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特許7500177寿命性能が改善された複合ナノ纎維触媒及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】寿命性能が改善された複合ナノ纎維触媒及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/10 20060101AFI20240610BHJP
   B01J 35/58 20240101ALI20240610BHJP
   B01J 35/61 20240101ALI20240610BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240610BHJP
   B01J 37/34 20060101ALI20240610BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20240610BHJP
   D01D 5/04 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
B01J23/10 M
B01J35/58 Z
B01J35/61
B01J37/08
B01J37/34
C01B3/02 B
D01D5/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019191262
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2020163367
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】10-2019-0019162
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】519371862
【氏名又は名称】インダストリー-ユニバーシティ、コーオペレイション、ファウンデーション、ハニャン、ユニバーシティ、エリカ、キャンパス
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRY-UNIVERSITY COOPERATION FOUNDATION HANYANG UNIVERSITY ERICA CAMPUS
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】チェ、スンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ、キョンムン
(72)【発明者】
【氏名】ナム、ドンフン
(72)【発明者】
【氏名】パク、フンモ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジミン
(72)【発明者】
【氏名】チョア、ヨンホ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュヒョン
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-061443(JP,A)
【文献】特開2018-034081(JP,A)
【文献】特開2016-185529(JP,A)
【文献】特開2014-173214(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104959043(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C01B 3/00 - 3/58
D01D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
纎維型支持体、及び
前記纎維型支持体の内部及び表面の少なくとも一方に含まれる金属触媒、を含む複合ナノ纎維触媒であって
前記纎維型支持体は酸化アルミニウム及び酸化珪素を含み、
前記纎維型支持体はムライトであり、
前記複合ナノ纎維触媒の平均比表面積は10.0~60.0m/gであり、
前記複合ナノ纎維触媒の平均厚さは100nm~2μmである、
ことを特徴とする、水素製造用の複合ナノ纎維触媒。
【請求項2】
前記金属触媒は酸化セリウム(CeO)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の
複合ナノ纎維触媒。
【請求項3】
前記金属触媒は平均直径が5~50nmであることを特徴とする、請求項1に記載の複
合ナノ纎維触媒。
【請求項4】
前記金属触媒を2.2~20.1重量%、前記纎維型支持体を79.9~97.8重量
%含むことを特徴とする、請求項1に記載の複合ナノ纎維触媒。
【請求項5】
前記複合ナノ纎維触媒は1000℃以上で酸化-還元による水分解工程に使われるもの
であることを特徴とする、請求項1に記載の複合ナノ纎維触媒。
【請求項6】
前駆体物質を準備する準備段階、
前記前駆体物質を高分子及び溶媒と混合して前駆体溶液を製造する第1混合段階、
前記前駆体溶液に添加剤を添加して混合溶液を製造する第2混合段階、
前記混合溶液を電気紡糸装置で電気紡糸して紡糸繊維を製造する電気紡糸段階、及び
前記紡糸繊維を熱処理して複合ナノ纎維触媒を製造する熱処理段階、を含み、
前記複合ナノ纎維触媒は金属触媒及び纎維型支持体を含み、
前記纎維型支持体は前記金属触媒を支持体の内部及び表面のいずれか一方に含むことを
特徴とする、複合ナノ纎維触媒の製造方法であって、
前記前駆体物質は、セリウム(II)硝酸6水化物(Ce(NO・6HO)、
アルミニウムイソプロポキシド(Al[OCH(CH)、アルミニウム(II
I)硝酸6水化物(Al(NO・6HO)及びテトラエチルオルトシリケート(
SiC20)を1:44:16:20~6:44:16:20のモル数比で含む
ことを特徴とする、複合ナノ纎維触媒の製造方法。
【請求項7】
第1混合段階で、前記高分子はポリエチレンオキシド(PEO)を含むことを特徴とす
る、請求項6に記載の複合ナノ纎維触媒の製造方法。
【請求項8】
第2混合段階で、前記添加剤はポリエーテル変性ヒドロキシ作用性ポリジメチルシロキ
サン(polyether-modified hydroxy-functional
polydimethylsiloxane)を含むことを特徴とする、請求項6に記
載の複合ナノ纎維触媒の製造方法。
【請求項9】
第2混合段階で、前記添加剤は0.2~0.8重量%添加することを特徴とする、請求
項6に記載の複合ナノ纎維触媒の製造方法。
【請求項10】
電気紡糸段階で、前記電気紡糸は0.1~1mL/hの速度で10~30kVの電圧で
進めることを特徴とする、請求項6に記載の複合ナノ纎維触媒の製造方法。
【請求項11】
前記熱処理は700~1000℃の温度で1~10時間進めることを特徴とする、請求
項6に記載の複合ナノ纎維触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は纎維状を有する触媒及びその製造方法に係り、より詳しくは高温の酸化-還元反応に適用され、寿命性能が改善された纎維状の触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、水素は水を電気分解して得るかあるいは化石燃料を水蒸気改質又は部分酸化して得ることができる。また、バイオマスをガス化あるいは炭化させて得ることができる。このように多様な方式で製造される水素は効率的なエネルギー変換媒体であり、化学工業及び電子工業などの広範囲な分野で使われる基礎原料物質でありながら燃料である。
【0003】
水素は自然状態で混合物又は化合物として存在する。水素の製造は、水、石油、石炭、天然ガス及び可燃性廃棄物から多様に出発することができる。水素への転換工程は、電気、熱及び微生物などを使うことによってのみ可能であり、水素を製造することができる多くの技術は基礎研究乃至技術開発の段階にあるものが大部分である。現在商用化した水素の製造方法はほとんど石油又は天然ガスを水蒸気に改質したものである。
【0004】
他の方法として、水素は熱化学的技術又は光触媒を活用する技術又は生物学的技術で製造することができる。
【0005】
図1には熱化学的技術による水素の製造方法が簡単に示されている。前記熱化学的技術は、具体的に触媒及び熱エネルギーを用いた酸化-還元反応のサイクルで水素を製造することになる。図1を参照すると、供給された水と触媒が外部の熱エネルギーによって酸化反応及び還元反応を進める過程中に水素気体が製造される。ここで、前記触媒は前記高温で維持される反応空間で連続的に酸化及び還元反応を進めることになる。この場合、前記触媒は部分的に焼結されるか相分離を引き起こし、結果として酸化及び還元反応の効率が低下して水素気体製造の収率が悪くなる。
【0006】
前記のように高温の環境に露出された状態で継続的に酸化及び還元反応する触媒にはセリア触媒がある。
【0007】
韓国特許登録第10-1302192号は合成ガス及び水素の製造方法及びこのための装置に関するもので、約700~1000℃の温度でセリア触媒を使って合成ガス及び水素を製造することになる。しかし、この場合、副産物であるカーボン及び一酸化炭素ガスの発生によって炭素が沈積し、サイクルの繰り返しによる触媒粒子の凝集及び焼結が進む問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国特許登録第10-1302192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は高温の環境に露出された状態でも粒子が凝集及び焼結されない触媒を提供することに目的がある。
本発明は希土類系元素を含むセリア金属触媒の含量を減らしながらも効率を向上させることによって経済性を高めることができる触媒を提供することに目的がある。
本発明は従来より多い反応領域を提供することができる触媒を提供することに目的がある。
本発明の目的は以上で言及した目的に制限されない。本発明の目的は以下の説明によってより明らかになり、特許請求範囲に記載した手段及びその組合せによって実現可能であろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、纎維型支持体、及び前記纎維型支持体の内部及び表面の少なくとも一方に含まれる金属触媒、を含み、前記纎維型支持体は酸化アルミニウム及び酸化珪素を含むことを特徴とする複合ナノ纎維触媒を提供する。
【0011】
前記金属触媒は酸化セリウム(CeO)を含むことができる。
【0012】
前記金属触媒は平均直径が5~50nmであってもよい。
【0013】
前記金属触媒を2.2~20.1重量%、前記纎維型支持体を79.9~97.8重量%含むことができる。
【0014】
前記複合ナノ纎維触媒の平均比表面積は10.0~60.0m/gであってもよい。
【0015】
前記複合ナノ纎維触媒の平均厚さは100nm~5μmであってもよい。
【0016】
前記複合ナノ纎維触媒は1000℃以上で酸化-還元による水分解工程に使われることができる。
【0017】
本発明によれば、前駆体物質を準備する準備段階、前記前駆体物質を高分子及び溶媒と混合して前駆体溶液を製造する第1混合段階、前記前駆体溶液に添加剤を添加して混合溶液を製造する第2混合段階、前記混合溶液を電気紡糸装置で電気紡糸して紡糸繊維を製造する電気紡糸段階、及び前記紡糸繊維を熱処理して複合ナノ纎維触媒を製造する熱処理段階、を含み、前記複合ナノ纎維触媒は金属触媒及び纎維型支持体を含み、前記纎維型支持体は前記金属触媒を支持体の内部及び表面のいずれか一方に含むことを特徴とする複合ナノ纎維触媒の製造方法を提供する。
【0018】
前記前駆体物質は、セリウム(II)硝酸6水化物(Ce(NO・6HO)、アルミニウムイソプロポキシド(Al[OCH(CH)、アルミニウム(III)硝酸6水化物(Al(NO・6HO)及びテトラエチルオルトシリケート(SiC20)を含むことができる。
【0019】
前記前駆体物質は、セリウム(II)硝酸6水化物、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム(III)硝酸6水化物及びテトラエチルオルトシリケートを1:44:16:20~6:44:16:20のモル数比で含むことができる。
【0020】
第1混合段階で、前記高分子はポリエチレンオキシド(PEO)を含むことができる。
【0021】
第2混合段階で、前記添加剤はポリエーテル変性ヒドロキシ作用性ポリジメチルシロキサン(polyether-modified hydroxy-functional polydimethylsiloxane)を含むことができる。
【0022】
第2混合段階で、前記添加剤は0.2~0.8重量%添加することができる。
【0023】
電気紡糸段階で、前記電気紡糸は0.1~1mL/hの速度で10~30kVの電圧で進めることができる。
【0024】
前記熱処理は700~1000℃の温度で1~10時間進めることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、高温の環境に露出された状態でも粒子が凝集及び焼結されない触媒を提供することができる。
【0026】
本発明によれば、希土類系元素を含むセリア金属触媒の含量を減らしながらも効率を向上させることによって経済性を高めることができる触媒を提供することができる。
【0027】
本発明によれば、従来より多い反応領域を提供することができる触媒を提供することができる。
【0028】
本発明の効果は以上で言及した効果に限定されない。本発明の効果は以下の説明から推論可能な全ての効果を含むものと理解されなければならないであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】熱化学的技術による水素の製造方法を簡単に示した図である。
図2】本発明の複合ナノ纎維触媒を示した図である。
図3】複合ナノ纎維触媒の製造過程を簡単に示した図である。
図4】紡糸繊維に対する走査電子顕微鏡(SEM)及びX線回折(XRD)分析写真を示した図である。
図5】1000℃で熱処理した複合ナノ纎維触媒に対する走査電子顕微鏡(SEM)及びX線回折(XRD)分析写真を示した図である。
図6】複合ナノ纎維触媒の走査電子顕微鏡(SEM)及びX線スペクトロメータ(EDS)分析写真を示した図である。
図7】600℃で熱処理した複合ナノ纎維触媒に対する走査電子顕微鏡(SEM)及びX線回折(XRD)分析写真を示した図である。
図8】1000℃で熱処理した複合ナノ纎維触媒を走査電子顕微鏡(SEM)によって高配率で分析した写真を示した図である。
図9】1000℃で比較例2のセリア-ムライト触媒に対する走査電子顕微鏡(SEM)及びX線回折(XRD)分析写真を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以上の本発明の目的、他の目的、特徴及び利点は添付図面に基づく以下の好適な実施例によって易しく理解可能であろう。しかし、本発明はここで説明する実施例に限定されず、他の形態に具体化することもできる。むしろ、ここで紹介する実施例は開示の内容が徹底的で完全になるように、かつ通常の技術者に本発明の思想が充分に伝達されるようにするために提供するものである。
【0031】
各図の説明において類似の参照符号を類似の構成要素に付けた。添付図面において、構造物の寸法は本発明の明確性のために実際より拡大して示すものである。第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使うことができるが、前記構成要素は前記用語に限定されてはいけない。前記用語は一構成要素を他の構成要素と区別する目的のみで使われる。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しない範疇内で第1構成要素は第2構成要素と名付けることができ、同様に第2構成要素も第1構成要素と名付けることができる。単数の表現は文脈上明らかに他に指示しない限り、複数の表現を含む。
【0032】
本明細書で、“含む”又は“有する”などの用語は明細書上に記載した特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、一つ又はそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品又はこれらを組み合わせたものなどの存在又は付加の可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分“上に”あると言う場合、これは他の部分の“すぐ上に”ある場合だけではなく、その中間に他の部分がある場合も含む。反対に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の“下に”あると言う場合、これは他の部分の“すぐ下に”ある場合だけではなく、その中間に他の部分がある場合も含む。
【0033】
他に明示しない限り、本明細書で使用した成分、反応条件、ポリマー組成物及び配合物の量を表現する全ての数字、値及び/又は表現は、このような数字が本質的に他のものの中でこのような値を得るのに発生する測定の多様な不確実性が反映された近似値であるので、全ての場合に“約”という用語で修飾されるものと理解されなければならない。また、以下の記載で数値範囲を開示する場合、このような範囲は連続的であり、他に指示しない限り、このような範囲の最小値から最大値が含まれた前記最大値までの全ての値を含む。さらに、このような範囲が整数を指示する場合、他に指示しない限り、最小値から最大値が含まれた前記最大値までを含む全ての整数が含まれる。
【0034】
本明細書において、範囲を変数に対して記載する場合、前記変数は前記範囲の記載された終了点を含む記載した範囲内の全ての値を含むものと理解されるであろう。例えば、“5~10”の範囲は5、6、7、8、9、及び10の値だけではなく、6~10、7~10、6~9、7~9などの任意の下位範囲を含み、5.5、6.5、7.5、5.5~8.5及び6.5~9などの記載した範囲の範疇に妥当な整数間の任意の値も含むものと理解されるであろう。また、例えば、“10%~30%”の範囲は10%、11%、12%、13%などの値と30%までを含む全ての整数だけではなく、10%~15%、12%~18%、20%~30%などの任意の下位範囲を含み、10.5%、15.5%、25.5%などのように記載された範囲の範疇内の妥当な整数間の任意の値も含むものと理解されるであろう。
【0035】
本発明は酸化アルミニウム及び酸化珪素を含む纎維状の支持体及び前記支持体の内部及び表面の少なくとも一方に含まれる金属触媒を含む複合ナノ纎維触媒及びその製造方法に関する。
【0036】
複合ナノ纎維触媒物質及び複合ナノ纎維触媒の製造方法についてそれぞれ区分して説明する。
【0037】
複合ナノ纎維触媒
本発明の複合ナノ纎維触媒は熱エネルギーによって水を分解するときに使われる触媒であり、酸化及び還元反応を繰り返し遂行して水素及び酸素気体を生成することが主目的である。
【0038】
前記複合ナノ纎維触媒は纎維型支持体及び金属触媒を含むことが特徴であり、具体的に纎維状を有する支持体及び前記支持体の内部及び表面の少なくとも一方に含まれる金属触媒を含む。
【0039】
本発明の金属触媒は水の熱分解反応が円滑に進むようにする目的で使われ、好ましくは酸化セリウム(CeO)を含む。
【0040】
前記金属触媒の平均直径は5~50nm、好ましくは20~30nmである。
【0041】
本発明の支持体は前記金属触媒間凝集を抑制し、高温の環境に露出されても触媒の耐久性を維持させる目的で使われ、好ましくは化アルミニウム(Al)及び酸化珪素(SiO)を含む。より好ましくは、記支持体は3Al・2SiO及び2Al・SiOの少なくともいずれか1種を含むムライト(mullite)である。
【0042】
前記支持体は前記金属触媒間の凝集が起こらないように固定させることができる形態であれば十分であるが、本発明では好ましくは纎維状を有する。これは、単純に金属触媒と支持体が粒子状に結合されている形状を有する触媒より金属触媒間の凝集が起こる比率を著しく低めることができる効果を有し、また纎維状の支持体間の空間の存在によって金属触媒反応面積を増やすことができる効果を得ることができる。本発明では、前記纎維状の支持体間の空間を気孔と表現することができる。水分解工程で原料である液体又は気体形態の水(HO)が前記形成された気孔を出入しながらより多い金属触媒と反応することができるようになる。
【0043】
図2は本発明の複合ナノ纎維触媒の形状を簡略に示した図である。これを参照すると、本発明の複合ナノ纎維触媒は前記金属触媒が纎維状を有する前記支持体の表面に付着されるか又は支持体の内部に含まれる形状を有することが特徴である。
【0044】
前記金属触媒は2.2~20.1重量%含まれ、好ましくは17.3~19.7重量%含まれる。ここで、前記含量範囲を外れる場合、触媒効果が落ちるか、あるいは金属触媒間の凝集によって触媒効率が落ちる問題が発生する。
【0045】
前記支持体は79.9~97.8重量%含まれ、好ましくは80.3~82.7重量%含まれる。
【0046】
前記複合ナノ纎維触媒の平均比表面積は10.0~60.0m/gである。より好ましくは、比表面積は27.6~30.9m/gである。
【0047】
前記比表面積値は複合ナノ纎維触媒上に存在するビード状を有する凝集物などの不純物の存在、纎維状の支持体の太さ、すなわち複合ナノ纎維触媒の厚さ及び気孔の形成程度によって影響を受けることができる。
【0048】
前記比表面積が10m/g未満の場合、金属触媒と反応することができる領域が減るから、結果として水分解工程によって水素を生産する収率が悪くなることがあり、60.0m/gを超える場合、むしろ複合ナノ纎維触媒の耐久性が低下することがある。
【0049】
前記複合ナノ纎維触媒の平均厚さは50nm~2μm、好ましくは175nm~220nmである。ここで、前記平均厚さが50nm未満の場合、熱処理過程で纎維形状が維持されなくて触媒が粒子化する問題があり、2μmを超える場合、金属触媒が支持体の表面に突出することができなくて内部にのみ位置して外部の反応ガスと接触することができなく、結果として触媒の役割を完全に果たすことができないという問題がある。
【0050】
本発明の前記複合ナノ纎維触媒は水分解工程に使われる。具体的に、高温の環境で水が水素及び酸素に分解される反応を促進させる役割をする。この場合、前記高温の環境は1000℃以上を意味する。
【0051】
複合ナノ纎維触媒の製造方法
本発明の複合ナノ纎維触媒の製造方法は、前駆体物質を準備する準備段階、前記前駆体物質を高分子及び溶媒と混合して前駆体溶液を製造する第1混合段階、前記前駆体溶液に添加剤を添加して混合溶液を製造する第2混合段階、前記混合溶液を電気紡糸装置で電気紡糸して紡糸繊維を製造する電気紡糸段階、及び前記紡糸繊維を熱処理して複合ナノ纎維触媒を製造する段階、を含むことが特徴である。
【0052】
図3には本発明の複合ナノ纎維触媒を製造する過程が簡単に示されている。これを参照して各段階別に具体的に説明する。
【0053】
準備段階
本発明の複合ナノ纎維触媒の原料を準備する段階であり、より正確には前駆体物質を準備する段階である。
【0054】
前記前駆体物質は、セリウム(II)硝酸6水化物(Ce(NO・6HO)、アルミニウムイソプロポキシド(Al[OCH(CH)、アルミニウム(III)硝酸6水化物(Al(NO・6HO)及びテトラエチルオルトシリケート(SiC20)を含む。好ましくは、前記前駆体物質はセリウム(II)硝酸6水化物、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム(III)硝酸6水化物及びテトラエチルオルトシリケートを1:44:16:20~6:44:16:200のモル数比で含む。ここで、前記範囲を外れる場合、副反応によって触媒の効率を落とす副産物(例えば、CeAl、CeSiO、CeSi)が形成される問題が発生する。これらはナノ構造体の焼結及び粗大化を引き起こすことができる物質である。また、前記セリウム(II)硝酸6水化物の量が前記モル数比を超えて投入される場合、金属触媒の凝集を引き起こすことができる。
【0055】
前記セリウム(II)硝酸6水化物(Ce(NO・6HO)は複合ナノ纎維触媒の製造において金属触媒に含まれるセリウムを提供するのに寄与し、前記アルミニウムイソプロポキシド(Al[OCH(CH)及びアルミニウム(III)硝酸6水化物(Al(NO・6HO)は支持体に含まれる酸化アルミニウムを提供するのに寄与し、前記テトラエチルオルトシリケート(SiC20)は支持体に含まれる酸化珪素を提供するのに寄与する。もしくは酸化アルミニウム及び酸化珪素の合金形態として現れるムライト(Al・SiO)を提供することができる。
【0056】
第1混合段階(S1)
前記一定のモル数比で準備した前駆体物質を準備した純水に投入して混合させる段階(S1)である。より正確には、前記前駆体物質が投入された純水に高分子及び溶媒をさらに投入して前駆体溶液を製造することになる。
【0057】
前記高分子は溶液の粘度を調節する目的で投入される。ここで、前記溶液の粘度によって最終的に製造される複合ナノ纎維触媒の厚さが変わる。好ましくは、ポリエチレンオキシド(PEO)を含む。具体的に、前記ポリエチルレンオキシドは別に準備したエタノールと混合して提供することができる。
【0058】
前記高分子は0.1~4.0重量%で投入されることができる。好ましくは、2.0~3.0重量%である。ここで、前記0.1重量%未満の場合、十分な粘度を有することができなくて電気紡糸段階で纎維状の構造体が得られにくい。
【0059】
前記溶媒は、好ましくは無数エタノールを含む。
【0060】
前記混合は、好ましくは50~90℃で進めることができる。
【0061】
第2混合段階
前記充分に混合されて製造された前駆体溶液に添加剤を投入して混合溶液を製造する段階である。
【0062】
前記添加剤の場合、界面活性剤の1種を選択し、前記添加剤は、好ましくはポリエーテル変性ヒドロキシ作用性ポリジメチルシロキサン(polyether-modified hydroxyl-functional polydimethylsiloxane)を含む。
【0063】
前記添加剤は0.2~0.8重量%となるように投入することが好ましい。ここで、0.2重量%未満の場合、電気紡糸段階で前記前駆体溶液の高い表面張力によって溶液の吐出が難しくなる問題が発生し、0.8重量%を超える場合、熱処理段階で添加剤物質が残留して金属触媒及び支持体の結晶化を妨げる問題が発生する。
【0064】
電気紡糸段階(S2)
前記製造された混合溶液を纎維状を有する触媒に作るために、電気紡糸装置で電気紡糸して紡糸繊維を製造する段階(S2)である。
【0065】
電気紡糸される前の前記混合溶液は前駆体物質、高分子及び添加剤を含んでいる状態であり、前記前駆体物質は前記混合溶液内に均一に分散されている状態である。ここで、電気紡糸装置で前記混合溶液を紡糸するとき、前記成分が均一に混合された状態で纎維状に紡糸され、最終的に金属触媒は支持体の内部及び表面のいずれか一方に含まれる形状を有することになる。
【0066】
前記電気紡糸は0.1~1mL/hの速度で10~30kVの電圧条件で行うことが好ましい。
【0067】
熱処理段階(S3)
前記纎維状を有する紡糸繊維を最終的に熱処理して金属触媒及び支持体を除いた不純物を除去して複合ナノ纎維触媒を製造する段階(S3)である。具体的に、前記熱処理で高分子と硝酸塩などを分解させ、酸化セリウム(CeO)、酸化アルミニウム及び酸化珪素のみ含む複合ナノ纎維触媒を得ることになる。
【0068】
前記熱処理は、好ましくは700~1000℃の温度で進め、時間は1~10時間の間に行うことができる。より好ましくは、前記熱処理は800~1000℃の温度で進む。ここで、700℃未満の温度で熱処理する場合、不純物が正常に除去されなくなり、結晶化が正常に進まないか酸化セリウム間の凝集が発生して効率が落ちる触媒が製造される危険があり、1000℃を超える温度で熱処理する場合、工程効率が落ちる問題が発生することがある。
【0069】
下記実施例及び比較例に基づいて本発明を詳細に説明する。実施例及び比較例は単に本発明を説明するためのものであり、本発明が下記の例に制限されるものではない。
【0070】
製造例
4mLの純水にセリウム(II)硝酸6水化物(Cerium(II) nitrate hexahydrate;Ce(NO・6HO)とアルミニウムイソプロポキシド(Aluminum Isopropoxide;Al[OCH(CH)、アルミニウム(III)硝酸6水化物(Aluminum(III) nitrate hexahydrate;Al(NO・6HO)、そしてTEOS(Tetraethyl orthosilicate)のモル数をそれぞれ5.5:44:16:20の比率で溶かして前駆体物質を準備し、これに4mLの無数エタノールを添加して均一に混合して前駆体溶液を製造した。1mLのエタノールにPEO高分子を0.3g溶かして高分子を準備し、添加剤であるポリエーテル変性ヒドロキシ作用性ポリジメチルシロキサン(polyether-modified hydroxy-functional polydimethylsiloxane)45μLとともに前記前駆体溶液に投入して混合溶液を製造した。前記混合溶液を電気紡糸装置の注射器に入れ、注射器ポンプ(syringe pump)で0.6mL/hの速度で前記混合溶液を持続的に押し込む。ここで、注射器のチップ(tip)部分と紡糸された纎維が蒸着されるコレクター間の距離を15cmに維持しながら高電圧(18kV)を印加し、電位差によって混合溶液を前記コレクター上に電気紡糸して紡糸繊維を製造した。
【0071】
図4には前記製造された紡糸繊維を走査電子顕微鏡(SEM)で高配率及び低倍率で撮影した写真及びX線回折(XRD)分析写真が示されている。これを参照すると、まだ非晶質の状態であり、また高分子を含むビード(beads)状の凝集物が多数発見されていることを確認することができる。
【0072】
実施例1
前記製造例でコレクターに蒸着された紡糸繊維をアルミナ(alumina;Al)るつぼに集め、大気雰囲気で約1000℃の温度で3時間熱処理して複合ナノ纎維触媒を得た。
【0073】
図5には前記1000℃の温度で熱処理された複合ナノ纎維触媒を走査電子顕微鏡(SEM)で高配率及び低倍率で撮影した写真及びX線回折(XRD)分析写真が示されている。これを参照すると、酸化セリウム(CeO)及びムライト(Al・SiO)を含む複合ナノ纎維触媒の結晶化が正常に進み、熱処理によってビード(beads)状の凝集物がほとんどなくなったことを確認することができる。
【0074】
図6は前記製造された複合ナノ纎維触媒のアルミニウム(Al)、珪素(Si)、セリウム(Ce)及び酸素(O)の包含有無と分布特性を観察するためにX線スペクトロメータ(EDS)分析した写真を示した図である。これを参照すると、全体的にアルミニウム、珪素及び酸素が複合ナノ纎維触媒の全区域に均一に分布されており、前記セリウムは複合ナノ纎維触媒上にところどころに一定の区域を形成して分布されていることが分かる。
【0075】
比較例1
前記製造例でコレクターに蒸着された紡糸繊維をアルミナ(alumina;Al)るつぼに集め、大気雰囲気で約600℃の低温で3時間熱処理して複合ナノ纎維触媒を得た。
【0076】
図7には前記600℃の温度で熱処理された複合ナノ纎維触媒を走査電子顕微鏡(SEM)で高配率及び低倍率で撮影した写真及びX線回折(XRD)分析写真が示されている。これを参照すると、熱処理温度が高いほどビード(beads)状の凝集物の大きさが前記紡糸繊維で観察された凝集物の大きさより小さくなったことを確認することができるとともに酸化セリウム(CeO)及びムライト(Al・SiO)の結晶化が進んでいることを確認することができる。
【0077】
比較例2
前記製造例で製造された混合溶液を大気雰囲気で約1000℃の温度で3時間熱処理して酸化セリウム(CeO)-ムライト(3Al・2SiO)ナノ粒子触媒を得た。
【0078】
図8には前記製造された酸化セリウム(CeO)-ムライト(3Al・2SiO)触媒を走査電子顕微鏡(SEM)で分析した写真が示されている。これを参照すると、酸化セリウム及び酸化アルミニウムと酸化珪素を含むムライト粒子が凝集しないで粒子状に分散されていることを確認することができる。
【0079】
比較例3
アルミニウムイソプロポキシド(Aluminum Isopropoxide;Al[OCH(CH)、アルミニウム(III)硝酸6水化物(Aluminum(III) nitrate hexahydrate;Al(NO・6HO)、そしてTEOS(Tetraethyl orthosilicate)を使わず、前駆体物質を準備したことを除き、前記比較例2と同様に製造して酸化セリウム(CeO)触媒を得た。
【0080】
図9には前記製造された酸化セリウム(CeO)触媒を走査電子顕微鏡(SEM)で分析した写真が示されている。これを参照すると、酸化セリウム粒子が互いに凝集して触媒の表面積が減少したことを確認することができる。
【0081】
実験例1
前記実施例1、比較例1~比較例3で製造されたそれぞれの触媒を用いて水分解による水素発生有無に対して測定し、その結果を下記の表1に示した。
【0082】
具体的に、500mlの反応器を準備し、前記反応器内に前記実施例1、比較例1~比較例3の触媒をそれぞれ3.0gとなるように入れ、前記反応器を非活性アルゴン(argon)雰囲気で1400℃の温度に加熱しながら10mlの水を流すことによって気化させた。触媒が酸化しながら水の熱分解反応が起こり、反応が終わった後ごとに注射器で反応器内から1ccの空気を採取し、前記採取した空気をガスクロマトグラフィー質量分析器(Gas chromatography-mass spectrometry)に入れて水素の発生量を測定した。反応が終わった後、非活性雰囲気で触媒が十分に還元するようにし、また10mlの水を注入して触媒反応を引き起こした。前記過程を5回繰り返し遂行し、各サイクルで得られた水素発生量を下記の表1に示した。
【0083】
【表1】
前記表1の結果を参照すると、本発明の製造方法によって製造された実施例1の複合ナノ纎維触媒による水素発生量が他の比較例より著しく高い数値を示していることを確認することができる。
【0084】
本発明の複合ナノ纎維触媒の寿命性能を確認するために、同じ触媒で繰り返して実験を遂行した、比較例1及び比較例2の場合、1回実験でそれぞれ3.88mL/g及び3.91mL/gの水素発生量を示しているが、その後に継続して水素発生量が減少する様相を示している。
【0085】
支持体なしに金属触媒粒子のみ使用した比較例3の場合、1回実験で3.04mL/gの水素発生量を示しているが、その後の2回実験から急激に触媒としての効果が落ちることを確認することができる。
【0086】
前記の比較例の場合、実験が繰り返されるほど触媒の効果が落ちることに対し、実施例1は実験の繰り返される回数が増加しても95%以上の触媒性能を維持していることが分かる。
【0087】
実施例1と類似している形態を有する比較例1の水素発生量と耐久性が低くなった理由は、熱処理の温度差によってビード状の凝集物の大きさ差及び支持体に付着された金属触媒の表面積差によるものであると推正することができる。
実験例2
前記実験例1で各サイクルが終わった後、微量の触媒粉末を取って触媒の比表面積を測定し、その結果を下記の表2に示した。
【0088】
【表2】
【0089】
前記表2の結果を参照すると、実施例1の複合ナノ纎維触媒の比表面積が28m/g以上と非常に高い値を示しており、またサイクルが繰り返されても比表面積の変化がほとんどないことを確認することができる。
【0090】
比較例1の場合、サイクルが繰り返されても比表面積の変化がほとんどないが、実施例1と比較して比表面積の大きさが低い値を示していることを確認することができる。前記のように比較例1の比表面積の変化がほとんど起こらない結果は、前記比較例1の触媒が前記実施例1と同一の纎維状の支持体上に金属触媒が支持される形態を有するからであると思われる。
【0091】
比較例2の場合、1回実験で採取した触媒粉末の場合に比表面積が相対的に高い値を示したが、実験が2回以上繰り返されるほど比表面積が半分以上減少することを確認することができる。これは触媒粉末に含まれる金属触媒が高温に繰り返し露出されるほど相互間の凝集が発生したからであると思われる。
【0092】
比較例3の場合に最低の比表面積値を示しており、実験が繰り返されるほど比表面積の値が著しく減少することを確認することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9