(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】無段変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 9/18 20060101AFI20240610BHJP
F16H 25/20 20060101ALI20240610BHJP
F16H 1/14 20060101ALI20240610BHJP
【FI】
F16H9/18 Z
F16H25/20 D
F16H1/14
(21)【出願番号】P 2019204146
(22)【出願日】2019-11-11
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】デリック ゴディン
(72)【発明者】
【氏名】後閑 祥次
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-151288(JP,A)
【文献】特開2011-172379(JP,A)
【文献】特開2019-100351(JP,A)
【文献】特開2010-106957(JP,A)
【文献】国際公開第2018/070292(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/066488(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 9/18
F16H 25/20
F16H 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無段変速機であって、
入力軸に支持される駆動側プーリと、
出力軸に支持される従動側プーリと、
前記駆動側プーリと前記従動側プーリとの間に巻き掛けられるベルトと、
前記駆動側プーリの溝幅を変更するように構成された、モータによって駆動されるアクチュエータと、
を備え、
前記アクチュエータは、前記モータの回転を前記駆動側プーリの溝幅方向の直線運動に変換するための機構として、遊星転動機構型伝動装置を備え
、
前記モータは、クラウンギヤまたはベベルギヤを介して前記アクチュエータと直交方向に係合され、前記遊星転動機構型伝動装置は前記モータの回転軸の延長線上に配置されることを特徴とする、無段変速機。
【請求項2】
前記アクチュエータは、ローカルコントロールユニットによって制御されることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機。
【請求項3】
前記駆動側プーリの位置を検出するためのセンサをさらに備え、前記ローカルコントロールユニットは、前記センサからの信号に基づき前記モータを制御することを特徴とする請求項2に記載の無段変速機。
【請求項4】
前記駆動側プーリにウェイトローラが配置されていることを特徴とする請求項1から
3までのいずれか1項に記載の無段変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、特にスクーターなどの自動二輪車に適した無段変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動二輪車等の車両において、ウェイトローラを用いることによってエンジン回転数に応じて自動的に変速が行われる、Vベルト式無段変速機が使用されている。近年では、例えば特許文献1、2に記載されている無段変速機のように、駆動側プーリの溝幅を変更するための駆動手段として、ウェイトローラの代わりに電気モータを使用するものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-151288号公報
【文献】特開2017-96339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献のような電気モータを使用する無段変速機では、必要な減速比を得るための減速ギアが無段変速機のケーシング内で比較的大きな割合を占めるため、無段変速機のコンパクト化が困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、コンパクトに構成されたVベルト式の無段変速機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態によれば、無段変速機であって、入力軸に支持される駆動側プーリと、出力軸に支持される従動側プーリと、駆動側プーリと従動側プーリとの間に巻き掛けられるベルトと、駆動側プーリの溝幅を変更するように構成された、モータによって駆動されるアクチュエータと、を備え、アクチュエータは、モータの回転を駆動側プーリの溝幅方向の直線運動に変換するための機構として、遊星転動機構型伝動装置を備えることを特徴とする、無段変速機が提供される。
【0007】
これによると、駆動側プーリの溝幅を変更するように構成されたアクチュエータにおいて、従来から使用されている減速ギアを遊星転動機構型伝動装置に置き換えることによって、アクチュエータ、ひいては無段変速機をコンパクトに構成することができる。
【0008】
好適には、前記アクチュエータは、専用のコントロールユニットによって制御される。これによると、車両に通常設けられているECU(Engine Control Unit)に対して改変を加える必要なく、既存の車両の無段変速機においてアクチュエータのみを置換することが可能である。また、ECUからの信号を利用することによって、無段変速機内に設置するセンサの数を減らすことができる。
【0009】
好適には、モータは、クラウンギヤまたはベベルギヤを介してアクチュエータと直交方向に係合される。これによると、モータが車幅方向に突出せず、ケーシング内に無理なく収納することができるため、無段変速機のケーシングの幅を小さくすることができる。
【0010】
好適には、駆動側プーリの可動プーリに、ウェイトローラが配置されている。これによると、駆動側プーリの溝幅を変更する際に補助的にウェイトローラを利用することで、モータの所要出力が小さくて済むため、より小型のモータを採用することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、駆動側プーリの溝幅を変更するように構成されたアクチュエータにおいて、従来から使用されている減速ギアを遊星転動機構型伝動装置に置き換えることによって、アクチュエータ、ひいては無段変速機をコンパクトに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るVベルト式無段変速機の概略断面図である。
【
図2】
図1のアクチュエータの構成を示す図である。
【
図3】遊星転動機構型伝動装置の分解斜視図である。
【
図4】ローカルコントロールユニットにおける制御を説明するブロック図である。
【
図6】本発明の別の実施形態に係るVベルト式無段変速機の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための一形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る、自動二輪車等の車両に搭載されるVベルト式無段変速機10の概略断面図である。無段変速機10は、変速機ケーシング30で包囲される空間内に配置されている。
【0015】
無段変速機10は、図示しない車両のエンジンから動力が伝達される入力軸16と、この入力軸16に平行に延びる出力軸38と、を含む。入力軸16は、変速機ケーシング30の車体側に形成された挿入孔を貫通しており、挿入孔にはめ込まれている軸受26によって回転自在に支承されている。
【0016】
入力軸16には、駆動側プーリ12が支持されている。駆動側プーリ12は、入力軸16に固定されて入力軸16と一体に回転する固定シーブ12aと、入力軸16に支持されて入力軸16に対して軸方向(
図1中に矢印22で示す方向)に摺動自在に構成されている可動シーブ12bと、から構成される。
【0017】
出力軸38は、変速機ケーシング30の車体側に形成された挿入孔を貫通しており、この挿入孔にはめ込まれている軸受46と、変速機ケーシング30の車外側にはめ込まれている軸受48とによって回転自在に支承されている。出力軸38からは、減速機構40を介して車軸42に回転動力が伝達される。車軸42には、図示しない車輪が固定されている。
【0018】
出力軸38には、従動側プーリ34が支持されている。従動側プーリ34は、駆動側プーリ12と同様に、出力軸38に固定されて出力軸38と一体に回転する固定シーブ34aと、出力軸38に支持されて出力軸38に対して軸線方向に摺動自在に構成されている可動シーブ34bと、から構成される。可動シーブ34bは、コイルスプリング44によって固定シーブ34aに向けて付勢されている。
【0019】
駆動側プーリ12と従動側プーリ34の間には、それぞれの固定シーブおよび可動シーブの傾斜面と適合された断面を有するVベルト32が巻き掛けられている。
【0020】
無段変速機10は、さらに、駆動側プーリ12の可動シーブ12bを駆動して駆動側プーリ12の溝幅を変更するためのアクチュエータ50が配置されている。アクチュエータ50は、アクチュエータケース68によって変速機ケーシング30に固定されている。可動シーブ12bの軸方向に延びる円筒部12b1には、可動シーブ12bを入力軸16の軸方向に押し込みまたは引っ張るためのレバーアーム24が、軸受25を介して円筒部12b1に対して相対回転可能に接続されている。レバーアーム24は、スライダーピン28によって、軸方向に摺動自在に支持されている。
【0021】
図2は、アクチュエータ50の詳細図である。アクチュエータ50は、電気モータ52と、モータの回転運動を駆動側プーリの溝幅方向の直線運動に変換するための遊星転動機構型伝動装置(遊星ローラスクリューともいう)80と、遊星転動機構型伝動装置80から延びだすねじ山付きスピンドル54とを含んでいる。ねじ山付きスピンドル54の先端には、レバーアーム24の下端がリンク55を介して連結されている(
図1参照)。遊星転動機構型伝動装置80は、二つの軸受60、62によって、アクチュエータケース68に対して回転可能に支持されている。電気モータ52の回転軸52aと遊星転動機構型伝動装置80とは、ベベルギヤ64、66を介して回転係合している。ベベルギヤの代わりにクラウンギヤを用いてもよい。
【0022】
図3は、遊星転動機構型伝動装置80の分解斜視図である。遊星転動機構型伝動装置80自体は、例えば特表2017-505601号公報に開示されているように、当業者にとって公知である。遊星転動機構型伝動装置80は、螺旋状に連続するねじ溝が外周面に形成されたねじ山付きスピンドル54と、スピンドル54のねじ溝に対向するねじ溝が内周面に形成された、一組のナットハーフ84、87と、スピンドル54のねじ溝とナットハーフ84,87のねじ溝との間に配置された複数の遊星ローラ86と、を備えている。複数の遊星ローラ86は、スピンドル54の外周に沿って配置され、それぞれがスピンドル54と平行に延びる軸を有しており、そのねじ溝は、スピンドル54の外周のねじ溝とナットハーフ84、87の内周のねじ溝の両方に係合し、両者の間で転動自在に介装されている。
【0023】
遊星転動機構型伝動装置80にはさらに、二つの環状の遊星ディスク83、88が設けられている。遊星ディスク83、88は、各ナットハーフ84、87の軸方向外側に配置される。遊星ディスク83、88は、その中央にスピンドル54を挿通するための貫通孔83aが形成されているとともに、その外側に周方向に複数のローラ支持孔83bが形成されている。遊星ディスク83、88の外径は、ナットハーフ84、87の内周よりも小さい。各遊星ローラ86の両端は、遊星ディスク83、88のローラ支持孔にそれぞれ挿通されている。遊星ディスク83、88によって、各遊星ローラ86は回転自在に支持される。遊星ディスク83、88の軸方向外側には、保持リング82,89がそれぞれ設けられており、これによって、遊星ディスク83、88がナットハーフ84、87の内周側に固定される。その結果、遊星ディスク83、88および遊星ローラ86がナットハーフ84、87に対して軸方向にずれることが防止される。したがって、ナットハーフ84、87と遊星ローラ86は、スピンドル54に対して相対的に一体となって移動する。
【0024】
両ナットハーフ84、87の間には、遊星ローラ86に予圧を与えるためのディスタンスワッシャ85が介装されている。さらに、ナットハーフ87には、ベベルギヤ64とかみ合うベベルギヤ66が固定されている(
図2参照)。
【0025】
上記のように構成された遊星転動機構型伝動装置80において、電気モータ52によりナットハーフ87を回転させると、スピンドル54とナットハーフ87との相対回転運動によって、遊星ローラ86の転動を介して、スピンドル54が軸方向に進退動する。遊星転動機構型伝動装置80は、減速装置と送りねじの両方の機能が一体化されており、高い減速比とコンパクトな構成という利点を有している。
【0026】
電気モータ52の回転軸52aと遊星転動機構型伝動装置のスピンドル54とは、二つのベベルギヤまたはクラウンギヤを用いることで、互いに90度の角度をなして係合されている。このように電気モータ52をスピンドル54に対して90度傾けることで、電気モータの車幅方向への突出を回避することができる。しかしながら、電気モータのスピンドルに対する傾斜角は、任意の角度であってよい。
【0027】
アクチュエータ50には、駆動側プーリ12の可動シーブ12bの位置制御を行うための、ローカルコントロールユニット58が設けられている。
【0028】
図4(a)は、ローカルコントロールユニット58における制御を説明するためのブロック図である。ローカルコントロールユニット58は、図示しない車両に別に設けられているECU70から、可動シーブ12bの目標位置信号72とエンジン回転数74とを受け取る。ローカルコントロールユニット58は、さらに、車軸42に隣接して配置されている回転数センサ76から得られるホイール回転数と、レバーアーム24の下部端面に隣接して配置されている位置センサ78から得られるシーブ位置のフィードバック信号とを受け取り、これらに基づき電気モータ52の制御を実行する。
【0029】
代替的に、ローカルコントロールユニット58は、
図4(b)に示すように、可動シーブ位置のフィードバック信号を利用しないオープンループ制御を実行することも可能である。
【0030】
以下、本実施形態に係る無段変速機10の動作を説明する。
【0031】
図示しないエンジンによって入力軸16が回転されると、これとともに駆動側プーリ12が回転し、その回転はVベルト32を介して従動側プーリ34に伝達され、出力軸38を同方向に回転させる。
【0032】
コントロールユニット58は、各センサからの信号に基づき、駆動側プーリ12の可動シーブ12bの移動量を決定し、これに対応する駆動信号を電気モータ52に与える。電気モータ52の回転運動は、遊星転動機構型伝動装置80によって減速されるとともにスピンドル54の直線運動に変換され、レバーアーム24を介して、可動シーブ12bを入力軸16の軸線方向に移動させる。
【0033】
駆動側プーリ12において可動シーブ12bが固定シーブ12aに向けて移動された場合には、駆動側プーリ12の溝幅が狭くなり、Vベルト32の巻き径が大きくなる。すると、従動側プーリ34では、Vベルト32の張力によって、可動シーブ34bがコイルスプリング44の付勢力に抗して固定シーブ34aから離れる方向に摺動する。これにより、従動側プーリ34の溝幅が大きくなり、Vベルト32の巻き径は小さくなる。したがって、駆動側プーリ12の回転が増速されて従動側プーリ34に伝達される。
【0034】
駆動側プーリ12において可動シーブ12bが固定シーブ12aから離れる方向に移動された場合には、駆動側プーリ12の溝幅が広くなり、Vベルト32の巻き径が小さくなる。すると、従動側プーリ34では、Vベルト32の張力が弱まるので、可動シーブ34bは、コイルスプリング44の付勢力によって固定シーブ34aに向けて摺動する。これにより、従動側プーリ34の溝幅が狭くなり、Vベルト32の巻き径は大きくなる。したがって、駆動側プーリ12の回転が減速されて従動側プーリ34に伝達される。
【0035】
図5は、無段変速機を搭載した車両における、車速とエンジン回転数との対応関係を示すグラフである。グラフ中には、従来技術であるウェイトローラを用いて無段変速機を動作させた場合と、本実施形態に係る無段変速機を動作させた場合が示されている。
【0036】
ウェイトローラを利用して減速比を変える従来技術の無段変速機の場合には、車速とエンジン回転数との関係は固定であり、変更することはできない(
図4中の点線)。これに対し、本実施形態の場合には、電気モータによる駆動側プーリの可動シーブの移動量の制御によって、「エコモード」と「スポーツモード」のように、車速とエンジン回転数との対応関係を複数通り設定することが可能になる。したがって、様々な運転フィーリングの設定が可能である。
【0037】
以上説明したように、本実施形態によれば、駆動側プーリの溝幅を変更するように構成されたアクチュエータにおいて、減速ギアの代わりに遊星転動機構型伝動装置を用いることによって、アクチュエータ、ひいては無段変速機をコンパクトに構成することができる。また、部品点数が少なくなるので、製造コストを削減することが可能になる。
【0038】
また、アクチュエータにローカルコントロールユニットを設けてこのコントロールユニットで電気モータを直接制御するので、車両のECUに改変を加える必要がない。したがって、本実施形態に係るアクチュエータを、既存の車両における無段変速機のアクチュエータと置き換えることも可能である。
【0039】
また、アクチュエータを構成する電気モータと遊星転動機構型伝動装置とを、互いに平行にも垂直にも配置できるので、ケーシング内でのアクチュエータの配置の自由度が高い。
【0040】
本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、様々な変形、改良が可能である。
【0041】
上述した実施形態では、駆動側プーリの可動シーブでは、従来のVベルト式無段変速機で駆動側プーリの溝幅を変更するために使用されている、遠心力で作動するウェイトローラは排除されており、アクチュエータのみで可動シーブが移動される。しかしながら、可動シーブ内に、従来と同様の構成のウェイトローラを設けておき、可動シーブの移動をアクチュエータでアシストする形態にすることも可能である。
【0042】
図6は、そのような実施形態に係る自動二輪車等の車両に搭載されるVベルト式無段変速機100の概略断面図である。
図1に示した実施形態と同じ構成には同じ符号を付して、それらについての説明は省略する。
【0043】
この実施形態では、駆動側プーリ12’の可動シーブ12b’の背面側に傾斜面96が形成されており、さらにガイドプレート98が取り付けられている。傾斜面96とガイドプレート98との間の空間には、ウェイトローラ94が、シーブの径方向に移動可能に配置されている。
【0044】
可動シーブ12b’の軸方向に延びる円筒部12b1’には、可動シーブ12b’を入力軸16の軸方向に押し込みまたは引っ張るためのレバーアーム90が、軸受91を介して円筒部12b1’に対して相対回転可能に接続されている。レバーアーム90は、スライダーピン28によって、軸方向に摺動自在に支持されている。レバーアーム90の下端は、リンク92を介して、遊星転動機構型伝動装置80から延び出すねじ山付きスピンドル54に連結されている。
【0045】
従来のウェイトローラを用いた無段変速機と同様に、入力軸16の回転数が増加するにしたがって、ウェイトローラ94に作用する遠心力が増大し、ウェイトローラ94は、遠心力の方向、すなわち可動シーブ12b’の半径方向外側へ傾斜面96に沿って移動するので、可動シーブ12b’を固定シーブ12aに向けて押圧する。このウェイトローラ94による可動シーブ12b’の推力をアシストする方向に、アクチュエータ50がレバーアーム90を介して可動シーブ12b’に推力を与える。以上の結果、駆動側プーリ12’の溝幅は狭くなる。逆に、入力軸16の回転数が減少する場合は、アクチュエータ50は、可動シーブ12b’が固定シーブ12aから離れる方向に、可動シーブ12b’に推力を与える。
【0046】
このように、駆動側プーリの溝幅変更時に、ウェイトローラによる可動シーブの推力と、アクチュエータによる可動シーブの推力とを組み合わせると、ある程度の運転フィーリングの調整が可能である上、アクチュエータによる可動シーブの移動に必要な推力を抑えられるので、電気モータのサイズを小さくすることができる。したがって、安価で省電力の無段変速機が望ましい場合には有利である。
【0047】
上述した実施形態では、ローカルコントロールユニットが、エンジン出力、エンジン回転数、可動シーブ位置、ホイール回転数の信号を受け取り、電気モータの制御を行うことを述べたが、一部の信号を利用しない構成も可能である。例えば、可動シーブ位置のフィードバックを受けないオープンループ制御にすることも可能であり、または、エンジン出力と可動シーブ位置のフィードバックのみに基づき、電気モータを制御する構成も可能である。
【0048】
本発明の無段変速機は、自動二輪車に搭載されるものに限定されず、例えば三輪車、全地形対応車(ATV)やユーティリティタスクビークル(UTV)などの四輪車を含む、どのような形態の車両にも搭載されることができる。
【符号の説明】
【0049】
10 無段変速機
12 駆動側プーリ
12a 固定シーブ
12b 可動シーブ
16 入力軸
24 レバーアーム
30 変速機ケーシング
32 Vベルト
34 従動側プーリ
34a 固定シーブ
34b 可動シーブ
38 出力軸
40 減速機構
42 車軸
50 アクチュエータ
52 電気モータ
54 スピンドル
56 アーム
58 ローカルコントロールユニット
80 遊星転動機構型伝動装置