(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-07
(45)【発行日】2024-06-17
(54)【発明の名称】ロボットシステム、搬送車、ロボットシステムの制御方法、物品の製造方法、制御プログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20240610BHJP
【FI】
B25J13/08 Z
(21)【出願番号】P 2019230523
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】井比 敏男
【審査官】國武 史帆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-132002(JP,A)
【文献】特開2019-087073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送車にロボットを備えたロボットシステムであって、
前記ロボットまたは前記搬送車には、前記搬送車の位置に関する情報を検出する位置検出器を備えており、
前記位置検出器を用いて前記搬送車を停止させる場合、前記ロボットが実行する作業に応じて、前記搬送車を停止させる場合の停止制御を変更する、
ことを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のロボットシステムにおいて、
前記作業に応じて、前記搬送
車の目標停止位置に対する
許容範囲が異なっており、
前記位置検出器により検出された前記搬送車の位置に関する情報が、前記許容範囲内の場合、前記ロボットに前記作業を実行させる、
ことを特徴とするロボットシステム。
【請求項3】
請求項
1に記載のロボットシステムにおいて、
前記位置検出器はエンコーダであり、
前記作業に応じて、前記搬送車の目標速度に対する
許容範囲が異なっており、前記エンコーダにより検出された前記搬送車の速度に関する情報
が、
前記許容範囲外の場合、前記作業を実行する前に所定時間、前記ロボットを待機させる、
ことを特徴とするロボットシステム。
【請求項4】
請求項
3に記載のロボットシステムであって、
前記作業に応じて、前記搬送車の前記目標速度が異なっている、
ことを特徴とするロボットシステム。
【請求項5】
請求項
2に記載にロボットシステムにおいて、
前記作業として、第1作業と、前記第1作業よりも精度を必要とする第2作業と、を実行させ、
前記搬送車を接近させる所定装置を備えており、
前記搬送車を停止させ、前記ロボットに前記第2作業を実行させる場合、前記位置検出器により検出された前記搬送車の位置に関する情報と、前記目標停止位置との差分を取得し、
前記差分に基づいて、前記ロボットの動作を制御する、
ことを特徴とするロボットシステム。
【請求項6】
請求項
5に記載のロボットシステムにおいて、
前記差分に基づいて前記ロボットの動作を制御する場合、前記差分を打ち消すように前記ロボットに教示されている教示点を補正する、
ことを特徴とするロボットシステム。
【請求項7】
請求項
5または
6に記載のロボットシステムにおいて、
前記位置検出器により検出する前記搬送車の位置に関する情報は、前記所定装置に対する前記搬送車の相対位置であり、前記目標停止位置は、前記所定装置に対する前記搬送車の教示時の停止位置である、
ことを特徴とするロボットシステム。
【請求項8】
請求項
2に記載のロボットシステムにおいて、
前記作業として、第1作業と、前記第1作業よりも精度を必要とする第2作業とを実行させ、
前記第1作業に対応する前記目標停止位置に対する許容範囲が、前記第2作業に対応する前記目標停止位置に対する許容範囲より大きい、
ことを特徴とするロボットシステム。
【請求項9】
請求項
3または4に記載のロボットシステムにおいて、
前記作業として、第1作業と、前記第1作業よりも精度を必要とする第2作業とを実行させ、
前記第1作業に対応する前記目標速度に対する許容範囲が、前記第2作業に対応する前記目標速度に対する許容範囲より大きい、
ことを特徴とするロボットシステム。
【請求項10】
請求項
8または
9に記載のロボットシステムにおいて、
前記ロボットは、ロボットアームにエンドエフェクタを備えており、
前記第1作業は、前記エンドエフェクタによりワークを把持する作業であり、
前記第2作業は、前記エンドエフェクタまたは前記エンドエフェクタにより把持された前記ワークを、他のワークに接触させる作業である、
ことを特徴とするロボットシステム。
【請求項11】
請求項1
0に記載のロボットシステムにおいて、
前記第2作業は、前記ワークを前記他のワークに接触させ、前記ワークを前記他のワークに組み付ける作業である、
ことを特徴とするロボットシステム。
【請求項12】
請求項1
0に記載のロボットシステムにおいて、
前記第2作業は、前記エンドエフェクタが保持した前記ワークにより前記他のワークを加工する作業である、
ことを特徴とするロボットシステム。
【請求項13】
請求項1
2に記載のロボットシステムにおいて、
前記ワークは、ドライバー、研磨具、の少なくとも1つを含む、
ことを特徴とするロボットシステム。
【請求項14】
請求項1から1
3のいずれか1項に記載のロボットシステムにおいて、
前記搬送車はブレーキを備えており、
前記ブレーキを用いて前記搬送車を停止する、
ことを特徴とするロボットシステム。
【請求項15】
請求項1
または2に記載のロボットシステムにおいて、
前記位置検出器は撮像装置である、
ことを特徴とするロボットシステム。
【請求項16】
請求項1から1
5のいずれか1項に記載のロボットシステムを用いて物品の製造を行うことを特徴とする物品の製造方法。
【請求項17】
搬送車にロボットを備えたロボットシステムの制御方法であって、
前記ロボットまたは前記搬送車には、前記搬送車の位置に関する情報を検出する位置検出器を備えており、
前記位置検出器を用いて前記搬送車を停止させる場合、前記ロボットが実行する作業に応じて、前記搬送車を停止させる場合の停止制御を変更する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項18】
ロボットを備えた搬送車であって、
前記ロボットまたは前記搬送車には、前記搬送車の位置に関する情報を検出する位置検出器を備えており、
前記位置検出器を用いて前記搬送車を停止させる場合、前記ロボットが実行する作業に応じて、前記搬送車を停止させる場合の停止制御を変更する、
ことを特徴とする搬送車。
【請求項19】
ロボットを備えた搬送車の制御方法であって、
前記ロボットまたは前記搬送車には、前記搬送車の位置に関する情報を検出する位置検出器を備えており、
前記位置検出器を用いて前記搬送車を停止させる場合、前記ロボットが実行する作業に応じて、前記搬送車を停止させる場合の停止制御を変更する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項20】
請求項1
7または
19に記載の制御方法をコンピュータにより実行可能な制御プログラム。
【請求項21】
請求項2
0に記載の制御プログラムを格納した、コンピュータで読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
製品(部品)を製造する生産ラインにおいて、ロボットアームを備えたロボット装置が生産装置として用いられている。この種のロボットアームは、先端に設けられたエンドエフェクタ、例えば把持装置としてのフィンガーやハンド、その他の工具などのツールによってワークを操作し、工業製品やその部品などの物品を製造する。近年では、無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)のような搬送車上にロボットアームを備えるロボットシステムが用いられている。無人搬送車により作業位置に自動で移動し、作業位置に配置したワークに対して組立や加工等の作業を行わせるようにしたロボットシステムが提供されている。
【0003】
その際、ロボットアームに精度の高い作業を実行させるべく、作業位置に対する無人搬送車の停止位置が重要な課題となっている。特許文献1に記載の技術は、無人搬送車に設けられたロボットアームに画像入力装置を設け、画像入力装置により所定のマークを検出し、フィードバック制御することで無人搬送車の停止位置の精度を向上させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無人搬送車に設けられたロボットアームに実行させる作業によっては、無人搬送車の停止位置の精度にある程度余裕をもたせることができる。例えば、ロボットアームによって作業位置に配置されたワークに加工を施す場合、停止位置のずれによる加工ずれは製品不良を引き起こすため、無人搬送車の停止位置は高精度に保たれなければならない。しかしながら、無人搬送車に設けられたロボットアームによって、作業位置に配置されたワークを把持する程度の作業であれば、上述した加工ずれ等のように製品不良に直結する失敗が生じにくいため、ある程度の余裕を持たせることができる。このように、停止位置の精度を保つために停止のフィードバック制御をすべての作業において長い時間取ってしまうと、精度がそこまで必要とされていない作業においても不必要に時間を取ってしまうため、作業効率が悪くなるという課題がある。
【0006】
本発明は以上のような課題を鑑みてなされたものであり、作業効率の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明は、搬送車にロボットを備えたロボットシステムであって、前記ロボットまたは前記搬送車には、前記搬送車の位置に関する情報を検出する位置検出器を備えており、前記位置検出器を用いて前記搬送車を停止させる場合、前記ロボットが実行する作業に応じて、前記搬送車を停止させる場合の停止制御を変更する、ことを特徴とするロボットシステムを採用した。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態におけるロボットシステム100と作業台700の概略図である。
【
図2】実施形態におけるロボットシステム100の制御ブロック図である。
【
図3】実施形態における作業台700の詳細図である。
【
図4】実施形態における制御フローチャートである。
【
図5】実施形態における許容範囲Δ1Δ2を説明する図である。
【
図6】実施形態における許容範囲Δ1’Δ2’を説明する図である。
【
図7】実施形態における制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも一例であり、例えば細部の構成については本発明の趣旨を逸脱しない範囲において当業者が適宜変更することができる。また、本実施形態で取り上げる数値は、参考数値であって、本発明を限定するものではない。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は本実施形態におけるロボットシステム100と作業台700をXYZ座標系のある方向から見た平面図である。なお以下の図面において、図中の矢印X、Y、Zはロボットシステム100全体の座標系を示す。一般に、ロボット装置を用いたロボットシステムでは、XYZ3次元座標系は、設置環境全体のワールド座標系の他に、制御の都合などによって、ロボットハンド、指部、関節などに関して適宜ローカル座標系を用いる場合がある。本実施形態ではロボット装置100全体の座標系であるワールド座標系をXYZ、ローカル座標系をxyzで表すものとする。
【0012】
図1に示すように、ロボットシステム100は、多関節のロボットアーム本体200と、エンドエフェクタとしてのロボットハンド本体300を無人搬送車500に備えている。さらに、ロボットアーム本体200、ロボットハンド本体300の動作および無人搬送車500を制御する制御装置400と、撮像装置600を備えている。
【0013】
本実施形態では、エンドエフェクタとしてロボットアーム本体200の先端部に設けられるものが、ロボットハンド本体300である場合について説明するが、これに限定するものではなく、適宜ロボットツール等に取り換えてよい。
【0014】
ロボットアーム本体200の基端となるリンク201は、基台210に設けられている。ロボットアーム本体200は、複数の関節、例えば6つ関節(6軸)を有している。ロボットアーム本体200は、各関節J1~J6を各回転軸まわりにそれぞれ回転駆動させる複数(6つ)のモータ211~216(
図2)を有している。
【0015】
ロボットアーム本体200は、複数のリンク201~206と、ロボットハンド本体300が各関節J1~J6で、各軸A1~A6で回転可能に連結されている。ここで、ロボットアーム本体200の基端側から先端側に向かって、リンク201~206が順に直列に連結されている。
【0016】
同図より、ロボットアーム本体200の基台210とリンク201は、同図のA1軸周りの矢印方向で回転する関節J1で接続されている。リンク201は不図示の伝達機構及びモータの回転が伝達され、同図のA1軸周りの矢印方向に回転することができる。
【0017】
ロボットアーム本体200のリンク201とリンク202は、同図のA2軸周りの矢印方向で回転する関節J2で接続されている。リンク202は不図示の伝達機構及びモータの回転が伝達され、同図のA2軸周りの矢印方向に回転することができる。
【0018】
ロボットアーム本体200のリンク202とリンク203は、同図のA3軸周りの矢印方向で回転する関節J3で接続されている。リンク203は不図示の伝達機構及びモータの回転が伝達され、同図のA3軸周りの矢印方向に回転することができる。
【0019】
ロボットアーム本体200のリンク203とリンク204は、同図のA4軸周りの矢印方向で回転する関節J4で接続されている。リンク204は不図示の伝達機構及びモータの回転が伝達され、同図のA4軸周りの矢印方向に回転することができる。
【0020】
ロボットアーム本体200のリンク204とリンク205は、同図のA5軸周りの矢印方向で回転する関節J5で接続されている。リンク205は不図示の伝達機構及びモータの回転が伝達され、同図のA5軸周りの矢印方向に回転することができる。
【0021】
ロボットアーム本体200のリンク205とリンク206は、同図のA6軸周りの矢印方向で回転する関節J6で接続されている。ロボットハンド本体300はリンク206に連結されており、不図示の伝達機構及びモータの回転が伝達され、同図のA6軸周りの矢印方向にリンク206と共に回転することができる。
【0022】
以上の構成により、ロボットアーム本体200は、可動範囲の中であれば、任意の3次元位置で任意の3方向の姿勢に、ロボットアーム本体200を向けることができる。そして、ロボットアーム本体200によりロボットハンド本体300を任意の位置に動作させ、所望の作業を行わせることができる。所望の作業とは例えば、対象物同士を組み付け物品の製造を行う等の作業である。
【0023】
ロボットハンド本体300は、部品やツール等の対象物を把持するものである。本実施形態のロボットハンド本体300は不図示の駆動機構およびモータ311(
図2)により2本の指部を開閉し、ワークの把持ないし開放を行う。ワークをロボットアーム本体200に対して相対的に変位させないように把持できれば良い。またロボットハンド本体300には、モータ311の駆動を制御するためのハンド用モータドライバ301(
図2)が内蔵されているものとする。
【0024】
ロボットアーム本体200の基台210は、無人搬送台車500に固定されている。本実施形態では無人搬送台車500の向きを鉛直上向きとして説明するが、ユースケースによって向きを変えてもよい。また無人搬送台車500は地上に施設された誘導線に沿って走行する誘導無人搬送車、あるいは誘導線に依らず走行可能な自立無人搬送車であっても構わない。
【0025】
本実施形態における無人搬送車500は、マイクロコンピュータを主体としたコンピュータシステムによって構成されている制御装置400を備えている。そして制御装置400は、図示しない駆動モータ、伝達機構およびブレーキ機構を介してタイヤ501の動作制御を行っている。これにより無人搬送車500の操舵およびブレーキの制御を行っている。なお本実施形態では、タイヤ501の駆動を行う駆動モータにエンコーダが設けられているものとする。
【0026】
撮像装置600はロボットハンド本体300に取り付けられ、ロボットアーム本体200の姿勢に応じて撮影方向を変更可能である。撮像装置600に後述するマーカを撮像させることで、画像マッチングにより無人搬送車500の位置を算出することが可能となる。撮像装置600は位置検出器として機能する。本実施形態では撮像装置600として説明するが、ユースケースによっては無人搬送車500の位置検出方法として電波やレーダー等を使用した他の位置検出方式を用いたセンサでもよい。また、位置を検出するための装置の取り付け位置もロボットハンド本体300に限定されない。ロボットアーム本体200に設けられていても良いし、無人搬送車500に設けられていてもかまわない。
【0027】
以上の構成により、作業台700に配置されている種々のワークに所定の作業を実行するために、作業台700の近傍の所定の位置に無人搬送車500を停止させることが可能となる。作業台700及び種々のワークについては後述する。
【0028】
図2は、本実施形態におけるロボットシステム100の構成を示すブロック図である。制御装置400は、コンピュータで構成されており、制御部(処理部)としてのCPU(Central Processing Unit)401を備えている。
【0029】
また制御装置400は、記憶部として、ROM(Read Only Memory)402、RAM(Random Access Memory)403、HDD(Hard Disk Drive)404を備えている。また、制御装置400は、記録ディスクドライブ405、各種のインタフェース406~409、411~413を備えている。
【0030】
CPU401には、ROM402、RAM403、HDD404、記録ディスクドライブ405、各種のインタフェース406~409、411~413が、バス410を介して接続されている。
【0031】
ROM402には、CPU401に、演算処理を実行させるためのプログラム430が格納されている。CPU401は、ROM402に記録(格納)されたプログラム430に基づいてロボット制御方法の各工程を実行する。
【0032】
RAM403は、CPU401の演算処理結果等、各種データを一時的に記憶する記憶装置である。HDD404は、CPU401の演算処理結果や外部から取得した各種データ等を記憶する記憶装置である。
【0033】
記録ディスクドライブ405は、記録ディスク431に記録された各種データやプログラム等を読み出すことができる。
【0034】
外部入力装置800はインタフェース413に接続されている。CPU401はインタフェース413及びバス410を介して外部入力装置800からの教示データの入力を受ける。
図1において外部入力装置800は不図示としているが、ロボットアーム本体200、ロボットハンド本体300、無人搬送車500の教示において適宜使用されるものとする。
【0035】
アーム用モータドライバ230は、インタフェース409に接続されている。CPU401は、各関節J1~J6の指令値のデータを所定時間間隔でバス410及びインタフェース409を介してアーム用モータドライバ230に出力する。そしてアーム用モータドライバ230は、各関節J1~J6の各モータ211~216に指令値を出力する。
【0036】
各モータ211~216には、それぞれセンサ部221~226を有している。ここで、センサ部とは各関節J1の角度を検出する角度センサと、各関節のトルクを検出するトルクセンサである。角度センサの例としては、磁気式エンコーダ、光学式エンコーダがあり、トルクセンサの例としては所定の弾性体の歪を検出する歪検出式や、変形を変位として検出する変位検出式が挙げられる。
【0037】
また、角度センサのエンコーダの機能としてはアブソリュートエンコーダ機能とインクリメントエンコーダ機能がある。インクリメントエンコーダは1回転におけるモータの角度を検出するものだが、アブソリュートエンコーダは多回転したモータの回転数までカウントできる。本実施形態は多回転する関節があるためアブソリュートエンコーダを用いる。これらセンサ部221~226の情報もインタフェース409及びバス410を介して、CPU401に送られる。CPU401は、各モータに備えられた角度センサ、トルクセンサからの検出値を用いて、各リンク201~206の位置をフィードバック制御することができる。
【0038】
ロボットハンド用のモータ311の駆動を制御するハンド用モータドライバ312も、インタフェース411に接続され、バス410を介してCPU401と通信可能に設けられている。CPU401は、ロボットハンド本体300の各指部の指令値のデータを所定時間間隔でバス410及びインタフェース411を介してハンド用モータドライバ312に出力する。
【0039】
インタフェース407には、モニタ421が接続されており、モニタ421には、CPU401の制御の下、各種画像が表示される。インタフェース408は、書き換え可能な不揮発性メモリや外付けHDD等の記憶部である外部記憶装置422が接続可能に構成されている。
図1においてモニタ421、外部記憶装置422は不図示であるが、無人搬送車500の所定の位置に設置されているものとする。
【0040】
なお本実施形態では、コンピュータ読み取り可能な記録媒体がHDD404であり、HDD404にプログラム430が格納される場合について説明するが、これに限定するものではない。プログラム430は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であれば、いかなる記録媒体に記録されていてもよい。
【0041】
例えば、プログラム430を供給するための記録媒体としては、ROM402、記録ディスク431、外部記憶装置422等を用いてもよい。具体例を挙げて説明すると、記録媒体として、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性メモリ、ROM等を用いることができる。
【0042】
次に作業台700について
図3を使用して説明する。
図3(a)はワークW1の把持を行う際の作業台700を表した図である。
図3(b)はワークW2に対してワークW2を穴部Hに組み付ける際の作業台700を表した図である。ロボットシステム100は、作業台700で、ワークW1の搬送と、ワークW1とワークW2との組付という2種類の作業を行うものである。なお、本実施形態ではワークW1の搬送を例にとり説明するが、ワークW2を搬送しても構わない。また、ワークW1とワークW2の組付を例に取り説明するが、ロボットハンド本体300の代わりに、ドライバーや研磨具等のワークを取り付け、エンドエフェクタをワークに接触させて加工を行う作業でもかまわない。
【0043】
図3(a)より、作業台700にはケース701が載置されており、ケース701の中にワークW1がバラ置きされている。また
図3(b)では、作業台700には保持具702が設けられており、保持具702にワークW2が位置決めされた状態で配置されている。
【0044】
図3(a)(b)より、作業台700の表面には、マーク703(特徴部703aおよび特徴部703b)が印字されている。マーク703は作業台700における基準位置を表示するものである。作業台700の近傍の所定位置にロボットシステム100を位置させ、所定の動作をロボットアーム本体200およびロボットハンド本体300に実行させるための教示時に、撮像装置600によりマーク703を撮像させ基準値となる基準画像を取得しておく。
【0045】
そして実際の作業の実行時、無人搬送車500を作業台700に近づけ、撮像装置600によりマーク703を撮像し、取得した画像と教示時の基準画像との特徴部を比較し、無人搬送車500と作業台700との相対位置を検出する。そして検出した相対位置に基づいて、無人搬送車500を、教示時に停止させていた所定位置に停止させる。無人搬送車500は、このような構成の複数の作業台700の間を走行して、各作業台(
図3(a)(b))に応じた作業を行う。
【0046】
本実施形態では撮像装置600を用いたためマーク703の画像により無人搬送車500と作業台700の相対位置を検出する説明とした。しかし、ユースケースによってはマーク703以外の方法を用いてもよい。
【0047】
次に本実施形態におけるロボットシステム100の動作について
図4のフローチャートを用いて説明する。制御装置400のCPU401が、プログラム430を実行することにより、ロボットシステム100が動作を開始する。
【0048】
ここで本実施形態では、
図3で説明したワークW1の把持、またはワークW1の組付を行う際における、無人搬送車の停止位置においてそれぞれ許容範囲が設定されている。
図5は本実施形態における許容範囲を示した図である。本実施形態における許容範囲とは、ロボットシステム100の動作教示時に無人搬送車500を停止させた所定位置からのズレの範囲であり、この許容範囲内に無人搬送車500を停止させることができれば、無人搬送車500の停止完了と判定する範囲である。言い換えるならば、許容範囲とは、無人搬送車500の停止に関して、不図示のブレーキ機構によりタイヤ501をロックし無人搬送車を停止後、所定の作業を実行するトリガとなる相対位置の範囲である。
【0049】
図5(a)(b)より、目標となる教示時の停止位置は停止位置Cで示される。
図5(a)では停止位置Cに対して許容範囲Δ1が設定されており、
図5(b)では許容範囲Δ2が設定されている。図より、許容範囲Δ1のほうが許容範囲Δ2よりも大きく設定している。これにより、ワークW1の把持において、停止の完了させる際、タイヤ501のフィードバック制御を早く収束させることができるため、無人搬送車500の停止完了の判定を早く行うことが可能となる。なお、停止位置Cは作業台700を基準に設定されており、撮像装置600により、無人搬送車500と作業台700との相対位置を検出することで、無人搬送車500を停止位置Cに停止させることが可能であるものとする。
【0050】
図4に戻り、まずS101において、ロボットシステム100が行う動作は、ワークW1の把持であるか判定する。ワークW1の把持である場合は、S102に進む。
【0051】
S102では、ワークW1の把持における無人搬送車500の停止位置の許容範囲Δ1(
図5(a))を取得する。
【0052】
そしてS103に進み、制御装置400が、撮像装置600の検出結果に基づき無人搬送車500を動作させる。撮像装置600により、マーク703を撮像し、教示時の基準画像に基づいて無人搬送車500を停止位置Cに近づける。
【0053】
そしてS104で、無人搬送車500の位置が許容範囲Δ1内であるか判定する。Δ1内でなければ、S104:NOよりS103の直前まで戻り、再度撮像装置600により無人搬送車500を停止位置Cに近づける。
【0054】
Δ1内に無人搬送車500を位置させることができれば、S104:YESより、S105に進み、無人搬送車500に設けられた不図示のブレーキ機構を用いてタイヤ501をロックし、無人搬送車500を停止させる。
【0055】
そしてS106にて、ロボットアーム本体200を操作して、ロボットハンド本体300によりワークW1を把持する。その際、撮像装置600によりワークW1の配置位置を検出し、ワークW1を把持する。このように、無人搬送車500と作業台700との相対位置を検出する装置として撮像装置を用いることで、撮像装置をワークの配置位置の検出にも使用することができるため好適である。
【0056】
次にS101:NOより、ロボットシステム100に実行させる動作がワークW1の組付であった場合、S107に進む。S107では、ワークW2の組付における無人搬送車500の停止位置の許容範囲Δ2(
図5(b))を取得する。
【0057】
そしてS108に進み、制御装置400が、撮像装置600に基づき無人搬送車500を動作させる。撮像装置600により、マーク703を撮像し、教示時の基準画像に基づいて無人搬送車500を停止位置Cに近づける。
【0058】
そしてS109で、無人搬送車500の位置が許容範囲Δ2内であるか判定する。Δ2内でなければ、S109:NOよりS108の直前まで戻り、再度撮像装置600により無人搬送車500を停止位置Cに近づける。
【0059】
Δ2内に無人搬送車500を位置させることができれば、S109:YESより、S110に進み、無人搬送車500に設けられた不図示のブレーキ機構を用いて無人搬送車500を停止させる。
【0060】
そしてS111に進み、停止位置Cと、S110にて停止させた現在の停止位置との差を取得する。
【0061】
そして、S112に進み、S111で取得した停止位置の差分だけ、ロボットハンド本体300のワークW1組付における動作を補正する。補正の方法としては、ロボットハンド本体300に教示された各教示点を、S111で取得した差分を打ち消す方向にオフセットする方法が挙げられる。
【0062】
そしてS113にて、S112で補正を実行した教示点に基づいてワークW1の組付を実行する。こうすることで、停止位置の多少のズレ分も補正した動作を実行させることができ、更なる動作精度の向上を図ることができる。
【0063】
以上本実施形態によれば、ロボットシステムに実行させる動作に応じて、無人搬送車の停止の完了を判定する許容範囲を設定している。これにより、高精度な動作をあまり要求されない作業に関しては、停止の完了を素早く終えることができるため、生産動作の効率化を図ることができる。
【0064】
また、高精度な動作を要求される動作については、無人搬送車の停止の完了の許容範囲を厳しく設定するだけでなく、目標停止位置と現在停止位置との差分を検出し、制御対象となる部分(ロボットハンド本体300)の教示点を差分に基づき補正している。これにより、無人搬送車の動作精度の影響を低減することができ、動作精度の向上をさらに図ることが可能となる。
【0065】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、無人搬送車500の停止の完了を、目標停止位置に関する許容範囲をロボットアーム本体200が実行する作業ごとに設定したが、これに限られない。例えば、無人搬送車500を作業台700に接近させる際の通常走行における無人搬送車500の速度の許容範囲を、ロボットアーム本体200が実行する作業ごとに設定してもかまわない。
【0066】
上述した第1の実施形態では、無人搬送車500の停止の完了を目標停止位置と現在停止位置とを比較することで行った。しかしながら、ロボットアーム本体200は、自走する無人搬送車500に設けられているため、走行中から停止に移行する際、慣性が働くため、ロボットアーム本体200に振動が生じる。そのため、無人搬送車500を停止させた後、所定の時間待ち、ロボットアーム本体200の振動がある程度収束させてから、ロボットアーム本体200の作業を実行させることが一般的である。
【0067】
しかし、上述した第1の実施形態のように、ロボットアーム本体200に実行させる作業によっては、必要とされる精度の観点から、ロボットアーム本体200がある程度振動していても、作業を実行できる場合がある。
【0068】
そこで、本実施形態では、無人搬送車500を作業台700に接近させる際の通常走行における速度を、タイヤ501を駆動する駆動モータに設けられたエンコーダより算出する。そしてその速度に基づき、無人搬送車500の停止を完了させた後、所定の時間待つのかどうかを判定する。
【0069】
以下では、第1の実施形態とは異なるハードウェアや制御系の構成の部分について図示し説明する。また、第1の実施形態と同様の部分については上記と同様の構成ならびに作用が可能であるものとし、その詳細な説明は省略するものとする。
【0070】
図6は本実施形態における許容範囲を示した図である。本実施形態における許容範囲とは、無人搬送車500を作業台700に接近させる際の通常走行における速度において、ロボットシステム100を所定の時間待つのか判定する範囲である。この許容範囲内に無人搬送車500の速度が収まっていれば、所定の時間待つことなく作業を実行させる。言い換えるならば、許容範囲とは、無人搬送車500の停止に関して、所定の時間待機するという制御を実行するトリガとなる速度の範囲である。
【0071】
図6(a)(b)より、ロボットシステム100を作業台700に接近させる際の目標となる速度は目標速度Vで示される。
図6(a)では目標速度Vに対して許容範囲+Δ1’が設定されており、
図5(b)では許容範囲+Δ2’が設定されている。図より、許容範囲Δ1’のほうが許容範囲Δ2’よりも大きく設定している。これにより、ワークW1の把持において、ある程度無人搬送車500の速度が大きくても、所定の時間待つことなく、ロボットアーム本体200に作業を実行させることが可能となる。
【0072】
次に本実施形態におけるロボットシステム100の動作について
図7のフローチャートを用いて説明する。なお、本実施形態では、第1の実施形態で説明した停止の実行に関する制御については同じであるため説明を割愛する。制御装置400のCPU401が、プログラム430を実行することにより、ロボットシステム100が動作を開始する。
【0073】
図7より、まずS201において、ロボットシステム100が行う動作は、ワークW1の把持であるか判定する。ワークW1の把持である場合は、S202に進む。
【0074】
S202では、ワークW1の把持における無人搬送車500を作業台700に接近させる際の通常走行における速度許容範囲+Δ1’(
図6(a))を取得する。
【0075】
そしてS203に進み、タイヤ501に設けられたエンコーダに基づき、無人搬送車500を作業台700に接近させる際の通常走行における速度を算出する。
【0076】
そしてS204で、無人搬送車500の速度が許容範囲Δ1’を含めたV+Δ1’内であるか判定する。算出された速度がV+Δ1’内でなければ、S204:NOよりS206に進む。
【0077】
S206では、無人搬送車500を第1の実施形態で説明した制御方法により停止を完了させ、S207にてロボットアーム本体200の振動を収まるまで所定の時間待つ。S204にて、算出された速度がV+Δ1’内であれば、S204:YESよりS205に進み、第1の実施形態で説明した制御方法により無人搬送車500の停止を完了させ制御を終了する。
【0078】
次にS201:NOより、ロボットシステム100に実行させる動作がワークW1の組付であった場合、S208に進む。S208では、ワークW2の組付における無人搬送車500を作業台700に接近させる際の速度の許容範囲+Δ2’(
図5(b))を取得する。
【0079】
そしてS209に進み、タイヤ501に設けられたエンコーダに基づき、停止直前の無人搬送車500の速度を算出する。
【0080】
そしてS210で、無人搬送車500の速度が許容範囲Δ2’を含めたV+Δ2’内であるか判定する。算出された速度がV+Δ2’内でなければ、S210:NOよりS212に進む。
【0081】
S212では、無人搬送車500を第1の実施形態で説明した制御方法により停止を完了させ、S213にてロボットアーム本体200の振動を収まるまで所定の時間待つ。S210にて、算出された速度がV+Δ2’内であれば、S210:YESよりS211に進み、第1の実施形態で説明した制御方法により無人搬送車500の停止を完了させ制御を終了する。
【0082】
以上本実施形態によれば無人搬送車500の停止直前の速度に応じて、所定の時間待つかどうか判定し、必要な分だけ、無人搬送車500の待機を行うため、作業の効率化を図ることができる。さらに、ロボットアーム本体200が実行する作業に応じて、無人搬送車500の停止に関して、所定の時間待機するという制御を実行するトリガとなる速度の範囲を変えている。これにより、作業の必要精度という観点からも所定の時間待機、という制御を効果的に実行できるため、更なる作業の効率化を図ることができる。
【0083】
なお、本実施形態では、無人搬送車500の速度を用いたが、無人搬送車500の加速度を用いても構わない。また本実施形態では、無人搬送車500が作業台700に接近する際の速度に許容範囲を持たせたが、接近時の無人搬送車500の目標速度Vの大きさを変更しても構わない。例えば、ワークW1把持時は目標速度Vを大きくし、ワークW1組付時は、ワークW1把持時の目標速度Vよりも小さくしても構わない。
【0084】
上述した種々の実施形態の処理手順は具体的には制御装置400により実行されるものとして説明した。しかし、上述した機能を実行可能なソフトウェアの制御プログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体を外部入力装置500または測定条件設定装置700に搭載させて実施しても良い。
【0085】
従って上述した機能を実行可能なソフトウェアの制御プログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体、通信装置は本発明を構成することになる。
【0086】
また、上記実施形態では、コンピュータで読み取り可能な記録媒体がROM或いはRAMであり、ROM或いはRAMに制御プログラムが格納される場合について説明したが、本発明はこのような形態に限定されるものではない。
【0087】
本発明を実施するための制御プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であれば、いかなる記録媒体に記録されていてもよい。例えば、制御プログラムを供給するための記録媒体としては、HDD、外部記憶装置、記録ディスク等を用いてもよい。
【0088】
(その他の実施形態)
また上述した種々の実施形態では、ロボットアーム本体200が複数の関節を有する多関節ロボットアームを用いた場合を説明したが、関節の数はこれに限定されるものではない。ロボットアームの形式として、垂直多軸構成を示したが、パラレルリンク型など異なる形式の関節においても上記と同等の構成を実施することができる。
【0089】
また上述した種々の実施形態は、制御装置に設けられる記憶装置の情報に基づき、伸縮、屈伸、上下移動、左右移動もしくは旋回の動作またはこれらの複合動作を自動的に行うことができる機械に適用可能である。
【0090】
なお本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されない。
【符号の説明】
【0091】
100 ロボットシステム
200 ロボットアーム本体
201、202、203、204、205、206 リンク
210 基台
211、212、213、214、215、216、311 モータ
221、222、223、224、225、226 センサ部
300 ロボットハンド本体
400 制御装置
500 無人搬送車
501 タイヤ
600 撮像装置
700 作業台
701 ケース
702 保持具
703 マーカ
703a、703b 特徴部
W1、W2 ワーク
H 穴部
C 停止位置
Δ1、Δ2、Δ1’、Δ2’ 許容範囲