものが好ましい。
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、エネルギー線硬化性成分(a)は、未硬化であることが好ましく、粘着性を有することが好ましく、未硬化でかつ粘着性を有することがより好ましい。
【0192】
<エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV-1)>
好ましいエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記エネルギー線硬化性成分(a)を含有するエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV-1)(本明細書においては、単に「組成物(IV-1)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0193】
[エネルギー線硬化性成分(a)]
エネルギー線硬化性成分(a)は、エネルギー線の照射によって硬化する成分であり、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムに造膜性や、可撓性等を付与するとともに、硬化後に硬質の保護膜を形成するための成分でもある。
エネルギー線硬化性成分(a)としては、例えば、エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)が挙げられる。前記重合体(a1)は、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0194】
(エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1))
エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000~2000000の重合体(a1)としては、例えば、他の化合物が有する基と反応可能な官能基を有するアクリル系重合体(a11)と、前記官能基と反応する基、及びエネルギー線硬化性二重結合等のエネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性化合物(a12)と、が反応してなるアクリル系樹脂(a1-1)が挙げられる。
【0195】
他の化合物が有する基と反応可能な前記官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基(アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基)、エポキシ基等が挙げられる。ただし、ワークやワーク加工物等の回路の腐食を防止するという点では、前記官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
これらの中でも、前記官能基は、水酸基であることが好ましい。
【0196】
・官能基を有するアクリル系重合体(a11)
前記官能基を有するアクリル系重合体(a11)としては、例えば、前記官能基を有するアクリル系モノマーと、前記官能基を有しないアクリル系モノマーと、が共重合してなるものが挙げられ、これらモノマー以外に、さらにアクリル系モノマー以外のモノマー(非アクリル系モノマー)が共重合したものであってもよい。
また、前記アクリル系重合体(a11)は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよく、重合方法についても公知の方法を採用できる。
【0197】
前記官能基を有するアクリル系モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、置換アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0198】
前記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル系不飽和アルコール((メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)等が挙げられる。
【0199】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するモノカルボン酸);フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸);前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;2-カルボキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0200】
前記官能基を有するアクリル系モノマーは、水酸基含有モノマーが好ましい。
【0201】
前記アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有するアクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0202】
前記官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0203】
また、前記官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル等を含む、芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル;非架橋性の(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等も挙げられる。
【0204】
前記アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有しないアクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0205】
前記非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
前記アクリル系重合体(a11)を構成する前記非アクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0206】
前記アクリル系重合体(a11)において、これを構成する構成単位の全量に対する、前記官能基を有するアクリル系モノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、0.1~50質量%であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましく、3~30質量%であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、前記アクリル系重合体(a11)と前記エネルギー線硬化性化合物(a12)との共重合によって得られた前記アクリル系樹脂(a1-1)において、エネルギー線硬化性基の含有量は、保護膜の硬化の程度を好ましい範囲に容易に調節可能となる。
【0207】
前記アクリル系樹脂(a1-1)を構成する前記アクリル系重合体(a11)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0208】
組成物(IV-1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、アクリル系樹脂(a1-1)の含有量の割合(すなわち、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムにおける、前記フィルムの総質量に対する、アクリル系樹脂(a1-1)の含有量の割合)は、1~70質量%であることが好ましく、5~60質量%であることがより好ましく、10~50質量%であることが特に好ましい。
【0209】
・エネルギー線硬化性化合物(a12)
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、前記アクリル系重合体(a11)が有する官能基と反応可能な基として、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシ基からなる群より選択される1種又は2種以上を有するものが好ましく、前記基としてイソシアネート基を有するものがより好ましい。前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、例えば、前記基としてイソシアネート基を有する場合、このイソシアネート基が、前記官能基として水酸基を有するアクリル系重合体(a11)のこの水酸基と容易に反応する。
【0210】
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が、その1分子中に有する前記エネルギー線硬化性基の数は、特に限定されず、例えば、目的とする保護膜に求められる収縮率等の物性を考慮して、適宜選択できる。
例えば、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1分子中に前記エネルギー線硬化性基を1~5個有することが好ましく、1~3個有することがより好ましい。
【0211】
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物等が挙げられる。
これらの中でも、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートであることが好ましい。
【0212】
前記アクリル系樹脂(a1-1)を構成する前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0213】
前記アクリル系樹脂(a1-1)において、前記アクリル系重合体(a11)に由来する前記官能基の含有量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来するエネルギー線硬化性基の含有量の割合は、20~120モル%であることが好ましく、35~100モル%であることがより好ましく、50~100モル%であることが特に好ましい。前記含有量の割合がこのような範囲であることで、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの硬化物の接着力がより大きくなる。なお、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が一官能(前記基を1分子中に1個有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%となるが、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が多官能(前記基を1分子中に2個以上有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%を超えることがある。
【0214】
前記重合体(a1)の重量平均分子量(Mw)は、100000~2000000であることが好ましく、300000~1500000であることがより好ましい。
ここで、「重量平均分子量」とは、先に説明したとおりである。
【0215】
前記重合体(a1)が、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものである場合、前記重合体(a1)は、前記アクリル系重合体(a11)を構成するものとして説明した、上述のモノマーのいずれにも該当せず、かつ架橋剤と反応する基を有するモノマーが重合して、前記架橋剤と反応する基において架橋されたものであってもよいし、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来する、前記官能基と反応する基において、架橋されたものであってもよい。
【0216】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記重合体(a1)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0217】
(エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2))
エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100~80000の化合物(a2)中の前記エネルギー線硬化性基としては、エネルギー線硬化性二重結合を含む基が挙げられ、好ましいものとしては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
【0218】
前記化合物(a2)は、上記の条件を満たすものであれば、特に限定されないが、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂等が挙げられる。
【0219】
前記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物としては、例えば、多官能のモノマー又はオリゴマー等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
前記アクリレート系化合物としては、例えば、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル]プロパン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロキシプロパン等の2官能(メタ)アクリレート;
トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等の多官能(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0220】
前記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂としては、例えば、「特開2013-194102号公報」の段落0043等に記載されているものを用いることができる。このような樹脂は、後述する熱硬化性成分を構成する樹脂にも該当するが、本発明においては前記化合物(a2)として取り扱う。
【0221】
前記化合物(a2)の重量平均分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0222】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記化合物(a2)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0223】
[エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)]
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、前記エネルギー線硬化性成分(a)として前記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましい。
前記重合体(b)は、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0224】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、アクリル系重合体、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、ゴム系樹脂、アクリルウレタン樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、前記重合体(b)は、アクリル系重合体(以下、「アクリル系重合体(b-1)」と略記することがある)であることが好ましい。
【0225】
アクリル系重合体(b-1)は、公知のものでよく、例えば、1種のアクリル系モノマーの単独重合体であってもよいし、2種以上のアクリル系モノマーの共重合体であってもよいし、1種又は2種以上のアクリル系モノマーと、1種又は2種以上のアクリル系モノマー以外のモノマー(非アクリル系モノマー)と、の共重合体であってもよい。
【0226】
アクリル系重合体(b-1)を構成する前記アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、先に説明したとおりである。
【0227】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、先に説明した、アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有しないアクリル系モノマー(アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等)と同じものが挙げられる。
【0228】
前記環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0229】
前記グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。
前記置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等が挙げられる。
【0230】
アクリル系重合体(b-1)を構成する前記非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
【0231】
少なくとも一部が架橋剤によって架橋された、前記エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、前記重合体(b)中の反応性官能基が架橋剤と反応したものが挙げられる。
前記反応性官能基は、架橋剤の種類等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、架橋剤がポリイソシアネート化合物である場合には、前記反応性官能基としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられ、これらの中でも、イソシアネート基との反応性が高い水酸基が好ましい。また、架橋剤がエポキシ系化合物である場合には、前記反応性官能基としては、カルボキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられ、これらの中でもエポキシ基との反応性が高いカルボキシ基が好ましい。ただし、ワークやワーク加工物の回路の腐食を防止するという点では、前記反応性官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
【0232】
前記反応性官能基を有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、少なくとも前記反応性官能基を有するモノマーを重合させて得られたものが挙げられる。アクリル系重合体(b-1)の場合であれば、これを構成するモノマーとして挙げた、前記アクリル系モノマー及び非アクリル系モノマーのいずれか一方又は両方として、前記反応性官能基を有するものを用いればよい。反応性官能基として水酸基を有する前記重合体(b)としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを重合して得られたものが挙げられ、これ以外にも、先に挙げた前記アクリル系モノマー又は非アクリル系モノマーにおいて、1個又は2個以上の水素原子が前記反応性官能基で置換されてなるモノマーを重合して得られたものが挙げられる。
【0233】
反応性官能基を有する前記重合体(b)において、これを構成する構成単位の全量に対する、反応性官能基を有するモノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、1~20質量%であることが好ましく、2~10質量%であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、前記重合体(b)において、架橋の程度がより好ましい範囲となる。
【0234】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の重量平均分子量(Mw)は、組成物(IV-1)の造膜性がより良好となる点から、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。ここで、「重量平均分子量」とは、先に説明したとおりである。
【0235】
組成物(IV-1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0236】
組成物(IV-1)としては、前記重合体(a1)及び前記化合物(a2)のいずれか一方又は両方を含有するものが挙げられる。そして、組成物(IV-1)は、前記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましく、この場合、さらに前記(a1)を含有することも好ましい。また、組成物(IV-1)は、前記化合物(a2)を含有せず、前記重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)をともに含有していてもよい。
【0237】
組成物(IV-1)が、前記重合体(a1)、前記化合物(a2)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)を含有する場合、組成物(IV-1)において、前記化合物(a2)の含有量は、前記重合体(a1)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の総含有量100質量部に対して、10~400質量部であることが好ましく、30~350質量部であることがより好ましい。
【0238】
組成物(IV-1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、前記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量の割合(すなわち、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムにおける、前記フィルムの総質量に対する、前記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量の割合)は、5~90質量%であることが好ましく、10~80質量%であることがより好ましく、20~70質量%であることが特に好ましい。エネルギー線硬化性成分の含有量の前記割合がこのような範囲であることで、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化性がより良好となる。
【0239】
組成物(IV-1)は、前記エネルギー線硬化性成分以外に、目的に応じて、熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0240】
組成物(IV-1)における前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤としては、それぞれ、組成物(III-1)における熱硬化性成分(B)、充填材(D)、カップリング剤(E)、架橋剤(F)、光重合開始剤(H)、着色剤(I)及び汎用添加剤(J)と同じものが挙げられる。
【0241】
例えば、前記エネルギー線硬化性成分及び熱硬化性成分を含有する組成物(IV-1)を用いることにより、形成されるエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、加熱によって被着体に対する接着力が向上し、このエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムから形成された保護膜の強度も向上する。
また、前記エネルギー線硬化性成分及び着色剤を含有する組成物(IV-1)を用いることにより、形成されるエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、先に説明した熱硬化性保護膜形成用フィルムが着色剤(I)を含有する場合と同様の効果を発現する。
【0242】
組成物(IV-1)において、前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤は、それぞれ、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0243】
組成物(IV-1)における前記熱硬化性成分、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
組成物(IV-1)における充填材の含有量は、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることが好ましく、例えば、50質量%以上80質量%以下、及び55質量%以上80質量%以下のいずれかであってもよく、50質量%以上70質量%以下、55質量%以上70質量%以下のいずれかであってもよい。前記割合がこのような範囲であることで、前記割合がこのような範囲であることで、エネルギー線硬化前に、前記エネルギー線硬化性粘着剤と保護膜形成用フィルムとの間で成分が相互に移行することを抑制することができる。
【0244】
組成物(IV-1)は、希釈によってその取り扱い性が向上することから、さらに溶媒を含有するものが好ましい。
組成物(IV-1)が含有する溶媒としては、例えば、組成物(III-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
組成物(IV-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
組成物(IV-1)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0245】
<エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物の製造方法>
組成物(IV-1)等のエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物は、例えば、配合成分の種類が異なる点以外は、先に説明した粘着剤組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0246】
◎非硬化性保護膜形成用フィルム
好ましい非硬化性保護膜形成用フィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂及び充填材を含有するものが挙げられる。
【0247】
<非硬化性保護膜形成用組成物(V-1)>
好ましい非硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記熱可塑性樹脂及び充填材を含有する非硬化性保護膜形成用組成物(V-1)(本明細書においては、単に「組成物(V-1)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0248】
[熱可塑性樹脂]
前記熱可塑性樹脂は、特に限定されない。
前記熱可塑性樹脂として、より具体的には、例えば、上述の組成物(III-1)の含有成分として挙げた、アクリル系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等の、硬化性ではない樹脂と同様のものが挙げられる。
【0249】
組成物(V-1)及び非硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0250】
組成物(V-1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量の割合(すなわち、非硬化性保護膜形成用フィルムにおける、非硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、前記熱可塑性樹脂の含有量の割合)は、25~75質量%であることが好ましい。
【0251】
[充填材]
充填材を含有する非硬化性保護膜形成用フィルムは、充填材(D)を含有する熱硬化性保護膜形成用フィルムと、同様の効果を奏する。
【0252】
組成物(V-1)及び非硬化性保護膜形成用フィルムが含有する充填材としては、組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する充填材(D)と同じものが挙げられる。
【0253】
組成物(V-1)及び非硬化性保護膜形成用フィルムが含有する充填材は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0254】
組成物(V-1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する、充填材の含有量の割合(すなわち、非硬化性保護膜形成用フィルムにおける、非硬化性保護膜形成用フィルムの総質量に対する、充填材の含有量の割合)は、50~75質量%であることが好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、組成物(III-1)を用いた場合と同様に、非硬化性保護膜形成用フィルム(すなわち保護膜)の熱膨張係数の調整が、より容易となる。
【0255】
組成物(V-1)は、前記熱可塑性樹脂及び充填材以外に、目的に応じて、他の成分を含有していてもよい。
前記他の成分は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
例えば、前記熱可塑性樹脂及び着色剤を含有する組成物(V-1)を用いることにより、形成される非硬化性保護膜形成用フィルム(換言すると保護膜)は、先に説明した熱硬化性保護膜形成用フィルムが着色剤(I)を含有する場合と同様の効果を発現する。
【0256】
組成物(V-1)において、前記他の成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0257】
組成物(V-1)の前記他の成分の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
【0258】
組成物(V-1)は、希釈によってその取り扱い性が向上することから、さらに溶媒を含有するものが好ましい。
組成物(V-1)が含有する溶媒としては、例えば、上述の組成物(III-1)における溶媒と同じものが挙げられる。
組成物(V-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
組成物(V-1)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0259】
<非硬化性保護膜形成用組成物の製造方法>
組成物(V-1)等の非硬化性保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
非硬化性保護膜形成用組成物は、例えば、配合成分の種類が異なる点以外は、先に説明した粘着剤組成物の場合と同じ方法で製造できる。
【0260】
◇保護膜形成用複合シートの製造方法
前記保護膜形成用複合シートは、上述の各層を対応する位置関係となるように積層し、必要に応じて、一部又はすべての層の形状を調節することで、製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
【0261】
例えば、支持シートを製造するときに、基材上に粘着剤層を積層する場合には、基材上に上述の粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させればよい。
また、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層の露出面を、基材の一方の表面と貼り合わせる方法でも、基材上に粘着剤層を積層できる。このとき、粘着剤組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。
ここまでは、基材上に粘着剤層を積層する場合を例に挙げたが、上述の方法は、例えば、基材上に前記他の層を積層する場合にも適用できる。
【0262】
一方、例えば、基材上に積層済みの粘着剤層の上に、さらに保護膜形成用フィルムを積層する場合には、粘着剤層上に保護膜形成用組成物を塗工して、保護膜形成用フィルムを直接形成することが可能である。保護膜形成用フィルム以外の層も、この層を形成するための組成物を用いて、同様の方法で、粘着剤層の上にこの層を積層できる。このように、基材上に積層済みのいずれかの層(以下、「第1層」と略記する)上に、新たな層(以下、「第2層」と略記する)を形成して、連続する2層の積層構造(換言すると、第1層及び第2層の積層構造)を形成する場合には、前記第1層上に、前記第2層を形成するための組成物を塗工して、必要に応じて乾燥させる方法が適用できる。
ただし、第2層は、これを形成するための組成物を用いて、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、この形成済みの第2層の前記剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面を、第1層の露出面と貼り合わせることで、連続する2層の積層構造を形成することが好ましい。このとき、前記組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
ここでは、粘着剤層上に保護膜形成用フィルムを積層する場合を例に挙げたが、例えば、粘着剤層上に前記他の層を積層する場合など、対象となる積層構造は、任意に選択できる。
【0263】
このように、保護膜形成用複合シートを構成する基材以外の層はいずれも、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、目的とする層の表面に貼り合わせる方法で積層できるため、必要に応じてこのような工程を採用する層を適宜選択して、保護膜形成用複合シートを製造すればよい。
【0264】
なお、保護膜形成用複合シートは、通常、その支持シートとは反対側の最表層(例えば、保護膜形成用フィルム)の表面に剥離フィルムが貼り合わされた状態で保管される。したがって、この剥離フィルム(好ましくはその剥離処理面)上に、保護膜形成用組成物等の、最表層を構成する層を形成するための組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に最表層を構成する層を形成しておき、この層の剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面上に残りの各層を上述のいずれかの方法で積層し、剥離フィルムを取り除かずに貼り合わせた状態のままとすることで、剥離フィルム付きの保護膜形成用複合シートが得られる。
【0265】
◇保護膜付きワーク加工物の製造方法(保護膜形成用複合シートの使用方法)
前記保護膜形成用複合シートは、前記保護膜付きワーク加工物の製造に用いることができる。
ワーク加工物のいずれかの箇所に保護膜を備えた、保護膜付きワーク加工物の製造方法の一例としては、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、ワークの目的とする箇所に貼付することにより、前記ワークに前記保護膜形成用複合シートが設けられた(積層された)積層体を作製する貼付工程と、前記貼付工程の後に、必要に応じて行う、前記保護膜形成用フィルムを硬化させる硬化工程と、前記貼付工程の後に、前記積層体における前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルム又はその硬化物に対して、前記保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、前記支持シート越しに、レーザー光を照射することにより、前記保護膜形成用フィルム又はその硬化物に印字を行う印字工程と、前記印字工程の後に、前記ワークを加工することにより、ワーク加工物を作製する加工工程と、を有し、前記ワークに貼付した後の前記保護膜形成用フィルムを硬化させずに保護膜とするか、又は、硬化させて得られた硬化物を保護膜とする、製造方法が挙げられる。
【0266】
ワークが半導体ウエハである場合の保護膜付きワーク加工物、すなわち保護膜付き半導体チップの製造方法の一例としては、半導体チップの裏面に保護膜を備えた、保護膜付き半導体チップの製造方法であって、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、半導体ウエハの裏面に貼付することにより、前記半導体ウエハの裏面に前記保護膜形成用複合シートが設けられた積層体を作製する貼付工程と、前記貼付工程の後に、必要に応じて行う、前記保護膜形成用フィルムを硬化させる硬化工程と、前記貼付工程の後に、前記積層体における前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルム又はその硬化物に対して、前記保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、前記支持シート越しに、レーザー光を照射することにより、前記保護膜形成用フィルム又はその硬化物に印字を行う印字工程と、前記印字工程の後に、前記半導体ウエハを分割することにより、半導体チップを作製し、さらに、前記保護膜形成用フィルム又はその硬化物を切断する、分割/切断工程 と、前記切断後の保護膜形成用フィルム又はその硬化物を備えた前記半導体チップを、前記支持シートから引き離してピックアップするピックアップ工程と、を有し、前記半導体ウエハに貼付した後の前記保護膜形成用フィルムを硬化させずに保護膜とするか、又は、硬化させて得られた硬化物を保護膜とする、製造方法が挙げられる。
【0267】
前記製造方法において、ワークが半導体ウエハである場合には、ワークとしては、先に説明したものを使用できる。
【0268】
前記製造方法においては、上述の本実施形態の保護膜形成用複合シートを用いることにより、波長が266nm等の短波長の前記レーザー光を照射した場合であっても、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルム又はその硬化物に、良好に印字できる。さらに、この印字を、保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、支持シート越しに、良好に視認できる。
【0269】
前記製造方法は、前記硬化工程を有する場合の製造方法(本明細書においては、「製造方法(1)」と称することがある)と、前記硬化工程を有しない場合の製造方法(本明細書においては、「製造方法(2)」と称することがある)と、に分けられる。
以下、これら製造方法について、順次説明する。
【0270】
<<製造方法(1)>>
前記製造方法(1)は、ワーク加工物のいずれかの箇所に保護膜を備えた、保護膜付きワーク加工物の製造方法であって、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、ワークの目的とする箇所に貼付することにより、前記ワークに前記保護膜形成用複合シートが設けられた(積層された)積層体を作製する貼付工程と、前記貼付工程の後に、前記保護膜形成用フィルムを硬化させる硬化工程と、前記貼付工程の後に、前記積層体における前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルム又はその硬化物に対して、前記保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、前記支持シート越しに、レーザー光を照射することにより、前記保護膜形成用フィルム又はその硬化物に印字を行う印字工程と、前記印字工程の後に、前記ワークを加工することにより、ワーク加工物を作製する加工工程と、を有し、前記ワークに貼付した後の前記保護膜形成用フィルムを硬化させて得られた硬化物を保護膜とする。
【0271】
図3は、ワークが半導体ウエハである場合の前記製造方法(1)の一例を模式的に説明するための断面図である。ここでは、
図1に示す保護膜形成用複合シート101を用いた場合の製造方法について説明する。
【0272】
<貼付工程>
前記貼付工程においては、保護膜形成用複合シート101として、剥離フィルム15を取り除いたものを用い、
図3(a)に示すように、保護膜形成用複合シート101中の保護膜形成用フィルム13を、半導体ウエハ9の裏面9bに貼付する。これにより、半導体ウエハ9と、その裏面9bに設けられた保護膜形成用複合シート101と、を備えて構成された積層体901を作製する。
【0273】
前記貼付工程においては、保護膜形成用フィルム13を加熱することにより軟化させて、半導体ウエハ9に貼付してもよい。
なお、ここでは、半導体ウエハ9において、回路形成面9a上のバンプ等の図示を省略している。
また、符号13bは、保護膜形成用フィルム13の第1面13aとは反対側(換言すると粘着剤層12側)の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)を示す。
【0274】
半導体ウエハ9は、その厚さを目的の値とするために、その裏面が研削されたものであってよい。すなわち、半導体ウエハ9の裏面9bは、研削面であってよい。
【0275】
半導体ウエハ9においては、その回路形成面9aと裏面9bとの間で貫通している溝が、存在しないことが好ましい。
【0276】
<硬化工程>
前記貼付工程の後、前記硬化工程においては、
図3(b)に示すように、保護膜形成用フィルム13を硬化させる。
ここでは、前記印字工程の前に硬化工程を行う場合を示している。
本実施形態においては、半導体ウエハ9に貼付した後の保護膜形成用フィルム13を硬化させて得られた硬化物を、その切断の有無によらず、保護膜とする。
【0277】
硬化工程を行うことにより、保護膜形成用複合シート101は、保護膜形成用フィルム13がその硬化物13’となった保護膜形成用複合シート1011となり、半導体ウエハ9と、その裏面9bに設けられた保護膜形成用複合シート1011と、を備えて構成された、硬化済み積層体9011が得られる。
符号13a’は、保護膜形成用フィルム13の第1面13aに対応する、前記硬化物13’の第1面を示し、符号13b’は、保護膜形成用フィルム13の第2面13bに対応する、前記硬化物13’の第2面を示している。
【0278】
硬化工程においては、保護膜形成用フィルム13が熱硬化性である場合には、保護膜形成用フィルム13を加熱することにより、硬化物13’を形成する。保護膜形成用フィルム13がエネルギー線硬化性である場合には、支持シート10を介して保護膜形成用フィルム13にエネルギー線を照射することにより、硬化物13’を形成する。
【0279】
硬化工程において、保護膜形成用フィルム13の硬化条件、すなわち、熱硬化時の加熱温度及び加熱時間、並びに、エネルギー線硬化時のエネルギー線の照度及び光量は、先に説明したとおりである。
【0280】
<印字工程>
前記貼付工程の後、前記印字工程においては、
図3(c)に示すように、硬化済み積層体9011における保護膜形成用複合シート1011中の前記硬化物13’に対して、保護膜形成用複合シート1011の支持シート10側の外部から、支持シート10越しに、レーザー光Lを照射することにより、前記硬化物13’に印字を行う。印字(図示略)は、前記硬化物13’の第2面13b’に施される。
【0281】
印字工程を行うことにより、保護膜形成用複合シート1011は、印字済みの前記硬化物13’を備えた保護膜形成用複合シート1012となり、半導体ウエハ9と、その裏面9bに設けられた保護膜形成用複合シート1012と、を備えて構成された、印字及び硬化済み積層体9012が得られる。
【0282】
前記レーザー光Lの波長は、従来よりも短波長であることが好ましく、266nmであることがより好ましい。
【0283】
<分割/切断工程>
前記印字工程の後、前記分割/切断工程においては、
図3(d)に示すように、半導体ウエハ9を分割することにより、半導体チップ9’を作製し、さらに、前記硬化物13’を切断する。
分割/切断工程を行うことにより、半導体チップ9’と、半導体チップ9’の裏面9b’に設けられた、切断後の前記硬化物130’と、を備えて構成された、保護膜付き半導体チップ91が複数個得られる。これら複数個の保護膜付き半導体チップ91はすべて、1枚の支持シート10上で整列した状態となっており、これら保護膜付き半導体チップ91と支持シート10は、保護膜付き半導体チップ群910を構成している。
【0284】
符号130a’は、前記硬化物13’の第1面13a’に対応する、切断後の前記硬化物130’の第1面を示し、符号130b’は、前記硬化物13’の第2面13b’に対応する、切断後の前記硬化物130’の第2面を示している。
符号9a’は、半導体ウエハ9の回路形成面9aに対応する、半導体チップ9’の回路形成面を示している。
【0285】
半導体ウエハ9の分割(換言すると個片化)による半導体チップ9’の作製は、公知の方法で行うことができる。
半導体ウエハ9の分割方法としては、例えば、ブレードを用いて半導体ウエハ9をダイシングするブレードダイシング;レーザー照射により半導体ウエハ9をダイシングするレーザーダイシング;研磨剤を含む水の吹き付けにより半導体ウエハ9をダイシングするウォーターダイシング等の、半導体ウエハを切り込む方法が挙げられる。切り込みは、粘着剤層12まででもよく、基材11まで達していてもよい。粘着剤層12までの場合、切削屑が生じにくくなる。基材11までの場合、エキスパンドの際の拡張性が向上する。
これらの方法を適用する場合には、例えば、半導体ウエハ9を分割するとともに、同時に前記硬化物13’を切断することによって、半導体ウエハ9の分割と、前記硬化物13’の切断と、を一括して行ってもよい。
【0286】
半導体ウエハ9の分割方法としては、このような半導体ウエハを切り込む方法以外の方法も挙げられる。
すなわち、この方法では、まず、半導体ウエハ9の内部において、分割予定箇所を設定し、この箇所を焦点として、この焦点に集束するように、レーザー光を照射することにより、半導体ウエハ9の内部に改質層を形成する。半導体ウエハの改質層は、半導体ウエハの他の箇所とは異なり、レーザー光の照射によって変質しており、強度が弱くなっている。そのため、半導体ウエハ9に力が加えられることにより、半導体ウエハ9の内部の改質層において、半導体ウエハ9の両面方向に延びる亀裂が発生し、半導体ウエハ9の分割(切断)の起点となる。次いで、半導体ウエハ9に力を加えて、前記改質層の部位において半導体ウエハ9を分割し、半導体チップを作製する。このような改質層の形成を伴う半導体ウエハ9の分割方法は、ステルスダイシング(登録商標)と呼ばれている。
例えば、改質層が形成された半導体ウエハは、その表面に対して平行な方向にエキスパンドして、力を加えることにより、分割できる。このように、半導体ウエハをエキスパンドする方法を適用する場合には、半導体ウエハ9とともに保護膜形成用フィルムの硬化物13’も一緒にエキスパンドして、前記硬化物13’も同時に切断することによって、半導体ウエハ9の分割と、前記硬化物13’の切断と、を一括して行ってもよい。硬化物13’のエキスパンドによる切断は、-20~5℃等の低温下において、行うことが好ましい。
【0287】
半導体ウエハ9の分割と、前記硬化物13’の切断と、を一括して行わない場合には、半導体ウエハ9の分割以外に、別途、前記硬化物13’の切断を公知の方法で行えばよい。
【0288】
<ピックアップ工程>
前記分割/切断工程の後、前記ピックアップ工程においては、
図3(e)に示すように、切断後の前記硬化物130’を備えた半導体チップ9’(保護膜付き半導体チップ91)を、支持シート10から引き離してピックアップする。ここでは、ピックアップの方向を矢印Iで示している。
【0289】
保護膜付き半導体チップ91のピックアップは、公知の方法で行うことができる。例えば、保護膜付き半導体チップ91を支持シート10から引き離すための引き離し手段8としては、真空コレット等が挙げられる。なお、ここでは、引き離し手段8のみ断面表示をしておらず、これは以降の同様の図においても同じである。
以上により、目的とする保護膜付き半導体チップ91が得られる。
【0290】
ピックアップされたものをはじめとして、印字工程の対象であった保護膜付き半導体チップ91においては、切断後の前記硬化物130’の第2面130b’に、印字が鮮明に維持されている。
【0291】
<硬化工程を行うタイミング>
ここまでは、貼付工程と印字工程との間に、硬化工程を行う場合について説明したが、製造方法(1)において、硬化工程を行うタイミングは、これに限定されない。例えば、製造方法(1)において、硬化工程は、印字工程と分割/切断工程との間、分割/切断工程とピックアップ工程との間、ピックアップ工程の後、のいずれかで行ってもよい。
【0292】
貼付工程及び印字工程の後に硬化工程を行う場合、印字工程においては、
図3(a)に示す積層体901における保護膜形成用複合シート101中の保護膜形成用フィルム13に対して、保護膜形成用複合シート101の支持シート10側の外部から、支持シート10越しに、レーザー光Lを照射することにより、保護膜形成用フィルム13に印字を行う。印字(図示略)は、保護膜形成用フィルム13の第2面13bに施される。
この場合の印字工程は、レーザー光Lの照射対象が、保護膜形成用フィルム13の硬化物13’ではなく、保護膜形成用フィルム13である点を除けば、先に説明した印字工程の場合と同じ方法で行うことができる。
【0293】
<他の工程>
製造方法(1)は、前記貼付工程、硬化工程、印字工程、分割/切断工程、及びピックアップ工程、の各工程以外に、これらのいずれにも該当しない他の工程を有していてもよい。
前記他の工程の種類と、これを行うタイミングは、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
【0294】
<<製造方法(2)>>
前記製造方法(2)は、ワーク加工物のいずれかの箇所に保護膜を備えた、保護膜付きワーク加工物の製造方法であって、前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを、ワークの目的とする箇所に貼付することにより、前記ワークに前記保護膜形成用複合シートが設けられた(積層された)積層体を作製する貼付工程と、前記貼付工程の後に、前記積層体における前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムに対して、前記保護膜形成用複合シートの支持シート側の外部から、前記支持シート越しに、レーザー光を照射することにより、前記保護膜形成用フィルムに印字を行う印字工程と、前記印字工程の後に、前記ワークを加工することにより、ワーク加工物を作製する加工工程と、を有し、前記ワークに貼付した後の前記保護膜形成用フィルムを硬化させずに保護膜とする、製造方法が挙げられる。
製造方法(2)は、ワークの種類によらず、前記硬化工程を有さず、ワークに貼付した後の保護膜形成用フィルムをそのまま保護膜とする点を除けば、製造方法(1)と同じであり、製造方法(1)の場合と同様の効果を奏する。
【0295】
ここまでは、主として、
図1に示す保護膜形成用複合シート101を用いた場合の、保護膜付きワーク加工物の製造方法について説明したが、本実施形態の保護膜付きワーク加工物の製造方法は、これに限定されない。
例えば、
図2に示す保護膜形成用複合シート等、
図1に示す保護膜形成用複合シート101以外のものを用いても、上述の製造方法により、同様に保護膜付きワーク加工物を製造できる。
他の実施形態の保護膜形成用複合シートを用いる場合には、このシートと、保護膜形成用複合シート101と、の間の構造の相違に基づいて、上述の製造方法において、適宜、工程の追加、変更、削除等を行って、保護膜付きワーク加工物を製造してもよい。
【0296】
◇半導体装置の製造方法
上述の製造方法により、保護膜付きワーク加工物を得た後は、この保護膜付きワーク加工物を用い、その種類に応じて、公知の適切な方法により、半導体装置を製造できる。例えば、保護膜付きワーク加工物が保護膜付き半導体チップである場合には、この保護膜付き半導体チップを、基板の回路面にフリップチップ接続した後、半導体パッケージとし、この半導体パッケージを用いることにより、目的とする半導体装置を製造できる(図示略)。
【実施例】
【0297】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0298】
<樹脂の製造原料>
本実施例及び比較例において略記している、樹脂の製造原料の正式名称を、以下に示す。
MA:アクリル酸メチル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
2EHA:アクリル酸-2-エチルヘキシル
MOI:2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート
BA:アクリル酸n-ブチル
GMA:メタクリル酸グリシジル
VAc:酢酸ビニル
AA:アクリル酸
HEMA:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
【0299】
<保護膜形成用組成物の製造原料>
保護膜形成用組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
[重合体成分(A)]
(A)-1:MA(85質量部)及びHEA(15質量部)を共重合してなるアクリル系重合体(重量平均分子量300000、ガラス転移温度6℃)
(A)-2:BA(55質量部)、MA(10質量部)、GMA(20質量部)及びHEA(15質量部)を共重合してなるアクリル系重合体(重量平均分子量800000、ガラス転移温度-28℃)
[熱硬化性成分(B1)]
(B1)-1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER828」、エポキシ当量184~194g/eq)
(B1)-2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER1055」、エポキシ当量800~900g/eq)
(B1)-3:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製「エピクロンHP-7200HH」、エポキシ当量255~260g/eq)
[熱硬化剤(B2)]
(B2)-1:熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤 ジシアンジアミド(三菱化学社製、DICY7、活性水素量21g/eq)
[硬化促進剤(C)]
(C)-1:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製「キュアゾール2PHZ-PW」)
[充填剤(D)]
(D)-1:シリカフィラー(溶融石英フィラー、平均粒子径8μm)
[カップリング剤(E)]
(E)-1:シランカップリング剤(信越化学工業社製,KBM503)
[架橋剤(F)]
(F)-1:イソシアネート系架橋剤(東ソー社製「コロネートL」、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネート三量体付加物)
[着色剤(I)]
(I)-1:フタロシアニン系青色色素(Pigment Blue 15:3)32質量部と、イソインドリノン系黄色色素(Pigment Yellow 139)18質量部と、アントラキノン系赤色色素(Pigment Red 177)50質量部とを混合し、前記3種の色素の合計量/スチレンアクリル樹脂量=1/3(質量比)となるように顔料化して得られた顔料。
[エネルギー線硬化性樹脂(G)]
(G)-1:ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学工業社製「A-9300-1CL」、3官能紫外線硬化性化合物)
【0300】
[実施例1]
<<支持シートの製造>>
<粘着性樹脂(I-2a)の製造>
2EHA(42質量部)と、VAc(40質量部)、HEA(18質量部)と、の共重合体である、重量平均分子量が600000のアクリル系重合体に、MOI(前記アクリル系重合体中のHEA由来の水酸基の総モル数に対して、MOI中のイソシアネート基の総モル数が、0.8倍となる量)を加え、空気気流中において50℃で48時間付加反応を行うことで、目的とする粘着性樹脂(I-2a)-1を得た。
以下、前記アクリル系重合体を「粘着性樹脂(I-1a)-1」と称することがある。
【0301】
<粘着剤組成物(I-2)の製造>
粘着性樹脂(I-2a)-1(100質量部)、ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤(東ソー社製「コロネートL」)(0.21質量部)、及び光重合開始剤(BASF社製「イルガキュア127」、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン)(3質量部)を含有し、さらに溶媒として酢酸エチルを含有しており、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が30質量%である、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-2)-1を調製した。なお、ここに示す酢酸エチル以外の成分の含有量はすべて、溶媒を含まない目的物の含有量である。
【0302】
<支持シートの製造>
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた粘着剤組成物(I-2)-1を塗工し、100℃で2分加熱乾燥させることにより、厚さ5μmのエネルギー線硬化性の粘着剤層を形成した。前記粘着剤層のゲル分率は90%であった。なお、前記粘着剤層のゲル分率は、先に説明した方法での測定値である。これは、以降の実施例及び比較例においても同様である。
次いで、この粘着剤層の露出面に、基材としてポリプロピレン製フィルム(1)(厚さ80μm、無色)を貼り合せることにより、基材、粘着剤層及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された積層シート、すなわち、剥離フィルム付きの支持シートを製造した。
【0303】
<<保護膜形成用フィルムの製造>>
<保護膜形成用組成物(III-1)の製造>
重合体成分(A)-1(25.5質量部)、熱硬化性成分(B1)-1(10.2質量部)、(B1)-2(1.7質量部)、(B1)-3(5.4質量部)、熱硬化剤(B2)-1(0.4質量部)、硬化促進剤(C)-1(0.4質量部)、充填剤(D)-1(54.1質量部)、カップリング剤(E)-1(0.3質量部)、及び着色剤(I)-1(2.0質量部)を、メチルエチルケトン、トルエン及び酢酸エチルの混合溶媒に溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が50質量%である熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)-1を得た。なお、ここに示す前記混合溶媒以外の成分の配合量はすべて、溶媒を含まない目的物の配合量である。
溶媒を除く熱硬化性の保護膜形成用組成物中の充填材の含有量は、54.1質量%であった。また、前記保護膜形成用組成物のTgは、23.5℃であった。
【0304】
<保護膜形成用フィルムの製造>
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(第2剥離フィルム、リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた保護膜形成用組成物(III-1)-1を塗工し、100℃で2分乾燥させることにより、厚さ25μmの熱硬化性の保護膜形成用フィルムを製造した。
上記保護膜形成用フィルムの損失弾性率E’’は、51.6MPaであった。
【0305】
さらに、得られた保護膜形成用フィルムの、第2剥離フィルムを備えていない側の露出面に、剥離フィルム(第1剥離フィルム、リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)の剥離処理面を貼り合わせることにより、保護膜形成用フィルムと、前記保護膜形成用フィルムの一方の面に設けられた第1剥離フィルムと、前記保護膜形成用フィルムの他方の面に設けられた第2剥離フィルムと、を備えて構成された積層フィルムを得た。
【0306】
<<保護膜形成用複合シートの製造>>
上記で得られた支持シートからから剥離フィルムを取り除いた。また、上記で得られた積層フィルムから第1剥離フィルムを取り除いた。そして、上記の剥離フィルムを取り除いて生じた粘着剤層の露出面と、上記の第1剥離フィルムを取り除いて生じた保護膜形成用フィルムの露出面と、を貼り合わせることにより、基材、粘着剤層、保護膜形成用フィルム及び第2剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された保護膜形成用複合シートを製造した。
【0307】
<<保護膜形成用複合シートの評価>>
上記の保護膜形成用複合シートを用い、8インチミラーウエハと保護膜形成フィルムを貼り合せた。得られたウエハと保護膜形成用複合シートの積層体を130℃で2時間加熱し、保護膜形成用フィルムを硬化させ、保護膜とした後、常温となるまで静置した。
その後、吸着テーブルにウエハ表面を吸着固定し、支持シート端部をアームにて保持し、剥離角度180°、剥離速度(300mm/min)にて保護膜と支持シートの界面での剥離試験を行い、以下の基準にしたがって、保護膜と支持シートの界面での剥離性を評価した。
A:保護膜と支持シートの界面で問題なく剥離できた。
B:保護膜と支持シートの界面で剥離できたが、剥離の際に引っかかり(ジッピング)があった。
C:保護膜と支持シート界面で剥離できず、ウエハと保護膜の界面が剥離した。
【0308】
<<保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートの製造、並びに評価>>
[実施例2]
保護膜形成用組成物の製造時に、重合体成分(A)-1を29.6質量部用い、充填材(D)-1を50質量部用いる以外は、実施例1の場合と同じ方法で、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
上記保護膜形成用フィルムの損失弾性率E’’は、11.0MPaであった。
溶媒を除く熱硬化性の保護膜形成用組成物中の充填材の含有量は、50.0質量%であった。また、前記保護膜形成用組成物のTgは、13.0℃であった。
結果を表1に示す。
【0309】
[実施例3]
保護膜形成用組成物の製造時に、重合体成分(A)-1(25.5質量部)に代えて、重合体成分(A)-2(19.0質量部)を用い、充填材(D)-1を60.6質量部用いる以外は、実施例1の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
上記保護膜形成用フィルムの損失弾性率E’’は、2.2MPaであった。
溶媒を除く熱硬化性の保護膜形成用組成物中の充填材の含有量は、60.6質量%であった。また、前記保護膜形成用組成物のTgは、2.2℃であった。
結果を表1に示す。
【0310】
[実施例4]
保護膜形成用組成物の製造時に、重合体成分(A)-1(25.5質量部)に代えて、重合体成分(A)-2(25.5質量部)を用い、充填材(D)-1を54.1質量部用いる以外は、実施例1の場合と同じ方法で、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
上記保護膜形成用フィルムの損失弾性率E’’は、1.3MPaであった。
溶媒を除く熱硬化性の保護膜形成用組成物中の充填材の含有量は、54.1質量%であった。また、前記保護膜形成用組成物のTgは、1.7℃であった。
結果を表1に示す。
【0311】
[実施例5]
重合体成分(A)-1(35.98質量部)、熱硬化性成分(B1)-1(11.24質量部)、(B1)-2(2.04質量部)、(B1)-3(7.48質量部)、熱硬化剤(B2)-1(0.48質量部)、硬化促進剤(C)-1(0.48質量部)、充填剤(D)-1(40.0質量部)、カップリング剤(E)-1(0.3質量部)、及び着色剤(I)-1(2.0質量部)を、メチルエチルケトン、トルエン及び酢酸エチルの混合溶媒に溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が50質量%である熱硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)-1を得た。なお、ここに示す前記混合溶媒以外の成分の配合量はすべて、溶媒を含まない目的物の配合量である。
溶媒を除く熱硬化性の保護膜形成用組成物中の充填材の含有量は、40.0質量%であった。また、前記保護膜形成用組成物のTgは、16.5℃であった。
次に、上記保護膜形成用組成物を用いて、実施例1と同じ方法で、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
上記保護膜形成用フィルムの損失弾性率E’’は、18.4MPaであった。
結果を表1に示す。
【0312】
[実施例6]
支持シートの製造時に、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-2)-1に代えて、以下に示す方法で製造した、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-2)-2を用いた点と、粘着剤層の厚さを5μmに代えて10μmとした点、以外は、実施例1の場合と同じ方法で、支持シート、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。前記粘着剤層のゲル分率は50%であった。また、上記保護膜形成用フィルムの損失弾性率E’’は、51.6MPaであった。
結果を表1に示す。
【0313】
<粘着性樹脂(I-2a)の製造>
2EHA(21質量部)と、VAc(76質量部)、AA(1質量部)、HEMA(2質量部)と、の共重合体である、重量平均分子量が300000のアクリル系重合体(100質量部)に、2官能と6官能ウレタンアクリレート混合物(72質量部)、ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤(東ソー社製「コロネートL」)(3質量部)、光重合開始剤(BASF社製「イルガキュア127」、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン)(3質量部)を混合し、酢酸エチルで濃度を30%とすることで、目的とする粘着性樹脂(I-2a)-2を得た。
【0314】
<粘着剤組成物(I-2)-2の製造>
粘着性樹脂(I-2a)-2(100質量部)、ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤(東ソー社製「コロネートL」)(3質量部)、及び光重合開始剤(BASF社製「イルガキュア127」、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン)(3質量部)を含有し、さらに溶媒として酢酸エチルを含有しており、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が30質量%である、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-2)-2を調製した。なお、ここに示す酢酸エチル以外の成分の含有量はすべて、溶媒を含まない目的物の含有量である。
溶媒を除く熱硬化性の保護膜形成用組成物中の充填材の含有量は、54.1質量%であった。また、前記保護膜形成用組成物のTgは、23.5℃であった。
結果を表1に示す。
【0315】
[実施例7]
保護膜形成用組成物の製造時に、重合体成分(A)-1を29.6質量部、充填材(D)-1を50質量部用いる以外は、実施例6の場合と同じ方法で、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
上記保護膜形成用フィルムの損失弾性率E’’は、11.0MPaであった。
溶媒を除く熱硬化性の保護膜形成用組成物中の充填材の含有量は、50.0質量%であった。また、前記保護膜形成用組成物のTgは、13.0℃であった。
結果を表1に示す。
【0316】
[実施例8]
支持シートの製造時に、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I-2)-1に代えて、前記粘着剤組成物(I-2)-2を用いる以外は、実施例5の場合と同じ方法で、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
上記保護膜形成用フィルムの損失弾性率E’’は、18.4MPaであった。
溶媒を除く熱硬化性の保護膜形成用組成物中の充填材の含有量は、40.0質量%であった。また、前記保護膜形成用組成物のTgは、16.5℃であった。
結果を表1に示す。
【0317】
[実施例9]
<保護膜形成用組成物(IV-1)の製造>
重合体成分(A)-1(27.07質量部)、エネルギー線硬化性樹脂(G)-1(10.0質量部)、架橋剤(F)-1(0.77質量部)、光重合開始剤((BASF社製「イルガキュア369」、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン)(0.6質量部)、充填剤(D)-1(56.65質量部)、カップリング剤(E)-1(0.4質量部)、及び着色剤(I)-1(4.5質量部)を、メチルエチルケトン、トルエン及び酢酸エチルの混合溶媒に溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が50質量%であるエネルギー線硬化性の保護膜形成用組成物(III-1)-1を得た。なお、ここに示す前記混合溶媒以外の成分の配合量はすべて、溶媒を含まない目的物の配合量である。
溶媒を除くエネルギー線硬化性の保護膜形成用組成物中の充填材の含有量は、56.7質量%であった。また、前記保護膜形成用組成物のTgは、6.2℃であった。
【0318】
<保護膜形成用フィルムの製造>
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(第2剥離フィルム、リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた保護膜形成用組成物(III-1)-1を塗工し、100℃で2分乾燥させることにより、厚さ25μmのエネルギー線硬化性の保護膜形成用フィルムを製造した。
上記保護膜形成用フィルムの損失弾性率E’’は、5.8MPaであった。
【0319】
さらに、得られた保護膜形成用フィルムの、第2剥離フィルムを備えていない側の露出面に、剥離フィルム(第1剥離フィルム、リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)の剥離処理面を貼り合わせることにより、保護膜形成用フィルムと、前記保護膜形成用フィルムの一方の面に設けられた第1剥離フィルムと、前記保護膜形成用フィルムの他方の面に設けられた第2剥離フィルムと、を備えて構成された積層フィルムを得た。
【0320】
<<保護膜形成用複合シートの製造>>
実施例1と同じ方法で得られた支持シートから剥離フィルムを取り除いた。また、上記で得られた積層フィルムから第1剥離フィルムを取り除いた。そして、上記の剥離フィルムを取り除いて生じた粘着剤層の露出面と、上記の第1剥離フィルムを取り除いて生じた保護膜形成用フィルムの露出面と、を貼り合わせることにより、基材、粘着剤層、保護膜形成用フィルム及び第2剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成された保護膜形成用複合シートを製造した。
次に、130℃で2時間加熱して硬化させる代わりに、波長365nmの光を、照度215mW/cm2、光量187mJ/cm2の条件で3回照射して硬化させる以外は、実施例1と同じ方法で保護膜形成用複合シートを評価した。
結果を表1に示す。
【0321】
[比較例1]
保護膜形成用組成物の製造時に、重合体成分(A)-1(25.5質量部)に代えて、重合体成分(A)-2(19.0質量部)を用い、充填材(D)-1を60.6質量部用いる以外は実施例6の場合と同じ方法で、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
上記保護膜形成用フィルムの損失弾性率E’’は、2.2MPaであった。
溶媒を除く熱硬化性の保護膜形成用組成物中の充填材の含有量は、60.6質量%であった。また、前記保護膜形成用組成物のTgは、2.2℃であった。
結果を表1に示す。
【0322】
[比較例2]
保護膜形成用組成物の製造時に、重合体成分(A)-1(25.5質量部)に代えて、重合体成分(A)-2(25.5質量部)を用い、充填材(D)-1を54.1質量部用いる以外は、実施例6の場合と同じ方法で、保護膜形成用フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、評価した。
上記保護膜形成用フィルムの損失弾性率E’’は、1.3MPaであった。
溶媒を除く熱硬化性の保護膜形成用組成物中の充填材の含有量は、54.1質量%であった。また、前記保護膜形成用組成物のTgは、1.7℃であった。
結果を表1に示す。
【0323】
【0324】
上記結果から明らかなように、実施例1~5及び9においては、いずれも、支持シートの粘着剤の紫外線硬化前のゲル分率が90%であり、保護膜形成用複合シートの剥離性評価がAであり、支持シートと保護膜形成用フィルムの界面でスムーズに剥離できた。
【0325】
実施例6~8においては、いずれも、支持シートの粘着剤の紫外線硬化前のゲル分率が50%であったが、保護膜形成用フィルムのTgが3℃以上であり、保護膜形成用複合シートの剥離性評価がA又はBであった。実施例8ではやや剥離評価が劣っていたが、いずれの保護膜形成用複合シートにおいても、支持シートと保護膜形成用フィルムの界面で剥離できた。
【0326】
それに対し、比較例1及び2の保護膜形成用複合シートは、いずれも、支持シートの粘着剤の紫外線硬化前のゲル分率が50%であり、かつ、保護膜形成用フィルムのTgが3℃未満であった。また、保護膜形成用フィルムの23℃における損失弾性率E’’は3MPa未満であった。その結果、保護膜形成用複合シートの剥離性評価がCであり、支持シートと保護膜形成用フィルムの界面で剥離できず、保護膜形成用フィルムと被着体の界面で剥離した。
【産業上の利用可能性】
【0327】
本発明は、半導体装置の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0328】
101,102・・・保護膜形成用複合シート、1011・・・保護膜形成用フィルムが硬化済みの保護膜形成用複合シート、1012・・・保護膜形成用フィルムが硬化済み及び印字済みの保護膜形成用複合シート、10・・・支持シート、10a・・・支持シートの一方の面(第1面)、13,23・・・保護膜形成用フィルム、13’・・・保護膜(保護膜形成用フィルムの硬化物)、130’・・・切断後の保護膜(切断後の保護膜形成用フィルムの硬化物)、9・・・半導体ウエハ、9a・・・半導体ウエハの回路形成面、9b・・・半導体ウエハの裏面、9’・・・半導体チップ、L・・・レーザー光